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環境対応エンジン制御システム

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Academic year: 2021

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22 2009.10

環境,安全,快適を実現するオートモティブシステム開発技術 Vol.91 No.10 760-761

環境対応エンジン制御システム

Engine Control Systems for Environmental Issues

大須賀

Minoru Osuga

拓也

Takuya Mayuzumi

角谷

Hiromu Kakuya

feature article 1. はじめに

CO

2,排気規制などの環境規制が強化される中で,日立 グループは,今後のニーズに対応するエンジン制御システ ム,および種々の制御機器を提供している(図1参照)。 今後のエンジン制御システムの動向を図2に示す。 排気量1 Lクラスの小型エンジンを過給によって高出力 化し,車載するダウンサイジング化が進展する。低フリク ション・軽量であることから燃費向上が実現できる。

3 Lクラスのエンジンでは,ポンプ損失低減を目的とし

た吸気弁リフトで空気量を制御するVEL(Variable Valve

Event and Lift Control)システムが進展している。将来的

には,低NOxでリーン燃焼を実現するHCCI

(Homoge-neous Charge Compression Ignition)も開発中である。こ

れらのエンジンはHEV(Hybrid Electric Vehicle:ハイブ

リッド電気自動車)への適応性も合わせて検討されている。 ここでは,これらの環境対応エンジン制御システムへの 日立グループの主な取り組みについて述べる。 これまで北米,欧州がリードしていた環境規制としての自動車に対するCO(燃費)2 ・排気規制は, 2010年以降,よりいっそう強化されるとともに,中国などのアジア諸国でも強化される。 従来以上に低燃費・低排気の新システムによるエンジンの高効率化が,自動車のCO2低減には必須となる。 エンジン自体をより小型・高出力化してフリクション・重量を低減するダウンサイジングシステムや, 動弁系を精密に制御してポンプ損失をゼロに近づけるシステム, さらにはアイドルストップシステムなどがエンジンの高効率化に有効であり,今後進展すると考えられる。 日立グループは,これらの新システムに対応する制御システム,機器の開発を推進している。 空気系 電子制御スロットル エアフローメータ 高精度 小型 高信頼性 小型 回転方向検出 圧力センサー 回転センサー 排気センサー ECU 電流可変, 診断 ・ 保護機能向上 インジェクタ ロングノズル スワール/マルチホール 高ダイナミックレンジ 低油密 リリーフバルブ一体 大流量, 小型 インジェクタ噴霧 スワール ストレート 偏向 マルチホール 高圧燃料ポンプ(単筒) VEL 小型 ・ 軽量 リフト連続可変 普及型位相可変 低フリクション 高機能型 位相可変 ソレノイド バルブ オイル ポンプ 点火コイル ピストン 小型 小型高エネルギー 低フリクション 燃焼性能向上 高効率 ウォータ ポンプ 筒内噴射エンジン 電動VTC リフタ 油圧VTC 動弁系 センサー 制御系 燃料系 燃焼系 補機類 図1 環境対応エンジン制御システムの主要製品 日立グループは,今後の環境規制に対応するエンジン制御システム,機器を提供している。主要製品は電子制御スロットル,動弁系から成る空気系,エアフローメータをはじめとす るセンサー群,エンジン燃焼を左右する燃料,燃焼系,各種ポンプなどの補機類,そしてこれらの制御機器をコントロールするエンジンコントロールユニット(ECU)である。

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23 featur e ar ticle 2. エンジン制御システムの主要コンポーネントと制御 環境対応エンジン制御システムについて,日立グループ が提供する主要コンポーネントと制御技術を表1に示す。 ダウンサイジングには高出力化できる過給筒内噴射 (DI:Direct Injection)システムが適している。燃料系と して,過給DIの高出力化に対応した高ダイナミックレン ジインジェクタ,高圧燃料ポンプとその駆動制御も合わせ て提供する。 アイドルストップシステムについては,頻繁なスター ト/ストップに対応する高耐久,静音スタータ,およびエ ンジンの停止/再始動制御が主要技術となる。また,吸気 弁リフトと開閉タイミングを連続制御するVELシステム では,高応答な動弁系と駆動制御を提供する。低NOxの リーン燃焼を実現する圧縮自己着火による

HCCIシステ

ムでは,自己着火を制御するDI燃料系と燃焼コントロー ル技術を開発している。さらに,過給,動弁,燃焼系を統 合的に制御するため,エンジンをトルクで管理するトルク ベース制御を開発した。以下に各システムについて述べ,

VELについては本特集の別論文「環境対応のエンジン機器

(可変動弁システム)」で紹介する。 3. 筒内噴射エンジン制御システム 3.1 筒内噴射エンジン用高圧燃料系システム 筒内噴射エンジン用高圧燃料系システムを図3に示す。 主要素は燃料を高圧(15 MPa)圧送する高圧燃料ポン プ,燃料を筒内に噴射するインジェクタ,およびこれらを

駆動するカスタムIC(Integrated Circuit)を組み込んだエ

ンジンコントロールユニットである。インジェクタ,高圧 ポンプの駆動では,特性を最大限に引き出すように駆動電 可変燃圧コントロール ・ 燃圧フィードバック  (15 MPa以下) ・ カスタムIC(インジェクタ, ポンプ駆動) ・ パワー, 昇圧回路(70 V以上)のモジュール ECU 最適駆動電流制御 ・ インジェクタ, ポンプ特性 に合わせた最適値 (高ダイナミックレンジ化) 多段噴射 噴霧仕様の最適化 ピーク電流 ピーク電流 プリチャージ 保持電流 噴霧 ピストン 点火プラグ インジェクタ 保持電流 噴霧, 燃焼シミュレーション ポンプ駆動電流 インジェクタ駆動電流 ・ 始動時 : 吸気−圧縮 ・ WOT時 : 吸気−吸気 燃圧脈動の低減 インジェクタ, ポンプ駆動一体型 クランク角 高圧燃料 ポンプ 燃圧センサー インジェクタ 配管 内圧力比 0.9 1.0 1.1 図3 筒内噴射エンジン用高圧燃料系システム 筒内噴射エンジンでは高圧(15 MPa)の燃料を筒内(シリンダ内)に直接噴射する。日立グループは,このための高圧燃料の制御機器と,その性能を最大限に引き出す駆動制御 および駆動装置を提供している。

注:略語説明 WOT(Wide Open Throttle)

30 20 10 1.0 L 軽自動車 2.0 L 出力相当の排気量 PFI, DI VEL PFI PFI DI DI HEV用エンジン HEV用エンジン ダウンサイジング HCCI(リーン) ダウンサイジング アイドルストップ 自動 車 とし て の 燃費 ( km/L ) 3.0 L 0 図2 環境対応エンジン制御システムの動向 エンジンダウンサイジング化,アイドルストップ,VELが進展し,HEVエンジンへの適応も 検討される。また,HCCIの新燃焼技術も開発されている。

注:略語説明  DI(Direct Injection),PFI(Port Fuel Injection),HCCI(Homogeneous

Charge Compression Ignition),HEV(Hybrid Electric Vehicle)

注:略語説明 AT(Automatic Transmission),CVT(Continuously Variable Transmission)

システム 主要コンポーネント システム制御 ダウンサイジング (過給DIシステム) ・高ダイナミックレンジインジェ クタ ・高圧燃料ポンプ ・ECU(DI) ・高速応答エアフローメータ ・燃料圧力可変制御 ・多段噴射制御 ・高脈動吸気量検出 ・トルクベース制御 アイドルストップ システム ・高耐久,静音スタータ ・電動オイルポンプ(AT,CVT用) ・アイドルストップ用鉛バッテリ ・エンジン停止/再始動制御 ・エネルギー回生制御 VELシステム ・VEL ・高応答VTC ・VEL駆動制御 ・トルクベース制御 HCCI(リーン) システム ・DI燃料制御系 ・VEL ・高応答VTC ・運転モード切換制御 ・HCCI燃焼制御 ・トルクベース制御 表1 各種システムに対応する主要コンポーネントと制御技術 日立グループは,各種システムに対して主要コンポーネントと高精度制御技術を開発し ている。

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環境,安全,快適を実現するオートモティブシステム開発技術 Vol.91 No.10 762-763

流を最適化し,過給

DIにも適した高ダイナミックレンジ

な燃料噴射を実現している。さらに,始動時の低排気,全

負荷時(WOT:Wide Open Th

rottle)の高トルクのため,

1サイクルに複数回噴射する多段噴射も可能である。

燃焼系の設計技術も合わせて提供している。筒内に噴射 する燃料噴霧の形状や特性を,日立グループ独自の燃焼シ ミュレーションを用いて決定している。さらに,燃料配管 内の燃圧脈動を低減する燃料配管の仕様,高圧ポンプ制御 も提供している。 3.2 エンジンコントロールユニット

DI用エンジンコントロールユニットを

図4に示す。 インジェクタ,高圧ポンプの駆動波形(ピーク,保持電 流)の設定値をマイコンからオンボードで変更可能とする ことで,エンジンの運転状態に最適な駆動を実現してい る。また,駆動回路には高度な自己診断や自己保護機能を 有し,駆動回路,インジェクタ,高圧ポンプ,ハーネスを 含む筒内噴射システムの安全性を高めた。さらに,駆動回 路の温度をモニタすることで,異常な発熱をした場合で も,エンストに至ることはなく,発熱を抑制した制御を行 うことでフェイルセーフ性を向上させた。 マイコン負荷を最小にしつつこれらの特徴を実現するた めに,電流制御,診断,保護機能および昇圧回路制御機能

を一体化し,新ASIC(Application Specifi c Integrated

Cir-cuit)を開発した。

3.3 トルクベース制御 今後のエンジン制御の基本となるトルクベース制御の構 成を図5に示す。 トルクリクエスト部とトルクマネジメント部に分かれ, トルクパラメータを引き渡す。トルク決定の主なアクチュ エータは電子制御スロットルであるが,このほかに点火コ

イル,動弁系〔VEL,VTC(Valve Timing Control)〕,過

給機などがある。 トルクリクエスト部は,アクセル開度,スリップを解消 するトラクション制御やクルーズ制御,変速ショック低減 要求から総合的に目標トルクを計算する。 トルクマネジメント部は,目標トルクを実現するための 各アクチュエータの指令値を演算する。 動的な応答については,電子制御スロットルに加え,点 火時期操作などの応答の速いアクチュエータ操作で補い, 目標トルクを実現している。 4. アイドルストップシステム アイドルストップシステムの構成と燃費向上効果を図6 に示す。 車両停止時のアイドリング運転を停止するアイドルス トップシステムは,確実に燃費が向上し,他の燃費向上ア 構造 主な特徴 (1)インジェクタ ・ 高圧ポンプの電流波 形をオンボードで可変制御可能 (2)発熱抑制制御を含む高度な診断 ・ 保護機能に対応 (3)鉛フリーはんだ化による環境対応 ベース PCB DI用 ASIC コネクタ LC モジュール 図4 筒内噴射用エンジンコントロールユニット インジェクタ・高圧ポンプの電流波形をオンボードで可変制御し,運転条件に最適な電 流波形を生成可能とした。

注:略語説明  ASIC(Application Specifi c Integrated Circuit),

PCB(Printed Circuit Board)

ECU トルクリクエスト アクセル開度 アクセル分 要求トルク 演算 トラクション 制御 クルーズ 制御 変速機 要求トルク 目標 ト ル ク 選択 ト ル ク 振 り 分 け トルクマネジメント 電子制御 スロットル 実発生 トルク スロットル開度 可変動弁 点火リタード 図5 トルクベース制御の基本構成 車両としての各エンジン出力要求を整理統合して,その瞬間の目標エンジン出力をト ルクとして求め,目標トルクを実現するように各アクチュエータを駆動制御する。 日本 高圧 縮比 比熱比 急速 燃焼 ポンプ 損失 アイドル ストップ システム アイドルストップ車 専用鉛バッテリ エンジン コントローラ ポンプ 駆動回路 電動オイル ポンプ エンジン (DI, PFI) 変速機油圧システム ピストン位置検出センサー 変速機 コントローラ (新神戸電機) 他の燃費向上アイテム 運転モード : 欧州 燃費向上率 ( % ) 0 5 10 北米 運転モード 欧州 始動用 スタータ 図6 アイドルストップシステム アイドルストップは他の燃費向上アイテムに比べて効果が大きく,今後普及すると考え られる。

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25 featur e ar ticle イテムと同等以上の効果が期待できる。 キーポイントは,エンジンストップ後のスムーズかつ静 かな再始動と発進である。エンジンストップ時に,ピスト ンを再始動しやすい位置に止め,その位置を再始動時に認 識して制御することが必要となる。ピストン位置検出セン サーとエンジンの負荷制御によって実現している。 スムーズな発進のため,停止中に変速機の油圧を確保す る電動オイルポンプシステムを開発している。 エンジンのスタート/ストップを繰り返すため,エンジ ンの始動装置であるスタータの高耐久化,静音化が重要と なる。日立グループは,スタータの摩耗部品の耐久性向上 と独自の音振動解析技術を駆使した静音化対策も実施して いる。また,頻繁なスタータ駆動に対応し,電流の入出力 が容易なアイドルストップ車専用鉛バッテリも日立グルー プ内の新神戸電機株式会社が提供している。 5. ガソリンHCCIシステム 将来のエンジン新燃焼システムとして,燃費効果の大き いガソリン

HCCIシステムを日立製作所日立研究所で開

発している(図7参照)。 このシステムでは,通常の火花点火(SI:Spark

Igni-tion)による燃焼/運転モードに自己着火(リーン燃焼)

モードを組み合わせている。自己着火は燃焼温度が低いた め,リーン燃焼で問題となるNOxを大幅に削減できる。 これにより,ポンプ損失の低減とリーン燃焼での高効率化 が実現でき,CO2低減の有力な候補となっている。 システムの主要素は,筒内の温度コントロールと,その 最適な温度場に燃料を噴射する筒内噴射技術である。その ために,前述した動弁系(VEL)により,空気と燃焼ガス を筒内に閉じ込めて温度を制御している。

HCCIを実現するには,連続可変動弁(VEL)による運

転モード切換と着火燃焼状態の検出・制御が必要になり, これらの制御と合わせて開発している。 6. おわりに ここでは,日立グループにおける環境対応エンジン制御 システムへの主な取り組みについて述べた。 制御機器の性能およびその制御技術が,燃費や排気に関 するエンジン性能の進展に与える影響は大きい。エンジン の変遷,使用条件などを十分把握したうえで,それぞれの システムに適した製品を提供していく。 1)大須賀,外:低燃費・低排気の筒内噴射エンジン制御システム,日立評論,86,5, 356∼361(2004.5) 2)石井,外:自動車におけるCO2削減技術,日立評論,90,5,412∼417(2008.5) 3)角谷,外:ガソリンHCCI制御システムの開発(第3報),自動車技術会春季学術 講演会前刷集,294,20075134(2007.5) 参考文献 執筆者紹介 大須賀稔 1979年日立製作所入社,日立オートモティブシステムズ株式会社 パワートレイン&電子事業部制御システム設計部所属 現在,筒内噴射エンジンの制御システム開発に従事 日本機械学会会員,自動車技術会会員 黛拓也 1993年日立製作所入社,日立オートモティブシステムズ株式会社 パワートレイン&電子事業部 ECU第一設計部所属 現在,筒内噴射用エンジンコントロールユニットの開発に従事 角谷啓 2002年日立製作所入社,日立研究所情報制御第三研究部所属 現在,自動車エンジン制御システムの開発に従事 自動車技術会会員 エンジンNOx排出量 燃料消費低減率 DI(均質ストイキ) DI(成層リーン) HCCI HCCI制御 ・ HCCI/SI燃焼切換 連続可変動弁による 筒内状態制御 電子制御 スロットル 筒内噴射 エンジン 可変動弁 (VEL) ECU (HCCI制御) ・ 燃焼コントロール 燃焼状態検出による 自己着火制御 図7 ガソリンHCCIシステム

筒内噴射エンジン,VELをベースとしたガソリンHCCIシステムの概要を示す。低NOx で燃費が向上できる。

参照

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