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急性曝露ガイドライン濃度 (AEGL)
Hydrogen Selenide (7783-07-5) セレン化水素
Table AEGL 設定値
Hydrogen Selenide 7783-07-5 (Final) ppm
10 min 30 min 60 min 4 hr 8 hr
AEGL 1 NR NR NR NR NR AEGL 2 0.22 0.15 0.11 0.064 0.048 AEGL 3 0.67 0.44 0.33 0.19 0.14 NR: データ不十分により推奨濃度設定不可 設定根拠(要約): セレン化水素は、室温において不快な臭気を有する気体で、金属セレン化物を酸または水と反応 させることにより生成される(Malczewska-Toth 2012)。元素としてのセレンは工業、農業、製薬 業において幅広く使用されるが( ATSDR 2003)、セレン化水素は商業用には使用されない (Malczewska-Toth 2012)。 セレン化水素は気道に強い刺激を与え、生じた影響は、肺水腫、気管支炎、気管支肺炎へと進行 する可能性がある(Glover 1970; IPCS 1987; Malczewska-Toth 2012)。職業曝露された場合、初期の 影響として、流涙、鼻汁、咳、くしゃみ、胸部圧迫感などの呼吸器刺激症状が認められる。セレ ン化水素が粘膜に接触すると、酸化により元素としてのセレンを生じ、赤色沈着物として出現す る(Dudley and Miller 1937, 1941; Glover 1970; Zwart and Arts 1989)。セレンまたはセレン化合物へ 偶発的に曝露されたヒトでは、呼吸時に明確なニンニク臭が感じられることが報告されており、 これは、呼気中にセレン化ジメチルが排泄されていることによるとみなされている(ATSDR 2003)。 セレン化水素に曝露されたヒトが死亡したという事例を報告している文献は、認められていな い。AIHA(1989)の報告によれば、セレン化水素の臭気閾値は 0.3 ppm である。この濃度では直 ちに嗅覚疲労が生じる。また、複数の職業曝露事例から、セレン化水素の濃度が 1.5 ppm を超え た場合には、作業を続けられないほど激しい鼻および咽頭の刺激症状が生じたが、0.3 ppm の場 合には、数分間顕著な影響を生じることなく耐容可能であったことが報告されている(Dudley and Miller 1941)。
Dudley and Miller(1937, 1941)は、一連の試験において、各群 16~32 匹のモルモット(性別および 系統不詳)を対象に、セレン化水素に様々な濃度で 10~480 分間全身曝露を行い、30 日間経過観
2 察を行った。6.3 ppm を超える濃度において、濃度依存性に毒性徴候が認められ、鼻および眼を 引っかく行動、鼻道からの多量の粘液分泌、呼吸困難などが引き起こされた。顕著な体重減少が みられたが、生存動物では曝露から 8 日後に回復し始めた。48 時間以内に死亡した動物では呼 吸不全および循環不全が認められた一方、5 日後以降に死亡した動物では急性呼吸器症状はほと んど認められず、気管支肺炎が長期間持続した。1 時間 LC50(半数致死濃度)は 3.6 ppm と算出さ れ、100%の致死率は 6.0 ppm で生じた。組織病理学的検査の主要所見としては、脂肪沈着が肝 臓、また肝臓ほどではないが腎臓にみられ、リンパ組織過形成に起因する脾臓肥大も認められ た。1.2 ppm 程度の低濃度で 30~60 分間曝露した場合は、肝病変は認められたが死亡率は上昇せ ず、その肝病変も、曝露後 17~20 日には概ね消失した。 雌雄の Wistar ラットを用いて致死試験がいくつか実施されている。セレン化水素への鼻部のみの 曝露が、様々な濃度および様々な曝露期間で実施され、14 日間の観察期間が設けられた(Zwart and Arts 1989; Zwart et al. 1992)。これらの試験の 1 つでは、117 ppm において、4 分間または 15 分間曝露では死亡が生じなかったが、7.5 分間曝露では 1 匹が死亡した。よって、117 ppm で 15 分以内が致死閾値と考えられる。もう一方の試験では、各群雌雄 5 匹ずつの Wistar ラットを、47 ~74 ppm のセレン化水素に 1 時間曝露した。死亡例が認められ、そのほとんどは曝露後 2 日以 内に生じていた。曝露終了後に認められた濃度依存性の臨床症状は、立毛、被毛の赤変、チアノ ーゼ、半眼、赤色鼻汁、口呼吸、湿性または乾性ラ音、無呼吸などであった。生存動物には、観 察期間全体を通じ、体重減少または体重増加抑制が認められた。例えば、47 ppm では死亡は生 じなかったが、雄 4 匹および雌 2 匹が 14 日間の観察期間全体を通じ体重減少を呈した。剖検で は、試験中に死亡した動物の胃や腸にガスが認められ、死亡および生存動物のほぼ全例で肺の表 面が通常とは異なっており、これに伴って肺の赤変化や斑点形成、無気肺、肺水腫、海綿状肺病 変、肺肥大が認められた。1 時間 LC50は、72 ppm と算出された(Zwart and Arts 1989; Zwart et al.
1992)。1 時間 LC50算出に用いられたデータを検討すると、用量-反応曲線の勾配が急であること
が明白である(47 ppm で死亡率 0%、71 ppm で 20%、74 ppm で 60%)。
セレン化水素の AEGL-1 値は、AEGL-1 として適切なエンドポイントついて動物やヒトのデータ が得られなかったため、推奨されない。臭気閾値として報告されている 0.3 ppm という値の根拠 が明確にされておらず、データが不十分であるため、セレン化水素の特異的臭気認知濃度(level of distinct odor awareness、LOA)も算出できなかった。
セレン化水素のデータは、AEGL-2 値算出においても不十分であった。AEGL-2 値を決定する具 体的なデータがない場合、AEGL-3 値の 3 分の 1 を用いて AEGL-2 値とすることができる(NRC 2001)。この手法を用いることは、ラットの致死データが急勾配の濃度-反応関係を示すことか ら、正当であると判断される。 セレン化水素の AEGL-3 値は、LC01の推定値である 33 ppm に基づいて導出された。この推定値 は、Wistar ラットを用いた試験のデータを対数プロビット解析することにより得られた(Zwart and Arts 1989; Zwart et al. 1992)。Cn × t = k の式を(n の範囲は 0.8~3.5)用いて(ten Berge et al.
3 1986)、値のスケーリングを行った。ラットで得られた全ての致死データを用いてプロビット解 析を行うことにより、n として、試験に基づいた 2.5 という値が算出された。総不確実係数とし て、100 を適用した(種差について 10、種内変動について 10)。一部の生存ラットでは顕著な体重 減少が示されたが、それに至る機序は不明であり、またそれが瀕死状態に結びつくのかどうかも 不明であることから、こうした不確実性に対処するために、種内不確実係数には 10 を選択し た。わずか 2 動物種でしかデータが得られていないこと、またそれらの数少ないデータにより、 ラットは最も感受性が高い動物種ではない可能性が示唆されることから、種間不確実係数には 10 を適用した。 Table 5-1 にセレン化水素の AEGL 値を示す。
TABLE 5-1 AEGL Values for Hydrogen Selenide
Classification 10 min 30 min 1 h 4 h 8 h
End Point (Reference) AEGL-1 (nondisabling) NRa NRa NRa NRa NRa Insufficient data AEGL-2 (disabling) 0.22 ppm (0.73 mg/m3) 0.15 ppm (0.48 mg/m3) 0.11 ppm (0.37 mg/m3) 0.064 ppm (21 mg/m3) 0.048 ppm (0.16 mg/m3) One-third of the AEGL-3 values AEGL-3 (lethal) 0.67 ppm (2.2 mg/m3) 0.44 ppm (1.5 mg/m3) 0.33 ppm (1.1 mg/m3) 0.19 ppm (0.63 mg/m3) 0.14 ppm (0.48 mg/m3) Calculated 1-h LC01 in rats (Zwart and Arts 1989; Zwart et al. 1992) a
Not recommended. Absence of an AEGL-1 value does not imply that exposure below the AEGL-2 value is without adverse effects.
Abbreviations: LC01, lethal concentration, 1% lethality; NR, not recommended.
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注:本物質の特性理解のため、本文書の最後に、参考として国際化学物質安全性カード(ICSC) を添付する。
国際化学物質安全性カード
セレン化水素
ICSC番号:0284
セレン化水素
HYDROGEN SELENIDE
Selenium hydride
(圧力容器)
H
2Se
分子量:81.0
CAS登録番号:7783-07-5
RTECS番号:MX1050000
ICSC番号:0284
国連番号:2202
EC番号:034-002-00-8
災害/
暴露のタイプ
一次災害/
急性症状
予防
応急処置/
消火薬剤
火災
引火性がきわめて高い。 裸火禁止、火花禁止、禁煙 供給源を遮断する;それが不可 能でかつ周辺に危険が及ばなけ れば、燃え尽きるにまかせる;その 他の場合は、粉末消火薬剤、 二酸化炭素を用いて消火する。爆発
気体/空気の混合気体は爆発 性である。 密閉系、換気、防爆型電気および照明設備。 火災時:水を噴霧して圧力容器を冷却する。 安全な場所から消火作業を行 う。身体への暴露
作業環境管理を厳密に! 吸入 灼熱感、咳、息苦しさ、吐き気、咽頭痛、脱力感 密閉系および換気。 新鮮な空気、安静。半座位。人工呼吸が必要なことがある。 医療機関に連絡する。 皮膚 液体に触れた場合:凍傷 保温用手袋 凍傷の場合:多量の水で洗い流し、衣服は脱がせない。 眼 発赤、痛み 安全ゴーグル、または顔面シールド 数分間多量の水で洗い流し(できればコンタクトレンズをはずし て)、医師に連れて行く。 経口摂取漏洩物処理
貯蔵
包装・表示
・危険区域から立ち退く! ・専門家に相談する! ・換気。 ・液体に向けて水を噴射してはならな い。 ・(個人用保護具: 自給式呼吸器付 完全保護衣)。 ・耐火設備(条件)。 ・強力な酸化剤から離しておく。 ・涼しい場所。 ・EU分類 記号 : T, N R : 23/25-33-50/53 S : (1/2-)20/21-28-45-60-61 Note : A ・国連危険物分類(UN Hazard Class):2.3 ・国連の副次的危険性による分類 (UN Subsidiary Risks):2.1 重要データは次ページ参照ICSC番号:0284
Prepared in the context of cooperation between the International Programme on Chemical Safety & the Commission of the European Communities © IPCS CEC 1993国際化学物質安全性カード
セレン化水素
ICSC番号:0284
重 要 デ | タ 物理的状態; 外観: 特徴的な臭気のある、無色の圧縮液化ガス 物理的危険性: この気体は空気より重く、地面あるいは床に沿っ て移動することがある;遠距離引火の可能性が ある。 化学的危険性: 100℃以上に加熱すると分解し、セレン [ICSC0072]、水素[ICSC0001]を含む有毒で引 火性の物質を生じる。この物質は強力な還元 剤であり、酸化剤と激しく反応し、火災および爆 発の危険をもたらす。空気に触れると、有毒で腐 食性のフューム(二酸化セレン[ICSC0946])を発 生する。 許容濃度: TLV:0.05 ppm(TWA); (ACGIH 2004) MAK:0.015 ppm, 0.05 mg/m3; ピーク暴露限度 カテゴリー:I(2); 発がん性カテゴリー:3B; 妊娠中 のリスクグループ:C; (DFG 2004) (訳注:詳細は DFG の List of MAK and BAT values を参照)暴露の経路: 体内への吸収経路:吸入 吸入の危険性: 20℃で気化すると、空気が汚染されてきわめて 急速に有害濃度に達することがある。 短期暴露の影響: 眼、気道を刺激する。この気体を吸入すると肺 臓炎を引き起こすことがある。高濃度の場合、死 に至ることがある。 長期または反復暴露の影響: 肝臓に影響を与えることがある。 物理的性質 ・沸点:-41℃ ・融点:-66℃ ・比重(水=1):2.1(液体として) ・水への溶解度:270 ml/100 ml(22.5℃) ・蒸気圧:878 kPa(21℃) ・相対蒸気密度(空気=1):2.8 ・引火点:引火性ガス 環境に関する データ 注 ・許容濃度を超えても、臭気として十分に感じないので注意すること。 ・圧力容器が漏出しているときは、気体が液状で漏れるのを防ぐため、洩れ口を上にする。
Transport Emergency Card(輸送時応急処理カード):TEC(R)-20G2TF 付加情報
ICSC番号:0284
更新日:1993.09
セレン化水素
© IPCS, CEC, 1993