教育現場 における臨床心理士
‑ 豊かな連携を目指 して ‑ 高原 朗子 ● 尾崎 啓子 =
A s t udyofcl i ni calps ychol ogi s ti nt hef i el dofeducat i on
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Fort heai m off r ui t f ulne t wor k
‑Aki koTAKAHARA暮 Ke i koOZAKIH
キー ワー ド:臨床心理士、連携、教育現場
本研究 の目的 は,2点 ある。第‑ に,文部省が行 うスクールカウ ンセ ラー制度 と臨床心 理士 につ いての理解 を深 めること,第二 に,臨床心理士が教育現場 や地域社会 の中で家族 や他職種 の専門家 と実 り多 い連携 を とるために重要 な点 を検討す ること,である。事例を 4例挙 げて具体的 に検討 を行 った。考察では,効果的な連携 のために必要な こととして, 1)教師 らと適切 な役割分担 を行 い,子 どもの取 り合 いを しないこと,2)専門家同士が お互 いの活動領域,職能 を尊重 しあいっつ協力 してい くこと,3)家族や教師 といった直 接的で狭 い連携 に限 らず,公的な機関や地域 の援助械関 との連携 などよ り広 いネ ッ トワー
ク作 りを目指す こと, などを挙 げた。
Ⅰ. は じめに
日本では長 らく公教育の学校現場 は一種 の聖域祝 されて きてお り,外部の人間が学校内 に入 って何 らかの活動 をす るとい う発想 はほぼ皆無 といえた。従 って,学校教育相談や学 校 カウ ンセ リングの担 い手 は現職教師か教師のOBが ほとん どであ った。 しか し,1985年 にい じめ問題が大 きな社会問題 とな った時か ら,文部省 は,現職教師で はな く,専門家 に よるスクールカウンセ ラーの学校派遣を検討 し始 め,1990年 に日本瞳床心理士資格認定協 会が文部省の公益法人 にな った ことが,1995年 のスクールカウンセ ラー制度発足 に直接的 に関連 した (大塚,1996)。非常勤ではあるが臨床心理士 とい う外部 の専門家 が学 校現場 に導入 された ことは, 日本 の学校 カウンセ リングの歴史 において画期的 な ことと思われ る (村山,1998)。社会の変化 に伴 い,児童生徒が抱 える問題 も多岐 にわた り,複雑化す る中 で,学校 カウ ンセ リングの 「開放」が進んでいる。例えば長崎県 における 「い じめ対策専 門相談員」制度 の発足など,各県独 自の専門家派遣 の取 り組 み も始 ま り,教師 と臨床心理 士 とが連携,協力 して生徒や保護者の相談 にあたる場面が増 えつつあ る。
筆者 らは臨床心理士の有資格者 として, スクールカウ ンセ ラー他 の制度 や機会を使 って 児童生徒や保護者,教師の カウンセ リングを行 った り,相談 にの っている。相談の現場で
*長崎大学教育学部
*
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長崎大学医学部公衆衛生学122 長崎大学教育学部紀要 一教育科学 一 第57号
は,相談者への効果的な援助 を行 うには周囲 との連携 な しには考え られない場面が多 々あ る. そ こで本論文ではG)スクールカウ ンセ ラー制度,臨床心理士 につ いての理解 を深 める こと,(卦臨床心理士が教育現場や地域 において,家族 や他職種の専門家 などと豊 かな連携 を とるために重要 な点 を検討す ること, の2点 を日的 と し,事例 を挙 げて考察す る。
Ⅱ.スクールカウンセラー と臨床心理士
〔スクールカウンセ ラーと、は〕
児童生徒 のい じめや不登校 などの増加 を背景 に,文部省 は 「スクールカウ ンセ ラー活用 調査研究委託事業」を平成7年度 よ り始 めた。 スクールカウンセ ラー配置校数 は年 々増加 し,5年 目となる平成10年度 は全国で1661校であ った。調査研究の委託の流れ と しては, 各都道府県教育委員会が地域 の実態等 に応 じて調査研究校を選定 し,文部省が当該学校を 設置す る都道府県 または市町村の教育委員会 に調査研究を委託す る。スクールカウンセラー の派遣 に関 しては,財団法人 日本臨床心理士資格認定協会 などが協力 している。
以下 に,学校臨床心理士 ワーキ ンググループ (1997)の報告を参考 に して, この事業 の 概要を記す。
1)カウ ンセ ラーの選考 :各都道府県教育委員会 は,児童生徒の臨床心理 に関 して高度 に 専門的な知識 ・経験 を有す る者 をスクールカウ ンセ ラーと して 選考す る。例 えば,財団法人 日本臨床心理士資格認定協会が認 定 している臨床心理士や精神科医,大学教員 など (全体 の約9 割が臨床心理士)
2)勤務内容 :スクールカウンセ ラーは,校長等の指揮監督 の下 に,概 ね以下 の職務を行 う。
①児童生徒‑のカウンセ リング
(診カウ ンセ リング等 に関す る教磯貝及 び保護者 に対す る助言,援助
③児童生徒 のカウンセ リング等 に関す る情報収集,提供
④ その他の児童生徒のカウ ンセ リング等 に関 し,各学校 において適当 と認 め られ るもの
3)配置方式 :原則 として次のいずれか とす る。
①単独校方式 ;スクールカウ ンセ ラーを1校 に配置 し,当該学校のみを対 象 とす る方式
②拠点校方式 ;中学校区程度 の地域 を単位 と し, その域内 にある小学校, 中学校 の中の1校 を拠点校 としてスクールカウンセ ラーを配置 し,域内 の他 の学校 も対象 とす る方式
③巡回方式 ;スクールカウ ンセ ラーの配置校 を特定せず, あ らか じめ決 め てお く対象校をスクールカウンセ ラーが巡回す る方式
4)勤務形態 :原則 として次のいずれか とす る。
①年35過,過 2回,1回あた り4時間 (多年35過,過 1回,1回あた り8時間
③月当た り32時間,年間280時間 (過当た りの回数 は自由) 5)委託期間 :原則 と して2年間
6)調査研究 の内容 :各学校 の実情等 に応 じて,以下の点について,スクールカウンセラー の活用,効果等 に係わ る実践的な調査研究 を行 う。
①児童生徒のい じめや校内暴力等の問題行動,不登校や高等学校中 途退学者の学校不適応その他生徒指導上 の諸課題 に対す る取 り組 みのあ り方
②児童生徒の問題行動等 を未然 に防止 し, その健全な育成 を図 るた めの活動のあ り方
7)調査研究校 における適切な位置付 け :調査研究校 において は, スクールカウンセ ラー を生徒指導 に関す る校内組織等 に適切 に位置づ けるよ う工夫 し, その効果的な活用を図 るもの とす る。
8)委託経費 :文部省 は,予算の範囲内で調査研究 に要す る経費 を委託費 として支出す る
〔臨床心理士 とは〕
今 日の 日本の社会では,子 ど もの不登校やい じめなどの問題,成人の中年期の危横の問 題,高齢者の生 きがいの問題な ど 「心」に関わ るあ らゆる問題が増加 し, その解決のため に他 の何 らかの援助 を必要 とす る場面が増えている。 しか し,我が国 においては長 い こと 心 の問題 を扱 う 「心 の専門家」 とい う考えが確立せず きわめて唆昧なままで今 日に至 って いる。 この ことは 「心」 とい う実態のない ものを対象 と して考 えることがいかに困難であ るかを示 してい ると思われ る。 そのよう.な問題 の解決のために,塩味心理士 という専門家 の養成が この10年行 われて きた。
臨床心理士 とは,高度な心理学的知識 と技能 を用 いて臨床心理査定,臨沫心理面接,臨 床心理的地域援助及 びそれ らの研究調査等の業務を行 う 「心 の専門家」 の ことであ り, 1990年 より日本臨宋心理士資格認定協会 において制度化 された資格を持っ者 を指す。以下 にその概要 につ いて 日本臨床心理士会パ ンフ レッ トや財団法人 日本臨床心理士資格認定協 会 (監)(1998)及 び金沢 (1998)の文献 を もとにまとめてみたい。
(1)臨床心理士 による専門的援助の方法
臨床心理士 としての業務 を遂行す るにあた っては,(》種 々の心理 テス ト等 を用いての心 理査定 (診断)技法や面接査定 に精通 していること,②精神分析的手法 その他の臨床心理 学 に関わ る技法 を適用 して,援助を必要 とす る問題 に対応 していること,③地域の心 の健 康活動 に関わ る人的援助 システムの コーディネーターや コンサルテー ションに関わ る能力 を保持 して いること,④加 えて 自らの援助技法や査定技法を含 めた多様 な心理臨床能力 に 関す る研究 ・調査 とその発表等 についての資質 の商蓑が要請 されている。① について は臨 床心理 アセスメ ン トといわれ る。その内容 は,面接や観察,各種の心理検査などによって その人をよ く知 り, どのような援助の仕方が適切であるかを総合的 に判断することである0
(塾は臨沫心理面接 と呼ばれ る. これは必要 に応 じて様 々な臨床心理学的専門技法を用 いな が ら,心 の問題 に対す る援助を行 うことである。具体的には,心理 カウンセ リング,遊戯 療法,箱庭療法,芸術療法,夢分析,精神分析,来談者中心療法,行動療法,家族療法, 動作法な どを行 う。③ は臨界心理的地域援助 と呼ばれている。心の問題を解決す るために は,個人の心 だけを扱 うのではな く, その人を囲む環境への働 きか けが必要 となることが
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長崎大学教育学部紀要一教育科学一 第57号あ り,専門家 との連携や地域社会への介入がその主 な仕事である。④ はいわゆる臨床心理 学的研究 と呼ばれている.(9‑③ のよ うな実践 をよ り豊か にす るために, その基礎 となる 塩床心理学的研究活動が行 われている。
(2)活動の場 と主 な相談内容
臨床心理士が行 う面接や援助 の技法 は,家族療法や集団療法で代表 され るよ うな個人 を 取 り巻 く家族 システムや集団のあ り方 に働 きかけるや り方 が広 く支持 されている。例 えば 問題 を起 こして しまう子 どもの問題解決場面では子 ど もへの働 きかけのみではな く,子 ど もの家族関係の調整 ・学校関係者への働 きか けなどが行われ る。 また例 えば,障害がある 子 どもや高齢者,精神障害者への社会復帰 を 目的 と した働 きかけでは他 の援助 スタ ッフと の協力が不可欠であ り,臨床心理士 はこれ らの調整役 と して求 め られている。 このよ うな 活動 の場 と しては以下の ものが あげ られ る。
1.教育の分野 として,地方 自治体が設置す る教育研究所,教育セ ンター,教育相談室, 大学の心理教育相談室 ・学生相談室 など
2.私立の相談機関 と して開業心理相談室, カウ ンセ リングセ ンターなど
3.医療 ・保健の分野 と して病院 (精神科 ・心療内科 ・小児科 などの臨床 心理室), 精 神 保健福祉セ ンター,保健所, リハ ビリテーションセ ンターなど
4.福祉の分野 と して児童相談所,女性相談 セ ンター,更生相談所,身体障害者福祉セ ン ター,児童福祉施設 など
5.司法 ・矯正 の分野 と して家庭裁判所,少年鑑別所,少年院,刑務所,警察関係 の相談 室,保護観察所 など
6.労働 ・産業の分野 と して企業 内の健康管理室 や相談所,公立職業安定所,障害者職業 セ ンターなど
そ して もちろん以上 のよ うな分野 はケースによっては重 な りあ うことが多 い ものであ り それぞれの連携が求 め られ る。
次 に主 な相談内容 と しては以下 のよ うな ものがあげ られ る。
1.学校 に関す ることとしては,不登校の問題, い じめの問題,進学や転校 につ いて 2.家庭 内の悩 みに関す ることと しては,家庭内暴力,非行問題,家族関係 の問題,夫婦
親子関係 の ことなど
3.職場 ・仕事 に関す ることと して は,仕事 に行 けない ・身が入 らない,職場 での人間関 係,就職 ・転職時の困 りごとなど
4.性格 ・健康 に関す ることと して は,不安感 ・恐怖感, ノイローゼ,睡眠 ・食欲等の問 題,心因性 の頭痛 ・腹痛 ・筋肉痛 など
5.子 どもや障害児 (者) の育児 ・療育 に関す ることとしては,子 どもの育 て方がわか ら ない,障害児 との コ ミュニケーシ ョンの方法,学習や訓練 の進 め方 など
6.阪神淡路大震災等 の問題を契機 に近年増 えている相談事 としては,緊急災害時 におけ る心 の不安 にまつわること,PTSD (外傷後 ス トレス障害) の問題,現在や将来へ の不安 など
これ らの内容 も単一 の問題のみでな く重 な りあ っていることが多 い ものであ り,複合的 に臨床心理士 は処理 して いかなければな らない。
(3)基本倫理
上記の業務 は全て法律 と職業倫理の範囲内で行われなければな らず,従 って,法律 と職 業倫理 についての知識 とそれ らの遵守 も臨床心理士 には求 め られ る。
臨床心理士 は以上のような活動を 「基本的人権 を尊重 し,専門家 としての知識 と技能 を 人 々の福祉の増進のために用 いるよ うっ とめ, その社会的責任 を自覚す る」ことを定 めた 専門的倫理綱領 を もって,その規約 に沿 って活動 している。
Ⅲ.事 例
臨床心理士である筆者 らが,外部の専門家 と して学校 の内外で教師や医者,家族 と協力 しなが ら面接 にあた った事例を挙 げる。 なお,個人のプライバ シー保護のため,事例 の概 要 は内容 に支障が無 い程度 に変更 している。
1.県立高校 の生徒の事例 について
ここでは,筆者が スクールカウ ンセ ラー (以下
S
Cと略す) として,学校の中で,担任 教師 らと情報交換 しなが ら保護者や生徒 とカウンセ リング した り,教師への コンサルテーシ ョンを行 った事例を2例紹介す る。
<事例1> A 高校1年生 男子 不登校 家族構成 :父,母,柿,A,父方祖父母 の 6人家族
面接 までの経緯 :母親 によればAは幼 い頃か ら学校ではお とな しく, いわゆる"良 い子"
だ った。高校入学後の クラスにな じめず,運動部の部活 に打 ち込 むようにな った。5月の 連休明 けに体調 を くず し,高熱で1週間休んだあと不登校 となる。単発的 に部活 には参加 す るが教室 には入れず,注意 した母親 に暴言 を吐 くようにな ったため母親 が来校。担任教 師の紹介で,学校内で筆者 との面接 とな った。
なお,筆者 は母親来校の前 に部活の顧問教師,担任教師それぞれか らAの状況 を伺 い, 対応を相談 されていた。
カウンセ リングの対象 :母親,父親
カウンセ リングの期間 :Aが高校2年次の1年間 連携 :臨床心理士,家族,担任教師,部活 の顧問教師
経過 :Ⅹ年6月初旬,部活の顧問教師が学校内の相談室 に筆者を訪れた。「Aが先 月か ら 不登校 にな っている様子で心配。部活で は明 るく,練習 も熱心。不登校 とな るよ うな生徒
とは思えない。」とAの状況 を説明 して 「部活 には来 るので何 とか教室 に も入れたい。担任 と協力 したいので,
S
Cに自分 と担任 とのつなぎ役 にな ってほ しい。」と依頼。筆者 は<部 活 に来 るのな ら,顧問の先生 との関係 は切れていないと患 うので, まずはAの言 い分を聞 いてみては ?> とア ドバイス し,S
Cと して担任教師に顧問教師の気持 ちを伝 えた。担任 教師 は 「Aが部活 につなが っているので,無理せず, しば らくは顧問にまかせたい。」と話 し,以後筆者が連絡役 とな り, それぞれの教師 と時々情報交換を しなが らAの経過を見守 っ ていた。6月下旬, Aが完全な不登校状態 とな り,母親来校。母親 は,外出が増 えて友人 宅を転 々としている等,Aの家庭での様子 を話 し,「Aが担任 と会 いたが らな い。S
Cに自分 と担任 とのかけ橋 にな って ほ しい。」と頼 む。
夏休み前 に両親そろって来校。面接の中で,Aに対す るとらえ方や親 としての気持 ちに
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混乱があり,意見の食 い違 いが見 られたため,<例えば夜中に帰 るのは仕方がないが外泊 はだめ, など,家族 として これだけは認め られないとい うぎりぎりの線をルールとして決 めて皆で見守 りなが ら対応 してみては。> と伝えた。夏休み後,母親か ら「Aは随分落 ち 着 いて きた。学校 にはふ らっと行 きたいと言 っている。」と聞 き,担任教師に, クラスの生 徒か らAに電話を して もらうようお願 いす る。顧問教師か らも,部活の先輩か らA宅へ電 話を入れて もらっている旨,知 らされる。2学期半ば,母親か ら電話が あ り,「Aは母親 が
S
Cに相談す るのをいやが っている。 自分 も今 は少 し落ち着 いてAと接す ることがで き るようになった。学校 には しば らく行 けないが,時々電話で相談 したい。」との ことで,以 後数回電話 による連絡。筆者 は母親の了解を得て,その都度担任教師 と顧問教師に母親の 話の概要を伝えた。年末 に母親が来校 し,「母子 ともに落 ち着 いてゆっ くりで きて い る。」′と話 される。年始 には顧問教師より,Aの部活登校を知 らされた。「Aが 自分 か ら, 先 の ことを考えていかねばというようなことを言 い始めた。大会出場を目指 して,練習に身が 入 っている。部活の仲間 とも普通 に話 している。表情 も明 るくな り,変わ って きたように 感 じる。」との ことだ った。Ⅹ+1年2月下旬,筆者の この高校での
S
C活動終了 日間近 に 母親が挨拶のため来校 し,「家族で食卓を囲んで笑 いが出るようにな った。Aは留年 か大 検を受 けるか,具体的に悩み始 めた様子。安心 して見てい られる。今 までは甘やか して育 てたのか と思 っていたが, よ く考えてみた ら,幼い頃か らしっか りしていたのと祖父母の 世話で私が忙 しか ったのとで, む しろ手をかけなさす ぎたと思 った。少 し甘え させてや りたい。」と述懐。
その後,筆者の
S
C活動先が移動 したためAの関係者 との定期的な関わ りは持 っていな いが,母親,担任教師 とは連絡を取 り合 い,連携 していこうと話 し合 っている。<事例2> B 高校3年生 女子 不登校 家族構成 :父,母,柿, ち,妹の5人家族
面接 までの経緯 :養護教師,担任教師によると,1年次 は何事 もな く,2年次 に1学期半 ばで相談室登校。理由は不明。明 るい性格でいっ も笑顔でいるため
「 B
が不登校 になるなんて理解で きない。」養護教師の後押 しで学校行事 に参加 したのをきっかけに,2学期か ら は普通 に教室登校を していた。3年生 にな り,5月の連休中か ら完全 に登校 しな くなった ので,相談部教師がBに
S
C配置を紹介す ると 「会 ってみたい。」ということで6月初旬 に 来校。カウンセ リングの対象 :B
カウンセ リングの期間 :Bが高校3年次の2ケ月間 連携 :臨床心理士,担任教師,養護教師,相談部教師
経過 :Bは 「1ケ月ぶ りに学校 に来た。」とにこにこしなが ら相談室 に入 る。家庭ではみん なが心配 しているが母親の干渉が辛 いこと,学校 に来ない日は家事を手伝 っていることな ど話す。過 2回,筆者の出勤 日に面接をす る約束を し, その日は登校す るようにな った。
またBは前年養護教師 とよ く話 していたというので,筆者 は両者を再 びっないだ。筆者 は 毎回約1時間,Bが焼 いて きたパ ウン ドケーキを一緒 に食べた りしなが ら,彼女の希望や 不安を聞 くという形で接 していた。Bは大学国文科への進学を考えてお り,高卒の資格 は はしいが教室 には入れそ うもないこと,母親 に反対 され るのではないか と心配だが本当は
転校 を希望 していることな ど,話 してい くうちに自分 の気持 ちを固 め,転校 に必要 な出席 日数 を増 やす ために毎 日相談室登校 す るよ うにな り,勉強 に も意欲 を見せた。筆者が不在 の 日には時 々養護教師 に も話 を聞 いて もらっていた。筆者 とともに希望 の転校先 を見学, 担任教師 に情報 を もらうな ど積極的 に動 き,7月 に転校 を決意。夏休 み前 の, ち,母親, 担任教師の三者面談 の折 には,母親 の希望 で筆者 も同席。母親が 「あ と少 しで卒業 なのに 転校 したい とは驚 いたが,夫婦 でよ く話 し合 い,Bの気持 ちを活か したい
。
」と語 る。夏休 み中 に願書 を出 して転校。3ケ月後相談室 を訪 れ 「転校 してよか った。毎 日が楽 しい。」と 元気 よ く話 した。〔事例 1,2のまとめ〕
スクールカウ ンセ ラー制度 は,臨床心理士 の側か ら見 れば,面接室 とい う密室か ら出て 社会 を知 るとい う点 で大 きな意味が あ った といえ よ う。 そ こで は(彰1週間 に 1度,約束 さ れた時間 に,② 1対1で,③継続的 に面接す る, な どの 「治療契約」や 「治療構造」といっ た心理療法 (カウ ンセ リング) にお ける約束 ごとが ほとん ど通用せず, カウ ンセ ラーの臨 機応変 な対応 と周囲 との協力が欠かせ ない もの とな る。 事例 1は, A本人 と筆者 とは 1度 も会 わないままに進んだケースであ る。 A と直接関 わ る母親,父親 の不安 を受 けとめて支 え,教師同士で遠慮が あ った顧問教師 と担任教師 をっな ぐよ うに動 いた ことで,Aの環境・
に少 しずっ変化が起 き,Aがゆ っ くりと自分 を見つ め ることを間接 的 に援助 した と思 われ る。事例2は,Bが周 りを心配 させ まい と して話せ なか った希望 や悩 みを,学校 の中 に居 なが ら学校 の人で はな いとい う立場 の専門家 に話す ことで,考 えが まとまり,勇気 も得て, 新 しい一歩 を踏 み出せ たケースであ る。
S
Cと しての筆者 は,Bと一緒 に動 き,教師や家 族 とBとをつな ぐ環境調整 の役割 を果 た した と思 われ る。2.障害児療育 グループにおける障害児 カウ ンセ リングの事例 につ いて
ここで は,筆者が障害児 と学校以外 の障害児療育 グループ活動 で関わ り,家族 や精神科 医 と連携 を とった事例 を2例紹介す る。 この グループは民間の福祉施設で地域福祉活動 と
して行 っている治療教育 グループで, スタ ッフは母体 とな る施設 の臨床心理士,福祉士, 保母 の他,地域 の学生 ボ ランティアであ り,月2回,無給 で活動 している。運営費 は通 っ て くる障害児 の月謝 (1回1000円程度) で まかなわれてい る。
事例3,4と もに, もともとこの グループで小学校就学前か ら遊戯療法及 び行動療法的 学習訓練指導 の対象児 と して,筆者 がず っと関 わ っていたケースであ る。 中学生 とな り, 本人 の能力 の促進 の問題 だけでない関わ り, すなわちカウ ンセ リング的な関 わ りが必要 と な り,本人 の悩みを聞 いた り母親 に本人 の状況 を聞 くなど してケアを して きた。 その関わ
りの経過 の うち, 中学校就学以降 の部分 につ いて記述す る。
<事例3> C 中学2年生 男子 (学習障害児, IQ123) 普通学級在籍 家族構成 :父,母,柿, Cの4人家族
状態像 :2歳時 に自閉症 で はないか とい うことで母親か ら相談 を受 ける。 当時 は多動 で言 葉が な く, また感情 の コ ン トロールが出来 なか った。母子分離 は母子 ともに難 しく,母親 も混乱 していた。筆者 は母子集団療育 の対象 と して小学校就学時 まで関わ り,小学校就学
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長崎大学教育学部紀要一教育科学一 第57号後 は学習訓練 の対象児 と して関わ る。 6歳時 よ り言葉 を発 し始 めると多動 も多少収 まって くる。 その後学習障害児 と診断 され る。小学校入学後学力がつ いて きて,少 ないなが らも 他児 との交流がで きるよ うにな る。 当時 は砂遊 びをよ くしていたが,後 にC自身が 「あれ
は砂遊 びをす ることで自分のイメージを養 っていた。」と述懐す る。 小学校,中学校 とも普 通学級 に在籍。
カウ ンセ リングの対象 :
C
,母親カウ ンセ リングの期間 :中学入学時か ら2年次 までの2年間,現在 も継続 中 連携 :臨床心理士,精神科医
経過 :中学入学時 には小学校か ら一緒 の友達 もお り, また担任教師の理解 も得 られ,学校 生活 に うま く適応 していた。筆者 には,母親 に もその内容を伝 えないとい う約束で時々相 談 を して きた。余暇 は本屋でアニメを立 ち読 み した り, 自分 の考えた話を漫画で措 くこと
に没頭す る。潜在的 な知的能力 は高 いのに,学習障害故 のア ンバ ランスによ り学力 は低下 す るばか りであ った。 中学1年次の後半 くらいか ら 「今度生 まれ変わ った らこんな子でな く普通 の子 と して生 まれたい
。 」「このままで は死んだ方が ま しだ。」等言 うよ うにな った。
それ と共 に中学2年生 にな った頃か ら不眠 ・チ ックなどの症状が頻発。不眠のため自身 の コ ン トロールが ます ますで きず,学校で もじっとしてい られない状態が続 いた。主治医で 年 1回 はど相談 している精神科医 に診察 して もらい,投薬を開始す ると不眠 は収 まって く
る。 しか し今度 は何 をす るに もや る気がないとい う状態が続 き,学校 に も行 けな くな って きた. ただ し,月2回筆者 らが行 っている療育 グループには釆 たいとい う気持 ちをCが持 ち続 けて いたため,来所 ごとにCと母親 とに時間をず らして面接 し, それぞれの気持 ちを 聞いていった。
現在,筆者の フィール ドの場が移動 したため月2回の関わ りはで きていないが,後続 の 心理士が対応 してお り,時 にはその心理士か ら連絡 を受 けて筆者が スーパ ーヴアイズ しな が ら関係 を継続中である。
<事例4> D 中学3年生 男子 (学習障害児,IQ87) 普通学級在籍 家族構成 :父,母,D,妹,父方 の祖父母の6人家族
状態像 :3歳頃 Z大学病院 にて コ ミュニケー シ ョン障害児 と言 われたとの ことで,母親が 筆者の もとに相談 に来 る。 それほど多動で もないが,座 っている時 はいっ もキ ョロキ ョロ おどお ど して落 ち着 かない様子であ った。 また発語がな く,色 の認知 な ど学習で きていな か った。5歳頃学習障害であると診断 され る。6歳時 に言葉 を話 し始 め る。小学校入学 は 本来 な ら特殊学級か養護学校 の判定 であ ったが,両親 の強い希望 により普通学級 に在籍す ることになる。小学2年時,文字 は書 けないのに国語の授業 で先生が読んだ教科書 の文章 をそ らん じることがで き, クラスの皆を驚かす ことにな った。 これを契機 に学習が進み, 小学校, 中学校 と何 とか普通学級 で過 ごす ことがで きた。
カウ ンセ リングの対象 :D,母親
カウ ンセ リングの期間 :中学入学時か ら3年次 までの3年間,現在 も継続中 連携 :睦宋心理士,家族
経過 :中学入学当初 はや る気満々で,母親 の報告 によれば 「能力的に無理 なのに学級委員 などにす ぐ立候補す る」とい う状態であ った。 ただ担任教師及 び同級生 はで きる限 りDの
そんな積極性 を批判的 に受 けとめず, で きる仕事 はや って もらうよ う対応 を して いたよ う で, い じめ等 の問題 はなか った と思 われ る。小学校 の頃か らそ うであったが,事故のニュー スや近所 の火事 な どには過敏 に反応 し,来所す るといっ もその ことに関す る発言が続 く。
しか し現実 のDの生活 の場であ る学校 につ いて は, ほとん ど発言 がなか った。 中学3年生 の2学期,Dで はな く母親が筆者 に 「実 はDが学校 で突然暴 れた らしいんです。割 りと世 話好 きな女 の子がいて今 までその子 に言 われ るままにや っていたのが, ある日些細 な こと で怒 って学校 の椅子 を投 げ, ガ ラスを割 った らしいんです。 で もDは絶対 そ うした と言 わ ないんです。」と相談 に来 た。 そ こでDと何度か話 したがなかなか本心 を打ち明けなか った。
あ る日 「僕 は高校 は行 かない。就職 す るんだ。」とぽつん と言 った。Dが他者 に対 して能力 の面 で コンプ レックスを持 ってい ることは薄 々わか っていたが, その ことが露呈 された結 果 とな った。母親 はこの話 を聞 くと 「高校 くらいは行 くものだと思 っていた。」と少 しショッ
クを受 けた様子 であ ったが,筆者が,高校 に行か な くて も本人 の興味 に合 わせ た職場 を見 つ けるの は難 しいが不可能 で はない こと, また状況 によ って は大検 で大学進学 への道 を考 え ることもで きるので はないか等話 をす ると納得 す る。 その後母親 を通 して担任教師 に も Dの状態 を伝 え,進路 の話が落 ち着 いて くると,突然 の暴力 は全 く出な くな った。本事例 も筆者 の フィール ドの場が移動 したため月2回 の関わ りはで きな くな ったが,後続 の心理 士が対応 してお り,時 にはその心理士か ら連絡 を受 けて筆者 が スーパ ー ヴアイズ しなが ら 関係 を継続 中であ る。
〔事例3,4の まとめ〕
障害児 の カウ ンセ リングの場合, その障害 につ いての理解 と周 りへの働 きか けが重要 に な る。加 えて これ らの事例 の場合,知的 にはほとん ど問題 がないとい うこともあ り,本人 自身 の障害 の受容 につ いての援助 や家族 の理解 が求 め られ る。 ここでのや り方 によ って, 彼 らが今後 いわゆる健常者 と して生 きてい くか障害者 と して生 きてい くかの分かれ 目にな ることを援助者 は自覚すべ きであ る。本論 で紹介 した2事例 は学校関係者 との直接的 な連 携 は行 っていないが,事例 によ って はそれが必要 にな る場合 も多 いと患 われ る。 その時 に
はそれぞれの職能 を尊重 しあいなが ら適切 な援助 を行 って いかなければな らない。
Ⅳ.考 察
〔連携 につ いて〕
教育現場 での箆床心理士 とその他の職種や親 との連携 につ いて,学校 の中 と外 との場合 別 で順 に考察す る。
まず臨床心理士 の学校内での連携 につ いてだが, その相手 は主 に教師 (管理職,養護教 師 を含 む),親 とい うことにな るであろ う。 子 ど もへの援助 を考 え る時, 学 校 と家 庭 は ど ち らも欠かす ことがで きない ものである。教師 と親 が互 いに連絡 を取 り合 い,子 ど もに対
して様 々な方 向か ら働 きかけを してい くことが,援助 にとって有効 とな る場合 も多 い。 い ろいろな意味で問題 を抱 えた子 ど もに関わ る人 すべてが, その子 ど もにとっての人的資源 で あるとい うと らえ方 に立てば,学校 に臨床心理士 とい う新 しい 「資源」 が入 ることは, それだけ援助 のバ リエーシ ョンが増 え ることにな る。例 えば本稿の事例1に見 られ るよ う に, 臨床心理士 が直接的 に教師や親 と関わ るだけでな く,教師 と教師,教 師 と親 をっ ない
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でい く仲介役 とな る場合 もあ るし,事例2のよ うに,子 ど もと教師,子 どもと親 をつ な ぐ 役割 を とることもある。学校医の活用など, その他 の人的資源の開発 ・活用 も,臨床心理 士の大切 な活動 の1つ となるであろう。
鵜養 (1997)は,臨床心理士が学校の中で活動す るメ リッ トと して,子 ども本人 に対す る治療的な関わ りと環境調整が同時 に可能 にな る点 を挙 げている。子 どもにとって学校 は 生活空間であ り環境 である。 その同 じ空間 に身 を置 き,味わい,情報を集 め,考 え,現実 的 に動 き,子 どもの役 に立 ってい くことが可能 になるの は,臨床心理士が学校 に入 る意義 の1つ といえよ う。 そ してその活動を支え るのが教師 との関係であるため,子 ど もの現実 に関 わ る教師 と,子 どもの内面世界 に関わ る臨床心理士 とのチームワークが重要 とな る0
チームを組んで役割分担がで きると, カウ ンセ ラーが仲介役 とな り,必要 に応 じて子 ども の状態や気持 ちを教師に的確 に伝え, それを もとに教師 は自信 を持 った指導 を展開す るこ とがで きるよ うになる。 ただ し,役割分担 をす る上 で,教師 (特 に担任教師) と子 どもの 取 り合 いを しないことが もっとも大事 なポイ ン トとな る。子 どもに対す る関わ りの 目的が 子 どもの適応 と発達 の援助であることを確認 しあい, その日的遂行のための連携 であるこ とを常 に認識す るように話 し合 っていれば, その目的 に対す る双方の立場 と関わ り方 の独 自性 を理解す ることは難 しくないと思われ る。学校の中での連携を効果的な もの にす るた めには,教師 と臨床心理士 のどち らかが どち らかの上 に立 ち指導,助言 をす るとい うよ り は,専門家同士が協力 して子 どもの問題解決 に取 り組 む とい う姿勢 を持っ ことが重要 であ ろう。
次 に,学校 の外での連携 について考えてみ る。
現代社会の変化 に応 じて子 どもを取 り巻 く環境 も複雑化 し,子 ど も本人の努力 は勿論 の こと,親や教師など周囲の人間が協力 して取 り組んで も解決 しに くい問題が起 こる可能性 は高 まる一方 である。 また近年, たとえ臨床心理士が関わ ったと して も,学校 とい う現場 で はで きない治療,ふ さわ しくない関わ り方,重 いケースなどにぶつか る可能性 も出て き た。 それゆえ学校だけでは不十分な部分 を他 の機関 に委託す ることが必要 にな って くるが 学校現場 は意外 に他機関 につ いての情報が十分でない場合がある。 ここに,臨床心理士 の 出番 の1つ として,学校‑の他機関の情報伝達 と学校外での連携の コーディネー トがある といえよ う。臨床心理士 は,医療機関や教育相談機関,産業部門な ど社会のさまざまな領 域 で活動 しているので,普段か らお互 いに情報交換や連絡調整 を重 ねてお き,各機関の特 敬,受 け られ るサー ビスの内容,利用の手続 きとい った業務内容や,学校現場 に対 す る理 解 の程度 な どをよ く知 ってお くことが必須である。 また連携 の基本 は信頼関係 とも言え る ので,「顔 の見 える連携」 のため, 日頃か ら学校 を含 めた各横関で働 く人 々 との人 間 関係 を築 く努力が大切 だと思われ る。 この時相談 に来てい る子 どもの状態 の改善 のための連携 とい うことを互 いに確認 しあい,子 どもの取 り合 いを しないことが ポイ ン トであ ることは 学校の中での連携 と同様である。 さ らに大野 (1997)が指摘す るように,子 ど もの成長 に 役立っ連携 とは必ず しも連携 している者 同士が数多 く連絡 しあ うことではな く, ケースの 内容やプ ロセスに応 じて タイ ミングよ く協力 しあ うことであ り,時 には信頼 して まかせあ
うこと も連携 の1つであ ると考 え るとよ り現実的であろ う。
鵜養 (1997)によれば,教育現場 に関わ る臨床心理士の業務の特徴 は, ひとりの子 ども を取 り巻 いてその子 ど もに関わ っている人 々の中にいて, それぞれの人の持 っている教育
力,治癒力を最大限 に引 き出す とい うことにある。 また臨床心理士が,持 て る人的資源 を 組織 し, そのネ ッ トワー クの核 とな ってそれぞれの機関 をっ な ぐよ うに動 ければ, ネ ッ ト
ワークはよ り機能 す るので はないだろ うか。加 えて豊 かな連携 を作 るには,家族,教師, 医者 との直接的で狭 い連携 に限 らず,児童相談所 のよ うな公的な機関 との連携 や地域 の子 ども会 のよ うな援助横関 に子 どもを託 しつつ見守 る連携 も考 え, よ り広 いネ ッ トワーク作 りを目指す必要性 があるであろ う。本稿 の事例3,4に示 した通 り,臨床心理士 自身が地 域 の援助機閲の担 い手 とな って,親 を支援 してい く活動 も重要である。 その際 にはお互 い
の活動領域,職能 を尊重 しあいっつ,協力 してい くことが大切 なのは言 うまで もない。
〔今後 の課題〕
連携 を実 り多 い もの とす るための課題 と して,以下 の5点 を挙 げてお く。
① ネ ッ トワー クを作 ること。
臨床心理士 の専門的援助 の方法 の 1分野 であ る臨床心理 的地域援助 と して環境への働 き か けを行 うために,臨床心理士 同士 の連携 は もちろんの こと,多様 な職種間の ネ ッ トワー
クを作 り,育てて い くことが肝心 であ る。
②臨床心理士 に対す る周囲 の期待 のずれの修正。
臨床心理士 は 「心 の専門家」とい うイメージが浸透す るにつれ,保護者や教師か ら, 1 度 の面接 で問題解決 に導 くことがで きるとい った,魔術 的な期待 とも言 うべ きものが感 じ
られ る場合が ある。臨床心理士 は周囲の人 々 と積極的 に関わ り, カウ ンセ ラー自身や カウ ンセ リング活動 につ いて理解 を求 め ることが必要 とされ るd
③守秘義務 につ いて。
連携 とカウ ンセ リングを考 え る時 に問題 にな るのは,秘密 の保持 に関す ることである。
相談者 のプ ライバ シーに関す る事柄 につ いて は十分 な配慮が必要 だが,狭義 の守秘義務 に とらわれず,学校全体,連携先全体 で守 るとい う姿勢 を臨床心理士が伝 えてい くことが大 切である。
④ スクールカウ ンセ ラーな どの制度 の定着。
文部省や都道府県 の教育委員会 などを主体 と した専門家派遣 の取 り組 み は, まだ歴史が 浅 く,教育現場 に十分 に浸透 しているとは思 われない。大規模 な予算 がつ くスクールカウ
ンセ ラー派遣 で さえ調査研究 の段階で あるため,派遣先 の学校 に もとまどいや混乱が見 ら れ るケースは多 々あ る。今後, これ らの制度や派遣事業 を意義深 い ものに育 てて いき,宿 用価値 を高 め るためには,現場 の協力 とともに,臨床心理士 自身の 自覚 と努力 も欠 かせな
い ものであ るといえよ う。
⑤ スタ ッフの充実。
臨床心理士 の有資格者 は全国で も未 だ1万人 に達せず,人数が少 ない。専門家 を求 め る ニーズに答 え,社会 の様 々な領域 で活躍 す るためには, まず有資格者 の人数 を増 や し,適 切 な専門教育 を行 い続 けてい くことが急務 であろ う。
参考文献
1)池田顕吾 ・高原朗子 (1997)学習障害児の自己決定を支える援助 システム‑ 精神薄弱者更生施 設による地域福祉活動‑ 日本特殊教育学会第35回大会発表論文集p486‑487
1 3 2
長崎大学教育学部紀要 一教育科学 一 第57号2)鵜養美昭 ・鵜養啓子 (1997)学校 と臨床心理士‑ 心育ての教育をささえる‑
ミネルヴァ書房
3)氏原寛 ・村山正治 (編)(1998)今 なぜスクールカウンセ ラーなのか ミネルヴァ書房
4)大塚義孝 (宿)(1996)スクールカウンセ ラーの実際 こころの科学増刊
5)大野弘之 (1997)教育研究諸機関におけるカウンセ リングと学校 との連携 学校カウンセ リング (氏原寛 ・谷 口正 己 ・東山弘子 (編))p159‑189 ミネルヴァ書房
6)尾崎啓子 (1999)触媒 としてのスクールカウ ンセラー ‑ 不登校3事例を中心 として‑
九州海床心理学会第27回大会発表論文集p36‑37
7)金沢吉展 (1998)カウンセラー 専門家 としての条件 誠心書房
8)学校臨床心理士 ワーキ ンググループ (1997)スクールカウンセ ラー ・学校臨床心理士の活動 と展 開
9)財拭法人 日本臨床心理士資格認定協会 El本臨床心理士会パ ンフレット
10)財団法人 日本臨床心理士資格認定協会 (監)1998塩床心理士 になるために
ll)村山正治 ・山本和郎 (編)(1996)スクールカウ ンセラー‑ その理論 と展望‑
ミネルヴァ書房