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外国語学習における意味転移(semantic transfer) と統語的要因

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(1)

外国語学習における意味転移(semantic transfer) と統語的要因

著者 川出 才紀

雑誌名 主流

号 45

ページ 98‑116

発行年 1984‑02‑20

権利 同志社大学英文学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014961

(2)

98 

外 国 語 学 習 に お け る 意 味 転 移 ( s e m a n t i c  t r a n s f e r ) と統語的要因

川 出 才 紀

I 序

本稿では,外国語学習における LanguageTransfer  (L T)の問題を扱う.

LTは一般的に言って,学習者の母国語知識が外国語学習に影響することを 指し,その効果はプラス或いはマイナスである.本稿で取り上げるマイナス の LTは,従来,干渉(interference)と呼ばれてきたものであり,過去20 年間, 外国語学習研究家たちのあいだで論争の的となってきた問題である.

(末尾の参考文献 Lado 1957; Stockwell and Bowen 1965;  Corder  1967;  Selinker 1972; Taylor 1975; Dulay, Burt and Krashen 1982を参照).

Taylor (1975)は,学習レベルと LTとの関係を研究し,学習レベソレが 上がるにつれ, LTの影響は弱まり,逆に普遍的な認知ストラテジーである 過剰般化 (overgenera1ization)がめだっ点を指摘した.Taylorは,認知学 習理論を踏まえ,

r

学習者は仮説検証の過程を通して外国語を学ぶが, その 際,既知の知識に影響を受けるのである.学習初期段階では,母国語知識が 仮説の源泉になる.が,学習が進むにつれ,母国語知識とは無関係に外国語

に対する仮説を立てる乙とが可能になる」という説明を加えた.

Taylorの研究の意義は, LT に条件づけを加えた点にある.即ち IfA, 

then B"の思考法から IfA, then B under conditions X, Y, Z" の思考 法に移る方向を示したといえる.が, Taylorが扱ったのは統語上の誤りで ある点を明記しなくてはならない.Dulay, Burt and Krashen (1982)は, LTの影響は学習レベノレに関係なく英語形態素の習得領域において弱いとい

(3)

99  外国語学習における意味転移 (semantictransfer)と統語的要因

の習得領域において Taylorは統語 (syntax)

J点、を示しているのに対し,

学習レベノレと LT には負の相関関係がみられるという点を明らかにし は,

どの言語カテゴリー(たとえば形態素,

LT現象は,

乙こでの示唆は,

音韻〉をみるかによって異なった結果が生まれるという点である.

主主王五 ([lIuロt

阿部・田中 (1983)は,以上の点を踏まえて Semantictransfer hypothe‑

sis  (STH)を提案した.即ち,①意味の習得領域Clexico・semantic devel‑ であり,②学習レ ベルに応じて量的には誤りの数は減少するが,図1が示すように,学習が進 んでも LT に起因する意味上のエラーの割合は比較的一定であるというの

LT は極めて重要な現象(制約) においては,

opment) 

がSTHの主旨である.学習レベノレに応じて誤りの数そのものは減少するで による誤 特に上級者の場合には ST

誤りの原因を考慮した際,

あろうが,

は,彼らの英語の りが大半を占めるという乙とになる.阿部・田中 (1983)

前置詞研究から,乙の点に対する実証的証拠を与えている.

阿部・田中 (1983)では,他の研亮同様に, syntaxとsemantics しかし,

が充分扱われていない.単語は言語コンテクス (intraction)

とのかかわり

トの中ではじめて用いられているのであって,特に前置詞(位置詞〉のよう

1

民ソ:~transferの影響 監温道週を受けたもの

学習レベル

100% 

90% 

誤 り の 量

(4)

100  外国語学習における意味転移(semantictransfer)と統語的要因

な機能語においてはそうである.学習者は,特定の単語の意味に対して,コ ンテクストを無視して理解しようとするのではなく,恐らく言語構造上のコ ンテクストとの関係においてその意味を考えるのであろう.したがって,

syntaxとsemanticsとのかかわりにおいて LT現象を研究する意義が生ま れてくる.我々は, syntaxと semanticsとのかかわり(interaction)にお いて LTを研究するアプローチを Semanticssyntax interaction  CSSl)と 呼ぶ乙とにする.SSIアプローチ研究は進んでいないので,乙こでは試案に とどめるが,以下で Johnwent for a swim to  the river.などにみられる toの誤用に焦点をあわせて, SSI に対する実証的証拠を扱う.

II  Semantics Syntax Interaction (SS1)  まず以下の文を考えてみよう.

① John [  went [  to the river]  [  for a swim]] 

v p   pp  p p  

② John [  went [  for [  a swim [  in the rivr]]]]

VP  PP  NP  PP 

①と②は異なった構造をもっ.即ち①においては [tothe riverJと[fora  swimJは独立した PP(前置詞句〕であるのに対して, ②の (inthe riverJ  は NPC名詞旬〕である aswzmを後置修飾し,全体として前置詞句 for の目的格補語である NPを形成している. 筆者の行なった高校一年生の作 文の分析から,学習者は②の znの代わりに toを用いる傾向が強くみられ るが, この場合 toの誤用を如何に解釈するかが問題となる.統語上の解釈 では goto NPは学習者にとってひとつのパラ夕、、イムであり,①と②の比 較にみられる統語上の制約にかかわらず彼らはそのパラダイムを用いたのだ といえる.即ち①から類推して②の構文を下のごとく③と分析したと考えら

n

る.

(to) 

③ John  [ went  [  for  a swim]  [ 一一一一 theriver]] 

w  n  n 

したがって英語の文法からみれば③での toの誤用は統語的な誤りであると いえよう.

(5)

外国語学習における意味転移(semantictransfer)と統語的要因 101  しかし上記の統語上の説明だけでは不充分である.なぜなら日本語での相 当文を考えた際, 意味的要素が浮びあがってくるからである. まず④で明ら かなように, 英語において go~ζ 続く要素は位置詞/方向詞Clocative) の toのみではない.

④ John went to  the river for  a swim. 

John went swimming in  the river.  John went for a swim in the river. 

これに対して日本語では⑤で示されているように, 必ず位置詞/方向謂へ/

に[十方向]が動詞のイクと共起する.

⑤ [...NPへ/に[十方向]...イク]

たとえば⑥の文は日本語では非文法文である

⑥ネジョンは川の中で泳ぎに[一方向]行った. これはイクと共起する へ/に(位置詞〕が文中にないからである.また⑦にみられるように,

語の統語で語順の移動が比較的自由である点は注意しておきたい.

日本

⑦  iジ ョ ン は 川 へ 泳 ぎ に 行 っ た .

11川 へ ジ ョ ン は 泳 ぎ に 行 っ た .

111泳 ぎ に ジ ョ ン は 川 へ 行 っ た .

lV川 へ 泳 ぎ に ジ ョ ン は 行 っ た .

つまり動詞のイクと共起する NPへ/に[+方向]が文中にあらわれるとい う条件を満たすことは重要であるが, 語j慣は英語の場合と異なり自由である.

英語では①と②の比較で明らかなように, 前置詞句の位置によって文法性が 変わってくる.

さて動詞のイクと NPへ/に[+方向] の共起は意味領域の問題である.

意味分析から, " /巨[+方向]は芙語の to/ towardと結びつく.実際,

白木入学習者は to=へ/に[+方向]の等式を内在化しがちである. したが って③における toの 使 用 は し.NPへ/に[十方向]. . .イク]の関係を英 語に転移したものと考えられる.が,問題の言語現象において,先程も述べ

(6)

102  外国語学習における意味転移(semantictransfer)と統語的要因

た通り,日本語の統語上の制約の方が英語のそれよりも弱いといえ(たとえ ば日本語では語順が比較的自由である), したがってへ/に[+方向]:o:>toの 意味転移も統語上の問題との関係において明らかにされなくてはならない.

日本人学習者のデータを母国語話者のデータに照らしあわせることによっ て,①へ/に[+方向]今to現象の程度,②①の起る条件,及び③文法性に 対する学習者の sensitivityを明らかにする乙とができる. 我が国で英語を 学ぶといった外国語学習者のコンテクストでは,母国語の影響は一般的に強 いとされているが, 英語の inputを充分に取り入れることのできる環境で 英語を学習する日本入学生の場合, SSIの枠で捉える semantictransferの 影響はどれ程強いであろうか. 乙の問題を念頭において, New Yorkでア メリカンスクールに通う日本人学習者〔小・中学生42名)からデータを得たか (文法性の判断を行なうためには,目標言語 (TL)においである程度のレベ ル (thresholdlevel)に達しているととが必要であるというのが,アメリカ で生活する日本人を選んだ理由のひとつでもある.)母国語話者のデータは 12人のアメリカ人インフォーマント(全員東部米語方言の話者〕から得た.

アメリカ人インフォーマントは, 42名の日本入学習者と同様に⑧の規準を沼 いて18個の文の文法性を判断した. (付録1参照. ) 

@ A  Grammatical and colloquial  B  Ungrammatical 

C  Grammatical but not colloquial 

盟 結 果 分 析

まず12名のアメリカ人インフォーマントの反応からみていきたい. 表1‑a で明らかなように, 文法性の判断において100%の一致を得たのは@, @ 

⑥,①,⑪,⑨である.

文法性に対する感受性 (grammaticalitysensiti vity)には個人差があり, し かも,地方・社会方言によって文の容認牲 (acceptability)が変化する点は

(7)

外国語学習における意味転移(semanticHnsfer)と統語的要因 103  表1‑a母国語話者(N=12)の反応のまとめ

¥ 

( ( (人) (%) (人) (労)

12  I (100) 

。 。

b  1  ( 8)  9  ( 75)  2  (17)  c  12  (100) 

。 。

d  10  ( 83) 

2  ( 17)  e 

(17)  10  ( 83)  f  10  ( 83) 

2  ( 17)  g  ( 8)  3  ( 25)  8  ( 67)  h 

11  ( 92)  1  ( 8) 

。 、

10  83)  (17) 

2  ( 17)  10  ( 83)  k 

。 。

12  (100) 

12  (100) 

。 。

12  (100) 

5  ( 42)  ( 58) 

11  ( 92)  1  ( 8)  12  (100) 

。 。

1  ( 8) 

11  ( 92)  2  (17) 

10  ( 83)  73  ( 34)  65  ( 30)  78  ( 36) 

*注:各例文 (a‑r)については,付録を参照。

言語研究家たちのあいだでよく知られている通りである. したがって本研究 では「加匁以上(即ち12人中10人 以 上 〉 を も っ て 各 文 に 対 す る 母 国 語 話 者 CNS)の文法性判断の操作定義とする.

表1‑aから,英語では次の一般的規則が働いていることが明らかになる.

①i CNP [ +subject]. . . go [to  NP]...)  ii  (NP [ + subject] . . . go[to NP]...) 

即ち動詞の goと前置詞句 toN Pが文中で共起する場合,次の制約(∞n‑ straint)が働く.

(8)

104  外国語学習における意味転移(semantic仕 組sfer)と統語的要因

② goの直後に toNPがくる.

ii  to NPが文中の主語である NP[subjt]の直前に倒置される.

制約iで強調すべき点は goとtoNPのあいだになんらかの言語要素が介 在した場合,非文法文 B になるということである. したがって(⑥), @, 

①,@は我々のインフォーマントの判断によれば非文法文である.また倒置 文①,⑮の結果がそれぞれ

C

B

と異なるのは,以下のような

DS

[深層 構造]をもつからであろうと思われる.

③①, 

DS 

John went to  the river for  a swim. 

@ l '   DS 

John went swimming to the river. 

F

NS

にとって ac ptableであるのに対して⑪F は(⑥⑥①⑨の文の 場合と同様の理由で〕そうではない.つまり英語では構造上の特性(特に語 順〕が文法性判断において重要であり,日本語の場合とは異なる.

表1‑aにみられるように 12人中10人のインフォーマントが下文④を文 法文 Aであるとしている点は注意すべきであろう.なぜなら先に述べたよ うに withBillの介在によって inthe river]を aswim]の後置

p p  

修飾語句と(表層)構造上みなすことができないからである.

④ John went [for  a swim]  [with Bill]  [in  the river]. 

しかし母国語話者の(言語的)直感では [for [  [a swim]α[in the riv‑

NP 

er]] ]が正しい意味解釈である.表1‑aの ① を C [文法的ではあるが普通 用いない]と判断した2人のインフォーマントによると,⑤が普通の英文で あるという.

John went for  a swim in  the river with Bill. 

彼らの直感が正しいとすれば,⑤が④の baseformであり, sty listic  rule  によって withBillが aswimと inthe riverの聞に介在したと考えら れる.表1‑aの⑦を C と判断した2人のインフォーマントは表1‑aの⑥を やはりCと判断している点は興味深い.が, ここでは乙の問題に深入りせず,

(9)

外国語学習における意味転移(sernantictransfer)と統語的要因 105  我々の大多数 (80%)のインフォーマントが④を英語として全く普通の文A であるとみなしている点を指摘するにとどめる.強調すべき点は,表1の⑥,

⑥,⑦,①にみられるように with Billの介在が母国語話者の文法性判断 を不定 (variable)にする要因になっているということである. (特l乙⑥にお いて9入が Bと判断しているのに対して 1人は A,2人は Cとしたため f80%の一致率」に満たなかった点は興味深い.) 

我々のインフォーマントの判断によれば,with Billを含まないテスト文 のうち以下の3つが全く自然な英文 A である. (表1‑aの①は以下の文と 意味が異なるので乙乙では省略する.) 

⑦ John went to the river for  a swim. ③  ii  John went for a swim in  the river.  @  iii  John ωent swimming in  the ri ver. ⑨ 

インフォーマントは全員⑦111が最も典型的な文 (Exemplar)であると指摘 した. 乙乙では次の2点が示唆されている.まず,母国語話者とのやりとり において英語学習者が最もよく耳にする可能性のある文は⑦11lということ である.次に通常,特定の意味をあらわす言語表現は n 個あると考えられ るが,母国語話者のあいだで一致する 1対1の意味=形式 (form)の関係が あるという可能性である.我々はこの可能性を Exemplar(E)原理と呼ぶ ことにする.⑦の3個の文の中で最も basicで通常用いられる文はどれかを 母国語話者に問うた場合,ほぼ全員が⑦111を選ぶ傾向がある.

言語学的に E原理が働く場合を無標 (unmarked),with Billの介在や 倒置のような, E原理に対抗する要素が働く文,また Exemplar以外の文 を有標 (marked)であるといえる.したがって表1‑aの18個の文は,無標 の⑨を除きすべて有標である. しかし,有標の文の中にも有漂の度合い (de‑ gree of markedness)があると考えられる.恐らく有標の度合いを決定する のが withBillの介在や倒置であるといえよう.これらの点を念頭に入れて 表1‑aの特徴分析をすれば表1‑bになる.

(10)

106  外国語学習における意味転移(semantictransfer)と統語的要因 1‑b

went一一一 倒 置 for  with  for  went to  went  in the  tothe river  SWlmmlng  Bil!  aSWlm  the river  sWlffirrung  nver 

BC 

BC 

A* 

1

BC 

B>BC>C>A  結 果

B? 

A? 

BC  A? 

BC  B? 

BC 

*注:①の深層構造はJohnentto the river for a swimと考えられるのでと乙 ではBではなくAとなる。

我々にとって関心のあるのは,母国語話者の Exemplar と外国語学習者の Exemplarが一致するか否かということである.以下では表1‑aのアメリ カ人のデータを参照しながら,日本人学習者の18個のテスト文に対する反応 をみていきたい.

表2では日本人学習者42人の反応がまとめられている. 表1‑aと比較し た場合,表2には反応のバラツキ(variation)が強くみられる.これは日本 入学習者の英文に対する文法的直感 (grammaticalintuition)の不安定さを 物語るものであろう.日本人学習者の場合,母国語話者と比べて BとCの 差があまりはっきり出てこないのは nativeでないが故に ungrammatical

とgrammaticalbut not colloquialの区別がつけにくいからであろう. しか し,いくつかのパターンが表2から浮びあがってくる.

(11)

外国語学習における意味転移(semantictransfer)と統語的要因 107  表2 日本入学習者(N=42)の18個の文に対する反応

¥ 

(人) (%  ( (% ( (%) 

30  (71)  2  ( 5)  10  (24)  b  15  (36)  11  (26)  16  (38)  9  (21)  17  (40)  16  (38)  d  19  (45)  13  (31)  10  (24)  9  (21)  14  (33)  19  (45)  (19)  19  (45)  15  (36)  24  (57)  11  (26)  7  (17)  17  (40)  18  (43)  7  (17)  20  (48)  7  (17)  15  (36)  5  (12)  20  (48)  17  (40)  k  7  (17)  11  (26)  24  (57)  22  (52)  8  (19)  12  (29)  (19)  16  (38)  18  (43)  21  (50)  11  (26)  10  (24) 

(14)  20  (48)  16  (38)  26  (62)  5  (12)  11  (26)  9  (21)  18  (43)  15  (36)  (17)  25  (59)  10  (24)  'z  262 

(34.7)  246  (32.5)  248  (32.8) 

注 A 英語として文法的に正しく普通用いられる文 B 英語として文法的 K正しくない

C英語として文法的に正しいが,普通用いられない + Exernplarの特性

(v) went to the river (E)  (w) went swirnrning (E2) 

‑Exernplarの特性 (x) went for a swirn  (y)倒置

z) with Billの介在

+Exemplar  (v) 

(w)  (v) 

(v) 

(w)  (w) 

(v) 

(w) 

(w) 

(w)  756 

‑Exemplar  (x) 

(x)  (z)  (x) 

(z)  (y)  (x)  (z) 

(z)  (x)  (y) 

(y) 

(y) 

(x) 

(x)  (y)  (y) 

まず,へ/に[+方向]二>toの semantictransferがどれ程強いかをみて みよう.表 3では川へ/に(行く〉にあたる tothe riverを含む文が選択 されており,各文に対する日本人学習者の反応が,12名のアメリカ人インフォ

(12)

ドー αD  字国制特凶hn弘山ミ向山川判明汁抑制明(858昨日口可自由同町吋)作詩刑制尽酬明図

to the river(j"~

.s 

[十方向])を含む文に対するアメリカ人(N=12)日本人(N=42)の反応の比較データ A+C B+C  日本人(J)アメリカ人(N) 人%人労人%人%5/ハ。 30 (71) 12 (100) 5) 

。(

0) 10 (24) 

。(

0) 40 (95) 12 (100) 12 (29) 

。(

0)  15 (36) 8) 11 (26) 91 75) 16 (38) 21(17) 31 (74) 25) 27 (64) 11 92)  (21) 

0) 14 (33) 21 17) 19 ( 45) 10 83) 28 (67) 10 83) 33 (79) 12 (100)  24 (57) 8) 11 (26) 31 25) (17) 81 67) 31 (74) 75) 18 (43) 11 92)  17 (40) 

0) 18 (43) 11 92) (17) 8) 24 (57) 8) 25 (60) 12 (l00)  20 (48) 

0) (17) 10 83) 15 (36) 21 17) 31 (74) 21 17) 20 (48) 12 (100)  (12) 

0) 20 (48) 21(17) 17 (40) 10 83) 22 (52) 10 83) 37 (88) 12 (100)  (17) 

0) 11 (26) 

。(

0) 24 (57) 12 (100) 31 (74) 12 (100) 35 (83) 12 (100)  (19) 

0) 16 (38) 12 (100) 18 (43) 

。(

0) 26 (62) 

。(

0) 34 (81) 12 (100)  (14) 

0) 20 (48) 11 92) 16 (38) 8) 22 (52) 8) 36 (86) 12 (100)  }; 139 (33) 14 12) 130 (31) 60 50) 117 (35) 46 38) 286 (69) 60 50) 277 (67) 106 88)  表3 J:ヱ=416  N:玄=120 

(13)

外国語学習における意味転移(semantictransfer)と統語的要因 109  ーマントの反応との比較において示されている.母国語話者が表3の@だ けを A とみなしているのに対して, 日本人学習者の場合,B 或いは Cと みなされる他の文をも A と判断する傾向があらわれている.表3にみられ る母国語話者と日本人学習者の A と

B

IC対する反応ノfターンには統計的 な有意差がみられる (X2(1)

19.75, p.く001).表3で示されているデータ はおおむね semantictransfer  (ST)理論を支持するものである.(E以外 の文で,母国語話者がかなり断定的にBとしたものでも,日本人学習者は C とし, また母国語話者が A としたものでも学習者は C とする傾向がみ られる.これは E以外の文はあまり耳にしないといった inputが影響して いると考えられ,今後の研究課題である.)しかし,従来の ST理論では,

表3でたとえば,なぜ,日本人学習者は@と⑧においては A を選ぶ傾向が 強いのに⑥,①,⑧,⑮,@においてその傾向が弱いか,を説明してくれな い.ST理論が予想するのは, [へ/に[+方向]=to]の関係が成り立つコン テクストでは, 日本人学習者は toを用いるということである.

こ乙でのデータを説明するためには, ST理論に制約を加えなくてはなら ない.先に述べたように,本稿の主な目的は SSI(Semantics syntax inter‑ action)アプローチで transfer現象を説明することである.以下では SSI アプローチのひとつである Exemplar (E)原理に基づいて, 日本人学習者 から得たデータの解釈を試みる乙とにする.

先程述べたように, E原理は言語的有標性 (markedness)と無標性 (un‑ markedness)を意味 (semantics)←→形式 (syntax)の関係において区別す るものである.⑧で示しているように,

⑧  意味 (meaning) 形式 (form)

M

一 三 三 三 ‑ j ;

‑‑‑f" 

(14)

110  外国語学習における意味転移(semantictransfer)と統語的要因

ある意味概念 M1(乙乙では文概念〕をあらわす文が n個あった場合(乙こ では微妙な意味の違いは考えない), M1 をあらわすのに最も普通に用いら れる文 (Exemplar)があると考える.乙の場合 Exemplar(E)は M1をあ らわす unmarked formであると考えられる.③においてJたとえば M1の Eを f1であるとした場合,他の文 (f2,fa

fn)はmarkedformsとみな

される.mar ked formsは,①Exemplarの構造的特徴をもたない文である か,②E の構造的特徴をもつが,なんらかの言語要素で Exemplarの原型 (prototype)が保たれない文かである.たとえば我々が本研究で考察してい る18個の文において⑨Johnwent swimming in the riverが母国語話者に とってのExemplarであると述べた.他の17個の文は markedformsである が,表2で示しているように ,went for a swim (x)を含む文は E の構 造的特性 (ωentswimming)をもたない.また「倒置J(y), 

with Billの 介在J(z)は,

E

の特性をいわば「破壊jする要素であると考えられる.外 国語学習者は, fExemplarは正しいとみなし, Non‑exemplar はrejectす る」一般的傾向があるというのが,

E

原理に基づく我々の仮説である.であ るとすると ,NP went swimming Xの構造を有する文はA(もしくはC) とみなし,他の文は

B

(もしくはc)とみなずであろうと予想できる.しか し,この仮説では,表2のデータを説明するのに不充分である.

米国で英語を学習するものにとって,母国語話者の Exemplar(E1) と学 習者の Exemplar (E2) とがあると想定でき E1 とE2が一致する場合と そうでない場合とがある E1E2 の場合,学習経験に応じて E1の方が優 勢になるく即ち,母国語話者の言語規範 (norm)を身につける〉と考えられ るが, E2も学習者の知識体系の中に存在しつづけると考えられる .(日本で 英語を学習するものにとっては, EI乙接する機会は比較的少ないといえ,

L が優勢なため semantictransfer論の説明力は強いと考えられる.)乙乙 で問題なのは, E2はどのように形成されるかということである.

日本人学習者の場合,母国語表現である「ジョンは川へ泳ぎに行った」の

(15)

外国語学習における意味転移(semanticansfer)と統語的要因 111  意味構造に最もよくあった英語表現を Exemplar(E2)として選択しがちで ある.この基準にあう英文として@がある.

@  John went to the river for  a swim.  @  ii  John went to the river for swimming.⑧  iii  John went to the river to  swim. 

(iii  はテスト文には含まれていない.) 

@iと⑨11を比較した場合,母国語話者によれば@iiの容認性 (accepta‑ bility)は低く, した が って⑨(或いは⑨ iii)が Exemplarの候補である.

なぜなら,容認性の低い文の場合マイナスのフィードパックを受ける可能性 が強いからである(恐らく,日本で学習する学習者の場合は② i,ii, iii  と も E2にするかもしれない.或いはよく習う @ iiiをL にすると思われる が,乙こでの日本人学習者は米国人から inputがあるので,⑤ iiは避ける ようになると考えられる).となると,

r

母国語(日本語〕の意味構造に合致 する」という条件に加えて,

r

母国語話者のあいだで容認性の高い文であるJ

という条件が, 学習者が Exemplarを決定する際, 大切な要因になると考 えられる.

母国語話者の Exemplar(E1) の特性が went swimmingであるのに対 して,学習者の Exemplar(E2)の特性は wentto the riverであり E1

E2である. 学習者は Exemplarを土台にして与えられた英文を解釈し, そ の Exemplarから構造的にずれるものは英文として rejectする傾向がある と想定しよう.前述の通り,我々の日本人被験者の場合 2つのExemplars (E J E2)をもっていると考えられる.表2では Exemplarの特性, Exem‑

plarの特性を構造的に破壊する要因, Exemplarの特性をもたない文の特徴 が考えられているが,⑩で再びそれらをまとめてみたい.

⑩ A  Exemplarの特性

E1: [went swimming] (v)  E2: [went to the river]納

(16)

112  外国語学習における意味転移(semantictransfer)と統語的要因 B  non‑Exemplarの特性

ωent for a swim (x)  倒置 (y)

with Billの介在 (z) 

⑩の特性を念頭において,表2のデータをみていきたい.まず El E2の特 性をもっ文は A と判断される傾向が強いと予想できる.表2の@,⑧, @, 

①では,母国語話者のデータと比較した場合(表1‑a参照), その傾向が みられる. しかし倒置が働く時には,表2の⑤, @,⑪,①にみられるよう に, Exemplarの特牲をもっている文をrejectする傾向が強い.乙れは,倒 置が Exemplarの構造を崩すためであろう.倒置が働く場合,へ/~乙〔十方

J

=:> toの意味転移も起りにくくなるという点は, 転移理論を考える際大 切である.

τvent for a swimの表現を含む文[‑Exemplar]においても,我々日本 入学習者は

B

(もしくは C)を選ぶ傾向性が強く,概して容認性が低い.

た と え ば @John went for a swim to the river において,日本人学習者 は A を選ぶ傾向性を semantictransfer説から予想するが,実際42人中6 人 (14%)のみが A を選んでいる.これは恐らく,問題の文が Exemplar ではない Cfora swimがwentとtoとのあいだに介在〉 ということに帰 国しているのであろう.

上の二点からうかがえる乙とは semantictransferは以下の⑪のような Exemplarの基本的特性が守られている場合起るのであって, non‑Exemplar  の要因が強い場合 transferは制約を受けるという点、である.

⑪ E1 : NP went swimming ‑ th river E2: NP went to  the river一 (swim)

しかし IwithBillの介在」は学習者の反応を不定なものにする傾向があ り,問題が複雑になってくる. ひと乙とでいうならば,Iwith Billの介在」

は学習者の文法的判断力をにぶらせる(この傾向は,英語学習者ほどはっき

(17)

外国語学習における意味転移(semantictransfer)と統語的要因 113  りとではないが,母国語話者のデータにも見られる). たとえば表2の⑥が そうである. τ:vent for a swimの 構 造 [‑Exemplar]をもつにもかかわ らず,他の同じ構造をもっ文⑬と比較した場合,容認性が高くなっている.

しかし, 概して Exemplarの基本的特性が守られている場合(たとえば倒 置が働いていない場合〉は,

with Billの介在J にもかかわらず

A

を選 ぶ傾向がみられる. (④,①を参照).たとえば⑫では,

⑫ John went swimming with Bill  to the river.① 

18人(43%)がAを,13人(31%)がCを選んでいる.(母国語話者の場合,10人 (83%)はBを選んでいる.)I with Billの介在jは,学習者の判断を不定なも のにするが, Exmplarの特性を破壊する力は倒置ほど強くないといえよう.

上で我々は,①倒置,② ωithBillの介在, ③ ωent for a swim  構 文が Exemplarの構造的特性 (structuralproperty)の 逸 脱 と 結 び っ く と 述べたが, Exemplarの基本的構造が守られている場合, [+ Exemplar]の 力が働く. しかし, I倒置J,I with Billの介在jと い っ た 要 因 に よ っ て [ ‑Exemplar]の力が働き,下図のようにプラスとマイナスの力がぶつかり あうと考えられる.

7イナス フフスt一一一一一一宇〔倒 置〕

〔十日xemolar1季 二 ご 一 一 「 ー一 一 一 合 (with Bi!!の介在〕

Eと IwithBillの介在」のぶつかりあいにおいては Eの方が影響力が強 く Eと倒置のぶつかりあいにおいては,倒置の方が強いと考えられる.こ れは,学習者の観点からすれば, I倒置」の方が Iwith Billの介在」 より markednessの度合いが大きいと感じられるからであろう. (恐らく,学習 者にとって,語j頃の変化の方が言語要素の介在よりも「衝撃」が大きいから である.) 表2のデータの説明としては, IExemplar以外はすべてrejectす る」という一般原則に,degree of markednessを考えあわせる必要がある と思われる.以上の点を考えあわせると,次の仮説が浮んでくる.

(18)

114  外国語学習における意味転移(semanticansfer)と統語的要因

2 有標性と転移の関係 3 

ηr u

i意味転移の影響

1 1 1 m   有標性の度合い (degreofmarkedness) 

即ち, Exemplarは有標性の度合いのIにあたり IIと

m

は non‑exem plar  を指すが,

m

の場合の方が IIのそれよりも有標性が高い.我々の例でいう ならば⑭が考えられる.

⑭ John τ:vent swimming to the. river (E1であり,有標性は1)⑥ ii  John went swimming with  Bill  to the  river  (有標性はll)① iii  To the river, John went swimming (有標性は

m)

意味転移の起る可能性 i>ii>iii

しかし,今後の研究課題として,有標性の測定基準を明らかにし,学習レベ ノレとの関係においてとの問題を検討していかねばならないだろう.

最後に,本研究から浮びあがってくる仮説として,我々は学習者が言語デ ータに接した場合,特定の文概念に対する Exemplar を形成するという樋 向を想定する.Exemplarは母国語話者の E1 と学習者の E2が考えられ,

以下の関係が考えられる.

A E

1

=E

B  E1E2

Bの場合,学習者は2つの Exemplarを有するととになるが, 言語発達 (特に grammaticalitysensiti vity)はEl,E2を中心に進み, El, E2とか

(19)

外国語学習における意味転移(semantictransfer)と統語的要因 115  け離れている構文は,その markednessの度合いによって rejectする傾向 が強くなると考えられる.I倒置J,I with Billの介在」 は統語的要因であ り, semantic transfer (たとえばこ三/ ζ [ +方向]今to)を説明する際不可 欠である.この点において SSIアプローチの重要性が強調され, 今後この 方向での研究が必要であろうと思われる.

参 考 文 献

阿部,田中 (1983) Semantic Transfer in Second Language."学会発表,全国英語教 育学会.静岡大学.

Corder, S.  P. (1976) Significance  of  Learners'  Errors."  International Revieτ:V of  Applied Linguistics. 5, 161~170.

Dulay, H., Burt, M., and Krashen, S. (1982) Language Two. Oxford University  Press. 

Lado, R. (1957) Linguistics Across Cultures. Michigan University Press. 

Selinker, L. (1972) Interlanlage." LterationalReview of Aρ.plied Linguistics  10, 209231. 

Stockwell, R. and Bowen, ]. (1965) The Sounds of Eglishand Spanish. Chicago  University Press. 

Taylor, B. (1975) The Use of Overgeneralization and Transfer, Learning Strategies  by Elementary and Intermediate Students in ESL." Language Learning. 2573108. 

付録

For  each sentence  below, please  make your grammaticality judgement  by choosing A, B, or C. 

以下のそれぞれの文を読んで, A; B, C の う ち 最 も 適 切 だ と 思 う も の を ( )の中に入れて下さい.

JUDGEMENT:  A ‑grammatical and colloquial 

(英語として,文法的に正しく,普通用いられる文 である.) 

B ‑ungrammatical 

(英語として,文法的に正しくない〉

(20)

116  外国語学習における意味転移(semantictransfer)と統語的要因

c‑

grammatical but not colloquial 

(英語として,文法的に正しいが,普通用いられ

ない.)  JUDGE 

(a)  John went to the river for  a swim. 

(b)  John went for  a swim with Bill  to  the river. 

(c)  John went for  a swim in  the river.  (  (d)  John went swimming with Bill  in  the river. 

(

巴 Forswimming, John went to  the river.  (f)  John went for  a swim with Bill  in  the river.  (g)  John went to the river for  swimming. 

(h)  John. went swimming to the river. 

(i)  John went swimming with Bill  to  the river.  (j)  To the river, John went for  a swim. 

(k)  For a swim, John went to  the river.  (1)  John went in the river for  a swim. 

制 Tothe river, John went swimming. 

(

吋 Johnwent in  the river for swimming. 

(0)  John went for  a swim to the river.  (  (

め Johnwent swimming in  the river.  (q)  In the river, John went for  a swim. 

(r)  In the river, John went swimming. 

参照

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