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イネ(Oryza sativa L.)の耐塩性に関与する形質と QTLsの同定

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

イネ(Oryza sativa L.)の耐塩性に関与する形質と QTLsの同定

ティエゥ, ティ, フォン, トゥ

http://hdl.handle.net/2324/2236294

出版情報:Kyushu University, 2018, 博士(農学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (4)

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氏 名 Thieu Thi Phong Thu

論 文 名 Identification of traits and QTLs contributing to salt tolerance in rice (Oryza sativa L.)

(イネ(Oryza sativa L.)の耐塩性に関与する形質とQTLsの同定) 論文調査委員 主 査 九州大学 准 教 授 山 川 武 夫

副 査 九州大学 教 授 松 岡 健 副 査 九州大学 教 授 安 井 秀

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

本論文は,イネの耐塩性を評価する効果的なサンプリング方法と耐塩性に関与する形質の決定な らびにイネの耐塩性に寄与する量的形質遺伝子座(QTL)の同定を目的とした研究を取り纏めたも のである.

世界の人口は2050年までに90億人に達すると予想されており,安定した農業生産への期待が高 まっている.世界中の灌漑地域は人類の食料生産の3分の1を担っているが,2億3,000万ヘクタ ールの灌漑地のうち約20%にあたる4,500万ヘクタールが塩類集積のために作物生産への悪影響を 受けていることは,深刻な問題である.この問題の解決手段の一つとして,耐塩性品種の開発が沿 岸地域のコメ生産を保障するための重要な戦略の一つと考えられてきた.イネの耐塩性を改善する 遺伝的手法については,イネ遺伝資源の耐塩性評価,塩ストレスに対する耐性を付与する遺伝子や 植物体内の塩濃度を調節する遺伝子の同定,耐塩性に寄与する QTL に連鎖する分子マーカーの開 発などの重要性が指摘されている.

沿岸地域における水稲栽培が海水の影響を受けることから,水耕栽培溶液に人工海水を添加する ことでイネに塩ストレスを与える実験を行った.まず,九州大学が保有する世界の在来ならびに育 成品種 37 系統を用いて人工気象器内で耐塩性を評価した.対照区のイネは人工海水無添加の水耕 液で栽培し,塩ストレス区のイネは人工海水溶液を添加して導電率を12 dS m-1に調整した水耕液 で栽培した.2 週間の塩ストレス処理後,塩障害の視覚的標準スコア(SES)を用いて耐塩性を評 価し,イネの根,葉鞘,および葉身のK,Na,Mg,およびCaの含有率を測定した.SES に基づ いて 37 系統を高度耐塩性,中度耐塩性,塩感受性と高度塩感受性の 4 つのグループに分けた.対 照区で生育した高度耐塩性品種の葉鞘でK含有率が最も高く,高度塩感受性品種のそれで最も低く,

葉鞘のK 含有率と SESの間で高い負の相関が見られた.塩ストレス区では,SES と葉鞘のMg,

葉鞘と葉身のNa,Na/KとNa/Mgとの間で有意に高い正の相関が見られたが,葉鞘のKとの間で は有意に高い負の相関が見られた.これらの結果は,塩ストレス条件下での葉鞘のK,Na/K,Na/Mg,

および非ストレス下の葉鞘の K 含有率が耐塩性品種の遺伝分析のための有用な指標であることを 示唆した.

次に, 上述のパラメーターの妥当性を検討するために,新たに29系統のイネ品種を用いてガラ ス室で耐塩性品種のスクリーニングを行った.耐塩性品種は低 SES,葉鞘と葉身で高N,低 Na,

低Mg,低Na/Kならびに葉鞘で低Ca,高Kを示し,これらのパラメータがイネの耐塩性の指標に なることを確認した.

さらに, 塩耐性の程度が異なる 4 系統のイネを用いて,切断法と三葉法の 2 つのサンプリング

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方法を用いて耐塩性の評価法を検討した.その結果,幼植物体基部の上部2 cm から襟(葉鞘と葉 身の接続部位)の間の葉鞘部分および葉身の無機含有率が,耐塩性品種と塩感受性品種では有意に 異なっており,耐塩性に関与する形質の同定に切断法が有用であることを明らかにした.一方,三 葉法では第3葉までの葉鞘と葉身をサンプリングして無機含有率を測定したが,塩ストレスによる 影響は見られなかった.従って,本切断法は塩ストレス処理をしたイネの幼植物を用いて視覚的に 耐塩性の評価を行った上で,基部の上部 2 cmから襟の間の葉鞘部分を切り取って,その部分の無 機含有率を測定することが可能であり,基部を含む部位から再生した植物体から後代種子を得るこ とができるので,遺伝学的研究に最適であると結論した.

そこで,栽培イネの遺伝子プール全体における耐塩性の多様性とその遺伝的基盤を解明するため に,全ゲノム領域を網羅する 70 万の一塩基多型 (SNP) 座の遺伝子型が既知である 225 系統の栽 培イネのコアコレクション (Rice Diversity Panel) について,前述で確立した計測法を用いて SES と無機含有率を調査した.各形質に関してコアコレクション内の変異は比較的多様であった.形質 間の相関を調べた結果,葉鞘におけるNa, Ca, Mgの含量について互いに高い正の相関がみられた 一方,葉鞘のKとNaの含量については負の相関がみられた.各形質の表現型変異を説明するQTL を探索するため,インド型品種群と日本型品種群の各分集団ごとに形質値と各 SNP の遺伝子型値 について混合線形モデルによるゲノムワイド関連解析(Genome Wide Association Study;GWA 解析)を行い,SESと無機含有率に関連する SNP を探索した.その結果,インド型イネの分集団 では染色体3上のQTL領域が,葉鞘におけるCaとMgの含有率に寄与することを見出した.また 日本型イネの分集団では染色体 2,染色体 4,染色体 5 上の 3つの QTL 領域が,葉鞘の Na,Mg 含有率とNa/K比,葉身のNa含有率とNa/K比の形質に寄与することを見出した.このようにGWA 解析により,耐塩性と関連の高い無機含有率に関与するQTL領域のSNPを特定した.

以上要するに,本論文は,イネの耐塩性に関連した形質と耐塩性メカニズム解明のためのサンプ リング方法を明らかにした上で,耐塩性に関与する遺伝子座を推定したものであり,この論文で提 示される情報は,イネの耐塩性の改良に大いに貢献することが期待されるものであり,植物栄養学 と農業の発展に寄与する価値のある業績と認められる.

よって,本研究者は博士(農学)の学位を得る資格を有するものと認める.

参照

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