ドイツ行政強制制度における代償強制拘留制度の意義と位置づけ(石垣聡一朗)
ドイツ行政強制制度における代償強制拘留制度の意義と位置づけ
石 垣 聡一朗
はじめに
第Ⅰ章 連邦行政執行法の構造 第1節 連邦法とラント法の対象領域 第2節 連邦行政執行法における強制手段の規定 第Ⅱ章 代償強制拘留制度について 第1節 制度概要 第2節 連邦行政執行法一六条一項の規定 第3節 連邦行政執行法一六条二項及び三項の規定 第4節 代償強制拘留制度運用の一例 第Ⅲ章 代償強制拘留制度の意義 第1節 代償強制拘留制度をめぐる現在の学説の動向 第2節 代償強制拘留制度の位置づけ 第3節 小括および考察
おわりに
法学研究 45・46 号(2015)
はじめに
いわゆる宝塚市パチンコ条例事件判決(最判平成十四年七月九日民集五六巻六号一一三四頁)により、わが国では行政上の義務の司法的執行の可能性が閉ざされ (
た 1)(
れているが、行政的執行の各手段は機能不全に陥っているとされる ( 。これを受けて、学説では行政的執行の見直しがなさ 2)
。そのような状況下で、公表 3)(
や違反金 4)(
5)
といった伝統的な行政強制概念には含まれない新たな義務履行確保手段の提唱も積極的になされているが (
方で、伝統的な行政強制手段である執行罰の活用論も根強く唱えられている ( 、他 6)
。 7)
この執行罰活用論は、伝統的な行政強制手段に位置づけられる手段に再度注目するという点で、現在提唱されているその他の義務履行確保手段とは異なるといえる。執行罰は、義務の不履行に対して、一定額の過料を課すことを通告して間接的に義務の履行を促し、それでも義務を履行しないときに、これを強制的に徴収する義務履行確保の手段である (
いて存在していたものの ( 。執行罰は、わが国で戦前に制定されていた行政強制の一般法である旧・行政執行法にお 8)
、戦後は行政執行法が廃止されたこともあり、現在は砂防法 9)
36条においてのみ (
とが挙げられる ( 何度も課すことができることや、刑罰である罰金との均衡を図る必要性がないので、柔軟に金額を設定できるこ の規定をみることができる。執行罰活用論が有力に唱えられる根拠として、執行罰は義務の履行がなされるまで 、そ 10)
。また、直接強制に比べて穏当な手段であることもその理由とされる。 11)
執行罰が規定されていた旧・行政執行法は、プロイセンで一八八三年に制定された一般ラント行政法をモデルにしたものである (
わが国への行政強制の導入にあたり、非常に強い影響を受けたことが伺われる。また、現在のドイツの行政強制 。一般ラント行政法には行政強制手段として、代執行、執行罰、直接強制が規定されており、 12)
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に関する一般法である連邦行政執行法(
Verwaltungs
‐Vollstreckungsgesetz
)においても、執行罰を強制金に名称変更したものの、基本的な枠組みは維持されている。わが国の行政強制に関する研究は、主にドイツの連邦行政執行法をその対象にしてきている (義務者の身柄を拘束することによって、義務の自発的履行を促す制度である ( て強制金が課されたにもかかわらず、強制金を徴収することができず、かつ、義務の履行がなされないときに、 制制度が存在する。それが、本稿で採り上げる代償強制拘留制度である。代償強制拘留制度とは、義務者に対し も採用されているにもかかわらず、旧・行政執行法では採用されず、わが国でも研究が殆ど進んでいない行政強 。ただ、一般ラント行政法においても、現在の連邦行政執行法において 13)
。 14)
現在のわが国の行政上の義務履行確保手段の機能不全という状況に照らせば、執行罰の活用は大きな役割を果たすと思われる。もっとも、その導入に関する議論を行なうのであれば、ドイツの行政強制制度を把握する必要があろう。ドイツにおける強制金には、代償強制拘留制度というマイナーな制度が付随している以上、代償強制拘留制度を含めて考えなければ、強制金という行政強制制度の全容を把握することはできないのではないだろうか。とすれば、代償強制拘留制度を研究する必要性が多少なりともあると考える。なお、本稿は、わが国への代償強制拘留制度の導入という立法論的視点から代償強制拘留制度を含むドイツの行政強制制度を研究するものではない。ドイツにおける代償強制拘留制度を研究することにより、同制度の意義を把握し、ひいては行政強制制度と行政強制概念を把握することに主眼を置いている。そこで以下では、まず連邦行政執行法の構造を概観し、代償強制拘留の前提となる強制金を含めた行政強制手段がどのように位置づけられているのかを考察する(第Ⅰ章)。その上で、代償強制拘留制度の概要を紹介し(第Ⅱ章)、判例を踏まえながら、代償強制拘留制度の連邦行政執行法における意義、位置づけを考察していく(第Ⅲ章)。
法学研究 45・46 号(2015)
第Ⅰ章 連邦行政執行法の構造
代償強制拘留制度を論じるにあたり、同制度を規定する連邦行政執行法の構造を概観する必要があろう。そこで本章では、代償強制拘留制度が前提とする連邦行政執行法の各強制手段を中心に検討することで、同制度がいかなる体系の中に位置づけられるかという点を明らかにしていく。
第1節 連邦法とラント法の対象領域
まず、連邦行政執行法の立法管轄について検討する。基本法三〇条によれば、国家の権能の行使および任務の遂行は、基本法に特定の定めがなく、または基本法が特に認めていない限り州の所轄とされる (
法 。そして、基本 15)
31条は、連邦法は州法に優越すると規定している。ここから、連邦法と州法が同一の領域について立法した場
合には、そのまま連邦法が優越するかどうか、検討する必要がある。
基本法七〇条一項は、連邦に授権されていない限り州が立法権を有することを規定しているが (
邦内の均一性を維持するためなどの理由で専属的立法権を行使することが多いのが現状のようである ( 、連邦が、連 16)
同法七二条、七四条、七四 。他方で、 17)
a条および一〇五条二項において、連邦が立法権を行使しない場合に州が立法権を行
使することが可能である。これを、競合的立法管轄と呼ぶが、競合的立法管轄が発生した場合には、州法が適用されることとなる。そこで、行政強制について規程する行政執行法について、競合的立法管轄が発生するか否かについて検討する。
競合的立法管轄の対象は、基本法七二条に規定されており、その対象を列挙することはここでは避けるが、その中には、刑法及び刑の執行、裁判手続、国家賠償責任等が含まれているものの、強制執行手続については規定
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されていない。ここから、行政執行法については、競合的立法管轄は発生せず、連邦行政執行法は連邦により課された義務、ラントが規定する行政執行法はラントにより課された義務がその対象となる。
そこで、本稿では、特に例外的な規定を置いているラントを除き、連邦行政執行法を主な対象として論じる。
第2節 連邦行政執行法における強制手段の規定
ここでは、連邦行政執行法の規定する行政強制制度の構造について、各手段相互の位置づけを中心に考察する。とりわけ考察の中心となるのは、行政強制手段について規定する連邦行政執行法九条である。なお、同条と代償強制拘留を規程する同法十六条との関係については、後述のⅢ章で詳細に検討する。
(1)例外としての即時執行
連邦行政執行法の定める具体的な強制手段の内容は、同法第二章において規定されている。まず、同法六条一項は、物の引き渡しまたは作為、受忍もしくは不作為を対象とする行政行為の執行は、同法九条で規定された強制手段により行うこととしている。ただし、同法六条二項では、「犯罪もしくは過料の構成要件に該当する違法行為を阻止するため、または急迫の危険を避けるため即時の執行が必要であるときは、先行する行政行為を行うことなく、行政官庁は行政強制を適用できる」と規定しており、即時執行を例外的に規定している (
。 18)
(2)連邦行政執行法九条において規定される各手段
連邦行政執行法九条一項は、一〇条の規定する代執行、一一条の規定する強制金、一二条の規定する直接強制の三つの手段を列挙している。そして、一一条の強制金の補充的手段として同法一六条において代償強制拘留を
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規定する (
Aufenthaltsgesetz
優先的にその適用が予定されている場合がある。例えば、滞在法()五七条、五八条、五八 める強制手段について検討を加える。なお、連邦法ではこの他に、個別法において強制手段についての規定があり、 。代償強制拘留については次章以下で詳細に考察するので、ここではそれ以外の連邦行政執行法が定 19)a条、
さらに、感染予防法(
Infektionsschutzgesetz
)二八条、三〇条そして三三条に規定されている直接強制などである。こうした場合には、特別法に対して一般法は劣後することになる (対象から除外する。 。なお、本稿では、このような個別法は考察 20)
まず、連邦行政執行法九条一項は、強制手段の適用についての一般的順序を定めてはいない (
上は、これらの強制手段の適用について、明確な優先順位は判明しない ( 。それゆえ条文 21)
いときに、最終的に問題になる」とされる ( れ、そして直接強制は、「代執行と強制金では目的に到達できないとき、または代執行と強制金では効を奏しな 非代替的作為義務と不作為義務の場合、代執行が効を奏しない場合には強制金でもって対処すべきである」とさ
Engelhardt/App
表的なコンメンタールであるによれば、「代替的作為義務の場合には、まず代執行が適切であり、 。この点につき、連邦行政執行法の代 22)それぞれの手段が規定されている同法の一〇条・一一条・一二条の内容から明らかになる ( 手段を同列に扱っているが、同項は単に強制手段を列挙したにすぎず、各手段の個別の性質とその位置づけは、 。すなわち、同法九条一項の文言は、そこで列挙された三つの強制 23)
制拘留制度の位置づけは、第Ⅲ章2節で詳細に検討するので、ここでは検討の対象から除外する。 解に拠りつつ、各手段ついて簡潔に概観していく。なお、連邦行政執行法に規定される強制手段における代償強 。以下では、この見 24)
(3)代執行
代執行は、代替的作為義務について、第三者が義務者に代わって執行し、執行に要した費用を義務者から徴収
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する制度である (
替が不可能なので、そもそも代執行の対象とはならない ( 正当化を検討するに当たり、この点を考慮する必要はない。受忍義務と不作為義務については、第三者による代 または第三者のいずれが代替的作為義務を実施するかは、事実上の効果は同一であるので、執行官庁は代執行の 者による義務の履行の実現が実際上も法律的にも許容されるときには、代替的作為義務となる。そして、義務者 。代執行は、代替的作為義務について強制可能なときにのみ適用が検討される。義務者以外の 25)
。代執行に要した費用は義務者から徴収される。 26)
なお、わが国の行政代執行法の規定する行政代執行と異なり、ドイツの連邦行政執行法に基づく代執行は、代替的作為義務について、行政庁ではなく第三者により義務の実現を図る点に特徴がある (
おける行政代執行は、ドイツの行政強制制度の下では直接強制に分類される点に留意する必要がある。 。それゆえ、わが国に 27)
また、代執行が不適当な場合には、代替的作為義務に対しても強制金が適用されることになる。この代執行が不適当な場合については、次の強制金の項で検討していく。
(4)強制金
強制金は、主として非代替的作為義務に対する強制手段である。義務の履行がなされるまで金銭的負担を課すことにより、義務者の意思に依存しつつも、義務者に対して自発的な義務の履行を要求する制度である (
手段として強制金を制定した」と記しており ( 制金は、「非代替的作為義務の場合の強制手段である。立法者は、非代替的作為義務の場合の拘束力のある強制
Sadler
金は、代替的作為義務にも非代替的作為義務にも適用することができる。は強制金の項目の冒頭で、強 。強制 28)に対して、義務の履行を促す心理的抑圧効果が認められる ( 強調する。そして、強制金は、当該義務が履行されるまで何度でも金銭的負担を課すことができるので、義務者 、念頭に置かれているのは非代替的作為義務の場合であることを 29)
。 30)
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前述のように、強制金は非代替的作為義務を念頭に置いているが、連邦行政執行法一一条一項二文により、代執行が不適当な場合には、代替的作為義務についても強制金を課すことが可能である (
untunlich
務にも及ぶのかという問題と関連する。「不適当() ( ることとの関係で、代償強制拘留の対象となる義務が非代替的作為義務に限られるのか、それとも代替的作為義 が不適当な場合」がどのような場合を指すのかが問題となる。この点は、代償強制拘留が強制金を前提としてい 。ここで、この「代執行 31)とから、この概念の解釈が必要になる ( 」という文言は一般的で不確定な法概念であるこ 32)
なる ( することは違法であり、その場合には代執行に代わり、同法一一条一項二文に従って強制金が第一次的な手段と りうる強制手段から除外されることを意味する。代執行が不適当な状況であるにもかかわらず、代執行の戒告を 。代執行が不適当な状況であるということは、代執行が、執行官庁の採 33)
ていく。 も、直接強制と強制金に付随する代償強制拘留との優先関係が問題となる。この点については、第Ⅲ章で考察し 面へと移行するのではなく、その場合には強制金を適用すべき場面となる。ここから、代替的作為義務の場合に 。それゆえ、代替的作為義務の場合に代執行が不適当な場合であったとしても、直ちに直接強制の適用場 34)
代執行はいかなるときに「不適当」な場合に該当し、強制金の適用が許容されるのか、という論点へ戻る。代執行の費用が、義務者自身により義務の履行がなされるよりも高額な費用となる場合があるが、それだけでは代執行が不適当であるとはいえない。もっとも、執行官庁が代執行を強制手段として選択する際には、代執行の費用を義務者が負担するという点も考慮しなければならない (
が「不適当」な場合に該当するのは、義務者に支払い能力がないときであるからである ( 行費用の支払い能力がある場合とない場合とで場合分けをして考えるべきである。というのも、とりわけ代執行 。この問題を考慮するにあたっては、義務者に代執 35)
。 36)
義務者に代執行費用を負担するほどの支払い能力がないときに、強制金を課したとしても、おおよそそれは徴
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収できない可能性が高い。このような場合に強制金を課すことについては、これを認める見解と認めない見解とが分かれる。これらの見解については、第Ⅲ章1節にて詳細に検討する。ここで簡潔に言及すると、代替的作為義務で義務者に支払い能力がない場合に強制金を課したとしても、そのような場合には義務者に対して代償強制拘留が適用されうる。それにより、義務の自発的履行が促される以上、強制金を課したとしても許容されるという見解がある。他方で、このような場合に強制金を賦課したのであれば、それは支払い能力がないが故に、代償強制拘留という身体の自由を剥奪する刑罰類似のものへと性質が移行するのであるから許されないという見解もある。この見解に従う場合には、強制金を適用せずに、直接強制により義務の履行がなされるということになろう。
義務者に代執行費用の支払い能力がある場合には、「代執行は不適当でないとはいえない」とされる (
強制金を賦課した場合には代執行の費用よりも高額になるからである (
schonendere
なる。それにもかかわらず、強制金が代執行に比べ寛大な()手段といいきれないのは、反復して が挙げられる。すなわち、おおよそ代執行の実施費用は、義務者が自発的に義務を履行した場合と比べて高額に ような微妙な言い回しがなされる理由として、代執行費用の徴収と強制金を何度も賦課した場合の総額との関係 。この 37)なる ( 。結論としては、義務者の行動が重要に 38)
を求める方法が適切なのではないだろうか ( ら、この点を重視すべきではないだろう。とすれば、代執行以前に強制金を賦課することで義務者の自発的履行 される。ただし、この場合であってもそれだけを理由として「代執行が不適当である」とはいえないのであるか 場合には、強制金よりも、代執行を実施したうえで代執行費用を徴収した方が、結果として義務者の負担は軽減 す強制金が、代執行に比べて適切な手段といいうるのであろう。しかし、義務者が自発的履行を行なわなかった 。すなわち、代替的作為義務において代執行が不適当な場合には、通常であれば義務者の自発的履行を促 39)
。 40)
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なお、強制金が刑罰の一種である罰金に該当するか、という議論があった (
為に対して金銭を賦課することにより義務の自発的履行を促すものであり、刑罰とは性格が異なる。 規定されていたものを、性質を変えずに「強制金」として規定したものである。それゆえ、強制金は義務違反行 て規定された。これは、プロイセン一般ラント行政法一三二条までの行政強制に関する規定に「執行罰」として 強制金は、歴史的にも一八九一年に制定されたプロイセン警察行政法五五条において、純粋な行政強制手段とし は行政行為であり、刑罰でもなければ、秩序違反法に従った措置でもない。それゆえ、強制金は罰金ではない。 。しかし、強制金を含む行政強制 41)
(5)直接強制
直接強制は、代執行と強制金では義務の履行という目的を達しえないときに、執行官庁が義務者に作為、受忍、不作為に係る義務の履行を強要し、または作為を自ら執行することで、行政目的の実現を図る手段である(連邦行政執行法一二条)。直接強制は、義務者に対して強制権の発動により義務を履行させるものと、執行官庁の自己執行によるものという二つに分類される。後者は、代替的作為義務について執行官庁が自身で直接に執行するという点で、第三者による執行がなされる代執行と区別される。直接強制は代替的作為義務にも非代替的作為義務にも用いることができる。このように、直接強制は非常に便利な行政強制手段であるが、それと同時に極めて厳格な強制手段であるので、最終手段として用いられる (
höherrangig
に関する関係においても、強制金に対する関係においてもより高い()位置にあるといえる ( 。そして、同法の文言からして、代執行 42)ればならない。 の自発的履行を試みなければならず、代替的作為義務の場合には代執行と強制金による義務の履行を試みなけ なわち、原則として執行官庁は、非代替的作為義務と不作為義務の場合には先に強制金を賦課することで義務 。す 43)
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次に、他の二つの手段と直接強制との関係について考察することにより、直接強制の位置づけを検討する。
まず、強制金との関係では、直接強制は原則的に劣後する手段であるということは条文上明らかである (
効果がなかったというときに充足される ( 制金では目的を果たしえないという要件は、一般的には、すでに強制金が過去に強制手段として適用されたが、 。強 44)
いということが確定している場合も挙げられる ( 制金では目的を果たせないときばかりではなく、それらの手段の適用の前に、それらの手段では目的を果たせな 。また、直接強制の適用場面として、それ以前に適用した代執行と強 45)
ない場合をいうとされている ( がこれに該当するが、強制金が不適当な場合とは、強制金の適用が完全に不適切であるか、または目的に適合し
untunlich
。強制金との関係に絞れば、強制金が不適当()な場合 46)場合には、強制金の適用は不適切であるとする (
Rudolph
。は、行政措置の緊急性を考慮すると執行の延期が許容されないような 47)その代わりに直接強制という方法により、営業用地の閉鎖を命じうるとしている ( 営業活動が、許容されていないにもかかわらず、継続してなされている場合にも強制金の適用は不適切であり、 くは占有している家屋の即時の明け渡しに対しても、強制金の適用は不適切であるとされているし、禁止された 。他にも、例えば、開催が禁止されたデモや集会の禁止、もし 48)
。 49)
次に、代執行との関係について考察していく。ここでは、執行官庁による自己執行という場面が念頭に置かれることとなる。既述の通り、代執行と直接強制との違いは、第三者による執行であるか否かという点に求められる。連邦行政執行法一二条一項の文言からすれば、代替的作為義務の場合には代執行を優先することが原則であるが、例外が認められている。その例外として挙げられるのが、義務者に支払い能力がない場合の執行官庁による自己執行である。繰り返しになるが、代替的作為義務の強制に際して、それを実際に執行する者が公務員であれば、直接強制としての自己執行であり、代執行との差異は、実際に執行する者が第三者でるかどうかという点にしか存在しない (
。さらに、費用面に着目すれば、代執行に比べ義務者の負担する費用は少なくなることもあ 50)
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り、むしろ直接強制の方が適当であると思われる場合も存在する。しかし学説は、同法の規定を見誤ってはならないとしている (
らない ( 実施に際して代執行の方がなお適切かどうかを考慮しなければならず、義務者の支払い能力も考慮しなければな されない。それゆえ、執行官庁は、公務員が代替的作為義務を義務者の代わりに実施するときには、自己執行の 制の方が代執行に比べて穏当な手段であると思われたとしても、法を無視してまで直接強制を適用することは許 。すなわち、同法一二条は代執行が直接強制に優先することを規定しているので、仮に直接強 51)
。 52)
このように、直接強制は代執行と強制金に対して規定上は優先順位が劣後する手段ではあるが、「目的を達しえない」という要件は緩和されていることから、実質的には直接強制が代執行に対して必ずしも劣後する強制手段であるとまでは言い切れないと考える。
(6)執行官庁の選択裁量に対する統制
連邦行政執行法に規定される三つの手段のうち、どの強制手段を執行に際して選択するかについては、執行官庁に選択裁量が認められる。もっとも、その選択順序については、既述のとおり、一応の順序が決まっている。例えば、強制金は、連邦行政執行法の規定に従えば代替的作為義務については代執行が「不適当である」ときにはじめて許容されるとされているように、その適用に一定の制約がある。そして、執行官庁に認められた裁量に対する統制手段として、列挙主義と比例原則が挙げられる。具体的には、列挙主義により、新たな強制手段の創設の禁止という統制を受け、その上で限られた強制手段からの選択に際して、比例原則という二段階の統制を受けることになる。