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制限規定にみる遺留分権者の地位 ――

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Academic year: 2022

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(1)

遺留分制度が現代においていかなる意義を有し︑立法段階とは大きく異なる家族構造・社会状況のもとでもなお存

在価値を提示しうるか︑また提示しうるとすればそれはいかなる範囲において可能であるかという問題は︑相続法に

第 一 章 序

第 第 第 第 四 三 ニ ー 章 章 章 章 目

序 言 ドイツにおける遺留分の制限規定 日本における遺留分の制限規定 結語に代えて

ドイツにおける制限的解釈論を参考にして

制 限 規 定 に み る 遺 留 分 権 者 の 地 位

I I I I I J  

1

9 9 9 9 J

 

︱︱論説︱︱

LIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII

L1 9,   ‑' 

10 

24-3•4-341 (香法2005)

(2)

(2 ) 

おいて解決すべき最重要問題の︱つであるといえよう︒遺留分の本質を明らかにすることが逼迫の急務であるとの問

題意識を出発点として︑箪者は遣留分制度の機能と基礎原理について憲法論上の基礎付けを視野に入れつつ考察して

( 3 )  

おり︑その途中経過を別稿において発表した︒そこでは︑遺留分制度が意味を変化させながらも︑現代においてなお

一定の意義を有する可能性が探られている︒ところで遺留分制度の意義を追求し続けるためには︑前提として︑遣留

分制度が現にどのような特徴を持って存在しているのかという点についても考察しておく必要があろう︒周知のとお

り︑遺留分制度の特徴については︑比較法的研究によって︑沿革・構造に基づいて峻別するという形で︑既に綿密な

(4 ) 

解明がなされている︒すなわち︑遺留分制度は構造上︑概ね﹁ローマ型遺留分制度﹂と﹁ゲルマン型遺留分制度﹂に

分類することができる︒そして︑前者の系統に属するドイツ遣留分法においては︑被相続人の自由な遺言により相続

から廃除された近親者が︑金銭債権として遺留分を請求するという形態を取っているのに対して︑後者の系統に属す

るフランスの遺留分法においては︑相続人の地位を確保する法定相続人が︑一定の持分を︑物権的請求権として保持

(5 ) 

する形態をとっており︑わが国の遺留分法は後者の系統に属するとされる如くである︒このような沿革・構造上の違

いから︑単なる金銭請求権として請求できるに過ぎない﹁ローマ型遺留分制度﹂に属する法制度においては遺留分権

者の地位が不安定であるのに対し︑物権的請求権として請求できる﹁ゲルマン型遺留分制度﹂に属する法制度におい

( 6 )  

ては︑相対的に遺留分権者の保護に厚いという遺留分制度の特徴が容易に導き出されよう︒

ところで︑遺留分制度の特徴については︑沿革・構造上の差異に加えて︑遺留分法の個別規定およびその解釈論の

検討を行うことによって︑より正確に把握することができるのではあるまいか︒しかしながらこれまでは︑遺留分制

度の特徴を描くために︑個別規定をつぶさに検討する方法︑とりわけ個別規定における判例・学説の動向を調べ︑そ

れらに通底する法的価値評価を解明する方法はあまり取られてこなかったように思われる︒そこで︑本稿では︑遺留

10 

24-3•4-342 (香法 2005)

(3)

制限規定にみる遺留分権者の地位 I;, !  i~-

分法の個別規定における議論状況を検討し︑そこでとられる論理構造および法的価値評価を解明することにより︑遺 留分制度の特徴をあぶり出すことを試みる︒ここでは遺留分制度の特徴の中でもとりわけ遺留分権者の保護という観 点に立脚して︑遺留分権者の地位という面での特徴に焦点を当てることとする︒なぜなら︑遣留分制度の機能として の遺留分権者の生活保障は︑諸学説の最も注目するところとなっており︑この点の分析は︑遺留分制度の基礎的考察 の深化に方向付けを与える端緒となると考えたためである︒また︑本稿においては遺留分法の個別規定の中でも特に 遺留分を制限する規定を取り上げることとするが︑それは︑遺留分の制限規定が︑遺留分権に限界を画する規定とし

て遺留分権の限界事例を規律するものであるところ︑限界事例における遺留分制限規定の解釈如何︐1よって︑まさに

遣留分請求権の存否が左右されることになり︑そこでは遺留分権者の保護という面での遺留分制度の特徴が顕著︐1

ると考えたためである︒

このような観点に基づいて︑遺留分制度の特徴の分析を相対化するために︑本稿では参考としてドイツ法における 遺留分制限規定の︑判例の動向を中心とした解釈論を分析することとする︒もっとも︑ドイツの遺留分制度は︑上述 の沿革・構造上の分類に従うと︑わが国遺留分制度とは系統を異にするとされる︒しかし実質はかえって︑両制度に おける遺留分制限規定は︑遣留分に限界を画するという面では同等の意義を有し︑且つ︑後述のように解釈論上同様 の問題をはらんでいる︒さらにドイツ法においては制限規定に関する判例の蓄積もあり︑法的発展が見られる︒した がって︑わが国の遺留分制度の特徴をあぶり出す際にも一定の示唆を導き出しうることが十分に期待されよう︒以下 ではまず︑ドイツ法における遺留分制限規定を︑遺留分算定の基礎となる生前贈与における期間制限の規定︑消滅時 効の規定︑遺留分剥奪規定の順に︑主に判例を中心に解釈論の展開を分析して検討を進め︑その後わが国の判例や学

説を概観し︑最後に若干のまとめを加えることとする︒

10

24‑3・4‑343 (香法2005)

(4)

本稿は︑二

0

0四年九月に韓国において刊行された﹁亜細亜女性法学﹂所収の拙稿﹁限界事例にみる遺留分制度の特徴ードイ

ツおよび日本における遺留分制限規定の解釈論をめぐって﹂をもとに加筆・修正し︑再構成したものである︒

( 2 )

遺留分の意義と機能については︑すでに家督相続の時代に苦心を伴って検討されていた︒近藤英吉﹃相続法論︵下︶﹄︵一九三八

年︶

0九一頁以下では︑遺留分制度について﹁一般社会共同の利益と︑被相続人の意思の尊重並びに相続人の保護と云ふ三つ

の標準から国民生活の実情に最も適応する制度を設くべきものと考える﹂とされながらも︑具体的には︑被相続人の処分にいか

なる程度の制限を加えるべきか︑個人の処分を制限するとしても︑国家その他の公共団体のためにする処分については絶対の自

由を認めるべきか︑相続財産の状態と相続人の人数・資カ・職業・居住等諸般の事情を考慮し︑相当の生活維持を標準として処

分の自由と限界を具体的に定めるべきか︑いかなる形式において相続人を保護すべきか︑殊に遺留分を不可侵的相続権とすべき

か︑或いは単なる遺産債権として金銭を取得させるにとどめるべきかなど︑遺留分の意義および機能との関係で様々な問題に直

面していたことが伺われる︒谷口知平﹁遺留分﹂家族制度全集法律編>相続(‑九三八年︶一七九頁以下では︑﹁将来個人の恣意

に基く他人への贈与の如きは別として国家観念の高まるに従ひ公共事業への寄附等の処分は漸次多かるべく︑此に関連して遺留

分の主張も多くなるだらうし︑その場合には国家的見地に於て遺留分制度自体が考へ直されねばならぬときが来るであらう︒﹂と

述べ︑当時の国益重視という理念が背景にあるけれども︑遺留分制度自体について︑既に批判的な検討が行われている︒

( 3 )

拙稿﹁遺留分制度の機能と基礎原理ードイツにおける遺留分権論の憲法論的基礎付けによる新展開(‑)︑︵二︶・完﹂︵二

0 0

四年︶法学論叢一五五巻一号︑三号

( 4 )

五十嵐清﹁遺留分制度の比較法的研究(‑)︵二︶︵三︶・完﹂法学協会雑誌六八巻五号(‑九五0年︶四五二頁以下︑六九巻二

号︱二六頁以下︑六九巻三号二五八頁以下︑高木多喜男﹃遺留分制度の研究﹄(‑九八一年︶一六一頁以下︑伊藤昌司﹃相続法﹄

︵ 二 0

0二年︶三六三頁以下︑久留都茂子﹁遺留分制度のあり方﹂講座現代家族法第六巻(‑九九二年︶一九五頁以下

( 5

)

但し金銭返還の例外規定がある︵民法一0四一条︶︒高木教授は︑わが国の遺留分制度はゲルマン

11

フランス型に属するといえ

ども︑﹁遺留分の価値化﹂という視点から︑遺留分権者の法的地位においては︑請求権型にまで弱められているといってよいと分

析される︵前掲書一六四頁︶︒

( 6 )

もっとも︑上述の高木教授が打ち立てられた﹁遺留分の価値化﹂に依拠する場合には︑異なる帰結が導かれるであろう︒本稿

では﹁遺留分の価値化﹂については踏み込まず︑もっぱら個別規定の考察による遺留分制度の特徴の再検討に焦点を当てることと

する

( 1

)  

10

24-3•4-344 (香法 2005)

(5)

制限規定にみる遺留分権者の地位 計竹

ドイツ民法二三二五条三項は︑被相続人の生前贈与を遺留分補充請求権の基礎として遣産に加算する場合につい

て︑相続開始前一

0

年内に贈与目的物が給付されていることを要件とすることにより︑遺留分に一定の制限を付して

( 2 )  

いる︒同条の趣旨は︑

一方で遺留分を実質的ならしめるために被相続人の生前贈与をも遺留分請求の対象たることを

許容し︑他方では被相続人の財産処分の自由という観点から︑相続開始前一

0

年内に受贈物が﹁給付﹂されているこ

とを要するという制限を設けるものである︒ところで同条にいう一

0

年の起算点となる﹁給付﹂時は具体的にいつと

解せらるべきかについては︑解釈の余地があろう︒この点については︑ドイツ法においては既に二つの局面において

検討が行われてきた︒すなわち︑第一に︑同条にいう﹁給付﹂とは︑﹁給付行為﹂

( L

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)

の意か︑それ

とも﹁給付効果﹂

( L e i

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f o l g

)

の意であるかという問題︑第二に︑同条の﹁給付﹂を給付効果と捉えた場合にお

第一節遺留分算定の基礎に加える生前贈与の期間制限

(

7 )  

第二章

定︵同二三三三条\二三三七条︶ ドイツ民法典上︑遺留分を制限する規定と捉えうるのは︑遺留分算定の基礎に加える生前贈与における一0年の期 間制限規定︵ドイツ民法二三二五条三項︶︑遺留分請求権の消滅時効についての規定︵同二三三二条︶︑遺留分剥奪規

である︒以下︑これらを順に検討することにする︒ ドイツにおける遺留分の制限規定

拙稿︵前掲注

3 )

一号二四頁脚注六参照

10 五

24‑3・4‑345 (香法2005)

(6)

問題についても︑以下のような立場が示されている︒ いて︑それは法的給付効果

( d e r

r e c h

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h e   L

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と経済的給付効果

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o l g )

 

いずれを基準として判断せられるかという問題の︑二つの段階を経て議論が淘汰されてきたのである︒

ち︑社員︵被相続人︶

が ﹁

給 付

効 果

b o s l

i c h e

 

を認定するためには ﹁給付﹂を﹁給付行為﹂と捉える立場に立っていた︒すなわ

の死を停止条件とする会社持分の譲渡に関する事例において︑

﹁ 給

付 効

果 ﹂

一般論として︑同条の

の発生までは必要ではなく︑﹁受贈者が目的物を獲得するために被相続人の側で必

要な行為全てを被相続人が遂行すること

De

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連邦通常裁判所は当初︑第一の問題について︑同条の

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﹂で臣↑りるとい︑つ立場を表明し︑具体的には︑会社持分の

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s  

( 3 ) ( 4 )  

譲渡を内容とする契約の締結時が給付時であると結論付けた︒しかしこの立場は定着せず︑別の事案において︑連邦

通常裁判所自身の批判するところとなった︒すなわち︑﹁給付﹂を﹁給付行為﹂︑とりわけ契約締結時と解するのであ

れば10年の期間制限により遺留分の請求が拒絶される場面が拡張し︑その結果︑遺留分権者の不利を招来するが︑

それはドイツ民法二三二五条三項の文言が許容することではなく︑根底にある立法者の見解にも反する拡大解釈であ

り︑支持しえないという態度が表明されたのである︒その後︑ いくばくもなく連邦通常裁判所によって︑期間の起算

点となる﹁給付﹂というためには︑被相続人自身︑その結果をあと一0年引き受け︑その結果に鑑みて︑﹁故意の贈

( e i n

e

S c

h e

n k

u n

g )

を差し控えるべき状態﹂を作出していなくてはならないという新たな法命題が示され

(6 ) 

こ︒そこでは︑﹁給付﹂の判断において﹁給付行為﹂から﹁給付効果﹂に着眼点を移す判例の立場の変更が如実に表

れているといえよう︒そしてさらに同判決では︑同条解釈論における上述の第二の局面︑すなわち︑同条の﹁給付﹂

であるとすれば︑それは法的給付効果と経済的給付効果のいずれを基準として判断せられるかという

つまり︑﹁給付﹂の決め手となる﹁故意の贈与を差し控えるべ

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S e i t

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1 0

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﹁ 給

付 ﹂

24-3•4-346 (香法 2005)

(7)

制限規定にみる遺留分権者の地位 村竹

﹁ 給

付 ﹂

を ﹁

給 付

行 為

10 七 き状態﹂というためには︑いずれにせよ﹁被相続人の財産からの︑受贈物の経済的分離

d i e w i r t s c h a f t l i c h e  

A u s g l i e d e r u n g

(8 ) 

が必要である︑という立場が表明されたのである︒ここでは﹁給付効果﹂に関して︑﹁法的給付効果﹂ではなく︑む

しろ﹁経済的給付効果﹂に着目する裁判所の態度が表れているといえよう︒

上のような判例の傾向は︑土地の譲渡の事案においても同様に見出される︒連邦通常裁判所は︑土地の贈与の場合

10 年の起算点となる﹁給付﹂を認定するためには︑契約締結の事実では未だ十分ではなく︑さらに目的物の直

接の権利移転を内包する﹁履行行為の実行

( d i e Vo ma hm e  e i n e r   V o l l z i e h u n g s h a n d l u n g

)

﹂が存することを要すると論じ︑

(9 ) 

本件では少なくとも﹁所有権移転の意思表示

( A u f l a s s u n g s e r k l l i r u n g )

﹂が必要であると判断した︒ドイツ法において

は︑土地の所有権移転の効果が生じるためには所有権移転の意思表示に加えて登記が要件となっているのであるか

( 1 0

ら︑本件において﹁給付﹂の認定のためには﹁少なくとも所有権移転の意思表示﹂が必要であるとする裁判所の立場

)  

ぱ︑﹁給付﹂を﹁給付行為﹂と捉える立場と︑﹁給付効果﹂と捉える立場の中間的立場であるといえよう︒その後︑

︵︶年の起算点となる﹁給付﹂を認定するためには︑所有権移転の意思表示だけでは不十分であるとされるようになっ

C

そ こ で は

︑ 所 有 権 移 転 の 意 思 表 示 に 加 え て 登 記 行 為 を 要 す る と さ れ な が ら も

︑ 登 記 所 へ の 登 記 申 請

( E i n t r a g u n g s a n t r a g )

で足りるのか︑登記簿への記載

( E i n t r a g u n g im r   G u n d b u c h )

まで必要かについては不問に付され

た︒しかし別の事案において︑﹁給付﹂の認定においては登記簿上の移転登記

( d i e U m s c h r e i b u n g i   m  G r u n d b u c h )

( 1 2 )  

基準となるという立場が表明された︒同判決の理由は︑﹁贈与者が効果においても

( a u c h ( v o l l s t a n d i n v e g   r l i e r e n )

吐吋点が重要であり﹂︑﹁基準となるのは登記簿上の移転登記である﹂と述べ︑これ

( 1 3 )  

が同判決の結論を導き出すための命題となっている︒本判決では

える立場が明らかにされている︒しかも︑﹁給付効果﹂については︑﹁法的給付効果﹂ 全に失った ‑ ︶ ︑

9̲

 

ではなく﹁経済的給付効果﹂に ではなく﹁給付効果﹂と捉

w i r k l i c h )

贈与目的物を完

24‑3・4‑347 (香法2005)

(8)

このような連邦通常裁判所の傾向に対して︑学説は賛否両論である︒ブロックス︑シュルーターは︑

( 1 7 )  

点となる﹁給付﹂を﹁経済的給付効果﹂とする判例の立場に同調的である︒しかしながら︑﹁経済的給付効果﹂に着

目する立場は︑主に二つの点で批判されている︒第一に︑﹁給付﹂の認定に際して︑経済的効果を考慮するのであれ

ば︑相当な法的不安定の危険を内包することになるが︑そのような法的不安定は︑客観的であるべき起算点の確定に

( 1 8 )  

とってとりわけ好ましくないということ︑第二に︑﹁給付﹂の確定に際して利用価値︵物の﹁利用﹂︶を考慮する立場

は︑土地の経済的価値が本質的に贈与目的物の処分可能性に存する実質的価値によって特定されるということを無視 ができるであろう︒

( 1 4 )  

着目している︒

﹁経済的給付効果﹂に着目する傾向がより強化されていることを示す事案として︑被相続人が無制限に用益権を留

保している

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)

土地の贈与の事例を挙げることができる︒このような場合

( 1 5 )  

には︑たとえ移転登記がなされたとしても10年の起算点となる﹁給付﹂があったとはいえないと判断された︒す

なわち︑連邦通常裁判所は︑被相続人が所有権者としての法的地位を終局的に放棄するのみならず︑受贈物を本質的

に利用することを放棄したときにー留保された物権

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e )

であれ︑債務法上の請求権の合

( 1 6 )  

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であれー同条の意味での﹁給付﹂があったといえると述べている︒以

上の判例の動向をまとめると︑ドイツ民法二三二五条三項における﹁給付﹂の解釈において︑第一に﹁給付行為﹂か

ら﹁給付効果﹂へ︑第二に﹁給付効果﹂については︑﹁法的給付効果﹂から﹁経済的給付効果﹂へと照準が移されて

判断されるようになり︑その結果︑同条における一0年の起算点︵すなわち﹁給付﹂時︶が相続開始時点に近づき︑

したがって遺留分権者が一0年の期間制限を受ける場面は減少し︑より遺留分権者の保護に与する傾向を見出すこと

10年の起算 10 八

24-3•4-348 (香法 2005)

(9)

制限規定にみる遺留分権者の地位 行 竹

第 二 節 時

10 九

( 1 9 )  

しているということである︒さらに︑﹁給付﹂の認定のためには︑被相続人が﹁故意の贈与を差し控えるべき状況を

作出したことが必要である﹂という上述の判決についても批判的に検討されている︒すなわち︑同判決は文言にはな

い﹁故意の贈与﹂という基準を設けることによって︑制定法規律に主観的メルクマールを加えているが︑これは︑も

はや﹁給付﹂概念の解釈の問題ではなく︑裁判官による法の継続形成

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すなわち︑目

( 2 0 )  

的論的縮小解釈

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o n

)

の問題であるとの指摘がなされた︒

判例に対する上のような批判に基づき︑法的安定性および権利の明確性という観点から︑﹁給付﹂の時点は︑法的

( 2 1 )  

給付効果の発生時とすべきことを主張する諸学説が現れるようになった︒しかしながら︑﹁給付﹂を﹁給付効果﹂と

し︑﹁経済的給付効果﹂に基準を設ける連邦通常裁判所の立場が確立されている以上︑今後もこの立場は実務を支配

( 2 2 )  

することが予想されよう︒

遺留分権の行使を不相当に長期間怠ることも可とするのであれば︑相手方に不測の事態をもたらすことになるが︑

これは権利の明確性の要請にかんがみて到底認めうるところではないとの趣旨で︑ドイツ民法は︑遺留分権者が自己

( 2 3 )  

を害する処分を﹁認識﹂したときより三年で︑遺留分請求権が時効により消滅する旨を規定している︒同規定は︑遺

留分権者による﹁認識﹂という主観的要件が課せられているため︑解釈論上の問題を内包している︒ところで同条の

﹁認識﹂をめぐる問題は︑帝国裁判所において既に検討されている︒ドイツ法においては︑﹁認識﹂の理解について

注目に値する一連の判例の流れを見出し得る︒すなわち︑判例は長きにわたり︑﹁認識﹂の時点を遅らせる解釈を行

うことにより︑時効進行の開始時を先送りし︑よって遺留分権者を有利に扱う結果を導く法理を形成してきたのであ

24-3•4-349 (香法2005)

(10)

念を抱いていた場合にも︑時効の進行という法律効果を基礎付ける﹁認識﹂ まず一九二六年の判決の事案において争われたのは︑遺留分権者を害する処分の有効性に対して︑遺留分権者が疑

の要件事実が存在したといえるか否かで

ある︒裁判所は︑遣留分権者を害する処分の無効を信じていた場合には︑時効の進行を基礎付ける﹁認識﹂があった

とはいえないと判断した︒本判決においては︑形式的要件の欠如により当該遺言が無効であると信じたことが︑﹁正

( 2 4 )  

当な疑い

b e r e c h t i g t e Z w e i f e

l

﹂であると評価されたのである︒ところで︑この﹁正当な疑い﹂とは︑

の事案のような事実の領域にとどまるのか︑それとも法的評価における疑いをも含むのかという問題が次の段階とし

て生じる︒すなわち︑時効を根拠付ける﹁認識﹂の基礎となる事実に対しては疑念を抱いていないとしても︑その事

実を法的に評価する段階で無効を確信することもあり得るので︑同条の解釈論上の枠組みを明確にするためには︑こ

の点も吟味されなくてはならないのである︒それについて︑帝国裁判所は︑処分の有効性に対する﹁正当な疑い﹂が

あれば︑それが遺留分権者自身による法的判断に基づくに過ぎない場合でも︑時効の進行を根拠付ける﹁認識﹂とは

いえないという立場を表明した︒同判決の理由は︑﹁処分の有効性に対して疑いがある場合には︑遺留分権者に権利

の行使を要求することができず︑その意味での処分の有効性に対する疑いは︑事実の錯誤に基づくものであれ︑法律

の錯誤に基づくものであれ︑遺留分権者にとっては何の差異も意味しない﹂と述べ︑これが同判決の結論を導き出す

( 2 5 )  

ための法命題となっている︒判例は︑時効進行の開始を遅らせる傾向をさらに一歩進め︑﹁頭からはねつけられるべ

きではない理由

G

n d e , d i e   n i c h t   v

o n o   v m h e r e i n   v

o n e r   d   Ha nd   z u e   w i s e n   s i

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﹂に基づいて処分の無効を信じていた場

合には︑そのような解釈が客観的に不当であるとしても

( a u c h o b j e k t i v   u m z u t r e f f e n d )

︑時効進行の基礎となる﹁認識﹂ 変遷をみていくことにする︒ る︒そこで以下においては︑

一九二六年判決 判例がいかなる法的構成に基づいて判断しているかという点を考慮に入れつつ︑ ︱ 10 

判例の

24-3•4-350 (香法 2005)

(11)

制限規定にみる遺留分権者の地位 !l‑:U‑! 

( 2 6 )

2 7 )

 

には当たらない︑という解釈基準を立て︑その基準は以降の判決の依拠するところとなった︒

判例における上述の傾向はとどまることを知らず︑その後の判例は︑たとえ処分の有効性を事実の領域においても

法的評価の平面においても︑遺留分権者が認識していたとしても︑ 一定の要件が存すれば︑時効の進行を基礎付ける

一九八五年の連邦通常裁判所判決においては︑遺留分権者が︑遺

留分権者を相続から廃除する被相続人の終意処分を知っていたけれども︑﹁おそら

v

a l l e m   A n s c h e i n   n a c

﹂それを後

h

( 2 8 )  

で取り消すことが推測される被相続人の意思表示を知っていた場合には︑時効は進行しないとされた︒また︑二

0 0

0 年の連邦通常裁判所判決の事案においては︑遺留分権者が被相続人の終意処分の有効性に対する疑いを何ら有して

いたわけではないけれども︑当該終意処分を解釈する段階で︑自身の法定相続権が侵害されていないという誤った認

識をもっていた︒連邦通常裁判所は︑そのような終意処分の解釈上の錯誤が︑たとえ不当な解釈に基づいているとし

ても︑またその終意処分が自身の法定相続権を侵害するという解釈の可能性を遺留分権者が知っているとしても︑﹁遺

留分権者の行為の十分な動機

e i n h i n r e i c h e n d e r   A n l a s s   zu m  H a n d e l n

﹂が欠如するため︑時効の進行を妨げると判断し

{g i)  

た︒同判決が︑﹁遺留分権者の行為の十分な動機が欠如するため︑時効の進行を妨げる﹂と述べるとき︑帝国裁判所

の時代から連綿と模索されてきた同条の解釈論に︑ようやく一貰して根拠付けられる法命題が定立されたといえよ

( 3 0 )

以上の諸判例に見られる二三三︱一条における﹁認識﹂の解釈基準を次のようにまとめることができる︒第一に︑﹁認

 

識﹂とは遺留分権者を害する処分の認識のみならず︑当該処分の有効性をも認識していることをいうのであり︑第二

に︑事実領域における錯誤の場合は言うに及ばず︑遺留分権者自身の誤った法的評価によって処分の有効性を疑って

いた場合にもなお︑相当の理由に基づいて判断されている場合には﹁認識﹂には当たらないとされ︑第三に︑たとえ ﹁認識﹂には当たらないと評価するに至っている︒

24‑3・4‑351 (香法2005)

(12)

これらの基準に共通するのは︑﹁遺留分権者の行為の十分な動機﹂が存在したか否かである︒これらの諸基準を設け

ることにより︑結果として判例は︑より一層遺留分請求権における時効の進行開始時点を遅らせ︑よって遺留分権者

第三節

遺留分剥奪規定

一定の場合にはなお﹁認識﹂には当たらないとされる場合がある︒

ドイツ法における遺留分の制限規定として本稿で最後に検討するのは︑遺留分剥奪規定である︒上述した二つの遺

留分制限規定は︑遺留分の︑遺留分権者への帰属を認めることを前提とし︑ただ単に遺留分額の算定について制限が

課せられ︑あるいは権利の行使において時間的制限を設けるに過ぎないのに対して︑遺留分剥奪規定は︑遺留分の︑

遺留分権者への帰属自体を否定する点で︑まさに根本的な遺留分制限規定であるといって差しつかえないであろう︒

遺留分剥奪規定は︑遺留分と被相続人による処分の自由の限界を画するというところに存在意義を有するといえよ

判例においては︑同条を謙抑的に適用する傾向を見出しうる︒ う︒もとより︑遺留分によって︑被相続人の私的自治は︑遺留分の範囲において制限される︒しかしながら︑遺留分 権者が︑被相続人に対して︑有責な

( s c h u l d h a f t )

義務違反を犯した場合にも︑有責者が遺留分を保持するというこ

とは︑正義の観点から︑許容しえないであろう︒このような趣旨で︑ドイツ民法においては︑制定法に列挙する特別

( 3 1 )  

の事情がある場合に︑被相続人の意思で︑当該遺留分権者から遺留分を剥奪しうるものと規定されることとなっ

つまり︑被相続人に遺留分の剥奪を許容する前提と

なる要件が非常に厳格に解されており︑その結果︑判例において遺留分の剥奪が認められる事案は限定される傾向が

( 3 2 )  

顕著となっている︒判例においては︑遺留分剥奪規定は限定列挙である の優位を導き出している︒ 処分の有効性に対する疑いがなかったとしても︑

( e i n e   e r s c h o p f e n d e  

A u f z a h l u n g )

という立場

24-3•4-352 (香法 2005)

(13)

制限規定にみる遺留分権者の地位 lc+:u,l  If' 

から︑遺留分剥奪規定に列挙されている要件とは別異な構成要件に︑遺留分剥奪規定を拡大適用することは許されな

( 3 3 )  

いとの態度が確立している︒したがって︑例えば卑属の親に対する﹁虐待﹂は︑ドイツ民法二三三三条の遺留分剥奪

根拠となっているが︑これを精神的虐待

( S e e

l i s c

h e

( 3 4 )  

断する判例︑被相続人から複数出された剥奪理由について︑それらを総合的に判断して認定することはせず︑個別的

( 3 5 )  

に厳格に判断する判例︑同条二号の﹁故意による身体的虐待﹂に基づく遺留分剥奪に︑文言にはない

う︑家族の尊重に対する重大な侵害

( e i n

e

s c

h w

e r

e   v e r

l e

t z

u n

g  

d e

r   d

em

  Er b

l a s s

e r  

g e

s c

h u

l d

e t

e n

f a  

m i l i

a r e n

  A

c h

t u

n g

)

と >

( 3 6 )  

う加重された要件を加える判例︑遺留分剥奪を定める遺言が有効であるためには︑被相続人が自身の言葉により︑特 定の具体的事象

( b

e s

t i

m m

t e

k o

n k

r e

t e

V  

o r

g a

n g

e )

を確定し︑考慮する出来事に︑幾分なりとも実際に利用できるよう

( 3 7 )  

( p r a

k t i s

c h

b r

a u

c h

b a

r )

範囲を定めなくてはならないとする判例など︑遺留分剥奪規定を謙抑的に適用する裁判所の

態度が窺われる例が多数存在する︒

と こ

ろ で

たとえ遺留分の剥奪を正当化する要件が認められたとしても︑裁判官の権限によって︑遺留分剥奪権の

実際的効力喪失に導かれることがあることにも留意すべきである︒遺留分剥奪の裁判においては︑剥奪根拠が確定し

( 3 8 )  

たときでも︑被相続人による宥恕

( D

i e

V e

r z

e i

h u

n g

)

によって剥奪権が消滅すると判断されることがある︒ここで︑

宥恕は明文でする必要はなく︑遺留分権者に対する被相続人の行為から︑被相続人が受けた傷

( d i e

K r

a n

k u

n g

e n

)

許容し︑そこからもはや何も導き出すことを望んでいないという意思を引き出すことができれば十分であるとさ

( 3 9 )  

れる︒この点を考慮する場合には︑遺留分の剥奪を正当化する要件が認められても︑宥恕によって︑実際には遺留分

剥奪という強力な効果の発生に至らない事例も多くなりうることが予想されよう︒

以上のように︑遺留分剥奪規定に対して厳格な態度をとり︑謙抑的な解釈を展開する判例の立場については︑遺留

M i

B h

a n

d l

u n

g e

n )

 

﹁被相続人に負

の場合にも類推適用することは拒絶されると判

24-3•4-353 (香法2005)

(14)

ば当然の帰結といえよう︒

いわ

分剥奪規定が刑罰的性格

( S t r

a f c h

a r a k

t e r )

をもつというドイツ法における一般的な理解が重要な背景になっていると

( 4 0 )

4 1 )

 

いえよう︒遺留分剥奪規定のこのような理解は︑立法段階において既に明確化されていた︒遺留分剥奪規定の刑罰的

性格は︑現在でも一般的捉え方となっており︑そのために︑上述のように︑遺留分剥奪規定は限定列挙であるとされ︑

剥奪規定の拡大解釈は堅く拒絶されているのであるが︑さらに︑遺留分剥奪規定の刑罰的性格により︑遺留分剥奪の

ためには︑遺留分権者が責を負う行為の存在という過責要件が前提となっている︒この過責の要件により︑例えば︑

遺留分権者が︑被相続人を︑夜中彼を認識せずに殴打することにより虐待する場合は︑遺留分剥奪根拠から除外され

︵ 立

る︒このような法的価値評価が基礎にあるため︑実際上︑遺留分剥奪規定は限定的に解されざるを得ないのは︑

( l

) この他にも遣留分の好意的制限

(B GB

二三三八条︶︑相続放棄契約

(B GB

ニ︱二四六条︶によっても遺留分は制限されうる︒前

者は︑遺留分権者が高度の浪費をする場合又は債務超過である場合に︑家族の扶養を守り︑または遺留分を浪費や債務超過から 保護するという趣旨で設けられており︑後者は遺留分権者の同意が要件になっている︒本稿が目的とするところは︑上述のよう に︑遺留分権者の地位という観点での遺留分制度の特徴を明らかにすることにあり︑その基礎にあるのは︑遺留分が制限を受け るために︑遺留分権者の保護が薄くなっているか否かという視点である︒上述の二つの規定をみると︑前者は︑遺留分を制限す るよりもむしろ遺留分を保護する趣旨で設けられており︑後者については︑遺留分権者の同意が要件になっているが︑同意の上

遺留分を放棄することは︑厳密な意味での制限ではないと考えるので︑本稿では検討の対象から除外した︒

( 2

) ドイツ民法二三二五条一項﹁被相続人が第三者に贈与を行ったときは︑遺留分権利者は︑その贈与の目的物を遺産に加算する

ことにより遺留分が増加する額を︑遺留分の補充として請求することができる︒﹂三項﹁相続開始時に︑贈与の目的物の給付後十

年が経過したときは︑その贈与は加算しないものとする︒贈与が被相続人の配偶者に対して行われたときは︑この期間は婚姻解

消前は進行しない︒﹂

一 四

24-3•4-354 (香法 2005)

(15)

制限規定にみる遺留分権者の地位 行竹,

( 6

)  

(5

 

(4

 

( 3

)  

一 五

25 .  5

.  1

97 0,

 NJW 

19 70 ,  16 38 . 

店心牛ロ・姑緊四ロii紘畑廷外で本3る。而〗栽と姑笙口はムロ恣只会社を認丘営していたところ、定款

( G e s e l l s c h a f t s v e r t r a g )

によって︑一九五一二年︱︱一月二0

日に以下のように合意された︒すなわち﹁無限責任社員として︑父は五 0

%︑被告は四

0

%︑有限責任社員として母は一0

%の持分を有し︑父の死後︵母の死後も同様︶︑母が父の地位で無限責任社員 となり︑班と被告がそれぞれ五

0

%の持分を取得する︒両親の死後には被告が単独で会社を承継する﹂と︒父は一九五四年九月 三日に︑母は一九六五年四月一日に死亡した︒一九五三年︱二月一八日に作成された両親の共同遺言により被告が母の単独相続 人となった︒原告は遺留分を請求した︒両者が争ったのは︑母の会社持分が遺産に帰属するか否かであった︒

BGH

は︑本件の事 案においては︑契約によって想定された要件の発生により即時に母の会社持分が︑母のさらなる行為を何ら必要とせず︑被告に 帰属するという点︑および︑契約締結により︑被告は母の持分に対する期待権

( A n w a r t s c h a f t s r e c h t ) を取得しているという点に着 目し︑結論として︑受贈物の﹁給付﹂時は︑契約締結時の一九五三年︱二月二

0日であると判断した︒

R e u t e r   J u S  

19 71 ,  28 9,

291  

f f .  

ロイターは︑立法趣旨の観点から判例を批判している︒すなわち︑立法者の見解こよると︑同条の 一給付一とは﹁給付効果﹂であり︑現在でもそのように解すべきである︑遺留分権者の保護は︑浜界‑]おげる相続人の社会朗優

位を保源する手段として︑むしろ立法者が意図した程度において︑今日でもやはり正当化されるのである︑という:︳

BG II   ll r t c i l   v

o n

2 ‑  

1 .  9.  1 97

1 . 

NJ W 

19 74 ,  23 19 ,  23 21 . 

蔀 印

中 山

BGH

︱九

七 0年判決の判断枠組を踏まえつつ︑本件の土地譲渡の事 案こおいては︑伎相統人は︑たしかに彼女自身の個人的協働は権利移転にとってもはや意味を持たないという点では︑契約締結

'﹂より︑阪告の土地獲得のために必要なことを全て行ったといえるとした上で︑後掲︵注

9)

の論旨により︑結局︑﹁給付﹂がな

されたというためには︑契約締結のみならず︑少なくとも所有権移転の意思表示が必要であるとされた︒

BGH 

U r t e i l   vo n 

17 .  9

̀ 

.  1986 

BG HZ  9 8,

226  

11   NJW 

19 87 , 

122

  ; J

R 

19 87 , 

240 

( F r a

n k )  

JZ  1 98 7,

150  

( P a u l u s )

 

DN ot Z 

19 87 , 

315 

( N i e d e r ) 本件の事案における被告は︑一九六九年に死亡した父の単独相続人として父の創設した会社を承継した︒父は遺言に

よって︑母のために月四︑

OOODM

の定期金給付を被告に負担させた︒一九八二年に母︵本件の被相続人︶は死亡し︑遺言に よって被告が単独相続人となった︒被相続人の息子

Hの唯一の子︵原告︶は以下のように主張して遺留分を請求した︒すなわち︑

一九七三年のクリスマスイブに︑被相続人は︑月額一︑

OOODM

の以後の定期金給付を︑被告に対する贈与の方法で免除した ( s c h e n k w e i s e   e r l a s s e n ) ので︑累積した免除額の四分の一を遺留分または遺留分補充として請求できる︑と︒被告は︑そのような 定期金給付の免除は︑一九七

0年にはすでに行われ︑

BG

︱一三二五条三項における一0B

年の期間にかんがみて︑原告の請求を拒 否し た︒

BGHは︑そのような免除による贈与であっても同条の一0

年の起算点となりうると認定しながらも︑一九七三年におけ

BGH 

U r t e i l   vo n 

24-3•4-355 (香法2005)

(16)

る贈与の存否をなお確定しなくてはならないとして︑原審に差し戻した︒

( 7 )  

J u

S   1

98 7,

321  

( A

n m

.   H

o h l o

c h )

によると︑本判決によって︑﹁将来的には遺留分権者の︑保護に値する利益の保護がより強化さ

れる﹂︑すなわち﹁遺留分権者の利益の侵害を︑被相続人による遺産の計画的な減少

( p l a

n m a B

i g e

V e r r

i n g e

r u n g

d e  

N a s  

c h l a

s s e s

)

よって行うことが困難となる﹂として︑判例の意義を評価している︒

( 8

)  

( 9 )  

N J W  

1

98 7, 1  24  

BG H  Ur

t e i l

  v o

n  

24 .  9 .  1 97 4,

N 

JW  1

97 4, 2  31 9

被相続人から被告への土地の譲渡において︑契約締結時は一九五二年一0月一六

日︑相続開始時は︑一九七一年六月二六日であった0

BG

二三二五条三項により﹁給付﹂時から相続開始時まで一0年が経過しB

ているか否かが問題となった︒一九五二年の契約締結時には︑被相続人は︑公正証書による契約において︑被告に以下のような

権限を与えていた︒すなわち︑被相続人の死後︑被相続人に代わって所有権移転の意思表示を行い︑その他所有権移転登記のた

めに必要な全ての行為をなし︑さらに所有権移転の仮登記を申請する権限である︒このように被告の法的地位をとりわけ強化す

るような契約締結によってもなお︑同条の﹁給付﹂とはいえないと︑

BG

は判断した︒すなわち︑同条において要求されているH

土地の給付は︑目的物の直接の権利移転を内包する︑﹁履行行為の実行

d i e

V o

r n

a h

m e

  e i n

e r   V 

o l l z

i e h u

n g s h

a n d l

u n g

﹂を必要とし︑﹁給

付﹂のためには︑権利移転を法律行為に関与する者が自ら行うという方法で︑この履行行為を導かなくてはならない︒被相続人

が自身ですでに所有権移転のために必要な意思表示を︑後で権利移転の強制執行がなされうる形で行った場合には︑﹁給付﹂があっ

たといえる︒しかしながら︑本件の事案においては︑一九五二年一0月一六日の契約締結時に︑被告が与えられた権限に基づい

て土地の所有者となったかどうかは未だ明らかではなく︑被告が契約から生じる義務を履行しない場合には︑被相続人はなお当

該契約を取り消すことができるために︑やはり﹁給付﹂があったとはいえない︒以上のように判断した︒

( 1 0 )

 

BGB八七三条一項は、土地に対する物権の得喪変更にはー別段の規定がない限り—それに関する当事者の合意(物権的合意Einigung)と土地登記簿への登記が必要であると規定している。•

( 1 1 )   BG H  U r

t e i l

  v

o n

6 

.  5 .  1 98 7,  N JW  1 98 8, 1  38

本件において︑二人の原告︵姉妹︶は︑一九八三年八月一三日に死去した父︵被相

続人︶を単独で相続した母に対して︑

BG

二三二五条に基づく遺留分補充請求権を行使した︒父︵被相続人︶は︑一九七三年八B

月一日︑建物付きの土地を︑訴外A︵原告の兄︶に贈与した︒父︵被相続人︶は︑息子︵訴外

A)

と共に︑当該土地建物におい

て石工会社を経営していた︵持分各二分の一︶︒一九七三年八月一日の契約により︑父︵被相続人︶は︑会社を辞め︑息子︵訴外

A)

に会社および土地を譲渡した︒反対給付として︑Aは被相続人への定期金︵被相続人の死後は被告

11

母への定期金︶︑譲渡さ

一 六

24-3•4-356 (香法 2005)

(17)

制限規定にみる遺留分権者の地位 青竹)

( 1 2 )

 

( 1 3 )

 

( 1 4 )

 

BGHZ 

1 0 2 , 2  92   11  N

JW

 1

98 8, 8  22 上述のBGHZ

9 8 ,   22 6  11   N

JW

 1

9 8 7 , 1   22 における基準﹁被相続人の財産からの︑受贈物の経済 的分離

d i e w i r t s c h a f t l i c h e   A

us gl ie de ru ng

﹂が引き合いに出されている︒

5 5 .  

§2 32 5 

一 七

Rn .5 4,  

れた土地上の家屋の一定部分における両親への無償の居住権を約した︒被告は︑本件では贈与は存在せず︑たとえ贈与が存在す

るとしても︑相続開始より一0

年以上も前であり︑遺留分補充請求権を根拠付けることはできないと抗弁した︒原告は︑所有権 移転登記が一九七三年九月六日に行われ︑登記の申請は同年八月二四日であることを指摘した︒

BGH

は︑同条の期間の起算点と なるべき﹁給付﹂にとっては︑債務法上の契約

( d e r s c h u l d r e c h t l i c h e   V e r t r a g ) は重要ではなく︑基準となるのはむしろ︑いかなる 時点で個々の受贈物が同条の意味で客観的に給付された

( d e r e i n z e l n e   v e r s c h e n k t e   G

eg en st an d  i .   s .   vo n§ 23 25

 I I I  

BGB 

o b j e k t i v   g e l e i s t e t   wo rd en   i s といえるかであるとした上で︑本件では一九七三年八月一日に行われた所有権移転の意思表示だけでは十分ではなく︑t )

BGB

八七三条一項に基づいて︑土地の所有権は一般的には意思表示に加えて登記が行われたときにはじめて取得者に移転する︑

したがって所有権移転登記が行われた一九七三年九月六日には疑いなく﹁給付﹂が存在する︑と判断した︒

BGH 

U r t e i l   vo n  2 1 2 .   .   1

98 7,

BGHZ  

1 0 2 , 2   89   1 1 

NJ

1 9 8 8

,   82 1  1 1  Fa mR Z  1 9 8 8 , 2   8 0 .  

'件 にお いて

︑当 一事 者ぶ り父 は一 九五 四年 に死 亡 し︑母は一九八一年五月七日に死亡した︒三人の娘︑すなわち原告・被告・訴外

A

が母を三分の一ずつ相続した︒原告は︑一九 六九年九月一九日に母が被告に土地・家屋を贈与したが︑所有権が移転するのは一九七一年七月二八日の登記移転時であるので︑

二三二五条三項の期間制限には服さないと主張して︑遺留分補充請求権を行使した︒原審は原告の請求を棄却したが︑

BUHは上

述のように述べて破棄・羞戻しの決定を行った︒なお︑本判決の理由においては︑登記の移転ではなく登記の申請を同条の﹁給

付一の基準こする場合には︑BGH

によって常にとられている︒この点の憲法的意義

( d i e v e r f a s s u n g s r e c h t l i c h B e   ed eu tu ng )

の配慮

に基づく遺留分権者の利益の特別な保護に矛盾すると指摘されている

(B GH Z1 0 2 ,  

29 3)

BGHZ 

1 0 2 , 2  92   11  N

JW

1 

98 8 

̀ 

8 22

このよ︑つな立場に従うならば︑

NJ

W

1 9 7 0 ,   16 38 の事案のように︑被相続人の死を停止条件と する譲渡契約の場合においては︑被相続人の死が期間の起算点となり︑未履行の・形式適合的な贈与の約束

(B GB 五一 六条

︶は

被相続人死亡前には一0

年の期間は進行しないという解釈が導かれるとの指摘もある︒これは︑第三者のためにする死因贈与に おいて︑被相続人の処分権が留保されている場合︑とりわけ預金の場合にも妥当する︒さらに︑人的会社における贈与形式によ る社員採用の場合︑会社への社員の入社が︑期間の起算点となる︒社員契約上贈与が被相続人の死に条件付けられている場合に は︑被相続人の死亡以前が期間の起算点となることはない

S o e r g e l ,

BGB 

Ko mm en ta r, 1 3   .   A u f l . ,   2 00 2,  

(D ie ck ma nn ) 

24-3•4-357 (香法2005)

参照

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