• 検索結果がありません。

子どもの事故低減のための公園を中心とした遊び場 マネジメント

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "子どもの事故低減のための公園を中心とした遊び場 マネジメント"

Copied!
277
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

その他のタイトル A study on playground risk management for children's injuries reduction

著者 松野 敬子

発行年 2015‑03‑31

学位授与機関 関西大学

学位授与番号 34416甲第579号

URL http://doi.org/10.32286/00000070

(2)

子どもの事故低減のための

公園を中心とした遊び場マネジメント

A study on playground risk management for children’s injuries reduction

関西大学 社会安全研究科 防災・減災専攻

Graduate school of Safety Science, Kansai University

12D7503 松野

敬子

KEIKO MATSUNO

平成27年3月期 

関西大学審査学位論文

(3)

i

歳 児 を 除 き 、1 歳 ~

19

歳 ま で の 子 ど も の 死 亡 原 因 の 上 位 を 占 め る の は 、 一 貫 して「不慮の事故」で ある1。また、死亡に至 らずとも、なにかし ら の障害をも たらすおそれと なるの が事故であり、 事故の 防止、及び低減 対策を 講じること は、国をあげて の重要 な課題であろう 。

本研究は、子ど もの事 故の中でも、遊 び場に おける遊具に起 因する 事故の防 止を中心テーマ として いる。遊具によ る事故 は、子どもの事 故の中 でも、ほと んど顧みられる ことの なかったテーマ である 。子どもは、ど んなに 危険な場所 であろうが、危 険だと 脅されようが、 楽しい と思えば遊ぶこ とを止 めることは ない。そして、そ んな遊 び場で起きる不 幸な出 来事の厳しい結 果を受 けるのも、

子ども自身であ る。こ ういった事故は 、個人 的な不幸な出来 事とし て扱われ、

社会全体の課題 だと認 識されることは 難しい 。しかし、子ど もが子 どもらしく 振舞った結果生 じた怪 我に対して、子 どもを 責める社会は公 正であ ろうか。大 人が安全で豊か な遊び 場を提供するこ とは、 成熟した社会と してあ るべき姿で あり、大人に突 きつけ られた課題では なかろ うか。この課題 への理 論的、現実 的解決策を探る ことを 目的に執筆され たのが 、本論文である 。

遊びにまつわる 事故防 止対策は、一概 に安全 であれば良いと いうわ けにはい かないところに 難しさ がある。高 所に 登る、 大きく揺らすな ど危険 性の内在す る行為により成 り立つ 場合が多いのが 遊びで あり、安全を過 度に求め ることは、

楽しさを子ども から奪 うことになりか ねない 。つまり、 リス クも善 でありむし ろ必要とされる という 遊びの分野では 、リス クをどのように 理解し 、どこまで 許容し、それを マネジ メントしていく かとい う議論が必要で ある。 しかしなが ら、我が国の先 行研究 にはその視点が 充分で はなく、そのた めに、 実効性のあ る対策が講じら れず、 結果的に「安全 でも面 白くもない遊び 場」か ら抜け出せ ていない。以上 のこと から、本論文で は、先 進的な取組みを 行って いる 欧米の

1 厚 生 労 働 省 「 平 成24年 人 口 動 態 調 査 性 ・ 年 齢 別 に み た 死 因 順 位 」

(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei12/index.html 20141 ア ク セ ス )

(4)

ii

諸研究と実践を 参考に しつつ、我が国 の遊び 場事情に即した リスク と便益のバ ランスを考慮し たリス クマネジメント の枠組 みを検討した。 この点 で、本研究 はこれまでの研 究と一 線を画するもの である 。

本論文の構成は、ま ず 序章及び第

1

章に おい て、用語の定義と先 行 研究から の示唆及び論点 の整理 を行い、近接分 野等で 成果をあげてい る事故 防止対策か ら示唆を得た。

2

章では、本 論文の 本題である遊び 場及び 遊具における事 故防止 対策に関 する考察を行っ た。す なわち、欧州と 我が国 の公園の発展過 程と、 その過程で 取り組まれた安 全対策 の推移が歴史的 に概観 され、その過程 で争わ れた安全と リスクのバラン シング を巡る議論をサ ーベイ した。

2002

年に誕 生し た、我が国 の遊具の安全規 準は、 遊びの価値を尊 重しつ つハザードを除 去すべ きであると の理想を掲げ策 定され た。しかし、そ れを実 現するだけのノ ウハウ を持つこと がなかったため に、

12

年が経過した現 在も、遊具の安全 が大 きく改 善されたと はいえない。そ ういっ た状況に一石を 投じる ことを期待し、 安全指 針の象徴と もいえる「リス クとハ ザード」の 文言 の再考 を提案した。し かし、 これはその 理念を否定する もので はなく、この理 念の実 現を願うからで ある。

京都市の市営公 園を対 象とした遊具に よる事 故と公園管理の 実態を 調査・分 析を行った第

3

章を経 て、第

4

章では、ここ までの調査・検証 を基に 、遊具の リスクマネジメ ントの 実践を試みた。 具体的 な手法として、 英国で 用いられて いる、リスク・ベ ネフィ ットアセスメン トを援 用している。こ れは、従前のリス クアセスメント のよう に、リスクをス コアリ ングするのでは なく、 リスクと便 益を併記し、許 容可能 なリスクを管理 者が判 断していくとい うとい う手法であ る。数値にはな りづら い子どもの成長 などに 資する便益を、 記述に より可視化 することで査定 が可能 となる。また、 子ども に危害となり得 るハザ ードに関し ても可視化によ り、管 理者間の共通認 識とで きる。 リスクを どう予 測し、何に 価値を認め、そ してリ スク対処を決断 すると いう意思決定過 程の共 有化が図ら れ、より良い決 断へと 導くだろう。 リ スクマ ネジメントの本 質であ る決断を容 易にすると同時 に、決 断の 責任を個人 に負わ せることなく組 織や利 用者が共に 担いうるシステ ムの構 築という意味に おいて も有効である。

最後に、このリ スク・ベ ネフ ィットアセ スメン トを組み込んだ リスク マネジメ

(5)

iii

リスク許容レベ ルは高 くないというア ンケー ト結果もあり、 リスク 保持という 選択の承認を利 用者に 得にくい現実を 考慮し 、安全により軸 足を置 くことが妥 当だと結論づけ た。

以上のように、 本論文 では 、遊び場の 多様性 を考慮し、実効 性のあ るリスク マネジメントを 実施 し ていくことを提 言した 。

(6)

iv

目 次

序 章 本研究の課題と先行研究の概観

第1節 研究の目的と課題

··· 1

第2節 本稿における用語の定義

1.子どもの定義 ··· 4 2.遊び、遊び場、遊具

··· 13

第3節 先行研究の概観

1.遊び場の事故防止に関する先行研究と課題 ···

20

2.多様な分野での事故防止研究と歴史的概観 ···

24

第 1 章 子どもの事故の現況

第1節 子どもの事故の概要

1.データから見る子どもの事故と傷害 ··· 36 2. 子どもの事故防止に関する制度と施策 ··· 49 第2節 子どもの事故防止対策の現状と課題

··· 67

第2章 遊び場・遊具管理のあり方

1

節 遊び場・遊具の概観

1. 遊び場の誕生・発展と遊具の安全規準制定 ··· 78 2.遊び場の安全を巡る国際的動向と取り残された日本 ··· 99 第2節 日本の安全規準の位置づけと課題

1. 安全規準の概観と課題

··· 105

2.「リスクとハザード」概念の導入経緯

··· 112

3.事故データから見た遊具事故の実態

··· 118

第3節 安全規準の役割と課題

―リスクマネジメントの視点からの再考― ··· 143

(7)

v

1. 京都市消防局データの分析 ... 146 2. 京都市の公園遊具の実態調査 ... 154 第2節 事故データと公園調査からの考察

1. 遊具の設置面に関する課題 ... 158 2.事故情報の収集に関する課題 ... 164

第4章 遊び場リスクマネジメントと遊具事故防止対策

1

節 遊び場におけるリスクマネジメントの導入モデル

1. 国土交通省が推奨するマネジメント手法と

地方自治体の遊具管理の実際 ... 169 2. 遊び場に求められるリスクマネジメントモデル ... 179 第2節 遊具事故防止対策への提言

1.リスク・ベネフィットアセスメントを組み込んだ安全指針

... 200

2.遊び場の役割の多様性への配慮

... 206

終 章 総括と展望 ... 214

参考文献 ... 220

謝 辞 ... 242

付 録

子どもの外遊びと遊び場での事故の実態、及び保護者の遊び場での安全と リスクに関する意識調査 ···

243

(8)

vi

図 表 一 覧

序 章 図序-1 年齢別 身長平均値の推移 ··· 6

図序-2 年齢別握力テスト平均値の推移 ··· 6

図序-3 誕生から

18

歳までの発達段階 ··· 7

図序-4 受動的対策と能動的対策 ··· 27

表序-1 ピアジェ理論による各発達段階の思考・認知の特徴 ··· 11

表序-2 遊具の名称一覧 ··· 19

表序-3 学術研究データベースに登録されている研究論文数 ··· 20

表序-4 ハッドンのマトリックス表を用いて、交通事故の例 ··· 26

表序-5 ファルショッピング傷害防止プログラムの概要 ··· 35

第1章 図1-1

OECD

諸国の子どもの傷害の原因 ··· 36

図1-2 1~14歳の死亡原因の割合 ··· 39

図1-3 1~14歳の不慮の事故の内容 ··· 39

図1-4 1960年~2010年の

10

年ごとの不慮の事故死亡数··· 40

図1-5 2000年~2012年の不慮の事故種類別死亡数推移 ··· 40

図1-6 災害共済給付の給付状況の推移

1980

年~2013年 ··· 43

図1-7 東京消防庁救急搬送データ 場所別救急搬送人数 ··· 46

図1-8 東京消防庁救急搬送データ

0

歳~5歳年齢別・場所別救急搬送人数の割合 ··· 46

図1-9 東京消防庁救急搬送データ

0

歳~5歳事故種別救急搬送人数と中等症以上の割合 ··· 47

図1-10 東京消防庁救急搬送データ 「おぼれる」の初診時受傷程度の割合 ··· 47

図1-11 東京消防庁救急搬送データ 「おぼれる」の年齢別救急搬送人数と中等症以上の割合 ··· 47

図1-12 東京消防庁救急搬送データ 「落ちる」の初診時受傷程度の割合 ··· 48

図1-13 東京消防庁救急搬送データ 「落ちる」の年齢別救急搬送人数と中等症以上の割合 ··· 48

図1-14 製品安全

4

法の仕組み ··· 52

図1-15 0~19歳の不慮の事故による死亡率の推移 ··· 61

(9)

vii

表1-4 国民生活センターが公表したこんにゃく入りゼリーによる

死亡事故一覧··· 60

表1-5 文部省『教育白書』及び文部科学省『文部科学白書』に 報告された学校安全に関する記載 ··· 70~77 第2章 図

2-1

東京の小学校校庭の地面素材 ··· 89

2-2

大阪の小学校校庭の地面素材 ··· 89

2-3

遊具購入・設置に関しての安全基準の作成者 ··· 97

2-4

遊具購入・設置に関しての安全基準の有無 ··· 97

2-5

遊具購入・設置に関しての安全基準の必要性 ··· 98

2-6

安全点検・整備等に関しての安全基準の有無 ··· 98

2-7

安全点検・整備等に関しての安全基準作成者 ··· 98

2-8

安全点検・整備等に関しての安全基準の必要性 ··· 98

2-9

遊具類の事故情報収集担当部署の有無 ··· 98

2-10

遊具類の安全性を評価する委員会の有無 ··· 98

2-11

遊具の安全規準に関する国際的な変遷 ··· 104

2-12 ISO/IEC Guide51

でのリスクとハザードの定義 ··· 111

2-13 ISO/IEC Guide73

でのリスクとハザードの定義 ··· 111

2-14

日本の遊具の安全規準でのリスクとハザードの定義 ··· 111

2-15

死亡事故のあった箱ブランコ ··· 118

2-16

メーカーが想定している箱ブランコの遊び方 ··· 119

2-17

実際の子どもたちの箱ブランコの遊び方 ··· 119

2-18

都市公園における遊具の設置経過年数 ··· 134

2-19

年別遊具の事故により救急搬送人数 ··· 134

2-20

年齢別・性別の救急搬送人数と中等症以上の割合 ··· 135

2-21

月別遊具の事故による救急搬送された人数 ··· 136

2-22

場所別・年齢別の遊具の事故による救急搬送人数 ··· 136

2-23

遊具別の救急搬送人数と中等症以上の割合 ··· 136

2-24 1999

年~2009年に発生した外因性の死亡事故 ··· 141

2-25 2010

年小学校 遊具別事故件数と重傷事故の割合 ··· 141

(10)

viii

2-26 2010

年幼稚園・保育所 遊具別事故件数と重傷事故の割合 ··· 142

2-27

小学校の事故種別事故件数 ··· 142

2-28

幼稚園・保育所の事故種別事故件数 ··· 144

2-29 PDCA

サイクルを用いたリスクマネジメントの枠組み ··· 145

2-1

国交省安全指針で用いられるリスクとハザードの解釈 ··· 106

2-2

箱ブランコによる重大事故一覧 ··· 123

2-3

都市公園と厚生労働省管轄の施設等が設置する遊具における 30日以上の治療を要する重傷者又は死者が発生した」遊具事故件数 ···

124

2-4

厚生労働省管轄の施設等が設置する遊具で発生した事故調べ ·· 126

2-5

厚生労働省管轄の施設等が設置する遊具の種類別の事故件数 · 126 表

2-6

学校の管理下における箱型ブランコで発生した事故について · 127 表

2-7

遊具事故防止対策に関する国会議員・行政・業界の動き ··· 128~129 表

2-8

事故情報データバンクシステムに登録された 遊具による子どもの事故の件数 ··· 130

2-9

都市公園の遊具及び箱ブランコの撤去状況 ··· 132

2-10

遊具別・受傷形態別の救急搬送人数と中等症以上の割合 ··· 137

2-11 1999

年~2009年に発生した遊具による死亡事故詳細 ··· 138

3

章 図

3-1

遊具の種類別事故発生件数と中等症以上の総件数に対する割合

·· 149

3-2

発生場所別事故件数と中等症以上の総件数に対する割合 ··· 150

3-3

転落事故の遊具種類別・傷病程度別事故発生件数と割合 ··· 151

3-4

公園での事故 発生状況別件数と中等症以上の総件数に対する割合···

153

3-5

公園での事故 遊具種類別件数と中等症以上の総件数に対する割合 ···

153

3-6

京都市営公園の遊具の種類の内訳 ··· 154

3-7

伏見区大島公園 人研ぎ製複合遊具 ··· 155

3-8

西京区松陽公園 児童用・幼児用人研ぎ製すべり台 ··· 155

3-9

左京区高原公園 ジャングルジムの設置面 ··· 156

3-10

東山区三条東公園 うんていの設置面 ··· 156

3-11

西京区牛が瀬公園 登り棒の設置面 ··· 156

3-12

遊具の設置台数と設置面不備の割合 ··· 157

3-13

下京区有隣公園 迷路と呼ばれる遊具 ··· 157

3-14

伏見区内畑公園全景と登り棒の設置面(基礎露出) ··· 158

3-15

政令指定都市の遊具の点検頻度 ··· 159

(11)

ix

3-4

転落事故の遊具種類別・傷病程度別事故件数と割合 ··· 151

3-5

ジャングルジムによる転落事故の発生場所別・傷病程度別事故件数 ···

152

3-6

公園での事故 発生状況別件数・傷病程度別事故件数と割合 152 表

3-7

公園で発生した事故の遊具別発生件数と傷病程度の割合、 中等症以上の傷害の傷害名 ··· 153

3-8

京都市営公園の遊具設置台数と設置面不備の割合 ··· 157

3-9

政令指定都市の遊具による事故情報収集の連携先と 把握事故件数 ··· 166

4

章 図

4-1

リスクマネジメントの枠組みとプロセスの関係 ··· 171

4-2

国交省の研修で用いられているリスクとハザードの考え方 ··· 173

4-3

リスク・ベネフィットアセスメントを組み入れた リスクマネジメントのプロセス ··· 183

4-4

外遊びの評価 亀岡市 ··· 208

4-5

外遊びの評価 京都市・乙訓地域 ··· 208

4-6

遊具で遊ばせている時の親の関わり方 亀岡市 ··· 209

4-7

遊具で遊ばせている時の親の関わり方 京都市・乙訓地域 ··· 209

4-8

遊具の安全性に関して 亀岡市 ··· 210

4-9

遊具の安全性に関して 京都市・乙訓地域 ··· 210

4-10

怪我の許容レベル 亀岡市 ··· 211

4-11

怪我の許容レベル 京都市・乙訓地域

··· 211

4-12

遊具による怪我の責任の所在 亀岡市 ··· 211

4-13

遊具による怪我の責任の所在 京都市・乙訓地域 ··· 211

4-1

政令指定都市の公園担当者の「リスクとハザード」の解釈 ··· 177

4-2

政令指定都市における市管理の公園の設置面の対策状況 ··· 178

4-3

リスク・ベネフィットアセスメントにおける リスク・ハザード・ハームの定義 ··· 181

4-4

リスク・ベネフィットアセスメントにおけるグッドリスクと グッドハザード、及びバッドリスクとバッドハザードの定義

···· 181

4-5

考えられる遊びのベネフィットとリスク ··· 185

(12)

x

4-6

意志決定における伝統的技術と近代的技術 ··· 187 付記1 京都市を事例にした、

リスク・ベネフィットアセスメント実施シート1 ··· 196~197 付記

2

京都市を事例にした、

リスク・ベネフィットアセスメント実施シート

2 ··· 198~199

(13)

1

序 章 本 研 究 の 課 題 と 先 行 研 究 の 概 観

第 1 節 研 究 の 目 的 と 課 題

厚 生 労 働 省 の 人 口 動 態 統 計 に よ れ ば 、 赤 痢 な ど の 感 染 症 を 克 服 し た と さ れ る

1960

年 以 降 、先 天 的 な 要 因 の 大 き い

0

歳 児 を 除 き 、1 歳 ~

19

歳 ま で の 子 ど も の 死 亡 原 因 の 上 位 を 占 め る の は 、一 貫 し て「 不 慮 の 事 故 」で あ る1。ま た 、死 亡 に 至 ら ず と も 、 そ の 子 ど も の 将 来 を 左 右 す る よ う な 障 害 を も た ら す お そ れ が あ る の が 子 ど も の 事 故 で あ る 。 事 故 の 防 止 、 及 び 事 故 に よ る 傷 害 の 低 減 対 策 を 講 じ る こ と は 、 国 を あ げ て の 重 要 な 課 題 で あ ろ う 。 ま た 、 子 ど も の 死 亡 原 因 と し て

50

年 以 上 も 上 位 を 占 め 続 け て き た と い う こ と は 、 換 言 す れ ば 、 か く も 長 き に わ た り 有 効 な 対 策 が 講 じ ら れ て こ な か っ た こ と の 現 れ と も い え る だ ろ う 。

本 研 究 は 、 子 ど も の 事 故 の 中 で も 、 遊 び 場 に お け る 遊 具 に 起 因 す る 事 故 の 防 止 を 中 心 テ ー マ と し て い る 。 遊 具 に よ る 事 故 は 、 子 ど も の 事 故 の 中 で も 、 ほ と ん ど 顧 み ら れ る こ と の な か っ た テ ー マ で あ る 。 子 ど も は 、 ど ん な に 危 険 な 場 所 で あ ろ う が 、 危 険 だ と 脅 さ れ よ う が 、 楽 し い と 思 え ば 遊 ぶ こ と を 止 め る こ と は な い 。 そ し て 、 そ の よ う な 遊 び 場 で 起 き る 不 幸 な 出 来 事 の 厳 し い 結 果 を 受 け る の も 、 子 ど も 自 身 で あ る 。 こ う い っ た 事 故 は 、 個 人 的 な 不 幸 な 出 来 事 と し て 扱 わ れ 、 社 会 全 体 の 課 題 だ と 認 識 さ れ る こ と は 難 し い 。 し か し 、 子 ど も が 子 ど も ら し く 振 舞 っ た 結 果 生 じ た 怪 我 に 対 し て 、 子 ど も を 責 め る 社 会 は 公 正 で あ ろ う か 。 大 人 が 安 全 で 豊 か な 遊 び 場 を 提 供 す る こ と は 、 成 熟 し た 社 会 と し て あ る べ き 姿 で あ り 、大 人 に 突 き つ け ら れ た 課 題 で は な か ろ う か 。こ の 課 題 へ の 理 論 的 、 現 実 的 解 決 策 を 探 る こ と を 目 的 に 執 筆 さ れ た の が 、 本 論 文 で あ る 。

遊 び に ま つ わ る 事 故 防 止 対 策 は 、 一 概 に 安 全 で あ れ ば 良 い と い う わ け に は い か な い と こ ろ に 難 し さ が あ る 。 高 い 所 へ 登 っ た り 、 大 き く 揺 ら し た り と 、 危 険 性 の 内 在 す る 行 為 を 行 う こ と に よ り 成 り 立 つ の が 遊 び で あ り 、 安 全 を 過 度 に 求

1 厚 生 労 働 省 (2013)「2012年 人 口 動 態 調 査 性 ・ 年 齢 別 に み た 死 因 順 位 」

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei12/index.html 2014 1 ア ク セ ス )

(14)

序章 本研究の課題と先行研究の概観

2

め る こ と は 、 楽 し さ を 子 ど も か ら 奪 う こ と に な り か ね な い 。 子 ど も の 遊 び に お け る 事 故 防 止 対 策 に は 、 成 長 の 糧 と な る よ う な チ ャ レ ン ジ と し て の 危 険 を 残 し つ つ 致 命 傷 と な る 傷 害 を 起 こ さ せ な い と い う 、 相 反 す る 目 的 を 実 現 す る と い う こ と が 必 要 で あ る 。 換 言 す れ ば 、 リ ス ク の 便 益 は 受 容 し つ つ 、 受 容 可 能 を 超 え る リ ス ク を 排 除 し て い く た め の 効 果 的 な リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト の 方 法 論 が 求 め ら れ て い る と い う こ と で あ る 。

「 子 ど も に と っ て の 遊 び 」 と い う 特 殊 な 場 面 で は 、 リ ス ク も 善 で あ り む し ろ 必 要 と さ れ る 。 し か し 、 リ ス ク を ど の よ う に 理 解 し 、 ど こ ま で 許 容 し 、 そ れ を マ ネ ジ メ ン ト し て い く か と い う 根 幹 に 関 わ る 議 論 が 我 が 国 の 先 行 研 究 に は 充 分 で は な か っ た 。 そ の た め に 、 実 効 性 の あ る 対 策 が 講 じ ら れ る こ と が な く 、 結 果 的 に 「 安 全 で も 面 白 く も な い 遊 び 場 」 が あ る 状 態 か ら 抜 け 出 せ て い な い の で あ る 。 実 際 に 、 遊 び 場 の 事 故 防 止 の 先 進 国 で あ る 欧 米 で は 、 遊 び の 価 値 の 尊 重 と 事 故 防 止 の バ ラ ン シ ン ン グ が 中 心 テ ー マ と な っ て お り 、 見 る べ き 先 行 研 究 も 多 数 存 在 す る 。

本 論 文 で は 、 遊 具 の 事 故 防 止 を 論 じ る 上 で リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト の 視 点 が 欠 か せ な い こ と か ら 、 欧 米 の 諸 研 究 を 参 考 に し つ つ 、 以 下 の と お り 、 我 が 国 の 遊 び 場 事 情 に 即 し た 、 リ ス ク と 便 益 の バ ラ ン ス を 考 慮 し た リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト の 枠 組 み を 検 討 し て い く 。

ま ず 序 章 に お い て 、 本 研 究 に お け る 用 語 の 定 義 と 先 行 研 究 か ら の 示 唆 及 び 論 点 の 整 理 を 行 う 。 本 研 究 の 主 題 で あ る 遊 び 場 の 事 故 防 止 に 関 す る 先 行 研 究 は 、 我 が 国 で は わ ず か し か な い た め 、 こ こ で は 産 業 災 害 や 製 品 事 故 な ど 様 々 な 分 野 に お け る 事 故 防 止 に 関 す る 先 行 研 究 か ら も 知 見 を 得 る こ と を 試 み て い る 。

次 に 、第

1

章 で は 、遊 び 場 の 事 故 防 止 対 策 を 論 じ る に 先 立 ち 、子 ど も の 事 故 全 般 に お け る 防 止 対 策 を 概 観 し て い る 。 こ の 分 野 で は 長 き に わ た り 有 効 な 対 策 が 講 じ ら れ る こ と が な か っ た と 冒 頭 で 述 べ た が 、 そ の 要 因 は ど こ に あ る の か を 考 察 す る た め 、 関 係 省 庁 な ど に お い て 実 施 さ れ て き た 施 策 を 検 証 す る 。

2

章 で は 、 本 論 文 の 本 題 で あ る 遊 び 場 及 び 遊 具 に お け る 事 故 防 止 対 策 に 関 す る 考 察 を 行 う 。 す な わ ち 、 欧 州 と 我 が 国 の 公 園 の 発 展 過 程 と 、 そ の 過 程 で 取 り 組 ま れ た 安 全 対 策 の 推 移 が 歴 史 的 に 概 観 さ れ 、 そ の 過 程 で 争 わ れ た 安 全 と リ ス ク の バ ラ ン シ ン グ を 巡 る 議 論 を サ ー ベ イ す る 。 安 全 な 遊 び 場 づ く り の 先 進 国

(15)

3

で あ る 欧 米 で は 、 現 在 、 危 険 を 過 度 に 取 り 除 く こ と に よ り 遊 び 場 の 本 質 で あ る

「 ワ ク ワ ク 」「 ド キ ド キ 」と い っ た 面 白 さ ま で を 取 り 除 い て し ま っ た と い う 反 省 に 立 っ て 、 遊 び 場 に お け る 事 故 防 止 の 方 法 論 の 転 換 を 図 る べ く 活 発 な 議 論 が 交 わ さ れ て い る 。 か か る 試 行 錯 誤 の 中 か ら 、 実 効 性 の あ る 手 法 の 開 発 も 試 み ら れ て お り 、 学 ぶ べ き も の は 多 い 。 本 章 で は 、 こ う い っ た 欧 米 で の 議 論 と 取 り 組 み を 踏 ま え 、我 が 国 で

2002

年 に 策 定 さ れ た 遊 具 の 安 全 規 準 を 批 判 的 に 考 察 す る 。 第

3

章 で は 、 前 章 ま で に 論 じ て き た 公 園 管 理 に 関 す る 課 題 を 、 実 態 調 査 に よ り 確 認 し て い く 。 対 象 と し た の は 、 京 都 市 の 市 営 公 園 で あ る 。 京 都 市 は 、 明 治 の 初 期 か ら 近 代 的 な 街 づ く り が 推 進 さ れ 、

1886

( 明 治

19)年 に は 最 初 の 公 園

2が 開 設 さ れ る な ど 、

1

世 紀 以 上 に も わ た る 公 園 の 歴 史 を 持 つ 都 市 で あ る 。 ま た 、 公 園 は 町 の 中 心 部 に 立 地 さ れ 、 敷 地 も 広 く 、 遊 具 も 多 い 。 し か し 一 方 で 、 歴 史 が 古 い だ け に 遊 具 の 老 朽 化 と い う 問 題 も あ る 。 こ こ で は 、 京 都 市 消 防 局 か ら 提 供 さ れ た 子 ど も の 救 急 搬 送 に 関 す る デ ー タ を 基 に 、 遊 具 に よ る 子 ど も の 事 故 の 実 態 を 明 ら か に す る 。 さ ら に 、 そ の 背 景 要 因 分 析 の た め に 実 施 し た 京 都 市 営 公 園 の 全 数 調 査 に 基 づ き 、 公 園 に お け る 遊 具 の 現 状 ・ 実 態 を 分 析 ・ 考 察 す る 。

4

章 で は 、 投 機 的 リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト の 手 法 を 用 い 、 遊 具 の 事 故 防 止 対 策 を 考 察 し て い く 。 す な わ ち 、 遊 び 場 の リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト は 、 時 に は リ ス ク を あ え て 取 る こ と に よ り 、 遊 び の 価 値 で あ る 楽 し さ や 達 成 感 と い っ た 便 益 を 獲 得 で き る 投 機 的 リ ス ク と し 、 投 機 的 リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト の 手 法 を 選 択 し た 。 さ ら に 、そ の 具 体 的 な 手 法 と し て 、英 国 で 用 い ら れ て い る リ ス ク ・ベ ネ フ ィ ッ ト ア セ ス メ ン ト の 援 用 を 提 言 し て い く 。こ れ は 、従 前 の リ ス ク ア セ ス メ ン ト の よ う に 、 リ ス ク を ス コ ア リ ン グ す る の で は な く 、 リ ス ク と 便 益 を 記 述 式 に 併 記 し 、 許 容 可 能 な リ ス ク を 管 理 者 が 判 断 し て い く と い う 手 法 で あ る 。 こ の 手 法 を 我 が 国 に 導 入 す る た め の 留 意 点 を あ げ 、 よ り 実 効 性 の あ る 導 入 方 法 を 提 言 す る こ と を 試 み て い る 。

終 章 で は 、 本 論 文 を 要 約 し た 上 で 、 本 研 究 の 締 め く く り と し て 、 子 ど も の 育 ち の 場 と し て の み な ら ず 、子 育 て 支 援 の 場 と し て の 公 園 の あ り 方 を 論 じ て い る 。

2

1873年 、太 政 官 布 達 第 16号 通 達 に よ り 、全 国 14ヵ 所 が 公 園 に 定 め ら れ た も の の 一 つ 。

(16)

序章 本研究の課題と先行研究の概観

4

第 2 節 本 稿 に お け る 用 語 の 定 義

1 . 子 ど も の 定 義

1) 法 律 上 の 定 義

民 法 第

2

章 第

2

節 第

4

条 に よ り 「 年 齢 二 十 歳 を も っ て 、成 年 と す る 」と さ れ る よ う に 、 一 般 的 に は 、 子 ど も と は

20

歳 未 満 の 者 を 指 す 。 た だ し 、 児 童 福 祉 法 や 児 童 虐 待 防 止 法 な ど 主 に 福 祉 的 な 色 合 い の 濃 い 法 令 で は

18

歳 を 区 分 と す る も の も 存 在 す る 。ま た 、国 際 的 に は 、「 子 ど も の 権 利 条 約(

Convention on the Rights of the Child

)」の 第

1

条 で「 児 童 と は 、18 歳 未 満 の す べ て の 者 を い う 」 と 定 義 さ れ て い る の を は じ め と し て 、 多 く の 国 々 で

18

歳 未 満 の 者 を 子 ど も と 定 め て い る3。 こ う し た 世 界 の 大 勢 を 受 け 、 我 が 国 で も

18

歳 以 上 を 成 人 と す る 動 き も 見 ら れ る よ う に な っ て い る 。

も っ と も 、

18

歳 か

20

歳 か と い う 差 異 は 、 子 ど も の 事 故 防 止 を テ ー マ と す る 本 研 究 で は さ し た る 問 題 と は な ら な い だ ろ う 。と い う の も 、人 間 の 身 長4と 握 力

5の 年 齢 毎 の 推 移 を 示 し た 図 序

-1

な ら び に 図 序

-2

に よ れ ば 、 身 長 と 握 力 に つ い て の 身 体 機 能 的 な 差 異 は

18

歳 と

20

歳 で は 大 き な も の で は な い か ら で あ る 。一 方 、 身 長 と 握 力 は

0

歳 か ら

15~ 16

歳 頃 に か け て 年 々 急 伸 長 し て お り 、 年 齢 に よ る そ の 差 異 は 極 め て 大 き い 。 特 に 握 力 は 、 遊 具 を 利 用 す る 際 に は 決 定 的 に 重 要 と な る 身 体 的 機 能 で あ る 。 こ れ ら の こ と は 、

18

歳 と

20

歳 の 差 異 を 問 題 と す る よ り も 、

18

歳 未 満 の 子 ど も を 、さ ら に 発 達 段 階 に 応 じ て 細 分 化 し て 分 析 す る 必 要 が あ る こ と を 示 し て い る 。 子 ど も に 関 す る 問 題 が 論 じ ら れ る 場 合 、 そ の イ メ ー ジ す る 年 齢 が ほ ん の 少 し ず れ た だ け で 、 子 ど も は 全 く 異 な る 様 相 を 示 し 、 し ば し ば 議 論 が 噛 み 合 わ な い 事 態 が 起 こ り が ち で あ る 。こ れ は 、上 述 の と お り 、 こ の

15~ 16

歳 頃 ま で の 子 ど も は 極 め て 身 体 的 な 変 化 が 大 き い こ と に 基 づ い て い る 。

3 国 会 図 書 館 調 査 及 び 立 法 考 査 局(2008)「 主 要 国 の 各 種 法 定 年 齢 」、2頁 。

「 選 挙 権 年 齢 の 世 界 の 趨 勢 は 18 歳 で あ る と い っ て よ い 。 調 査 し た 189 か 国 ・ 地 域 の う ち 、18歳 ま で に (16、17 歳 を 含 む ) 選 挙 権 を 付 与 し て い る の は 170 か 国 ・ 地 域 と な っ て お り 、 割 合 に し て 89.9% に 上 る 」 と あ る 。

4

身 長 は 、 体 重 と 比 較 し て 、 成 育 環 境 な ど に よ る 影 響 が 少 な く 、 人 間 の 成 長 を 評 価 す る 指 標 と し て 適 し て い る 。 食 生 活 な ど に よ り 、 成 人 よ り も 体 重 の 重 い 子 ど も は い る が 、 成 人 よ り も 身 長 が 高 い 子 ど も は 稀 だ と い う こ と で あ る 。

5 握 力 は 、 全 身 の 筋 力 を 表 す 指 標 と し て 用 い ら れ る こ と が 多 い 。

(17)

5

そ う し た 点 を 考 慮 し て 作 成 さ れ て い る の が 、子 ど も の 製 品 事 故 防 止 の た め の 国 際 的 な ガ イ ド ラ イ ン で あ る

ISO/IEC Guide50

で あ る 。そ こ で は 、子 ど も は「 生 後 か ら

14

歳 ま で の 人 」6と 定 義 さ れ 、さ ら に 、「 子 ど も は 、小 さ な 大 人 で は な い 。 ハ ザ ー ド に さ ら さ れ て い る と い う こ と と と も に 、 成 長 段 階 が あ る と い う こ と も 含 め 、 子 ど も 特 有 の 性 質 は 、 大 人 と は 違 っ た 外 傷 リ ス ク に さ ら さ れ て い る 。 発 達 段 階 と は 、 子 ど も の 体 の 大 き さ 、 体 型 、 生 理 学 的 、 身 体 や 認 知 能 力 、 情 緒 の 発 達 、 適 応 性 を 広 く 含 む も の で あ る 。 こ れ ら の 性 質 は 、 子 ど も の 発 達 に 応 じ て 急 速 に 変 化 す る 。 そ の た め 、 両 親 や 養 育 者 は 、 し ば し ば 、 発 達 段 階 の 違 い に よ っ て 、 過 大 に も 過 小 に も 評 価 し て し ま い 、 そ の 結 果 、 子 ど も を ハ ザ ー ド に さ ら し て し ま う 。 こ う い っ た 状 況 は 、 子 ど も を 取 り 巻 く 環 境 の 多 く が 、 大 人 用 に デ ザ イ ン さ れ て い る と い う 事 実 に よ り 、増 幅 さ れ て い る 」7と 明 記 さ れ て い る 。つ ま り 、本 研 究 の よ う な 子 ど も の 事 故 防 止 を 扱 う 場 合 に は 、18 歳 に 満 た な い 子 ど も を さ ら に 発 達 段 階 に 応 じ て 細 分 化 す る 必 要 が あ る と い う こ と が 示 さ れ て い る 。

図 序

-3

は 、 誕 生 か ら

18

歳 ま で の 発 達 段 階 を 、 様 々 な 見 地 か ら 一 覧 に し た も の で あ る 。 こ の 図 か ら 分 か る よ う に 、 社 会 的 習 慣 や 制 度 、 身 体 的 機 能 、 認 知 的 側 面 、 い ず れ の 分 類 に よ っ て も 、 子 ど も 時 代 を 乳 幼 児 期 、 学 童 期 、 青 年 期 と い う 三 つ の フ ェ ー ズ に 分 け る こ と が で き 、 発 生 し や す い 事 故 も 、 各 フ ェ ー ズ の 身 体 的 、 認 知 能 力 的 な ど で 、 異 な る こ と が 示 唆 さ れ て い る 。

以 下 に 、 身 体 的 発 達 側 面 と 認 知 能 力 的 側 面 か ら 、 こ の 点 を さ ら に 詳 し く 見 て い く 。

6 ISO/IEC. (2002). ISO/IEC Guide50:2002 : Safety aspectsguidelines for child safety, p.2.

7 Ibid., ,p.3.

(18)

序章 本研究の課題と先行研究の概観

6

0

10 20 30 40 50

60㎏ 表序-2 年齢別 握力テスト平均値の推移

男子 女子

出 所 : 文 部 科 学 省 (2013)「 平 成 24年 度 体 力 ・ 運 動 能 力 調 査 結 果 年 齢 別 握 力 」 を 基 に 筆 者 作 成 。

0 20 40 60 80 100 120 140 160

180cm 表序-1 年齢別 身長平均値の推移

出 所 : 厚 生 労 働 省 (2014) 「 平 成 25年 度 2-6表 身 長 ・ 体 重 の 平 均 値 、 性 ・ 年 次 × 年 齢 別 」 『 厚 生 統 計 要 覧 』 を 基 に 筆 者 作 成 。

(19)

7

(20)

序章 本研究の課題と先行研究の概観

8

2) 身 体 的 発 達 の 側 面

各 フ ェ ー ズ の 特 徴 を 、 ま ず 身 体 的 発 達 面 を 中 心 に 、 生 物 学 の 立 場 か ら 見 て い く 。

誕 生 か ら

6

歳 未 満 の 乳 幼 児 期 の 特 徴 は 、 身 体 的 、 認 知 能 力 的 の い ず れ も 未 成 熟 で あ る が 、一 方 で 特 に 身 体 機 能 ・能 力 に 関 し て は 劇 的 に 発 達 し て い る 点 で あ る 。

ス イ ス の 生 物 学 者 ア ド ル フ ・ ポ ル ト マ ン (

Adolf Portmann) は 、 人 間 の 出

産 形 態 を「 生 理 的 早 産

( Die Physiologische Frühgeburt )」と 名 付 け て い る

8。 ポ ル ト マ ン は 、哺 乳 動 物 の 出 産 形 態 を「 就 巣 性

( Nesthocker)

」( 孵 化 し た 後 も 巣 に 留 ま り 自 食 し な い 鳥 類 = 出 産 後 し ば ら く は 巣 に 留 ま っ て 親 に 養 育 し て も ら う の 意 ) と 「 離 巣 性

(Nestfluchter)

」( 孵 化 し た 後 、 た だ ち に 飛 び 立 つ 鳥 類 = 出 産 直 後 か ら 一 定 の 巣 立 ち 能 力 を 有 す る の 意 )と に 分 類 す る 。前 者 は 、ね ず み ・ う さ ぎ な ど の げ っ 歯 類 や テ ン・犬・猫 な ど の 小 型 の 肉 食 類 で 、妊 娠 期 間 が 短 く 、 一 度 の 出 産 頭 数 が 多 く 、 脳 髄 が 発 達 し て い な い た め 脳 も 小 さ い 。 後 者 は 、 象 ・ 牛・き り ん な ど 有 蹄 類 、ア ザ ラ シ・鯨 、そ し て チ ン パ ン ジ ー な ど の 猿 類 な ど で 、 妊 娠 期 間 が 長 く 出 産 頭 数 も 少 な い 。 ま た 、 新 生 児 の 段 階 で 親 と ほ ぼ 同 じ 外 形 を 有 し 、 脳 も 比 較 的 大 き い 。 二 者 の 生 物 学 的 な 違 い は 、 胎 児 期 間 に 身 体 器 官 ・ 感 覚 神 経 系 の 構 造 を 発 達 さ せ る か 否 か と い う 点 に あ る 。し た が っ て 、妊 娠 期 間 は 、

「 就 巣 性 」は 短 く 、「 離 巣 性 」は 長 い 。例 え ば 、「 就 巣 性 」で は 、ね ず み

15

日 、 犬 ・ 猫

60

日 、「 離 巣 性 」 で は 、 象

650

日 、 牛

280

日 、 き り ん

450

日 、 チ ン パ ン ジ ー

210

日 で あ る 。 人 間 は 、

300

日 弱 と 「 離 巣 性 」 と 同 程 度 の 妊 娠 期 間 を 持 ち な が ら 、 直 立 二 足 歩 行 や 離 乳 ま で に

1

年 程 度 必 要 と い う 「 就 巣 性 」 の 特 徴 を 示 す 。

こ の 人 間 の 特 徴 を 、 ポ ル ト マ ン は 「 二 次 的 離 巣 性 」 と 呼 び 、 そ の 状 態 を 「 生 理 的 早 産 」 と し た 。 そ し て ま た 、 彼 は 、 人 間 が 生 理 的 早 産 状 態 で 産 ま れ て く る 理 由 を 、「 骨 盤 口 の 広 さ と 子 ど も の 頭 の 大 き さ と の 関 係 」と す る 説 に 疑 問 を な げ か け 、 そ れ は 人 間 の 発 達 の 特 異 性 で あ り 必 要 だ か ら 生 理 的 早 産 が 起 こ る と し て

8 Portmann, Adolf (1969), Biologische Fragmente zu einer Lehre vom Menschen (2., erw. Aufl edn.: Schwabe) ,pp.57-59 / 高 木 正 孝 訳(1961)『 人 間 は ど こ ま で 動 物 か:新 し い 人 間 像 の た め に 』 岩 波 書 店 ( 原 書 は 1969年 の 第 2版 。 参 考 と し た 翻 訳 書 は 、1956年 に 出 版 さ れ た 叢 書 版 で あ る が 、 引 用 箇 所 の 記 載 内 容 は 同 じ も の で あ る )、60-62頁 。

(21)

9

い る9。つ ま り 、仕 方 な く 早 産 と な る の で は な く 未 熟 児 と し て 母 胎 か ら 早 期 に 出 る こ と に よ り 人 間 と し て 独 特 の 発 達 を す る と い う 。離 巣 性 を 示 す 高 等 哺 乳 類 は 、 長 い 妊 娠 期 間 に 、 母 胎 内 と い う 遺 伝 的 に 割 り 当 て ら れ た 環 境 の 中 で 完 成 し た 後 に 出 産 す る 。 そ の た め 、 そ れ ら の 動 物 の 子 ど も は 、 親 と ほ ぼ 同 様 の 外 形 で 誕 生 し 、 行 動 も す る 。 一 方 人 間 は 、 未 成 熟 な 段 階 で 母 の 胎 内 を 離 れ て 「 世 に 出 さ れ る 」。成 熟 の 最 も 重 要 な 時 期 に 、社 会 と い う 環 境 の 中 で 育 つ こ と に よ り 、後 天 的・

経 験 的 な 学 習 の 可 能 性 を 最 大 化 す る こ と に な る 。 こ の 点 が 他 の 高 等 哺 乳 動 物 と 決 定 的 に 異 な る 発 達 過 程 で 、 要 す る に 人 間 は 、 誕 生 の 後 に 環 境 や 周 囲 か ら の 働 き か け に よ り 、 そ の 発 達 が 左 右 さ れ る 、 と い う の が ポ ル ト マ ン の 主 張 で あ る 。 実 際 に 「 巣 立 つ も の 」 に な る ま で の 生 理 的 早 産 の 後 の

1

年 間 ( 一 般 的 に は 乳 児 期 ) に 、 人 間 は 直 立 姿 勢 、 言 葉 の 習 得 、 思 考 力 の 形 成 な ど の 知 的 な 発 達 を 遂 げ る 。 し か し 、 こ の 時 期 を 越 え て も 、 身 辺 自 立 を 果 た す の は

6

歳 を 待 た な け れ ば な ら な い 。 こ の 生 後

1

年 以 降 の

5

年 間 ( 一 般 的 に は 幼 児 期 ) を 、 ポ ル ト マ ン は 、脳・歯・顎 の 発 達 が お 互 い に 関 係 し な が ら 進 展 し 、同 時 に 、言 語 を 習 得 し 、 客 観 的 な 表 現 能 力 を 持 ち 始 め 、 様 々 な 社 会 体 験 を す る 中 で 内 面 的 な 発 達 を 遂 げ る 時 期 だ と し て い る 。 そ し て 、

6

歳 が 就 学 と い う 社 会 的 な 制 度 と 一 致 す る こ と は 、 け っ し て 偶 然 で は な く 生 涯 の 節 目 で あ る と し て い る 。 こ の ポ ル ト マ ン の 指 摘 は 、一 般 的 な 子 ど も の 発 達 現 象 と 一 致 し て い る の は 図 序

-3

が 示 す と お り で あ る 。 こ の 誕 生 か ら

6

歳 と い う 乳 幼 児 期 を 、 子 ど も 対 保 護 者 と い う 視 点 か ら 見 た 場 合 、 生 理 的 早 産 時 期 は

100% に 近 く 親 に 依 存 し て お り 、 そ れ 以 降 、 徐 々 に そ

の 割 合 は 下 が る に し て も 、 子 ど も と は 保 護 者 に 身 辺 を 庇 護 さ れ る べ き 時 期 で あ る と い え る だ ろ う 。

一 方 、

6

歳 以 上 の 特 徴 に つ い て ポ ル ト マ ン は 、 人 間 は 他 の 高 等 哺 乳 類 に 比 べ て か な り 特 有 の 発 達 を し て い く と 述 べ て い る10。 乳 幼 児 期 の 体 重 ・ 身 長 な ど の 身 体 的 な 発 育 は じ つ に ゆ っ く り で あ る 。 他 の 哺 乳 類 は 生 後 か な り 早 く か ら 発 育 し 、 生 殖 も 可 能 と な る が 、 人 間 は 性 的 成 熟 期 で あ る

14

歳 ご ろ ( い わ ゆ る 思 春 期 ) ま で は 、 緩 慢 に し か 発 育 せ ず 、 こ の 時 期 に な っ て 急 に 発 育 が 加 速 さ れ る 。 こ れ も 、 ポ ル ト マ ン は 、 遺 伝 的 な 影 響 で は な く 練 習 し な が ら 本 当 の 人 間 的 な 可

9

Portmann, Adolf (1969)

,

op.cit.,pp.61-64 / 前 掲 訳 書 (1961)、71-73頁 。

10 Ibid., pp.97-100 / 同 上 訳 書 (1961)、113-117頁 。

(22)

序章 本研究の課題と先行研究の概観

10

能 性 を 成 熟 さ せ つ つ 発 達 す る と い う 人 間 の 発 達 特 性 だ と い う 。 つ ま り 、 こ の 乳 幼 児 期 と 青 年 期 の 過 渡 期 と し て 位 置 づ け ら れ る 学 童 期 は 、 人 間 に と っ て 様 々 な 経 験 を 重 ね 、 成 熟 す る た め の 必 要 な 時 間 だ と い う こ と だ ろ う 。 子 ど も 対 保 護 者 と い う 視 点 か ら 見 た 場 合 、 保 護 者 か ら の 庇 護 の み で は 成 熟 へ の 道 筋 の 障 害 と な る 、 し か し 、 身 体 的 な 発 育 は ま だ ま だ 途 上 で あ る た め 、 そ の 脆 弱 性 は 否 め な い と い う 時 期 で あ る こ と が 読 み 取 れ る だ ろ う 。

13

歳 以 降 の 青 年 期 に 入 る と 、 身 体 機 能 ・能 力 は 急 激 に 伸 び 、 成 人 の 姿 態 へ と 発 達 を 遂 げ る 。 ま た 、 性 的 に 成 熟 す る 過 程 で 雌 雄 形 態 の 差 が 顕 著 と な る 第 二 次 性 徴 が 現 れ 、 男 ら し い 、 あ る い は 女 ら し い 体 つ き と な る 。 ポ ル ト マ ン は 、 青 年 期 の 前 半 の 体 重 増 加 が 加 速 す る 時 期 と そ の 後 の 身 長 伸 長 が 加 速 す る 時 期 に 注 目 し 、 体 の 割 合 の 変 化 と 心 理 的 な 活 動 の 変 化 に 、 一 定 の 関 係 性 が あ る の で は な い か と し て い る が 、 個 人 差 の 大 き い 成 人 の 身 体 特 徴 と 心 理 の 関 連 づ け は 説 得 力 に 欠 け る 。 こ の 時 期 の 劇 的 な 身 体 変 化 は 、 そ れ を 引 き 金 に 精 神 面 で の 成 長 を 遂 げ る 時 期 で あ り 、 同 時 に 、 精 神 的 な 不 安 定 さ を も た ら す 時 期 と し て 子 ど も の 成 長 を 捉 え て い か な け れ ば な ら な い だ ろ う 。 こ れ は 、 子 ど も 対 保 護 者 の 関 係 性 で 見 た 場 合 、 保 護 者 か ら の 自 立 を 果 た す 時 期 で あ る 。

3)

認 知 能 力 的 側 面

次 に 、子 ど も の 認 知 能 力 的 な 発 達 に つ い て 、児 童 心 理 学 の 視 点 か ら 見 て み る 。

20

世 紀 、児 童 心 理 学 の 世 界 で 最 も 影 響 の 大 き か っ た と い わ れ る の は 、ス イ ス の 児 童 心 理 学 者 ジ ャ ン ・ ピ ア ジ ェ(

Jean Piaget

)で あ る 。彼 も 、ポ ル ト マ ン と 同 様 の 生 物 学 を 最 初 に 研 究 し 、 そ の 後 心 理 学 へ と 研 究 を 進 め た 学 者 で あ る 。 徹 底 し た 子 ど も の 観 察 と 実 験 手 法 を 用 い 、 子 ど も の 思 考 が ど の よ う に 発 達 す る か を 理 論 化 し た こ と で 高 い 評 価 を 受 け た 研 究 者 で あ る 。 ピ ア ジ ェ 理 論 は 、 そ の 解 釈 だ け で も 一 つ の 研 究 分 野 と な る ほ ど の 理 論 で あ る が 、 一 般 的 に は 以 下 の よ う に 説 明 さ れ て い る 。

「 人 間 の 認 知 、 思 考 の 発 達 を 個 人 と 環 境 の 相 互 作 用 と い う 点 か ら 説 明 し よ う と し て い る 。 す な わ ち 、 人 間 は 自 分 の 持 っ て い る 認 識 の 枠 組 み ( シ ェ マ ) を 用 い て 環 境 か ら 情 報 を 取 り 入 れ た り( 同 化 )、環 境 に 適 応 す る た め に 現 在 の シ ェ マ

(23)

11

を 変 更 し た り ( 調 整 ) し な が ら 、 同 化 と 調 整 の バ ラ ン ス を 取 る こ と ( 均 衡 化 ) に よ っ て 認 知 、思 考 が 構 造 的 に 変 化 し な が ら 徐 々 に 発 達 し て い く と さ れ る 」11。 さ ら に 、 ピ ア ジ ェ 研 究 で 知 ら れ て い る 増 田 公 男 は 、 ピ ア ジ ョ に よ る 各 年 齢 段 階 に お け る 思 考 、 認 知 の 発 達 特 徴 を 表 序

-1

の よ う に 示 し て い る 。

ピ ア ジ ェ 理 論 で は 思 考 は 行 為 か ら 発 達 す る と さ れ 、子 ど も の 乳 幼 児 期 の 前 半(

2

歳 ま で 、 感 覚 運 動 期 ) は 、 生 ま れ な が ら 備 わ っ た 環 境 と や り と り す る 手 段 と し て 「 吸 う 」・「 握 る 」 と い っ た よ う な 運 動 反 応 を 身 に つ け て お り 、 そ う い っ た 反 射 的 な 運 動 か ら ま ず は 自 分 の 身 体 を 認 識 し 、 さ ら に 、 周 囲 の 事 物 、 自 分 の 行 為 と 周 囲 と の 関 係 に 対 す る 認 識 を 形 成 し て い く 。 つ ま り 、 こ の 時 期 は 、 何 で も 口 に 入 れ て 吸 い 、 触 っ て 握 る と い う 行 為 が 繰 り 返 さ れ る 時 期 で あ る 。 そ の 結 果 、

「 痛 い 」 や 「 熱 い 」 な ど の 感 覚 を 認 知 す る が 、 そ こ に 因 果 関 係 が あ る と い う 認 知 ま で は で き な い 。

11

増 田 公 男 (2011)『 発 達 と 教 育 の 心 理 学 』 あ い り 出 版 、66 頁 。 表 序-1 ピ ア ジ ェ に よ る 各 発 達 段 階 の 特 徴

感 覚 運 動 期 (0~2歳 )

1次循環反応

(6週~4ヶ月)

指 を 口 で 吸 う な ど の 快 を 伴 う 動 作 の く り 返 し 、 自 分 の 身 体 に 関 す る 認 識 を 形 成 す る 。

第2次循環反応

(4~8ヶ月)

自 分 の 周 囲 の 対 象 に 対 し て は た ら き か け 、 自 分 を 取 り 巻 く 世 界 に 関 す る 認 識 を 形 成 す る 。

第3次循環反応

8ヶ 月 ~ )

対 象 へ の は た ら き か け を 変 化 さ せ る こ と で 、 結 果 の 変 化 を 確 か め る な ど 実 験 的 な 行 動 を お こ な い 、 自 分 の 身 体 と 周 囲 の 世 界 と の 関 係 に 関 す る 認 識 を 形 成 す る 。

前 操 作 期 (2~7)

前概念的思考期

2~4歳 )

表 象 や 象 徴 機 能 の 発 達 に よ り 、 対 象 を 心 の 中 で 操 作 す る こ と が 可 能 に な る 。 概 念 に よ る 分 類 が 困 難 で あ り 、 そ れ ぞ れ を 個 別 の 対 象 と し て み な す 傾 向 が あ る 。

直 観 的 思 考 期

4~6歳 )

対 象 の 見 か け の 変 化 に 左 右 さ れ 、 質 的 、 重 さ 、 長 さ な ど の 保 存 の 概 念 に 到 達 で き な い 。 こ の た め 、 対 象 の 見 か け が 変 化 す る と そ の 質 量 ま で 変 化 す る と 考 え る 。

他 者 の 視 点 の 獲 得 や 複 数 の 視 点 の 統 合 が 難 し い 、 自 己 中 心 性

( 中 心 化 ) の 特 徴 を 持 つ 。 具 体 的 操 作 期

(7~12)

幼 児 期 の 特 徴 で あ る 自 己 中 心 性 の 特 徴 は 薄 れ る ( 脱 中 心 化 ) 。

具 体 的 に 理 解 で き る も の に つ い て は 、 知 覚 に 左 右 さ れ ず 論 理 的 操 作 を 使 っ て 思 考 す る こ と が で き る 。

形 式 的 操 作 期 (12歳 以 降)

抽 象 的 な 命 題 に 対 し て も 、 論 理 的 な 思 考 が 可 能 に な る 。 形 式 的 操 作 の 完 成 に は 文 化 や 個 人 に よ る 領 域 特 殊 的 な 差 異 が あ り 、 す べ て の 人 が す べ て の 分 野 で 達 成 で き る わ け で は な い と さ れ る 。

出 所 : 増 田 公 男 (2011) 『 発 達 と 教 育 の 心 理 学 』 あ い り 出 版 、66頁 。

(24)

序章 本研究の課題と先行研究の概観

12

次 に 、 乳 幼 児 期 の 後 半 (

7

歳 ま で 、 前 操 作 期 ) に な る と 、 表 象 ( 目 の 前 に そ の も の が な い 場 合 で も 心 の 中 に 思 い 浮 か べ る こ と の で き る 能 力 )や 象 徴 機 能( 物 事 や 事 象 を 別 の も の に よ っ て 認 識 す る 能 力 ) が 発 達 す る 。 換 言 す れ ば 「 ご っ こ 遊 び 」 が 可 能 に な る 。 例 え ば 、 電 車 ご っ こ は 、 電 車 が そ こ に な く て も 電 車 を イ メ ー ジ し て 遊 ぶ こ と が で き 、 ロ ー プ を 電 車 に 見 立 て る こ と が で き る の は 象 徴 機 能 に よ る も の で あ る 。 し か し 、 ま だ こ の 時 期 の 思 考 は 未 成 熟 で 、 自 分 の 立 場 で し か 物 事 が 判 断 で き な い と い う 「 自 己 中 心 的 な 思 考 」 に な っ て い る 。 認 知 発 達 の 側 面 か ら 乳 幼 児 期 を 見 る と 、 大 き く 発 達 す る 時 期 で は あ る が 、 ま だ ま だ 不 完 全 な 時 期 で あ る と い え る 。

一 般 的 に は 学 童 期 に あ た る

7

歳 以 降 は 、 具 体 的 操 作 期 と さ れ て い る 。 ピ ア ジ ェ 理 論 で の 「 操 作 」 と は 、 物 事 を 空 間 的 ・ 時 間 的 に 順 序 立 て て 思 考 す る こ と で あ り 、換 言 す れ ば「 論 理 的 思 考 」と い う こ と に な る 。ま た 、「 具 体 的 操 作 期 」と は 、物 事 を 象 徴 的 に 理 解 す る 論 理 的 な 力 が 備 わ り 、分 類 し た り 、系 統 立 て た り 、 保 存 ( あ る 一 定 の 数 や 量 が 移 動 、 変 形 さ れ て も 取 っ た り 加 え た り し な い 限 り 不 変 で あ る と い う こ と ) と い う よ う な 具 体 的 な 論 理 的 思 考 が 発 達 す る 時 期 と い う 意 味 で あ る 。 数 や 文 字 の 概 念 を 理 解 で き る よ う に な る た め 、 就 学 が 可 能 と な る わ け で あ る 。

そ し て 、12 歳 以 降 の 形 式 的 操 作 期 に な る と 、具 体 的 操 作 に よ る 結 果 を 取 り 上 げ 、 そ れ ら の 論 理 的 関 係 に つ い て の 仮 説 を 形 成 す る 能 力 が 備 わ っ て く る 。 つ ま り 、 将 来 起 き る で あ ろ う 変 化 や 可 能 性 の 世 界 に 対 し て も そ の 結 果 を 論 理 的 に 予 測 す る こ と や 、 行 為 の 結 果 を 思 い 描 い て 現 在 と る べ き 行 動 を 選 択 す る と い う よ う な 思 考 が で き る よ う に な る 。 ピ ア ジ ェ 理 論 に 拠 れ ば 、 事 故 の 予 防 的 な 教 育 が 可 能 で あ る の は 、 こ の 時 期 以 降 で あ る と い う こ と に な る 。

以 上 、 子 ど も の 発 達 に つ い て 、 身 体 的 、 認 知 能 力 的 側 面 か ら 見 て き た が 、 本 研 究 の テ ー マ で あ る 、 子 ど も の 事 故 防 止 と い う 観 点 か ら 見 て も 、

6

歳 ま で の 乳 幼 児 期 、13歳 ま で の 学 童 期 、そ れ 以 降 の 青 年 期 と

3

段 階 区 分 す る こ と は 必 要 不 可 欠 で あ る こ と が 理 解 で き る 。 特 に 、 子 ど も に 対 す る 保 護 者 の 役 割 は 全 く 異 な り 、 各 フ ェ ー ズ で そ の 役 割 を 誤 る こ と は 子 ど も の 事 故 を 誘 発 す る ば か り か 、 子 ど も の 健 全 な 成 長 を 阻 害 す る こ と に な る だ ろ う 。 こ う し た ピ ア ジ ェ 理 論 を 媒 介 に す る と 、 我 々 は 先 に 述 べ た 、

ISO/IEC Guide50

に お い て 子 ど も は 「 生 後 か

(25)

13

14

歳 ま で の 人 」 と 定 義 さ れ 、 ま た 「 子 ど も は 小 さ な 大 人 で は な い 」 と し た 子 ど も の 捉 え 方 に 十 分 な 合 理 性 を 感 じ る こ と が で き る 。 し た が っ て 、 子 ど も の 遊 び に お け る 事 故 防 止 を 扱 う 本 研 究 で は 、 さ し あ た り 子 ど も を

14

歳 以 下 の 者 と し て 考 察 す る こ と と す る 。

2 . 遊 び ・ 遊 び 場 ・ 遊 具

1) 遊 び の 定 義

子 ど も と い う 存 在 が 、大 人 と 区 別 さ れ た 特 別 の も の で あ る と 認 識 さ れ た の は 、 フ ラ ン ス の 歴 史 家 フ ィ リ ッ プ ・ ア リ エ ス(

Philippe Ariès)に よ れ ば 18

世 紀 の こ と と い う 。 そ れ 以 前 の 中 世 ヨ ー ロ ッ パ で は 、 子 ど も は 大 人 同 様 の 働 き 手 と し て 扱 わ れ 、「 小 さ な 大 人 」 で し か な か っ た 。

17

世 紀 に な り 、 親 子 関 係 を 重 視 す る と い う 家 族 意 識 の 変 化 と そ れ に 伴 う 学 校 制 度 の 誕 生 に よ り 、 子 ど も に 対 す る 認 識 は 「 大 人 に よ り 保 護 さ れ 、 教 育 さ れ る 者 」 へ と 変 化 し た12。 ア リ エ ス の こ の 指 摘 は 、「 子 ど も の 発 見 」と 呼 ば れ て お り 、17 世 紀 後 半 か ら

18

世 紀 に か け て は 、 子 ど も 観 の 大 転 換 期 だ と い わ れ て い る 。 そ の よ う な 時 代 背 景 の な か 、 遊 び の 古 典 理 論13と い わ れ る 多 く の 遊 び 研 究 が 生 ま れ て い る 。

特 に 、労 働 者 で あ る 大 人 と の 対 比 の 中 で 、労 働 者 で は な い 子 ど も は 、「 遊 び と 特 別 な 関 係 性 に あ る 者 」、つ ま り 、「 子 ど も は 遊 ぶ 存 在 」で あ り 、「 何 か の 発 達 に 有 用 で あ る 遊 び は 、 子 ど も に 有 用 」 だ と 強 調 さ れ た 。 さ ら に 、 大 人 に よ り 保 護 さ れ 教 育 さ れ る 存 在 で あ る 子 ど も は 、 よ り 良 い 大 人 に な る た め に 「 真 面 目 に 遊 ぶ 」 こ と が 教 育 と し て 組 み 込 ま れ て い く 。

12 フ ィ リ ッ プ・ア リ エ ス / 杉 山 光 信・杉 山 恵 美 子 訳(1980)<子 供>の 誕 生 : ア ン シ ァ ン・

レ ジ ー ム 期 の 子 供 と 家 族 生 活 』 み す ず 書 房 。

13 代 表 的 な 三 つ の 説 を あ げ て お く 。

「 剰 余 エ ネ ル ギ ー 説 」 ド イ ツ の 詩 人 ・ 哲 学 者 フ リ ー ド リ ッ ヒ ・ フ ァ ン ・ シ ラ ー

Friedrich von Schiller)に よ り 提 唱 さ れ た 、遊 び は 生 存 欲 求 の 充 足 の た め の 労 働 の 後 に 残 っ た 無 目 的 な エ ネ ル ギ ー の 消 費 活 動 で あ る と し 、労 働 を し な い 子 ど も は そ の エ ネ ル ギ ー の 全 て が 剰 余 だ か ら 遊 ぶ の だ と い う 説 。

「 練 習 説 」 ド イ ツ の 哲 学 者 カ ー ル ・ グ ロ ー ス (Karl Groos) が 提 唱 し た 、 遊 び は 人 間 を 含 め た 動 物 の 適 応 行 動 と み て 、成 体 に な っ て か ら 必 要 な 複 雑 な 本 能 的 行 動 形 態 を 幼 年 期 の 間 に 遊 び の 中 で 練 習 し て マ ス タ ー し て お く た め だ と い う 説 。

「 教 育 的 効 果 説 」 18 世 紀 の 哲 学 者 ジ ャ ン ・ ジ ャ ッ ク ・ ル ソ ー (Jean-Jacques Rousseau )が 、そ の 著 書 Emile で 、子 ど も が 自 然 の 探 索 を 自 由 に 行 う 遊 び こ そ が 理 想 の 教 育 だ と し た 説 。 こ の 思 想 が 、18世 紀 の 教 育 家 ヨ ハ ン ・H・ ペ ス タ ロ ッ チ ( Johann H. Pestalozzi) や 19世 紀 前 半 の フ レ ー ベ ル に よ り 教 育 思 想 へ と 引 き 継 が れ て い っ た 。

(26)

序章 本研究の課題と先行研究の概観

14

「 遊 び は 、子 ど も に と っ て 価 値 あ る も の 」で あ り 、「 遊 び は 、成 長 過 程 の 子 ど も の 発 達 を 助 け る も の 」で あ る と い う 遊 び の 定 義 は 、「 教 育 的 効 果 説 」と い わ れ 、 遊 び に 教 育 的 な 意 図 を 持 た せ た も の で あ る 。 こ れ に 対 し 、 子 ど も に 限 ら ず 、 全 て の 人 間 に と っ て 遊 び は 重 要 な 活 動 で あ る と い う 視 点 か ら 遊 び の 研 究 を 行 っ た オ ラ ン ダ の 歴 史 学 者 ヨ ハ ン ・ ホ イ ジ ン ガ(

Johan Huizinga)は 、遊 び と は「 面

白 さ が 本 質 で あ り 、 自 由 で 、 無 目 的 な 活 動 」 と 遊 び を 定 義 し 、 教 育 的 効 果 説 は 矛 盾 し て い る と 指 摘 し た14。し か し 、幼 児 教 育 者 で あ る フ リ ー ド リ ヒ ・

W・ A

・ フ レ ー ベ ル (

Friedrich W. A.t Fröbel

) や マ リ ア ・ モ ン テ ッ ソ ー リ (

Maria Montessori)が 提 唱 し た「 教 育 的 効 果 説 」の 遊 び 観 は 、幼 児 教 育 の 中 で は 主 流 と

な り 、 色 濃 く 生 き 続 け て い る 。 我 が 国 で も 、 こ の よ う な 遊 び の 定 義 が 主 流 と な り 、

1948

年 に 文 部 省 か ら 刊 行 さ れ た 幼 稚 園 の 保 育 内 容 を 示 し た「 保 育 要 領 」

(

現 在 の 「幼 稚 園 教 育 要 領 」

)

は 、 子 ど も の 遊 び を 中 心 に 据 え て 保 育 内 容 が 組 み 立 て ら れ て い る 。 つ ま り 、 我 が 国 の 幼 児 教 育 の 現 場 で 、 遊 び は 、 子 ど も の 健 全 育 成 を 実 現 す る た め の 手 段 と さ れ 、 遊 び を 中 心 と し た 保 育 が 保 育 者 の 介 入 の も と 行 わ れ て い る と い う こ と で あ る 。

以 上 の よ う に 、「 遊 び 」の 定 義 に は 諸 説 が あ る わ け だ が 、遊 び 場 で の 事 故 防 止 を 扱 う 本 研 究 に お い て は 、 子 ど も に と っ て 「 遊 び 」 は ど う い う 意 味 付 け が さ れ て い る の か を 明 確 に し 、 共 通 認 識 と す る こ と を 優 先 し て お く べ き だ ろ う 。 つ ま り 、「 遊 び は 子 ど も に と っ て 、価 値 あ る も の で あ る 」と い う 遊 び 観 で あ る 。こ れ は 、 遊 び に お け る 事 故 防 止 を 論 じ る に あ た り 、 重 要 な ポ イ ン ト で あ る 。 遊 び に そ も そ も 価 値 が な け れ ば 、 あ え て リ ス ク を と っ て ま で 遊 ぶ 必 要 は な い 。 遊 び に 価 値 が あ る か ら こ そ 、 リ ス ク を ど こ ま で 許 容 す る か と い う 議 論 が 成 り 立 つ 。

2002

年 に 国 土 交 通 省 か ら 出 さ れ た 遊 具 の 安 全 に 関 す る 指 針「 都 市 公 園 に お け る 遊 具 の 安 全 確 保 に 関 す る 指 針 」の「 ま え が き 」に も 、「 本 指 針 は 、都 市 公 園 に お い て こ ど も に と っ て 安 全 な 遊 び 場 を 確 保 す る た め 、 子 ど も が 遊 び を 通 し て 心 身 の 発 育 発 達 や 自 主 性 、 創 造 性 、 社 会 性 な ど を 身 に つ け て ゆ く 『 遊 び の 価 値 』 を 尊 重 し つ つ 、 子 ど も の 遊 戯 施 設 の 利 用 に お け る 安 全 確 保 に 関 し て 、 公 園 管 理 者 が 配 慮 す べ き 事 項 を 示 す も の で あ る 」15と 記 載 さ れ 、 用 語 の 解 説 と し て 「 遊 び

14

ヨ ハ ン・ホ イ ジ ン ガ 著 / 高 橋 英 夫(1973)『 ホ モ・ル ー デ ン ス 』中 央 公 論 社 、28-33頁 。

15 国 土 交 通 省(2002)「 都 市 公 園 に お け る 遊 具 の 安 全 確 保 に 関 す る 指 針 」、 1 頁 。

図 序 -4  受 動 的 対 策 と 能 動 的 対 策
図 2- 11  遊 具 の 安 全 規 準 に 関 す る 国 際 的 な 変 遷

参照

関連したドキュメント

事前調査を行う者の要件の新設 ■

限られた空間の中に日本人の自然観を凝縮したこの庭では、池を回遊する園路の随所で自然 の造形美に出会

しかし私の理解と違うのは、寿岳章子が京都の「よろこび」を残さず読者に見せてくれる

しかし , 特性関数 を使った証明には複素解析や Fourier 解析の知識が多少必要となってくるため , ここではより初等的な道 具のみで証明を実行できる Stein の方法

その目的は,洛中各所にある寺社,武家,公家などの土地所有権を調査したうえ

1.実態調査を通して、市民協働課からある一定の啓発があったため、 (事業報告書を提出するこ と)

排出量取引セミナー に出展したことのある クレジットの販売・仲介を 行っている事業者の情報

排出量取引セミナー に出展したことのある クレジットの販売・仲介を 行っている事業者の情報