九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
ランチビオティックnukacin ISK-1の 成熟化と菌体外輸送を担う二機能性ABCトランス ポーターNukTに関する研究
鄭, 森
http://hdl.handle.net/2324/1928637
出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(農学), 課程博士 バージョン:
権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)
氏 名 鄭 森
論 文 名 Studies on processing and transport mechanism of bifunctional ABC transporter NukT for lantibiotic nukacin ISK-1
(ランチビオティックnukacin ISK-1の成熟化と菌体外輸送を担う二 機能性ABCトランスポーターNukTに関する研究)
論文調査委員 主 査 九州大学 教授 園元 謙二 副 査 九州大学 教授 竹川 薫 副 査 九州大学 准教授 中山 二郎
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
ランチビオティックは、前駆体ペプチドとしてリボソーム上で合成された後、翻訳後修飾により 異常アミノ酸が導入される抗菌性ペプチドである。ランチビオティック nukacin ISK-1の前駆体ペプ チド(NukA)は N末端側のリーダー領域と C末端側のプロ領域から構成されている。異常アミノ 酸が導入されたNukA(修飾NukA)はABCトランスポーターNukTの働きによりリーダー領域が切 断され、nukacin ISK-1として菌体外へ輸送される。NukTはN末端側にはシステインプロテアーゼ と相同性を示すペプチダーゼドメイン、C末端側には ATP結合ドメイン(ABD)、そして 4回膜貫 通と推定されるドメインを有するABC transporter Maturation and Secretion(AMS)型タンパク質で ある。NukTの異種発現株より調製した反転膜小胞を用いた研究より、NukTはATP依存的にリーダ ー領域を切断するが、ABDを部位特異的に変異したNukTではリーダー領域を切断できないことが 報告されている。一方、各ドメインの機能をより詳細に調べるためには、NukT、NukT 変異体、ド メインを精製する必要がある。本研究では、nukacin ISK-1 の成熟化と菌体外輸送を担う二機能性 ABC トランスポーターNukT などを精製し、リポソームに再構成して、その機能をより詳細に検討 している。
先ず、NukTの異種発現株より界面活性剤n-dodecyl-β-D-maltosideを使用してNukTを可溶化・精 製 し 、 二 量 体 と し て 存 在 す る こ と を 確 認 し て い る 。 次 に 、 精 製 NukT を E. coli 膜 画 分 と L-α-phosphatidylcholine の 混 合 物 か ら 成 る リ ポ ソ ー ム に 再 構 成 し て い る 。 調 製 し た NukT proteoliposomes(NukT PL)は粗精製NukTと同程度のATPase活性とペプチダーゼ活性を保持して いた。また、1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamineと1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero- 3-phospho-(1'-rac-glycerol)を混合した人工脂質を使用しても、同様に活性を保持した NukT PLを調製 している。このように、ランチビオティックのABCトランスポーターを全長として初めて精製し、
かつ活性を保持したまま再構成に成功している。さらに、これらNukT PLがATPase活性依存的に 修飾NukAのリーダー領域を切断し、成熟型のnukacin ISK-1を生成することも示している。
次に、NukT PLを使用して、ペプチダーゼの基質や生成物などの ATPase 活性への影響を検討し ている。その結果、修飾NukAの添加によってATPase活性が大きく促進されることを見出している。
一方、リーダー領域を持つがペプチダーゼの基質として認識されない NukA や成熟型の nukacin
ISK-1によってはATPase活性がほとんど変化しないことを明らかにしている。また、ペプチダーゼ
活性部位を変異した NukTC12A を NukT と同様に精製・リポソームに再構成したものでは、修飾 NukAの添加によるATPase活性の促進は観察されていない。
以上要するに、本研究は、ランチビオティックnukacin ISK-1の成熟化と菌体外輸送を担うAMS タンパク質NukTをリポソームに再構成し、ATPase活性とペプチダーゼ活性が互いに正に影響を与 える(Interdomain cooperation)という新たな知見を見出したものであり、分子微生物学の発展に寄 与する価値ある業績と認める。
よって、本研究者は博士(農学)の学位を得る資格を有するものと認める。