• 検索結果がありません。

生物の歩行からヒントを得た構造物の制振システム

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "生物の歩行からヒントを得た構造物の制振システム"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

生物の歩行からヒントを得た構造物の制振システム

1. はじめに

 強風が原因となり高層構造物に振動 が発生すると居住性が悪化するため,

さまざまな対策が施される.その一つ として構造物上部に振動特性を適切に 調整した付加的な振動系(動吸振器)

を追加する手法があるが,その追加し た振動系にセンサ,アクチュエータ,

制御器を取り付けてアクティブに制御 する手法(アクティブ動吸振器:図1)

も実用化されている.この動吸振器を 制御するための手法にはさまざまな制 御系設計手法が試みられているが,と くに最適制御理論に基づく方法が実際 の制御にはよく利用されている.

 しかしながら,アクティブ動吸振器 には一つ大きな問題がある.構造物内 部に設置する補助的な振動系の可動域 には制限があり,強い地震が発生した 場合,質量をその制約内に留めながら 運動させることが難しくなる.そのた め,強地震動が作用した場合,制振装 置として利用することなくシステムを 停止させているのが現状である.

2. 神経振動子を組み込んだ アクティブ動吸振器制御系

 われわれの研究室では,アクティブ 動吸振器のこの問題に対して,これま での制御系設計手法とは異なるアプ ローチを試みてきた.提案したシステ ムは,動吸振器の制御系に「神経振動 子」と位置制御器を取り込んだものに なっている.神経振動子とは生物がそ の体内において有するリズム発生器で あり,複数の神経細胞が相互に接続す ることで構成されている.生物の歩行 動作や羽ばたき動作等に見られる左右 両脚もしくは翼の複雑な運動が非常に 単純なこのリズム発生器によって実現 されていることが知られている.とく に生物の歩行動作に着目すると,両脚 は共に物理的な制約から最大の歩幅が 決まっているという条件下でさまざま な速度で移動可能である.また,幼い 頃に身につけたこの歩行動作を,身体 的な特徴が成長と共に変化してももの ともせずに行うことが可能であるばか りか,アクシデントによる膝の怪我が 発生してもその条件下でうまく歩行と

いう複雑な運動を継続して行うことが 可能であるという高いロバスト性を 持っている.これは,神経振動子が外 部入力に対して同期するという特徴が あることから発揮される特性である.

 この生物の歩行動作を実現している システムをアクティブ動吸振器の制御 系に取り込むことで,大小の外部入力 が作用している状況で決められた動作 範囲で補助質量を運動させながら,か つ,構造物のパラメータ変動にも対応 できるシステムを構成しようとする点 がわれわれの研究の大きな特徴になる.

3. システムの構成

 提案するシステムのブロック線図を 図2に示す.構造物と動吸振器の質量 からなる制御対象(Target model)

に対して外部から地震外力が作用す る.構造物の応答

ÿ

を加速度センサに よ っ て 計 測 し, そ れ を 神 経 振 動 子

(Neural system)に入力する.地震 入力は構造物というフィルタを通して 振動子に入力されるが,このとき,神 経振動子と構造物の固有振動数を一致 させておくことで,同期が発生するシ ステムとなる.さらに同期を起こした 振動子の出力からその大きさに依存し て動吸振器質量の目標となる移動量

r

を決定する.そして,その目標値と現 在の質量の位置情報

x

Aを位置制御系

(PD controller)に入力し,適切なゲ

インを持つ位置制御系が動吸振器を駆 動する.動吸振器に与えた力

u

の反力 が構造物に作用し,それによって構造 物の振動を低減させる.

 補助質量の目標値を与える際には構 造物の振動エネルギーが消散されるよ うに,構造物と動吸振器間に適切な位 相関係を保つように振動子の出力を利 用する.また,このとき動吸振器補助 質量の可動範囲を超える目標値を与え なければ,大きな地震が作用しても補 助質量はその制約条件下で運動を続け ることができ,システムを停止する必 要はない(図 3).

4. 今後の展開

 開発したシステムは1自由度の振動 系を制振の対象としてきた.現在の課 題は,位置制御器を改良し,より制振 性能を向上させることで従来の制御法 と同等の制振能力をもたせること,さ らに多自由度振動系に対しても安定に システムを駆動でき,かつ,構造物の 複数の振動モードを同時に制振できる ようにすることである.

(原稿受付 2016 年 7 月 12 日)

〔射場大輔 京都工芸繊維大学〕

●文 献

( 1 )本宮潤一・射場大輔・中村守正・森脇一郎,

神経振動子と位置制御器を組み合わせた制 御系によって駆動されるアクティブ動吸振 器を利用した構造物の振動制御,日本機械 学会論文集,81-823(2015),1-20.

xA

xS mA

ms kscs

¨z

u

図1 制御対象の構造物と動吸振器

図2 システムのブロック線図 ÿS xA

¨z u

PD制御器 r 制御対象

神経振動子

図3 制振性能とストローク制約 ÿS(m2/s)

2

0 5 10 15 20

1 0

-1

-2

Time(s)

(a)構造物加速度応答 非制御 変位制約無し 変位制約有り

xA(m)

目標値変位制約無し 変位制約有り

-0.10 5 10 15 20

-0.05 0.05 0.1 0

Time(s)

(b)動吸振器変位応答

─ 47 ─

日本機械学会誌 2016. 10 Vol. 119 No.1175 585

責_p047_22_TOPICS_射場.indd 47 2016/09/28 10:51:48

参照

関連したドキュメント

参考文献 1) K.Matsuoka: Sustained Oscillations Generated by Mutually.. 神経振動子の周波数が 0.970Hz

c加振振動数を変化させた実験 地震動の振動数の変化が,ろ過水濁度上昇に与え る影響を明らかにするため,入力加速度 150gal,継 続時間

B., “Vibration suppression control of smart piezoelectric rotating truss structure by parallel neuro-fuzzy control with genetic algorithm tuning”, Journal of Sound and Vibration,

In this report, heald frames equipped with bar magnets are constructed on trial in order to reduce the heald vibration.. The noise level are measured, and the heald motion is

This paper proposes a method of enlarging equivalent loss factor of a damping alloy spring by using a negative spring constant and it is confirmed that the equivalent loss factor of

A Study on Vibration Control of Physiological Tremor using Dynamic Absorber.. Toshihiko KOMATSUZAKI *3 , Yoshio IWATA and

thevibration-controllmgcharacteristicofthesysteminthecaseofparametrlcexcitationisinvestigated,where

and Shitani, Y., “Vibration Control of a Structure by Using a Tunable Absorber and an Optimal Vibration Absorber under Auto-Tuning Control”, Journal of Sound and Vibration, Vol.. S.,