あいまいな要望に対する旅行プラン提案システム
02D8104022K 松永 芳人中央大学理工学部情報工学科 田口研究室
2006年
3月
あらまし:本研究では,旅行を計画している人の特 性やあいまいな要望から,その人に適した旅行プラ ンを提案するシステムを構築する.
キーワード:旅行プラン,あいまいな要望
1 はじめに旅行を計画している人の性別や年齢といった特 性や,あいまいな要望に対して旅行プランを提案す るようなシステムが実現できれば,自分の要望を満 たす旅行プランを探す手間を軽減することができ る.このことは日本全国の旅行者数を増やし,新た な販売機会を増やすことにつながると考えられる.
そこで本研究では,システムを利用する人(以下,
システム利用者と呼ぶ)の特性や要望から,その人 に適した旅行プランを提案するシステム(以下,単 にシステムと呼ぶ)を構築することを目的とする.
2 評価基準
旅行を計画している人は,以下の
3つの評価基準 を考慮に入れて,旅行プランを選択していると考え られる.
・ 質(宿や観光地にあるもの)
・ 宿泊料金
・ 出発地から目的地へのアクセス時間
以上の
3つの評価基準に,一般的な国内旅行の動 向を加え,
4つの評価基準を考慮に入れて旅行プラ ンを提案する.
3 使用データ
対象とする観光地や観光地へのアクセス,宿に関 する情報は,株式会社
JTBから発行されている旅 行パンフレット,同社が運営しているウェブサイト
[3],駅前探検倶楽部 [2] から抽出する.また,
JTB宿泊白書
2004 [1] から,一般的な国内旅行の動向に関するデータを抽出する.このデータを以下,
JTB
データと呼ぶ.JTB データを用いて,各旅行 プランの,一般的な国内旅行の動向から見たときの 評価を算出する.
4 アンケート
旅行者のあいまいな要望と,旅行の中で考慮され る項目にはどのようなものがあるのか,また,旅行 者の各特性・要望と各項目にはどの程度関連がある のかを調べるために,
20歳代の学生を対象として
2回のアンケートを実施した.
1
回目のアンケートでは,旅行者のあいまいな要 望(以下,要望と呼ぶ)と旅行の中で考慮される項 目(以下,項目と呼ぶ)を抽出する.男性
14人,
女性
11人から回答を得た.抽出した要望は全部で
22個あり, “手軽に行きたい” , “自然を感じる”な どが含まれる.項目には宿や観光地に関する項目と,
それ以外の項目がある.前者には“風呂・温泉”,
“海がある”といった項目が含まれ,後者には“予 算の安さ” , “出発地から目的地が遠い”といった項 目が含まれる.
2
回目のアンケートでは,各特性・要望に対して,
どのような項目が重視されるのか,また,宿泊料金 やアクセス時間に対する旅行者のニーズを調べる.
男性
23人,女性
12人から回答を得た.
5 旅行プラン提案システム
システムの流れを以下に示す.
ステップ
0:アンケートデータの集計 ステップ1 :入力
ステップ
2:ウエイトの計算 ステップ
3:候補地の絞り込み ステップ
4:優先度付け ステップ
5:出力
5.1アンケートの集計
アンケートから得られたデータを,回答者の性別 ごとに集計し,集計結果をアンケート集計データと 呼ぶ.システム利用者と同じ性別の回答者のアンケ ート集計データを使用することにより,性別による 重視する項目の違いを提案する旅行プランに反映 させることができる.
5.2
入力
システム利用者は,性別,要望,同行者,出発月,
目的地,予算を入力する.いずれも選択式とする.
要望に関しては,合計が
10点になるように,選択 した要望にポイントを割り振る.目的地は任意入力 とし,入力する場合には全国の地域または都道府県 から選択し,複数選択も可能とする.予算は任意入 力とする.
5.3
ウエイトの計算
システム利用者の入力した特性・要望とアンケー ト集計データから,各項目のウエイトを求める.
宿・観光地に関する項目のウエイトは,宿・観光地 に対する要望全体の中で,各項目がどれくらいの割 合を占めているのかを表わしたものである.それ以 外の項目のウエイトは,そのシステム利用者が,各 項目をどの程度重視しているのかを表わしている.
5.3
候補地の絞り込み
システム利用者が入力した特性・要望とアンケー ト集計データから,目的地の候補を絞り込む.
5.4
優先度付け
以下で,算出した優先度
1〜優先度 4を用いて,
各旅行プランの優先度を決定する.
(1)質に関する優先度
システム利用者の旅行の質に対する要望を考慮 に入れることを考える.そこで,宿と観光地に関す る項目の中で,各旅行プランが満たしている項目の ウエイトの合計を,その旅行プランの優先度
1とする.
(2)宿泊費,アクセス時間に関する優先度
システム利用者の予算や時間に対するニーズを
考慮に入れることを考える.そこで,アンケートか
ら得られた料金や時間に関するデータと,料金や時
間に関する項目のウエイトから,適正宿泊料金と適
正アクセス時間を算出する.これは,そのシステム
利用者に適した宿泊料金,アクセス時間を想定した
ものである.適正宿泊料金,適正アクセス時間の求
め方を以下に示す.
アンケート“安く行きたいと思ったときの宿泊費 の上限額”の回答の平均値を
Pc, “贅沢だと感じる 宿泊費の下限額”の回答の平均値を
Peとする.項 目“予算の安さ”のウエイトを
Wcとしたとき,適 正宿泊料金
µpを以下の式で求める:
µp =Pe−
( (
Pe−Pc)
×Wc) .
アンケート“手軽に行けると感じるアクセス時 間”の平均値を
Tn, “遠すぎると感じるアクセス時 間”の平均値を
Tfとする.項目“目的地が近い”
のウエイトを
Wn,“目的地が遠い”のウエイトを
Wfとしたとき,適正アクセス時間
µtを以下の式で 求める:
( ) ⎟⎟
⎠
⎞
⎜⎜
⎝
⎛
⎟⎟
⎠
⎞
⎜⎜
⎝
⎛
× +
−
−
=
n f
n n
f f
t W W
T W T
µ T
.
各旅行プランの宿泊料金と適正宿泊料金,アクセ ス時間と適正アクセス時間を用いて,その旅行プラ ンの優先度
2,優先度3を算出する.これらは,旅 行プランの宿泊料金と,アクセス時間がそれぞれ,
適正宿泊料金,適正アクセス時間に近い旅行プラン ほど高い値を持つ優先度である.
(3)一般的な旅行の動向に関する優先度
一般的な旅行の動向を考慮に入れることを考え る.そこで,システム利用者の入力した出発月と
JTBデータから,各観光地に対して宿泊人数比を 算出する.これは,月ごとのある地域を出発地域と する旅行者の各観光地への行きやすさを表わした ものである.この宿泊人数比から,各旅行プランに 対して優先度
4を算出する.これは,宿泊人数比の 高い観光地,すなわち,システム利用者と出発地域 と出発月が同じ人が行きやすい観光地ほど高い値 を持つ優先度である.
5.5
出力
システム利用者の入力した予算や目的地の範囲 内で,優先度の高い順に
3つの旅行プランを提示す る.ただし,1 箇所の観光地を目的地とする旅行プラ ンは
1つしか提示しない.各旅行プランについて,
宿の名称,観光地の名称,アクセス方法,料金を提 示する.さらに,提示した各旅行プランの宿の詳細 情報を参照することができる.
6 実行例
入力として,性別“男性”,要望“自然を感じる
(10 点)” ,同行者“同性の友達”,出発月“8 月”
を選択し,目的地と予算は入力しないとき,最も優 先度が高くなる旅行プランの情報を表
1に示す.
表
1 実行結果例ホテル名 ホテル山田屋
宿泊地 静岡県 下田・下賀茂
アクセス方法 東京駅(踊り子)伊豆急下田駅 アクセス時間 166 分
料金
24,560円[うち宿泊費
13,600円,交通費
10,960円]
7 宿泊料金,アクセス時間,項目の満足度
本システムの妥当性を示すために,最も優先度が 高くなる旅行プランの宿泊料金,アクセス時間,満 たしている項目について調べる.ここでは,優先度 付けの対象となる旅行プランの数が同数になるよ うに,候補地の絞り込みが行なわれない入力に対し て優先度が最も高くなる旅行プランに着目する.ま た,要望に関しては,
1つの要望に
10点を割り振 るとする.このような入力に対して,最も優先度が 高くなる旅行プランをプラン
1と呼ぶ.
図
3は,プラン
1の宿泊料金と適正宿泊料金との 差の絶対値を横軸に,プラン数を縦軸にとったグラ フである.同様に,図
4にアクセス時間のグラフを 示す.また,図
5は,宿と観光地に関する項目の中 でのウエイトの大きさによる順位(1〜10 位)を横 軸に,各順位の項目をプラン
1が満たしている割合 を縦軸にとったグラフである.これらの図より,優先 度の高い旅行プランは,宿泊料金とアクセス時間がそ れぞれ,適正宿泊料金と適正アクセス時間に近く,ま た,ウエイトの高い項目を満たしていることがわかる.
8 おわりに
本研究では,旅行を計画している人の特性やあい まいな要望から,その人に適した旅行プランを提案 するシステムを構築した.まず,対象とする観光地 や,観光地へのアクセス,宿に関する情報を抽出し た.さらに,アンケートをとり,旅行に対するあい まいな要望や,旅行の中で考慮される項目に関する 情報を抽出した.抽出したデータと,システム利用 者の入力した特性や要望から,各旅行プランに対し て優先度を算出し,システム利用者に適した旅行プ ランを提案するシステムを構築した.
参考文献
[1]
株式会社
JTB,JTB宿泊白書
2004,国内宿泊旅行と主要観光地の動向,ツーリズムマーケテ ィング研究所,東京都,2004.
[2]
株式会社駅前探検倶楽部,<http://www.ekit
an.com>,(2005
年
12月にアクセス).
[3]
株式会社
JTB,<http://www.jtb.co.jp>,(2005 年
11月から
2006年
1月にアクセス).
5 4 3 2 1 0
宿泊料金の差[千円]
500 400 300 200 100 0 プ ラ ン 数[ プ ラ ン]
図
3 宿泊料金50 40 30 20 10 0
アクセス時間の差[分]
400 300 200 100 0 プ ラ ン 数[ プ ラ ン]
図
4 アクセス時間図
5 項目の優先度の順位と満たされている割合10 9 8 7 6 5 4 3 2 1
順位[位]
100 80 60 40 20 0 割 合[%]