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技術論文 新型 FCV に向けた高圧水素タンクの開発 * 後藤荘吾 1) 稲生隆嗣 1) 上田将人 1) 山下顕 1) Development of High-Pressure Hydrogen Tank for New FCV Sogo Goto Takashi Inou Mas

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Academic year: 2022

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新型 FCV に向けた高圧水素タンクの開発

後藤 荘吾1) 稲生 隆嗣1) 上田 将人1) 山下 顕1)

Development of High-Pressure Hydrogen Tank for New FCV

Sogo Goto Takashi Inou Masato Ueda Akira Yamashita

This article describes the evolution of the high-pressure hydrogen tank developed for the new FCV with the aim of helping to further popularize FCV. New high-pressure hydrogen tanks with three different lengths were developed to store the necessary amount of hydrogen in the system without sacrificing the interior space of the sedan-type vehicle. Some of the lightest tanks in the world (weight effectiveness :approximately 6.0wt%) were developed by adopting a new high-strength carbon fiber that reduced the fiber content of the tanks. Mass-production capabilities were increased and major cost savings were achieved by adopting a newly developed fast-curing epoxy resin for CFRP and high-speed machining processes used in the tanks while ensuring high quality. In addition, the developed tanks obtained certification under UN-R134, which was established to allow mutual recognition of FCV.

KEY WORDS: EV and HV systems, Hydrogen tank, system technology (A3)

1

1.. まま ええ がが きき

地球環境との共生を図るため,電気とともに水素の活用 が期待されており,我々は普及に向けてさまざまな開発に 取り組んでいる.燃料電池の開発は1992年にスタート し,2014年モデルのFCVでは,セダンパッケージの採用 に合わせた70MPa高圧水素貯蔵システムを新規開発し,ガ ソリン車と同等の航続距離と低コスト化を両立させること によって,普及し得るポテンシャルを持つFCVを世に送り だすことができた.今回,大量普及に向けて新たに高圧水 素貯蔵タンクシステムを開発し,軽量,パッケージ性向上 等の正常進化に加え,更なるコスト低減,商品性向上を実 現したのでこれらについて概説する.

2

2.. シシ スス テテ ムム 構構 成成 2

2..11 タタンンクク構構成成レレイイアアウウトト

FCVは“航続距離の長いEV”という特長を持つ.燃費の向上 に加えて,水素有効搭載量を必要量(約5.6㎏)確保すること によって,今回,航続距離が大幅に向上した.表1に先代と今 回のFCVの水素タンク搭載レイアウト等の比較を示す.今回 のモデルでは,乗員居住空間を犠牲にすることなくセンター トンネルの空間も活用しながら,同径の3本のタンクを搭載 した.タンクの容積が,先代の122.4Lから142.2Lへ増加し たことに伴い,水素有効搭載量が21%増加した.

2021年5月 30日受理. 2021年5月26日 自動車技術会 春季学術講演会において発表.

1)トヨタ自動車㈱ (471-8571 愛知県豊田市トヨタ町1番地)

Table1 Comparison of Hydrogen Tank Systems in FCVs

2

2..22 タタンンクク拘拘束束構構造造((ネネッッククママウウンントト))

運転席と助手席間の床下を通るセンタートンネルは,長尺 のタンクを配置させ得る空間を有しているが,軽衝突等の車 両前後に働く加速度Gに対する拘束力を確保する必要がある

(図1)ことと,タンクの直径をできるだけ大きく確保する目

的で,センタートンネルに搭載されるタンクに関しては,車両 後方でバルブと結合する口金部をマウントブラケットで支持 する構造(図2)を新たに採用した.

Fig.1 Back view of the vehicle during a frontal collision

技術論文 20214731

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Fig.2 Neck-Mounted Fixing Structure

それ以外に適用されている従来からのバンド支持には,内圧 変化による外形変動を吸収するためのスプリング機構が付い ており(図3),これがタンク外径確保の障害となっていた.

Fig.3 Cross-sectional comparison of center tunnel (FR, RR)

特にセンタートンネルは,後方に向かって断面が小さくなっ ている(図3,4)ため,スプリング機構が不要でタンクの直径内 に収まるネックマウント構造は,外径確保を阻害しない.

Fig.4 Vehicle cross-section 2

2..33 タタンンククシシスステテムム

高圧水素貯蔵システムの基本構成(図5)と斜視図(図6),

および表2に今回開発した高圧水素タンクのスペックを示す.

同径で異なる長さの3本のタンクから供給される高圧水素は,

高圧減圧弁とインジェクタにより2段階で減圧され,FCスタ ックに供給される(2)

Fig.5 Basic Configuration of High-Pressure Storage System

Fig.6 Diagram of Tank System

Table2 Main Specifications of High-Pressure Hydrogen Tanks

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3.. タタ ンン クク 開開 発発 3

3..11 高高圧圧水水素素タタンンククのの構構成成

図7に高圧水素タンクの構成を示す.高圧水素タンクは,

最内層に水素ガスを封入する樹脂ライナー,その外側に内圧 に対する強度を受け持つ CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)層,さらに外側に耐衝撃性を確保するGFRP

Glass Fiber Reinforced Plastic)層からなる.樹脂ライナーの両

新型 FCV に向けた高圧水素タンクの開発

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端には,バルブとの締結のためのアルミ製口金を有している.

Fig.7 Configuration of High-Pressure Hydrogen Tank 3

3..11..11高高強強度度高高弾弾性性炭炭素素繊繊維維((CCFF))のの開開発発

汎用CFをベースに高強度化を図った従来モデルの低コスト CFに対し,さらなる高強度化を実現するため,今回,炭素繊 維メーカーの協力により,従来比約4%の高強度化,高弾性化 を達成した.このCFの採用により,CFRP層数を約7%削減し,

タンクの小型・軽量化を実現.タンク単体として先代から質量

効率を5%向上させた(図8).

Fig.8 Weight effectiveness transition 3

3..11..22 トトウウププリリププレレググ((TTPPPP))のの開開発発

CFRP層は,トウ(炭素繊維の束)にバインダーとなるエポ

キシ樹脂を予め未硬化状態で含侵させたトウプリプレグ(TPP)

を用いてフィラメントワインディング(FW)法で高速で巻き付 けることで形成した.TPPの積層パターンを図9に示す.

Fig.9 TPP Wrapping Pattern for High-Pressure Hydrogen Tanks

3

3..22 タタンンクク生生産産工工程程

タンク生産工程は,ライナー工程,FW(フィラメントワイン ディング)工程,バルブ組付工程,検査工程から成る.更に細 かく,ライナー工程は射出成形・赤外線溶着,FW工程は巻き 線・硬化,検査工程は水圧検査・気密検査から成る.(図10)

Fig.10 Process Flow of High-Pressure Hydrogen Tank

33..22..11 短短時時間間硬硬化化エエポポキキシシ樹樹脂脂のの開開発発

硬化時間短縮とポットライフ(主剤に硬化剤を混合して粘 度が上昇し使用不能になるまでの可使時間)の背反性能を両 立したエポキシ樹脂を,材料メーカーの協力により新規開発 した.短時間硬化エポキシ樹脂の性能を活かすため,図11に 示すように,硬化条件として昇温速度の向上(約5倍)及び均 熱温度の上昇(15℃)にも同時に取り組んだ.

Fig.11 Temperature Profile of Curing Tank

短時間硬化に向けた材料面の技術的アプローチとしては,従 来は主剤に反応性の低い高純度ビスフェノールF型エポキシ 樹脂を採用しポットライフを制御していたが,今回は短時間 硬化と低コスト化の観点から,主剤に汎用ビスフェノールA型 エポキシ樹脂と,末端にエポキシ基を持つ反応性希釈剤の併 用系を採用した.図12に主剤となるエポキシ樹脂の化学構造 の違いを示す.

CFRP: Carbon Fiber Reinforced Plastic GFRP: Glass Fiber Reinforced Plastic

新型 FCV に向けた高圧水素タンクの開発

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Fig.12 Differences in Chemical Structures of Epoxy Resin Ingredients

また,図13のように反応性希釈剤により初期粘度を低下さ せることで,硬化時間短縮とポットライフを高次元で両立す ることに成功した.

Fig.13 Approach to Ensure Pot Life

一方,図11に示した硬化条件の見直しは樹脂ライナー内 面の酸化劣化(黄変)を助長する可能性があることが判明した.

そこで硬化工程における加圧媒体として不活性ガスである窒 素に変更し,酸素濃度を大幅に低減させることで,樹脂ライナ ー内表面の酸化劣化を抑制することに成功した.短時間硬化 エポキシ樹脂の新規開発及びタンク硬化工程の改善により,

生産性の大幅向上(硬化時間約3分の1)及び低コスト化を同 時に達成した.

3

3..22..22 FFWW工工程程のの高高速速化化

FW工程では,低剛性の樹脂ライナーに内圧を付加し,タン ク強度を担保する炭素繊維(CF)を張力制御しながら約3500m 巻付けている(図14).

Fig.14 Outline of FW Machine

設備動作の高速化による加工時間 50%短縮に加え,品質測定 の自動化により測定時間を90%削減することで生産時間を66%

低減(生産性を3倍)することに取組んだ(図15).

Fig.15 FW Machine Production Time

33..22..33 設設備備動動作作のの高高速速化化

加工時間50%短縮を目指し,広範囲に動作する給糸口部を軽

量化し,駆動方式を見直した.

重量増加の主要因であった,給糸口部に一体となっていた 前後軸動作用モーターを分離(図16)し,揺動部を給糸口先 端に限定(図16赤枠部)することで揺動軸動作用モーターサ イズを低減した.加えて構成材料をアルミ化する等の徹底的 な軽量化により,重量を約1/5にすることができた.

駆動方式については,従来のボールねじ方式では,共振や摩擦 による熱変位の影響で速度が上げられないことから,ワイヤ ードライブ方式を採用した.

結果,最高速度を2.1倍,加速度を1.5倍に引き上げること ができ,加工時間を50%短縮した.

新型 FCV に向けた高圧水素タンクの開発

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Fig.16 Diagram of Structure around Thread Feeder (Compared to Previous Machine)

3

3..22..44 品品質質測測定定作作業業のの自自動動化化

従来は全層手作業でタンクの品質を測定していたため,毎 回設備を止めて機内に進入する必要が生じ生産時間を圧迫し ていた.そこで今回,設備を止めずに自動測定できる手法の開 発に取組んだ.自動化における課題は,既に積層済みの部分と 新たに積層した部分が画像処理などでは区分困難な点である.

低ヘリカル巻きにおけるドーム部巻位置は,レーザー変位 計で形状測定し,積層前後の形状の差分を取ることで,割出す ことができた(図17).

Fig.17 Outline of Low-Angle Helical Winding Region Measurement

フープ巻きにおける胴体部巻位置は,新たな層を巻付け中 に強い光を照射し,その光の散乱を利用することで,下層との 区別に成功した(図18).

Fig.18 Outline of Hoop Winding Region Measurement

上記自動測定技術の開発により,測定時間を90%削減するこ とができた.3.2.3節の高速化とあわせて,従来の3倍の生産 性を達成した.

3

3..22..55 品品質質測測定定作作業業のの自自動動化化

お客様に安全安心なタンクをお届けするために,タンク1本 1本の性能を保証するべく,巻位置,張力,内圧を常時監視す る機能を持たせた.巻位置は3.2.4節で述べた自動計測機に よって全層計測,張力は加工点に最も近い給糸口部に設置し た張力計で常時監視することで,品質保証を行っている.

上記に加え,加工時の設備動作も含めて製品シリアルナン バーとの紐づけを実施.量産開始後の製品品質を常に監視し ながら,得られた知見を織り込んで工程改善に活用するだけ でなく,次世代のモノづくりに活かしていく考えである.

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4 認認 証証 対対 応応

従来の高圧水素タンクは,国・地域別で各々認可を取得する 必要があった.今回は,国際基準調和を目的とした58協定に 基づいて2015年に制定された国際相互承認のための国連規則

(UN-R134) の運用開始(3)に伴い,これに適合させ,認可を取 得した.

5

5 おお わわ りり にに

大量普及に対応すべく,軽量化,パッケージ性向上等の正常 進化に加え,更なる航続距離の向上,コスト低減,生産革新を 織り込んだ高圧水素タンクを開発した.

今後の更なる普及を目指して,時代を先取りした,お客様の ニーズに寄り添った技術開発を進めていくことで,地球にも やさしい水素社会が到来するよう,進化を継続していきたい.

最後に,この開発にご協力いただきました数多くの関係会 社の皆様に,心より感謝の意を表します.

参 考 文 献

(1)日置,近藤,山下,大神:新型FCV 用高圧水素タン クの開発,自動車技術会学術講演会予稿集,No.37-15S,

p905-908(2015)

(2)山下,近藤,大神,三石:新型FCV用高圧水素貯蔵シス テムの開発,自動車技術会学術講演会予稿集,No.37-15S,

P909-913(2015)

(3)水素燃料電池自動車の相互承認に関する省令等を制定

しました~水素燃料電池自動車に関して国際相互承認が開始 されることになります~,経済産業省,News Release,平成 28年6月30日,

https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10159415/www.

meti.go.jp/press/2016/06/20160630002/20160630002.html

,(参照 2021.03.18)

新型 FCV に向けた高圧水素タンクの開発

参照

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