9
極大トーラスの共役性9.1
定義.M , M 0をともにn
次元多様体とし、f : M −→ M 0をC ∞級写像とする。
C ∞級写像とする。
rank(df x ) = n
となるM
の点x
をf
の正則点と呼び、rank(dfx ) < nとなるM
の点x
をf
の臨界点と呼ぶ。fの臨界点のf
による像をf
の臨界値と呼び、fの臨界値でない
M 0
の点をfの正則値と呼ぶ。
9.2
補題.M , M 0をともに向きのついたn
次元コンパクト連結多様体とし、f : M −→
M 0をC ∞級写像とする。fの正則点x ∈ M
に対して
x ∈ M
に対してsign(df x ) =
½ 1 df xが向きを保つ線形同型写像
− 1 df xが向きを逆にする線形同型写像
としてsign(df
x )を定める。このとき、fの正則値y ∈ M 0
に対してf − 1 (y)
はM
の有限部分集合になり、
X
x ∈ f
−1(y)
sign(df x )
は
yに依存しない定数になる。
証明. 参考文献の
[松]
第V
章§6写像度または[M]§5 Oriented manifolds
を参照の こと9.3
定義.M , M 0をともに向きのついたn
次元コンパクト連結多様体とし、f : M −→
M 0をC ∞級写像とする。このとき、fの正則値y ∈ M 0をとり
deg(f ) = X
y ∈ M 0をとり
deg(f ) = X
x ∈ f
−1(y)
sign(df x )
とおき、deg(f
)
をf
の写像度と呼ぶ。9.4
定理.G
をコンパクト連結Lie
群としG
の極大トーラスT
を1
つとる。このと き、G,T , G/T
に向きを定めることができ、写像q : (G/T ) × T −→ G; (gT, t) 7−→ gtg − 1
の写像度は
G
のWeyl
群W (G)
の位数に等しい。特にqは全射になる。
証明.
g
とt
をそれぞれG
とT
のLie
環とする。Gはコンパクトだから補題8.1
よりG
の随伴表現Ad :G −→ GL(g)
が直交表現になるようなg
の内積h , i
が存在する。G
の随伴表現をT
に制限すると、tはT
の作用に関して不変な部分空間になる。tの 直交補空間をm
で表すとm
もまたT
の作用に関して不変な部分空間になる。さらに 線形同型写像α : g −→ T e (G); X 7−→ X e
によって
g
とT e (G)
を同一視すると、写像π : G −→ G/T ; g 7−→ gT
1
の単位元
e
における微分写像dπ e : g −→ T π(e) (G/T )
の核はt
に一致し、dπ e | m : m −→ T π(e) (G/T )
は線形同型写像になる。X
1 , . . . , X n − k
がm
の基底になりX n − k+1 , . . . , X nが t
の基
底になるように g
の基底X 1 , . . . , X nをとる。X1 , . . . , X n
は G
上で定義されたベク
トル場で、各点の接ベクトル空間で基底になるので、G に向きを与える。同様に
X n − k+1 , . . . , X nの T
への制限は T
に向きを与える。また X 1 , . . . , X n − kは dπ e | m
を通してT π(e) (G/T )
に向きを与え、Tは連結だからT
のT π(e) (G/T )
への作用
1 , . . . , X n
はG
上で定義されたベク トル場で、各点の接ベクトル空間で基底になるので、G に向きを与える。同様にX n − k+1 , . . . , X nの T
への制限は T
に向きを与える。また X 1 , . . . , X n − kは dπ e | m
を通してT π(e) (G/T )
に向きを与え、Tは連結だからT
のT π(e) (G/T )
への作用
dπ e | m
を通してT π(e) (G/T )
に向きを与え、Tは連結だからT
のT π(e) (G/T )
への作用
t(v) = (dt) π(e) (v) (t ∈ T, v ∈ T π(e) (G/T ))
は
T π(e) (G/T )
の向きを変えない。したがって、この向きをG/T
全体に拡張すること ができる。よってG/T
にも向きがつく。次に
g, g 1 ∈ G, t 1 ∈ T
がg 1 = gt 1を満たすとg 1 tg 1 − 1 = gt 1 tt − 1 1 g − 1 = gtg − 1だから
写像
q : (G/T ) × T −→ G; (gT, t) 7−→ gtg − 1 を定義することができる。また写像
G × T −→ G; (g, t) 7−→ gtg − 1
はC ∞級写像だからqも C ∞級写像になる。
qも C ∞級写像になる。
写像
qの写像度を求めるためにまず qの微分写像を求めておこう。g ∈ G
に対してτ (g) : G/T −→ G/T ; xT 7−→ gxT
とおくと、
τ (g)
はG/T
の向きを保つ微分同型写像になる。g ∈ G, t ∈ T
とX ∈ m, Y ∈ t
に対してdq (gT ,t) ((dτ (g)) π(e) X, (dL t ) e Y )
= d
ds q((g exp sX)T, t exp sY )
¯ ¯
¯ ¯ s=0
= d
ds g exp sXt exp sY (g exp sX ) − 1
¯ ¯
¯ ¯
s=0
= d
ds gtg − 1 gt − 1 exp sXt exp sY exp( − sX)g − 1
¯ ¯
¯ ¯
s=0
=(dLgtg − 1 ) e Ad(g) d
ds exp s Ad(t − 1 )X exp sY exp( − sX )
¯ ¯
¯ ¯
s=0
=(dL q(gT ,t) ) e Ad(g)((Ad(t − 1 ) − I m )X + Y ).
したがって、
dq (gT ,t) ((dτ (g)) π(e) × (dL t ) e ) = (dL q(gT ,t) ) e Ad(g)((Ad(t − 1 ) | m − I m ) + I t ).
これより、(gT, t)が
qの正則点になるための必要十分条件はAd(t − 1 ) | m − I m がm
の線形同型写像になることである。
補題
8.6
より{ t i 1 | i ∈ N}
がT
内で稠密になるようなt 1 ∈ T
が存在する。このt 1を
使ってqの写像度を求めよう。t 0 ∈ T
をt 2 0 = t − 1 1となるようにとると、{ t i 0 | i ∈ N}
もT
内で稠密になる。(gT, t)∈ q − 1 (t 1 )
とすると、gtg− 1 = t 1
となるのでg − 1 t 1 g = t ∈ T
。
したがって、各i ∈ N
についてg − 1 t i 1 g = t i ∈ T
となりg − 1 T g ⊂ T
。g− 1 T gも G
の極
大トーラスになるのでg − 1 T g = T
。これよりg ∈ N (T )
となり、
{ t i 0 | i ∈ N}
もT
内で稠密になる。(gT, t)∈ q − 1 (t 1 )
とすると、gtg− 1 = t 1
となるのでg − 1 t 1 g = t ∈ T
。 したがって、各i ∈ N
についてg − 1 t i 1 g = t i ∈ T
となりg − 1 T g ⊂ T
。g− 1 T gも G
q − 1 (t 1 ) = { (gT, g − 1 t 1 g) | g ∈ N (T ) } .
よって
q − 1 (t 1 )
の元の個数はG
のWeyl
群の位数に等しい。そこで各(gT, g − 1 t 1 g) ∈ q − 1 (t 1 )
においてsign(dq) = 1となることを示そう。X∈ m
が(Ad(g − 1 t − 1 1 g) | m − I m )(X ) = 0
を満たすとする。t1
の性質より任意のt ∈ T
に対してAd(t)X= Xとな
り、X
はT
の中心化部分群のLie
環の元になる。したがって定理8.10
よりX ∈ t
とな り、t ∩ m = { 0 }
だからX = 0
となる。よってAd(g− 1 t − 1 1 g) | m − I m
はm
の線形同型写 像になる。Ad(g− 1 t 0 g) | m
はm
の等長変換だからAd(g− 1 t 2 0 g) | m = Ad(g − 1 t − 1 1 g) | m
は行列式1
の等長変換になる。したがってAd(g− 1 t − 1 1 g) | m
の表現行列が
cos θ 1 − sin θ 1
sin θ 1 cos θ 1 . . .
cos θ k − sin θ k sin θ k cos θ k
となるように
m
の基底をとることができる。det
· cos θ j − 1 − sin θ j
sin θ j cos θ j − 1
¸
= 2(1 − cos θ j ) > 0
となり、
Ad(g − 1 t − 1 1 g) | m − I m の行列式は正になる。したがってsign(dq)(gT ,g
−1t
1g) =
1
となり、deg(q) = | W (G) |
が成り立つ。特にqは全射になる。
9.5
定理.G
をコンパクト連結Lie
群とし、TとT 0をG
の極大トーラスとする。こ
のとき、TとT 0は共役になる。
証明. 補題
8.6
より{ t 0 i | i ∈ N}
がT 0内で稠密になるようなt 0 ∈ T
をとることができ
る。定理9.4
よりg ∈ G
とt ∈ T
で
t 0 = q(gT, t) = gtg − 1
を満たすものが存在する。よって、g
− 1 t 0 g = t ∈ Tとなりg − 1 T 0 g ⊂ T
。g− 1 T 0 gも G
の極大トーラスになるのでg − 1 T 0 g = T
。したがってT
とT 0
は共役になる。
g − 1 T 0 g = T
。したがってT
とT 0
9.6
定義. 定理9.5
よりコンパクト連結Lie
群G
の極大トーラスの次元は一定であ る。Gの極大トーラスの次元をG
の階数と呼び、rank(G)で表す。9.7
系.G
をコンパクト連結Lie
群としT
をG
の極大トーラスとする。GとT
のLie
環をそれぞれg
とt
で表す。このときG = [
g ∈ G
gT g − 1 , g = [
g ∈ G
Ad(g)t
が成り立つ。
証明. 定理
9.5
の写像qが全射になることから、
G = [
g ∈ G
gT g − 1
が成り立つことはすぐにわかる。任意に
X ∈ g
を1
つとる。{ exp(tX ) | t ∈ R}
の閉 包をSとおくと、Sはトーラスと同型な G
の閉Lie
部分群になる。Sを含むG
の極大 トーラスT 0をとると、定理9.5
よりあるg ∈ G
が存在しT 0 = gT g − 1となる。した
がってX ∈ Ad(g)t
となって
X ∈ Ad(g)t
となってg = [
g ∈ G
Ad(g)t
が成り立つ。
9.8
系.G
をコンパクト連結Lie
群とし、TとT 0をG
の極大トーラスとする。この
とき、Tから定まるG
のWeyl
群とT 0から定まるG
のWeyl
群は同型になる。
G
のWeyl
群は同型になる。証明. 定理
9.5
よりg ∈ G
が存在しT 0 = gT g − 1となる。したがって N (T 0 ) = gN (T )g − 1となりN (T )/T ∼ = (gN (T )g − 1 )/(gT g − 1 ) = N (T 0 )/T 0が成り立つ。よっ
てT
から定まるG
のWeyl
群とT 0から定まるG
のWeyl
群は同型になる。
N (T )/T ∼ = (gN (T )g − 1 )/(gT g − 1 ) = N (T 0 )/T 0が成り立つ。よっ
てT
から定まるG
のWeyl
群とT 0から定まるG
のWeyl
群は同型になる。
G
のWeyl
群は同型になる。9.9
系.G
をコンパクト連結Lie
群としZ
をG
の中心とする。このときZ = ∩{ T | T : G
の極大トーラス}
が成り立つ。
証明.
z ∈ Zとすると G
の任意の極大トーラスT
に対して定理8.8
よりzと T
をとも に含むトーラスT 0が存在するので、T = T 0となりz ∈ T
がわかる。
z ∈ T
がわかる。逆に
z ∈ ∩{ T | T : G
の極大トーラス}
とする。任意のg ∈ G
に対して系9.7
よりgを含む G
の極大トーラスT
が存在する。したがってzと gは可換になり、zは G
の 中心に含まれる。9.10
定義.G
をコンパクト連結Lie
群としT
をG
の極大トーラスとする。定理8.10
とその証明中に示したことよりG
のWeyl
群W (G)
はT
の自己同型群Aut(T)
の部分 群とみなせる。W (G)
のT
への作用はW (G)
のCh C (T )
への作用を誘導する。W(G)
の作用で不変なCh C (T )
の元の全体をCh C (T ) W (G)で表す。また
R C (T ) W (G) = χ − 1 (Ch C (T ) W (G) )
と表す。9.11
系.G
をコンパクト連結Lie
群としT
をG
の極大トーラスとする。包含写像ι : T −→ G
が誘導する表現環の間の準同型写像(定義2.18) ι ∗ R C (G) −→ R C (T ) W (G) は単射になる。
証明. 図式
R C (G) −−−−→ ι∗ R C (T )
χ
y y χ
Ch C (G) −−−−→ ι∗ Ch C (T )
は可換になり、系
3.7
よりχは同型写像になる。したがってι∗ : Ch C (G) −→ Ch C (T )
が単射になることを示せばよい。f ∈ Ch C (G)
がι∗ f = 0 を満たすとする。任意
の x ∈ G
に対して定理 9.7
よりあるg ∈ G
が存在しgxg − 1 ∈ T
となる。よって
f (x) = f (gxg − 1 ) = 0
となりf = 0。これよりι ∗ : Ch C (G) −→ Ch C (T )
は単射にな
る。さらにι∗
の像はG
上の類関数の T
への制限だから、W(G)
の作用で不変になり
ι ∗ (Ch C (G)) ⊂ Ch C (T ) W (G)
が成り立つ。
x ∈ G
に対して定理9.7
よりあるg ∈ G
が存在しgxg − 1 ∈ T
となる。よってf (x) = f (gxg − 1 ) = 0
となりf = 0。これよりι ∗ : Ch C (G) −→ Ch C (T )
は単射にな る。さらにι∗
の像はG
上の類関数のT
への制限だから、W(G)
の作用で不変になりι ∗ (Ch C (G)) ⊂ Ch C (T ) W (G)
9.12
補題. 連結で完備なRiemann
多様体の基本群の元の代表元として測地線をとる ことができる。証明.
M
を連結で完備なRiemann
多様体とし、p: ˜ M −→ M
を普遍被覆写像とする。p
は局所微分同型だからp
が局所等長写像になるようにM ˜
にRiemann
計量を入れる ことができる。このときM ˜
も連結で完備なRiemann
多様体になる。x∈ M
を固定し て基本群π1 (M, x)の元[c]
を1
つとる。ここでc : [0, 1] −→ M
はc(0) = c(1) = x
を
満たすM
の閉曲線である。˜x ∈ p − 1 (x)
をとりc
のxを通る持ち上げ˜ ˜ cをとる。定理 8.3
よりxと˜ ˜ c(1)
を結ぶ測地線γが存在する。M ˜
は単連結だからp ◦ ˜ c = c
とp ◦ γは同じホ
モトピー類を定める。さらにp ◦ γ
はM
の測地線になるので、[c]の代表元として測地
線p ◦ γをとることができる。
9.13
系.G
をコンパクト連結Lie
群としT
をG
の極大トーラスとする。包含写像ι : T −→ G
が誘導する基本群の間の準同型写像ι∗ : π 1 (T ) −→ π 1 (G)は全射になる。
証明. 補題