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[博士論文審査要旨]

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Academic year: 2021

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[博士論文審査要旨]

申請者:小阪玄次郎

論文題名「研究開発組織に置ける多様性とイノベーション:

セラミックコンデンサ業界を事例として」

審査員 沼上 幹 島本 実 軽部 大

本論文は,技術革新・技術進化のパターンが個々の企業ごとに異なるものになる背景を,

個別企業内の開発集団の特徴や個々の技術者の特徴という,よりミクロなレベルにまで降 りて解明しようと意図した実証研究の成果である.より具体的には,セラミックコンデン サ業界におけるニッケル内部電極実用化という重要な技術革新に注目し,ほぼ同じ時期に 重要な技術革新を達成した村田製作所とTDKと太陽誘電の3社が,それぞれ異なる開発体 制をとって多様な技術的知識の統合努力を行っていることを明らかにしている.

本論文の優れた特徴は2つある.まず第 1 に,上述したような技術革新の特徴を特許デ ータの詳細な分析を通じて明らかにしている点である.単純に特許件数を数え上げるばか りでなく,国際特許分類のカテゴリー分けや共同研究者の項目などを有効に活用し,これ までの経営学では有効に活用されてこなかったデータを巧みに用いることで,長期にわた る研究開発組織の特徴を浮き彫りにすることに成功している.第 2 に,本論文は複数の分 析単位にまたがる特徴の相違を,時系列での変化にも注目しながら明確化している点にも 重要な貢献が見られる.特許データを企業レベルと個人レベルという2つの集計レベルで 集計・加工して,経時的な変化を観察することで,企業の技術開発分野の広がりが,異な る専門の人間を加えることで達成されたのか,それとも個人の専門分野が拡大してきたこ とで達成されたのか,ということが明確に議論できている.15 年間という長い期間にわた る各企業の技術開発プロセスを解明する上では,特許のようなデータベースを独自の工夫 を重ねて活用する本研究のような業績が必要であり,今後の技術革新研究に1つのスタイ ルを追加する重要な貢献をもたらしていると思われる.なお,本研究は特許データばかり でなく,当事者のインタビューやその他の資料も駆使しており,実証研究としては独自性 があると共に,バランスの取れたものにもなっている点も付け加えておく.

もちろん,このように優れた貢献を生み出している本論文にもまったく欠点が無いわけ ではない.たとえば,同様に技術革新に成功した3社を対象として選択したため,結果変 数側の差異が明確でなく,各社の開発体制の相違が何をもたらしたのかという議論がいま ひとつ明確に展開できていないことや,データに見られるパターンの背後にある社会プロ セスの議論にやや深さが不足している点などが問題点としてあげられるであろう.今後,

技術革新に成功しなかった企業との比較を行うなどの工夫をするか,あるいは産業レベル の技術革新プロセスを技術者個人の発明行為にまで踏み込んで明らかにする記述的な研究 へと方向性を転換するなどの工夫が必要であるように思われる.

このように改善するべきポイントは残されているものの,これらは本論文が生み出して いる優れた貢献を打ち消すほどのものではなく,本論文は高いレベルの学術的貢献を生み 出していると審査員一同は考えている.よって,審査委員一同は,所定の試験結果をあわ せて考慮して,本論文の筆者が一橋大学学位規則第5条第1項の規定により一橋大学博士

(商学)の学位を受けるに値するものと判断する.

参照

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