電磁誘導の法則
~自然界は変化を嫌う~
磁束密度の向きに引いた曲線を磁束線という。磁束密度
B[T]の一様な磁界に垂直な面積 S
[m
2]の面を貫く磁束線の本数(磁束)をΦとすると、
Φ =( )
と表される。面の法線と磁界の向きのなす角がθのときは、
Φ =( )
磁束の単位は磁気量と同じ、ウェーバ(Wb)である。よって磁束密度の単位は、[T]=
[Wb/m
2]=[N/(A・m)]。
練習) 磁束密度の大きさ
5.0×10
-5[T]の磁界中に、磁界と垂直になるように断面積
0.010[m
2]のコイルを置いた。コイルを貫く磁束はいくらか。また、コイルを磁界に垂直な
面に対し、45度傾けた場合はどうなるか。
コイルに磁石を近づける(または遠ざける)と、コイルを貫く磁束が変化する。このとき、
コイルに起電力が生じ、磁束の変化を妨げる向きに電流が流れる(レンツの法則)。このよ うな現象を( )といい、流れる電流を( )、発生する起 電力を( )という。
1回巻きのコイルを貫く磁束が時間⊿t[s]の間に⊿Φ [Wb]変化したとすると、誘導起電力
の大きさ
V[V]は、
V=-⊿Φ/⊿t
と表される(ファラデーの法則の積分形)。ここで、マイナスの符号は、磁束の変化を妨げ る向きに起電力が発生することを意味している。巻数
N[回]のコイルの場合は、誘導起電力
の大きさはN
倍になるので、V=( )
*ファラデーの法則の微分形は
𝛁 × 𝐄 = − 𝜕𝑩
𝜕𝑡
これを、コイルを含む面
S(境界 C)で積分する。ストークスの定理により左辺は、
∬ (𝛁 × 𝑬) ∙
𝑆
𝑑𝑺 = ∫ 𝑬 ∙ 𝑑𝒍
𝐶
= V
右辺は、
− 𝑑
𝑑𝑡 ∬ 𝑩 ⋅ 𝑑𝑺
𝑆
= − 𝑑Φ
𝑑𝑡
より、積分形を得る。練習) 鉛直上向きの磁界中に、磁界に垂直になるように断面積
0.025[m
2]の 20
回巻きの コイルを置いた。磁束密度の大きさを0.10[s]の間に 2.0[T]増加させたとき、コイルに発生
する誘導起電力の大きさは( )[V]である。また誘導電流の向きは、上からコイル を見て、( 時計回り・反時計回り)である。磁場中を運動する導体棒にはたらく力
導体が磁界を横切る場合、誘導起電力が発生する。
図のように長さ
l [m]の導体棒 PQ
が磁束密度の大きさB[T]の一様な磁界中を磁界に垂直に
速さ
v [m/s]で進む場合を考える。棒の中の自由電子(電荷-e[C])は図の(P→Q・Q→P)
の向きに大きさ( )[N]のローレンツ力を受ける。この力により電子が移動する結 果、P端は(正・負)に、Q端は(正・負)に帯電し、PQ間に電界が(P→Q・Q→P)の 向きに発生する。電界の強さを
E
とすると、電子が電界から受ける力(大きさ( )[N])とローレンツ力がつり合うとき電子の移動が止まる。このとき、E = ( )[N/C]、
PQ
間の電圧V
は、V = ()[V]と表される。また導体棒は(P・Q)端が正極の電
池とみなすことができる。この導体棒を用いて下図のような回路を構成する。
磁束密度が一定とすると、時間⊿t[s]の間に、抵抗、レール、棒によって形成される回路の 面積は( )
[m
2]だけ増加するので、回路を貫く磁束は⊿Φ=( ) [Wb]だけ増加する。よって、レンツの法則およびファラデーの法則より、この回路には、誘
導電流を導体棒の(P→Q・Q→P)の向きに流そうとする誘導起電力が生じ、その大きさはV=|-⊿Φ/⊿t|=( )[V]である。これはローレンツ力による説明の結果と
一致する。この回路を流れる誘導電流の強さ
I
は、I= V/R = ( )[A]であり、導体棒 が磁界から受ける力の大きさは、IBl = ( )[N]、向きは、(右・左)向きであ る。したがって導体棒は進行方向と逆向きに力を受けるので、他に力がはたらかなければや がて静止する。棒が等速度運動を続けるためには、棒に(左・右)向きで大きさ
F =( )[N]
の力を加え続ける必要がある。このとき、力のする単位時間あたりの仕事(仕事率)Pは、
P
= Fv = ( )[W]であり、これは抵抗 R
において単位時間あたりに発生す るジュール熱 V2/R =( )[W]と等しい。これが発電の原理である。
自己誘導
図のように円形コイル(ソレノイド)と電源をつないだ回路のスイッチを入れると、コイル の内部には下向きの磁界ができる。このときレンツの法則より、コイルに磁束の変化を妨げ る向きに起電力(誘導起電力)
V [V]が発生する。 V
は単位時間あたりの電流の変化 ∆I∆t
[A/s]
に比例する。
𝑉 = −𝐿
∆I∆t …①
マイナスの符号は、起電力の向きが、電流の変化と逆になることを意味する。このように、
コイルに電流の変化を妨げる誘導起電力が発生する現象をコイルの( )とい い、比例定数
L
を( )という(単位:ヘンリー[H]=[Vs/A])。自己 誘導の起電力を( )ともいう。自己誘導のため、コイルに流れる電流は変 化しにくくなる。すなわち、コイルには電流を一定に保とうとする性質がある。問題1) 自己インダクタンス
5.0[H]のコイルに流れる電流が 4.0[s]の間に 6.0[A]変化し
た。このときコイルに発生する誘導起電力の大きさを求めよ。問題2)巻き数
N
、断面積S [m
2]、長さ l [m]の真空のソレノイドに時間⊿t [s]の間に⊿ I [A]
変化する電流を流した。このとき、真空の透磁率をμ0
[N/A
2]とすると、ソレノイドを貫く
磁束の変化量⊿Φ[Wb]= ( )となるので、誘導起電力の大きさ V [V]は
V = | − 𝑁
∆Φ∆t
| = (
)
①と比較すると、このコイルの自己インダクタンス
L
=( )となる。コイルに蓄えられるエネルギー
自己インダクタンス
L[H]のコイルに電流 I[A]が流れているとき、コイルに蓄えられている
磁界のエネルギーU[J]は、U = 1 2 LI
2 で表される。問題)自己インダクタンス
2.0 H
のコイルに1.5 A
の電流が流れているとき、コイルに蓄え られているエネルギーを求めよ。相互誘導
図のように2つのコイル(1次コイル、2次コイル)を並べて巻き、1次コイルの電流
I
1を 変化させると、2つのコイルを貫く磁束が変化し、2次コイルに誘導起電力V
2が発生する。このような現象を( )という。
1次コイルの電流が時間⊿t[s]間に⊿I1
[A]だけ変化するとき、2
次コイルに発生する誘導起 電力V
2[V]は、
V
2=
-M ∆I1∆t
と表される。ここでマイナスの符号は、磁束の変化を妨げる向きに誘導起電力が生じること を意味する。図においては、
(a
・b)の電位が高い。
また、比例定数Mを( )
という。(単位:ヘンリー[H])
例題1) 相互インダクタンスを 2.0H とする。1次コイルを流れる電流が 0.10s の間に 2.0A から 2.5A に変化した。このとき2次コイルに生じる誘導起電力の大きさはいくらか。
例題2)
2
次コイルの1
巻き部分を貫く磁束Φ[Wb]が、1次コイルを流れる電流I
1[A]と 1
次コイルの巻数N
1に比例し、Φ=kN1I
1と表されるとする(kは比例定数)。電流I
1が時 間⊿t[s]の間に⊿I1[A]変化するとき、磁束Φの変化⊿Φ[Wb]=( )となるので、N
2回巻きの
2
次コイルに発生する誘導起電力V2[V]は V
2= ( )[V]と表される。
これより、相互インダクタンスM[H]は、M=( )と表される。