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細胞損傷タンパク質パラスポリンを通して見るCryタンパク質の可能性

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(1)

細胞損傷タンパク質パラスポリンを通して見るCryタンパク質

の可能性

誌名

誌名

蚕糸・昆虫バイオテック = Sanshi-konchu biotec

ISSN

ISSN

18810551

著者

著者

早川, 徹

酒井, 裕

巻/号

巻/号

77巻3号

掲載ページ

掲載ページ

p. 205-210

発行年月

発行年月

2008年12月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター

Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

(2)

蚕糸昆虫バイオテック77(3)、205-210(2008) SANSHI-KONCHU BIOTEC

1

.

1

:

.

l

d

j

;

究 の 最 前 蜘

細胞損傷タンパク質パラスポリンを通して見る

Cry

タンパク質の可能性

早 川 徹

*

酒 井 裕

岡山大学大学院自然科学研究科

はじめに

Baci/lus thuringiensisは芽胞形成期にタンパク質結晶 (クリスタ lレ)を産生するが(図 1),クリスタルの主成 分である Cryタンパク質の中には様々な細胞損傷活性を 示 す も のがある。パ ラ ス ポ リ ン (Parasporin)はB thuringiensis及び近縁の細菌が産生するCryタンパク質 のうち,溶血活性を待たないが,ガン細胞に選択的な細 胞損傷活性を示すものと定義され, Cryタンパク質の中 でも特に新しいタイプのものとして注目されている。 Cryタンパク質の命名と分類はトキシン命名委員会 (http://www.lifesci.sussex.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt1) が担っており,リストには現時点でも400以上ものCry トキシンが55種のグループ (Cryl~ 55)に分類されて いる。また,非特異的な活性を示す30近いCytトキシ ンも加わっており,これからもその数は増えていくと考 えられる。リストに記載されている Clyタンパク質の半 分近くは鱗題目毘虫(蝶や蛾など)に活性老示す殺虫毒 素である。 とれは農薬の標的となる重要な畑作害虫の多 くが鱗麹目昆虫に属するため,それを対象とする毒素の 研究が精力的になされたことによると考えられる。実際, 受容体の同定などを含む作用機構に関する研究は鱗麹目 毘虫特異的な殺虫毒素Cryl等在中心に強力に推し進め られている。一方, Cryタンパク質の活性は多岐に渡り, 中には鱗題目毘虫以外にも蚊,ハエなどの衛生害虫が属 する双題目やコガネムシ ハムシなどの鞘題目毘虫,さ らには線虫に活性を示すものなど様々な標的を持つこと *干700-0082 岡山市津島中3-1-1 連絡先:hayakawa@biotech.okayama-u.acj.p が明らかになっている。特に興味深いのは, 最近,殺虫 スペクトルの明らかでないCryタンパク質の中から人の ガン細胞に対して特異的な細胞損傷活性を示すパラスポ リンが見つかっていることである。様々な活性を示す Cryタンパク質が存在することは ,B.thw・ingiensisが, そしてCryタンパク質がどのように進化してきたのかっ という難解な疑問をさらに複雑化するものであるが,同 時に Cryタンパク質が持つ潜在的な可能J性を示唆するも のでもある。 本稿ではCryタンパク質の中でも新しいタイプである パラスポリンについて紹介するとともに, Cryタンパク 質が潜在的に持つ可能性について考察する。なお,Cry タンパク質の構造や機能に関しては,詳しい解説を部分 的に省略するが,それらについては他の解説書IiBacillus thuringiensis殺虫蛋白質の科学Jj(大庭道夫,堀秀隆,酒 井裕編,アイピーシー)を参照されたい。

1

.

ガン細胞損傷活性を持つ Cryタンパク質,パ

ラスポリン

一般的にCryタンパク質は生物学的 ・生化学的な性質 の違いから大きく 2種に分類でき,それぞれCryトキシ ン及びCytトキシンと呼ばれている。 Cryトキシンは高 い殺虫特異性を示す毒素であり,プロトキシンの大きさ で70kDa型と 130kDa型に細分されるが,活性化され ると何れも大きさ約

6

0

ゆ aの,プロテアーゼ耐性を示 す活性化ペプチドとなる(図 2)。この活性ペプチドは 分子内切断によってセグメントに分かれている場合もあ る。一方, Cytトキシンは大きさ 25-30kDa程度の毒素 であり, Cryトキシンとは全く異なる構造を持っている。 Cytトキシンの標的はCryトキシンと異なり,哨乳類宅E 酬 米 ・ 岡 田 二 、 ﹁ 斗 J W , い ¥ 山 川 く O 吋 吋 Z0 ・ω

(3)

SANSHI-KONCHU BIOTEC Vo

.

l

77No.3

含む脊椎動物や毘虫などの無脊椎動物を問わず非特異的

な活性を示す

(Crickmoreet a

.

l

1998)

パラスポ

ンは

B

.

t

h

u

r

i

n

g

i

e

n

s

i

s及び近縁の細菌が産

生する

Crγ

タンパク質の中で溶血活性を待たないが

ン細胞に選択的な細胞損傷活性を

示すもの

定義され

Cry

タンパク質の中で

Cyt

トキシンも晴乳類由

の培養細胞に毒性を示すが

ガン細胞に対する特異性と

いう点で、パラスポ

ンとは異なるため同じグル

プとは

考えられていない

(Mizukiet a

.

l

2000)

パラスポ

としての活性を示す

Cry

タンパク質はこれまでに

4

種類

が報告され

(http://parasporin白tc.pref.fukuoka

j

.

p/in仕o.h加 1)

パラスポリン 1 ~4 と命名されているが,同時にパラス

1: Cry31

パラスポ

リン

2: Cry46

,パラスポリ

3: Cry41

,パラスポリン

4: Cry45

として

Cry

タンパ

ク質としての命名もされている

2

.

パラスポリンー構造の多様性と類似点一

4

種類のパラスポリンは,ガン細胞損傷活性というあ

る意味で類似した活性を共有するにも関わらず,パラス

クリスタル

芽胞

1

.

B

.

t

h

u

r

i

n

g

i

e

n

s

i

s

subsp.

s

o

t

t

o

T84AI

が産生する芽胞と

リス

ン一般に共通する構造的な特徴は見

つか

っていな

むしろアミノ酸配列上では他の

Cry

キシンや

Cyt

キシンどころか

異なるグ

ルー

プのパラスポ

リンとも

低い相向性しか示さず,活性化のパタ

ンにも類似性が

ない(図

2)

。例えばパラスポ

I(Cry3IAa

I

)

のプ

ロトキ

シンは

81kDa

であり,プロテアーゼによるプロ

セッシングを受けて部

分分解され

さらに分子内切断を

受けて

15kDa (S94_R231)

56ゆa (M232-S723)

のサブ

ニットが形成される

15ゆ a

56kDa

のペプチ

は活

性分子の精製過程で挙動を共

L

こするととからヘテロダイ

を 形 成 す る と 考 え ら れ て い る

(Katayal11aet a

.

l

2005)

。一

パラスポリン

2(Cry46Aal)

37kDa

プロ

キシンを持ち,プロテア

ゼによるプロセッシン

グを受けると

N

末端と

C

末端両方のペプチ

が除かれ

30kDa

の活性化ペプチ

ドに

なる

(Kitadaet a

.

l

2006)

パラスポリン

3(Cry4IA)

の場合,プロ

トキ

シンはパラ

スポリン

l

と類似の

88kDa

活性化さ

ると

N

末端

側のペプチドが除かれて

64kDa

活性

ペプチドにな

(Yal11ashitaet a

.

l

2005)

パラスポリン

4(Cry45Aa)

のプロ

キシンはパラスポリン

2

と類似の

30kDa

であ

るが

活性

化され

ると

C

末端

のペプチ

ドが

除かれて

27ゆa

の活性化ペプチドになる

(Okul11uraeta

.

l

2005)

プロ

キシン及び活性化ペプチドの大きさから考える

とパラスポリン

l

及び

3

Cry

キシン型となる

アミ

ノ酸配列上の相向性

自体は

低いものの,

Cry

キシン聞

高度に保存されているブ

ロック配列

(Block1-5)

に類

似する配列がパラスポリンの

l

及び

3

でも見つかるため

(

2)

Cry

トキシンと同様な

3

ドメイジ(I

~ III)

Cry4Aa

(

1

3

0

kDa)

2o kDa

45 kDa

Cry11Aa

(

7

0

kDa)

P

a

r

a

s

p

o

r

i

n

-

1

(

8

1

kDa)

P

a

r

a

s

p

o

r

i

n

2

(

3

7

k

D

a

)

P

a

r

a

s

p

o

r

i

n

3

(

8

8

kDa)

1

-

111

1

1

1 1

36 kDa

32 kDa

│ 1

1

ι

1

15 kDa

56 kDa

│ 1

1

1 1

1

3o kDa

│ │ I

I

64 kDa

ll

1 1

27 kDa

Paraspor

i

n

-

4

││

(

3

1

kDa)

図2

ラスポリンの活性化

ペプ

チド

活性

ペプチ

ド 日:

プロセッシングによって除かれる領域

l

:

分子内切断が起こるサイ

1

:

ブロック配列

206

(4)

HeLa細胞(ヒト子宮頚ガン細胞)に投与しでも細胞膜 上に小孔が形成されたことを示す細胞内lactated巴hydro -genase (LDH)の漏出やpropidiumiodid巴 (pI)の流入は 観察されず,代わりに細胞外 Ca2 +の細胞内への涜入や 続く caspase-3の活性化, PARPの断片化などアポトー シスに特徴的な現象が観察される。これはパラスポリン lが小孔形成ではなく, Ca2 +の細胞内流入を引き金とす るアポトーシスによって標的細胞を殺すことを示してい る (Katayamaet a,.l2007)。パラスポリン lに小孔形成 能がない,もしくは小孔形成能があっても HeLa細胞上 の特異的受容体との結合ではそれが発揮されない可能性 も考えられるが,詳細は不明である。 パラスポリンlが標的細胞にアポトーシスを誘導する ことは Cryタンパク質の中では珍しい現象であるが,常 識的に考えればそれほど不思議なものでもない。つまり, 一般的に細胞表面には情報伝達に関わる様々な膜タンパ ク質が存在しており, Cryタンパク質の結合が何らかの シグナルを細胞内に発信する契機になることは十分に想 定される。実際に Cryトキシンの結合が細胞死に向かう シグナルトランスダクションの引き金になる例も最近に なって報告されている。例えば イラクサキンウワパ由 来の培養細胞,High five細胞において,鱗題目特異的殺 虫毒素 CrylAbの受容体と考えられるカドヘリン様タン パク質 (Bt-R)を発現させた場合, CrylAbが細胞表面 に提示されたBt-R1に結合すると細胞の Gタンパク質が 活性化され,続いて adenylylcyclase/proteinkinaseA経路 を介した細胞死が誘発されると報告されている (Zhang el al, 2006) 0 Cryトキシンと毘虫種の組み合わせによっ てはパラスポリンlと同様の作用を引き起こしているも のがあるかも知れない。 一方,パラスポリン 2は小孔を形成する毒素と考えら れる。パ ラ ス ポ リ ン 2 (Parasporin-2Ab)を 投 与 し た で構成される高次構造を持つと考えられる (Mizukiet a 2000 ,.l ; Yamashitaet a 2005),.l 。ちなみに Cryトキシン はドメイン

I

の αヘリックス領域が貫入して標的細胞膜 上に小孔を形成すると考えられているため,小孔形成毒 素 (Pore-formingtoxin, PFT)の分類においてかPFT(図 3)に分類される (Parker

&

Feil, 2005)。 一方,パラスポリン 2及び 4のプロトキシン及び活性 化ペプチドの大きさは CryトキシンよりもCytトキシン に類似している。 Cytトキシンは

0

バレルに基づいた小 孔形成を行うと考えられており, Cryトキシンの α-PFT に対して s-PFT(図 3)と呼ばれている (Parker

&

Feil, 2005)。実際パラスポリン2及び4は Cytトキシンと低 い相向性しか示さないものの,他のs-PFTとの類似性 が報告されている。例えばパラスポリン 2Abはグリー ンヒドラ (Chlm叫'ydraviridissima)由来のs-PFTである hydralysinと約40%と い う 比 較 的 高 い 相 向 性 を 示 す (Hayakawa et a,.l2007)。またX線結晶構造解析の結果, パラスポリン4と 38%の相同性を示す 26kDaタンパク 質(図 3)がウェルシュ菌 (ClostridiulI1perfringens) 由 来の s-PFT,Eトキシンと極めて類似した構造を持つこ とが示されている (Akibaet a.l, 2006)。

ラスポリンの作用

機構

パラスポリン !と 3は殺虫性の α-PFTである Cryト キシンと類似する構造を持ち パラスポリン2と4は s-PFTに類似性を示す。よって構造に違いがあるが,パ ラスポリンはすべて小孔形成という同様な作用機構を示 すと考えられる。しかし実際の作用機構についてはパラ スポリン lと2でまったく異なる結果が得られている。 構造の類似性からパラスポリン lは Cryトキシンのよ うにドメイン

I

の αヘリックスに依存する小孔形成を行 なうと予想される。しかし,パラスポリン lを感受性の

3

.

8

PFT

α

-PFT

酬米・周 回 二 、 六 斗 山 市 , ぃ L V く O 吋 吋

26kDa

C

y

t

2

A

a

Cry4Aa

z o ω 図 3.Cry蛋白質に属する α-PFT及びs-PFTの精造 Crγ4Aa, Boonsermet al. (2006) ; Cyt2Aa, Lietal.(1996) ; 26kDa, Akibaetal.(2006)より引用改変

(5)

SANSHI-KONCHU BIOTEC Vo

.

l

77 NO.3 MOLT-4

細胞(ヒト白血病ガン細胞)では,投与後

1時

間で縮胞の膨張や核の凝縮が観察される(図

4)

。また

パラスポリン

2 (Parasporin問2Aa)

在日

epG2

細胞(ヒト

肝臓ガン細胞)に投与すると細胞膜上に小孔が形成され

たことを示す細抱内

LDH

の漏出や

PI

の流入が観察され

(Kitadaet a

.

l

2006) 0 HepG2

細胞ではそれ以外にもパ

ラスポリン

2

を低濃度で投与した場合でのみ

caspase陶3

や同

7

の活性化が観察される

Otoet a

.

l

2004)

。またパラ

スポリン

2

と類似の

29kDa

タンパク質が

Iurkat

結胞(ヒ

ト白血病ガン細胞)にアポトーシスを誘導することも報

告されている

(Amanoet a

.

l

2005)

。これらはパラスポ

リン

2

が小孔形成とアポトーシス誘導というこつの細胞

損傷メカニズムを有する可能性老示唆している。恐らく

はこの場合も標的となる細胞種によって若干異なる作用

を持っているかも知れない。

4

.

パラスポリンは何処から来たのか?

パラスポリンと殺虫性

Cry

トキシンは各々異なる細胞

種を標的とし,構造的にも低い類似性しか示さない。し

かしすべてのパラスポリンがCl

yトキシンとしての名前

も持っていることから判るように,パラスポリンと

Cry

トキシンには共通する特徴がある。

ば,パラスポリンも

Cry

トキシンも

B.thuringien -sis

が芽抱形成する際にクリスタルの形で産生され,昆

虫幼虫の消化液と同様のアルカリ牲の条件下で可溶化す

る。クリスタル中でトキシンはプロトキシンの状態で存

をしており,活性化にはフロテアーゼによる部分消化が

必要である。また双方とも高い特異性を示すことから標

的細砲膜上の特異的な受容体が活性発現に関与すると考

えられる。これらの共通する特徴の存在は,両者が同じ

グ、ループ。のタンパク質であることを明確にしており,違

いは標的認識に関わる部分だけである可能性を示唆して

h

A O

lhr

パラスポリン

2Ab

BSA

箇4.

パラスポリン

2Ab

を投与した

MOl下4

細飽の経時的変化

Hayakawa et al. (2007)

より引用改変

208

いる。

もともと

Crγ

トキシンは標的認識に関して多様性が観

察される毒素である。例えば

Cry

トキシンでは,受容体

の結合

l

こドメイン

E

のルーフ領域が関与すると考えられ

ているが,結合部位としてはループ

l

やループ

2

,ルー

3

0.8

ループなど分子表面に露出すると考えられる

様々な領域が候補になっている。また,それ以外にドメ

イン皿を介して

N-

アセチルガラクトサミンを含むタン

パク質糖鎖と結合するトキシンも存在する。結合先とな

る受容体についてもカドヘリン様タンパク質やアミノペ

プチダーゼ

N

,アルカリフォスファターゼ

¥P252

など

膜タンパク質や糖脂質など,毘虫幼虫中腸上皮組織の原

IJ

子縁膜上に局在する様々な分子が候補となっている。

興味深いことに, C

l

y

トキシンについて報告された受

容体結合部位と標的細胞膜上で見つかる受容体候補の組

み合わせが

Cry

トキシンの種類と昆虫種との組み合わせ

によって異なる場合がある。また,感受性を示さない毘

虫幼虫の中腸刷子縁膜からも

Cry

トキシンと親和性を示

す膜タンパク質が見つかることが多い。これらのことは,

Cry

トキシンの様々な領域が受容体結合部位として機能

する可能性を示しており,それと結合親和性老示す標的

細抱膜上の膜タンパク質や脂質は受容体として機能しう

ることを示唆する。乱暴な言い方在すれば,

Cry

トキシ

ンは,連切な条件下で結合できるものが細胞膜表面に存

在しさえすれば細胞損傷活性を発指できるのかも知れな

い。そう考えればパラスポリンと

Cry

トキシンの違いは

Cry

トキシンのグ、ルーフ。内で見られる多様性の極端な例

と言えるのかも知れない。

以前は ,

B. thuringiensis

の産生する

Cry

タンパク質は

すべて殺虫活性を示し ,

B. thuringiensis

Cry

タンパク

質も昆虫と共に進化・選抜されてきたと考えられた。し

かし ,

B. thuringiensis

の産生する

Cry

タンパク質の中に

3hr

6hr

1

2

h

r

(6)

することで殺虫特異性が改変・拡張できることが報告さ れている CAbdullahet a,.l2003)。 パラスポリンに関する研究はそれ自体大きな意義と可 能性を持つものである。この分野の研究が進めばガン細 胞のターゲテイングが可能となり,実際のガン治療や診 断などに利用することも可能になるかも知れない。さら にCryトキシンとの構造の類似性を残しながら全く異な る特異性や作用を示すパラスポリンの存在は, Cryタン パク質全般の機能構造を理解する上で格好の比較対象に なると考えられる。 州 問 米 ・ 田 川 町 二 、 ぺ U 斗 山 ? に 山 U く O 吋 吋 Z0 ・

ω

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古 田 文 献

は殺虫活性などが暁らかでないものが多く COhbaand Aizawa, 1986),また,パラスポリンのような新規な活性 を示すCryタンパク質が見つかるにつれて ,B. thuringi -ensisが昆虫とは無関係に独自の進化を遂げてきた可能 性も考えられるようになっている。 パラスポリンは如持にして生まれたか? この問題の 答えは現時点で得ょうがなく 様々な考え方ができると 思う。パラスポリンのように昆虫と無関係な活性老示す Cryタンパク質が自然環境中に広く散在していることは たしかにB.thuringiensisが毘虫とは関係なく,独自の戦 略と方向性を持って進化してきたことを示唆するもので ある。しかし,パラスボリンが持つ「アルカリ条件下で 可溶化

J

1

プロテアーゼによる活性化が必要」などの特3 徴は,毘虫との関連性があってもガン細抱とは無関係と 思われ,パラスポ1)ンと昆虫との深い関係を示唆するも のである。 B.thuringiensisは生き残り戦略として多様な Cryタンパク質を産生するシステムを持ち,その中から たまたまガン細胞に特異的な毒素が克つかっただけとい うことも考えられる。

パラスポリンを通して見る

Cry

タンパク質

の可能性

5

.

近年,殺血スペクトルが明らかでないCryタンパク質 の中から昆虫以外の生物に対する新規の活性在発克しよ うとする試みが活発に行なわれている。本稿で紹介した パラスポリン以外にも病原性原生動物であるトリコモナ スに活性老示すB.thUl・ingiensisが見つかっているCKondo et a,.l2002) 0 B. thuringiensisの産生する Cryタンパク質 が上述のような戦略を持つのであれば,スクリーニング の戦略や方法次第で,今後も様々な活性を持つ新規Crγ タンパク質が見つかると考えられる。 また,今後,パラスポリンの分野でも遺伝子組換え技 術を用いたトキシン分子の改変が試みられるようになる と考えられる。特に本稿でも紹介したパラスポリン 1や 3は, 3つのドメインで構成される典型的な殺虫性Crγ トキシンと比較的似た構造を持ち,遺佳子の改変も比較 的容易と考えられる。つまり,特異性や機能などが異な るパラスポリンもしくはCryトキシンは受容体への結合 部位などの機能構造もそれぞれ異なっているはずであ る。しかし,お互いに基本骨格が類似しているのであれ ば,全体の構造を損なわずにその機能構造自体を交換も しくは改変できる可能性がある。似たようなことはCry トキシンにおいて一般的に行なわれており,ある Cryト キシンの受容体結合に関与すると考えられるドメイン H のループ構造を異なる特異性を持つCryトキシンに導入

(7)

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.

c

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