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中国の全日制専門職大学院の位置づけに関する実証的研究 -学術性と職業性を視点として- [ PDF

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Academic year: 2021

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1 1.目次 第一章 研究目的と研究背景 第二章 専門職大学院に関する先行研究 第一節 高等教育のマス化 第二節 諸外国の専門職大学院の発足 第三節 全日制専門職大学院に関する先行研究 第三章 仮説と研究方法 第一節 理論検討と課題設定 第二節 仮説設定 第三節 研究方法 第四章 入学者の動向 第一節 学生の身分と志望 第二節 学生の進学理由 第三節 学生の入学前意識 第五章 育成プロセス 第一節 科目の設置について 第二節 校内指導教員について 第三節 校外指導教員について 第四節 実践について 第六章 卒業後の進路 第一節 職業とつながること 第二節 学生の進路選択 第三節 学生の意見 第七章 結論と今後の課題 2.概要 第一章 研究目的と研究背景 全日制専門職大学院は、高等教育大衆化における職業 に移行の改善ないし学歴主義的な進学志向を改革してい くための重要な手段として位置付けられている。しかし、 導入実施からの期間が短いため、充分な実証研究が不足 している。そこで本研究は、全日制専門職大学院は職業 性が強いのか、学術性が強いのか、全日制専門職大学院 は一体どのような位置付けであるのかを解明することを 目的とする。 着眼点として、専門職学位制度の発足から、全日制専 門職大学院制度への展開を通して示されている中国高等 教育における職業専門性の確立という課題について、全 日制専門職大学院の位置づけを検討する。 とりわけ学術性と職業性の対比し、それから教育セク ターの考え方、労働市場における専門職の需要との対応 関係に注目する。①入学者の動向、②育成プロセス、③ 卒業後の進路の、三方向から検討し、それぞれの課題を 整理していく。 第二章 専門職大学院に関する先行研究 マーチン・トロウ(1976 年)は、高等教育マス化時代 におけるエリート教育は「教育の重点は人間形成から、 より専門的で技術的なエリート役割を果たすうえで必要 な、技術の伝達に移っていく」と指摘した。各国で政策 サイドの意識が変化し、高度で専門的な職業能力を有す る人材を育成することが大学院の役割の一つとして認識 されるようになった。中国も 1990 年から専門職学位が始 まった、それから大学院教育は学術型大学院と専門職大 学院の二種類に分かれる。 2009 年、政府は大学院教育の理念を転換しながら「全 日制専門職大学院」という新しい形式の大学院教育を実 施した。同時に学術型大学院の募集人数を減少させ、全 日制専門職大学院の募集人数を拡大している。しかし業 界には専門型人材を育成できるのかという指摘がなされ ており、王(2015)は、全日制専門職大学院の卒業生が 学術型大学院と比べて競争力が低いことを指摘している。 加えて、曹(2012)も、全日制専門職大学院は他の大学 院卒業生と比べても応用技術が重視された能力形成がな されていないと指摘している。 第三章 仮説と研究方法 1)理論検討と課題設定 本研究は、拡大募集のため全日制専門職大学院は学術 型大学院にうまく進学できない学生の受皿になる可能性

中国の全日制専門職大学院の位置づけに関する実証的研究

――学術性と職業性を視点として――

キーワード:専門職学位,全日制専門大学院,職業性,学術性,位置づけ 教育システム専攻 汪 蕙婕

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2 を指摘する。また、全日制専門職大学院は制度上では専 門職人材を育成するために、業界のニーズや期待を満た し、職業性を考慮することが必要不可欠である。そこで、 実際にどのように展開しているのかを分析していく。さ らに、全日制専門職大学院の卒業生の進路選択意識はど うか、修士課程修了後学術型博士課程への進学意識が持 つ学生がいるかどうかを明確にしていく。 吉本(2016)は、先進諸国の第三段階教育が、それぞ れにマス化、ユニバーサル化を経験しながら、量的な拡 大を遂げ、またそのシステムの内部で質的な多様化が進 んでいることを指摘する。中国の第三段階教育の発展も 諸外国と同様に、マス化を経験し、さらにユニバーサル 化することが予想できる。そのため、高等教育のマス化 に伴う様々な課題が現れつつある。そのため中国の第三 段階教育も先進国と同様に、量的に拡大するとともに、 内部で質的な多様化を実現するため様々な教育政策を作 り、教育制度を改善していく動きが想定される。 本研究は、吉本(2016)の職業教育の進展に係る内部・ 外部のステークホルダーの関与理論を参照し、国家、市 場等外部から影響があるものを、外部ステークホルダー として位置づける。一方、教育機関の影響は、内部のス テークホルダーとして位置づける。 外部統制の影響が強い専攻は職業性が強い、外部統制 の影響があまり強くない、内部統制の影響で動く専攻類 は学術性が高いという仮説が設定される。仮説に沿って、 全日制専門大学院の位置づけは専攻分野によって異なる かどうか、解明していく。 2)仮説設定 全日制専門職大学院の位置づけを明確にするために、 以下の仮説を立てた。 1.専門職大学院は市場のニーズを応じて展開するもので ある。中国の場合は、入学希望者の動向に合わせて展開 する可能性があり、業界や企業などのニーズが明確でな ければ、卒業生は学術型の博士課程に向かう可能性があ る。 ① 全日制専門職大学院の入学者は、学術型大学院と同 じであり、学術型大学院の受け皿になる。 ② 全日制専門職大学院の育成プロセスも学術型大学院 と近い。 ③ 全日制専門職大学院の卒業生の進路は、社会と業界 のニーズに適応しない場合、学術型大学院や学術型 博士課程に向かう。 2.全日制専門職大学院の専攻分野によって、位置付けが 異なる。国家資格の統制がある、外部統制の影響が考え られる専攻は職業性が強く、外部統制の影響があまり強 くなく、内部統制の影響で動く専攻類は学術性が高いこ とが想定される。 3)研究方法 本研究では、まず中国の大学院制度の発展状況を把握 し、文献を参考しながら中国の全日制専門職大学院の問 題点を検討する。次に、学生アンケート調査を行い、学 生の立場から、入学者の動向、育成プロセス、卒業後の 進路に対しての満足度や評価を明らかにしていく。さら に全日制専門大学院の学術性と職業性を把握しながら、 全日制専門大学院の位置づけを検討する。 本研究は四つの大学(甘肃政法学院、兰州理工大学、 兰州交通大学、西北师范大学)の専門職学位専攻(16) を対象として調査を行った。専門職大学院の専攻分野が 広いため、本研究では吉本(2016)の EQ 教育訓練分野 分類1を基準として、この 16 専攻を5分類に分けた。 ①社会科学、ビジネス、法律:法律、金融、会計、監査 ②教育・社会福祉:教育専攻、社会奉仕、体育 ③人文学・芸術デザイン:芸術、メデイアとマスコミ ④工学:工学、工学管理 ⑤管理類:MBA(工商管理) MPA(公共管理) そのうち、工商管理と公共管理という二つ専攻は特殊な 専攻なので、本稿では他の専攻と区別して、管理類とし て分類する。 社会科学・ビジネス・法律と管理類専攻は外部ステー クホルダーの関与で設立した専攻である、教育・社会福 祉、人文学・芸術デザイン、工学類は内部ステークホル ダーの関与で設立した専攻として位置づける。 第四章 入学者の動向 1)学生の身分と志望について 全日制専門職大学院は専門職大学院と同じ育成目標 を持つとはいえ、入学者は主に大卒者である。入学者の 身分が学術型大学院と同じのみならず、新卒者の進学意 識も学術型大学院に進学する意識と共通点がある。学生 の進学の第一志望を聞くと、85.7%の入学者の第 1 志望 は専門職大学院であり、「調整移動制度」で進学する者が いる。志望した学術型大学院の基準に達していなことが 原因で受け入れなかったので、志望専攻を変更し、全日 制専門職大学院に進学している。学術型大学院の学生は 全日制専門職大学院に調整移動できるが、全日制専門職 大学院生は学術型大学院に移動することができない。専 1 吉本 圭一 第三段階教育における職業教育のケーススタディ 2016 年1月 p8より

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3 攻によって、学生の進学意識が明らかに違い、特に工学 類専攻の入学者のうち、約 25.9%の入学者の第一志望は 学術型大学院である。「調整移動制度」で進学する学生の 割合が多い専攻は学術型大学院の受け皿と見ることがで きる。 2)学生の進学理由について 拡大募集により、大勢の学生を募集した結果、学生の 進学理由が複雑になる。「調整移動制度」に従うことや学 術型大学院より難度が低くて募集人数が多い、さらに逃 げ道として進学する学生が一定数存在する。特に、人文 学類と教育類において「試験が易しい、募集人数が多い、 入りやすい」という理由で進学する学生の比率が他の専 攻より高い。また、「一応大学院に入りまた学術型博士課 程に進学したい」、「調整移動制度に従う」という理由で、 専攻によって一部の入学者は消極的な理由で、不本意な 選択という意識を持って、学術型大学院に進学している。 3)学生の入学前意識について 全体的に見ると、学生は全日制専門職大学に対して期 待や地位・評価等があまり高くないことがわかる。その 中で、教育・社会福祉専攻類の学生が、消極的な理由で 進学する割合が高く、全日制専門職大学院に対しての評 価が低いことが分かる。逆に、管理類専攻と社会科学・ ビジネス・法律類の学生は入学時、難度が低い、調整移 動制度などの消極的な理由で進学する学生の比率が低い ので学生は自信を持っていることがわかる。加えて、関 連業界からも高度な専門的人材に対してのニーズが高い。 これら分野では、全日制専門大学院に対して期待が高く、 評価も高いと見ることができる。 第五章 育成プロセスから見る 1)科目設置について 全日制専門職大学院の科目構成はバランスが取れて いないという指摘も多い。専門基礎科目と専門必修科目 という理論科目が多く実践科目が少ないので、全日制専 門職大学院の科目構成について専門職大学院より学術型 大学院と近いことが見える。また、授業の方式も講義が 多く、実践に関わる方式が少ない。さらに、学術型大学 院の学生と一緒に専門科目を受けることが多いので、科 目設置について学術型大学院と完全に区別されないと見 られる。各専攻の科目設置から見ると、管理類と社会科 学・ビジネス・法律類、工学類では適切だと思われる学 生が多い。逆に人文学・芸術類、教育・社会福祉類の専 攻において不適切だと考える学生が多い。 2)校内指導教員について 全日制専門職大学院において指導教員の指導方法も 学術型大学院院生と明確に区別されるべきであるが、教 員は学術院生と専門職院生を同時に指導することが求め られる。指導教員が学術型大学院と全日制専門職大学院 の教育目標を実現するため、学術院生に対して研究を重 視する、専門職院生に対して実践を重視するという指導 方式を円滑に変換しなければならない。 指導教員が自分の立場を把握できないなら、全日制専 門職大学院院生に対しての指導方式が学術型大学院と同 じなることも考えられる。この点については、学生評価 から見る、社会科学・ビジネス・専攻類の学生は指導教 員に対して評価は非常に高い、逆に教育・社会福祉の専 攻の学生は指導教員に対して評価があまり高くないとい う結果が得られた。 3)校外指導教員について 校外指導教員が、「いる」と回答した学生4割であった。 これで、校外指導教員の実施状況は適切かどうかという 疑問が生じる。校外指導先生がいる場合にも、校外指導 教員がほぼ学生と接触しない、実践知識の提供機会も少 ない、名前だけの存在になっていることも珍しくない。 また、校外指導先生がいない時、実習期間で業界におけ るトップの人間が指導教員として専門職技術を提供する ことが一番理想的な構想だが、現実は校内の指導先生と 現場の従業員たちが校外指導教員の代わりに指導者とし て全日制専門職大学院の学生を指導するのは現実である。 業界において高度な専門職知識を学べないなら、育成プ ロセスの質保証の確保することが非常に困難になる。 4)実践について 全日制専門職大学院は必ず半年の実習期間があると 定めていた。調査結果を見ると、4割の学生は実習期間 が6月未満と回答した。社会科学・ビジネス・法律専攻 の実施状況が他の専攻より長いことが見える。 第六章 卒業後の進路 1)職業とつながること 他国と違って、中国では専門職大学院と関連する職業 に従事するなら、専門職学位はあまり要求されない。全 日制専門職大学院にとっても同様な問題に直面すること が考えられる。外部ステークホルダーの関与で動く専攻 は職業と緊密に関連する、職業の発展に連れて、業界が 求められる人材像も変わる。高度な専門知識を持つ人材 に対しての社会からの差し迫った要求である。結果から も、法律、金融、工学類に関する職業にとって、専門職 学位の重要性がより高いと見える。

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4 一方、業界には学位の要求がないため、就職時に学位 ではなく資格を持つことが採用の条件となる。そのため、 専門職学位は関連職業とつながらない状況が短期間で解 決できず、状況に順応して、できる限り緩和する方向性 が見込まれる。全日制専門職大学院は高度な専門知識を 持つ人材を育成することを目標として、資格に関する研 修や訓練など重視され、高いレベルの資格を取ることが 質保証の重要な視点となるなら、全日制専門職大学院の 優勢が明らかになる。しかし、法律、金融、工学類に直 結する職業では資格が重視され、高等な専門職人材を求 められる。学校側も社会の業界の要求を応じて、資格を 重視する。一方、内部統制で動く専攻は業界からのニー ズが少ないため、学校側もあまり重視ず悪循環になる傾 向がある。 2)学生の進路選択について 全日制専門職大学院は高度な専門職技術を持つ学生 を育てることが重視されるため学生に応用型技術を身に つけさせることである。この点において、学術型大学院 とその機能を異にしている。しかし、経済状況等、他の 要素を含めないのであれば、約 5 割の学生は学術博士課 程に行くというつもりがあると答えている。卒業後の進 学希望理由について、「入学前からずっと考えている」、 「入学してから、全日制専門職大学院の教育はあまり効 果がないと思う、また学術型大学院に進学したい」とい う理由を持つ人は少なくないことも分かった。 3)学生の意見について 学生にとって全日制専門職大学院は存在する問題点 を聞くと、一番不満なのは「実践チャンスが少ない」「実 践時間が短い」である。「実践的知識より理論的知識が 多い」「学術型大学院とあまり区分されない」「学習年 限が短い」と思われる人もいる。だから現段階では、全 日制専門職大学院は学術型大学院と明確に区別されない と考える。 第七章 結論と今後の課題 1)入学者の動向を分析すると、全日制専門職大学院は 専門職大学院であるとはいえ、内部ステークホルダーの 関与で動く専攻、消極的な理由で進学する学生が多い、 各専門に対して評価があまり高くなく、学術型大学院の 受け皿と見られる可能性が高い。逆に、外部ステークホ ルダーの関与で動く専攻の学生は消極的な理由で進学す る比率が低いため、各専攻に対して評価や期待が高い、 これらの専攻は学術性より、職業性が強いと考えられる。 2)育成プロセスについて、外部ステークホルダーの関 与で設立した社会科学・ビジネス・法律専攻の学生は全 日制専門職大学院の育成プロセスの中に科目設置に対し て評価が高く、指導教員の指導内容と指導方式に対して も満足度が高い。逆に、内部ステークホルダーの関与で 設立した専攻の学生は、科目設置に対して評価が低い、 指導教員に対しても不満がある。育成プロセスからみる と、これらの専攻の職業性が相対に低い、学術性が強い ことが見える。 3)卒業生の進路から見ると、外部ステークホルダーの 関与で設立した社会科学・ビジネス・法律専攻では専門 職学位が重要であり、学校側も資格を重視する。逆に外 部ステークホルダーが弱くて、業界のニーズも少ない専 攻は卒業後の進路の管理も弱い。入学者の動向において 学術性が高い専攻は、卒業生の進路にも職業性が弱くて 学術性が強いことが見える。 4)外部ステークホルダーの関与で設立した専攻は業界 のニーズに対応でき、職業性が高い。逆に、内部ステー クホルダーの関与で設立した専攻は、業界と社会のつな がりが緊密ではないので、職業性が弱く、学術性が高い。 今後の研究課題として、本研究は主に全日制専門職大 学院に限定した議論であった。そのため、学術型大学院 と専門職大学院、全日制専門職大学院を総合して全面的 に比較しながら分析することも必要である。また、工学 類と管理類を全面的に分析するため、特殊性を考慮する 必要もある。以上のような問題点については、今後の課 題として引き続き追究していきたい。 主要参考文献、資料 マーチン・トロウ 天野郁夫、喜多村和之訳,1976,『高学 歴社会の大学―エリートからマスへ』東京大学出版会 満 都拉,2012,「中国の全日制専門職大学院のあり方につ いて : 大学生の進路選択の視点から」『東京大学大学院 教育学研究科紀要』52 巻,pp.287-296 相澤 益男,2006,「新時代の大学院」大学院教育の新時代 2006 年 2-3 月号,pp.16 吉本 圭一,2016,「第三段階教育カリキュラムにおける職 業的な特長—研究の方法と結果概要—」『第三段階教育 における職業教育のケーススタディ』 曹曄華 裴旭,2012,「全日制専業学位修士的社会認可度調 適和対策探析」第九回全国学位与研究生教育評估学術会 議,pp.217-221 王 敏 劉兆磊 朱中超,2015,「从就業状况看全日制専業 学位研究生的培養質量」『高等農業教育』,pp.107-110

参照

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