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密教文化 Vol. 1966 No. 75 002田中 順照「唯識観の発展 (その二)――三無性論の研究―― P13-35」

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(1)

(そ

)

-三 無 性 論 の 研 究

-田

三 無 性 論 は 玄 癸 訳、 顕 揚 聖 教 論、 成 無 性 品 に 相 当 す る 真 諦 の 訳 書 で あ る。 真 諦 の 訳 書、 例 え ば 摂 大 乗 論 釈 に 於 け る よ う に、 真 諦 の 註 釈 と 思 わ れ る も の が 付 加 さ れ て い る。 そ の 註 釈 と 思 わ れ る と こ ろ は、 ﹁ 釈 日 ﹂ と 云 う と こ ろ だ け に 限 ら れ る の で は な い。 玄 奨 訳 に 比 べ て 明 ら か に 付 加 と 思 わ れ る と こ ろ に、 吾 々 は 真 諦 独 自 の 理 解 を 見 る こ と が で き る。 両 論 と 比 較 す る こ と に よ つ て、 両 者 の 理 解 の 相 違 を 明 ら か に す る こ と が 本 論 の 目 ざ す と こ ろ で あ る。 先 ず 最 初 に 三 性 が 説 か れ る。 玄 奨 訳 と 真 諦 訳 と を 対 照 し よ う。 遍 計 所 執 者、 所 謂 諸 法 依 -因 言 説 一、 所 レ 計 自 体。 依 他 起 者、 所 謂 諸 法 依 二 諸 因 縁 一、 所 レ 生 自 体。 円 成 実 者、 所 謂 諸 法 真 如 自 体。 ( 玄 ) 分 別 性 者 謂 名 言 所 顕 諸 法 自 性。 ( 即 似 塵 識 分。 ) 依 他 性 者、 謂 依 レ 因 依 レ 縁 顕 法 自 性。 ( 即 乱 識 分、 依 二 因 内 根 縁 外 塵 一 起 故。 ) 真 実 性、 謂 法 如 如。 ( 法 者 即 是 分 別 依 他 両 性。 如 如 者 即 是 両 性 無 所 有。 分 別 性 以 レ 無 二 体 相 一故 無 所 有。 依 他 性 以 レ 無 レ 生 故 無 所 有。 此 二 無 所 有 皆 無 二 変 異 一 故。 言 二 如 如 一。 故 呼 二 (1) 此 如 如 一為 二 真 実 性 一。 ) ( 真 ) 遍 計 所 執 性 と は 名 に よ つ て 捉 え ら れ た も の で あ る。 名 に 対 応 し て 実 在 す る と 考 え ら れ る と こ ろ の も の で あ る。 真 諦 は こ れ を 対 象 ( 塵 ) に 似 た る 識 分 と 云 う。 次 に 依 他 起 性 と は、 因 唯 識 観 の 発 展 ( そ の 二 )

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密 教 文 化 と 縁 と に よ つ て 生 起 せ る も の で あ る と 説 か れ る。 ( こ の と こ ろ か ら、 依 他 が 縁 起 の 意 味 に 解 さ れ る の で あ る が、 そ の 理 解 は 十 分 で は な い。 ) 真 諦 訳 は こ れ を 乱 識 分 と 呼 び、 因 た る 内 根 と 縁 た る 外 塵 に よ つ て 起 こ る と 云 う。 こ の 解 釈 は、 次 の 依 他 性 の 生 無 性 を 解 す る と き、 ﹁ こ の 生 は 縁 力 に よ つ て 成 じ て 自 に よ つ て 成 ぜ ず、 縁 力 は 即 ち こ れ 分 別 性 に し て、 分 別 性 の 体 は 既 に 無 な り ﹂ と 云 う の と 両 立 し 得 る で あ ろ う か。 吾 々 は 名 に 対 応 す る 外 的 対 象 が あ り、 名 は そ の 真 実 相 を 示 す も の と 考 え る。 と こ ろ が、 名 は 対 象 の 真 実 相 を 示 す も の で も な く、 ま た、 名 に 対 応 す る 外 的 対 象 が あ る の で も な い、 と 云 う の が 唯 識 思 想 の 根 本 的 立 場 で あ る。 名 に 対 応 す る 轟も の と し て、 名 に よ つ て 捉 え ら れ た も の が 分 別 性 で あ る。 か か る 分 別 性 に よ つ て 乱 識 が 生 ず る と 云 う こ と は、 内 な る 五 根 と 外 な る 対 象 に よ つ で 識 は 生 ず る と 云 う 解 釈 と 両 立 し な い。 内 な る 五 根 と 外 な る 対 象 と に よ り て 識 が 生 起 す と 云 う こ と は 明 ら か に 常 識 で あ る。 唯 識 思 想 は か か る 思 想 を 斥 け 識 か ら 出 発 す る。 こ の こ と は 依 他 起 性 の 相 を 説 い て、 相 箆 重 為 レ 体 此 更 互 縁 生 非 二 自 然 是 有 一 故 説 二 生 無 性 一 云 何 説 為 二 依 他 起 一。 由 二 此 二 種 更 互 為 レ 縁 而 得 一レ 生 故。 謂 相 為 レ 縁 起 二 於 麓 重 一館 重 為 レ 縁 又 能 生 レ 相。 ( 玄 ) 問 日。 此 類 云 説 為 二 依 他 一 也。 答 日。 互 為 二 因 縁 -。 共 相 成 故。 所 二 以 然 輔 者。 由 二-縁 相 一故 麓 重 得 レ 成。 由 二 -縁 麓 重 噌 相 類 得 レ 成。 (故 説 二 此 両 類 一。 名 二 依 他 性 一。 何 以 故。 無 二 異 体 一 (2) 故。 並 名 二 依 他 性 嶋。 約 レ 義 終 不 レ 同 也。 ) ( 真 ) と 説 か れ る と こ ろ か ら も 知 ら れ る。 即 ち こ こ で は、 依 他 性 は 分 別 性 に よ つ て 生 じ、 分 別 性 は 依 他 性 に よ つ て 生 ず、 と 説 か れ て い る。 従 つ て 因 た る 内 根 と 縁 た る 外 塵 に よ り て 起 こ る と 云 う 理 解 は と る べ き で は な い。 次 に 真 実 性 は、 玄 樂 訳 で は 単 に 諸 法 の 真 如 自 体 と 説 か れ る に 過 ぎ な い が、 真 諦 訳 で は 如 如 を 説 明 し て、 分 別 性 の 無 相、 依 他 性 の 無 生 の 二 の 無 所 有 で あ る と 云 う。 ☆ ☆ ☆ 次 に 三 無 自 性 と は、 相 無 性 ・ 生 無 性、 勝 義 無 性 の 三 で あ り、 そ れ ぞ れ 次 の よ う に 説 か れ る。 一 相 無 性。 謂 遍 計 所 執 自 性。 由 二 此 自 性 体 相 無 一故。 二 生 無 性。 謂 依 他 起 自 性。 此 自 性 縁 カ 所 生 非 二 自 然 有 一故。 三 勝 義 無 性。 謂 円 成 実 自 性。 由 二 此 自 性 体 是 勝 義 又 是 諸 法

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無 性 一 故。 ( 玄 ) 約 ご 分 別 性 一者。 由 二 相 無 性 一 説 名 二 無 性 一。 何 以 故。 如 二 所 顕 現 一 是 相 実 無。 是 故 分 別 性。 以 二 無 相 轍為 レ 性。 約 二 依 他 性 一者。 由 二 生 無 性 一 説 名 二 無 性 一。 何 以 故。 此 生 由 二 縁 力一 成。 不 二 由 レ 自 成 一。 ( 縁 力 即 是 分 別 性。 分 別 性 体 既 無。 以 レ 無 二 縁 力 一故 生 不 レ 得 レ 立。 是 故 依 他 性 以 二 無 生 一 為 レ 性。 ) 約 二 真 実 性 一者。 由 二 真 実 無 性 一説 二 無 性 一。 何 以 故。 此 理 是 真 実 故。 一 切 諸 法 由 二 此 理 一 故 同 一 無 性。 是 故 真 実 性 以 二 無 性 幅 為 レ 性。 ( 真 ) 名 に よ つ て 捉 え ら れ た も の は 本 来 無 で あ り、 名 の 示 す が 如 き 相 が あ る の で は な い。 こ れ が 相 無 性 で あ る。 次 の 生 無 性 に つ い て、 玄 奨 訳 で は、 縁 力 に よ つ て 生 じ て 自 然 生 で は な い か ら 生 無 性 と 云 う と 説 か れ、 真 諦 訳 で は、 縁 力 に よ つ て 成 り 立 ち、 自 ら に よ つ て 成 立 せ る も の で な い か ら 生 無 性 と 云 う と 説 か れ る。 玄 莫 訳 で は 又、 縁 力 所 生 で 自 然 有 で な い か ら と も 云 う。 非 二 自 然 生 一と 云 い 非 二 自 然 有 一 と 云 う と き、 自 存 的 存 在 は 否 定 さ れ て は い る が、 諸 の 条 件 に よ つ て 生 起 せ る も の は 否 定 さ れ て い な い。 と こ ろ が 真 諦 訳 で は そ う で は な い。 生 そ の も の が 否 定 さ れ て い る。 即 ち 前 述 の よ う に、 ﹁ 分 別 性 の 体 は 既 に 無 な り、 縁 力 無 き を 以 て の 故 に 生 は 立 つ る こ と を 得 ず ﹂ と 説 か れ、 ま た、 ﹁ 他 力 に よ つ て 生 ず、 他 既 に 体 無 し、 自 も 能 く 生 ず る こ と を 得 ず、 自 も な く 他 体 も 無 き を 以 て、 是 の 故 に (3) 無 生 な り ﹂ と 説 か れ る。 玄 癸 は 縁 に よ つ て 生 成 せ る も の を 認 め る に 対 し て、 真 諦 は 縁 に よ る 生 成 そ の も の を 認 め な い。 こ の こ と は 転 識 論 で も 明 ら か に 説 か れ て い る。 三 十 頒 で、 ﹁ 初 即 相 無 性。 次 無 自 然 性 ﹂ と 説 か れ る と こ ろ を 転 識 論 で は、 分 別 性 名 二 無 相 性 一。 無 二 体 相 一故。 依 他 性 名 二 無 性 性 一。 体 及 (4) 因 果 無 所 有 と 説 き、 そ れ に 註 し て、 体、 塵 相 に 似 る。 塵 は 即 ち 分 別 性 な り。 分 別 性 既 に 無 な れ ば、 体 も 亦 是 れ 無 な り。 因 亦 無 な り と せ ば、 も と 分 別 性 を 境 と な す に よ つ て 能 く 識 の 果 を 発 生 す。 境 界 既 に 無 な れ ば 云 何 ぞ 果 を 生 ぜ ん。 種 子 は 能 く 芽 を 生 ず。 種 子 既 に 無 な ら (5) ば、 芽 は 何 ぞ 生 ぜ ん。 こ の 故 に 生 な し。 と 説 か れ て い る。 さ て 三 十 頒 の 無 自 然 性 ( n a s v a y a m b h va ) に つ い て、 成 唯 識 論 は こ れ を 生 無 性 と 解 し て い る。 こ の 生 無 性 に つ い て 南 寺 伝 と 北 寺 伝 と の 間 に 論 争 が あ り、 南 寺 伝 は こ れ を 自 然 生 の 生 と 解 し、 北 寺 伝 で は こ れ を 縁 生 の 生 と 解 し て 唯 識 観 の 発 展 ( そ の 二 )

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密 教 文 化 い る。 既 に 引 用 し た 顕 揚 聖 教 論 で は、 縁 力 所 生 に し て 自 然 生 (6) に あ ら ず と 説 き、 ま た、 自 然 有 に あ ら ず、 と 説 い て い る。 従 つ て 顕 揚 聖 教 論 に 従 う 限 り 南 寺 伝 は 誤 り と さ る べ き で は な (7) い。 北 寺 伝 の 縁 生 の 無 性 を 縁 生 に よ る 無 性 と 云 う な ら ば、 自 然 生 な し と 云 う の と 何 ら 異 な る と こ ろ が な い。 自 性 あ る も の は 他 の 縁 を か ら な い で 自 ら の 力 に よ つ て 生 ず る。 従 つ て 縁 力 に よ つ て 初 め て 生 ず と は 自 然 生 で な い こ と を 意 味 し て い る。 生 無 性 の 生 を 縁 生 の 意 味 に 解 す る な ら ば、 生 無 性 は 縁 生 に よ る 無 性 で は な く、 縁 生 と 云 う こ と が 不 可 得 な る こ と を 示 す も の で な け れ ば な ら な い。 真 諦 訳 の 三 無 性 論 や 転 識 論 は 明 ら か に こ れ を 示 し て い る。 尚 こ の 問 題 は 龍 樹 の 空 の 理 解 に も 関 係 す る。 現 在 我 国 の 学 界 に 於 て は、 縁 起 -無 自 性 -空 が 説 か れ、 龍 樹 の 空 は も の が 無 い こ と を 意 味 す る の で は な い。 ﹁ 空 と は 相 依 相 待 に 於 て 彼 (8) 此 が あ り 得、 生 起 し 得 る こ と で あ る ﹂ と 云 う 説 が 行 な わ れ て い る。 か か る 説 で は、 縁 起 不 生 の 一 面 が 龍 樹 に あ り、 そ の 一 面 こ そ 龍 樹 め 真 面 目 を 示 す も の で あ る と 云 う こ と が 忘 れ ら れ て い る。 吾 々 の 思 惟 を 超 え た 絶 対 者 は あ ら ゆ る 賓 辞 を 許 さ な い も の で お り、 空 又 は 無 と 云 う 否 定 の 言 葉 が 絶 対 者 の 面 影 を 伝 え る 最 も よ い 言 葉 で あ る こ と が 忘 れ ら れ て い る。 彼 等 は 云 わ ば 縁 起 を 絶 対 的 真 理 の 如 く 見 な す 不 治 の 病 に か か つ て い る。 勝 義 無 性 に つ い て、 玄 装 訳 で は、 円 成 実 性 は 勝 義 で あ り 諸 法 の 無 性 で あ る か ら 勝 義 無 性 と 云 う、 と 説 く に 対 し て、 真 諦 訳 で は、 そ の 無 性 を 分 別 性 の 無 相、 依 他 性 の 無 生 と 解 し て い る。 こ の 無 性 を 離 れ て 別 に 真 実 性 が あ る の で は な い。 分 別 性 と 依 他 性 と の 無 で あ る 点 で 有 と 云 う こ と が で き な い。 又、 分 別 性 と 依 他 性 と の 二 無 は 兎 角 の よ う に 無 で あ る と も 云 う こ と が で き な い。 -そ の 無 こ そ 真 実 の 有 で あ る。 し か し そ れ は 存 在 と し て の 有 で は な い。 従 つ て 非 有 性 で あ り 同 時 に 非 無 性 で あ る。 こ の 点 で 非 無 性 と 云 わ れ る。 又、 無 性 を 以 て そ の 本 質 と す る か ら 無 性 性 と 云 う、 と も 説 か れ て い る。 こ の よ う に 真 諦 の 解 す る 真 如 は、 分 別 性 の 無 相、 依 他 性 の 無 生 の 無 所 有、 即 ち 法 空 そ の も の で あ る。 と こ ろ が、 相 名 分 別 如 如 無 分 別 智 の 如 如 を 解 し て ﹁ 法 空 所 顕 聖 智 境 界 ﹂ と 云 う。 後 に 七 真 如 を 説 く に 当 つ て、 相 如 如 を 説 明 し て、 ﹁ 相 如 如 と は 謂 く 人 法 二 空 な り。 ⋮ ⋮ 是 の 故 に 二 を 相 空 と 名 つ く る

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(9) は、 相 空 を 云 う に あ ら ず。 相 空 を 以 て 相 と 為 す。 ﹂ と 云 う。 こ の 考 え は 法 空 所 顕 の 真 如 と 云 う 考 え と 相 通 ず る。 二 空 に よ つ て 顕 わ さ れ る も の は、 二 空 を そ の 相 と し て い る か ら で あ る。 法 空 そ の も の が 真 如 で あ る か、 法 空 に よ つ て 顕 わ さ れ る も の が 真 如 で あ る か。 こ こ に 大 き い 問 題 が あ る。 玄 婁 訳 は は こ の と こ ろ で た だ 勝 義 は 諸 法 の 無 性 で あ る と 云 う に す ぎ ぬ。 ☆ ☆ ☆ 分 別 性 の 無 で あ る こ と は ど う し て 明 ら か に さ れ る か。 そ の 理 由 と し て、 (一) 分 別 性 は 五 事 に 摂 せ ら れ な い か ら、 (二) 名 と 対 象 と は 互 い に 客 と な る か ら、 の 二 が あ げ ら れ る。 の の 五 事 と は 相 ・ 名 ・ 分 別 ・ 真 如 ・ 正 智 の 五 で あ る。 真 諦 訳 の 説 明 に よ れ ば、 相 と は 諸 法 の 品 類 に し て 名 句 味 の 所 依 と な る も の、 名 と は 諸 法 の 品 類 中 の 名 句 味 で あ る。 こ こ で は 名 の よ り ど こ ろ と な る 相 と 名 と か ら 分 別 性 は 区 別 さ れ て い る。 こ の こ と は 既 に 分 別 性 に つ い て 理 解 し た と こ ろ と 矛 盾 し て い る。 ま た、 名 と 義 と が 互 い に 客 と な る と 説 く と こ ろ で ﹁ 外 日 く。 義 及 び 名 (10) は 分 別 の 所 作 に あ ら ず。 ⋮ ⋮ 答 え て 日 く。 是 の 義 は 然 ら ず。 ﹂ と 説 く と こ ろ に 矛 盾 す る。 従 つ て 分 別 性 の 無 を 証 す る の に、 五 事 の 所 摂 で な い か ら と 云 う 理 由 は 首 肯 し 難 い。 こ れ に 反 し て、 名 と 義 と 互 い に 客 と な る と 云 う 主 張 は よ く 分 別 性 の 無 を 証 し、 唯 識 の 根 本 義 を 示 し て い る。 吾 々 は 名 に 対 応 す る 対 象 が あ り、 名 は よ く そ の 対 象 の 真 実 を 示 す も の と 考 え る の 即 ち 名 と 義 と は 相 称 う と 考 え る。 し か し そ れ は 誤 り で あ り、 名 と 対 象 と は 互 い に 客 と な る に 過 ぎ ぬ。 名 は 対 象 の 真 実 を 示 す も の で も な く、 ま た、 名 の 示 す よ う な 対 象 が 実 在 す る の で も な い。 こ れ を ﹁ 名 義 互 に 客 と な る ﹂ と 云 う。 然 ら ば こ の こ と は ど う し て 知 ら れ る か。 そ の 理 由 と し て 次 の 三 が あ げ ら れ る。 (一) も し 対 象 が 名 の 示 す 通 り に あ り、 名 は 対 象 の 真 実 を 示 す も の で あ る な ら ば、 対 象 が 眼 前 に あ る 時 は、 未 だ そ の 名 を 知 ら な い 時 に も 対 象 の 知 覚 が 生 ず る で あ ろ う。 ま た、 対 象 が 眼 前 に あ る 時 は、 そ の 名 を 知 り 得 る で あ ろ う。 し か し 実 際 は そ う で は な い。 (二) 一 つ の も の に 多 く の 名 が あ る 場 合、 名 が も の の 真 実 を 示 す も の で あ る な ら ば、 そ の 多 く の 名 の 数 だ け の も の が あ る こ と に な る。 そ の 時 互 い に 相 違 し た 多 く の も の が 一 処 に あ る こ と に な り、 吾 々 の 現 実 の 経 験 に 反 す る。 日 一 つ の 名 が、 又、 他 の も の に 名 づ け ら れ る 場 合 が あ る。 名 が 不 定 で あ る 時、 対 象 も ま た 不 定 と な る。 こ の よ 唯 識 観 の 発 展 ( そ の 二 )

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密 教 文 化 う に 名 と 対 象 と は 互 い に 客 と な り、 と も に 分 別 さ れ た も の に す ぎ ぬ。 こ れ に 対 し て、 名 も 対 象 も 分 別 さ れ た も の で な く 実 有 で あ り 隔 実 有 の 名 が 実 有 の 対 象 を 顕 わ す こ と は、 実 有 の 燈 が 実 有 の 瓶 を 照 ら す が 如 く で あ る と 主 張 さ れ る か も 知 れ ぬ。 し か し こ の 考 え も 誤 つ て い る。 何 と な れ ば、 燈 の 讐 で は 先 き に も の の 存 在 が あ り、 然 る 後 名 づ け ら れ る と 考 え ら れ て い る。 し か し 対 象 が あ る と 云 う こ と は、 対 象 を 了 解 す る と 云 う こ と で は な い。 ま し て 況 や、 そ の 名 を 知 る と 云 う こ と で は な い。 ま た 燈 に よ つ て 物 を 照 ら す 場 合、 こ の 人 は よ く 物 を 明 ら か に 知 る が、 他 の 人 は 物 を 見 る こ と が で き な い、 と 云 う こ と は な い。 と こ ろ が 名 の 場 合 は そ う で は な い。 も し 名 が 対 象 の 真 実 を 示 す も の で あ る な ら ば、 他 の 人 が 未 だ 名 を 知 ら な い 時、 名 を 聞 く な ら ば 名 を 聞 い て そ の 対 象 を 得 な い と 云 う こ と は な い だ ろ う。 か よ う に 燈 の 讐 は、 名 義 互 い に 客 と な る と 云 う こ と を 破 り 得 る も の で も な い。 し か し 尚 も 次 の 疑 問 が 呈 出 さ れ る。 も し 名 と 対 象 と が 相 称 う も の で な い な ら ば、 好 悪 を 聞 い て も 何 ら 憂 喜 の 心 を 生 じ な い で あ ろ う。 し か る に 好 悪 を 聞 い て 憂 喜 の 心 を 生 ず る の は、 名 と 対 象 と が 相 応 し て い る た め で は な い か。 そ の 疑 問 に 対 し て は、 長 い 時 間 に 亙 つ て 名 に 対 応 す る 実 在 あ り と す る 顯 倒 の 見 を 薫 習 し た 結 果 そ う な る の で あ (11) つ て、 名 と 対 象 と が 相 応 す る た め で は な い、 と 答 え る。 顛 倒 の 見 は 阿 頼 耶 識 に 薫 習 し て よ く 後 の 分 別 を 起 こ し、 薫 習 さ れ た 種 子 か ら 生 じ た 分 別 は 又 顛 倒 の 見 を 起 こ し、 互 い に 縁 と な り 果 と な つ て 相 続 し 生 死 の つ き る こ と が な い。 ☆ ☆ ☆ 名 に 対 応 す る 実 在 と し て 執 せ ら れ た も の、 即 ち 玄 奨 訳 の 遍 計 所 執 性 は 真 諦 訳 で は 分 別 性 と 説 か れ る。 真 諦 訳 で は 分 別 性 の 文 字 は 分 別 さ れ た も の を 意 味 す る だ け で な く、 分 別 す る 働 き を も 意 味 し て い る。 す る も の と さ れ る も の と を 裁 然 と 分 け る こ と な く、 こ れ を 等 し く 分 別 性 と 呼 ぶ と こ ろ に 真 諦 訳 の 特 色 が あ る。 か か る 遍 計、 分 別 に 六 種、 五 種、 八 種 の 別 が 説 か れ る。 先 ず 玄 奨 訳 の 名 称 を あ げ よ う。 六 種 -(一 ) 自 性 遍 計 ・ (二) 差 別 遍 計 ・ (三) 覚 悟 遍 計 ・ (四) 随 眠 遍 計 ・ (五) 加 行 遍 計 ・ (六) 名 遍 計。 五 種 -(一) 名 に よ つ て 義 の 自 性 を 遍 計 す ・ (二) 義 に よ つ て 名 の 自 性 を 遍 計 す ・ (三) 名 に よ つ て 名 の 自 性 を 遍 計 す ・ (四) 義 に よ つ て 義 の 自 性 を 遍 計 す ・ (五) 二 に よ つ て 二 の 自 性 を 遍 計 す。 八 種-(一) 自 性 分 別 ・ (二) 差 別 分 別 ・ (三) 総 執 分 別 ・ (四) 我 分 別 ・ (五) 我 所 分 別 ・

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因 愛 分 別 ・ (七) 不 愛 分 別 ・ (八) 愛 不 愛 倶 相 違 分 別。 真 諦 訳 で は、 六 種 ﹂ -(一) 自 性 分 別 ・ (二) 差 別 分 別 ・ (三) 覚 知 分 別 ・ (四) 随 眠 分 別 ・ ㈲ 加 行 分 別 ・ 因 名 字 分 別。 五 種 -(一) 名 に よ つ て 義 の 自 性 を 分 別 す・ (二) 義 に よ つ て 名 の 自 性 を 分 別 す ・ (三) 名 に よ つ て 名 の 自 性 を 分 別 す ・ (四) 義 に よ つ て 義 の 自 性 を 分 別 す ・ (五) 名 義 に よ つ て 名 義 を 分 別 す。 八 種 -(一 ) 自 性 分 別 ・ (二) 差 別 分 別 ・ (三) 聚 中 執 レ 一 分 別 ・ (四) 我 分 別 ・ (五) 我 所 分 別 ・ (六) 愛 分 別 ・ (七) 憎 憶 分 別 ・ (八) 非 愛 非 憎 分 別、 で あ る。 (一) 自 性 遍 計 と は 色 等 に そ れ ぞ れ の 体 性 あ り と す る 分 別 で あ り、 (二) 差 別 遍 計 と は 色 等 に 有 色 ・ 無 色 ・ 有 見 ・ 無 見 等 の 特 質 あ り と す る 分 別 で あ る。 ・(三) 覚 悟 遍 計 と は 言 葉 を よ く す る も の の 分 別 で あ り、 (四) 随 眠 遍 計 と は 名 言 を よ く し な い も の の 分 別 で あ る。 (五) 加 行 遍 計 と は 貧 腹 痴 の 煩 悩 を 生 ず る 分 別 で あ る。 因 名 遍 計 と は 文 字 に よ つ て 起 こ る も の と、 文 字 に よ ら ず し て 起 こ る も の と の 二 に 分 れ る。 (五) と 因 と は 喩 伽 論 で は (一) (二) (三) (四) と は 異 な る 標 準 で な さ れ た 分 類 で あ る が、 こ こ で は 一 つ に ま と め ら れ て い る。 次 に 五 種 め 分 別 の 第 一 は、 名 に 対 応 す る も め あ り と 執 す る こ と で あ り、 第 二 は、 例 え ば、 こ の も の は 色 と 名 づ け、 又 は 色 と 名 づ け ず と 分 別 す る こ と で あ る。 第 三 は 物 を 知 ら な い で 名 の み を 分 別 す る こ と で あ り、 第 四 は 名 を 知 ら な い で も の に つ い て 種 々 に 分 別 す る こ と で あ る。 第 五 は、 例 え ば、 こ れ は 色 で あ り、 こ れ を 色 と 名 つ く と 分 別 す る こ と で あ る。 八 種 の 分 別 の 第 一 の 自 性 分 別、 第 二 の 差 別 分 別 は、 六 種 の 遍 計 の 自 性 遍 計、 差 別 遍 計 に 相 当 す る。 第 三 の 総 執 分 別 は、 あ ま た の 要 素 か ら な る も の に 一 を 執 す る 分 別、 例 え ば 五 慈 か ら な る も の を 我 と 執 し、 又、 い く た の 樹 木 の 集 合 を 林 と な す が 如 き 分 別 で あ る。 第 四 は 我 執 で あ り、 第 五 は 我 が も の と 執 す る 分 別 で あ る。 第 六、 第 七、 第 八 は、 そ れ ぞ れ 可 意 の 境、 不 可 意 の 境、 可 意 に も あ ら ず 不 可 意 に も あ ら ざ る 境 に 対 す る 貧 と 瞑 と 痴 と で あ る。 こ の 三 種 の 分 類 に 於 て、 第 二 の 五 種 で は 名 言 に 重 点 が お か れ て い る が、 第 一 の 六 種 と 第 三 の 八 種 の 分 類 に 於 て は、 分 別 は 単 な る 分 別 に と ど ま ら ず、 そ の 中 に 執 を 含 ん で い る。 分 別 が 単 な る 分 別 に と ど ま ら ず、 執 せ ら れ る に い た つ て 分 別 と し て の 意 義 を 全 う す る こ と を 示 す も の で あ る。 さ て 八 種 の 分 別 の 中 の (一) 自 性 分 別、 口 差 別 分 別、 (三) 総 執 分 別 の 三 は、 分 別 の 所 依 と 所 縁 と を 生 じ、 第 四 と 第 五 と は 諸 見 や 慢 の 根 本 で あ る 身 見 と 慢 の 根 本 で あ る 我 慢 を 生 ず る。 第 唯 識 観 の 発 展 ( そ の 二 )

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密 教 文 化 六、 第 七、 第 八、 は 貧 瞑 痴 の 煩 悩 を 生 ず る。 こ の 三 つ の 中、 自 性 分 別 と 差 別 分 別 と 総 執 分 別 と の 三 が 分 別 戯 論 の 所 依 と 所 縁 と を 生 ず と 説 か れ る こ と は 特 に 注 意 さ る べ き で あ る。 分 別 戯 論 と は、 玄 奨 訳 で は、 ﹁ 名 想 言 説 所 摂 名 想 言 説 所 顕 (12) 分 別 戯 論 ﹂ と 説 か れ、 真 諦 訳 で は、 ﹁ 名 想 言 所 起、 名 想 言 所 薫 習 分 別 ﹂ と 説 か れ て い る。 名 想 言 に つ い て、 真 諦 訳 で は、 心 に そ の 名 を 想 い 言 に そ の 名 を 説 く か ら 名 想 言 と 云 い、 分 別 が そ の 所 依 で あ る と 解 し て い る。 か く て 分 別 戯 論 と は 名 に よ る 分 別 と 解 し て よ い。 か か る 名 に よ る 分 別 は、 玄 装 訳 で は、 色 等 の 想 事 を 依 縁 と す る と 説 か れ る だ け で あ る が、 真 諦 訳 で は 依 と 縁、 即 ち 依 止 と 境 界 と を 分 け て、 義 を 依 止 と し 名 を 境 界 と し、 名 を 縁 じ て 義 を と る と 解 し て い る。 か く て 名 字 を 知 る こ と に よ つ て と ら え ら れ る も の を 認 め て い る。 こ れ ら の 所 依 と 所 縁 と は、 玄 奨 訳 で は、 自 性 分 別、 差 別 分 別、 総 執 分 別 の 三 に よ つ て 生 ぜ ら れ た も の と な す に 対 し て、 真 諦 訳 で は、 こ れ を 能 所 か ら な る 三 分 別 の 所 の 側 面、 即 ち ノ エ マ 的 側 面 と な し て い る。 尚、 真 諦 訳 で は、 ﹁ 以 下 三 類 為 二 依 止 一。 三 名 為 二 境 界 一。 戯 論 為 中 分 別 体 上。 依 止 境 即 是 分 別 性。 戯 論 分 別 即 依 (13) 他 性 ﹂ と 説 き、 又、 ﹁ 釈 日 ﹂ と し て、 ﹁ 分 別 依 止 境 界 戯 論 体 唯 (14) 是 一。 有 二 三 義 用 こ と 説 い て い る。 名 と 名 に よ つ て と ら え ら れ た 対 象 と は 分 別 性 で あ り、 と ら え る 働 き は 依 他 性 で あ り、 し か も こ の 三 が 一 な る も の の 三 つ の 側 面、 又 は は た ら き で あ る と さ れ て い る。 こ こ に 分 別 す る も の と 分 別 さ れ る も の と を 分 か つ こ と な く、 等 し く 分 別 性 と 呼 ぶ 真 諦 の 立 場 が 明 ら か に 示 さ れ て い る。 上 述 の 分 別 の 体 性 は 三 界 の 心 心 所 で あ る。 こ の 分 別 の 体 性 は 三 界 の 心 心 所 で あ る と 説 か れ る と こ ろ か ら、 真 諦 訳 で は、 依 止 で あ る 似 塵 義 類 と 境 界 で あ る 似 塵 義 類 の 名 と は 別 体 な し と 説 か れ て い る。 こ れ は 前 述 の ﹁ 分 別 の 依 止 と 境 界 と 戯 論 と は 体 唯 是 れ 一 に し て 三 の 義 用 あ り ﹂ に 対 応 し て い る。 ☆ ☆ ☆ 諸 の 分 別 を 起 こ す 時、 相 縛 と 鹿 重 縛 と に 縛 せ ら れ て、 遍 計 所 執 と 依 他 起 性 と の 二 つ の 自 性 を 執 す る。 相 縛 と 鹿 重 縛 と は 真 諦 訳 で は 相 惑 と 鹿 重 惑 で あ る。 真 諦 の 釈 に よ る と、 相 惑 の 相 と は 相 貌 で あ る。 分 別 の 対 象 と し て の 相 貌 は そ れ 自 身 は 惑 で は な い が 惑 の 縁 と な る か ら 相 惑 と 云 い、 分 別 は 惑 そ れ 自 体 で あ る か ら 鹿 重 惑 と 云 う と 解 さ れ て い る。 こ の 相 縛 と 鹿 重 縛 と の 二 を 脱 す る と き、 遍 計 所 執 を 有 と す る 執 を 離 れ、 依 他 起

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性 を 対 象 化 す る こ と を 離 れ る。 こ れ を 裏 か ら 云 え ば、 遍 計 所 執 の 無 を 知 る と き 相 縛 を 脱 七、 依 他 起 性 で あ る 分 別 を 対 象 化 し な い と き 麓 重 縛 を 脱 す る。 こ の と こ ろ 玄 笑 訳 と 真 諦 訳 は そ れ ぞ れ、 由 二 遍 計 所 執 自 性 畢 寛 無 一故 不 可 得。 依 他 起 自 性 錐 二 復 是 有 一 (15) 不 レ 取 レ 相 故 無 二 所 見 一。 ( 玄 ) 此 性 永 無 レ 有 レ 体 故 無 二 所 得 一。 言 二 不 見 一 者 謂 不 レ 見 二 依 他 性 一。 依 他 性 錐 レ 有 レ 体。 以 二 心 不 一 レ 縁 レ 相 故。 此 性 亦 不 レ 有 故。 云 二 不 見 一。 ( 真 ) と 説 い て い る。 玄 莫 訳 で は た だ 対 象 化 し な い こ と が 説 か れ、 依 他 起 性 の 有 が 説 か れ る の に 対 し て、 真 諦 訳 で は、 ﹁ 此 性 亦 不 有 ﹂ と し て 依 他 性 の 無 が 説 か れ て い る。 更 に ﹁ 釈 日 ﹂ の 釈 の と こ ろ で は、 ﹁ 能 除 二 昔 邪 見 一 故。 云 二 依 他 性 滅 一。 昔 分 別 依 他 更 無 二 両 体 こ と し て 依 他 性 の 無 が 説 か れ て い る。 遍 計 所 執 性 の 無 か ら 導 き 出 さ れ る 依 他 性 の 無 を 説 く と こ ろ に 真 諦 訳 の 特 色 が あ る。 と こ ろ が 顕 揚 聖 教 論 の 頚 で は、 ﹁ 雑 染 可 レ 得 故。 当 レ 知 依 他 有 ﹂ と し て 依 他 起 性 の 有 を 認 め て い る。 現 に 迷 い の あ る こ と は 否 定 す る こ と が で き な い。 現 実 の 迷 い の 成 り 立 つ た あ に は、 迷 い の 根 拠 で あ る 依 他 起 性 が な け れ ば な ら な い。 も し そ う で な い な ら ば、 何 ら 努 力 す る こ と な く し て 自 然 に 解 脱 す る こ と に な り、 生 死 と 浬 葉 と は 成 り 立 た な い で あ ろ う、 と 云 う の が そ の 論 拠 で あ る。 そ れ を 滅 す る こ と に よ つ て 解 脱 を 得 る 虚 妄 分 別 と し て の 依 他 性 が 無 け れ ば な ら な い、 と 云 う の が そ の 根 本 的 立 場 で あ る。 然 ら ば そ の 滅 と は、 玄 奨 の 云 う よ う に、 相 を と ら な い こ と、 即 ち 対 象 化 し な い こ と で あ る か。 そ れ と も 真 諦 訳 の よ う に、 分 別 性 な し と 知 る と き、 依 他 性 が 同 時 に 滅 せ ら れ、 分 別 性 な し と す る 見 道 と 依 他 性 を 滅 す る 除 道 と は 一 に し て 二 無 き も の で あ る か。 依 他 性 は 相 と 麓 重 と を 体 と し、 こ の 二 は 交 互 に 縁 り て 生 ず と し て、 相 麓 重 為 レ 体。 此 更 互 縁 生。 非 二 自 然 是 有 一。 故 説 二 生 無 性 一。 と 説 か れ て い る。 相 と は 知 ら れ る 相 貌 で あ り、 麓 重 と は 分 別 す る 働 き で あ る。 相 貌 に よ つ て 分 別 す る 働 き は 生 じ、 分 別 す る 働 き に よ つ て 相 貌 億 生 ず る。 こ の 点 で 分 別 は 依 他 性 と 云 わ れ る。 し か し 他 面、 分 別 さ れ る 相 貌 も 分 別 す る 働 き に よ る 限 り、 ま た 依 他 性 と 呼 ば れ な け れ ば な ら ぬ。 か く 分 別 す る 働 き と 分 別 さ れ る 相 と は 体 一 で あ る が、 そ の 有 す る 意 義 の 点 か ら 唯 識 観 の 発 展 ( そ の 二 )

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密 教 文 化 分 か つ に す ぎ な い と 云 う の が 真 諦 の 理 解 で あ る。 こ こ に 真 諦 が 分 別 す る も の と 分 別 さ れ る も の と を 等 し く 分 別 性 と 呼 ぶ 所 以 が あ る。 分 別 は 分 別 さ れ る 相 貌 に よ つ て 生 ず る 限 り、 他 の 縁 に よ つ て 生 じ た も の で あ り、 自 存 的 存 在 で は な い。 こ れ が 玄 奨 訳 の 云 う 生 無 性 の 意 味 で あ る。 即 ち 生 無 性 と は 自 然 有 で な い と の 意 味 で あ る。 と こ ろ が 真 諦 の 生 無 性 と は 生 な し の 意 で あ る。 他 に よ つ て 生 ず と 云 う、 そ の 他 は 無 い。 従 つ て 他 に 対 す る 自 も な い。 他 な し 自 な し、 従 つ て 生 と 云 う こ と も な い、 と 云 う の で あ る。 依 他 性 本 来 無 生 と 知 る と こ ろ に、 麓 重 惑 は 脱 し ら れ る の で あ ろ う か、 そ れ と も 玄 奨 訳 の よ う に、 依 他 性 を 対 象 化 し な い と き に 麓 重 惑 は 脱 し ら れ る の で あ ろ う か。 こ こ に 大 き い 問 題 が あ る。 顕 揚 聖 教 論 の 頚 は、 非 二 決 定 有 無。 一 一 切 種 皆 許。 通 二 仮 実 二 法 噌。 世 俗 説 為 レ 有。 と し て、 依 他 起 性 が 現 実 に 有 た る こ と を 認 め て い る。 ☆ ☆ ☆ 三 無 性 論 は 真 実 性 を 明 か す に 当 つ て、 先 ず 七 つ の 如 如 は 真 実 性 で あ る と し て、 七 種 の 真 如 を 明 か し て い る。 顕 揚 聖 教 論 の 成 無 性 品 で は、 巳 に 摂 事 品 中 に 説 き し が 如 し と し て、 七 真 如 の 説 明 は な さ れ て い な い。 摂 事 品 の 所 説 に よ れ ば、 七 種 の 真 如 と は、 (一) 流 転 真 如 ・ (二) 実 相 真 如 ・ (三) 唯 識 真 如 ・ (四) 安 立 真 如 ・ (五) 邪 行 真 如 ・ (六) 清 浄 真 如 ・ (七) 正 行 真 如、 で あ り、 三 無 性 論 で は、 (一) 生 如 如 ・ (二) 相 如 如 ・ (三) 識 如 如 ・ (四) 依 止 如 如 ・ (五) 邪 行 如 如 ・ (六) 清 浄 如 如 ・ (七) 正 行 如 如、 で あ る。 先 ず 玄 癸 訳 の 理 解 を 見 よ う。 (一) 流 転 真 如 と は、 あ ら ゆ る も の が 無 始 の 時 よ り 流 転 し て や ま な い こ と で あ り、 そ れ を 知 る こ と に. よ つ て、 無 因 の 見 と 不 平 等 の 因 の 見 と を 離 れ る。 (二) 実 相 真 如 と は 人 法 二 無 我 で あ る。 そ れ を 知 る こ と に よ つ て 身 見 と も の の 分 別 と を 離 れ る。 (三) 唯 識 真 如 と は 染 浄 の 法 に 於 て た だ 識 の み で あ る こ と で あ る。 そ れ に よ つ て 心 浄 け れ ば 衆 生 は 浄 く、 心 不 浄 な る 時 は 衆 生 不 浄 と 知 る。 (四) 安 立 真 如 ・ (五) 邪 行 真 如 ・ (六) 清 浄 真 如 ・ (七) 正 行 真 如 は、 そ れ ぞ れ 苦 諦 ・ 集 諦 ・ 滅 諦 ・ 道 諦 で あ る。 次 に 真 諦 の 理 解 を 見 よ う。 第 一 の 生 如 如 は 有 為 法 の 前 な く 後 な き こ と で あ る と し て、 そ れ を 説 明 す る の に (イ) 分 別 依 他 の 二 性、 回 因 果、 (ハ) 生 滅 の 三 を 以 て し て い る。 (イ) 有 為 法 は 分 別 性 依 他 性 の 二 に つ き る。 依 他 性 が 前 に あ つ て 分 別 性 が あ る の で も な く、 ま た、 分 別 性 が 前 に あ つ て 依 他 性 が あ る の で も な い。 二 者 は 相 依 つ て い て 前 後 を 分 か つ こ と が で き な い。 回

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因 と 果 は、 前 に 望 む る と 果 に な り 後 に 望 む る と 因 と な り、 前 後 転 転 相 望 ん で 定 ま ら な い。 (ハ) 生 が 先 に あ り 滅 が 後 に あ る の で も な く、 滅 が 先 に あ つ て 生 が 後 に あ る の で も な い。 生 滅 に は 前 後 が な い。 こ の 三 に よ つ て 有 為 法 の 無 前 無 後 が 説 か れ て い る。 有 為 法 は、 分 別 性 依 他 性 の 二 と し て 考 察 さ れ る と き も、 又、 因 と 果 と し て、 又 は 生 と 滅 と し て 考 察 さ れ る と き も、 そ の い ず れ を 以 て 先 と し、 い ず れ を 後 と す る こ と が で き な い、 と 云 う こ と は、 有 為 法 が 流 転 し て や ま な い こ と を 意 味 す る よ り も、 む し ろ そ の 不 可 得 を 意 味 し て い る。 か く て (イ) の 説 明 で は、 ﹁ 分 別 性 既 無。 依 他 性 不 レ 有。 二 倶 無 故 即 是 真 如 ﹂ と 説 き、 (ロ) で は 因 果 の 前 後 相 望 ん で 定 ま り な き こ と に よ つ て 生 死 の 無 始 を 説 き つ つ も、 ﹁ 如 レ 是 因 果 体 即 分 別 依 他。 分 別 性 既 無。 依 他 不 レ 有。 即 是 如 如 ﹂ と 説 き、 (ハ) で は ﹁ 不 レ 離 二 分 別 依 他 一故 云 二 如 如 一。 ﹂ と 説 い て、 一分 別 性 の 無 か ら 導 か れ る 依 他 性 の 無 を 以 て 如 如 と し て い る。 (二) 相 如 如 と は 人 法 二 空 で あ る。 人 法 二 空 が 相 如 如 と 云 わ れ る の は、 (イ) そ れ が 戯 論 を 離 れ、 回 無 分 別 智 の 対 象 で あ り、 (ハ) 一 切 の も の の 真 実 性 で あ る か ら で あ る。 こ こ で ﹁ 二 名 二 相 如 如 一。 非 レ 言 二 相 空 一。 乃 以 二 相 空 一為 レ 相 也 ﹂ 乏 説 か れ て い る。 こ れ は ﹁ 如 如 者 謂 法 空 所 顕、 聖 智 境 界 ﹂ に 対 応 す る。 人 法 の 空 と そ の 空 に よ つ て 顕 わ さ れ る も の、 即 ち 二 空 を そ の 相 と す る も の、 ﹁ こ の 二 者 は 区 別 さ れ な け れ ば な ら ぬ。 (三) 識 如 如、 た だ 識 の み と 云 う こ と は 顯 倒 で は な い。 故 に 如 如 と 云 わ れ る。 こ の 識 の み と 云 う こ と に つ い て 摂 無 倒 と 無 変 異 と が あ る。 摂 無 倒 と は 一 切 諸 法 な く た だ 乱 識 の み と 云 う こ と で あ る。 乱 識 と は 対 象 に 似 て 現 ず る 識 で あ り、 分 別 性 と 依 他 性 と で あ る。 分 別 性 は 本 来 無 で あ り、 従 つ て 依 他 性 も 無 で あ る。 こ の 二 無 が 阿 摩 羅 識 で あ る。 そ れ は 変 異 す る こ と が な い。 こ れ が 無 変 異 の 意 義 で あ る。 か く て た だ 無 変 異 の 阿 摩 羅 識 の み と 云 う こ と が 識 如 如 で あ る。 こ の 外 的 対 象 を 否 定 す る に 乱 識 を 以 て し、 更 に 乱 識 を 否 定 し て 一 の 阿 摩 羅 識 の み と す る と こ ろ に 真 諦 の 特 色 が あ る。 (四) 依 止 如 、 如 と は 苦 諦 で あ る。 先 ず 苦 類 と 苦 諦 と 苦 聖 諦 と が 分 け ら れ る。 苦 類 と は 五 薙 で あ る。 五 纏 は 聖 意 に そ む き 聖 者 の そ れ に 染 着 し な い こ と が 苦 諦 で あ る。 苦 は 体 性 な く 空 で あ り 無 相 で あ り 願 求 す べ き も の が な い。 即 ち 苦 一 味 が 苦 聖 諦 で あ る。 (五) 邪 行 如 如 は 集 諦 で あ り、 (六) 清 浄 如 如 は 滅 諦、 (七) 正 行 如 如 は 道 諦 で あ る。 そ れ ぞ れ 類 ・ 諦 ・ 聖 諦 に 分 け て 説 明 さ れ て い る。 依 止 ・ 邪 行 ・ 清 浄 ・ 正 行 の 如 如 に つ い て、 更 に 三 性 の 観 点 唯 識 観 の 発 展 ) そ の 二 )

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密 教 文 化 か ら 次 の よ う に 説 か れ て い る。 依 止 如 如 は 苦 諦 で あ る。 苦 と は 行 苦 で あ り、 無 常 に 無 有 無 常 と 生 滅 無 常 と 離 不 離 無 常 と の 三 義 が あ る。 苦 の 分 別 性 の 本 来 無 で あ る こ と が 無 有 無 常 で あ る。 苦 の 依 他 性 の 実 有 で も な く 実 無 で も な い こ と が 生 滅 無 常 で あ る。 苦 の 真 実 性 の、 道 前 は け が れ を 離 れ ず 道 後 は け が れ を 脱 し て い る こ と が 離 不 離 無 常 で あ る。 か く 離 と 不 離 と が あ る が 苦 の 真 実 性 に は 何 ら 変 異 が な い か ら 如 如 と 云 わ れ る。 邪 行 如 如 は 集 諦 で あ る。 集 は 真 の 集 即 ち 煩 悩 と、 似 の 集 即 ち 業 と で あ る。 集 に 薫 習 集 と 発 起 集 と 不 相 離 集 と の 三 が あ る。 重 州 習 集 と は よ く 薫 じ て 煩 悩 と 業 と を 起 こ す 分 別 性 の 惑 で あ り、 発 起 集 と は 未 来 の 五 蕪 を 生 起 せ し め る 依 他 性 と し て の 煩 悩 と 業 と で あ る。 不 相 離 集 と は 煩 悩 と 業 の 障 を 離 れ ず そ れ に 障 え ら れ て は い る が、 し か も そ の 性 で あ る 如 如 で あ る。 集 の 如 如 と は、 ﹁ 此 三 即 三 無 性 故 名 二 如 如 こ と 説 か れ る よ う に、 煩 悩 と 業 と の 無 相 無 生 た る こ と、 即 ち 煩 悩 と 業 と の 本 来 無 た る こ と で あ る。 清 浄 如 如 と は 滅 諦 で あ る。 滅 に 体 性 無 生 の 滅 と 能 執 無 生 の 滅 と 垢 浄 二 滅 と が あ る。 体 性 無 生 の 滅 と は 分 別 性 の 惑 の 本 来 体 相 の な い こ と で あ り、 能 執 無 生 の 滅 と は、 因 に よ り 縁 に よ る 依 他 性 と し て の 乱 識 の 本 来 不 生 で あ る こ と で あ る。 垢 浄 二 滅 と は、 真 実 性 の 滅 は 道 前 と 道 中 に あ つ て は 本 来 清 浄 で あ り、 道 後 に あ つ て は 無 垢 清 浄 で あ る こ と で あ る。 正 行 如 如 と は 道 諦 で あ る。 こ れ に 知 道 と 除 道 と 証 得 道 と の 三 が あ る。 知 道 と は 分 別 性 の 惑 は 本 来 無 体 で あ り 滅 す べ き な し と 知 る こ と で あ り、 除 道 と は 依 他 性 と し て の 煩 悩 は 現 実 に は 有 で あ つ て 須 く 滅 す べ し と 知 る こ と で あ る。 証 得 道 と は 二 空 で あ る 真 実 性 は 煩 悩 を 除 滅 し て 得 べ き こ と を 知 る こ と で あ る。 以 上 が 三 性 の 観 点 か ら な さ れ た 依 止 ・ 邪 行 ・ 清 浄 ・ 正 行 如 如 の 説 明 で あ る。 三 無 性 論 は 七 種 の 真 如 の 説 明 の 総 括 と し て、 ﹁ 此 七 種 真 諦 の 体 は 即 ち 三 無 性 の 故 に 通 じ て 如 如 と 名 づ (16) く ﹂ と 云 う。 三 無 性 と は 無 相 性 ・ 無 生 性 ・ 真 実 無 性 の 三 で あ る。 分 別 性 の 無 相、 依 他 性 の 無 生 の 他 に 真 実 無 性 が あ る の で は な い。 無 相 無 生 が 七 種 の 真 諦 の 体 で あ る こ と は、 無 相 無 生 に よ つ て 示 さ れ る 無 が 一 切 の も の の 如 で あ る こ と を 明 示 し て い る。 上 述 の 七 種 の 真 如 は 勝 義 諦 と 名 づ け ら れ、 又、 円 成 実 自 性 ( 玄 )、 真 実 性 ( 真 ) と 名 づ け ら れ る。 勝 義 と 名 づ け ら れ る の は、 最 勝 の 出 世 間 智 と 後 得 世 間 智 の 対 象 で あ り、 又、 戯 論 を 離 れ て い る か ら で あ る。 戯 論 を 離 れ て い る と は、 真 如 が 有

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相 法 と 一 又 は 異 で な い こ と で あ る。 真 諦 訳 は こ の 無 戯 論 を 相 名 分 別 正 智 の 四 と 一 異 で な い こ と で あ る と な し、 次 の よ う に 説 く。 も し 一 な ら ば、 (イ) 真 如 は 相 等 の 実 体 で な く、 (ロ) 修 観 の 人 は 相 等 に よ ら な い で 真 如 に 通 達 す る こ と を 得、 (ハ) 真 如 を 覚 し 了 つ て 相 等 の 諸 法 に 達 し な い、 と 云 う 三 失 を 生 ず る。 こ れ に 反 し て も し 一 な ら ば、 (イ) 真 如 は 無 差 別 で あ る か ら 相 等 も 無 差 別 と な り、 (ロ) 相 等 を 見 れ ば 真 如 を 見、 (ハ) 真 如 を 見 る も 清 浄 た る こ と が で き な い、 と 云 う 三 失 を 生 ず る。 こ の よ う に 真 如 は 戯 論 を 離 れ て い る。 即 ち 一 異 の 相 を 離 れ て い る。 一 異 の 相 を 離 れ て い る も の は 有 で、 な く 無 で あ る と 考 え ら れ る か も 知 れ ぬ。 し か し 無 で な く 実 有 で あ り、 清 浄 の 所 縁 で あ る。 清 浄 の 所 縁 と は、 そ れ を 所 縁 と す る こ と に よ つ て 心 が 清 浄 と な る と の 謂 で あ る。 清 浄 の 所 縁 で あ る か ら 善 で あ り、 善 で あ る か ら 楽 で あ り、 一 切 時 に 変 異 し な い か ら 常 で あ る。 真 諦 は こ の と こ ろ、 清 浄 の 境 界 で あ る か ら 実 有 で あ り、 清 浄 の 境 界 と は 心 が そ れ を 対 象 と す る こ と に よ つ て 清 浄 と な る と の 謂 で あ る。 実 有 で あ る か ら 常 住 で あ り、 清 浄 の 境 界 で あ る か ら 善 で あ り、 常 住 で あ る か ら 楽 で あ る、 と 解 し て い る。 ☆ ☆ ☆ 次 に 五 相 が 説 か れ、 そ れ と 三 相 と の 関 係 が 明 ら か に さ れ、 更 に 三 性 の 各 々 に 五 業 が 説 か れ る。 五 相 と は 玄 奨 訳 で は、 (一) 能 詮 相 ・ (二) 所 詮 相 ・ (三) 二 の 相 属 相 ・ (四) 執 着 相 ・ (五) 不 執 相 の 五 で あ り、 真 諦 訳 で は (一) 名 言 相 ・ (二) 所 言 相 ・ (三) 名 義 相 ・ (四) 執 着 相 ・ (五) 非 執 着 相 で あ る。 (一) 能 詮 相 と は 対 象 を 表 詮 す る 名 言 で あ り、 (二) 所 詮 相 と は 名 に よ つ て 詮 わ さ れ る も の で あ る。 (三) 二 の 相 属 相 と は 名 に 対 応 す る 実 在 と し て 執 せ ら れ た も の で あ り、 (四) 執 着 相 と は か か る 実 在 あ り と 執 す る 分 別 で あ る。 国 不 執 相 と は 真 如 と 無 分 別 智 と で あ る。 (一) と (二) と は 三 性 に 通 じ、 (三) は 遍 計 所 執 性、 (四) は 依 他 起 性、 (五) は 円 成 実 性 で あ る と さ れ る。 玄 訳 で は 何 ら 説 明 は さ れ て い な い が、 真 諦 訳 で は ﹁ 釈 日 ﹂ と し て 詳 細 な 説 明 が な さ れ て い る。 名 言 相 と は も の の 名 言 で あ る。 名 言 は 識 が 名 言 に 似 て 現 ぜ る も の で あ つ て 分 別 性 で あ る。 分 別 す る 識 は 依 他 性 で あ る。 分 別 さ れ る 名 言 は 無 で あ る か ら 能 く 分 別 す る 識 も 無 で あ る。 こ の 二 つ の 無 が 真 実 性 で あ る。 従 つ て 名 言 相 は 三 性 に 摂 せ ら れ る。 次 に 所 言 相 と は 名 言 に よ つ て 名 づ け ら れ る も の で あ る。 一 切 の も の は 識 の 似 現 せ る も の で あ つ て 分 別 性 で あ る。 分 別 す る 識 は 依 他 性 で あ る。 分 別 性 の 無 と 依 他 性 の 無 が 真 実 性 で あ る。 従 つ て 所 言 相 唯 識 観 め 発 展 ( そ の 二 )

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密 教 文 化 も 三 性 に 摂 せ ら れ る。 (三) 名 義 相、 も の の た め に 名 を 立 て 名 は も の の 真 実 を 示 す と 云 う、 そ の 名 と 対 象 と の 相 応 が 名 義 相 で あ り 分 別 性 で あ る。 (四) 執 着 相、 名 と 対 象 と に 執 着 す る 分 別 で あ り、 依 他 性 で あ る。 (五) 非 執 着 相、 名 と 対 象 と に 執 着 し な い と き、 対 象 と 智 と の 無 差 別 を 得 る。 そ の 無 差 別 が 阿 摩 羅 識 で あ り 非 執 着 相 で あ る。 第 三 も 第 四 も 真 実 性 を 離 れ な い か ら 真 実 性 に 摂 せ ら る べ き で あ る が、 一 面 の み を 表 わ し て そ れ ぞ れ 分 別 性 と 云 い 依 他 性 と 云 う、 こ れ が 真 諦 の 理 解 で あ る。 こ の 説 明 に 於 て 注 意 す べ き こ と は、 玄 突 訳 で は 能 詮 と さ れ て い る 名 言 が 所 分 別 と さ れ て い る こ と で あ る。 名 は も の を 詮 わ す も の 即 ち 能 詮 相 で あ る か、 そ れ と も も の に 於 て 名 が 分 別 さ れ る の で あ る か。 こ こ に 問 題 が あ る。 更 に、 分 別 さ れ る 名 も 分 別 さ れ る も の も 識 の 似 現 で あ つ て 本 来 的 に は 無 で あ る、 従 つ て そ れ を 分 別 す る 識 も 無 で あ る。 こ の 二 つ の 無 が 真 実 性 で あ る か ら、 名 言 相 も 所 言 相 も 三 性 に 通 ず と 云 う な ら ば、 真 諦 の 言 の よ う に、 第 三 も 第 四 も そ れ が 無 相 で あ り 無 生 で あ る か ら 真 実 性 に 摂 せ ら れ る と 云 う べ き で あ ろ う。 と こ ろ が、 第 三 と 第 四 に つ い て は 一 義 を 顕 わ す だ け で あ る と 云 う な ら ば、 第 一 と 第 二 に つ い て も 第 三 と 第 四 と 同 じ く 一 義 に つ い て 云 う べ き で あ ろ う。 第 一 と 第 二 に つ い て は こ れ を 分 別 性 と し つ つ、 そ の 根 拠 で あ る 識 と そ の 本 来 的 な 相 に 関 連 せ し め て 三 性 に 通 ず と 云 う 説 明 は、 何 か す つ き り し な い と こ ろ が あ る。 む し ろ 第 一 と 第 二 に つ い て は、 そ の 根 拠 に 関 係 せ し め な い で、 そ れ 自 体 に つ い て 三 性 に 通 ず と 説 か る べ き で あ ろ う。 こ の 第 一 と 第 二 と が 三 性 に 通 ず る こ と に つ い て、 成 唯 識 論 は、 又 聖 教 中 説 レ 有 二 五 相 一。 此 与 二 三 性 一 相 摂 如 何。 所 詮 能 詮 各 具 二 三 性 一。 謂 妄 所 計 属 二 初 性 一 摂。 相 名 分 別 随 二 其 所 応 一。 所 詮 能 詮 属 二 依 他 起 一。 真 如 正 智 随 ご 其 所 応 一 所 詮 能 詮 属 二 円 成 (17) 実 一。 後 得 変 似 二 能 詮 相 一故。 と 云 う。 ﹁其 の 所 応 に 従 つ て ﹂ と は 如 何 な る 意 味 で あ ろ う か。 述 記 は、 ﹁ 相 名 分 別 三 事 中。 取 二 分 別 全 相 名 少 分 一。 是 所 詮 故。 由 二 名 亦 所 詮 こ と 説 き、 ﹁ 相 名 少 分 是 能 詮 相。 由 二 名 亦 (18) 相 一故 ﹂ と 説 く。 一 切 法 は 相 名 分 別 正 智 真 如 で あ る と な し、 前 四 を 依 他 性 と す る こ と は 喩 伽 論 七 十 三 の 説 で あ る。 こ の 相 名 の 少 分 と 分 別 の 全 分 と が 所 詮 で あ る と は 如 何 な る 意 味 で あ る か。 相 名 の 少 分 が 所 詮 で あ る と 云 う こ と が 相 名 は 所 詮 で も

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あ る と 云 う 意 味 な ら ば、 名 は 能 詮 で は あ る が 分 別 の 対 象 と も な り 得 る か ら 所 詮 で も あ る と 云 う こ と は 理 解 で き る。 し か し 相 の 一 分 が 所 詮 で あ る と 云 う こ と は、 次 に 述 べ る と こ ろ に よ つ て 明 ら か な よ う に、 一 分 が 能 詮 で あ る こ と を 意 味 し て い る。 こ の こ と は 分 別 の 全 が 所 詮 で あ る と 云 う こ 乏 と 共 に 理 解 し に く い。 次 に 相 名 の 少 分 が 能 詮 で あ る こ と に つ い て、 名 が 能 詮 で あ る こ と は 理 解 で き る。 し か し、 ﹁ 名 も 亦 相 な る が 故 に、 相 名 の 少 分 は 能 詮 で あ る ﹂ と 云 う こ と は 理 解 し に く い。 真 如 は た だ 所 詮 で あ り、 正 智 は 所 詮 と も な り 能 詮 と も な る と 云 う こ と は 理 解 で き る。 か く て 述 記 の 説 明 で、 依 他 性 で あ る 分 別 の 全 分 が 所 詮 で あ る と 云 う こ と と、 依 他 性 で あ る 相 の 一 分 が 能 詮 で あ る と 云 う 事 は 理 解 し 難 い。 ご の 困 難 を 避 け る た め、 ` 相 名 分 別 の う ち 相 は 所 詮 で あ り、 名 は 所 詮 と も な り 能 詮 と も な り、 分 別 は 能 詮 で あ る、 と 解 し て は ど う だ ろ う か。 か く 相 名 分 別 の 三 の そ れ ぞ れ に つ い て 解 す る こ と を、 ﹁ そ の 所 応 に 随 つ て ﹂ の 意 味 す る と こ ろ で あ る と 解 す る こ と が で き な い だ ろ う か。 真 如 と 正 智 と の 場 合 に は、 ﹁ そ の 所 応 に 随 つ て ﹂ を、 真 如 は た だ 所 詮 で あ り 正 智 は 所 詮 と も な り 能 詮 と も な る、 ど 解 し て い る か ら で あ る。 か く て 吾 々 は、 所 詮 能 詮 、 が 三 性 に 摂 せ ら れ る こ と を 次 の よ う に 解 す る こ と が で き る。 詮 わ さ れ る も の に 妄 分 別 の 対 象 と 分 別 さ れ る 相 と 名 と 正 智 と 正 智 の 対 象 で あ る 真 如 が あ る。 従 つ て 詮 わ さ れ る も の は 分 別 と 依 他 と 円 成 の 三 性 に 通 ず る。 他 面、 詮 わ す と こ ろ の も の に 妄 分 別 と 分 別 と 正 智 と が あ り、 そ れ ら は そ れ ぞ れ 三 性 に 摂 せ ら れ る。 能 詮 と 所 詮 と の 二 が 三 性 に 通 ず る と 云 う 上 述 の 成 唯 識 論 の 解 釈 の 根 抵 に は、 一 切 法 は 相 名 分 別 正 智 真 如 で あ り、 相 名 分 別 正 智 は 依 他 起 性 で あ る と 云 う 喩 伽 論 の 主 張 が あ る。 吾 々 は こ の 相 名 が 依 他 起 性 で あ る と 説 か れ る 点 に 注 意 す べ き で あ る。 (19) さ て 顕 揚 聖 教 論 に は 別 の 一 説 が あ る。 そ れ に よ る と、 所 詮 相 は 相 名 分 別 正 智 真 如 の 五 法 で あ り、 能 詮 相 は も の 自 体 と そ の 特 質 を 表 わ す 言 説 で あ る。 二 の 相 属 と は 遍 計 所 執 自 体 の 所 依 止 で あ り、 執 着 相 と は 遍 計 所 執 と そ の 種 子 と で あ り、 不 執 着 (20) 相 と は 解 脱 で あ る。 述 記 の 説 明 に よ る と、 所 詮 の 相 は 依 他 と 円 成 と の 二 で あ り、 遍 計 所 執 性 が 除 か れ て い る。 遍 計 所 執 性 は 無 体 で あ つ て 詮 わ さ る べ き も の で な い か ら で あ る。 第 二 の 能 詮 相 は た だ 遍 計 所 執 の み で あ つ て 依 他 と 円 成 と の 二 は 能 詮 相 で は な い。 第 三、 第 四、 第 五 は 前 説 と 異 な る と こ ろ が な い。 唯 識 観 の 発 展 ( そ の 二 )

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密 教 文 化 こ の 説 で 注 意 す べ き こ と は、 所 詮 相 が 依 他 と 円 成 と の 二 で あ る ご と と、 能 詮 相 は た だ 遍 計 所 執 の み の 摂 で あ る こ と で あ る。 能 詮 の 言 説 が 遍 計 所 執 で あ る こ と は、 名 は 対 象 の 真 実 を 表 わ す も の で な い こ と を 意 味 し て い る。 と こ ろ が 他 面、 所 詮 相 は 相 名 分 別 正 智 真 如 で あ る と し て 名 が あ げ ら れ、 そ れ が 依 他 起 と さ れ て い る。 能 詮 相 と し て の 名 を 分 別 性 と す る 考 え と 五 法 の 一 と し て 名 を あ げ そ れ を 依 他 起 性 と す る 考 え と は 両 立 し 得 る だ ろ う か。 更 に 名 が 遍 計 所 執 で あ る な ら ば、 名 に と ら え ら れ た 相 も 遍 計 所 執 に 摂 せ ら る べ き で は な い だ ろ う か。 ﹁ 名 義 互 に 客 と な る ﹂ と は こ の こ と を 意 味 し て い る。 と こ ろ が 一 方 に は 一 切 法 は 相 名 分 別 真 如 正 智 で あ る と 云 う 喩 伽 論 の 考 え が あ る。 こ れ と 名 義 互 い に 客 と な る と 云 う 考 え と は 如 何 に 関 係 す る で あ ろ う か。 名 義 互 い に 客 と な ろ う と 云 う こ と を 重 視 す る と き、 五 法 中 の 相 名 を 依 他 起 性 と す る 考 え に 変 化 が お き て く る。 即 ち 喩 伽 論 で は 相 名 は 五 法 中 に 摂 せ ら れ 依 他 起 性 と さ れ て い る が、 弁 中 辺 論 で は 名 は 遍 計 所 執 と さ れ、 摂 論 で は 相 が 遍 計 所 執 性 で あ る。 顕 揚 聖 教 論 に は 前 述 の よ う に 相 名 を 依 他 起 性 に 摂 し つ つ も 他 面、 名 を 遍 計 所 執 と す る 考 え が あ る。 名 に よ つ て 分 別 す る と 云 う と き、 名 は 依 他 起 性 と な り、 も の に 於 て 名 が 分 別 さ れ る と き、 名 は 遍 計 所 執 と な る。 対 象 の 相 は 名 に よ つ て と ら え ら れ て 相 と な り、 分 別 は そ の 相 に 於 て 名 を 分 別 す る。 名 に よ る 分 別 は 対 象 に 於 て 名 を 分 別 す る。 ﹁ 名 義 互 に 客 と な る ﹂ と 云 う こ と こ そ 唯 識 の 根 本 義 を 示 す も の で あ る。 ☆ ☆ ☆ 三 性 の 各 々 に 五 つ の は た ら き ( 業 ・ 事 用 ) が あ る。 顕 揚 聖 教 論、 成 無 性 品 で は、 ﹁ 已 に 摂 浄 義 品 の 中 に 説 き し が 如 し ﹂ と し て 説 か れ て い な い。 摂 浄 義 品 の 所 説 に よ れ ば、 分 別 性 の 五 業 と は、 (一) 依 他 起 性 を 生 ず る。 (二) 依 他 起 性 の 中 に 於 て 言 説 を 起 こ す。 (三) 人 執 を 起 こ す。 (四) 法 執 を 起 こ す。 (五) 二 執 の 習 気 麓 重 を 摂 受 す。 の 五 で あ る。 真 諦 訳 で は こ の 三 と 四 と が 一 に ま と め ら れ て、 (三) 人 法 両 執 を 起 こ す、 (四) 二 執 の 麓 重 を 成 立 す、 (五) 真 実 性 に 入 る 依 止 の 事 と な る、 と さ れ て い る。 次 に 依 他 性 の 五 業 と は、 玄 笑 訳 で は、 (一) 能 く 諸 の 雑 染 の 体 を 生 ず、 (二) 遍 計 所 執 と 円 成 実 性 の 所 依 と な る、 (三) 衆 生 執 の 所 依 と な る、 (四) 法 執 の 所 依 と な る、 (五) 二 執 習 気 麓 重 の 所 依 と な る、 の 五 で あ る。 真 諦 訳 で は 日 と 四 と が 一 に ま と め ら れ て、 (三) 人 法 両 執 を 起 こ す 名 言 の 依 止 と な る。 (四) 人 法 両 執 の 麓 重 の 依 止 と

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な る、 (五) 真 実 性 に 入 る 依 止 と な る、 と さ れ て い る。 こ の 二 つ に 於 て 注 意 す べ き こ と は、 真 諦 訳 に 於 て、 分 別 性 依 他 性 の は た ら き と し て そ れ ぞ れ 真 実 性 に 悟 入 す る 依 止 と な る と 説 か れ て い る こ と で あ る。 分 別 性 は 無 相 で あ り 依 他 性 は 無 生 で あ る こ と が 真 実 性 に 入 る 依 止 と な る と 云 う の で あ る。 第 三 に 円 成 実 性 の 五 業 と は、 玄 奨 訳 で は、 遍 計 所 執 と 依 他 起 性 の 五 業 を 対 治 す る 智 慧 の 対 象 と な る こ と で あ る。 即 ち そ れ が 対 象 と な る こ と に よ つ て、 遍 計 所 執 性 と 依 他 起 性 の 五 業 が 対 治 さ れ る。 玄 突 訳 で は ﹁ 為 二 二 種 五 業 対 治 生 起 所 縁 性 一 (21) 故 ﹂ と 説 き、 真 諦 訳 で は ﹁ 能 為 三 一性 五 事 対 治 依 止 縁 々 一﹂ と 説 く。 二 種 の 五 業 の 対 治 に つ い て 真 諦 訳 に だ け 次 の 説 明 が あ る。 先 ず 分 別 性 の 五 事 を 除 く と は、 (一) 分 別 性 の 無 相 を 観 ず る こ と に よ つ て 依 他 性 は 生 じ な い、 (二) 依 他 性 が 生 じ な い か ら 名 言 の 所 依 は な い。 (三) 名 が 起 こ ら な い か ら 人 法 二 執 は 生 じ な い。 (四) 二 執 が 生 じ な い か ら 相 惑 と 鹿 重 の 惑 は 起 こ ら な い、 (五) 二 惑 が 起 こ ら な い か ら 方 便 を 修 す る こ と な く し て 真 実 性 に 悟 入 す る こ と が で き る。 の 五 で あ る。 次 に 依 他 性 の 五 事 を 除 く と は、 (一) 煩 悩 の 体 が 滅 す る、 (二) 体 が 滅 す る か ら 分 別 性 と 真 実 性 の 依 止 と な ら な い、 (三) 体 が 無 い か ら 二 執 の 名 言 の 依 止 と な ら な い、 (四) 体 が な い か ら 二 執 の 煩 悩 の 依 止 と な ら な い、 (五) か く て 労 せ ず し て 真 如 を 見 る、 の 五 で あ る。 さ て 真 実 性 の 五 事 が 分 別 性 と 依 他 性 と の 五 事 を 除 く こ と に あ る な ら ば、 分 別 性 と 依 他 性 と の は た ら き と し て 真 実 性 に 悟 入 す る 依 止 と な る こ と を 数 え る こ と は 適 当 で は な い。 真 実 性 に 悟 入 す る 依 止 と な る こ と は 除 か る べ き こ と で は な い か ら。 又、 真 実 性 の 第 五 の は た ら き は、 分 別 性 と 依 他 性 と の そ れ ぞ れ の 四 事 が 除 か れ、 二 惑 が 除 か れ る と き、 努 力 を ま た な い で 自 ら 真 実 性 に 入 る と こ ろ に あ る、 と 云 う。 し か し こ れ は 真 実 性 の は た ら き と し て 数 え あ げ ら る べ き こ と で あ る か ど う か。 真 実 性 の は た ら き と し て は、 む し ろ 分 別 性 と 依 他 性 と の そ れ ぞ れ の 四 事 を 除 く こ と に あ る の で は な い か。 何 ら 労 す る こ と な く し て 真 実 性 に 悟 入 す る こ と は 真 実 性 の は た ら き と し て 数 え ら る べ き で は な か ろ う。 か く 考 え る と き、 人 法 二 執 を 一 に ま と め て 一 と す る こ と な く こ れ を 二 に 分 け、 遍 計 所 執 性 と 依 他 起 性 の は た ら き に そ れ ぞ れ 五 を 数 え、 そ れ ら の 五 を 除 く と こ ろ に 円 成 実 自 性 の 業 が あ り と す る 玄 訳 の 方 が 適 当 の よ う で あ る。 円 成 実 自 性 に か か る は た ら き の あ る の は、 そ れ が 智 慧 の 対 象 と な る か ら で あ る。 玄 奨 訳 で は 対 治 の 生 起 の 所 縁 性 と な る と 説 く に 対 し 唯 識 観 の 発 展 ( そ の 二 )

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密 教 文 化 て、 真 諦 訳 で は 対 治 の 依 止 縁 々 と な る と 説 い て い る。 真 諦 訳 は 依 止 縁 々 を 釈 し て、 無 分 別 智 が 依 止 で あ り 無 分 別 智 の 対 象 が 縁 々 で あ り、 そ れ が 仏 の 転 依 で あ る と 説 く。 こ こ に 真 実 性 が 智 慧 の 対 象 で あ る と 共 に 智 慧 で あ り、 そ れ が 又 転 依 で あ る こ と が 明 ら か に 示 さ れ て い る。 ☆ ☆ ☆ 次 に 転 依 と は 何 か。 依 他 性 に 於 て 対 象 に 執 す る 時、 そ れ が 黒 習 さ れ て 雑 染 と な り、 対 象 に 執 す る こ と な く 無 執 と な る 時、 そ れ が 薫 習 さ れ て 清 浄 と な る。 雑 染 は 有 漏 性 で あ り、 清 浄 は 無 漏 性 で あ る。 こ の 無 漏 性 が 転 依 で あ る。 真 諦 訳 は こ の 転 依 を 説 明 し て、 凡 夫 の 所 依 の 有 漏 性 に 異 な る こ と で あ る、 と し て、 そ れ に、 (一) 一 分 転 依 ・ (二) 具 分 転 依 ・ (三) 有 動 転 依 ・ (四) 有 用 転 依 ・ (五) 究 寛 転 依 の 五 を 分 か つ て い る。 転 依 は 思 惟 を 超 え て い る。 そ の 理 由 と し て 玄 奨 訳 で は、 (一) 真 実 で あ る、 即 ち 常 住 で あ る。 (二) そ れ 自 身 は 有 色 で も 無 色 で も な い。 (三) 寂 静 住 で あ る。 (四) 威 徳 を 有 し て い る。 の 四 を あ げ て い る。 真 諦 訳 は (三) の 寂 静 住 に 八 住 を を あ げ、 (四) の 威 徳 に 円 満 ・ 無 垢 ・ 無 動 ・ 無 等 ・ 利 他 を 事 と な す か 勝 能 の 六 つ の 功 徳 を 数 え て い る。 さ て 転 依 は 四 種 の 道、 即 ち (一) 四 種 の 正 行 ・ (二) 四 種 の 尋 思 ・ 口 四 種 の 如 実 智 ・ (四) 四 種 の 境 界 に よ つ て 証 得 さ れ る。 四 種 の 正 行 ( 聖 行 ) と は 十 波 羅 蜜 と 三 十 七 道 品 と 六 神 通 と 四 摂 法 と の 四 で あ る。 四 種 の 尋 思 と は (一) 名 尋 思 ・ (二) 事 尋 思 ・ (三) 自 性 仮 立 尋 思 ・ (四) 差 別 仮 立 尋 思 の 四 で あ り、 四 種 の 如 実 智 と は、 四 種 の 尋 思 か ら 導 き 出 さ れ る 如 実 智 で あ る。 四 種 の 尋 思 と 四 種 の 如 実 智 と は 顕 揚 聖 教 論 の 第 六 で 説 か れ て い て 成 無 性 品 で は 説 か れ て い な い。 第 六 の 所 説 に よ る と、 名 尋 思 と は 名 に 於 て た だ 名 の み を 見 る こ と で あ り、 事 尋 思 と は 事 に 於 て た だ 事 の み を 見 る こ と で あ る。 自 性 仮 立 尋 思 と は 仮 立 の 自 性 に 於 て た だ 仮 立 の 自 性 の み を 見 る こ と で あ り、 差 別 仮 立 尋 思 と は 仮 立 の 差 別 に 於 て た だ 差 別 の 仮 立 の み を 見 る こ と で あ る。 こ れ ら 名 と 事 と 自 性 と 差 別 と に つ い て、 名 と 事 と を 別 々 に 観 じ ( 離 相 観 )、 ま た は 合 し て 観 ず る ( 合 相 観 )。 合 し て 観 ず る こ と に よ つ て 自 性 仮 立 と 差 別 仮 立 と に 通 達 す る。 た だ 名 の み を 見、 ま た は 事 の み を 見 る 等 に つ い て 玄 奨 訳 で は 何 ら 説 明 さ れ て い な い が、 真 諦 訳 で は 詳 細 に 説 か れ て い る。 そ れ に よ る と、 た だ 名 の み を 見 る と は 名 の み を 見 て 名 体 を 見 な い こ と で あ る。 名 は も の を 表 わ す が、 も の は 無 相 で あ り 無 生 で あ る か ら、 名

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は 表 わ す と こ ろ が な い。 表 わ す こ と が で き な い 時、 名 は 名 で な い。 名 は 表 わ す と こ ろ が な い か ら 名 は 名 で な い こ と を 知 る こ と が、 た だ 名 の み を 見 て 名 体 を 見 な い こ と で あ る。 こ れ が 名 言 尋 思 で あ る。 次 に た だ 義 類 の み を 見 て 余 を 見 な い と は、 現 に 顕 わ れ て い る よ う な 対 象 は あ る の で は な く、 た だ 顕 現 す る 識 が あ る だ け で あ り、 対 象 は 名 も な く 相 も な い。 対 象 は 無 相 無 生 で あ る か ら、 そ れ を 知 る 識 も 起 こ ら な い。 対 象 の 無 相 無 生 を 知 る こ と が、 た だ 義 類 の み を 見 る こ と で あ り、 こ れ が 義 類 尋 思 で あ る。 第 三 に 巳 性 仮 を 見 て 余 を 見 な い と は、 色 等 の 自 性 は 無 名 無 相 で あ る か ら 乱 識 に 於 て 立 て る こ と も で き ず、 ま た 無 相 無 生 で あ る か ら 真 実 性 に 於 て も 立 て る こ と が で き な い。 色 の 体 は 唯 一 の 如 如 で あ つ て 増 減 が な い。 し か る に 乱 識 あ り と す る こ と は 一 重 の 増 加 で あ り、 更 に 乱 識 に 於 て 五 陰 あ り と す る こ と は 第 二 重 の 増 加 で あ る。 五 陰 は か か る 第 二 重 の 増 加 に す ぎ ぬ。 第 二 の 増 加 に す ぎ ぬ 色 等 の 自 性 は 無 相 で あ り 無 生 で あ る と す る こ と が、 'た だ 自 性 の 仮 を 見 る こ と で あ る。 第 四 に 差 別 仮 を 見 て 余 を 見 な い と 説 か れ る 差 別 と は、 例 え ば 色 を 開 い て 説 か れ る 根 ・ 大 等 で あ る。 差 別 仮 を 見 て 余 を 見 な い の は、 こ の 差 別 は 無 名 無 相 で あ る が 故 で あ る。 前 の 自 性 仮 に つ い て 説 か れ て い る と こ ろ か ら す る と、 こ の 差 別 は 無 名 無 相 で あ る か ら 乱 識 に 於 て 立 て る こ と が で き ず、 ま た 無 相 無 生 で あ る か ら 真 実 性 に 於 て 立 て る こ と が で き な い と 解 す べ き で あ ろ う。 と こ ろ が ﹁ 釈 日 ﹂ の と こ ろ で は、 乱 識 を 指 し て 差 別 と す る と 体 は 無 相 で あ る か ら で あ る と 説 か れ て い る。 こ の よ う に 名 も 成 り 立 た ず、 義 も 成 り 立 た な い。 従 つ て 名 と 義 と の 自 性 も、 ま た 二 つ の 自 性 に つ い て の 差 別 も 成 り 立 た な い。 こ れ ら に 達 す る こ と が、 た だ 名 の み を 見、 義 の み を 見、 自 性 の 仮 を 見、 差 別 の 仮 を 見 る こ と で あ る。 次 に 如 実 智 と は 何 か。 尋 思 が 推 度 で あ る に 対 し て、 如 実 智 は 如 実 に 了 知 す る こ と で あ る。 四 如 実 智 に つ い て 説 か れ る と こ ろ は、 玄 奨 訳 に よ る と 次 の 如 く で あ る。 名 は 世 間 に 想 言 見 を 起 こ さ し め る た め に 説 か れ る。 即 ち 人 は 名 を 聞 い て も の の す が た を 思 い 浮 か べ、 も の の す が た を 思 い 浮 か べ る こ と に よ つ て こ れ た 執 す る。 執 し な い 時 は 言 説 は な い。 名 に は か か る は た ら き が あ る。 こ れ を 如 実 に 了 知 す る こ と が 名 の 尋 思 に よ て 得 る 如 実 智 で あ る。 次 に も の の 性 は 名 づ け る こ と の で き な い も の で あ る こ と を 如 実 に 了 知 す る の が 義 類 の 尋 思 に よ る 如 准 識 観 の 発 展 へ そ の 二 )

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密 教 文 化 実 智 で あ る。 我 々 が そ れ ぞ れ の も の に 認 め る 自 性 は 存 す る こ と な く 仮 に 立 て ら れ た も の で あ り、 影 の 如 く 響 の 如 く 水 月 の 如 く で あ る と 明 ら か に 了 知 す る こ と が 自 性 仮 立 の 如 実 智 で あ る。 有 色 無 色 有 見 無 見 な ど の 差 別 は 勝 義 諦 に よ つ て は 無 色 と 、 云 い、 世 俗 諦 に よ つ て は 有 色 と 云 う に 過 ぎ ぬ。 従 つ て 有 色 と 云 う も 無 色 と 云 う も 不 二 で あ る、 即 ち 差 別 は 仮 立 で あ る と、 如 実 に 知 る こ と が 差 別 仮 立 の 如 実 智 で あ る。 真 諦 訳 の 解 釈 も こ れ に 異 な ら な い。 た だ 義 類 の 尋 思 に よ る 如 実 智 の 義 類 の 不 可 言 説 に つ い て、 分 別 性 は な く た だ 依 他 性 の み で あ, る が、 分 別 性 な き 時 依 他 性 も 等 し く 無 で あ る、 こ の 無 が 真 如 で あ つ て 言 説 を 絶 し て い る、 と 説 い て い る。 四 境 界 と は 遍 満 境 ・ 浄 行 境 ・ 善 行 境 ・ 浄 惑 境 ( 玄 婁 訳 )、 遍 満 境 界 ・ 治 行 境 界 ・ 勝 智 境 界 ・ 浄 惑 境 界 ( 真 諦 訳 ) で あ る。 遍 満 境 は 玄 婁 訳 で は 有 分 別 影 像 ・ 無 分 別 影 像 ・ 事 辺 際 ・ 所 作 成 弁 の 四 で あ り、 真 諦 訳 で は 有 分 別 相 ・ 無 分 別 相 ・ 種 類 究 寛 ・ 正 事 成 就 の 四 で あ る。 玄 婁 訳 の 有 分 別 影 像 と 無 分 別 影 像 は、 所 知 事 の 同 分 で 三 昧 の 対 象 で あ り、 そ れ が 毘 鉢 舎 那 の 対 象 で あ る か 奢 摩 他 の 対 象 で あ る か に よ っ て 有 分 別 と 無 分 別 と に 分 か た れ る。 所 知 事 と は 喩 伽 論 二 十 五 ( 大 正 蔵 経 三 〇、 四 二 七、 中 ) に よ る と、 不 浄 ・ 慈 慰 ・ 縁 性 な ど の 五 浄 行 や 蕪 善 巧 ・ 界 善 巧 な ど の 五 善 巧 等 の 境 で あ り、 同 分 と は 禅 定 地 の 勝 解 領 受 と 相 似 し た 作 意 領 受 に よ つ て 所 知 事 に 相 似 し て 顕 現 せ る 影 像 の 意 で あ る。 真 諦 訳 で は ﹁ 有 分 別 相 及 無 分 別 相 者。 謂 境 界 類。 亦 名 二 等 分 一。 是 静 定 位 ﹂ と 説 か れ て い る。 境 界 類 と は 世 出 世 の 一 切 の 如 量 の 境 界 で あ つ て、 そ の 意 味 で 遍 満 と 云 わ れ る。 そ れ ら は た だ 識 の み で あ る。 し か も そ の 唯 識 も 境 は 無 相 で あ り 識 は 無 生 で あ る か ら 無 で あ る。 こ の 無 は 一 切 に 通 ず る 如 理 で あ る。 一 切 に 通 ず る か ら 遍 満 で あ り、 ま た、 等 分 と 云 う。 し か も そ れ は 凡 夫 や 二 乗 の 得 る 定 を 超 え た 静 定 の 対 象 で あ る。 毘 鉢 舎 那 が 勝 れ た 時 こ れ を 分 別 と 云 い、 奢 摩 他 が 勝 れ た 時 こ れ を 無 分 別 と 云 う に す ぎ ぬ。 か く て 玄 訳 の 所 知 事 の 同 分 は、 喩 伽 論 の 所 説 に 従 う と 所 知 事 の 影 像 で あ り、 真 諦 の 解 釈 に よ る と 世 出 世 の 一 切 に 通 ず る 如 理 で あ る。 玄 笑 訳 の 事 辺 際 と は 尽 所 有 性 と 如 所 有 性 と の 二 で あ る。 尽、 所 有 性 と は、 時 間 的 に も 空 澗 的 に も、 量 的 に も 数 的 に も 残 す と こ ろ の な い 存 在 で あ り、 如 所 有 性 と は 量 的 に 無 限 の 広 が り を も つ も の で な く 質 的 に 無 限 の 深 さ を も つ あ る が ま ま の 存 在 で あ る。 真 諦 訳 の 種 類 究 覚 と は 如 量 と 如 理 と の 二 で あ る。 如 理 と は 真

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