[資料]
国際保健における保健システム強化に関する近年の動向
湯浅資之1)、三好知明2)、丸井英二1) 1)順天堂大学医学部公衆衛生学講座、2)国立国際医療センター国際医療協力局 連絡先 : 〒 113-8421 東京都文京区本郷 2-1-1 順天堂大学医学部公衆衛生学講座 TEL:03-5802-1049 FAX:03-3814-0305 E-mail:[email protected] (受付日:2009. 08. 10、受理日:2009. 11. 17) 要 旨 背景 昨今の国際保健領域では、保健システム強化に関心が集まっている。その背後に、国連ミレニアム開発 目標の達成や貧困削減のための持続的かつ効果的な保健活動の進展に、保健システムの強化が不可欠との 認識の高まりがある。世界保健機関(WHO)は世界保健報告 2000 を刊行して以来、保健システム強化に 精力的に取り組んでいる。 保健システム強化の進展 本稿は、世界保健報告2000 の公表と、その反響へのフォロー、および世界保健報告 2003 発行以降の本 格的な保健システム強化の国際的動向を3 期に分け、WHO 公式文書等の文献を使い概観する。とくに 2003 年以降の進展を政策、実践、科学的方法の 3 方面から詳述する。政策面では、プライマリ・ヘルス・ ケアの原則に沿って保健システム強化を図る方針が立てられ、国際援助機関の参与が促されている経緯を 述べる。実践面では、人材育成と、世界基金からの財政支援に関する具体的取り組みを解説する。科学的 方法面では、WHO による保健システムのフレームワークづくり、システム科学に基づくヘルスリサーチ の進展、および保健情報システム強化の取り組みの事例を紹介する。 結論 感染症、救急ケア、慢性疾患等の縦型プログラムの効果を高めるには、横断的基盤としての保健システ ム強化は国際保健上の喫緊の課題である。保健システム強化支援に関するわが国の基本戦略を明確化し、 2 国間援助や NGO のプロジェクトに保健システム強化を具体化するコンポーネントを挿入する試みが必 要と思われる。 キーワード:保健システム強化、WHO、国際保健 Ⅰ.緒言 2008 年 7 月、北海道で開催された G8 洞爺湖サ ミットが、日本のリーダーシップにより、途上国 の保健システム強化を世界の重点課題として打ち 出したことは記憶に新しい1)。近代の保健システ ムの成立は18 世紀とみられ、過去幾度も保健シ ステムの改革が行われてきた。しかし、今日、再 び保健システムが新たに注目されているのはなぜ だ ろ う か。 事 実、 過 去10 年間、世界保健機関 (WHO)を中心に国際保健領域では保健システム 強化の取り組みが隆盛をきわめている。その背景 には、国連ミレニアム開発目標(MDGs)の達成 や貧困削減には健康の向上が不可欠であり、保健 活動の継続的かつ効果的な実施には基盤となる保 健システム強化が必須であるとの認識が急速に高 まってきていることがある。 そこで本稿は、保健システム強化の議論の直接 的火付け役となった「世界保健報告20002)」が発刊された2000 年以降における、WHO を中心と した保健システム強化に関する主要な取組みを経 時的に概観する。歴史的経緯を便宜的に、「世界 保健報告2000」公表期、その報告に対する様々 な意見にWHO が対応したフォロー期、そして「世 界保健報告20033)」発刊以降今日に至る本格的な 保健システム強化が進展した時期の3 期に分けた (図1)。なお、引用した WHO 執行理事会(Executive Board; EB) と 世 界 保 健 総 会(World Health Assembly; WHA)の公式文書をそれぞれ EB、A(決
議文はWHA)と省略し、文書番号を本文中に付 した。 Ⅱ. 世 界 保 健 報 告 2000 公 表 期(2000 年 6 月前後) 1990 年代以降の Evidence-Based Medicine(EBM) の普及にあわせ、2000 年 3 月の WHO 執行理事 会では、イデオロギーによるのではなくエビデン スによって保健システムを強化すべきことが討議 された(A53.4)。以後、WHO はこの考え方に沿っ て保健システム強化の検討を継続させた。そして、 2000 年 6 月に保健システムをメインテーマとし た「 世 界 保 健 報 告2000」 を 公 表 し た。 当 時 の WHO 事務局長 Brundtland GH. はその序文で、保 健システムを重視する意向からこれをテーマに選 んだと述べている。同報告はWHO としては初め て公式の定義を保健システムに与えた。しかも、 保健システムとは「個人、公共サービス、分野間 のイニシアティブによる活動を問わず、健康の改 善を主目的とするあらゆる活動を生み出すための 機関、組織、資源の総体」ときわめて包括的な定 義 づ け を し た。 ま た、EBM の考え方をもとに (A53.9)、保健システムの「本来的目的」3 項目 と保健システムの機能4 項目を関連づけたモデル を提案した(図2)。さらに、障害調整平均寿命 (DALE)を用いて査定した健康度、個人の尊厳 や 利 用 者 指 向 性 等 を 示 す 期 待 へ の 対 応 (responsiveness)、及び医療費支払いによる貧困へ の 転 落 リ ス ク か ら の 保 護(fair financial contribution)の 3 つの目的をそれぞれ重みづけし て目的達成度指数を独自に開発した。また、一人 あたりの保健医療費と目的達成度の相対割合から 算出できるパフォーマンス指標を作り、WHO は これらの数値を用いて全加盟国の保健システムを 国別にランキングした。なお、日本は目的達成度 で世界1 位、パフォーマンスでは 10 位と高い評 価を得た(世界保健報告2000、pp.152-155)。 Ⅲ.世界保健報告 2000 フォロー期(2000 年〜 2002 年 12 月) 「世界保健報告2000」が公表されると、加盟国 や専門家から多数の意見が出された。その多くは 評価指標と手法の妥当性に対する批判であった。 たとえば、Navarro V. は、ランキングすることの 意味や保健システムのパフォーマンスをひとつの 指 標 で 表 す こ と へ の 疑 問 を 呈 し た4)。 ま た Almeida C. らは、70 ~ 89% の国ではランキン グに使用したデータが存在しないこと、191 カ国 中35 カ国の加盟国にしか情報収集の聞き取りを 図1 保健システム強化に関する経緯の概要 世界保健報告2000 公表期 (2000年6月前後) 世界保健報告2000 フォロー期 (2000∼2002年12月) 保健システム強化期 (2003年∼現在) WHOは加盟国毎に保健システ ムを評価する意向を示し、その モデルと評価結果を公表した MDGsのプラットフォームとし て保健システムを強化する共通 認識が醸成され始めた ❶政策面 P r i m a r y Health Care (PHC)を 保健システ ムの基本戦 略として位 置付けた ❷実践面 人材養成が 重視され、 国際資金調 達プログラ ムからの財 政支援枠が 導入された ❸科学的 方法面 保健システム のパフォーマ ンスを高める ため、枠組み や評価法の開 発が進展した WHOは保健システムに関する 専門部会を設け、評価方法の見 直しを始めた WHO加盟国や専門家から世界 保健報告2000に提示された保 健システム評価の結果と方法に 対して多くの反論が示された 図2 世界保健報告 2000 で提案された保健システムの機能と目的に 関するモデル 機 能 本来的目的 Stewardship (oversight) Creating resources (investment and training) Delivering services (provision) Financing (collecting, pooling and purchasing) Responsiveness (to people’s non-medical expectations) Health Fair (financial) contribution (出典:世界保健報告20001)、p.24)
行っていないなどの技術的問題点を指摘した5)。 WHO は 2000 年 12 月の第 107 回執行理事会で こうした反響を報告している。その中で、保健シ ステムがWHO の 4 大戦略のひとつであることを 確認した上で、「世界保健報告2000」は加盟国政 府がモニタリング・評価に使用できる保健システ ムのモデルを提示しており、保健システムの体系 的理解を促したこと、その目的、機能、パフォー マンスが公式に定義されたことの意義を強調した (EB107/9)。さらに、同報告によるパフォーマン ス評価法を解説し、これに対するコメントとして 公表後3 か月内に 30 以上の国から新たな評価法 を作成するべきであるという要望や、データの信 憑性・指標に対する問題点が出されたことを公言 した。翌2001 年 1 月の第 107 回執行理事会で、 WHO は保健システムのパフォーマンス評価法を 継続的に検討していくことを決め(EB107/R8)、 そのための組織として執行理事会のメンバーから なる検討諮問委員会と技術者からなる科学者総括 グループを設置した。続く5 月の第 54 回世界保 健総会は、執行理事会のこうした取り組みを公式 に承認した(WHA54/13)。またこの決議文で初 めて、保健システムの構築にはプライマリ・ヘル ス・ケア(primary health care; PHC)の原則を理 念とすべきことの文言が記された。 2002 年 5 月の第 110 回執行理事会では、科学 者 総 括 グ ル ー プ の 討 議 内 容 が 報 告 さ れ た (EB110/8)。それによると、①データを収集し解 釈するには、現場の人材能力の向上が必要である こと、②「世界保健報告2000」で公表した保健 システムのパフォーマンス評価は不適切であり、 より厳密な方法を外部専門家とともに開発すべき であること、③方法論はできるだけシンプルにす べきであること、④責任ある総括(stewardship)、 財 政 措 置(financing)、サービス提供(services provision)、資源創出(resources generation)の 4 つの保健システムの機能に関する指標も開発すべ きであること、➄ 健康における不平等にも配慮し、 サービスのカバー率の考え方も入れるべきであ る、という要点が報告された。 Ⅳ.保健システム強化期(2003 年〜 2009 年 6 月現在) 2003 年になると、保健システムに関する論議 は次の段階へ移行する。その契機はWHO による 「世界保健報告20033)」の刊行である。これ以降 現在までの本格的な保健システム強化期の主要な 取組みを、政策、実践、科学的方法の3 つの側面 に分けて経緯を概観したい。 政策面の進展 1.1 「世界保健報告2003」の第 7 章は保健システム について紙面をさき、PHC の導入を強調した。 同報告はPHC の原則として、公正、アクセスの 拡大、コミュニティの参加、分野間協力をあげて いる。また、保健従事者の訓練、給与、質、保健 情報システム、コミュニティの巻き込みの重要性 にも触れた。なお、同報告の中でWHO は「世界 保健報告2000」で提案した保健システムの考え 方に固執しない方針を表明し(pp.105-106)、新た な姿勢で保健システム強化を進める意気込みを示 した。 これに続く2003 年の第 56 回世界保健総会は、 PHC に 関 す る 国 際 会 議 の 開 催 を 決 議 し (WHA56.6)、PHC を明確に保健システム強化の 基本戦略と位置づけた(A57/14)。以後、PHC に 基づいた保健システム強化策の検討がWHO を中 心に活発化されていくことになるが、以下の3 つ のコンセンサスがその基調にあった(A62/8)。第 一に、保健システム強化なくしてMDGs の達成 は不可能であること。第二に、断片化された保健 システムを統合化し、すべての公共政策に保健政 策を反映させるには、PHC 戦略の包括性が有効 であること。第三に、保健システムにおける公正、 社会正義、連帯を強化するにはPHC の理念が最 適であるという共通の認識である。 2006 年 11 月 WHO 第 7 代事務局長に選出され たChan M. 博士は、就任にのぞんで WHO の 6 項 目の優先的課題をあげ、うち一つに保健システム 強化を入れた。彼女の指揮下のもとに、2008 年 9 月WHO は 30 年前にアルマアタ宣言が出された カザフスタン共和国の都市アルマティ(旧アルマ アタ)で国際会議を招集し、PHC に基づく国際 保健の推進を確認した6)。同時に「世界保健報告 20087)」を公表し、PHC に基づく保健システム強 化のためには、カバー率の拡大、サービス提供、 公共政策およびリーダーシップの4 つの面での改 革が必要であると指摘した。しかし、その具体化 は課題として残された。他方、WHO 本部に先立ち、 また他の地域事務局に先んじて、2007 年に WHO
汎米州地域事務局(PAHO)は、PHC を独自に総 括し、PHC に基づいた保健システム強化の戦略 と具体策8)を公表しており、PAHO の動きは政 策面で先導的役割を果たした。 WHO 以外の国際機関の保健システム強化に関 する動向を俯瞰すると、たとえばUNICEF では、 国連の経済社会理事会が「ユニセフ保健栄養戦略 (UNICEF Joint Health & Nutrition Strategy)」を改 定し(2006 年 1 月)、保健栄養活動のスケールアッ プを保健システム強化と連動して行う原則をあげ た。他方、世界銀行は保健開発分野における基本 政 策 と な る「 保 健 栄 養 人 口 戦 略(Healthy development: the world bank strategy for health, nutrition, and population results)」を改訂し(2007
年4 月)、戦略の 5 つの方向性を示し、うち 2 項 目で保健システムの関連戦略をあげた。すなわち、 ①よく組織化された持続性のある保健システムを 強化し実現するために加盟国を支援すること、② 特に低所得国において、保健システム強化と優先 的疾病対策とのシナジー(協働関係)構築を支援 すること、を重点的に実施することとしている。 続く2008 年にはこの戦略と保健システム強化の 統合のための分析と政策決定のための概念的枠組 みを提示した9)。 2007 年 に WHO の 第 120 回 執 行 理 事 会 は、 MDGs の 達 成 を 目 的 に 組 織 さ れ た IHP Plus (International Health Partnership and Related
Initiatives)や、後述する GHWA(Global Health Workforce Alliance)などの国際的連合へ保健シス テ ム 強 化 に 参 与 す る よ う 要 請 し て お り (EB120/38)、保健システム強化は他の国際的組織 においても戦略の柱になってきている。 実践面(人材養成、財政支援)の進展 2.1 PHC に基づく保健システム強化の具体的実践 面での進展として、人材育成強化と財政支援策が 挙げられる。 途上国における保健人材の海外流出と質的向上 は喫緊の課題とされ、人材育成強化はとくに重視 されている政策の一つである。2004 年から 3 回 に わ た る 世 界 保 健 総 会 の 決 議 (WHA57.19,WHA58.17,WHA59.23)をもとに、保 健システムにおける保健医療人材強化を支援する 国際的組織GHWA が 2006 年 5 月に設立された。 同時期発刊の「世界保健報告200610)」は保健人 材をテーマに取りあげ、途上国の人材強化の重要 性を訴えた。
Global Health Initiatives(GHI)と呼ばれる国際 資金プログラムの中に、保健システム強化に目的 が特化された資金調達の仕組みが創設されたこと は、その進展に大きな弾みとなった。2000 年に 設 立 さ れ たGAVI ア ラ イ ア ン ス( 旧 名 Global Alliance for Vaccines and Immunization)は、2004 年に調査を行ったところ、ワクチン普及率の改善 には保健システム強化が必須であるという結論に 至 っ た。 同 時 に 拡 大 予 防 接 種 計 画(Expanded Program on Immunization; EPI)の進展は保健シス テムそのものの強化につながるという考え方もだ され、2006 年から GAVI プログラムに保健シス テム強化の資金援助プログラムが盛り込まれた (GAVI-HSS)。他方、2002 年に設立した世界エイ ズ結核マラリア対策基金(Global Fund to Fight AIDS, Tuberculosis and Malaria; GFATM)は、2007
年以降WHO と GAVI アライアンスからの助言を 得て、3 大感染症の克服のためのインフラ整備と 人材研修を通じて、保健システム強化へ資金供給 することになった11)。しかし、途上国政府がこ うした世界基金へ申請書を作成する過程で、疾患 対策プログラムと保健システム強化を融合させる 政策を立案していくことは必ずしも容易なことで はなかった。そこで、世界基金は申請書作成プロ セスへの助言や指導を通じて、政府のマネジメン ト能力の強化に乗りだした。こうした技術的支援 自体が各国の保健システム強化に直結しているこ とも意義深いことである。 科学的方法面の進展 3.1 後述するように、システム科学の考え方を採用 し、保健システムのパフォーマンスを上げるため の研究が、近年盛んになってきた。とくに、保健 システム理解のためのフレームワークづくり、エ ビデンスに基づいた政策・評価、そして情報シス テム強化の動きがある。 WHO は「世界保健報告 2000」で保健システム に関する最初のフレームワークを提示した(図 2)。その後、2007 年に「保健システム強化のた め の 指 針(Everybody’s Business –Strengthening health systems to improve health outcomes12))」を刊
行し、図2 において「機能」と呼ばれていた保健
しなおし、「本来的目的」に効率(efficiency)を 追加した修正版のフレームワークを提案した(図 3)。以後、国際保健領域では、保健システムの共 通理解にこの枠組みが広く受け入れられている。 政策立案や評価を科学的に進めるための試みと して、近年大きな潮流に成長しつつある趨勢の中 心にHPSR(Alliance for Health Policy and Systems Research)の活動がある。1980 年代後半に設立さ れた「開発に関するヘルスリサーチ委員会」のハー バード学派を中心に、保健システムに関する研究 が継続されてきた13)。その流れの中から、1996 年のヘルスリサーチに関するWHO 特別委員会の 提言、2004 年のメキシコシティにおけるヘルス リサーチに関する世界保健大臣会合を経て、2005 年HPSR は設立された。このネットワークの目的 は、無作為化比較試験など医学的研究手法の適用 が困難な政策立案の分野において、多様な手法を 活用して科学的研究を推進することによって保健 システム強化を目指すところにある。現在は保健 従事者、財政、民間組織の役割にテーマを絞って 研究を続けている。2008 年にはマリの首都バマ コで保健大臣フォーラムを開催し、保健システム の科学的方法面での強化に努めている。 ヘルスリサーチを進める上で保健情報に関する システム強化は基礎となる。2004 ~ 5 年に WHO や世界銀行の関係者がスイスのモントルーに参集 し、いわゆるモントルー会議(テーマは“The Montreux Challenge”、副題 ; Making Health Systems
Work)を継続的に持った。そこでの論点は、保 健従事者、情報システム、財政、必須医薬品、現 場におけるマネジメント能力および民間セクター との連携と多岐にわたった。以後、そこで整理さ れた考え方や開発された指標などの討議成果は “Making Health Systems Work Series”としてまと め ら れ、 今 日 ま で に11 巻 が 発 刊 さ れ て い る。 2007 年の第 60 回世界保健総会は、保健情報シス テム強化をさらに促進する母体として、2005 年 に設立したHMN(Health Metrics Network)を正 式 な 国 際 組 織 と し て 認 証 し た(WHA60.27)。 HMN は保健情報統計システムの強化のための枠 組みと基準を作成して14)、途上国政府の情報統 計処理能力の向上に努めている。 Ⅴ.結語 必須医薬品、ワクチン、抗結核薬やHIV/AIDS 治療薬の提供(以上、A56/21)、新型インフルエ ンザ予防(EB117/32)、暴力・交通事故・被災時 の救急ケア(EB120/27)、非感染性慢性疾患予防 (EB120.12)そして健康的ライフスタイル促進 (WHA60.24)など、あらゆる縦型プログラムが 持続的かつ効率的に成果を出すためにはどうした らよいだろうか。そのためには、横断的基盤(プ ラットフォーム)として保健システムを強化しな ければならないという考え方が、今日の国際保健 領域の共通認識になってきていることは既に見て きた通りである。これは、すべての保健活動は保 健システム強化を視野に入れて実施すべきである という意味でもある。 こうした世界動向をみすえるならば、保健シス テム強化支援に関するわが国の基本戦略を明確化 することは重要である。2 国間援助や NGO のプ ロジェクト・デザインに保健システム強化を具体 化するコンポーネントを挿入する試みが必要に なってきている。 だが、保健システムを強化するには検討しなけ ればならない課題がまだ数多く残されているのも 事実である。PHC に則った保健システム強化の 方針は定まったものの、PHC 戦略の具体像が明 確になってはいない。しかし、2009 年 6 月発行 の学術誌Lancet へ掲載された WHO の論文は、 保健システムを構成する6 つのブロックごとに検 討すべき課題を整理している15)。WHO は、開発 パートナー、政策立案者、プログラム・マネー 図 3 Everybody’s Business で提案された保健システムのブロックと目 的に関するフレームワーク システムを構成するブロック ゴール/アウトカム Access Coverage Quality Safety Service Delivery Health Workforce Information
Medical Products, Vaccines & Technologies
Financing
Leadership Governance
Improved Health (Level and Equity)
Social and Financial Risk Protection Responsiveness
Improved Efficiency
ジャーそして研究者ごとに行動指針を提示し、国 際保健のすべての関係者への参加を呼びかけてい る。保健システム強化のための地道な研究と実践 の積み重ねが、今後、ますます強く求められてく ると言えるであろう。 謝 辞 本稿は、厚生労働省国際医療研究委託費「途上 国における社会開発技術・地域保健システムの強 化に関する研究」(主任研究者;建野正毅)の支 援により作成した国立国際医療センター保健シス テム強化に関するタスクフォース報告書を加筆修 正したものである。この場を借りてタスクフォー ス関係者に深謝したい。 文 献
1) Reich MR, Takemi K. G8 and strengthening of health systems: follow-up to the Toyako summit. Lancet 2009; 373: 508-515.
2) WHO. World Health Report 2000 –Health systems: Improving performance. Geneva, 2000. 3) WHO. World Health Report 2003 –Shaping the
future. Geneva, 2003.
4) Navarro V. Assessment of the World Health Report 2000. Lancet. 2000; 356: 1598-1601.
5) Almeida C, Braveman P, Gold MR, et al. Methodological concerns and recommendations on policy consequences of the World Health Report 2000. Lancet 2001; 357:1692-1697. 6) Lawn JE, Rohde J, Rifkin S, et al. Alma-Ata 30
years on: revolutionary, relevant, and time to revitalize. Lancet 2008; 372: 917-927.
7) WHO. World Health Report 2008 –Primary health care: Now more than ever. Geneva, 2008.
8) PAHO. Renewing primary health care in the Americas –A position paper of the Pan American Health Organization/World Health Organization. Washington D.,C., 2007.
9) Atun R, Ohiri K, Adeyi O. Integration of health systems and priority health, nutrition and population interventions –A framework for analysis and policy choices. World Bank, Washington D.,C., 2008.
10) WHO. World Health Report 2006 –Working together for health. Geneva, 2006.
11) WHO. The global fund strategic approach to health systems strengthening –Report from WHO to the Global Fund Secretariat. Geneva, 2007. 12) WHO. Everybody’s Business –Strengthening
health systems to improve health outcomes, WHO’s Framework for Action. Geneva, 2007. 13) 大来佐武郎監訳 . 途上国の保健医療と国際協
力 Health Research -essential link to equity in development. 東京 : 国際協力推進協会、1992. 14) Health Metrics Network. Framework and
standards for country health information systems –Second edit. Geneva, 2008.
15) WHO maximizing positive synergies collaboration group. An assessment of interactions between global health initiatives and country health systems. Lancet 2009; 373: 2137-2169.
[Information]
Recent world activities for health system strengthening
Motoyuki YUASA
1), Chiaki MIYOSHI
2), Eiji MARUI
1)1) Department of Public Health, Juntendo University School of Medicine 2) Bureau of International Cooperation, International Medical Center of Japan
Abstract
Background
In recent global health developments, attention has focused on health system strengthening (HSS). Behind this move is the realization that HSS is essential for the development of sustainable and effective health care activities required to meet UN Millennium Development Goals and eradicate poverty. Since the publication of the World Health Report (WHR) 2000, the World Health Organization (WHO) has made intensive efforts to promote HSS.
Progress
This paper descibes recent global activities for HSS, based on official WHO documents and related issues, along with the following three phases: publication of the WHR 2000, follow up of feedback on the WHR 2000, and global trends for HSS after publication of the WHR 2003. In particular, we shall clarify progress made after the year 2003 with regards to policy, implementation, and scientific methodology. For policy, the principle of Primary Health Care has been introduced to HSS, and the participation of international agencies has been promoted. With regards to practice, training a health care workforce and financial assistance from global funds are addressed. Finally, for scientific methodology, we refer to instances such as the development of the WHO framework for health systems, the promotion of evidence-based health research, and strengthening of health information systems.
Conclusion
To make vertical health care programmes for acute care, infectious diseases and chronic illnesse etc. more effective, HSS as the lateral foundation is an urgent global health care issue. It is surely necessary that Japan’s basic strategy for supporting HSS is clarified as well as attempts to introduce concrete components for HSS into bilateral cooperation and NGO programmes.