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南 ア ジアの核 軍備 競 争 と中 国核 戦 略
一 危 惧 され る 「中 国封 じ込 め 」 と 「制 御 不 能 の新 冷 戦 」 一
林 亮
NuclearArmsRaceinSouthAsia andChina'sNuclearStrategy
‑Topreventanewcoldwar一
HAYASHIAkira
は じめ に
これ まで多 くの角度 か ら中 国安 全保 障 問題が 論 じられて きた。 しか し南 ア ジ ァ との関係 か ら検 討 され る機会 は少 なか った ように思 われ る。 米 ロ中三 力 国 の核 均 衡 の トライア ングル に印パ核 軍備 競争 の要素 を入 れ る こ とで新 た な 核 軍備 増 強 の連鎖 が見 えて くる。
イ ン ドの実 戦 的核 軍備 保有 は米 国 に よる世界 的 な 中国包 囲網形 成 を懸念す る中国 を刺激 し,大 規模 な核 軍備 増 強 に向か わせ る発 端 にな るか もしれ ない。
米 国 はNMD配 備 に よる核 秩 序 へ の影 響 を 自国で 制御 可 能 と考 えて る のか も 知 れ ないが,南 ア ジアの不安 定 な国 際情勢 を米 国が 自由 に制御 で きる とは思
えない。
現在 抑 制 的 な中国 の核 軍備 を刺 激 して核 軍 備競 争 の連鎖 反応 を起 こせ ば, 世 界 の核 秩 序 を制 御不 能 に陥 れ る可能 性 さ え生 まれ る。 中 国 に 「 封 じ込 め」
の 印象 を与 え核 軍備 増強 に向か わせ ては な らない。
1.印 パ 核 軍 備 競 争
① 印 パ 核 保 有 国へ
1998年5月11日,イ ン ドは 地 下 核 実 験 を実 施 した 。 こ の核 実 験 は(1)12キ ロ トンの 小 型 「核 分 裂 装 置 」(2)43キ ロ トンの 「熱 核 反 応 装 置 」(3)0.2キ ロ
トン以 下 の 小 型核 の 三 種 類 だ っ た とい わ れ る。 こ れ は従 来 の政 治 的 効 果 に重 点 が 置 か れ た 「核 爆 発 装 置 」 で は な く,イ ン ド国 産 の 中距 離 弾 道 ミサ イ ル ・
ア グニ な どに搭 載 す る核 弾 頭 な ど実 戦 的 な核 兵 器 製 造 を 目指 す 実 験 で あ っ た こ と は 明 白 で あ る。(朝 日新 聞朝 刊1998年05月18日)つ づ く5月29日 今 度 はパ キ ス タ ンが核 実験 を実 施,カ シ ミー ル地 方 の 帰 属 を め ぐ って 戦 争 を繰 り返 し て きた 印 パ 両 国 は公 然 た る核 保 有 国 と な り,核 戦 争 勃 発 の危 機 に南 ア ジ ア情 勢 は 一 挙 に 緊 迫 化 した 。
イ ン ドは建 国 以 来 国 際 舞 台 で の 政 治 的 影 響 力 や 近 代 化 を誇 示 す る象 徴 と し て 原 子 力 開 発 を推 進 して きた 。 と くに62年 中 印 国境 紛 争 で敗 北 した イ ン ドは 中 国 が1964年 に初 の核 実験 を行 っ て 以 来核 開 発 を推 進,運 河 開 削 工 事 に な ど 利 用 す る 「平 和 目的 の 核 爆 発 」 装 置 と称 して74年5月 に5〜12キ ロ トン級 プ ル トニ ウ ム 爆 弾 の 実 験 に成 功 す る 。 しか しイ ン ドは今 回98年5月 の核 実 験 まで
「公 然 た る核 兵 器 保 有 」 に は 進 まず,必 要 な 時 は い つ で も核 保 有 国 と なれ る 能 力 を示 す こ とで 対 立 す る 中 国 や パ キ ス タ ン と微 妙 な 戦 略 バ ラ ン ス を維 持 し て きた と さ れ る 。
建 国 当初 よ りイ ン ドと対 立 す るパ キ ス タ ン は54年 に 原 子 力 委 員 会 を設 置 し 核 開発 を推 進,1980年 代 に は爆 撃 機 搭載 可 能 な核 爆 弾 を保 有 す る に至 っ た と 言 わ れ て い る。 両 国 は核 弾 頭 搭 載 可 能 な 弾 道 ミサ イ ル 開 発 で も競 争 を続 け て
き た。 イ ン ドが 短 距 離 ミサ イ ル ・プ リ トビ ・シ リー ズ,中 距 離 ミサ イ ル ・ア グ ニ ・シ リー ズ を 開発,パ キ ス タ ン も これ に対 抗 して単 ・中距 離 の ハ トフ ・
シ リー ズ,中 距 離 の ガ ウ リ ・シ リー ズ を 開発 して 両 国 は相 互 に相 手 国 を射 程 に 納 め る よ う に な っ た1)。
核 兵 器 保 有 と運 搬 手 段 で あ る 長 距 離 ミサ イ ル の 実 用 化 段 階 を迎 え て,印 パ 両 国 は 「南 ア ジ アの 核 の 火 薬 庫 」 と して世 界 で も最 も核 戦 争 勃 発 の 危 険性 の 高 い 地 域 と して 認 識 され る よ うに な っ た 。
南 アジ アの核 軍備競 争 と中国核 戦 略49
② 印パ の核 実 験 の 理 由
イ ン ドは従 来 「万 一 の 時 に核 兵 器 製 造 の 選 択 肢 を 開 け て お く」 とい う意 味 の 「オ プ シ ョ ン ・オ ー プ ン政 策 」 と呼 ば れ る核 政 策 を維 持 して きた 。 西 側 の 経 済 援 助 停 止 を危 惧 し公 然 た る核 兵 器 保 有 は行 わ な い が 「平和 目的 の核 実 験 」 で 核 兵 器 開 発 能 力 を証 明 し,「 潜 在 的 核 抑 止 力 」 を保 有 す る 政 策 で あ る。 核 拡 散 防 止 条 約 に よ る世 界 的 な非 核 拡 散 防 止 レ ジー ム と核 抑 止 力 保 持 に よ る 国 家 の 安 全 保 障 をバ ラ ンス す る巧 妙 な政 策 で あ っ た 。
カ シ ミー ル領 有 問 題 で イ ン ドと激 しい 紛 争 を繰 り返 す パ キ ス タ ン も,イ ン ドの 「核 の 脅 威 」 を睨 み な が ら も核 兵 器 生 産 配備 計 画 も核 保 有 の 意 志 も曖 昧 にす る 「核 曖 昧 戦 略 」 を選 択 し,核 実験 や 公 然 た る核 開発 は イ ン ド同様 に 自 制 して きた2)。 イ ン ド核 実 験 で この 均 衡 が 崩 れ た の だ 。
イ ン ドの核 兵 器 保 有 へ の 意 志 決 定 は何 故 な され た の で あ ろ う か 。 い くつ か の 原 因 が 考 え られ るが,96年 の包 括 的核 実 験 禁 止 条 約 採 択 に あ た っ て米 ロ英 仏 中 の 五 大 国 が核 廃 絶 の 意 志 の な い こ と を事 実 上 認 め た こ とへ の 反発 が 最 大 の 要 因 で は な い か と言 わ れ て い る。5大 国 に よ る核 独 占 を正 当 化 す るNPT体 制 へ の 反 発 か らイ ン ドが核 兵 器 保 有 の 決 断 を下 した とす る の だ 。 特 に 「中 国
と対 等 の 大 国扱 い を望 む 年 来 の イ ン ドの 願 望 と結 び つ い て,核 実 験 に至 っ た と考 え る こ とが で きる で あ ろ う」3)と 語 られ る。 イ ン ド と同 様 の 「発 展 途 上 国」 なが ら国連 常 任 理 事 国 で あ る と同 時 に 公 認 の 核 保 有 国 と して 国 際 社 会 で 大 き な発 言 力 を持 つ 中 国 に対 して,広 大 な領 土 と巨大 な 人 口 を擁 しな が ら も 同様 の 影 響 力 を発 揮 し得 な い イ ン ドの対 抗 意 識 が 核 兵 器 保 有 決 定 に大 き な影 響 を与 え た の は 間違 い ない だ ろ う。 核 保 有 を選 挙 公 約 とす る イ ン ド人 民 党 が 98年 政 権 を掌 握 す る と,従 来 の 「オ プ シ ョ ン ・オ ー プ ン政 策 」 を変 更 し核 実 験 を強 行,イ ン ドは 公 然 た る核 武 装 へ と踏 み 出 した 。
パ キ ス タ ン も イ ン ドを追 っ てす ぐ さ ま核 実 験 を強 行,核 武 装 を公 然 化 した 。 カ シ ミー ル 地 方 帰 属 を め ぐっ て激 しい武 力 紛 争 を繰 り返 す 両 国 間 に核 戦 争 勃 発 の 可 能 性 が 取 りざ た され た 。 い くつ か の シ ナ リ オ が 描 か れ た 。 例 え ば イ ン
ド軍 が ラ ホ ー ル 近 郊 に迫 り,カ ラチ を 海 軍 で 海 上 封 鎖,パ キ ス タ ン戦 術 核 を 威 嚇 発 射 す る。 さ ら にパ キ ス タ ンが 核 の 威 嚇 をあ き らめ,イ ン ド主 要 都 市 を 直 接 核 攻 撃,ボ ンベ イ に15キ ロ トンの核 爆 弾 投 下 す る。 こ の場 合 数 ヶ月 以 内
に死 者15〜85万 人 に達 す る と想 定 され た4)。
世 界 は 広 島 ・長 崎 の 再 現 の 可 能 性 に震 憾 し,印 パ 間 の 連 鎖 的核 実 験 は南 ア ジ ァの 核 軍 拡 競 争 の 始 ま り と して 認 識 され た。 危 機 を南 ア ジ ア の枠 組 み で取 扱 う論 が 主 流 を 占め た 。 しか し両 国 の核 武 装 決 定 の 本 質 は,中 国 ・イ ン ド ・ パ キ ス タ ン と続 く核 武 装 の 連 鎖 反 応 と認 識 した 方 が は る か に理 解 しや す い 。 イ ン ドは パ キ ス タ ン に対 し通 常 戦 力 で 圧 倒 的 な優 勢 に あ り,通 常 兵 器 の優 勢 を0挙 に泡 沫 に帰 して し ま う核 兵 器 に よ る報 復 の 危 険 を 冒 して まで核 武 装 に 踏 み切 っ た と は考 え に くい 。1959年 の 中 国 軍 チ ベ ッ ト占 領 に端 を発 し,62年 10月 の 中 印 戦 争 以 来 の 中 印対 立 に 「南 ア ジ ア核 危 機 」 解 決 の鍵 を 求 め るべ き だ と思 わ れ れ る。
2.イ ン ドの核 軍 備 と戦 略
① イ ン ドの対 中核 戦 略
核 武 装 を決 意 した イ ン ドが 目指 す 核 戦 力 は,外 敵 か らの 直 接 攻 撃 を抑 止 す る た め の 「最 小 限核 抑 止 」 を 目指 す もの と思 わ れ る 。 イ ン ドの 明確 な核 戦 略 は公 開 され て い ない がs少 な く と も二 つ の 「核 戦 略 」 が 軍 関係 者 に よ っ て公 表 され イ ン ドの核 戦 略 と して 認 識 され て い る。
a「 床 の 間 の 置 物 核 抑 止 」(RecessedDeterrence)
「床 の 間 の 置 物 核 抑 止 」 戦 略 に よれ ば,核 弾 頭 は 平 時 に は秘 密 の場 所 に分 散 して貯 蔵,緊 急事 態 に あ た っ て は じめ て ミサ イ ル や 航 空 機 に搭 載 ・配 備 さ れ る。 核 兵 器 が 実 際 に は実 戦 配 備 され な い た め に,保 有 核 兵 器 へ の 先 制核 攻 撃 の 可 能性 が低 く戦 略 的 安 定 性 が 高 い と され る。 元 陸 軍 参 謀 長 ス ンダ ル ジ 退 役 将 軍 に よっ て 主 張 され た 。 彼 の 想 定 す る核 兵 器 必 要 量 は,報 復 核 攻 撃 用 と
して パ キ ス タ ン5都 市,中 国10都 市 で,各 都 市 に20キ ロ トン級 原 爆3個 を投 下 し総 計45個 で あ る 。 そ の う ち 先 制 攻 撃 や 故 障 な どの 中 間 損 失 を考 慮 す る と, 先 制 攻 撃 で 半 数 が 破 壊 さ れ る と考 え て90個,命 中率 を三 割 と想 定 して合 計 約 135個 とな る。 「床 の 間 の 置 物 核 抑 止 」 で は イ ン ドは水 爆 や 強 化 型 原 爆 は不 要 だが,約90〜135個 の 原 爆 保 有 が 必 要 だ と さ れ る。
b.「 公 然 た る核 実 戦 配備 」(OpenNuclearDeployment)
「公 然 た る核 実 戦 配 備 」 戦 略 は,パ キ ス タ ンが 核 戦 力 を拡 大 す れ ば 結 果 的
南 ア ジアの核 軍備競 争 と中 国核 戦略51
に イ ン ドも核 爆 弾 の 大 量 配 備 決 断 を迫 られ 公 然 た る核 保 有 に 進 む 以外 に な い とす る立 場 で あ る。 ナ イ ー ル 退 役 将 軍 が 主 唱 者 で あ る。 「公 然 た る核 実 戦 配 備 」 に 必 要 な核 兵 器 数 は,パ キ ス タ ン6都 市,パ キ ス タ ン軍 侵 攻 部 隊,指 揮 中 枢 施 設3カ 所,核 部 隊5カ 所,ダ ム2カ 所 の 計17カ 所 と,中 国 の都 市 ・産 業 施 設 合 計6カ 所,原 子 力 潜 水 艦 母 港2カ 所 の 攻 撃 目標 に対 して,都 市 ・産 業 施 設 に は一 目標 あ た り1メ ガ トン級 原 爆2個 を投 下 す る。 敵 の先 制 攻 撃 で核 兵 器 の 二 割 が破 壊 され,命 中率 が 三 割 と計 算 す れ ば 総 計132個 が 必 要 で あ る 。 「公 然 た る核 実 戦 配 備 」 で は さ らに水 爆 や 強 化 原 爆 も必 要 だ とさ れ る。
両 者 と も イ ン ドが 保 有 す べ き核 爆 弾 を,中 国 の保 有 戦 略 核 弾 頭 の約 半 数 で あ る130発 と見 積 もっ て い る こ とが 興 味 深 い 。 今 後 イ ン ドは こ の130発 の核 兵 器 の 実 戦 配 備 を軸 に,そ の核 武 装i計画 を推 進 して い く可 能 性 が 高 い と思 わ れ る5)。
② イ ン ド核 戦 力 実 際 の 展 開
現 状 で は イ ン ド核 戦 力 の 実 態 は130発 の 核 保 有 に至 っ て い な い 。 ま た 有 効 な対 中核 抑 止 力 形 成 に は不 可 欠 と考 え られ る中 国戦 略 目標 に到 達 可 能 な核 弾 道 ミサ イ ル も十 分 な 数 が 実 戦 配備 され て い る とは 思 え な い。 ス ウ ェ ー デ ン ・ ス トッ ク ホ ル ム 平 和 研 究 所 のSIPRI年 鑑 最 新 刊 は2002年1月 現 在 イ ン ドが 保 有 す る核 弾 頭 数 を30〜35発 と み て い る 。 こ れ を運 搬 可 能 な ミサ イ ル は射 程 150km,運 搬 可 能 弾 頭 重 量1000kg,核 弾 頭 搭 載 可 能 な プ リ トビz・ 短 距 離 弾 道 弾 と,射 程1500kmの ア グ ニ1・ 中 距 離 弾 道 弾 で あ ろ う。 しか しア グ ニ 1は 「核 配 備 状 態 」 と さ れ る もの の飛 行 試 験 を完 了 した 直 後 で あ る。 ま た ミ サ イ ル に搭 載 可 能 な小 型 軽 量 核 弾 頭 製 造 に成 功 した確 証 もな く,信 頼 で き る 抑 止 力 と して 実 戦 配 備 状 態 に あ る と は 言 い 難 い だ ろ う。 射 程2000kmの ア グ ニ ∬は 配備 間近 と言 わ れ る も の の なお 飛 行 試験 が 続 い て い る と も伝 え られ る。
な らば実 際 に行 使 可 能 な核 戦 力 は,少 数 配 備 さ れ て い る核 爆 弾 搭 載 可 能 な 旧 ソ連 製Mig‑27戦 闘 爆 撃 機i(射 程800km,i搭 載 重 量3000kg),英 国 製 ジ ヤ ギ ュ ァIS戦 闘 爆 撃 機(射 程1600km,搭 載 重 量4775kg)で あ ろ う6)。 しか し 航 空 機 は撃 墜 可 能 で か つ 目標 到 達 ま で 時 間 が か か る。 有 力 な核 ミサ イ ル 戦 力 を擁 す る 中 国 に十 分 な抑 止 力 と は な りえず,中 国 中枢 部 に到 達 可 能 な ミサ イ ル の 開発 が 急 が れ る 。一 方 で 中 国 は戦 略 ミサ イ ル だ け で も,射 程2800kmで3.
3MTの 弾 頭 を搭 載 す るDF‑3Aを40基,射 程5500km,3.3MTのDF‑4を12基, 射 程1万3千 キ ロ4〜5MTのDF‑5Aを20基,射 程1800km,200〜300ktの
DF‑21Aを48基 保 有 して7),イ ン ドに対 し大 きな核 抑 止 力 を行 使 して い る と 言 え る。
③ イ ン ドの構 想 す る核 戦 力
イ ン ドが あ る程 度 の 対 中核 抑 止 力 を保 有 す る た め に は北 京 に到 達 可 能 な 射 程 距 離3000キ ロ以 上 の 射 程 距 離 を持 つ 核 弾 頭 ミサ イ ル が 必 要 と思 わ れ る。 こ の 目的 に は 射 程4000kmに 達 す る 中距 離 弾 道 弾 ア グ ニ 皿 が 開発 中 で あ り,さ
らに 射 程5000kmを 超 え るSuraya大 陸 間 弾 道 弾 の 開発 計 画 も伝 え られ る。 ま た2007年 引 き渡 し を 目指 して 原 子 力 潜 水 艦ATVの 建 造 計 画 が 進 行 中 で,潜 水 艦 発 射 射 程300kmの ミサ イ ル な ど も開発 が 続 い て い る よ うで あ る8)。
最 終 的 に イ ン ドは,ロ シ ア か ら輸 入 さ れ るSu‑30MKI戦 闘 爆 撃 機 に よ る 核 爆 撃 機 部 隊 射 程150〜250キ ロ の核 弾 頭 搭 載 型 プ リ トビ ・ミサ イ ル60〜100 基 に よ る短 距 離 ミサ イ ル 部 隊,ま た射 程2000〜300キ ロ の核 弾 頭 搭 載 型12基 で構 成 す る 中距 離 ミサ イ ル部 隊,こ れ に射 程300キ ロ の 弾 道 ミサ イ ル搭 載 潜 水 艦 部 隊 構 築 を 目指 す もの と思 わ れ る9)。
一 方 で 世 界 の 軍 事 戦 略 情 勢 分 析 に 定 評 の あ る英 国 国 際 戦 略 研 究 所 は ,「 イ ン ドは2001年1月17日 ア グ ニ ・IRBMの 発 射 実 験 に 成 功 し,同 ミサ イ ル の 生 産 を始 め た 。 射 程 は1㌧ の ペ トロ イ ー ドで3000㌔,500kgの ペ トロ イ ー ドで 3700㌔ で あ る 。 す で に15発 が 生 産 さ れ た。」lo)と して い る。 イ ン ドの核 戦 力 増 強 が 着 実 に進 め ば,米 ソ冷 戦 時 代 の 核 兵 器 の 三 本柱 で あ る核 弾 頭 搭 載 の 航 空 機 と地 上 配 備 弾 道 弾 に加 え,報 復 戦 力 と して の潜 水 艦 発 射 弾 道 ミサ イ ル の 核 兵 器 体 系=「 核 の トラ イ ア ド」 が 完 成 す る 。 こ れ ら開 発 ・導 入 中 の 兵 器 が 配 備 され れ ば,戦 略 爆 撃 機 ・核 ミサ イ ル ・戦 略 原 潜 に よ る 「核 の トラ イ ア ド」
を完 備 す る 中 国 に対 抗 して イ ン ドの 「対 中 最 小 限核 抑 止 」 が 成 立 す る もの と 思 わ れ る。
④ 中 国 の対 パ 核 兵 器 技 術 供 与
「床 の 間 の 置 物 核 抑 止 」 も 「公 然 た る核 実 戦 配 備 」 戦 略 に して も,中 国 と パ キ ス タ ン両 国 を イ ン ド核 戦 力 の 仮 想 敵 と して い る 。 一 見 す る と核 戦 争 勃 発 の可 能 性 は根 深 い 宗 教 ・民 族 対 立 を抱 え る印 パ 間 の 方 が 高 い と思 わ れ,ま た
'
南 ア ジアの核 軍備 競争 と中国核 戦略
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戦 略 拠 点 が 国境 線 に近 い とい う地 理 的 条 件 に加 え 印パ 問 の 戦 力 格 差 が 大 きい た め先 制 攻 撃 の 可 能性 が 高 くそ の危 険 性 は深 刻 で あ る よ う に見 え る。
しか しパ キ ス タ ン の原 爆 開発 と弾 道 ミサ イ ル技 術 移 転 に は 中 国 が深 く関 与 して きた 。 中 国 は1983年 か ら86年 に か け て,パ キ ス タ ンに 原 子 爆 弾 の 設 計 図, 核 兵 器 用 プ ル トニ ウ ム,水 素 爆 弾 の核 融 合 に必 要 な トリチ ウ ム を売 却 した と 伝 え られ る11)。 射 程3000kmを 目標 に 開 発 が 続 け られ て い る ガ ウ リ ・シ リ ー
、
ズ は 中 国 の 友 好 国 北 朝 鮮 の ノ ド ン ・ミ サ イ ル が ベ ー ス と言 わ れ て い る 。 ま た 射 程600kmを 目指 す 短 ・中 距 離iミ サ イ ル ・ハ トフ ・シ リ ー ズ は 中 国 製M11ミ サ イ ル に 酷 似 し て い る と 言 わ れ る 。 さ ら に1999年 中 期 よ り生 産 が 開 始 さ れ た
と伝 え ら れ る 射 程725km,搭 載 重 量1000kg(小 型 化 さ れ た 核 弾 頭 を 搭 載 可 能)の シ ャ ヒ ー ン1・ ミ サ イ ル は 中 国 のM9が ベ ー ス に な っ て い る と さ れ る12)。
戦略
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コハ ホサせ にまミきはみ亥鵜講畿齢
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ゆもなげぜやもニぜ頭歯瓢樋oW卑卵遷雛噌3鐸刻螺鱒慧熱
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2002年1月 現 在 の 核 戦 力
国 家
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Table.10A.a1,Worldnuclearforces,January2002,HansM.Kristensen andJoshauaHandler,Worldnuclearforces',SIPRIYear.ilI2002, OxfordUniversityPress,p.526.
中 国 は イ ン ドを牽 制 す る た め に戦 闘機 か ら長 距 離 ミサ イ ル技 術 まで パ キ ス タ ン に供 与 して きた 。 イ ン ドは常 にパ キ ス タ ン核 戦 力 の 背 景 に 中 国核 戦 力 の存 在 を想 定 し な け れ ば な ら ない 。
⑤ 海 軍 力 軍 備 増 強 続 くイ ン ドと中 国
英 国 国際 戦 略 研 究 所 「南 ア ジ ア戦 略 概 観 」 に よれ ば,イ ン ドの 防 衛 予 算 は 98年 以 来70%近 い伸 び を示 し,2001年 に は156億 ドル に 達 して い る13)。 核 戦 力 と並 ん で注 目 され るの は海 軍 力 増 強 で,イ ン ドは東 西 イ ン ド洋 に二 隻 の 航 空 母 艦 と潜 水 艦 を配 備 し よ う と して い る。 「イ ン ドは マ ラ ッ カ海 峡 を越 え て くる 東 ア ジ ア か ら の 潜 在 的 脅 威 」 に備 え よ う と し て い る と見 られ る14)。 イ ン ド海 軍 力 の 影 響 力 拡 大 は 無 視 で きな い。
イ ン ドに は ロ シ ア か ら大 量 の 先 鋭 兵 器 が 供 給 され る予 定 で あ る 。 大 規 模 な 取 引 だ け で も140機 のSu‑30mkI戦 闘 爆 撃 機 の ラ イ セ ンス 生 産 契 約,310両 のT‑90主 力 戦 車 の 購 入,ロ シ ア の4500ト ン空 母 ア ドミ ラル ・ゴ ル シ コ フ と そ の搭 載 機Mig‑29K・20機 の購 入 予 定,キ ロ級 デ ィ ー ゼ ル潜 水 艦 の さ ら な る購 入,3隻 の ク リバ ー ク級 フ リゲ ー ト艦 さ ら に フ ラ ンス か ら最 新 型 の ラ イ フ ァ イ ア ッ ト級3隻 の ブ リゲ.̲.̲ト艦 導 入 も予 定 さ れ,イ ン ドの 海 軍 力 近 代 化 は 着 実 に進 行 して い る15)。
現 状 で もイ ン ド海 軍 は 潜 水 艦16隻,主 力 水 上 艦 に 限 っ て も航 空 母 艦1隻, 駆 逐 艦11隻,フ リゲ ー ト艦12隻 な ど を保 有 す る ア ジ ア有 数 の 海 軍 国 で あ り, そ の 制 海 能 力 は 旧 式 艦 が 多 く近 代 化 に着 手 した ば か りの 中 国 を大 き く凌 駕 す る と言 わ れ て い る。 中 国 と対 等 以 上 の 立 場 を 目 ざ して イ ン ドは順 調 な 経 済 発 展 を背 景 に核 ・非 核 両 面 の 軍 備 拡 張 を続 け て い る16)。
一 方 で 中 国 は2001年 に は 国 内 総 需 要2億2000万 トンの 約3割 強 の6000万 トン
〜7000万 トンの 石 油 を輸 入 した 。 順 調 に経 済 成 長 が 続 け ば2010年 に は5割 に 達 す る と予 想 さ れ る 。 しか も 中 国 の 中 東 石 油 へ の 依 存 度 は50%近 い17)。 こ う な る と中東 原 油 の 海 上 輸 送 に多 くを依 存 す る こ と に な り,中 国 の イ ン ド洋 へ の 関心 は 高 ま らざ る を得 な い 。 中 国 海 軍 も ロ シ ア か らの 兵 器 購 入 に よ っ て 旧式 艦 艇 の近 代 的艦 船 へ の 更 新 を行 っ て きた 。代 表 的 な 兵 器 導 入 は,中 国 で 初 の 空 域 防 衛=能力 を有 す るSAN7・SAMシ ス テ ム を搭 載 す る2隻 の ソ ブ 『レメ ン ヌ イ 級 駆 逐 艦 獲i得(更 に2隻 の 購 入 契 約 済)と,世 界 で も最 新 鋭 の 攻 撃 型
南 ア ジアの核 軍備 競 争 と中国核 戦略55
潜 水 艦 で あ る ロ シ ア 製 キ ロ級 デ ィー ゼ ル 潜 水 艦4隻 の獲 得 で あ ろ う。
中 国 が 従 来 保 有 して きた 旧 式 艦 は ロ シ ア か らの新型 艦 導 入 に よ って 大 幅 な 近 代 化 が 図 られ る。 しか し中 国 海 軍 の艦 艇 全 体 と して は近 代 的 な対 空 監 視 シ ス テ ム とデ ー タ リ ン ク を装 備 して お らず,効 果 的 な艦 隊 防御 は不 可 能 で あ る。
ま た 空 母 の 獲 得 計 画 も無 期 延 期 に な っ た と伝 え られ て い る18)。 結 論 的 に は 中 国 の 海 軍 力 増 強 は0部 の 例 外 を 除 い て 老 朽 化 す る兵 器 装 備 の 更 新 水 準 にす ぎ な い と判 断 せ ざ る を得 な い 。 も し も 中 国 が 中東 か らの 「シ ー レ ー ン防衛 」 を 意 識 す れ ば,イ ン ド海 軍 の 近 代 化 と増 強 は さ ら な る 中 国 海 軍 力 増 強 の圧 力
と な る 可 能 性 が 高 い 。
3.中 国対 印 戦 略 と軍 備
① 中 国 の対 印 戦 略 観
中 国 は イ ン ドの核 ・非核 両 面 の 軍 備 拡 張 を どの よ う に捉 え て い る の で あ ろ うか 。 政 治 的発 言 につ い て はす で に多 くを伝 え られ て い る の で}本 論 で は主 要 な 中 国 国 際 関 係 研 究 機 関 の 代 表 的 な考 え方 を検 討 して み た い 。
南 京 人 民 解 放 軍 国 際 関 係 学 院 教 授 朱 所 昌 は,『 周 辺 安 全 保 障 環 境 と安 全 保 障 戦 略 』 にお い て,イ ン ド入 民 党 は 中 国 が イ ン ドを侵 略 した と して,中 印 問 の 国 境 問 題 は未 解 決 と し て 政 権 を 掌 握 す る や 改 善 中 の 中 印 関 係 を破 壊 し,
『中 国 脅 威 論 』 を核 保 有 の 口 実 と して核 実 験 を行 っ た とす る19)。 中 国 を仮 想 敵 と して き た イ ン ドは最 終 目標 は 中 国 チ ベ ッ トを 中 印 問 の 「緩 衝 国 」 とす る
目標 を持 ち つ づ け て きた20)。 「イ ン ドが 核 兵 器 を 追 及 した 理 由 は,軍 事 的 に は 主 に 中 国が 対 象 で あ る。 ・ ・冷 戦 後 は 更 に イ ン ドは猜 疑 心 に噴 ま れ,中 国 の 強 大 さが イ ン ドの潜 在 的 脅 威 と な っ て い る。 中 国 の 近 年 の 核 兵 器 と弾 道 弾 の 発 展 と,中 印 国境 の後 方 支 援 能 力 の 向上 は,イ ン ドの安 全 保 障 に対 し影 響 を与 え る。」21)朱 は イ ン ドは 中 国 を脅 威 と認 識 し,通 常 兵 器 で の対 中 均 衡 に 続 き核 兵 器 で の対 中均 衡 を追 求 して い る と見 て い る22)。
中 国 現 代 国 際 関係 研 究 所 長 の 張 文 木 は,「 イ ン ドの 大 国 戦 略 と南 ア ジ ァ地 縁 政 治構 造 」 と題 して,大 国 の 覇 権 闘争 の基 本 は世 界 的 な地 政 学 的 な基 本 認 識 に立 っ て い る。 覇 権 争 奪 を 目 ざす 国家 の最 終 目標 は イ ン ド洋 の コ ン トロ ー ル で あ る と言 う23)。 さ らに 地 政 学 で は 中 東 と 中 央 ア ジ ア,す な わ ち北 イ ン
ド洋 の 地 域 は世 界 覇権 確 保 に不 可 欠 の 「心 臓 」 地 帯 と見 な さ れ て い る。 バ ル カ ン と南 ア ジ ア 地 域 は世 界 の 「心 臓 地 帯 」 を防 衛 す るた め の 戦 略 的礎 石 で あ る24)。
張 は さ ら に2000年3月 の ク リ ン トン米 大 統 領 イ ン ド正 式 訪 問 は,米 国 が 世 界覇 権 獲 得 を 目 ざ して イ ン ドの 取 込 を は か っ た も の で あ り,2001年5月 ブ ッ
シ ュ 米 大 統 領 のNMD計 画 発 表 に イ ン ド政 府 が 賛 意 を示 した の は イ ン ドが 米 国 と の 同 盟 関 係 確 立 に応 じた た め で あ る とす る25)。 米 国 が 主 張 す る チ ベ ッ
ト人 権 問 題 に イ ン ドが 呼 応 した の も,中 国 東 部 の戦 略 目標 へ の 牽 制 を狙 っ た 政 策 で,イ ン ドは 中 国 チ ベ ッ トの 「緩 衝 国 化 」 を狙 っ て い る と警 戒 を呼 び か
け る26)。
張 は 翌 年 さ ら に 「イ ン ドの 大 国 戦 略 と南 ア ジ ア の 地 政 学 的構 造 」 を発 表 し, イ ン ドは 「中 国 脅 威 論 」 を,北 方 の 陸 か ら南 方 の イ ン ド洋 に安 全 保 障 戦 略 に シ フ ト し よ う と して い る27)。 米 軍 は 中 央 ア ジ ア 地 域 に 長 期 に 存 在 し続 け, 石 油 自給 率35%前 後 の イ ン ドの 北 イ ン ド洋 上 の 安 全 保 障 に深 刻 な 影 響 を与 え
28)
。 歴 史 的 に イ ン ド洋 は 米 英 の 必 要 不 可 欠 の 地 政 学 的 利 益 で あ り,イ ン るドは 中 米 矛 盾 を つ い て核 打 撃 力 を有 す る海 軍 力 建 設 を推 進 した が,こ の 政 策 は 米 国 と西 側 全 体 の イ ン ド洋 に お け る地 政 学 的 戦 略利 益 と調 整 不 可 能 な矛 盾 を 産 み だ す だ ろ う29)。
す な わ ち張 は イ ン ドが 核 保 有 国 と な っ た こ とで大 規 模 な 国家 間 戦 争 が 発 生 す る確 率 は減 少 す る。 こ の 戦 略 的 変 化 は イ ン ドの 国 防上 の重 心 を北 方 の 大 陸 か ら南 方 の 海 洋 へ と シ フ トす る こ と を可 能 にす る。 イ ン ドは こ の 変 更 を 「中 国 脅 威 論 」 の カ モ フ ラー ジ ュ の 下 に行 っ て きた が,時 間 の 経 過 と共 に イ ン ド 洋 をめ ぐる米 欧 との 地 政 学 的 矛 盾 は顕 在 化 し よ う と主 張 す る30)。
中 国 政 策 決 定 に影 響 力 を有 す る政 府 系 研 究 機 関 の研 究 者 た ち は,米 国 は世 界 の エ ネ ル ギ ー 源 を支 配 す る海 上 覇権 の 「心 臓 地 帯 」=イ ン ド洋 地 域 に核 を 保 有 す る海 上 勢 力 の 勃 興 す る こ と を見 の が す は ず は な い と主 張 す る の で あ る。
② 中 印 関 係 の 将 来構 想
さて この よ う な状 況 認 識 の 下 で 中 国 は い か な る対 印 関係 を望 ん で い るの で あ ろ うか 。
中 国 国 際 問題 研 究 所 最 高 顧 問,前 駐 印 大 使 の 程 瑞 声 は 「新 世 紀 の 中 印 関 係
南 ア ジァの核 軍備競 争 と中 国核 戦略57
を論 じる 」 の 中 で,「 中 印 両 国 の 共 同 の 利 益 は全 般 的 ・戦 略 的 ・長 期 的 で あ る。 両 国 間 に存 在 す る 問 題 は 局 部 的 ・副 次 的 ・一 次 的 な もの に す ぎな い 。21 世 紀 に 中 印 関係 に建 設 され る協 力 的 パ ー トナ ー シ ップ の 将 来 は,我 々 は 楽 観 的 な態 度 を 持 つ に 十 分 な理 由 が あ る」31)。さ らに 「中 国 は核 輸 出 三 原 則 に よ っ て,核 開 発 は平 和 目的 に 限 定,国 際 原 子 力 機 構 の保 障 措 置 を受 け る,中 国 の 同 意 無 しに 第 三 国 へ の 移 転 を禁 止 して い る。 ま た核 兵 器 運 搬 可 能 な ミサ イ ル 開発(射 程300キ ロ以 上,積 載 重 量500キ ロ以 上)を い か な る 方 法 で も援 助 しな い こ と を発 表 し,中 国 はパ キ ス タ ンへ の 兵 器 輸 出 に 関 して 抑 制 す る」32) と対 印 融 和 論 を展 開す る。
中 国 国 際 問 題 研 究 所 所 長 楊 成 緒 は 「中 ロ 印 三 国 関係 発 展 の 可 能 性 と将 来 」 の 中 で,「 中 ロ 印 は 政 治 的 多 局 化 と経 済 の 全 地 球 化 の 二 つ の 世 界 の 潮 流 の 衝 撃 に対 して,広 範 な 共 通 の 利 益 を有 して お り ・ ・中 ロ 印 の 三 ヶ国 間 の 相 互 の 発 展 は幾 らか の 困 難 は 存 在 して も,も し三 国 が 共 通 点 を捜 し求 め る な らば, 必 ず 三 国 の 関係 発 展 に 向 か っ て 前 進 す る だ ろ う」33)。楊 は,中 ロ 印 三 国 は全 世 界 的 な政 治 的多 極 化 と経 済 の全 地 球 化 の 中 で,政 治 的 安 定 の確 保 ・経 済 発 展 優i先政 策 にお い て 利 益 を共 有 して お り,三 国 は協 力 す るべ きだ と主 張 す る
の で あ る。
総 じて イ ン ドは 中 国 を 「脅 威 」 と認 識 す る が そ れ は 聞 違 っ て い る。 世 界 覇 権 を掌 握 す る上 で イ ン ド洋 は決 定 的重 要 性 を有 す るが 故 に,大 陸 か ら海 洋 へ 国益 上 の 関心 を拡 大 す る イ ン ドの 安 全 保 障 上 の 利 益 は 欧 米 の 地 政 学 的利 益 と 最 終 的 に衝 突 す る。 イ ン ドは経 済 発 展 を 至 上 の 目標 と し国 際社 会 の 過 度 の 一 極 化 を望 ま な い 中 ロ と協 力 す べ きで,中 ロ 印 の 三 国 協 力 関係 を築 くべ きで あ
る と中 国 を代 表 す る 国 際 政 治研 究 機 関 は主 張 す る。
③ 中 国核 軍 備 の現 状
軍 事 力 が 流 動 的 で 移 動 可 能 で あ る以 上,中 国 か ら イ ン ドに 向 け られ た 戦 力 を正 確 に 特 定 す る こ と は 困 難 で あ る。 しか し イ ン ドが 戦 略 上 中 国 と対 等 の 地 位 を求 め る な ら,中 国核 戦 力 の 現 状 を確 認 す る こ と に十 分 な 意 味 が あ る と言
え る。
中 国 の 戦 略 爆 撃 機iは1965年 に 配 備 の 始 ま っ た 航 続 距 離3100キ ロ の 旧 式 の H‑6型 爆 撃 機 が 中心 で あ る 。 こ れ ら は1〜3メ ガ トンの 爆 弾 一 発 を搭 載 す る 。
120機 が 配 備 され て い る こ と に な っ て い る が,補 助 的 な役 割 な ら と もか く重 力 投 下 型 の核 爆 弾 を搭 載 す る本 機 が 十 分 な 防 空 網 を備 え る 地 域 で 使 用 され る
とは 思 え な い 。同 様 航 続 距 離400キ ロ1メ ガ トンの爆 弾 を一 発 搭 載 す るQ‑5型 戦 闘機30機 も機 体 が 旧 式 で あ り同 じ く補 助 的 な役 割 しか 果 たせ な い だ ろ う。
米 国本 土 を射 程 に捉 え る 射 程1万 キ ロ以 上 のICBMは 射 程1万3千 キ ロ,4〜
5メ ガ トンの 核 弾 頭 を搭 載 す るDF‑5Aが20基 で あ る。 これ が 中 国対 米 核 抑 止 力 の 中核 で あ る。 さ ら に射 程2800キ ロ のDF‑3A・40基,射 程5500キ ロ の DF‑4・12基 が 保 有 され るが い ず れ も即 応 性 に欠 け る 液 体 燃 料 式 の 旧 式 ミサ イ ル で あ る上 に米 国 本 土 ま で は到 達 で きな い 。 短 中距 離 の核 抑 止 力 を担 うの は射 程1800キ ロ,200〜300キ ロ トン級 ・短 弾 頭,固 体 燃 料 式 の 道 路 移 動 型 の 存 在 の伝 え られ るDF‑21A・48発 で あ ろ う。 同 時 に 射 程8000キ ロの 固 体 燃 料 ・道 路 移 動 型DF‑‑31の 配 備 開 始 も伝 え られ,今 後 は こ れ ら新 世 代 の機i動 性 と即 応 性 に優 れ る 固 体 燃 料 式 ミサ イ ル が 中 国核 戦 力 の 中核 とな ろ う。
核 報 復 力 の 中 核 で あ る 戦 略 潜 水 艦 は 夏 級SSBNが12発 の 射 程1700キ ロ, 200〜300キ ロ トン単 弾 頭 装 備 のJL‑1・SLBMを 配 備 して い る が,潜 水 艦 自 体 の信 頼 性 が 低 く有 効 な 抑 止 力 と して機 能 して い る と は言 い 難 い 。
さ らに 中 国 が キ ロ トン級 の 低 威 力 の ミサ イ ル や 砲 弾 とい っ た 戦 術 核 兵 器 を 保 有 して い る こ とは 注 目す べ きだ34)。
米 国 や ロ シ ア と比 較 した場 合 「最 小 限 核 抑 止 」 を保 証 す る程 度 の 中 国核 戦 力 で あ っ て も,イ ン ド と比 較 す れ ば核 戦 力 は遙 か に優 勢 で あ る 。80年 代 に DF‑4やDF‑5Aの 配 備 に よ っ て 一 定 の対 米 ・対 ソ核 抑 止 力 を獲 得 した 後 は, 中 国 の 核 戦 力 増 強 は抑 制 され た もの で あ っ た と言 え る 。
④ 中 国核 軍 備 の 課 題 と対 印 戦 略
しか し2002年5月24日 の 米 ロ 「モ ス ク ワ条 約 」 締 結 は 中 国 核 戦 力 に 大 きな 変 更 を迫 る もの と な ろ う。 モ ス ク ワ 条 約 で は,現 在5000発 か ら6000発 保 有 さ れ る米 ロ の 実 戦 配 備 戦 略核 弾 頭 を今 後10年 間 で1/3す な わ ち1700〜2200発 に 削 減 す る予 定 で あ る。 一 見 米 ロ の保 有 す る 戦 略 核 弾 頭 が 激 減 す る 中 国 に とっ て有 利 な 条 約 に見 え る モ ス ク ワ条 約 で あ るが,米 ロ両 国 の 戦 略核 の 大 幅 削 減 が 米 国核 戦 略 の 大 幅 修 正 に よ る もの で あ る こ と に注 目す れ ば別 の 意 味 が 見 え て くる。
南 ア ジアの核 軍備競 争 と中国核 戦 略
59
2002年 中 国 核 戦 力
弾頭数
弾頭,爆 発 力
、"
レ ン ン
初配備年 配備数
NATO名 称
形式
,
畿麟懸灘講 韓鱗 灘謙鱗 織ll
1× 爆 弾
30 40030
1970Q‑5 A‑5
雛謙 騨蕪欝灘撰 鑛 総
12 1×3.3MT
5500
12・'1
CSS‑‑3 DF‑4
2Q
1×4‑5Mt13000 1981
20 CSS‑4
DF‑5A
購繋 難 難鯵 繋鍵繋 難鱗
SLBM
JulangZCSS‑‑N‑312198617001×200‑300kt12
灘灘 鱗欝織 難 雛 欝
非戦力総計
難 礁懸雛 灘灘轡懇
総計
402
Kristensen
M
Hans
2002,
January
forces, nUClear
Chinese 10A.8.
Table
SIPRIYearBook2002,p.556.
Worldnuclearforces,
andJoshauaHandler,
体制確立 を呼
サ イ ル 防 衛)
︑ミ
ブ ッシュ米大統 領 は就任 直後NMD (米本土
サ イル迎撃 兵器 で敵 の核 米 国本土 を宇 宙空 間配備 も含 めた弾 道 ミ
び か け た 。
のれ は 同 時 にABM条 約 か ら
こ
と い う 構i想 で あ る 。
サ イ ル か ら防 衛 し よ う
︑ミ
(相互確 証破壊 体制) 米 国の離脱 を意 味す る。ABM条 約離 脱 は米 ロ 間のMAD
.
に よ る戦 略 的 均 衡 政 策 か ら米 国 が 離 脱 す る こ と も意 味 して い る。 条 約 締 結 は 最 早 財 政 難 か ら急 速 に核 戦 力 が 縮 小 す る ロ シ ア が 米 国 との 均 衡 を保 持 し得 な い 現 実 を示 して い る。 米 国 の核 戦 力 は 圧 倒 的 に有 利 な立 場 に立 つ 。
米 国 がNMDシ ス テ ム を配 備Lす れ ば米 国 に到 達 可 能 な 長 距 離 ミサ イ ル を20 発 程 度 しか保 有 しな い 中 国 が 対 米 核 抑 止 力 を喪 失 す る の は 明 白 で あ る 。 米 国 に よ る先 制 攻 撃 で 生 き残 っ た 「数 発 の ミサ イ ル 」 はNMDシ ス テ ム で 迎 撃 可 能 と な ろ う。 中 国 が 対 米 抑 止 力 を維 持 す る た め に は,今 後 米 国 到 達 可 能 な ICBMを 増 産 す る と同 時 に 固 体 燃 料 式 で 路 上 機 動 可 能 なDF21やDF41(射 程
距 離12000キ ロ 開発 中),あ る い は 開発 中 の 新 型 原 子 力 潜 水 艦 搭 載 のSLBMな ど即 応 性 と残 存 性 の 高 い ミサ イ ル 配 備 が 必 要 で あ る。 中 国 は 戦 略 核 兵 器 近 代 化 圧 力 を受 け て い る35)。
しか も中 国 は湾 岸 戦 争 で 示 され た 米 軍 の 先 端 兵 器 に対 抗 す る た め に 「ハ イ テ ク条 件 下 の 局 地 戦 争 」 へ の 対 応 を迫 られ て もい る。 人 民 解 放 軍 は知 能 化 ・ 情 報 化 ・統 合 化 され た 軍 隊 の 積 極 的 運 用 に よっ て,ハ イ テ ク化 され た 米 軍 事 力 に対 抗 す る と こ と を想 定 して 軍 近 代 化 を推 進 して い る36)。 巾 国 は 米 軍 の ハ イ テ ク兵 ・器 に よ る通 常 戦 力 無 力 化 の 危 機 感 か ら,核 戦 力 と同 様 通 常 戦 力 で
も強 力 な近 代 化 圧 力 を受 け て い る。
イ ン ドの 核 ・海 軍 力 増 強 は イ ン ド洋 を め ぐる 西 側 の 地 政 学 的 戦 略 利 益 と矛 盾 す る と中 国 は考 え る。 中 国 は対 印 関 係 改 善 に楽 観 的 で あ り,中 ロ 印 三 国 関 係 の 発 展 に よ っ て 米 国 一 極 支 配 に対 抗 しな け れ ば な らな い 。 対 中均 衡 を求 め る イ ン ドの核 兵 器 増 強 の 圧 力 に さ らさ れ なが ら も中 国 は 対 印 関 係 改 善 に積 極 的 で あ る。
4.中 国の 国際情 勢認識
① 中国 の冷 戦後 国際 情勢 認識
さて前 章 で検討 した イ ン ドへ の戦 略 的認識 は 中国の 国際情勢 認 識全体 の中 で いか なる位 置づ けにあ るの であ ろ うか。 中国が冷戦 後 いか なる国際情 勢認 識 を抱 い てい るか検 討 してみ たい。
脱 冷 戦 後 の 中 国 国際社 会構 造 認識 論 の代 表 例 は 「 多 極 化加 速」 ・「 一超 多
強」 論争 で あ ろ う。湾 岸戦 争 ロシアの 国力低 下 な どを経 て米 国 は 「 唯一 の超
南 アジアの核 軍 備競 争 と中 国核 戦略61
大 国 」 とな って,国 際 的 権 力 構 造 は 「一 超 多 強 」 と認 識 さ れ る よ うに な っ た 。 ク リ ン トン政 権 の 中 国 重 視 政 策 もあ っ て 「多 強 」 を構 成 す る 世 界 強 国 の 一 端 を 中 国 は担 い 「世 界情 勢 は 中 国 に有 利 に展 開 され て い る 」と考 え られ て い た37)。
しか し9.11テ ロ後 世 界 は 一 変 す る。 ブ ッ シ ュ 政 権 は 中 国 を 「潜 在 的 競 争 相 手 」 と認 識 す る よ うに な り,世 界 で は 米 国 「一極 支 配 」 が 進 行 中 で あ る と認 識 さ れ,中 国 は米 国 か ら唯 一 米 国 に挑 戦 可 能 な潜 在 的 敵 国 と して 「危 機 的 状 況 」
に お か れ る よ う に な っ た 。
② 『戦 略 と管 理 』 に お け る 中 国 戦 略 論
この よ うな 「一 超 多 強」 論 争 や 「一 極 支 配 」 論 争 の な か 中 国 国 内 紙 に 民 族 主 義 的 で 好 戦 的 な論 調 が 散 見 さ れ る よ うに な っ た 。 しか し研 究 機 関 に お け る 抑 制 的 な 世 界 認 識 論 あ るい は 戦 略 論 に 変 化 は見 られ た で あ ろ うか 。 こ こで は 中 国 の 代 表 的 な 国 際 問 題研 究 機 関 の論 文 が掲 載 さ れ る機 会 の多 い 時 事 問 題 誌
『戦 略 と管 理 』 に お け る 中 国 戦 略 論 争 を追 っ て み た い 。
1998年8月 楚 樹 竜(中 国 現 代 国 際 関係 研 究 所)は 「中 国 の 総 合 的 国 力 を現 実 的 に把 握 す る必 要 が あ る 。 中 国 軍 事 力 は 米 ロ,日 印 韓 よ り低 く,軍 事 力 に
よ る台 湾 統 一 は 米 国 との 軍 事 対 決 に直 結 す る。 今 後 も米 国 は超 大 国 の 地位 強 化 し,中 国 は世 界 大 国 で は な い」 と して 中 国 国 内 の 民 族 主 義 的 積 極 論 を諌 め
た38)。
さ らに 人 民 解 放 軍 南 京 国 際 関係 研 究 所 の 時 段 弘 も 『戦 略 と管 理 』2000年 第 4期 で,台 湾 へ の 武 力 行 使 は 米 国 の最 高 度 の 武 力 介 入 を招 く と警 告 。 中 国 の
、基本 的 自治 、安 全 保 障 、国 家 保 全,世 界 大 国 とな る展 望 こそ が 重 要 で,台 湾 問 題 は こ れ らの 問 題 を圧 倒 す る 究 極 の 問 題 で は な い とす る39)。 中 国 国 内 で 最 もセ ン シテ ィブ な 台 湾 解 放 問 題 で さ え 米 国 を め ぐる 中 国 国 際 認 識 は 抑 制 的 か つ 慎 重 で あ る。
中 国 社 会 科 学 院 ア ジ ア太 平 洋 研 究 所 の 唐 世 平 は,『 戦 略 と管 理 』2001年 第4 期 に お い て 「今 の 中 国 は 本 当 の 大 国 で は な い 。 米 国 の 超 大 国 の 地 位 は 当 面 揺 らが な い 。 しか も米 国 は 中 国 に と っ て 重 要 な資 金 ・技 術 の 提 供 国 で あ る 。 中 国 は地 域 的 決 定 勢 力 を 目 ざす べ きだ」 とす る。 さ らに唐 は 「中 国 の 安 全 保 障 戦 略 の 核 心 的 目標 は,中 国 の 改 革 開放 に平 和 で 安 定 した 国 際 的 な安 全 保 障 環 境 を提 供 す る こ と に あ る」40)。した が っ て 「中 国 は全 地 球 規 模 の 経 済 大 国 と
な る 目標 は 明 確 で あ る」 が 「地 理 的 位 置 と戦 略 的 要 求 は 中 国 が 海 洋 軍 事 強 国 とな る こ とが 不 可 能 で あ る こ と を定 め て い る」。 した が っ て 「中 国 は地 域 的 軍 事 強 国 とな る こ とだ け を追 及 す べ きだ」41)。
そ して世 界 的 経 済 大 国 と地 域 的 軍 事 強 国 を 目指 して 「三 〇 年 間 は全 地 球 的 経 済 実 体 を 目 ざ し,安 全 保 障 で は安 定 と平 和 維 持 」 し,「 次 の 二 〇 年 間 で全
地 球 規 模 の 経 済 実 体 化,経 済 ・安 全 保 障 機構 の 中 で 有 力 な発 言 権 を 実 現 」 す べ きだ と主 張 す る42)。
『戦 略 と管 理 』 の 中 国 戦 略 論 争 に も世 界 大 国化 を 目指 しつ つ も米 国 との 直 接 衝 突 は 回 避 し よ う とす る 意 図 は 明 白で あ る 。 こ れ は 「『全 方 位 外 交 』 これ まで の 友 好 国 が 関 係 す る 重 大 な紛 争 に も,中 国 一 国 の経 済 と安 全 保 障 上 の利 益 の た め に,介 入 を極 力 回避 す る冷 徹 な性 格 を備 え て い た 。」 とす る米 国 と
の 紛 争 を 回 避 す る 「軸 光 養 晦 」 路 線 と一 致 す る43)。
③ 対 中包 囲 網 を警 戒 す る 中 国
時 股 弘 は 『戦 略 と管 理 』2002年 第5期 で,「 核 に よ る先 制 予 防攻 撃 に変 更 す る ブ ッ シ ュ 政 権 の 『攻 撃 的 現 実 主 義 路 線 』」44)へ の 警 戒 を呼 び か け る。 さ ら に 印 パ 両 国 の核 保 有 国化,朝 鮮 の核 兵 器 開発 と弾 道 弾 実 験,日 本 の非 核 三 原 則 変 更 の 可 能 性,台 湾 問 題 を あ げ る。 時 は これ に中 国 自 身 の 通 常 兵 器 と核 兵 器 の 増 強 と近 代 化 の 問 題 を取 り上 げ,「 東 ア ジ ア地 域 は21世 紀 は じめ の 世 界 で 発 火 点 と な る 可 能 性 は 否 定 で きず,そ の 危 険 性 は 中東 に比 肩 す る も の だ 。」
と攻 撃 的 な 米 国 の核 戦 略 変 更 と ア ジ ア地 域 の核 拡 散 の危 険 性 を強 調 す る45)。
唐 世 平 も 「2010‑2015年 の 中 国 周 辺 安 全 保 障環 境 一 決 定 要 因 と将 来 展 望 一 」 に お い て 「米 国 のNMD本 格 配 備 で 中 国 な ど 中規 模 の 核 保 有 国 に 対 して核 兵 器 使 用 の 敷 居 が 下 が る だ ろ う」46)と 懸 念 す る。 唐 は米 国 ゼロシ ア ・中 国 ・日 本 ・イ ン ド ・朝 鮮 半 島 ・東 ア ジ ア共 同体 の 発 展 や 戦 略 を検 討 した 上 で,中 国 は 米 国 中 心 主 義 か らバ ラ ンス の とれ た 大 国 間協 力 へ,二 国 間 周 辺 外 交 か ら多 国 間 多 重 周 辺 外 交 へ 向 か うべ きだ と し,目 指 す べ き は 国 際 法 規 と国 際 世 論 形 成 へ の 影 響 力 で あ る と主 張 した47)。
米 国NMD本 格 配 備 に よ る 中 国 戦 略 核 抑 止 力 喪 失 を懸 念 す る 中 国 は,東 ア ジ ア ・南 ア ジ ア地 域 外 交 を軸 に多 国 間 協 調 の 中 に 中 国発 展 の 道 を 目指 して い る よ う に見 え る。
南 アジ アの核 軍備 競争 と中国核 戦 略63
④ 米 中 「新 冷 戦 」 へ の危 惧 と危 険 な核 の 連 鎖 反 応
9.11テ ロ 以 降 米 国 は 南 ア ジ ア ・中央 ア ジ ア へ の 関 与 を深 め て い る 。 中 央 ア ジ アCIS各 国 が 米 国 の ア フ ガ ニ ス タ ン戦 争 へ の 協 力 を受 け入 れ た た め 「上 海 協 力 機 構 」 設 立 な どを通 じて 形 成 して きた 中 国 の 同 地 域 へ の 影 響 力 は低 下 して い る。 同 時 に米 国 は イ ン ドへ の 制 裁 措 置 を解 除,し か も同 国 へ の ロ シ ア や イ ス ラエ ル か らの先 端 兵 ・器購 入 を認 め て い る。 日本 は 「日米 防衛 協 力 の た め の 新 指 針 」 制 定 に続 い て,ア フ ガ ニ ス タ ン復 興 援 助,イ ン ド洋 へ の 米 軍 支 援 艦 隊 の 派 遣 な ど中央 ア ジ ア ・南 ア ジ ア 各 国へ の 進 出 しそ の 影 響 力 を強 め て い る。 また ブ ッ シ ュ 政 権 は台 湾 へ の新 規 の 兵 器 輸 出 を認 め た 。 こ れ らの 一 連 の 対 米 連 携 強 化 策 が 米 国 中 心 の 「対 中封 じ込 め 強化 策 の 一 環 」 で あ る との 印 象 を与 え る の は さ け られ な い だ ろ う。
2002年7月 発 表 の 米 国 防 省 「中 国 の 軍 事 力 年 次 報 告 」 は 中 国 が 米 国 を射 程 内 に収 め る20基 のICBMに 加 え て,2005年 ま で に約30基,2010年 ま で に60基 に 増 加 す る こ と を予 想 して い る。 同 報 告 書 は 米 国 の ミサ イ ル 防衛 配 備 へ の 中 国 の対 抗 措 置 と して,ICBMの 防 衛 網 突 破 能 力 向 上 策,ICBM配 備 数 の さ ら な る増 強,既 存 のCSS4・ICBMのMIRV化 が 予 想 で きる と して い る。 さ らに 宇 宙 開 発 と関 連 技 術 の 獲 得 に よっ て 宇 宙 空 間 か らの偵 察 能 力 ・監 視 能 力,さ
らに 高 度 な ミサ イ ル の 制 御 技 術 獲 得 を予 想 して い る48)。 さ ら に一 部 の研 究 者 は米 国 がNMD配 備 を 開 始 す れ ば,中 国 は米 国NMD構 想 に対 して核 弾 頭 を 10倍 にiさ らに現 在16〜20基 に す ぎ な いICBMを200〜250基 に増 強 す る だ と
う と警 告 して い る49)。
「北 京 に は 中 国 が 脅 威 とみ な す 米 国 の ミサ イ ル 防 衛 の 構 築 に対 して米 国 に そ の代 償 を支 払 わ せ る だ け の 資 力 が あ る か らだ。 北 京 は 自 らの核 戦 力 改 良 計 画 を促 進 す る こ と もで き る し,核 兵 器 と弾 道 ミサ イ ル の拡 散 を防 止 し よ う と す る米 国 の 努 力 に水 を差 す こ と もで きる し,そ の ほ か の 分 野 で 米 国 の 政 策 に 反 対 す る こ と も可 能 で あ る」50)。米 国 の 脅 威 に対 し軍 事 的対 抗 手 段 の 強 化 を 決 意 す れ ば 中 国 は核 戦 力 を大 幅 に増 強 す る可 能性 は高 い 。
中 国 は米 国 に対 して 二 つ の 選 択 肢 を有 して い る。一 つ は 「最 小 限核 抑 止 力 」 を維 持 す る た め に米 国 のNMD配 備 に対 抗 して即 応 性 ・残 存 性 の 高 い 質 的核 戦 力 増 強 と,単 純 にNMDシ ス テ ム を飽 和 させ る量 的核 軍 備 増 強 を実 行 す る