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平成 26 年度修士論文

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平成 26 年度修士論文

群体性ボルボックス目ゴニウムのアクチン発現解析 The expression pattern of the two actin genes

in a colonial volvocales, Gonium pectorale

中央大学 理工学研究科 生命科学専攻 13N9100013I 内藤 達也 指導教員 箕浦 高子

アクチンは細胞骨格の一つであり、細胞の構造的枠組みを作ると同時に細胞運動、細胞内の 物質輸送など、さまざまな細胞内機能を担う、生体にとって極めて重要なタンパク質である。

クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)などを含むボルボックス目には2つのアクチ ンが存在する。1つは高等動植物のアクチンと比べて約90%のアミノ酸配列類似性を持つもの

(以降、単にアクチンと呼ぶ)、もう1つは高等動植物のアクチンと比べて約 64%のアミノ酸 配列類似性しか持たないNAPである(Sugase et al., 1996; Lee et al., 1997; Kato-Minoura et al., 1998)。クラミドモナスの野生株においては通常時にNAPはほとんど発現しておらず、鞭 毛形成時や接合時のみ、アクチンとともに一過的に発現が上昇する。アクチン遺伝子の欠損株 ida5においては、NAPは高発現し、アクチンの機能を部分的に代替する( Kato-Minoura et al., 1998)。たとえば、細胞分裂の際に野生株ではアクチンが赤道面に集まり、分裂溝を形成する が(Harper et al., 1992)、ida5株ではアクチンの代わりにNAPが分裂溝に集積し、野生株と 変わらない速度で細胞分裂を行う。クラミドモナスは接合の際に雄性配偶子からアクチン繊維 束を含む構造である接合管を伸長させる。しかし、ida5株では接合管が形成されず、ida5株の 雄性配偶子と野生株の雌性配偶子との間の接合効率は著しく低い(Kato-Minoura et al., 1997)。

これらのことは、NAPが細胞分裂などの細胞の基本的機能についてはアクチンの代替としては たらくが、接合管の伸長などはNAP単独では担えないことを示唆している。

クラミドモナスと同じボルボックス目に属する群体性の緑藻ゴニウム(Gonium pectorale は、クラミドモナスと同様に同型配偶子の雌雄による接合を行うが、その際に接合管は雌性・

雄性の両方から伸長する。また、胚の成熟過程でインバージョンと呼ばれる細胞の配置移動を 行う。ゴニウムのアクチンおよび NAP 遺伝子は既に同定されているが、それらの機能に関す る研究は全く行われていない(Kato-Minoura et al., 2015)。本研究では、クラミドモナスと細 胞数や接合様式が異なるゴニウムにおいて、これら2つのアクチンの細胞内でのふるまいを調 べることにより、多細胞性緑藻におけるアクチンの役割を明らかにしたいと考えた。そのため に、両者の発現を解析し、NAPの特徴を明らかにすることが本論文の主題である。

ゴニウムの生活環のうち、(1)間期にあたる明期、(2)細胞分裂と、インバージョンを含 む胚発生が進行する暗期、(3)クラミドモナス野生株でNAPが発現する鞭毛再生期における NAPとアクチンの発現を調べた。まず、抗ゴニウムNAP抗体を作成し、既存の抗クラミドモ

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ナスアクチン抗体とともにウエスタンブロットを行った(図 1A、B)。その結果、アクチンは 暗期の細胞と鞭毛再生期の新生鞭毛に発現していることがわかった。一方、NAPはどのステー ジにおいても検出されなかった。次に、アクチンとNAPmRNAの発現レベルを調べるため、

ノザンブロットを行った(図1C)。両者のmRNAを区別するため、3'-UTR領域をプローブと した。アクチン、NAPともに、明期、暗期、鞭毛再生期の全てにおいてmRNAの発現が認め られた。とくに、明期と鞭毛再生初期において強く発現していた。また、鞭毛再生の初期(脱 鞭毛後約20 分)から後期(脱鞭毛後約40分)にかけて両者のmRNA量は減少しており、鞭 毛形成時のこれらのmRNAの発現は一過的であることがわかった。

以上のことから、ゴニウムのアクチンはクラミドモナスと同様に、細胞分裂時や鞭毛再生時 にはたらいていることが示唆された。明期ではアクチン mRNA の強い発現が検出されたもの のタンパク質はほとんど検出されなかった。明期ではアクチンは主に鞭毛に局在しており、そ のために細胞の全タンパク質を用いたウエスタンブロットではアクチンを検出できなかったも のと考えられる。NAPに関しては、ウエスタンブロットではどの時期においても全く検出され なかったが、ノザンブロットでは明期と鞭毛再生初期にとくに強い発現が見られ、暗期におい てもある程度の発現が検出された。また、鞭毛再生初期から後期にかけて発現量が減少したこ とから、このmRNAの発現上昇は一過的であった。従って、NAPについてもクラミドモナス と同様に鞭毛再生期に一過的に発現上昇し、何らかの役割をはたしていると考えられる。今後、

接合時など、NAPの高発現が期待できる他のステージについても検証を行うことにより、ゴニ ウムにおける2種のアクチンの発現様式とその機能についてさらなる知見が得られると期待さ れる。

1 ウエスタンブロット(A、B)、サザンブロット(C)の結果

参照

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