全固体リチウムポリマー電池系での Li
4Ti
5O
12負極の高出力化
平成 22 年度
三重大学大学院 工学研究科
博士前期課程 分子素材工学専攻 エネルギー変換化学講座
勝崎 亘
I
目次
第一章 序論
1-1背景 ・・・2
1-2 電池の種類 ・・・2
1-3リチウムイオン二次電池 ・・・4 1-4リチウムイオン二次電池に求められる特性 ・・・5
1-5 電池の高出力化 ・・・7
1-6 固体電解質 ・・・7
1-7負極材料 ・・・9
1-8本研究の目的 ・・・11
第二章 実験
2-1 走査型電子顕微鏡 (SEM) 観察 ・・・13 2-2 電極材料の同定 ・・・14 2-3 定電流充放電測定 ・・・15 2-3-1 有機溶媒系リチウムイオン二次電池の作製 ・・・15 2-3-2 PEO固体電解質系リチウムイオン二次電池の作製 ・・・17
2-4 Li4Ti5O12と炭素の複合物質の合成 ・・・19
2-4-1 Li4Ti5O12/C (炭素源PVB、PVC)の合成 ・・・19 2-4-2 Li4Ti5O12/C (炭素源PEO)の合成 ・・・20
2-5 TG-DTA 測定 ・・・21
2-6 使用した試薬の製造元 ・・・22
第三章 結果と考察
3-1 粒子サイズによる影響 ・・・24
3-1-1 電極材料Li4Ti5O12のSEM観察 ・・・24
3-1-2 電極材料Li4Ti5O12のXRD測定 ・・・25
3-1-3 定電流充放電測定(有機溶媒系) ・・・27
3-1-4 レート特性(有機溶媒系) ・・・28
3-1-5 定電流充放電測定(PEO固体電解質系) ・・・30
3-1-6レート特性(PEO固体電解質系) ・・・31
II 3-2 炭素複合化 ・・・33
3-2-1 固相法によるLi4Ti5O12/C
(炭素源PVB、PEO、PVC)の合成 ・・・33
3-2-2 Li4Ti5O12/CのSEM観察 ・・・35
3-2-3 Li4Ti5O12/CのTG-DTA測定 ・・・36 3-2-4 Li4Ti5O12/C 定電流充放電測定(PEO固体電解質系) ・・・37 3-2-5 Li4Ti5O12/C レート特性(PEO固体電解質系) ・・・38
3-3 導電補助材による影響 ・・・40 3-3-1 導電補助材のSEM観察 ・・・40
3-3-2 定電流充放電測定(PEO固体電解質系)
導電補助材の種類による比較 ・・・41 3-3-3 レート特性(PEO固体電解質系)
導電補助材の種類による比較 ・・・42
3-3-4 定電流充放電測定(PEO固体電解質系)
異なる導電補助材の混合 ・・・44 3-3-5 レート特性(PEO固体電解質系)
異なる導電補助材の混合 ・・・45
第四章 総括 ・・・47 参考文献 ・・・50
第一章 序論
2 1-1 背景
現代社会では、身の回りに電気で動くたくさんの機器があふれている。それ らの機器は小型化・高機能化し、ますます便利になってきた。これらの小型化、
高機能化を支えてきたのが様々な電池である。
家の中で使われる電池を例に挙げると、テレビのリモコンにはマンガン乾電 池、電話の子機には充電可能なニッケル・カドミウム電池やニッケル水素電池、
コードレスの充電式掃除機にはニッケル・カドミウム電池やニッケル水素電池、
そしてデジタル電子体温計にはボタン型のアルカリ乾電池が用いられている。
このように家の中では、多くの電池が使用されているのである。
さらに近年、携帯電話・ノートパソコン・デジタルカメラなどのモバイル機 器が急速に発展、普及してきた。これらのモバイル機器もすべて電池を電源に 動いている。それらの機器にはニッケル・カドミウム電池やニッケル水素電池 などが使用されていたが、現在は軽量でエネルギー容量が大きなリチウムイオ ン二次電池が主流となっている。また、リチウムイオン二次電池の軽量と高信 頼性を活かして、列車・船舶・航空機などの分野へも展開されていくと予想さ れている。
さらに、昨今の環境・エネルギー問題よりハイブリッド自動車、電気自動車 の研究が盛んに行われている。この場合、電池に要求されるエネルギーが大き くなるため、リチウムイオン二次電池のような高性能の二次電池が求められる。
しかしながら、電池の大型化に伴い更なる電池の安全性の向上が不可欠であり、
リチウムイオン二次電池の研究が活発に行われている。
1-2 電池の種類
一般に電池は4種類に分類される。使い捨ての一次電池、充電により再使用 される二次電池に分けられ、さらに、電池に用いる電解液が水系か非水系かと いう分類もされる。
水系一次電池にはマンガン乾電池、アルカリ乾電池などがある。
非水系一次電池には金属リチウムを負極に用いた金属リチウム一次電池が ある。非水系電池の特徴は、水系電池に比べ起電力が高く、高エネルギー・高 容量であることである。
また二次電池には、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル水素電池等の水系 二次電池があるが、水系電解液を用いる電池の場合、水の電気分解電圧(約 1.2V)以上の起電力を得ることができないため、高容量化ができないという問 題点があった。
そこで提案されたのが非水系二次電池のリチウムイオン二次電池である。以 下に上述した電池の詳しい特徴を挙げる。
3 マンガン乾電池…正極に二酸化マンガン(MnO2)、負極には亜鉛(Zn)、そし
て電解液には塩化アンモニウム(NH4Cl)や塩化亜鉛(ZnCl2)が用いられて いる。公称電圧は1.5Vで、エネルギー容量はアルカリ乾電池の半分だが、
休止させると回復する性質がある。使用温度範囲は-10~55℃で、小電流・
間欠使用に向いている。リモコン、懐中電灯などに用いられている。
アルカリ乾電池…正極に二酸化マンガン(MnO2)、負極には亜鉛(Zn)、そし て電解液には水酸化カリウム(KOH)水溶液が用いられている。公称電圧 は1.5V だが、マンガン乾電池の約 2 倍のエネルギー容量を持っている。
使用温度範囲は-20~60℃で、大電流・連続使用に向いている。携帯ラジ オ、電子辞書などに用いられている。
二酸化マンガンリチウム電池…正極に二酸化マンガン、負極にリチウム(Li)、
そして有機電解液が用いられている。公称電圧は 3V、使用温度範囲は -40~70℃で、大電流用途に向いているが、使用していくにつれて徐々に 電圧がしていくという特性を持つ。一眼レフカメラやデジタルカメラな どに用いられている。
ニッケル・カドミウム電池…正極にはニッケル酸化物(NiOOHなど)、負極 にはカドミウム(Cd)化合物、電解液には主に水酸化カリウム(KOH)水溶 液が用いられている。公称電圧は1.2Vとマンガン、アルカリ乾電池より 低いが、電圧が安定しており、500回以上繰り返し充電して使えることか ら一次電池よりも経済的と言える。この電池には様々なタイプがあり、
用途もそれに応じている。通信機器、非常照明灯、パソコンなどが挙げ られる。
ニッケル水素電池…正極にはオキシ水酸化ニッケル(NiOOH)、負極には 水素吸蔵合金(M)に貯蔵した水素(H2)、電解液には水酸化カリウム(KOH)
などを成分とするアルカリ水溶液が用いられている。公称電圧は 1.2V、
使用温度範囲は-20~60℃である。同じサイズのニッケル・カドミウム電 池に比べ、エネルギー容量が約 2 倍であり、使い終わりまで安定した電 圧を保つ電池である。用途にはデジタルカメラ、携帯電話、また電気自 動車やハイブリッド自動車の電源として用いられている。
リチウムイオン二次電池に関しては以下の項目に詳しく述べる。
4 1-3 リチウムイオン二次電池
リチウムイオン二次電池とは「リチウムイオンを挿入・脱離し得る炭素質材 料を負極活物質として用い、リチウムイオンを挿入・脱離し得るリチウムイオ ン含有金属酸化物を正極活物質として用いた非水系二次電池」と定義されるの が一般的である。広義には、負極として炭素質材料以外のものを用いるものも 含めることがある。
現在のところ、正極にはリチウム複合酸化物のLiCoO2が主として用いられ ており、負極には上で述べたように炭素が用いられ、層間構造の黒鉛質の多い ものが使用されている。
原理は、充電時、正極内のリチウムイオンが脱離し電解液に溶け出し、負極 に挿入され、逆に、放電時は負極内のリチウムイオンが脱離し電解液に溶け、
正極に挿入されるというものである。このリチウムイオンの移動に伴い、電子 の移動が生じ、電池として作動する。以上を反応式にまとめると次のようにな る。
正極 LiCoO2⇔CoO2+Li++e- 負極 C6+ Li++e-⇔LiC6
Fig.1-3-1 Liイオン二次電池モデル図
リチウムイオン二次電池は以下のような特徴をもつ。
① 高いエネルギー密度を有する(150Wh・kg-1)
② 高いセル電圧をもつ(セル当たり約4Vまで)
③ メモリー効果がない
④ 放電電圧の平坦性に優れており、長時間安定した電力が得られる
⑤ 自己放電が小さい
⑥ 機器の使用環境に適した電池タイプや充放電条件を選択すれば 500 回 以上の充放電が可能である
正極 負極
電解質
正極 負極
電解質
5 これらの特徴はリチウムのもつ卑な標準電極電位と小さな電気化学当量に 由来している。しかし、高効率放電特性(大電流が取り出せること)が不十分 であり、サイクル寿命が通常の水系二次電池に务るという短所ももっている。
また、安全性が保障されているとは言えない。それはリチウムデンドライトに よるものである。
リチウムデンドライトとは、充放電時、活物 質の一部にリチウムイオンの挿入・脱離が偏 ることで、リチウムイオンがイオンの状態で いられずリチウム金属が析出したものであ る。充放電を繰り返すことで表面が凹凸にな り、Fig.1-3-2のようにセパレータを突き破 り正極に達し、短絡する。これは、リチウム 金属を負極に用いた場合の問題点としてと
りあげられているが、イオンの移動速度が Fig.1-3-2デンドライトの発生 速い高速充放電の際など、他の負極物質を用
いた時も起こり得る現象であり、電池の安全性・信頼性に関わる問題である。
この問題を防ぐため様々な研究が行われているが、その中に固体電解質を用い る研究もある。
1-4 リチウムイオン二次電池に求められる特性
①高いエネルギー密度
電池性能の重要な尺度の一つとしてエネルギー密度という数値が使 われる。電池の持つエネルギー(放電容量(Ah)と電池電圧(V)を掛けた値.
単位はWh)を電池重量または電池体積で割った数字で示し、前者を重 量エネルギー密度、後者を体積エネルギー密度と呼ぶ。通常、それぞ れの値を重量1kg、体積1dm3当たりの数値に換算し、Wh/kg、Wh/dm3 で表している。同じエネルギー(Wh)を有する電池を比較すると、体積 エネルギー密度が大きい電池ほど小型化でき、重量エネルギー密度が 大きければ軽い電池となる。
セパレータ
正極 負極
ショート発生
セパレータ
正極 負極
ショート発生
6 ②安全性が優れている
リチウム電池は負極に金属リチウムを用いた場合、デンドライトによ ってショートする危険性がある。現在では、主に正極側にコバルト酸リ チウム、負極側に炭素材料を用いているが、電解質には可燃性の有機溶 媒が用いられている。この有機溶媒を原因とした電池の不良、発火等の 問題の解決は早急な課題である。このようにリチウム二次電池の高容量 化・高エネルギー密度化が進められるにあたって、現在のシステムのま までは安全性や信頼性に大きな不安を抱えている。そのため、より安全 性に優れた電解質材料が求められている。この問題の改善策として、全 固体電池の研究がなされている。
③温度特性が良い
できるだけ広い温度範囲にわたって、エネルギー密度や出力特性の 変動が尐ないことが望ましい
④寿命が長い
何度も充電できて長い期間使えるサイクル寿命が長い二次電池はど んな用途にも望ましい。また、高い充電状態で置くと务化が進む二次 電池が多いが、充電状態で長時間保存する保存寿命も重要である。
⑤出力特性(負荷特性)が良い
小さい電池で大きなパワーが得られる電池の需要もある。一般に電 池の放電では、電流を上げると電圧が下がる傾向がある。高い出力を取 り出しても電池の電圧があまり下がらないことが望ましい。逆に充電す ることを考えると、実用の点から言えば短時間で充電できることが望ま しい。すなわち、充電受入能が高いことが望まれる。
7 1-5 電池の高出力化
プラグインハイブリッド自動車や電気自動車などの車載用電源としての Li イオン二次電池の研究が盛んに行われている。その中で、車載用電源として高 出力な二次電池の開発と導入が緊急の課題となっている。
高出力性能を向上させるためには電池反応全体を高速化する必要があり、利 律速反応の高速化や、Li イオン拡散パスの短縮、電解質のイオン伝導性の向 上、電解質と電極活物質間での反応面積の増加などを目指す必要がある。
また電極合剤の設計も重要である。電極活物質の微粒子化は Li イオン拡散 パスを短縮し、また比表面積を増加するため有用な方法であるが、加えて粒子 間の接触抵抗を低減させ、効率よく導電補助材を加える必要がある。
高出力化への課題を以下に示す。
①電解質のイオン伝導性の向上
②電極合剤の電子伝導性の向上
③活物質の微粒子化
④電池反応の高速化
1-6 固体電解質
現在、リチウムイオン二次電池の電解質には、エチレンカーボネイト(EC) 系の有機溶媒にリチウム塩(LiPF6)を溶解させた有機電解液が用いられている。
しかし、可燃性有機溶媒を使うことで問題点が生じている。それは安全性の低 さである。事故や誤作動により電極間のショートや過充電が起きると、発火や 爆発の可能性があることも指摘されている。電気自動車用の電源など、電池の 大型化を考えた時、特に切り離せない問題になる。
この問題を解決する方法として、固体電解質を用いることが挙げられる。固 体電解質には、酸化物や硫化物系ガラスに代表される無機固体電解質、及び有 機固体電解質がある。無機固体電解質は有機電解液を用いるリチウムイオン二 次電池よりも飛躍的に安全性が向上するため注目を集めている一方で、欠点も ある。窒化物 Li3N は室温で 10-3Scm-1という高いイオン伝導性を示すが、分
解電圧が0.44Vと低く、リチウム電池の特長である電圧の高さを生かせない。
また酸化物は室温ではイオン伝導率が低く、硫化物系ガラスは室温にて 10-3Scm-1 と高いが、極めて吸湿性が高いことと、薄膜化が難しいことが欠点 である。
8 有機固体電解質は、一般にポリマー電解質と呼ばれている。ポリマー電解質 はイオン伝導率が有機電解液に比べて务るが、薄膜化による電解質抵抗の低 減や柔軟性のある電池が期待できる。ルイス塩基性の高い酸素のような元素 を含むポリマーに金属イオンが配位して塩を解離させることができ、解離し て生成したイオンはポリマーのセグメントの動きによってポリマー中を移動 することができる。しかし、ポリマー鎖の結晶領域ではセグメント運動が抑制 され導電性を著しく低下させる。そのため、ポリマー鎖の結晶性を抑制させイ オン伝導性を改良する研究が行われており、ポリマー電解質の開発が進展す ることが期待されている。
Fig.1-6 ポリマー中でのリチウムイオン伝導機構
ポリマー電解質の利点を以下に記す。
① 大面積の薄膜を比較的容易に作成できる
②体積変化を起こす活物質に対して適合性が高く、安定した界面を形成 する
③電解質の蒸気圧がなくなるので電池の外装が簡単になる
④非常に薄型で形状自由度の高い電池の実現が可能となる
⑤大型・大出力電池の設計が可能である
9 1-7負極材料
現在市販されているリチウムイオン二次電池に用いられている炭素負極の 他にも、リチウム金属負極、リチウム合金負極、そして酸化物負極など実に様々 な材料があり、研究が行われている。各々に関して特徴を述べる。
炭素材料…炭素には典型的にはsp3炭素からなるダイヤモンドと、sp2炭素 からなる黒鉛の 2 種があるが、負極材料として用いられるのは黒鉛ある いはその類似体である。リチウム金属と比較して比容量(黒鉛372mAh・
g-1)は务るものの、リチウム金属に匹敵する卑な電位(0.07~0.23V vs. Li+ /Li)で充放電が進行し、優れたサイクル特性を示す。
しかし、初回の充放電サイクルでは充電電気量に不可逆容量と呼ばれ る、放電時に取り出せない容量が含まれる。これは Solid Electrolyte
Interface(SEI : 固体電解質界面)と呼ばれる不動態皮膜が関与している。
SEI膜は初回充電時1V付近の電位領域での電解液の還元分解により生成 する。不可逆容量は、初回充電時に費やした電気量の一部がこの還元分 解に費やされるため生じているのである。
リチウム金属負極…容量が最も大きく(3861 mAh・g-1)、充放電電位が低い (-3.045V vs. SHE)ので、電池の負極として実用化が最も期待される材料 である。しかし問題点が2点挙げられる。
① 充放電のクーロン効率が低く、十分なサイクル特性が得られない
② 充放電時にデンドライトが生成し、電池の安全性が低い
サイクル特性と安全性の向上には表面皮膜の形態・性質を制御、改質 することが重要であるが、実用化にはまだ至っていない。
リチウム合金負極…合金化、脱合金化反応により充放電反応を行う負極で ある。例として Si が挙げられる。Li4.4Si の合金組成まで Li が挿入され る。重量比容量は黒鉛に比べ大きく、電池の小型化に重要な体積比容量 はリチウム金属の2062 mAh・cm-3に匹敵し、魅力的な負極材料である。
しかし問題点もある。1V以下の電位領域で充放電反応が進行するため 炭素負極と同様、SEI 膜が形成される。また、リチウムの挿入・脱離の 際の体積変化による微粉化によりサイクル特性が悪い。解決策として Si の微粉化を抑えるために炭素材料との複合化が行われている。
10 酸化物負極…ホストとなる金属酸化物の結晶構造中にリチウムイオンが挿
入・脱離することで充放電反応を行う負極材料である。
このタイプの材料としてチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)が挙げられる。高 容量は期待できないがサイクル特性が良い。充放電電位は1.55V(vs. Li+ /Li)であり、負極としては高い値であるが、この電位で作動する負極を用 いると、充放電時に SEI 膜を形成しないので安全性と寿命を飛躍的に向 上させる可能性を持っている。このことから、ハイブリッド自動車用や 電力貯蔵などの大型二次電池の用途にも適している。
また結晶構造の特徴として、リチウムイオンの挿入・脱離の際、ほと んど膨張・収縮が起こらない。そのため極めて良好なサイクル特性を示 すという利点がある。以下にリチウムイオン挿入・脱離時の反応式を示 す。
Li4Ti5O12+3Li++3e-⇌Li7Ti5O12
Li4Ti5O12の理論容量は175 mAh・g-1である。容量は単位重量あたり 取り出せる電気量をさし、反応式より算出できる。算出方法を示す。
Li4Ti5O12 1mol 当たり 3mol の電子が反応するため反応に使われる電 気量はLi4Ti5O12 の重量あたり3×96500/459.1 =630.6 ( C /g)である。こ こで C は 1 秒間に 1 アンペアの電流によって運ばれる電気量(C=A・s) であるから単位変換すると630.6 ( C /g)×1000/3600=175(mAh/g)と なる。
尚、Li4Ti5O12の分子量459.1g/mol ファラデー定数 96500C/molである。
11 1-8本研究の目的
現在リチウムイオン二次電池は、様々な電子機器に用いられて電源として必 要不可欠なものとなっている。今後は大型化や自動車用電力源への利用が期待 されており、更なる安全性の向上が課題である。この課題の解決法の一つとし て電解質を固体化する研究が行われている。リチウムイオン二次電池の製品化 と需要の高まりの中で、耐熱性や耐漏液性の良好なポリマー電解質を用いた全 固体電池に対する期待は大きく、実用化への期待が高くなってきている。
また更なる安全性の向上のためには電極材料も検討する必要がある。現在リ チウムイオン二次電池負極材料には主に黒鉛系材料が使用されているが、熱的 に安定ではなく、また急速充放電の際、材料表面に Li デンドライトが析出す る恐れがある。そこで本研究の対象として、負極材料チタン酸リチウム (Li4Ti5O12)を選択した。この材料の特徴として次のことが上げられる。
・ リチウムイオン挿入・脱離の際、ほとんど膨張・収縮が起きないので サイクル特性がよく、長寿命である
・ 平坦な電位であるプラトー部分が広い
・ 充放電電位が高いため(1.55V vs. Li+ /Li)、SEI膜を形成せず、またデ ンドライトも発生しにくい
・
しかし、Li4Ti5O12は作動電位が 1.55V と既存材料である黒鉛系材料に比べ 貴な電位を示し出力の観点では不利となるため、出力性能の改善が必要である。
そこで本研究では固体高分子のポリエチレンオキサイド(PEO)電解質系で の Li4Ti5O12負極の高出力化を目指し、様々な方法で出力性能の高い電極設計 の構築をおこなった。以下に方法を示す。
①Li4Ti5O12粒子サイズが及ぼす影響
粒子サイズが小さくなることで粒子内での Li イオン移動がしやすくなる と考えた。
②Li4Ti5O12への炭素複合化
炭素複合化による電子伝導性の付加により Li4Ti5O12の欠点である低い電 子伝導性を補えると考えた。
③導電補助材による影響
電極内の均質な導電ネットワークを形成することで低い電子伝導性を解 消できると考えた。
第二章 実験
13 2-1 走査型電子顕微鏡 (SEM) 観察
合成した試料の形状、サイズの観察を走査型電子顕微鏡(Scanning E1ectron Microscope, SEM) [(株)日立製作所製S-4800]を用いて行った。SEMの基本構
造をFig.2.5に示す。電子銃から放出された電子線はレンズにより絞られ、走
査コイルによって試料表面上を走査する。走査で生成した反射電子を電子検出 器で受け、電子信号によってCRT上に像を映し出す。
SEM 観察の試料の作製法を述べる。試料をカーボンテープで試料台に固定 し、試料表面の電子導電性を良くするためネオオスミウムコーター(メイワフ ォーシス株式会社)を用いて表面にオスミウムを蒸着させた。これは、20kV程 度の加速電圧を加えて試料を観察するとき試料表面に導電性が必要であり、絶 縁体をそのまま観察すると試料表面上に電荷が蓄積されて異常なコントラス トを示す現象(チャージアップ)を避けるためである。そのため、試料表面への コーティング材料としては蒸着しやすく二次電子の放電効率の良いオスミウ ムを用いた。
Fig.2-1 SEMの原理図
Fig.3-3-1 走査電子顕微鏡(SEM)の基本構成図 Fig.3-3-1 走査電子顕微鏡(SEM)の基本構成図
ビームデフレクター
収束レンズ
アステグメーター 収束絞り
ビームデフレクター
走査コイル
空心フォーカスコイル
対物絞り 対物レンズ X線
反射電子
二次電子線
試料 ミラー 補助偏向コイル
電子銃
14 2-2 電極材料の同定
X線回折法は、物質を構成している原子の種類とその配列の状態を解明する 手段として非常に有用な方法であり、本研究においても合成した試料の同定を 行うためにX線回折測定を行った。
基本構造をFig.2.2 に示す。X線源から放出されたX線は、平行スリットと 散乱スリットを通って、垂直散乱と平行散乱を制御されて試料にあたる。そし て、試料からの回折X線は受光側スリットである受光スリットRS、平行スリ ット、散乱スリットを通り計数管に到達する。
本研究での試料の同定は、理学電気(株)の「ロータフレックスRU-200B」 回転対陰極X線装置(最大出力12kW、60kV-200mA)を使用して行った。X 線源には、湾曲結晶モノクロメーターにより単色化したCuKα線を使用した。
管電圧 40kV、管電流 150mA で作動させ、2θ=10°~100°の範囲にてスキ ャンスピード 2°/min、サンプリング幅 0.02°連続スキャンにて行った。測 定した回折強度のデータは(株)リガク製RINT-2000システムによりピークサ ーチ等のデータ処理を行った。
Fig.2-2 X線回折測定システム
X線管球
DS RS
θ1 2θ1
R'
r 試料
c
カウンタ
θ2 2θ2
RSM
第一次回折線
θ1 :試料の回転角 θ2 :結晶の回転角
R' :第一次フォーカスサークルの半径 r :第二次フォーカスサークルの半径
DS :ゴニオメータ ダイバージェント スリット RS :ゴニオメータ レシービング スリット RSM :モノクロメータ レシービング スリット
C :湾曲単結晶(単結晶グラファイト)
15 2-3 定電流充放電測定
2-3-1 有機溶媒系リチウムイオン二次電池の作製
合成した試料を活物質とする電極を作製し、各構成材料を組み合わせ、コイ ンタイプ型セル CR2025 を作製し、電池特性を検討した。各構成材料を Fig.2-3-1に示す。
Fig.2-3-1 コインタイプ型セルの構造
構成材料ごとに詳しく述べる。
正極…活物質Li4Ti5O12、導電補助材アセチレンブラック(AB)、分散媒N- メチルピロリドン(NMP)に溶かした結着剤ポリビニリデンジフルオライ ド(PVDF)をLi4Ti5O12 : AB : PVDF /NMP(10wt%) = 68:17:15(wt 比)で混合し、スラリーを作製した。本実験ではLi4Ti5O120.3g、AB0.075g 、 PVDF /NMP(10wt%)0.6617g、NMP0.7g用いた。次に、ミキサー「あ わとり錬太郎」を用いて攪拌を10分、脱泡を2分行った。そして、スラ リーを銅箔(厚さ20μm)にHohsen製の塗工機を用いて塗布し1.0×
1.0cmに切り、塗布電極とし、110℃、1-3h減圧乾燥させたものを用い
た。
ニッケル多孔体…厚さ1.64mmのものを用いて集電体として使用し、内圧 により電極材料を電極缶に圧着させる役割を担う。
正極缶
ニッケル多孔体(直径1.5cm)
セパレーター(薄)(直径1.6cm) セパレーター(厚)(直径1.6cm) Liシート(直径1.5cm)
負極缶+ガスケット 電極(1.0×1.0cm)
16 セパレーター…厚さ0.23mmのポリプロピレン製不織布厚いセパレーター
と、ポリプラスチック社製「ジュラガード」#2500(厚さ25μm,空孔率 45%)の薄いセパレーターを本実験におけるセパレーターとして使用した。
薄いセパレーターを使用する目的は正極材料が電解質側に流出するのを 防止し、過剰な電流が流れた場合のJoule熱もしくは反応熱で融解しセ パレーター自身の微孔を塞ぐ事でそれ以上電流が流れるのを防ぐ事であ る。
ガスケット…正極缶・負極缶どうしの接触を防ぐために用いた。
電解液…負極に用いるリチウム金属は、激しく水と反応するため過塩素酸 リチウム(LiClO4)などの無機電解質を溶解した非プロトン性有機溶媒 が用いられる。高誘電率溶媒は、誘電率は高いが粘度が高いためにリチ ウムイオンが動きにくく、また低粘度溶媒は、誘電率は低いが粘度が低 い。一般的には高誘電率溶媒と低粘度溶媒との混合溶媒が使用される。
よって高誘電率、高粘度であるエチレンカーボネート(EC)と低誘電率、
低粘度である 1,2-ジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒に過塩素酸リ チウムを溶解させた1M- LiClO4/ EC- DECを使用した。
負極…直径1.5cmのリチウム金属(厚さ20μm)を負極とした。
電池の作製法は、アルゴンドライボックス内で負極缶にガスケットをはめ、
負極、セパレーター(ポリプロピレン製不織布、ジュラガードの順)、正極、
ニッケル多孔体の順に重ね、缶内を電解液で充分満たし、各々に電解液を染み 込ませてから正極缶で蓋をし、(株)宝泉製プレス成型器CR2025にてセルの カシメを行った。
本研究ではナガノBTS2004Hを用いて定電流充放電測定を行った。
17
2-3-2 PEO固体電解質系リチウムイオン二次電池の作製
従来の有機電解液を用いたリチウム電池系においては、正極および負極は活 物質、導電剤、結着剤を混練したものが用いられてきた。これらの正極及び負 極合剤の空隙にはセパレーターより電解液が浸透し、合剤内のイオン輸送を担 っており、すべての活物質が電解液と接触している。これに対し、ポリマー電 解質を正極あるいは負極と接触させた場合には、有機溶媒分子の正極、負極へ の移動はおこらない。このため正極、負極は活物質、導電剤、結着剤に加えて イオン導電体を混ぜて作成する必要がある。本実験ではLi4Ti5O12を正極活物 質に用いた電極で実験を行い、ポリエチレンオキサイド(PEO)とイミド塩
LiTFSI(LiN(SO2CF3)2)を混ぜたものを電解質及びイオン導電体として用いた。
本実験では電極として扱い易い塗布電極で電池特性の検討を行った。
次に電極、電解質PEOの作製法を述べる。
電 極 … ア ル ゴ ン ド ラ イ ボ ッ ク ス 内 で PEO (Mn=600,000)と イ ミ ド 塩 (LiTFSI)をPEO: LiTFSI=18:1(mol比)で混ぜ、ここにLi4Ti5O12と導電 剤を加え、分散媒質アセトニトリルに溶かし、ミキサー「あわとり錬太 郎」を用いて攪拌を20分、脱泡を3分行った。
その後、スラリーを銅箔に Hohsen 製の塗工機を用いて塗布し 1.5×
1.5cmに切り、塗布電極とし、110℃、12h減圧乾燥させたものを用いた。
尚、Li4Ti5O12 : 導電剤: ( PEO+LiTFSI)=53:13:33 (wt比) となるように 混合した。本実験では Li4Ti5O120.3g、導電材 0.075g、PEO0.1377g、
LiTFSI0.0498g、アセトニトリル約1.7g用いた。
また、導電材にはアセチレンブラック(AB)、気相成長法炭素繊維 (VGCF)、カーボンナノファイバー(CNF)を用いた。
電 解 質 PEO… ア ルゴ ン ド ラ イ ボ ッ ク ス 内 で 、PEO(Mn=600,000)と LiTFSI をPEO: LiTFSI=18:1(mol 比)で混ぜ、分散媒質アセトニトリ ル中でスターラーを用いて6h攪拌した。尚、本実験ではPEO1.38g、
LiTFSI0.5g、アセトニトリル 40ml を用いた。その後溶液 5ml を 2.5
×2.5cm の型内のポリプロピレン製メッシュに染み込ませアセトニト リルを揮発させ、110℃、12h減圧乾燥させたものを用いた。
18 電池の作製法はあらかじめ銅箔(厚さ20μm)、アルミ箔(厚さ20μm)を1cm 幅に切り、6×3cmのPPラミネートフィルムにイミドテープで貼り付けたも のを用意しておき、それをアルゴンドライボックス内で電極、1.5×1.5cm の 金属Li、それよりも大きな電解質PEOとFig.2-3-2のように組立て、6×6cm のAlラミネートフィルムで覆い、富士インパルス製ポリシーラーPC200にて シールした。
本研究ではナガノBTS2004Wを用いて定電流充放電測定を行った。
Fig.2-3-2 ラミネートセルの構造 PPラミネート
フィルム 銅箔
Al 箔 電 極
Li 箔 電解質
PEO
(1:18)
PPラミネート
フィルム 銅箔
Al 箔 電 極
Li 箔 電解質
PEO
(1:18) Alラミネート フィルム Alラミネート
フィルム
19 2-4 Li4Ti5O12と炭素の複合物質の合成
Li4Ti5O12/炭素複合体の合成について、加える熱分解炭素としてPVB(ポリビ ニルブチラール)、PVC (ポリビニルクロライド)、PEO (ポリエチレンオキサイ ド)の三種類の比較検討を行った。
2-4-1 Li4Ti5O12/C (炭素源PVB、PVC)の合成
Li4Ti5O12/C (PVB、PVC)の合成手順フローチャートをFig.2-4-1に示す。
出発物質Li4Ti5O12と炭素源(PVB、PVC)を55:45(wt%)の比で秤量し、ミキ サー「あわとり錬太郎」専用容器に入れ、分散媒テトラヒドロフラン(THF) を粉末が浸るほど入れ、ミキサーにて回転数 2000rpm 、時間 15 分という 条件で攪拌・脱泡処理を行った。その後テフロン製シャーレに注ぎ入れ、排 気装置の中でTHF を飛ばすため乾燥させた。乾燥したシート状の混合物を チップ状に小さく切り、アルミナボートに乗せ、管状炉にて N2ガス雰囲気 で焼成した。条件としてガス流量120ml/minで30分管内の空気を置換した。
その後、流量80ml/minにて5℃/minの昇温速度で室温から650℃まで昇温 し、650℃を3時間保った後、降温速度5℃/minで室温まで降温し、複合物 質を得た。
Fig.2-4-1 Li4Ti5O12/C (PVB、PVC)の合成フローチャート
2 h 3h
650
Temperature (℃) r.t.
Time
5 h Li4Ti5O12
THF中で攪拌・脱泡
乾燥
焼成(N2雰囲気)
Li4Ti5O12/C
炭素源
(PVB、PVC)
20 2-4-2 Li4Ti5O12/C (炭素源PEO)の合成
Li4Ti5O12/C (PEO)の合成手順フローチャートをFig.2-4-2に示す。出発物 質Li4Ti5O12と炭素源(PEO)を55:45(wt%)の比で秤量し、分散媒アセトニト リルを粉末が浸るほど入れ、マグネティックスターラーにて回転数500rpm 、 時間 30 分という条件で攪拌を行った。その後テフロン製シャーレに注ぎ入 れ、排気装置の中でアセトニトリルを飛ばすため乾燥させた。乾燥したシー ト状の混合物をチップ状に小さく切り、アルミナボートに乗せ、管状炉にて N2ガス雰囲気で焼成した。条件としてガス流量 120ml/min で 30 分管内の 空気を置換した。その後、流量80ml/minにて5℃/minの昇温速度で室温か
ら650℃まで昇温し、650℃を3時間保った後、降温速度5℃/minで室温ま
で降温し、複合物質を得た。
Fig.2-4-2 Li4Ti5O12/C (PEO)の合成フローチャート
Li4Ti5O12
アセトニトリル中で攪拌
乾燥
焼成(N2雰囲気)
Li4Ti5O12/C
炭素源
(PEO)
2 h 3h
650
Temperature (℃) r.t.
Time
5 h
21 2-5 TG-DTA 測定
本研究では炭素複合化物質の炭素含有量を確認するため、差動型示差熱天秤 [(株)理学製 TG8120 ]を用いて行った。
この装置では試料を一定速度で加熱しながらその重量を連続的に測定する ことで得られる重量変化と温度の曲線(TG曲線)、また試料が物理的変化ある いは化学的変化を起こす時に試料内に発生する熱変化を試料と基準物質との 温度差の形で検出する示差熱分析(DTA)から情報が得られる。
以下のような情報が挙げられる。
①脱水、結晶水の測定
②試料ならびに分解段階における化合物の解析
③それらの化合物の安定範囲
④重量分析の秤量系としての適、不適
⑤融点、沸点の決定
⑥混合物の定量
この装置では、それぞれをトーションバンドで中央支点を支えられたサンプ ル側天秤ビームとリファレンス側ビームより構成された天秤系を用いている。
各々の天秤ビームに固定された試料ホルダを、同一電気炉内に設置し加熱する と双方に同じ大きさの浮力・対流などの力が働く。この力は駆動コイルと駆動 コイルにより互いに相殺され、重量変化として検出されない。この動作により TGのベースラインは安定する。
測定中に測定試料が重量変化を起こすと、サンプル側天秤ビームのみが傾き、
これに取り付けられたシャッタが移動する。このシャッタの移動を位置センサ により検出し、駆動コイルの電流を変化させ、シャッタが元の位置へ戻るよう に制御する。この制御電流変化を重量変化として計測する。
以上が装置の原理である。尚、試料ホルダには測定温度範囲内で化学的安定 性及び温度安定性のあるアルミナ(α-Al2O3)ホルダを使用し、基準試料にはα -Al2O3粉末を用いた。測定は空気雰囲気中で行い、昇温速度7 K/min で室温
から1000℃まで行った。協和ガス株式会社の空気ガスを用いた。
22 2-6 使用した試薬の製造元
・チタン酸リチウム(Li4Ti5O12) 石原産業(株)
・N-メチルピロリドン(NMP) ナカライテスク(株)
・ポリビニリデンジフルオライド(PVDF) KYNAR
・1M- LiClO4/ EC- DEC キシダ化学(株)
・ポリエチレンオキサイド(PEO) (Mn=600,000) ALDRICH
・イミド塩 LiTFSI(LiN(SO2CF3)2) 和光純薬工業(株)
・気相成長法炭素繊維(VGCF) 昭和電工(株)
・カーボンナノファイバー(CNF) 三菱マテリアル電子化成(株)
・アセトニトリル ナカライテスク(株)
・ポリビニルブチラール(PVB) ALDRICH
・ポリビニルクロライド(PVC) ALDRICH
・ポリエチレンオキサイド(PEO)(Mn=1,000,000) ALDRICH
・テトラヒドロフラン(THF) ナカライテスク(株)
第三章 結果と考察
24 3-1 粒子サイズによる影響
3-1-1 電極材料Li4Ti5O12のSEM観察
粒子サイズの異なる 3 サンプルを用いて、粒子サイズ・形状を確認するため SEM 観察を行った。一次粒子が凝集したものが二次粒子であるが、Fig.3-1-1 の結果より、サンプル 1 は二次粒子 17μm、一次粒子 500nm であり、サンプ ル2は二次粒子7μm、一次粒子300nmほどである。サンプル3は、他のサン プルに比べ、二次粒子サイズに大きくばらつきがある。3-4μm程の粒子が多い が、中には 18μm 程の粒子があることが確認される。また一次粒子は 150nm であることが分かる。
サンプル1
サンプル2
サンプル3
Fig.3-1-1 Li4Ti5O12粒子のSEM画像
25 3-1-2電極材料Li4Ti5O12のXRD測定
粒子サイズの異なるX線回折測定の結果をFig.3-1-2(a)に示す。赤の線で示し たものがデータベースにより得られたLi4Ti5O12のスペクトルである。それぞれ を比較すると得られたピークは赤で示したLi4Ti5O12のピーク位置と強度比が同 様なピークを示している。また格子定数はサンプル1が8.359Å、サンプル2が
8.358Å、サンプル 3 が 8.360Åであり文献値 8.364Åと同等な値である。
Fig.3-1-2(b)より他のサンプルに比べサンプル3は回折線の幅が広いことが確認
できるが、粒子の結晶サイズが小さいとこのような現象が起きる。この結果か
らFig.3-1-1 のSEM 画像だけでなく、XRD からもサンプル 3 の粒子サイズが
小さいと言える。
Fig.3-1-2(a) Li4Ti5O12粒子のXRDスペクトル
Intensity
80 75 70 65 60 55 50 45 40 35 30 25 20 15
10 2
サンプル2 サンプル1
サンプル3
ref
26 Fig.3-1-2(b) Li4Ti5O12粒子のXRDスペクトル(θ=73-77°の拡大図)
Intensity
77.0 76.5
76.0 75.5
75.0 74.5
74.0 73.5
73.0 2
サンプル2 サンプル1
サンプル3
ref