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博士学位論文 要約

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博士学位論文 要約

パズル課題と動画に対する子どもたちの行動

―日本,中国,韓国の子どもたちの違い―

Children’s behaviors when solving puzzles and watching videos

―Differences among Japanese, Chinese and Korean children―

聖心女子大学大学院文学研究科 人間科学専攻・博士後期課程

2020 年 3 月 Jiahui Fu

(指導教員 川上清文)

(2)

目次

第1章 問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・1 1.1 西洋と東洋 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・1 1.2 子どもを対象にした研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1.3 大人を対象にした研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 1.4 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・13

第2章 研究の構成と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16

第3章 パズル課題における日中の子ども たちの行動「研究1」・・・・・・・・

17

3.1 要約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・17 3.2 予備実験 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・17

3.2.1 実験方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・17

3.2.2 実験の設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18

3.2.3 研究倫理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18

3.2.4 3歳女児・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18

3.2.4.1 手続き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18

3.2.4.2 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19

3.2.5 2歳女児・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

3.2.5.1 手続き・結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20

3.2.6 考察・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・20

3.3 本実験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

(3)

3.3.1 目的・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・22

3.3.2 方法・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・23

3.3.2.1 実験参加者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23

3.3.2.2 装置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25

3.3.2.3 手続き・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・25

3.3.2.4 分析方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26

3.3.2.4.1 カテゴリーの作成・・・・・・・・・・・・・・・・・26

3.3.2.4.2 コーディングの仕方・・・・・・・・・・・・・・・・28

3.3.2.4.3 信頼性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29

3.3.2.5 研究倫理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29

3.3.3 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29

3.3.3.1 全体の行動の相違・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29

3.3.3.2 二つ目のパズル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31

3.3.3.2.1 カテゴリーの比較・・・・・・・・・・・・・・・・・31

3.3.3.2.2 各項目の比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32

3.3.3.2.3 上下 2 パーツで表情を詳しく分析した結果・・・・・・34

3.3.3.3 3つのパズルを始めた時の行動の比較・・・・・・・・・・ 36

3.3.3.4 パズルが終わった時の行動の比較 ・・・・・・・・・・・・37

3.3.3.5 3つのパズルの難易度についての回答・・・・・・・・・・ 39

3.3.3.6 発話の内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・40

3.3.4 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・44

3.3.4.1 全体の行動の違いについて ・・・・・・・・・・・・・・・45

3.3.4.2 難しいパズルにおいて・・・・・・・・・・・・・・・・・45

(4)

3.3.4.2.1 独り言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46

3.3.4.2.2 自ら助けを求める・・・・・・・・・・・・・・・・・46

3.3.4.3 表情について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47

3.3.4.4 易―難―易の順番 ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・48

3.3.4.5 課題が終わった時の行動・・・・・・・・・・・・・・ ・・48

3.3.4.6 課題の難易度についての回答 ・・・・・・・・・・・・・・49

3.3.4.7 発話の内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50

3.3.4.8 性差について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51

3.4 課題と展望・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・52

第4章 パズル課題における韓国の子どもの行動「研究 2」・・・・・・・・53

4.1 要約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・53

4.2 目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・53

4.3 方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・54

4.3.1 実験参加者・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・54

4.3.2 装置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・55

4.3.3 手続き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・55

4.3.3.1 4歳児・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・55

4.3.3.2 3歳児・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・56

4.3.4 分析方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・56

4.3.4.1 カテゴリの作成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・56

4.3.4.2 コーディングの仕方・・・・・・・・・・・・・・・・・・57

4.3.4.3 信頼性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・58

(5)

4.3.5 研究倫理 ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・58

4.4 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・58

4.4.1 全体の行動の相違 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・58

4.4.2 パズル 2について ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・59

4.4.2.1 カテゴリーの比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・59

4.4.2.2 各項目の比較 ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・59

4.4.3 パズル 1とパズル 3 を完成した時間の比較・・・・・・・・・・60

4.4.4 3つのパズルを始めた時の行動の比較・・・・・・・・・・・・・60

4.4.5 パズルが終わった時の行動の比較 ・・・・・・・・・・・・・・61

4.4.6 3つのパズルの難易度についての回答 ・・・・・・・・・・・・61

4.4.7 3ヶ国の子どもたちのデータの比較・・・・・・・・・・・・・ 62

4.5 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・63

4.5.1 全体の行動の違いについて ・・・・・・・・・・・・・・・・64

4.5.2 難しいパズルにおいて・・・・・・・・・・・・・・・・・・64

4.5.3 パズル 1 とパズル3 を完成した時間の比較・・・・・・・・・64

4.5.4 3つのパズルを始めた時の行動の比較・・・・・・・・・・・ 65

4.5.5 課題が終わった時の行動・・・・・・・・・・・・・・・・・65

4.5.6 課題の難易度についての回答 ・・・・・・・・・・・・・・・65

4.5.7 3ヶ国の子どもたちのデータの比較 ・・・・・・・・・・・・66

4.6 追加実験 ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・67

4.6.1 問題・目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67

4.6.2 方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67

4.6.2.1 実験者・実験協力者・場所 ・・・・・・・・・・・・・・・・67

(6)

4.6.2.2 手続き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67

4.6.2.3研究倫理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67

4.6.3 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・68

4.6.3.1 3つのパズルにおいて,全体の比較・・・・・・・・・・・ 68

4.6.3.2 二つ目のパズルにおいて,カテゴリーの比較 ・・・・・・・68

4.6.3.3 二つ目のパズルにおいて,各項目の比較 ・・・・・・・・・68

4.6.3.4 3つのパズルを始めた時の行動・・・・・・・・・・・・・ 68

4.6.3.5 3つのパズルの難易度についての回答・・・・・・・・・・ 68

4.6.4 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・69

第5章 動画鑑賞における日本,中国,韓国の幼児の行動の比較「研究3」・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70

5.1 目的・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・70

5.2 方法・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・71

5.2.1 実験参加者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71

5.2.2 手続き ・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・71

5.2.2.1 装置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71

5.2.2.2 手続き ・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・71

5.2.3 分析方法・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・72

5.2.4 信頼性 ・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・72

5.2.5 研究倫理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・73

5.3 結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・73

5.3.1 動画をみている程度について ・・・・・・・・・・・・・・・・73

(7)

5.3.2 行動について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・74

5.3.3 動画 1における行動の違い・・・・・・・・・・・・・・・・・74

5.3.4 動画 2における行動の違い・・・・・・・・・・・・・・・・・74

5.3.5 動画 3における行動の違い・・・・・・・・・・・・・・・・・75

5.3.6 3つの動画における行動の一貫性 ・・・・・・・・・・・・・・ 75

5.4 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76

5.5 今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・78

第6章 概括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・79

引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・84 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・99

(8)

第 1 章 問題

1.1 西洋と東洋

従来の文化心理学では,西洋と東洋の比較という視点が数多く取られてきた。

例えばJack, Sun, Delis, Garrod & Schyns (2016)は,情動表出の研究でこ れまで使われて来た,6つの「基本的情動」という定義が妥当であるかどうか検 討するために,西洋(英国)と東洋(中国)の大人を対象とした実験を行った。

情動的単語の評定法を用いた実験などに基づき,基本的情動は 4 つであるとい う結論を導いている。

また韓国の研究者Lim (2016)は展望論文において,「喜び」や「怒り」など の髙覚醒(high arousal)な情動を西洋では評価するが,東洋では「穏やか」や

「弛緩した」のような低覚醒(low arousal)な情動を評価する,とまとめている。

そして,Miyamoto, Yoo, Levine, Park, Boylan, Sims, Markus, Kitayama, Kawakami, Karasawa, Coe, Love, & Ryff (2018)は , 社 会 経 済 的 地 位 (socioeconomic status)と自己志向との関係を西洋(米国)と東洋(日本)など で調べた。西洋でも東洋でも社会経済的地位は自己志向と関係するが ,東洋では 他者志向とも関係するのに対して西洋では関係しないことを示している。

以上のように東洋と西洋を比較する時,日本または中国が「東洋」の代表とし て使われ,欧米の国と比較されることが多い。恐らくそれは Markus & Kitayama (1991)が自 己観と 社会の 関係 にお いて, 西洋文 化(A)と日 本を含 む東 洋文 化(B) に分けた理論の影響を受けているからである。Markus & Kitayamaは Figure 1- 1のように西洋文化(A)では,自己は他者から切り離されているが,東洋文化(B) では,自己は他者と根源的に結び付いているという前提に立っている。

(9)

Figure 1-1 文化的自己観の概念図:相互独立(A)と相互協調(B) (Markus & Kitayama, 1991)

1.2.子どもを対象にした研究

まずMarkus & Kitayama (1991)論文以前のものも含めて,これまでなされて きた数多く の研究 の例 を対象別に 分類す ると 以下のよう になる 。ま ず子どもを 対象にした研究について概観する。

Caudill & Weinstein (1969)は日本人とコーカサス系アメリカ人の出生後 3,

4ヶ月の乳児とその母親の関係を観察により比較した。日本人の乳児は発声など の活動が少なく,アメリカ人の乳児と比べておとなし かった。

Bornstein は , 一 連 の 乳 児 と 母 親 の 日 米 比 較 研 究(Bornstein, Miyake, &

Tamis-LeMonda, 1987; Bornstein, Tamis-LeMonda, Ludemann, Tal, Toda, Rahn, Pecheux, Azuma, & Vardi, 1992)を通じて,日本の母親は乳児の注意を自分と の関係に向けるが,アメリカの母親は乳児の注意を 外部に向けることを示した。

(10)

Fogel, Toda & Kawai (1988)は母親と乳児のフェイストゥフェイス(face to

face)コミュニケーションを分析した。日本とアメリカの 3ヶ月児と母親の行動

を比較したところ,アメリカの乳児の方が多く笑ったり,発声したりした。アメ リカの母親は乳児の顔に自分の顔を近づけたり,声を上げたりした。

Camras, Oster, Campos, Miyake, & Bradshaw (1992)は,日本とアメリカの 乳児を対象 にして 軽く 腕を拘束し た時の 反応 を比較した 。 アメ リカ の乳児の方 がネガティ ブな反 応が 早い場合も あるが 全般 的に日米の 差はな く , 表情の普遍 性が示された。

Lewis, Ramsay, & Kawakami (1993)は,日本人とコーカサス系アメリカ人の 乳児が予防 注射を 受け る場面を比 較した 。日 本人の乳児 は注射 の時 にあまり泣 かないが,ストレス・ホルモンであるコルチゾルは上昇した。一方 ,アメリカ人 の乳児の泣き方は大きいが,コルチゾルはあまり上昇しなかった。

Kawakami, Takai-Kawakami, & Kanaya (1994)は,日本人の乳児とその母親と 日本に在住しているアメリカ人の乳児とその母親を生後 1 年間,縦断的に観察 した。アメ リカ人 の母 親の乳児へ の語り かけ や接触は日 本人の 母親 より多かっ た。乳児と母親の相互交渉も アメリカ人の方が多かったが ,縦断的にみていくと 大きく変化していることが明かであった。

Zahn-Wazler, Friedman, Cole, Mizuta, & Hiruma(1996)は日本とアメリカ の幼稚園児を実験場面で比較をした。子どもたちは絵を見せられて,その時どう 行動するか を聞か れた 。アメリカ の子ど もは 怒りや攻撃 的な行 動を 日本の子ど もよりも多く示した。

Chen, Hastings, Rubin, Chen, Cen, & Stewart (1998)は 行 動 の 抑 制 (behavioral inhibition)について検討し,2 歳の中国の子どもたちはカナダの

(11)

2歳児より抑制しやすいことを示した。カナダの子どもたちの行動抑制は母親の 罰傾向と正の相関があり,賞賛とは負の相関があった。中国の子どもたちの行動 抑制は逆で,母親の受け入れる態度と暖かさとは正の関係で ,拒否と罰とは負の 関係であった。

Camras, Oster, Campos, Campos, Ujiie, Miyake, Wang, & Meng (1998)はヨ ーロッピアンアメリカ,日本と中国の 11 ヶ月の乳児の表情を分析した。その 3 組の中で,微笑と泣きについて分析したところ ,中国の乳児の表出が最も少なか った。

Chen, Rubin, Liu, Chen, Wang, Li, Gao, Cen, Gu, & Li (2003)は文化に対 する順守さ(compliance)について,検討した。中国とカナダの 2歳児を比較し,

中国の子ど もたち の方 が 順守的で ある傾 向が 高く ,カナ ダの子 ども たち の方が 文化に対して,抵抗的であった。

Li & Wang (2004)はアメリカと中国の幼稚園の子どもたちに学校で成功する 主人公のストーリーについて自由語りをしてもらった。成功に 対して,アメリカ の子どもた ちは知 力 と 主人公のポ ジティ ブな 感情と大人 からの 評価 を関連させ た。中国の子どもたちは社会的評価と他の人を助ける能力を関連させた。アメリ カ文化と中 国文化 にお ける成功と 対人認 知に 関しての重 み付け の相 違が分かっ た。

Ng, Pomerantz & Lam (2007)は学童期の子どもに対する親と学校などの教育 の仕方の違いについて,調べた。中国の小学生の親は学校で良い成績を取ること を強調せず,悪い成績を取ることを問題にした。アメリカの親はその反対だった。

Garrett-Peters & Fox (2007)は,がっかりした贈り物を受け取った時の子ど もたちの反応を中国系アメリカ人(CA)とヨーロッパ系アメリカ人(EA)の子ども

(12)

たち(4〜8 歳)で比較した。EA の子どもたちは CA の子どもたちよりもポジティ ブな表情を多く示した。

Lewis, Takai-Kawakami, Kawakami, & Sullivan (2010)は,失敗した場面と 成功した場 面にお ける アメリカと 日本の 幼児 の行動の違 いにつ いて 研究し,失 敗した場合 では, 日本 の子どもた ちのほ うが 明らかに恥 と悲し みの 表情が少な いが評価的てれ(evaluative embarssment)の表情が多いことを示した。また,日 本 の 子 ど も た ち で は 成 功 し た 場 合 で 誇 り の 表 情 は 少 な い が , 表 出 的 て れ (exposure embarssment)の表情は多かった。文化が子どもたちの問題解 決の時 の行動に影響を与えていると考察している。

Suveg, Raley, Morelen, Wang, Han, & Campion (2014)は,アメリカの子ど も(7〜13歳)55 名と中国の子ども(8〜13 歳)49名とそれぞれの親に質問紙調査 を行い,アメリカの子どもたちのほうが多く表情を表出していると結論づけた。

コミュニケ ーショ ンを する時,そ の文化 的な 違いも含め て考え るべ きと述べて いる。

Enesco, Sebastián-Enesco, Guerrero, Quan, & Garijo (2016)は就学前の子 どもたちが社会的決定する時,反対する人の影響を調べた。中国とスペインの子 どもたちを対象にし,先生が意見を述べる動画を見せ,子どもに意見を言っても らう実験を 行なっ た。 スペインの 子ども たち はどんな場 合でも 自分 の意見を保 つが,中国 の子ど もた ちは違う意 見を持 って いる人がい るかど うか によって変 化することを示した。

Fu, Heyman, Cameron, & Lee (2016)は中国とカナダの 7歳〜11 歳の子どもた ちに,先生が出た後の先生のオフィスを掃除させ,先生が戻った時質問した。中 国の子ども たちに は年 齢 と共によ り謙虚 な行 動がみられ たが , カナ ダの子ども

(13)

たちにはみられなかった。

Table 1-1はこれまで述べてきた子どもの研究のまとめである。

(14)
(15)

1.3 大人を対象にした研究

次に大人と対象とした研究の例を示す。

Ekman & Friesen(1971)は成人を対象にして有名な研究を行った。アメリカ 人と日本人 が緊張 感を 感じる映画 を観た 後の 感情表出を 比較し たと ころ,アメ リカ人は不快な感情を表し,日本人は不快な感情を表さなかった。

Bond & Tornatzky (1973)は日本 人と アメ リカ人 の大学 生に Rotter の I-E Scale(Internal-External Locus of Control尺度)を答えさせた。この I―E 尺度とは,自分の能力によって,評価が決定する(internal)と考えるか,チャ ンスなどの外的な要因にある(external)と考えるかを示す物である。日本人の 学生たちは米国の学生たちより外的要因によると考えていた。

Shimoda, Argyle, & Bitti(1978)はイギリス人,イタリア人,日本人の大学 生にいくつかの表情を作らせ,他者の表情を解読させた。その結果,日本人の大 学生と比べ て,イ ギリ スとイタリ ア人の ほう が自国人の 表情の 解読 率が高かっ た。

Heine & Lehman (1995)は非現実的な楽観主義のレベルを調べるために,カナ ダ人と日本 人の大 学生 に将来の出 来事に つい て質問紙調 査を行 なっ た。カナダ 人は日本人 より 非 現実 的な楽観主 義を示 し た 。日本人は 自己を 脅か す出来事に 対して,楽観的でなかった。

Kitayama, Markus, & Kurokama (2000)は良い気持ち(good feelings)の体験 は主観的な幸福度の核心であることを想定し,質問紙調査を行なった。アメリカ の大学生ではポジティブな情動(positive emotions)体験はプライドと関係し , 日本の大学生ではポジティブな情動は友情に関連していた。

Morling (2000)はエアロビクスの参加者にクラスを選ぶ理由 ,難しい授業に

(16)

対する反応を調査した。アメリカ人は授業参加への便利さなどでクラスを選ぶ。

それに比べて,日本人は自分のレベルに基づきクラスを選び ,難しい授業の時一 所懸命頑張 り ,失 敗し た時自分の 能力と クラ スのレベル の違い と考 えることを 示した。

Eid & Diener (2001)は2 つの個人主義国家(アメリカとオーストラリア)と 2つの集団主義国家(中国と台湾)の大学生に質問紙調査を行った。集団主義国 家では感情 のバラ ツキ がみられた が ,個 人主 義国家では 特に快 感情 においてバ ラツキが少なかった。

Heine, Kitayama, & Lehman (2001)は日本とカナダの大学生を対象として , 自己評価に 関する 質問 紙調査をし た。カ ナダ の大学生は 公的に 自己 を否定する のを避けようとするが,日本の大学生はその傾向はなかった。

Masuda & Nisbett (2001)は文脈背景(context) の影響について,日本人とア メリカ人を対象にして調べた。水の下に石や,魚などが入っているシーンを対象 者にみせ,最初見ていた物と後に見ていた物に関して見かたどうか判断させた。

日本人はア メリカ 人よ りも背景と 物の関 係を 多く述べ( 例えば , 魚 だけではな く),また,後で見た物よりも最初に見た物を多く認識した。

Morling, Kitayama, & Miyamoto (2002)は大学生に環境の影響と環境への適 応について,調査した。アメリカ人は影響について多く語り ,日本人は適応につ いて多く語った。

Tinsley & Weldon (2003)は民族起源(national orgin)による通常の衝突に対 する羞恥心と復讐行動の相違を調べるため,中国とアメリカ人の MBA コースに 参加してい るマネ ージ ャーたちを 対象に して 研究した。 マネー ジャ ーたちに仕 事で出会いそうな話を聞かせ,どう反応するのか調べた。中国のマネージャーた

(17)

ちと比べて ,アメ リカ のマネージ ャーた ちの 方が直接衝 突を好 むこ とが分かっ た。

Tsai, Levenson, & McCoy (2006)は気質要因(temperamental factors)が情動 反応へ及ぼす影響を検討するため,50 ペアのヨーロピアンアメリカ人(EA)とチ ャイニーズアメリカ人(CA)の大学生カップルの喧嘩中の会話を比較した。CA カ ップルより,EA カップルの方がポジティブな情動が多くネガティブな情動が少 なかった。

従来表情 はユニ バーサ ルだと言 われ て きたが ,何種類 かのネ ガティ ヴな表情 は東洋人より西洋人により出されている事が分かった。Jack, Blais, Scheepers, Schyns, & Caldara (2009)は表情の読み取り方の違いを検討するため ,目の動 きを調べた。「恐怖(fear)」「嫌悪(disgust)」の感情に対して,東洋人(East Asian) の 実 験 協 力 者 は ず っ と 目 の あ た り を 見 て い た が , 西 洋 人(Western Caucasian)は顔全般の見ていたと報告した。

Henrich (2016/2019)によれば,Hedden et al.(2008)は,ヨーロッパ系アメリ カ人とアメ リカに 居住 する東アジ ア人を 対象 に線の見え 方に対 する 実験を行っ た。西洋人 は背景 を切 り離して対 象の特 性だ けを取り出 すこと が得 意であるこ とを,脳活動の比較を通して確認している。

Immordino-Yang, Yang, & Damasio (2016)は中国とアメリカの青年を対象に して,感情と脳の働きの関係を研究した。アメリカ人の方が情動と皮質活動の関 連が多かった。

基本的な 表情認 識は人 類に共通 する能 力だと 言われて きたが , 最近 この共通 性は言い過ぎだという実験結果が示された。Yan, Andrews, & Young (2016)は 全顔と部分 的な顔 写真 を使い ,中 国人と イギ リス人が表 情認識 する 時の相違を

(18)

検討し,全顔写真の時には中国人とイギリス人に差がないことを報告した。 し かし,顔の 下の部 分に ついては自 分が属 する グループの 表 出に 対す る 弁別の方 が成績がよかった。

Wu, Li, Zhu, & Zhou (2019)は1960 年から2008 年のGoogle の電子書籍を調 べ,中国人とアメリカ人の感情の表現の仕方を調べた。アメリカの本には中国語 の本より感 情表現 が多 いが ,中国 語の本 も近 年感情の言 葉が増 える 傾向がみら れた。

Table 1-2はこれまで述べてきた大人の研究のまとめである。

(19)
(20)

1.4.まとめ

1.2 をまとめてみると,乳児と母親の関係では,アメリカの母子の方が日本の 母子に比べ,アクティブに反応することが分かる(Caudill & Weinstein, 1969;

Borstein et al.,1987; Fogel, Toda & Kawai, 1988 など)。また,中国と西洋 の子どもたちを対象にした研究では,中国の幼児の方が順守行動が多く ,社会的 評価に注目しやすく,謙虚であった(Chen et al., 1998; Li & Wang, 2004; Fu et al., 2016)。

また,大人を対象にした研究では ,日本人は感情の表現や,表情の解読につい ては,アメリカ人と異なっていた(Ekman & Friesen, 1971; Shimoda et al., 1978)。また,東洋人は西洋人よりネガティヴな情動を表現せず ,ポジティブな 情動を多く表現するのが分かる(Tsai et al., 2006など)。東洋人は西洋人より も図と地の両方に注目するが,西洋人は地に注目することが分かった(Masuda &

Nisbett, 2001; Henrich, 2016)。中国人よりアメリカ人の方が感情表現が多 く,直接的である(Tinsley & Weldon, 2003; Immordino-Yang, Yang, & Damasio, 2016; Wu, Li, Zhu, & Zhou, 2019)。

日本では,数多くの「日本人論」が提出されてきたが ,マーカスと北山の論文

(1991)によって,全世界を「集団主義」と「個人主義」という2つの文化に分 ける視点が出現した(高野, 2008)。しかし,高野(2008)は日米の集団主義の 比較研究の結果をまとめると,以下のFigure 1-2のように,日本と米国の集団主 義の強さは同じであることを明らかにした。果たして ,東洋人と西洋人を比較す るという研究は意味があるのだろうか。

(21)

Figure 1-2 実証的研究19件の結果(集団主義の強さ)(高野,2008)

また,「オリエンタリズム」という言葉がある。これはサイードというアメリ カの文学研 究者が 最初 に使ったも ので , 欧米 人がアジア を考察 する 時によく使 われる(高野, 2008)。「東洋」にはよく日本または中国などを代表として挙げ られている。例えば,Jack, Sun, Delis, Garrod, & Schyns (2016)はイギリス と中国の成人の表情を比較し,「Western and East Asian」と表現している。こ のように東アジアの国は一つのグループとしてみられやすく,特に日本,中国,

韓国などは集団主義,相手に強い関心を持つことが共通点であるとして(e.g., Lee, 2002; Lee & Rogan, 1991; Oetzel & Ting-Toomey, 2003; Ting-Toomey &

Kurogi, 1998),一つのグループでまとめられがちである。同じ東アジアにある 国と国の間には違いがないだろうか(藤永, 1997)。さらに,アジアというくくり で扱うことに問題はないだろうか。柏木・北山・東(1997)の『文化心理学—理論 と実証』という,日本における文化心理学の集大成の中にもアジアの国の違い に ついては取り上げられていない。

日<米

日=米 日>米

(22)

東アジアの中の国を一括りにしていいのか,日本,中国,韓国には違いがない だろうか。実証的な研究はほとんど行われていない。本論文では,日本と中国と 韓国の子どもたちを対象として研究し,行動の違いの有無を分析する。

(23)

第 2 章 研究の構成と目的

本論文は,研究1 から研究 3 により構成される。

研究 1 では,日本の 3 歳児 20 名と中国の 3 歳児 25 名を対象として,パズル 課題における行動の出現と特徴の相違の有無を検討する。研究2 では,韓国の 4 歳児 14 名と 3 歳児名 11 名を対象として,研究 1 と同じパズル課題における韓 国の幼児の行動の特徴を検討する。すなわち,研究 1は日本と中国の幼児の行動 の特徴,研究 2 は韓国の幼児の行動の特徴 に注目し,最終的には 3 ヶ国の子ど もたちのデ ータを 用い て ,課題を 介した 国に よる 子ども たち の 行動 の相違 の有 無を検討する。研究 3では,動画に対する,日本,韓国と中国の子どもたちの行 動反応の相違の有無を検討する。すなわち,研究 1 と研究 2 は子どもたちの問 題解決する際の行動の相違の有無,研究 3は刺激に対する行動の違いに注目し,

3ヶ国の子どもたちのデータを用いて,子どもたちの行動の相違の比較検討する のが目的である。

(24)

第 3 章 パズル課題における日中の子どもたちの行動「研究 1」

3.1 要約

本研究では神奈川県内にある保育園と上海市内にある保育園の 3 歳クラス児 45 人(日本の子どもたち 20 名,中国の子どもたち 25 名)に 3 つ(簡単—困難—

簡単)のパズル課題に取り組んでもらい,この過程をビデオで録画し,分析した。

観察した13 の行動項目は動作,言葉,表情と大きく 3 つのカテゴリーに分けら れる。課題に取り組む際の両国の子どもたちの行動の相違を検討した。

課題に取り組む時,日本人の 子どもたちより,中国人の 子どもたちのほうが

(1)行動回数が多かった,(2)顔の上パーツと下パーツの動きが多かった,(3)「自

己主張」的な発話が多かったという結果が得られた。また,両国の 子どもたちは,

(4)パズルに取り組り始める時,両国の子どもたちの行動に違いがあった ,(5)課

題の難易度の変化に関する行動が違った,(6)課題が終った後の行動に違いがあ った,(7)両国の子どもたちに課題の難易度についての回答に違いがあった。

本研究で得られた重要な結果として,従来,東アジアというひとくくりにされ てきた,日 本と中 国の 子どもたち たちの 行動 に違いがみ られた こと が挙げられ る。文化心理学という分野で ,単に東洋というような地域分類により分析がなさ れてきたことに疑問をなげかける結果であった。

3.2 予備実験 3.2.1 実験方法

上海で知人の紹介により実験日の時点で満 3 歳 5 ヶ月女児 1 名と 2 歳 8 ヶ月 女児1 名に予備実験として,協力してもらった。2 人とも一人っ子であった。

(25)

実験者は筆者自身であった。

3.2.2実験の設計

子どもたちが一人で「できない」という場面において,どのような行動 をする かを検討するため,難しいパズル課題を取りあげた。幼児に課題を取り組ませる 時,Fisher-Price 製のような立体的な型はめも使われてきたが,本研究では子ど もたちがで きる課 題と できない課 題に対 する 行動の違い を検討 する ことが目的 であり,課題の難易度を調整しやすいため ,ジグソウパズルを用いた。

また,簡単と難しいパズルの差を比較するために,「簡単なパズル→複雑なパ ズル」の順に呈示した。難しいパズルで終らせないように,「簡単なパズル→複 雑なパズル」の後,もう一つ簡単なパズルを追加した。それは 子どもたちが二つ 目のパズルで失敗した時生じたストレスを解消するためであった。

3.2.3 研究倫理

本研究の目的,手順,データの処理,保管などについて,または,子どものプ ライバシー を保証 する ことを説明 し子ど もの 保護者の同 意を得 ,保 育園の園長 のサインにより,インフォームドコンセントを得た。

な お , 本 研 究 で 得 ら れ た デ ー タ は 米 国 心 理 学 会(American Psychological

Association: APA)の基準に従い,5年間保持された後に破棄される。

3.2.4 3 歳女児 3.2.4.1 手続き

中国の 3歳女児に協力してもらい,15ピースパズル,48 ピースパズルと 24 ピ

(26)

ースパズルという順で呈示した。実験場所はほかから独立した教室であった。実 験者は実験参加者の右側または左側に座った。一つ目のパズル(15 ピース)を まず完成するまで十分な時間を与えた。終った後,“因为你拼出来了,所请再拼 一个(できたので,もう 1 つどうぞ)。”と言い,二つ目のパズル(48 ピース)

を実施した。時計を使い,20 分の時間制限を説明した。14 分位の時,動きが止 まったため実験終了となった。その後,三つ目のパズル(24 ピース)を“那你 拼这个吧(ではこれをやりましょう)”と取り組ませた。

実験経過を録画した。

3.2.4.2 結果

まず,各パズルに取り組んだ時間について確認した。一つ目のパズル(15 ピ ース)は 3 分 10 秒掛かり,完成した。二つ目のパズル(48 ピース)は 14 分間 取り組んでいた。三つ目のパズル(24ピース)は 6 分8 秒掛かった。

一つ目のパズルでは,観察項目(後述)の「眉毛を上げる」が 1 回,「口を動 かす」または「口周りの筋肉の動き」が4回見られた。

二つ目のパズルでは,「姿勢変わる」が2 回,「周りを見る」は 2回,「眉毛 を上げる」が5 回,「口を動かす」ことは 22回見られた。「独り言」や,「実 験者への発話」は見られなかった。

二つ目のパズルの終了時点の結果は Figure 3-1である。

(27)

Figure 3-1 3歳女児の二つ目のパズルの終了時点の結果

三つ目のパズルのサイズが大きすぎて,動きが多くなってしまったため,コー ディングは実施しなかった。

3.2.5 2 歳女児 3.2.5.1 手続き・結果

実施した場所は対象児の家のリビングであった。

3 歳女児の時と同じようにパズル課題の説明をし,一つ目のパズル(15 ピー ス)から始めた。

一つ目のパズルに取り組んだ時,8分位でパズルをやめ,母親の所に行き,自 分で完成することができなかった。そのため,二つ目のパズルに取り組ませなか った。実験経過を録画した。

3.2.6 考察

予備実験の結果から,3歳児にとって,15 ピースのパズルを一人で完成できる

(28)

ことと,48ピースは 10分間以内で完成するのが難しいことの確認ができた。

また,三つ目のパズルのサイズが揃っていなかったため,14 ピースのパズル を用意しなおした。

2歳児はパズルに取り組むことがが難しいと判断した。

(29)

3.3 本実験 3.3.1目的

同じ東アジアの国日本と中国の子どもたちのパズル課題に対する行動 を検討 する。

国により,コミュニケーションの仕方が異なっている。Hall(1977)は対人コ ミュニケー ション の仕 方と対人関 係の特 徴に より,文脈 の読み 取り 方の違いに 着目し,文化を「高文脈文化」(high-context culture)と「低文脈文化」(low- context culture)と分けている。「高文脈文化」とは,コミュニケーションする 時,言葉よりも生活習慣,暗黙のルールなど非 言語的文脈を重視する文化であり,

「低文脈文化」とはコミュニケーションをする際,直接 的な言葉が使われている 文化である。日本は「高文脈文化」(Nishimura, Nevgi & Tella, 2008),アメリ カは「低文脈文化」で,中国は日本とアメリカの間であると される。日本と中国 の子どもたちのコミュニケーション仕方は一体どう異なっているだろうか。

Gao & Ting-Toomy (1998)は日本も中国も集団主義文化の国とし,日本語と中 国語いずれ も間接 表現 スタイルと コンテ クス ト中心スタ イルが よく 使われてい るが(Gudykunst & Ting-Toomy, 1988),日本人と中国人のコミュニケーショ ン・スタイルは異なっていると指摘した。張(2009)は,日本と中国の成人のコ ミュニケー ション の中 で 自己主張 の程度 が違 っていると いうよ りも 自己主張の 仕方が違っており,日本人の場合,個人差が大きいと指摘している。自己主張と は,「他人の権利を侵害せず,個人の思考と感情を,攻撃的ではない仕方で表現 できる能力」と定義されている(Deluty, 1979; 濱口, 1994)。自己主張は生後 1 年目の終わりから2 年目の始めにかけて出現し,3 歳ぐらいに顕著に発達してい く(e.g. Bruner, Roy, & Ratner, 1982; 柏木, 1988; 木下, 1987; 高坂, 1996;

(30)

山本, 1995; 山田, 1982)。早期の自己主張に対する,文化の影響を検討するこ とが必要である。

第1 章で述べたように(cf.Caudill & Weinstein, 1969),生後3 ヶ月くらい の新生児も文化の影響を受けている。幼児 の行動には国の違いにより,違いがあ ることが考えられる。

日本の子どもと中国の子どもが困難な課題に直面する際に,動作・表情・言葉 の違いがみ られる か, また性差は あるの かを 確認するこ とが本 実験 の目的であ る。

3.3.2 方法

3.3.2.1 実験参加者

日本の神奈川県内にある保育園の 3歳の典型発達児 21人と中国の上海市内に ある保育園の3 歳の典型発達児 27 人が実験参加者であった。途中やむをえない ことで実験 を中止 して しまった子 どもの デー タを除いた ところ ,有 効データは 日本の子ども 20 名(M=3.64 歳, SD=0.26),と中国の子ども 25 名(M=3.57 歳, SD=0.29)となった。日本は男児 10名,女児 10 名,中国は男児 13名,女児 12 名 であった。実験参加児の性別,きょうだいの有無 ,実験開始時間と実験時の月齢 をTable 3-1 でまとめた(J18, C19, C26は有効データとして使用しない)。

本論文で用いた「典型発達児」の判断基準は保育園・幼稚園の担任の先生の報 告または実 験者の 観察 に基づき, 身体発 達や 言葉発達等 に明ら かな 遅れ やハン ディキャップがみられていない子どもである。また,中国は大陸が大きく,民族 も多い国で あるた め, 最も多い民 族であ る漢 民族の都市 の上海 に生 活している 子どもたちを今回の研究対象にした。

(31)

Table 3-1 実験参加児の性別,きょうだいの有無,実験時の月齢

(名前のJ, C はそれぞれの国籍日本·中国を示し,

数字は実験を行った順番である)

対象児 性別 きょうだい(人) 実験時の年齢

J1 4歳1ヶ月

J2 一人っ子 3歳7ヶ月

J3 3歳3ヶ月

J4 3歳10ヶ月

J5 一人っ子 3歳7ヶ月

J6 3歳3ヶ月

J7 一人っ子 4歳

J8 一人っ子 3歳5ヶ月

J9 4歳2ヶ月

J10 3歳6ヶ月

J11 一人っ子 3歳3ヶ月 J12 一人っ子 3歳7ヶ月 J13 一人っ子 3歳10ヶ月

J14 3歳8ヶ月

J15 姉、妹 3歳7ヶ月 J16 お腹の中 3歳6ヶ月

J17 3歳5ヶ月

J19 3歳7ヶ月

J20 3歳8ヶ月

J21 3歳9ヶ月

C1 一人っ子 4歳

C2 一人っ子 3歳2ヶ月 C3 一人っ子 3歳10ヶ月 C4 一人っ子 3歳9ヶ月 C5 一人っ子 3歳10ヶ月 C6 一人っ子 3歳11ヶ月 C7 一人っ子 3歳10ヶ月 C8 一人っ子 3歳10ヶ月 C9 一人っ子 3歳9ヶ月 C10 一人っ子 3歳5ヶ月 C11 一人っ子 3歳8ヶ月 C12 一人っ子 3歳3ヶ月 C13 一人っ子 3歳5ヶ月 C14 一人っ子 3歳1ヶ月 C15 一人っ子 3歳1ヶ月 C16 一人っ子 3歳9ヶ月

C17 一人っ子 3歳

C18 一人っ子 3歳8ヶ月 C20 一人っ子 3歳7ヶ月 C21 一人っ子 3歳7ヶ月 C22 一人っ子 3歳5ヶ月 C23 一人っ子 3歳6ヶ月 C24 一人っ子 3歳4ヶ月 C25 一人っ子 3歳10ヶ月 C27 一人っ子 3歳10ヶ月

(32)

日本人の最年少児はJ3 とJ11 で,中国人の最年少児は C17だった。最年長児 は日本のJ9と中国の C1であった。実験参加児全員は実験者と初対面であった。

実験者は筆者自身であった。

3.3.2.2 装置

紙製の15 ピースのパズル(Ravensburger Puzzle製 No.060207)と48 ピースの パズル(Ravensburger Puzzle製No.066049)と14ピースのパズル (Ravensburger

Puzzle 製 No.060528)を使用した。3 つパズルいずれもパズルボードが付いてい

た。15 ピースのパズルを完成できたという予備実験の結果により,15 ピースの パズルと14 ピースパズルを簡単なパズルと定義し,48 ピースパズルを難しいパ ズルと定義した。

22.8cm x22.8cmの大きさの時計で時間制限を説明した。

録画装置はデジタルカメラ Cyber-shot とデジタル HD ビデオカメラレコーダ ーHDR-PJ790(SONY製)と三脚(Velbon のcs200)を利用した。

3.3.2.3 手続き

実験を実 施した 場所は 独立した 部屋で あった 。同じ部 屋にい るのは 子どもと 実験観察者 の二人 であ った。実 験 参加者 が入 る前に実験 観察者 が録 画装置を設 定し,スイッチをオンにしてあった。実験観察者は子どもの右側または左側に座 り,子どもにこれからやってもらう 15ピースのパズルを見せ,実験観察者が子 どもに“今日はパズルをやってもらいます”“今天要让你拼拼图。”と説明した。

実験観察者が発した“どうぞ”“开始吧”という合図で実験を始めた。

15 ピースのパズルができた後,“よくできたので,もう一つやってください”

(33)

“因为你拼出来了,所以再拼一个”と 48ピースのパズルを見せた。また,時計 を使い,“長い針が12 から4 まで行ったら,それでパズル終了。”“长针从 12 走到4 了,就结束。”と子どもに 20 分の時間制限を説明した。

実験の予定制限時間は 20 分だが,子どもに負担をかけすぎないように,子ど もから“もうやらない”,“もう終わり”,“我不想拼了”のようなパズルに対 してネガティブな言葉が出たら,実験を終了することにした。

48ピースのパズルが終った後,14 ピースのパズルをやってもらった。

すべての パズル ひとつ ずつが終 わった 後,子 どもにや ったパ ズルは 難しかっ たか簡単だったかと聞いた。

3.3.2.4 分析方法

3.3.2.4.1 カテゴリーの作成

Fu (2015)の研究で使用された項目に基き,予備実験の経験も含め,新しい項 目も取り入れ,観察する行動のリストを作った。Table 3-2は,本研究で分析す る行動とそれぞれの略語を示している。

予備実験 で 観察 された 行動,実 験者が 有意だ と 考えた 子ども の行動 を今回の 研究で取り上げた。それらの行動を,大きく動作,言葉,表情 3つカテゴリーに 分けた。各カテゴリーの項目内容とそれらの定義は以下の通りであった。

動作項目は「頭を掻く」,「姿勢崩れ,変わる」,「時計を見る」,「周りを 見る」,「実験者を見る」という 5 項目であった。「姿勢崩れ,変わる」という 項目には姿勢の崩れ,立つ,斜めになるなど座った状態から明らかな状態変換が 含まれていた。

言葉項目では自分への独り言と実験観察者への発話の大きく 2種類に分けた。

(34)

また,実験観察者への発話では「実験者にパズルのやり方を言葉で聞く」と「実 験者に話掛ける」に分けた。「実験者にパズルのやり方を言葉で 聞く」という項 目は“これどこ”“这个在哪里”のような疑問文である。「実験者に話掛ける」

という項目には“分からない”“我不会”などの自己主張,パズルのやり方につ いての尋ねる以外の文が含まれていた。

表情項目は「眉間に皺を寄せる」,「眉毛を上げる」,「口を動かす」,「微 笑む」,「ため息をつく」という 5項目であった。Izard(1979)は,顔の動き を測定する方法The Maximally Discriminative Facial Movement Coding System

(Max)を作り,顔面を「額・眉・鼻根」,「目・鼻・頬」,「口・唇・顎」3 パ ーツに分け,情動の分析を行っている。Lewis, Alessandri & Sullivan(1990)

はMAX を使い,2~8ヶ月の乳児の認知に関連した表情を検討した。島田・後藤・

島田・保坂(2001)によると,顔面表情筋の発達は部位により発達した時期も異 なっている 。 眉毛 や眉 間と鼻部に 付く筋 肉よ りも閉瞼す る際に 使わ れる筋肉や 口唇周囲の筋肉の方が発達するのが早い。つまり,表情筋は使い方によって,発 達が異なっている。国によって,子どもたちのよく働く表情筋は同じ部位である か検討する。また,Jack et al.(2009)の研究結果による,顔を見る時の 東洋人 と西洋人の 違い を 考慮 し,表情の 読み取 り方 から顔面筋 を上下 で分 けて検討す ることで意味があるかもしれない。

従って,本研究では子どもたちのよく使われる表情筋を 考慮し,使われた顔面 のパーツにより,5 つの項目のうち 4項目を 2パーツに分類した。「眉間に皺を 寄せる」と「眉毛を上げる」項目は上のパーツであり,「口を動かす」と「微笑 む」項目は下のパーツとした。

本研究の分析対象は以上の 13 項目であった。

(35)

Table 3-2 観察する項目内容とその略語 番

略 語

説明

カテゴリ ー

顔の筋肉使われた部位

1 SH 頭を掻く 動作

2 PC 姿勢崩れ,変わる 動作

3 LC 時計を見る 動作

4 LR 周りを見る 動作

5 LE 実験者を見る 動作

6 Tse 独り言 言語

7

AP

実験者にパズルのやり方を言葉で聞 く

言語

8 Tso 実験者に話を掛ける 言語

9 Fr 眉間に皺を寄せる 表情 上

10 RE 眉毛を上げる 表情 上

11 MM 口を動かす 表情 下

12 Sm 微笑む 表情 下

13 Si ため息をつく 表情

3.3.2.4.2 コーディングの仕方

10 秒間ごとでコーディングした。10 秒間以内で項目の有無を記録し,10 秒 間以内で 1 回以上出現しても 1 回とした。すべて 1 分間当たりの平均回数とし て計算した。

(36)

3.3.2.4.3 信頼性

データは日本人 1 人と筆者 1 人が記述したものであった。2 人が記述したも のがどれだけ信頼性のあるものかを検討するために,Loewen & Philp (2006)の 研究を参考にし,ランダムに 10%の子ども(n=6)のデータを選択し,カッパ係 数を求めた。その結果,k= .806という高い値が確認された。

3.3.2.5 研究倫理

本研究の目的,手順,データの処理,保管などについて,または,子どものプ ライバシー を保証 する ことを説明 し子ど もの 保護者の同 意を得 ,保 育園の園長 のサインにより,インフォームドコンセントを得た。

また,この実験と観察は聖心女子大学心理学科倫理委員会の承認のもとで行 われた。なお,本研究で得られたデータは米国心理学会(American Psychological

Association: APA)の基準に従い,5年間保持された後に破棄される。

3.3.3 結果

一つ目のパズルは45 名の子ども全員ができた。二つ目のパズルは子どもそれ ぞれの完成度であった。二つ目のパズルを完成したのは 0 名であった。また,

50%以上完成させた 5 名の子どもは日本の子どもであった。三つ目のパズルも

45 名の子ども全員ができた。ゆえに日本と中国の子どもたちのパズルを解く能 力には差がなく,一つ目と三つ目のパズルは簡単で,二つ目は難しいと判断した。

3.3.3.1 全体の行動の相違

Figure 3-2 は 3つパズルにおいて,1 分間当たりの両国の男女別の出現した

(37)

13 項目の平均項目数を示している。パズルを完成した時間に個人差があるが,

すべて1分間当たりとして計算した。横軸はパズルごとにおいての国籍と性別,

縦軸は1 分間でみられた行動の平均項目数である。

国籍と性別を独立変数にして,各パズルの行動項目数を従属変数として,2 要 因分散分析を行った。その結果,一つ目のパズルにおいて,国籍における主効果 が有意であった(F(1, 41)= 9.81,p< .01, η2= .193)。性別による主効果は 認められなかった(n.s.)。国籍と性別の交互作用もみられなかった(n.s.)。

二 つ 目 のパ ズ ルに おいて も 国 籍の 主 効果 が有意 で あ った (F(1, 41)= 23.85, p< .001, η2= .368)。性別による主効果は認められなかった(n.s.)。国籍と 性別の交互作用もみられなかった(n.s.)。また,三つ目のパズルにおいても,

国籍の主効果が有意であった(F(1, 41)= 10.40,p< .01, η2= .202)。性別に よる主効果は認められなかった(n.s.)。性別による主効果は認められなかった

(n.s.)。国籍と性別の交互作用もみられなかった(n.s.)。

以上のように,簡単なパズルと難しいパズルにおいて,いずれも日本の子ども と比べて,中国の子どものほうが項目数が有意に多いことが示された。

(38)

Figure 3-2 パズルごとの両国男女別 13 項目の平均項目数の比較

(エラーバーは標準誤差)

3.3.3.2 二つ目のパズル 3.3.3.2.1 カテゴリーの比較

完成できな い課題 に取 り組む際の 両国の 子ど もの行動の 相違を 検討 するため,

二つ目のパズルでみられた行動の相違を詳しく分析した。13行動項目を「動作」,

「言葉」と「表情」の 3 つにカテゴリー化し,合計した結果を Figure 3-3に示 した。横軸は国籍,縦軸は 1分間あたりでみられた行動の平均回数である。日本 と中国の子どもの13 項目を「動作」,「言葉」と「表情」の3 つカテゴリーに 分け,国籍を独立変数にして,行動の回数を従属変数として,1要因分散分析を 行った。その結果,3 つのカテゴリーいずれも国籍の主効果が見られた(「動作」: F(1, 41)= 7.39,p< .01, η2= .147;「言葉」:F(1, 41)= 6.72,p< .05, η

2= .135;「表情」:F(1, 41)= 30.05,p<.001, η2= .411)。

0 2 4 6 8 10 12

パズル1 パズル2 パズル3

平 均 回 数 回

日本女児 日本男児 中国女児 中国男児

**:p< .01 ***:p< .001

**

***

**

項 目 数

( 個

(39)

以上のように,カテゴリーでみても,「動作」,「言葉」と「表情」3 つのカ テゴリーい ずれも 日本 の子どもと 比べて ,中 国の子ども の行動 回数 が有意に多 いことが分かった。

Figure 3-3 二つ目のパズルにおいて,3 つのカテゴリーの平均回数の比較

(エラーバーは標準誤差)

3.3.3.2.2 各項目の比較

そこでさらに,二つ目のパズルの13 項目のうちのどの項目に国籍の差がある かを検討した。国籍別の各項目の出現した平均回数は Figure 3-4のようになっ た。横軸は項目,縦軸は 1 分間あたりでみられた各行動の平均回数である。

国籍を独立変数,行動項目の回数を従属変数として,1要因分散分析を行った 結果は,「時計を見る」,「周りを見る」,「実験者を見る」,「実験者にパズ ルのやり方を言葉で聞く」,「実験者に話を掛ける」,「眉間に皺を寄せる」,

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5

動作 言葉 表情

平 均回 数( 回)

日本 中国

:p< .05 **:p< .01 ***:p< .001

***

*

**

(40)

「眉毛を上げる」,「口を動かす」,「ため息をつく」合計 9 個項目に国籍の主 効果が見られた(「時計を見る(LC)」 F(1, 41)= 6.65,p< .05, η2= .140;

「周りを見る(LR)」F(1, 41)= 13.53,p= .001, η2= .248);「実験者を見 る(LE)」F(1, 41)= 9.07,p< .01, η2= .181」;「実験者にパズルのやり方 を言葉で聞く(AP)」 F(1, 41)= 4.14,p< .05, η2= .092」;「実験者に話を 掛ける(Tso)」 F(1, 41)= 7.93,p< .01, η2= .162」;「眉間に皺を寄せる

(Fr)」 F(1, 41)= 4.26,p< .05, η2= .094」;「眉毛を上げる(RE)」 F(1, 41)= 10.39,p< .01, η2= .202」;「口を動かす(MM)」 F(1, 41)= 13.11,

p< .001, η2= .242」;「ため息をつく(Si)」 F(1, 41)= 14.22,p< .001, η

2= .257)。また,「独り言(Tse)」という項目では国籍の違いでは有意傾向がみ

られた(F(1, 41)= 3.23,p< .1, η2= .073)。

以上のように,国籍による差が認められた項目と認められなかった項目があ ることが分かった。

(41)

Figure 3-4 二つ目のパズルにおいて,13項目の平均回数の比較

(エラーバーは標準誤差)

3.3.3.2.3 上下 2パーツで表情を詳しく分析した結果

次に,二つ目のパズルにおいて,表情の上パーツと下パーツの差を検討する。

Figure 3-5はその結果を表している。横軸はパーツ,縦軸は 1 分間あたりでみ

られた行動の平均回数である。

まず,両パーツにおける国籍と性別の差についてみる。上のパーツにおいて,

国籍と性別を独立変数,動きの出現した回数を従属変数として,2 要因分散分析 を行った。その結果,国籍の主効果が見られた(F(1, 41)= 11.87,p< .001,

η2= .224)。性別の主効果は見られなかった(n.s.)。国籍と性別の交互作用

もみられなかった(n.s.)。また,下のパーツにおいても,同じく国籍と性別を 独立変数,動きの出現した回数を従属変数として,2 要因分散分析を行った。そ の結果,国籍の主効果が見られた(F(1, 41)= 14.48,p< .001, η2= .261)。

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

SH PC LC LR LE Tse AP Tso Fr RE MM Sm Si

平 均回 数( 回

日本 中国

** **

**

**

***

***

*

*

*

†: p< .10 :p< .05 **:p< .01 ***:p< .001

(42)

また,性別の主効果において,有意差が見られた(F(1, 41)= 4.08,p< .05, η2= .090) 。 下 の パ ー ツ に お い て も 国 籍 と 性 別 の 交 互 作 用 は み ら れ な か っ た

(n.s.)。

このように,その結果と平均値を見ると,顔の上のパーツと下のパーツにお いて,いずれも中国の子どものほうが多く顔を動かすことが多かった。

日本の子どもにおいて,上のパーツを動かす回数の平均は 0.21 回(SD=0.38) と下のパーツの動かす回数の平均は 1.14 回(SD=0.98)であった。1 要因分散分析 を行った結果,パーツによる主効果が見られた(F(1, 19)=19.12,p< .001,

η2= .502)。また,中国の子どもにおいて上のパーツを動かす回数の平均は 1.02

回(SD=0.98)と下のパーツの動かす回数の平均は 2.43 回(SD=1.27)であった。1 要因分散分析で,パーツによる主効果が見られた(F(1, 24)=17.60,p< .001, η2= .423)。

日本と中 国両 国 とも 子 どもは顔 の上 のパー ツ 動かすこ とよ りも下 の パーツを 動かすことが多いと解釈することができる。

(43)

Figure 3-5 表情の上下パーツの比較

(エラーバーは標準誤差)

3.3.3.3 3 つの パズルを始めた時の行動の比較

これまでは各パズルにおいて,行動項目の生じる状況について検討したが,こ こでは,パズルが変わった時,子どもの反応の変化があるかどうかをみる。例え ば,二つ目のパズルを見た時,難しいと認識するかどうか,難しいと認知した場 合行動があるかどうか,また三つ目のパズルを見た時,簡単だと認識するかどう かなどを両国の子どもにおいて,検討した。3 つパズルを始めた 10 秒間に行動 が有った(13項目の 1つでもあった)子どもの数を Figure 3-6に示した。横軸 はパズル,縦軸はみられた行動の人数である。

まず,一つ目のパズルにおいて,最初の 10秒の間,行動(13 項目の 1 つでも あった)がみられた日本の子どもは 7名,行動がみられた中国の子どもは 14 名 であった。日中両国の子どもの差は有意ではないことが分かった(n.s.)。そし

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4

上のパーツ 下のパーツ 平均

回数

(回

日本男児 日本女児 中国男児

*** 中国女児

***

***

***

***:p< .001

(44)

て,二つ目のパズルにおいて,行動が見られた日本の子どもは 7名,行動が見ら れた中国の子どもは20 名であった。日中両国の子どもの差は有意であった ( χ2(1)=9.38,p<.01)。三つ目のパズルにおいて,行動が見られた日本の子ど もは6 名,行動が見られた中国の子どもは 19名であった。同様に,日中両国の 子どもの差は有意であることが分かった(χ2(1)=9.52,p<.01)。

また,性差を検討した。その結果,一つ目パズルには性差が見られ,男児の 方 に行動が多かった(χ2(1)=3.81,p<.05)。二つ目のパズルと三つ目のパズル には性差が見られなかった(n.s.)。

以上のように,二つ目のパズルと三つ目のパズルの最初 10 秒間の行動の有無 では「中国の子ども」の人数が「日本の子ども」に比べ有意に多かった。

Figure 3-6 3つパズルの最初 10秒間行動あり状況の比較

3.3.3.4 パズルが終った時の行動の比較

3.3.3.3ではパズルに取り組む時,両国の子どもが開始した時の行動反応の相

0 2 4 6 8 10 12

一つ目のパズル 二つ目のパズル 三つ目のパズル 人数

(人

日本女児 日本男児 中国女児 中国男児

** **

**:p< .01

(45)

違を検討したが,明らかに「成功」した場合には相違があるかどうかを検討する ため,45 名全員完成した一つ目のパズルと三つ目のパズルの終った時の行動を 検討する。

そこで,終わる際の行動有無状況を合計した結果をFigure 3-7 に示した。横 軸はパズル,縦軸は行動がみられた子どもの人数である。まず,一つ目のパズル において,行動が見られた日本の子どもは 17名,行動が見られた中国の子ども は21 名であった。フィッシャーの直接法(Fisher's exact test)で検討したと ころ,日中両国の子どもの差はないことが分かった(n.s.)。そして,三つ目の パズルにおいて,日本の子どもに反応が見られたのは 19名,中国の子どもに反 応が見られたのは24 名であった。同じく,フィッシャーの直接法で比較したと ころ,日中両国の子どもの差は有意ではないことが分かった(n.s.)。また,フ ィッシャーの直接法を行い,性差を検討したが,一つ目のパズルと三つ目のパズ ル,いずれも有意差が見られなかった(n.s.)。

以上の結 果の ように , 一つ目の パズ ルと 三 つ 目のパズ ルの 完成し た 際の反応 は日本と中国の子どもの差がないことが分かった。

Figure 1-1  文化的自己観の概念図 :相互独立(A)と相互協調(B)  (Markus &amp; Kitayama, 1991)
Figure 1-2  実証的研究 19件の結果(集団主義の強さ)(高野,2008)
Figure 3-1  3 歳女児の二つ目のパズルの終了時点の結果 三つ目のパズルのサイズが大きすぎて,動きが多くなってしまったため,コー ディングは実施しなかった。 3.2.5  2 歳女児  3.2.5.1 手続き・結果  実施した場所は対象児の家のリビングであった。  3 歳女児の時と同じようにパズル課題の説明をし,一つ目のパズル( 15 ピー ス)から始めた。  一つ目のパズルに取り組んだ時,8 分位でパズルをやめ,母親の所に行き,自 分で完成することができなかった。そのため,二つ目のパズルに取り組
Table 3-1  実験参加児の性別,きょうだいの有無,実験時の月齢  (名前の J, C はそれぞれの国籍日本·中国を示し,  数字は実験を行った順番である) 対象児 性別 きょうだい(人) 実験時の年齢J1男兄4歳1ヶ月J2女一人っ子3歳7ヶ月J3男兄3歳3ヶ月J4男弟3歳10ヶ月J5女一人っ子3歳7ヶ月J6女兄3歳3ヶ月J7男一人っ子4歳J8女一人っ子3歳5ヶ月J9男妹4歳2ヶ月J10女兄3歳6ヶ月J11男一人っ子3歳3ヶ月J12女一人っ子3歳7ヶ月J13男一人っ子3歳10ヶ月J14女兄3歳8ヶ月J
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参照

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