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説明的文章の読解方略指導に関する実践研究

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(1)

-選択性に到達した授業に着目して-

大森康貴

奈良教育大学大学院教育学研究科教職開発専攻

Practical Research on Reading Comprehension Strategies for Explanatory Texts

-Focusing on lessons that enabled learners to reach the selectivity level of reading comprehension strategies-

Yasutaka Omori

School of Professional Development in Education, Nara University of Education

<あらまし> 国語科教育研究では、自立した読み手の育成のために読解方略の概念が導入 されてきた。しかし小学校段階での読解方略指導の実践研究はまだ少なく、単元全体を読解 方略指導として構想した実践の有効性の検証が十分なされているとはいえない。また、読解 方略の学習段階に応じた指導方法の検討についても課題が残る。そこで本研究では小学校第

6

学年を対象に、単元全体を読解方略指導として構想した実践を行い、その有効性の検証及 び子どもの読解方略の学習を促進する指導について考察した。実践の結果、小学校第

6

学年 において、読解方略を意識できる段階(意識性)に

90%

程度、読解方略を適切に選択できる 段階(選択性)に

70%

程度の子どもが到達する等、一定の成果が見られた。また、選択性に 向けた読解方略指導においては、読みの困難を明確に意識させる、子ども自身に読解方略を 使わせる、考えの共有を通して読解方略の有効性を認識させる、ための指導の工夫が特に重 要であることが示唆された。

<キーワード> 自立した読み手 自己調整学習 読解方略の階梯 小学校

1.問題の所在

国語科における読むことの指導目標の一つに自立 した読み手の育成がある。自立した読み手とは「自 身の読みを計画し、評価し、調整するとともに、学 びへの関心を恒久的に発展させていくことのできる 読み手」(古賀

2020

)である。自立した読み手の育 成に向けた読解指導の在り方や読みの学力の捉え直 しは、読解方略(

Reading Strategies

)の概念の導 入によって図られてきた(間瀬

2013

)。

読解方略は

1980

年代の米国で提唱され、我が国 においては

1990

年代から導入され始めた(間瀬

2013

)。読解方略とは、「読みの目的の達成に向けて 意識的、かつ柔軟に活用される読み方」(古賀

2014

)のことを指し、読解方略の有効性については

既に研究の蓄積があり、その理解促進効果が確認さ れている(犬塚

2013

)。

読解方略には「意識性」「選択性」「統合性」の三 つの階梯的性質があり、それらの学習は意識性から 選択性、選択性から統合性へという順序で進行する ものとされている(古賀

2014

)。

小学校段階においては低学年で意識性の、中・高 学年で選択性の学習が主に求められる(犬塚

2012

)。しかし、小学校及び中学校における

2000

以降の読解方略の授業実践の分析の結果、選択性・

統合性に到達した読解方略指導の授業実践は非常に 少ない(全体の

5

%以下)ことが明らかになった(古

2014

)。また選択性や統合性に到達した読解方略 指導においても、単元中の部分的な指導に留まって

(2)

いた。このように、読解方略指導は授業実践に十分 取り入れられているとはいえず、選択性や統合性へ の到達に向けて単元全体を構想した読解方略指導の 実践研究が不足している点に課題があるといえる。

では、読解方略の指導論に関する研究はどのよう な成果を蓄積してきただろうか。我が国においては

2000

年代から読解方略の学習を促進するための指導 論の構築と整理が、特に中学校段階の指導を中心に なされてきた(例えば、河野

2006

,藤井・犬塚

2008

佐藤

2008

,犬塚

2013

,間瀬

2017

,古賀

2020

)。

小学校段階においては学年の進行に応じて、意識 性に向けた読解方略指導から選択性に向けた読解方 略指導へと展開していく必要がある。しかし現状で は、読解方略の指導論と読解方略の階梯的性質との 関係が十分に論じられているとはいえない点に課題 が残る。意識性に向けた読解方略指導と選択性に向 けた読解方略指導には、それぞれ異なる様相がある と思われる。したがって、小学校段階に読解方略指 導を取り入れていくためには、読解方略の階梯的性 質に応じた指導、特に意識性から選択性に向けた読 解方略指導の在り方についての検討が必要である。

また、小学校段階において、単元全体を選択性の 学習に向けて構想した読解方略指導の実践研究がな いことから、その実践開発及び有効性の検証にも意 義があるといえる。

2.研究の目的

本研究は、小学校段階における、単元全体を選択 性の学習に向けて構想した読解方略指導の有効性を 検証し、選択性の学習に影響する指導を明らかにす ることを目的とする。

3.読解方略の学習過程

読解方略の学習過程は、主に自己調整学習理論を 援用することによって明らかにされてきた(犬塚

2013

,古賀

2015

,古賀

2020

)。

自己調整学習理論では、学習を「

3

つの主要な段 階が生じる学習者側のサイクル活動を必要とする終 わりのない課程」であると捉える。その段階は「計 画」「遂行あるいは意志的制御」「自己内省」の三つ である(

Dale H.Schunk et al.2007

)。

「計画」は、学習しようとする取り組みに先行し、

学習の計画を設定する段階である。「遂行または意 志的制御」は、学習の取り組みの際に生じ、取り組 みへの集中とその遂行に作用する段階である。「自 己内省」は、学習の取り組みの後で生じ、取り組み に対する学習者の反応に影響する段階であり、次の 学習の取り組みの計画に影響する。

このような自己調整学習理論を基に、古賀

2020

)は、「説明的文章の読解方略の自己調整学習

モデル(再構成版)」を構築した。管見の限り、説明 的文章の読解方略の学習過程のモデルの構想を試み た研究は古賀の他にない。

その中で、読解方略の学習過程は大きく三つの局 面に分けて示されている。その内容を図

1

に示す。

(1)「読みの困難」と宣言的知識の結合

(2)「読みの困難」と手続き的知識の結合

(3)方略がもたらす成果の理解 図1 読解方略の学習過程

(古賀

2020 p.387

)より一部引用

1

)は、既有の方略を選択した結果として生じる

「読みの困難」の意識化と「方略帰属」を行う局面で ある。

2

)は、読みの困難の解消に向けた方略の「再 選択」「統合」を行う局面である。(

3

)は、方略の 活用がもたらす成果を理解することによって読解方 略を学習する局面である。これらから、読解方略の 学習は、読みの困難を意識化することにより始まり、

その解決のために必要な読解方略を選択したり統合 したりして読みの困難を解決する経験をし、その方 略の有効性を実感することで成立するといえる。

実際の授業の中では、これらの局面は「計画」「遂 行あるいは意志的制御」「自己内省」の自己調整学習 の各段階において、学習者同士や教師と学習者のやり 取りが複雑に入り混じる中で進行していくことが想定 されている。そのため、学習者がそれぞれの局面を経 ていくことのできる指導を実現できるかどうかが、読 解方略指導の学習に影響すると考えることができる。

4.研究の方法

4. 1.研究全体の手続き

奈良県内の

A

小学校第

6

学年(全

5

クラス、全児 童数

148

名)を対象に、図1を踏まえて開発した実 践を行った。そして各授業における子どもの読解方 略の学習の程度を、事前に設定した枠組みに基づい て評価、集計した。その結果から、読解方略の学習 が選択性に到達した授業と到達しなかった授業を抽 出し、比較分析を行った。分析を通して、選択性の 学習に影響する読解方略指導についての知見を得た。

最後にそれらの知見について整理した。

4. 2.読解方略の学習を評価する方法

各授業における子どもの読解方略の学習の程度を 評価するために、「学習ふりかえりシート」の記述内 容を資料として用いた。学習ふりかえりシートは、

毎授業の最後に書かせ、回収した。質問内容は、古 賀(

2020

)を参考に、図2のように設定した。

(3)

質問①:「説明文を読むときに大切だな」と思った ことは何ですか。

質問②:それは、どうして大切だなと思ったので すか。

質問③:それは、だれの、どのような意見を聞い た時に思ったのですか。

図2 学習ふりかえりシートの質問内容 質問①は、その授業で学習した読解方略が意識性 のレベルに達したかどうかを調べることを目的に設 定した。質問②は、学習した読解方略の有効性の認識 について調べることを目的に設定した。有効性の認識 は、選択性に到達するために重要である(古賀

2020

)。

質問③は、読解方略が学習されるきっかけとなった授 業場面について調べることを目的に設定した。

次に、学習ふりかえりシートの記述内容を評価す る枠組みを表1に示す。

表1 読解方略の学習を評価する枠組み レベル0 授業で扱った読み方について答えることがで

きない。

レベル1

(意識性) 質問①には答えられるが質問②には答えられ ず、特定の方略の内容のみ記述することがで きている。

レベル2

(選択性)

質問①②に答えており、特定の方略を選択す ることの有効性について記述することができ ている。

レベル3

(統合性)

質問①②に答えており、二つ以上の複数の方 略に関する記述があり、それらを統合した上で の有効性について記述することができている。

学習ふりかえりシートの質問①において、授業を 通して学習された方略が示されている場合は意識性 に到達したと判断した。それに加えて質問②におい て、選んだ方略を使うことの有効性や理由が示され ている場合は選択性に到達したと判断した。そして、

質問①において複数の方略が記述され、質問②にお いてそれらの方略を使うことの有効性や理由が示さ れている場合は統合性に到達したと判断した。これ らの判断基準を設定するにあたり古賀(

2020

)を参 考にした。以下、表 1に基づいて評価された読解方 略の学習の程度を、学習レベルと記述する。

4. 3. 読解方略の学習を促進する指導を分析する 子どもの読解方略の学習レベルの差を調査するた方法 め、学習レベルの集計結果に対し、独立性の検定及 び残差分析を行った。このようにして得た有意な結 果から、読解方略の学習が選択性に到達した授業と

到達しなかった授業を特定し、それらを比較対象と した分析を行った。

分析には二種類の資料を用いた。読解方略の学習 が選択性に到達した授業と到達しなかった授業それ ぞれにおける、「学習ふりかえりシートの記述内容」

と「授業記録から作成した発話記録」である。これ らを分析対象とし、図 1における読解方略の学習過 程を分析の枠組みとして、選択性の学習に影響した と考えられる指導について考察した。

最後にこれらを通して得た知見について整理した。

5.実践の概要

5. 1.実践対象の学年の実態

実践期間は

2020

7

1

日から

7

10

日である。

公立小学校第

6

学年、全

5

クラス(全

148

名)を対 象に、筆者が授業者として行った。各クラスの学級 担任は指導に関与していない。

本実践は、

2020

年度における説明的文章の学習 の初めの単元に位置していた。そのため実践開発に あたり、

2019

年度における学習履歴とテスト結果 を参考に、各クラスの国語学力の実態及び方略学習 の履歴について把握した。

まず、

2019

年度に実施された国語科読むことの 単元テスト計

5

回におけるクラス間の平均点差、及

2019

年度に奈良県が実施した学力調査テストに おけるクラス間の平均点差は、ともに

100

点中

2

前後であった。これらは読解力のみの結果とはいえ ないものの、実践対象の

5

クラスは概ね同程度の国 語学力を有すると考えられた。

次に、実践対象の学年の学習履歴を図3に示す。

一学期:野口廣「見立てる」(光村図書国語五年平 成27年使用)

    本川達雄「生き物は円柱形」(光村図書国 語五年平成27年使用)

 指導内容:文章構成を三部構成で把握する。要 旨をまとめる。

二学期:武田康男「天気を予想する」(光村図書国 語五年平成27年使用)

 指導内容:図表・グラフ・写真を使った説明の 仕方と、その効果を理解する。

三学期:下村健一「想像力のスイッチを入れよう」

(光村図書国語五年平成27年使用)

 指導内容:事例と意見の意見の関係を把握する。

筆者の意見に対する自分の考えをま とめる。

図3 実践対象の学年の学習履歴 図 3から、実践対象の学年の学習者は、三部構成 の文章であれば、非連続テキストと文章内容とを関

(4)

連付けたり、事例と意見との関係を把握したりして、

文章の内容を理解することができる状態、そして筆 者の意見に対して自分の考えをまとめることができ る状態にあるであろうことが確認された。

5. 2.教材分析と指導内容の設定

使用した教材は一川誠「時計の時間と心の時間」

(光村図書国語六年令和

2

年使用)である。実践開発 の手続きは、まず、本教材を子どもが読む際に読み の困難が起こる局面について検討した。読みの困難 に着目する理由は、図 1で示したように、読みの困 難の意識化が方略学習の契機であるからである。次 に、特定した読みの困難を解決するために有効な読 解方略について検討し、指導内容として設定した。

その結果を表2に示す。

表2 読みの困難と対応する指導内容

読みの困難 指導内容

筆者の主張を捉える局面 ①筆者の主張を、文章構成と 表現から把握する。

心の時間の特性を理解す

る局面 ②概念の特徴を、対比の関係 を通して把握する。

2点目・3点目の事例の内

容を理解する局面 ③事例の内容を、既有知識や 経験と関連付けて把握する。

筆者の主張や論理に対し て自分の考えを形成する 局面

④筆者の主張や論の進め方に 着目し、自分の考えをまと める。

①筆者の主張を、文章構成と表現から把握する。

本教材は、人間の時間の感じ方が多様であること を、科学実験等の事例を根拠に説明した文章である。

本教材の論の進め方を図示すると、図 4のようにな る(図中の数字は形式段落の通し番号を指す)。

図4 「時計の時間と心の時間」の論の進め方 本教材は双括型の文章であり、最初の段落と最終 段落で筆者の主張が繰り返し述べられる。筆者の主 張は二つあり、

1

段落では次のように述べられる。

1

 実は、「時計の時間」と「心の時間」という、性

質の違う二つの時間があり、私たちはそれら と共に生きているのです。

(数字は形式段落の通し番号を指す。以下、同様。)

1

 そして、私は、「心の時間」に目を向けること が、時間と付き合っていくうえで、とても重要 であると考えています。

これら二つの主張を足立(

1984

)に基づいて分類 すると、前者は事実についての主張、後者は価値に ついての主張となる。二つの主張は、「心の時間」が 存在するという根拠を挙げることでいったん結論付 け(事実についての主張)、その上で「心の時間」に も目を向けて生活することの重要性へと話題を発展 させる(価値についての主張)という論の進め方で 説明される。このような論の進め方の文章は、発展 型の論理展開(古賀

2020

)と呼ばれるものである。

しかし子どもの学習履歴からは、発展型の論理展 開についての学習経験は見えない。したがって、筆 者の二つの主張を読み取る局面に読みの困難が起こ ると考えられる。よって、「筆者の主張を文章構成と 表現から把握する。」という指導内容を設定した。

②概念の特徴を、対比の関係を通して把握する。

先述した筆者の主張を理解するためには、「心の 時間」と「時計の時間」の特性を把握する必要があ る。これらの特性は次のように述べられる。

2

 「時計の時間」は、もともとは、地球の動きを もとに定められたもので、いつ、どこで、だれ が計っても同じように進みます。しかし、「心 の時間」はちがいます。「心の時間」とは、私 たちが体感している時間のことです。

7

 「心の時間」のちがいをこえて、私たちが社会 に関わることを可能にし、社会を成り立たせ ているのが「時計の時間」なのです。

このように「心の時間」の特性は、「時計の時間」

との対比の中で説明される。また、「心の時間」は香 西(

1996

)が分類するところの説得的定義にあたる ものである。つまり、筆者が説明のために便宜上用 いた語であり、抽象的な概念である。抽象概念の意 味を対比的に把握する経験は子どもの学習履歴には ないことから、読みの困難が起こると考えられる。

よって、「概念の特徴を、対比的な概念との関係を通 して把握する。」という指導内容を設定した。

③ 事例の内容を、既有知識や経験と関連付けて把握 する。

3

段落から

6

段落では、各段落に一つずつ計四つの 事例が挙げられる。この内、一つ目と四つ目の事例は、

子どもの既有知識や経験と関連付けやすいため理解 しやすい。反対に二つ目と三つ目の事例は科学実験 の内容であり、子どもの理解を助ける具体例が書か

(5)

れていないため、理解が難しい。よって、二つ目・三 つ目の事例の内容を理解する局面に読みの困難が起 こると考えられる。この解決のためには、事例の内容 について、意図的に自身の既有知識や経験と関連付 け、具体例を考えることが有効であると考える。この ような理由から、「事例の内容を、既有知識や経験と 関連付けて把握する。」という指導内容を設定した。

④ 筆者の主張や論の進め方に着目し、自分の考えを まとめる。

筆者の主張や論の進め方を理解するためには、上 述の指導内容①から③を踏まえて

8

段落を読むこと が求められる点で難しい。また、

8

段落の「『心の時 間』を頭に入れて、『時計の時間』を道具として使 う」という筆者の主張も、実感的な理解が難しい部 分である。さらに、筆者の主張や論の進め方を踏ま えて自分の考えを形成することは、自分の考えをま とめ、相手に伝わるように表現するということを含 めた、より総合的な思考力・判断力・表現力を必要 とする。このような読みの困難が想定されることか ら、「筆者の主張や論の進め方に着目し、自分の考え をまとめる。」という指導内容を設定した。

5. 3.単元の指導過程

指導内容を踏まえ設計した指導過程を図5に示す。

単元名:「筆者の主張や意図をとらえ、自分の考えを まとめよう」

第一次:読みの構えを作る(1時間)

 第1時:題名を読み、題名から想起するイメージを 交流する。学習計画を共有する。文章全体を読 み、感想を書く。

第二次:読みの困難を解決する(4時間)

 第1時:本文から筆者の主張を探し、考えたことを 交流する。

  筆者の主張が二つあることを捉え、説明文には筆 者の主張が複数ある場合があることを確認する。

 第2時:それぞれの事例の段落、内容、具体例につ いて考える。

  二つ目、三つ目の事例が分かりにくい理由と具体 例を考える。

  事例が主張を支える根拠の役割をしていることを 確認する。

 第3時:心の時間だけについて述べた自作教材と教 科書教材を読み比べる。伝わり方の違いについて 交流する。7段落の時計の時間と心の時間の特性 の違いについて、表に整理する。

 第4時:8段落を読み、筆者の主張の具体例を考え る。筆者の主張に対する自分の意見を書く。考え たことを交流する。

第三次:方略を使い、学習したことをまとめる。(1時間)

 第1時:「笑うから楽しい」を読み、筆者の主張に対 する自分の考えをワークシートに書く。書いたこ とを交流する。単元全体を通して学習したことを まとめる。

図5 実践の指導過程

第一次、第二次、第三次は、自己調整学習理論の 各段階と対応するようにした。つまり、単元全体を 学習のまとまりと捉えたときに、読みの構えをつく る第一次が「計画」段階、具体的に方略を学習する 第二次が「遂行あるいは意思的制御」段階、学習し た方略を別の文章に使う経験及び単元全体の学習を 振り返る第三次が「内省」段階と対応している。

また、第二次第

1

時から第

4

時の各授業は、図1 モデルに示される三つの局面が順に進行するように 構成した。すなわち、(

1

)既習方略の確認や読みの 困難の意識化を行う局面、(

2

)読みの困難の解消に 向けて方略の再選択や統合を個人学習及び考えの共 有を通して行う局面、(

3

)学習の振り返りを通して 使用した方略とその有効性を学習する局面、が順に 起こるように各授業の指導計画を作成した。

第二次第

1

時から第

4

時の各授業の指導内容を明 示的に指導する際は、子どもにとって分かりやすい と思われる表現にするため、「読み方のコツ」として 指導した。それぞれ、第

1

時「筆者の主張を見つけ る」、第

2

時「知っていることとつなげ、具体例を考 える」、第

3

時「対比の関係を考える」、第

4

時「事 例と主張の関係を考える」と「自分の考えをまとめ る」、という読み方のコツを指導した。

このような意図で実践を開発したことから、分析 対象は、実践全体のうち、第二次の第

1

時から第

4

時の授業とした。

6.実践の結果と分析

6. 1.読解方略の学習レベルの集計結果

第二次第

1

時から第

4

時における読解方略の学習 レベルを集計した結果、表3、表4、表5、表6、表 7の結果となった。表3から表6は第二次第

1

時から

4

時におけるクラス別の読解方略の学習レベルの 集計結果である。表 7は第二次第

1

時から第

4

時に おける、全子どもの読解方略の学習レベルの集計結 果である。なお、割合は行の母数における人数の割 合を百分率で表し、括弧内は当該レベルと評価され た学習者の人数を表している。また、残差分析の結 果から得られた調整残差の絶対値が

2.58

を超えた ものは

p<.01

とみなし「

**

」を、

1.96

を超えたもの

p<.05

とみなし「

*

」を付け、有意な差があった結 果として示している。

表3 第

1

時の読解方略の学習レベルの集計結果

(6)

表4 第

2

時の読解方略の学習レベルの集計結果

表5 第

3

時の読解方略の学習レベルの集計結果

表6 第

4

時の読解方略の学習レベルの集計結果

表7 読解方略の学習レベルの授業別集計結果

表3から、第

1

時では

3

組は選択性(レベル

2

)に 到達した子どもが有意に多く、

4

組は意識性(レベ

1

)に留まった子どもが有意に多かった。表 4 ら、第

2

時では

5

組は選択性に到達した子どもが有 意に多く、

2

組は意識性に留まった子どもが有意に 多かった。表5、表6から、第

3

時と第

4

時ではクラ ス間における読解方略の学習レベルに差はなかった。

表7から、第

4

時では統合性(レベル

3

)に到達した 子どもが有意に多かった。

また表 7から、第二次の第

1

時から第

4

時のいず れの授業においても、意識性のレベル以上に

90%

程度の子どもが、選択性のレベル以上には

70%

度の子どもが到達したことが分かった。

6. 2.読解方略の学習を促進する指導の分析 読解方略の学習が選択性に到達することに影響し た指導について考察するために、第

1

時の

3

組と

4

組、及び第

2

時の

2

組と

5

組の授業を分析対象とし て抽出し、比較した。

また、選択性に向けた実践構想であったにもかか わらず、第

4

時では統合性に到達した子どもが多 かった。そこで第

4

時も分析対象とし、統合性の学 習に到達することに関わった要因について考察した。

6. 2. 1.第二次第1時の分析

第二次第

1

時において、

4

組は意識性に留まった 子どもが有意に多く、

3

組は選択性に到達した子ど もが有意に多かった。

両クラスとも、授業は「筆者の主張は何か。」とい う発問から始まった。両クラスとも、

1

段落に書か れている「心の時間に目を向けることが時間と付き 合っていく上でとても重要になる。」と

8

段落に書か れている「心の時間を頭に入れて、時計の時間を道 具として使うという時間と付き合うちえなのです。」

が主張部分であるとする子どもの発言が続いた。

次に両クラスとも、教師が「主張と判断した理由 は何か。」という発問を行った。

この発問に対し

4

組では、まず「考えています、と 書いてあるから。」「僕も同じで、とても重要である、

と書いてあるから主張だと思いました。」というよ うに、文末表現に着目して主張を特定する方略に関 する発言が続いた。その後、「大体の説明文は、始め に意見を言って、中で理由を言って、最後になんか もう一回言うから、この始めに書いていることが主 張です。」「わたしは一段落と一番最後の段落で、そ れの一番最後に書いているから大事だと思いまし た。」というように、文章構成に着目して主張を特定 する方略に関する発言が続いた。最後にそれらの発 言を教師が整理し、「筆者の主張を見つける」という 読み方のコツとして明示的に指導し、学習をまとめ た。このように

4

組では、方略に関する読みの表出 は共有されたが、方略の有効性は教師が口頭で説明 するに留まった。

同じ発問に対し

3

組でも、文末表現に着目して主 張を特定する方略に関する発言から交流が始まった 時点では

4

組と同様の展開であった。しかし、

A

「一番最後のやつは、全部の文をまとめて、なんて言 うんやろ。一つにまとめている感じの、なんて言う ん、言葉で表すのが難しい。」と発言したことをきっ かけとし、教師が「誰か手伝ってあげて。」と促すと、

A

が伝えようとする内容を補足することに向けた発 言が数人にわたって続いた。その中で

B

の「まとめ て、最後これを言いたかったっていうのを言ってる 文やと思う。」という発言を受け、

C

が「あの、はじ めのほうは、心の時間に目を向けることが、時間と 付き合っていく上でとても重要であると考えている と書いているじゃないですか。それと同じようなこ

(7)

とが、最後にも、心の時間にも目を向けることの大 切さが見えてくるのではないでしょうかと書いてい るから、同じかなあと思った。」と発言をつなげた。

ここまでを聞いた

A

が「それを言いたかった。」と 発言し、

A

の言いたかった内容が

B

C

らの発言に よって集団に共有された。教師は、

C

の発言を受け、

「うんうん、そやな。こういう風に、はじめやおわり、

二つに主張がある文章、まるでサンドイッチのよう に主張が繰り返されている文章を、難しい言葉で双 括型の文章といいます。なのでこれで主張が見つけ られました。」と補足した。この補足は、子どもの発 言の内容を読みの困難を解決するために有効な読解 方略として整理する役割をもっていたといえる。

その後

3

組では教師が「実は筆者の主張がもう一 つある。それは何か。」と追発問を行った。子どもた ちは

1

分ほど本文を読み直すことに集中した。子ど もたちはなかなかもう一つの主張に気付くことがで きなかった。「どこやろう。」というつぶやきから見 られるように、読みの困難に直面していたと思われ る。そして、

D

が手を挙げ、「私たちは時計の時間と 心の時間という二つの時間とともに生活しています のところかなと思いました。」と発言した。教師がそ のように考えた理由を問うと、「えっと、ここも、は じめにも終わりにも書いてあるから、繰り返し言っ ているから重要なのではないかなと思いました。」

と発言した。

ここで

D

が使用した読解方略は、先に

A

B

C

によって集団に共有されたものである。つまり

D

は、共有を通して学習した方略を適切に再選択する ことで、読みの困難を解決したといえる。

また、

D

の発言を聞き、「あー。」「なるほど。」と 他の子どもがつぶやいていた。

D

の発言は、他の子 どもの読みの困難の解決にも役立っていた。

ここまでの両クラスの授業記録から、

3

組では、

4

組と異なる学習過程が二点あった。

一点目の違いは、「実は筆者の主張がもう一つあ る。それは何か。」という追発問の有無である。

4

には授業時間の都合上、教師が追発問を行うことが できていなかった。両クラスとも、授業冒頭に「筆 者の主張は何か。」という発問を行っていた。しかし この発問では、子どもにとって読みの困難は明確に 意識されていなかったと考えられる。なぜなら、子 どもはこれまでの学習においても筆者の主張を見つ ける学習活動を経験してきており、その意味でこの 発問は子どもにとっては既習方略を選択することで 解決できる問題であったからである。それが追発問 によって読みの困難が顕在化し、方略を再選択する 必要が生じたと考えられる。

3

組の授業は、追発問 によって既習方略を用いるだけでは解決できない問 題に子どもを出合わせることで、子どもが読みの困

難を明確に意識する局面があったと考えられる。

二点目の違いは、子どもの方略的な読み方が集団 に共有されることで読みの困難が解決される過程の 有無である。授業の前半部分では

3

組も

4

組も、文 章構成や文末表現に着目する方略に関する発言を共 有していた。しかし、

4

組では追発問が無かったこ とを背景に、子どもが読みの困難が明確に意識でき ていなかったことから、共有された方略が読みの困 難を解決するという過程は実感されにくかった。そ れに伴って、方略の有効性も感じにくかったと思わ れる。一方

3

組では、教師の追発問によって明確に 意識された読みの困難を、

A

B

C

の発言によって 共有された方略的な読み方を使って

D

が解決する という過程を共有することができていた。このよう

3

組では、子どもの方略的な発言のつながりを共 有することを通して、読みの困難の解消に向けた方 略の再選択を行う局面があったと考えられる。

学習ふりかえりシートにも、子どもの方略的な発 言の共有が方略学習に影響したことを裏付ける記述 がある。

3

組の選択性に到達した子ども

28

名の内

15

名の学習ふりかえりシートには、図 6、図 7のよう な旨の記述が見られた。ここでは一例として

E

F

の記述を示す。

①筆者の主張を見つけることです。

②筆者の伝えたいことがよく分かって、文の内容 がもっと分かるからです。

③大森先生やCくん、Dさんの意見を聞いた時に思 いました。

図6 第

2

時における

E

の学習ふりかえりシート

①説明文には、必ずどこかに筆者が伝えたかった こと、すなわち主張が書かれてあるので、そこ に注目する。

②筆者の主張を理解すれば、文章が読みやすくな る上文章の内容を理解しやすくなるから。

③「主張は何だろう」という質問に対するAくん、

Dさん、Cくんの意見の内容を聞いて思った。

図7 第

2

時における

F

の学習ふりかえりシート 図6、図7の③の記述から、

E

F

も、

A

C

D

の方略的な発言を聞いたときに、方略の使い方や有 効性についての学習が起こっていた可能性が高い。

A

C

D

の特に誰の意見が最も大きく影響したかは 判断できないものの、先述した一連の共有の過程が

3

組の子どもの読解方略の選択性の学習に影響した 可能性は高いといえる。

6. 2. 2.第二次第2時の分析

第二次第

2

時において、

2

組は意識性に留まった

(8)

子どもが有意に多く、

5

組は選択性に到達した子ど もが有意に多かった。

2

時では、教師がそれぞれの事例に対し、「事例 で述べていることと関連する経験があるか。」「事例 で述べていることに納得できるか。」等の発問を行 うことにより、子どもに「事例の内容が分かりにく い」という読みの困難を意識化させようとした。具 体的な発問は表8のとおりである。

表8 

2

組と

5

組における教師の発問 2組における発問 5組における発問 T1 例えば、ゲームをして

いると時間が早く感じ る。そういうことはあ りますか。

T2 時間がなかなかたたな かった経験はありませ んか。

T3 朝は動きが遅くなるか ら、普段やったら10分 で食べてるのに朝ごは んとか20分30分とか時 間かけてぼーっと食べ てることはないですか。

T4 どうですか。部屋には 物が多いタイプですか。

少ないタイプですか。

T5 それで、3段落に書い てあることはみんな納 得できますか。

T6 みんなどう。納得でき ますか。朝とか夜って あっという間に時間が たちますか。

T7 分かる人。分からない 人。半々くらいに分か れるね。何か例はある かな。

T8 物がたくさんある方 が、時間の進み方が遅 く感じるんやって。こ れってみんな納得でき ますか。

表8から、

2

組と

5

組で発問した内容はともに「生 活の中で事例と類似の経験をしたことがあるか」で あり、共通していたことが分かる。しかし発問に使 われた言葉を基にして発問の機能を比べると、両者 の間には二つの機能的な違いが見出された。

一つ目の違いは、

2

組での発問が経験の内容に焦 点を当てていたが、

5

組での発問は事例に対して納 得できるかどうかに焦点を当てていた点にあった。

5

組での発問

T5

T6

T8

では、「○○とあるが納得 できるか。」という問い方をしていた。この発問の機 能を図 1に照らして子どもの立場から解釈すると、

文章理解と意見の産出に向けての読みの困難の意識 化が起こり、方略帰属と適応に向かっていくことが できる問い方であったといえる。なぜなら、納得で きるかどうかという意見の産出をするためには文章 理解が必要であり、そのためには事例部分の内容と 生活経験とを関連付けて具体的に考えるという方略 が有効になると思われるからである。一方、

2

組で の発問

T1

から

T4

はそれぞれ、「○○した経験はあ るか。」という問い方をしていた。この発問の機能に ついて同様に考えると、生活上の経験を思い出し、

類似する経験の有無を考えることで解決できる問題 であることから、子どもに文章理解を求める必然性

が強いものではなかったと考えられる。すなわち、

2

組での発問は、読みの困難を意識化させる機能が弱 かったといえる。

二つ目の違いは、

5

組では子ども自身に文章理解 に役立つ具体例を考えさせているが、

2

組では教師 がその具体例を提示している点にあった。この違い は、方略を選択し使用する主体が子どもにあるか教 師にあるかの違いであるといえる。

5

組では、教師 の発問が特定の方略の使用を促してはいるものの、

実際に方略を使う主体は子どもであった。一方

2

では、子どもは教師の発問には適切に応答していた が、方略を自分自身で使って読むことはできていな かったのではないだろうか。つまり、

2

組での発問 は読みの困難の解消に向けた方略の選択を促す機能 が弱かったといえる。

このように、

2

組における発問は

5

組と比べ、読み の困難を意識化させる機能と、読みの困難の解消に 向けた方略の選択を促す機能が弱かったことが、読 解方略の学習に影響した可能性が考えられる。

発問の機能の違いが読解方略の学習に影響したこ とは、発問に対する子どもの反応からも確認できた。

類似の学習場面における両クラスの子どもの反応を 表9に示す。

表9 

2

組と

5

組における子どもの反応

2組 5組

T:朝は動きが遅くなるか ら、普段やったら10分 で食べてるのに朝ごは んとか20分30分とか時 間かけてぼーっと食べ てることはないですか。

C:今日や。

C:眠りながら食べてた。

C:お母さんに給食早いの に朝遅いなあって言わ れる。

T:うんうん。今みたいな のが、具体例というこ とだね。

T:みんなどう。納得でき ますか。朝とか夜って あっという間に時間が たちますか。

C:うーん。

C:そうかなあ。

T:たつひと。分かる人。

分からん人。半々くら いに分かれるね。何か 例あるかな。

C:朝バタバタしてる。

T:あー。体の動きが遅い から、ゆっくり食べて るから、朝バタバタし ちゃう。あ、もうこん な時間やって。

C:あー。ある。

C:そういうことか。

2

組では、朝ごはんを例に、時間をかけて食べて しまう経験があるかどうかを問うていた。それに対 して、子どもは「眠りながら食べていた。」「お母さ んに給食は食べるのが早いが朝ごはんを食べるのは 遅いと言われる。」等の類似の経験があったことを 発言していた。この時の子どもの発言の内容は、食

(9)

べ方や食べる速さに焦点化されており、文章が伝え ている「心の時間の進み方が朝は遅くなること」に 照らして考えることはできていなかった。つまり、

単に経験を振り返っただけで、読解方略として使用 されたわけではなかった。

一方

5

組では、時間の進み方の違いに焦点を当て、

それを実感できるかどうかを問うていた。そのため

5

組では、「うーん。」「そうかなあ。」と、判断に困 る反応が見られた。これは、読みの困難が教師の発 問によって意識化された瞬間であるとも捉えられる。

その後教師は、全員の立場を挙手によって確認し、

子ども自身に例を考えるように促していた。すると、

「朝バタバタしてる。」と発言があった。その発言に 教師が「あー。体の動きが遅いから、ゆっくり食べ てるから、朝バタバタしちゃう。あ、もうこんな時 間やって。」と返すことで、「あー。ある。」「そうい うことか。」等のつぶやきが返ってきていた。これら のつぶやきは資料作成上重複する発言を一つにまと めて示しているが、実際には複数人が類似するつぶ やきを発していた。このときの子どもは、文章が伝 えている「時間の進み方」に照らして自身の経験を 振り返り、自分たちで文章内容に関連する具体例を 考えることで、事例の内容を理解する経験をしてい たと考えられる。したがって、「あー。ある。」とい う子どもの反応から、事例の内容が分かりにくいと いう読みの困難に対し、具体例を考えるという方略 を使うことで読みの困難が解決されたという学習過 程があったのではないかと考えられる。

このように、指導計画上の差はなくとも、教師の 発問の機能の違いが読解方略の選択性の学習に影響 することが示唆された。

6. 2. 3.第二次第4時の分析

第二次第

4

時は、第二次第

1

時から第

3

時と比べ て、統合性へと到達した子どもが有意に多かった授 業である。その人数は

12

名であり、子ども全体の人 数から考えると決して多いとはいえない。しかしこ の結果は第

1

時から第

3

時の授業と比べて有意に多 いことから、第

4

時には読解方略が統合性に到達す ることに関わる要因があったと思われる。

4

時では、筆者の主張や論の進め方を踏まえ、

自分の考えを文章にまとめる学習を行った。ここに

4

時の指導計画上の特徴があった。それは、第

1

時から第

3

時の授業が文章内容の理解を主な目的と した読解方略を扱ったことに対し、第

4

時は文章内 容を踏まえた意見の産出に使用する読解方略を扱っ たことである。

統合性に到達していた

12

名の学習ふりかえり シートからは、「自分の考えをまとめる」ために、「筆 者の主張を見つける」方略や「自分の経験とつなげ

る」方略を統合して用いることの有効性についての 記述が見られた。第

4

時が「自分の考えをまとめる」

という表現活動の目的に向けて文章を読む状況で あったために、子どもは文章から必要な情報を効果 的に得られる読解方略を選択・統合して使用したと 考えられる。その方略が子どもにとっては「筆者の 主張を見つける」方略や「自分の経験とつなげる」

方略だったといえる。

子どもが統合性のレベルで読解方略を使用するた めには、統合される方略が選択性のレベルで既に学 習されている必要がある。したがって第

4

時では、

単元全体を選択性に向けた読解方略指導として構想 したことを背景に、統合性に到達した子どもが増え たと考えられる。このことから、小学校段階におい ても、読解方略を段階的に発達させることを意図し た単元構想によって、統合性のレベルの学習が可能 であることが示唆された。

7.本研究の成果と課題

本研究では、単元全体を読解方略指導として構想 し、選択性の学習に向けた実践を開発、実施した。そ れにより小学校第

6

学年において、指導目標とした 任意の読解方略を選択性に向けて指導することが可 能であることを明らかにした。また小学校第

6

学年 において、単元全体を選択性に向けた読解方略指導 として構想し指導することが可能であることを明ら かにした。

そして、読解方略の学習が、意識性から選択性の レベルへと到達するためには、次のような指導が重 要であることが示唆された。

第一に、読みの困難が子どもに明確に意識される ような発問や学習活動が行われることが重要であっ た。指導にあたっては、事前に作成した指導計画で は読みの困難の意識化が不十分な場合もあることに 留意し、子どもが読みの困難を明確に意識する局面 を作り出すことが重要である。そのためには、既習 方略を選択しては解決できない発問を行ったり、読 みの困難に対する子どもの反応を促したりする指導 の工夫が有効であった。

第二に、読みの困難を解決するための手段として、

子ども自身が方略を用いて読むことが重要であった。

そのためには、子どもが文章内容を自分で判断した り解釈したりする必要がある発問を行ったり、文章 に照らして考えさせたりする指導の工夫が有効で あった。この時、教師が子どもの代わりに方略の用 い方を示すことは、読解方略の選択性に向けた学習 には有効に機能しないことが示唆された。しかし、

意識性のレベルでの学習には十分有効であったこと から、低・中学年が指導対象である場合等、読解方 略の意識性に向けた学習を指導する際には有効な指

(10)

導法として活用できる可能性がある。

第三に、読みの困難が解決されることを通して、

子どもが方略に対する有効性の認識を獲得すること が重要であった。そのためには、子どもの方略的な 読みを共有することを通して、読みの困難を解決し たり方略に対する有効性を認識したりする指導の工 夫が有効であった。方略に対する有効性の認識を指 導する際は、教師が子どもの発言内容を、読みの困 難の解決に役立った読み方として意味付け、読解方 略として整理することが効果的であった。方略の有 効性の認識については、教師の講話等の方法で子ど もに明示的に伝えることも可能である。しかしその ような概念的な理解では、読解方略の学習は選択性 には到達しにくいことが示唆された。ただし、概念 的な理解に留まった指導においても意識性には到達 することができていたことから、例えば子どもが自 分の力では方略の有効性の認識を持つことが出来な い場合や、意図して意識性に向けた読解方略指導を 行う場合等には、教師が方略の有効性を明示的に伝 えることも有効な指導法として機能すると思われる。

また、子どもの読解方略を段階的に発達させるこ とを意図した単元構想の重要性が示唆された。選択 性に向けた指導においても、読解方略を意識性から 選択性へと段階的に発達することを意図した単元構 想を行うことが、選択性の学習として有効である可 能性があると思われる。そのためには、単発の単元 構想に留まらず、より長期的な視点からの系統的、

継続的な読解方略指導の実践開発が期待される。

一方、本研究の課題としては、レベル

0

の子ども、

すなわち意識性に到達できていない子どもの分析に 至っていないことが挙げられる。レベル

0

の子ども が意識性に到達するための、すなわち方略意識の萌 芽を支援する指導法について、今後も検討していく 必要があると思われる。

また、本研究で行った実践は第

6

学年段階、すな わち高学年段階におけるものであり、低学年・中学 年段階における読解方略指導についての具体的な検 討はできていない。低学年・中学年段階の指導にお いては、発達段階に応じて、そして読解方略の学習 レベルに応じて、高学年段階とは異なる読解方略指 導の様相があると思われる。一方、低学年・中学年 段階の読解方略指導を検討する立場から本研究の成 果を捉え直すと、意識性に向けた指導についての示 唆を得ることもできたといえよう。これらの示唆は、

選択性の学習に到達しなかった指導の分析を経て逆 説的に得られたものではあるが、低学年・中学年段 階における読解方略指導の在り方を検討する足掛か りとして援用することもできるのではないだろうか。

低学年・中学年段階における読解方略指導の在り 方を捉えること、そして複数の単元にわたる観察と

分析を通して読解方略指導の在り方を捉えることを、

今後の研究上の課題としたい。

謝辞本研究を進めるにあたり、奈良教育大学教職大学 院の東畠智子先生、北川剛司先生をはじめ、ご指導 を賜りました先生方に心より感謝申し上げます。ま た、実践研究を進めるにあたりご理解とご協力を賜 りました置籍校の石村吉偉校長先生をはじめ、教職 員の皆様と子どもたちに、心より感謝申し上げます。

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52

参照

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