明治時代以降の「〜川」の連濁と非連濁について
著者 城岡 啓二
雑誌名 人文論集
巻 64
号 1‑2
ページ A159‑A185
発行年 2014‑01‑31
出版者 静岡大学人文社会科学部
URL http://doi.org/10.14945/00007644
明治時代以降の 「〜川」の連濁 と非連濁 について
城 岡 啓 二
0.序
現代 の河川名 は、山間部 を流れる細流でなければ1、 漢字表記では 「〜川」に な り、発音 は、連濁 して「〜ガ フ」 になるものが多い。「安倍川」「富士川」「荒 川
J「
自りII」「松川」「石川」「刷 ‖J「
相川」「市川」のような連濁 しない河川名 もあ るが、少数派 である。「自蛇」が連濁 してシロベ ビにならないような規員U性はラ イマン2の法則 と呼ばれるが、カフには濁音は含 まれないので、連濁 しない河り││名が使われ続 ける理由は、 ライマンの法則 とは異 なる性質をもつはずである。
「〜カフ」が使われるとして、連濁を抑制 しているのは何だろうか。前項 (第一 要素)の末尾の濁音拍3、 ラ行拍4が関係 していることはこれまでも指摘を受け ているが、少なくとも現代では、濁音拍が先行することは「〜川」の連濁を抑 える強い傾向は持たない し、ラ行拍が必ず「〜川」の連濁 を抑えるわけでもな い。「川」に接続する前項部分の拍数なども「川」の連濁・非連濁
6と
明治時代 以降の言語変化に関係 していると思われる。明治時代以降の言語変化の中での 傾向を調べてみる必要もあるだろう。また、前項末の濁音拍やラ行拍 とい う条 件はマツカフ、イシカフ、アイカフ、イチカフにはまった くあてはまらない。1「
〜沢」ゃ 「〜谷Jなどが しば しば使われ る。2 BellJamin Snuth ttman。
明治初年 に来 日した鉱山学 が専門のお雇い外国人で、北海道や 日本各 地 の地質調査 に従事 したひとである。
3中メ│(1978)は潮 ‖名以外 の固有名詞の例 を指摘するな どして、濁音連続 を回避する傾向がある ことを述べている。
4石井 (1997)は「自川日 や 「荒川日 の例 か ら
/r/が
連濁 を抑制 している可能性 を検討するが、睦 川Jの例 にあた り、考 えを推 し進 めることがで きなかった ようだ。HIRANO(2000)は「桂リロ の ような例 はあげず、他 の多 くの/″が関係 する連濁 が抑制 され る河川名をあげることで/プが連 濁 を抑制す ることを指摘 している。連濁・ 非連濁 について信頼性のあまりない事典 をもとに考察してい る 〈注 の7参照)のが惜 しまれる。
5「
非連濁」は術語 として確立 していないが他 に適当な言い方 がないので使 っている。中川(1966)
│ま「連清Jと呼んでいるが、 この言い方 はその後 も一般化 していない。
‑ 159‑
これらの場合 には、〃 や/u/の狭母音拍が力行連濁 に関係 している可能性があ り そうだ。
「〜川」は河川 名であるが、地名 として も使われ、姓 としても使われている が、それぞれ、 ある程度は信頼できる発音資料があ り、現在ならある程度客観 的に調査可能 である。 と くに著名な地名や大河川であれ ば、明治維新後の小学 校 の地理教材 の参考書 は発音 を載せ ているし、村名 な どの小地名であって も、
内務省地理局が現地の発音 を照会 し、全国の地名索引を出版 している6。 これ ま で河川名や固有名詞の連濁 を考 える場合 に発音資料が利用 されない まま、研究 者 の直観や個人的体験 をもとに考察 され る場合 もあった し、便利 な全国河川名 辞典の類 には連濁 や厳密 な発音の調査 には不適 なものもある7。 本 稿では、〜カ フと〜ガフについて河川名の言語変化 の傾向や現在 の状態、 さらに他 の固有名 詞や普通名詞 の傾 向 もあわせ て 「〜川Jの連濁 と非連濁 の条件や傾 向、 そ して 言語変化 について発音資料 をもとに考察 したい。
1.現代 日本語の河川名の強い連濁傾 向
′
現代 日本語の河川名 は、カワよ りもガフと読 まれることが圧倒 的に多い。『地 名集 日利 (2007)と い う標準地名集がある。2007年 に編集 され、国主交通省国 土地理院のホームページでPDF版が公開 されていて、「日本国政府 (国土地理院 と海上保安庁海洋情報部)力S,我が国の行政,居住, 自然,海底地形等 の標準 化 された地名情報 を総合的 にまとめたもの」とい う説明がホームページにある。
F地名集 日本』 には約3,900件 の地名があ り、合計324の河川名の登録がある8。
F地名集 日本』でカフを使 う24河川 は、北か ら南へ挙 げてお く。堀株洲 〈ほ り かっぷかわ)、 朱太川 (しゅぶ とかわ)、 元浦り││(も とうらかわ)、 鵡川 (むか わ)、 和賀川 (わがかわ)、 須川 (すかわ)、 荒川 (あらかわ)、 ガ ‖(おおかわ)、
6明治期 になって全国の地名の発音が内務省地理局 によって調べ られている。明治
14年
の「郡区町 村一覧Jは、地域別 に郡や町や村 が発音付 きで まとめられた資料である。 これ を漢字別 に編成 し なお して、明治16年
に一部追加調査 して、全国の郡や町や村がやは,発音付 きで公刊 されたのが 明治18年
の『地名索3旧
である。'一例 をあげると、 日外 アツシエーツのrttH名よみかた辞典J(1"1)は全国の河″1名を網羅 し てお り、現代の河:I名を調べるには便利 そうだ力ヽ 連濁や非連濁 を問題 にするような調査 目的に は適 していない。フジガフ
(富
士"り
やジンツク″ワ
(神
J‖)とい う非標準的な発音表記 を何 の断 りもな しに載せているし、静岡県 にアラガフ(剤‖)め'あるとされるが、他 の発音資料 で裏 付けることはで きず、正確であるとは考えられない。8河‖は複数の地域 をまたがって流れ る関係で、同一潮 口の異名が登録 された り、同一潮 ‖の複数 登録 もあるようである。 .
用ll(ひめかわ)、 洵II(あ らかわ)、 元剤 II(も とあ らかわ)、 富士川 (ふじかわ)、 早川 (はや かわ)、 斐伊川 (ひいかわ)、 安倍川 (あべかわ)、
市り
H(い
ちかわ)、 江 の川 (ごうのかわ)、 江 の表
1『
地名集日本』(2007) 河川名の〜カワと〜ガワ〜 ガ フ 300
926%
〜 カ フ 24
74%
川 (可愛川)(ごうのかわ (えのかわ
))、
紀ノ川 (きのかわ)、 十津川 (とつか わ)、 肱り││(ひじかわ)、 緑りll(みどりかわ)、 自川 (し らかわ)。 二回出て くる「荒川」や「江の川」は同一河川の上流や下流が採録されたものである。
このうちすでに〜ガフヘの変化が進んでいると思われる河川名が幾つかある。
北海道の「堀株川 (ほ りかっぶかわ
)は
ウィキペディア日本語版9では「堀株川(ほ りかっぷがわ)」 になっているし、北海道の朱剰
││は
、『地名集 日本』や『標 準地名集J(1981)ではシュプ トカフとされているが、『コンサイス地名事典』や『自然地名集』(1991)ではシュブ トガフとされてお り、ネ ット上でもシュブト ガフと連濁形を使 うひとの方が多いようである。
「地名集 日本』の非連濁の河川名からは、前項の末尾の拍に特徴があることを 確認 しておきたい。先行拍がラ行拍の河川名が多い。元浦川、荒川 (2か所)、
元荒川、創││、 自ガLそれから、先行拍が〃 や/u/の狭母音の河川名も多い。堀 株川、鵡川、須川、富士川、斐伊川、市川、十津川、肱川、翻II。 先行拍が濁 音拍の河川名も一定数混 じっている。和賀川IC、 富士川、安倍川、肱川。最後 に、助詞のノがはいるタイプもある。江の川、江の川 (可愛り11)、 紀ノ川。
河川名の強い連濁傾向は、明治期以降強まってきた傾向であることは、次章 で詳 しくみる。現代では、固有名詞一般の枠組みの中でも河川名がとくに強い 連濁傾向を示すことを確認 してお こうn。 現代の島名の〜シマ/〜ジマ と比較 してみると、河川名の連濁傾向の強さは明瞭になる。「しまっぶ統合版
Jは
海上 保安庁のホームページで公開されている瀬戸内海の島のデータベースである。広島県、岡山県、香川県、愛媛県、山口県の、合計909の島のデータカ
iま
とめら れ、データの中には島名もあるので、これを使 って、「〜シマ」 と「〜ジマ」の 割合を調べてみた。シマでもジマでもない「赤バエJや「牛ノ子岩」のような 島名は「その他」に分類 した。連濁する河川名は926%だが、瀬戸内海の島名では11̲4%に過 ぎない。島名
'411のウィキペディアの調査 は2013年 9月 か ら
10月
である。Ю北上川の支流の「和賀川日 は,ィ キペディアでは「わかかわ」。
11本稿では扱わないが、「〜制 の橋染名 も強い連濁傾向 をもつ。連濁 しないのは「〜大橋」 ぐら いで、現在、橋 は違濁す るのが当然のような状況 になってい る。
‑161‑
では〜シマや〜ジマ以外 に分類 され るものが多 いが、〜シマ と〜ジマだけで百分率 を出しても、
〜 シマが845%、 〜 ジマが155%で、や は り、
島名での連濁率 ははるかに低 くなっている。4 章で固有名詞一般 の枠組みの中で連濁や非連濁 を説明す るようなモデルを検討す るが、連濁 を
表
2
島名の連濁・ 非連濁 (瀬戸内海)
〜 シ マ 625%
,■
104●::││1111114,41その他
261%
■合 計
│■
‐t::909i trtl:m0-096 推進 した り、抑制 した りす る条件 は河川名 よ りも連濁傾 向のはるかに低 い島名 で明瞭 になるのではないか と思われ る。一例 だけあげると、河り│1名
では濁音連 続 の回避 による連濁の抑制 は現代ではまれになって きていて、「安倍川 (アベカ フ)Jのような河川名 は例外的にな りつつあるが、島名では、濁音拍後 に連濁 し て〜ジマ になる島名 はきわめて まれで、「阿多田島 (アタダジマ)J(広島県大竹 市)と 「双子島 (フタゴジマ)」 (二つの島、香川県東 かがわ市)し
か 「しまっぷ統合版 」 のデータになかった。通常 は濁音連続 を回避 して、「長 島 (ナガシ マ)J「鍋島 (ナベシマ)」 の ようになるし、他 にも、「黒部島
(ク
ロベシマ)」 (愛 媛県愛南町)、「筏島(イ
カダシマ)」 (岡山県玉野市)、「宇治島 (ウジシマ)」 (広 島県福 山市)、「梶 島 (カジシマ)」 (愛媛県今治市)、「樺島 (カバ シマ)」 (山口県 周南市)、「粒島 (ツ プシマ)」 (愛媛県今治市)、「坊主島 (ボウズシマ)J(岡山県 玉野市 と土庄町 に二島)力`ある。「長島」は瀬戸内海 に6島あるが、すべてナガシマでナガジマになることはない12。
2
明治期以降の河川名の連濁・ 非連濁の変遷カフか らガ フヘの大 きな変化の傾 向は、明治期以降の河川名の変遷で も確認 で きる。『 日本地誌略』は明治初年 に師範学校 (東京 師範学校 の前身)で編集 さ れた小学校 の地理教材 で、 当時の慣行では、 これ を各地で印刷 しなお して教科 書 として利用 した。「 日本地誌略』に記載 された河川 名 は全国の主 な河川 が網羅 されてい るはずであるが、 その後、上流 と下流の河川名が統合 された り、名称 が変わった り、必ず しも現在 に河川名 として残 つているわ けではない。
教科書 自体 には河川名の発音は書いてないが、「字引」̀と名付 けられることの 多い『 日本地誌略』専用の参考書が同時 に各地で出版 されていて、 これが河川
12郵便番号簿の地名でも例外 な くナガシマである。
"「
字,日 と名付 けられることが多かつたが、意味や説明はほ とん とな く、固有名詞や難 しい語の 正 しい読み方 を教 える参考 書である。名の発音資料 になる。小林義則編の『改正 日本地誌略字引大全』(1876)│ま、神 奈川県師範学校 に所属の 「編輯兼出版人」の小林が、各地の師範 (学)校や博 習校、県学務課に所属するひとに「訂正」 してもらい、現地発音を記録 した比 較的信頼できる発音資料である14。 駿河の部分は静岡県師範校のひとが「訂正」
し、伊豆なら足柄県師範校担当で、遠江なら浜松県師範校である。尾張 と参河 は愛智師範学校のひとが 「訂正
Jし
ている。なお、「改正 日本地誌略字引大全』は、明治4年の廃藩置県からしばらく後の 出版であるが、府県は使われず、1日国名 (令制国名)別に記述されている。
2.1 前項が3拍以上の河川名の明治期以降の連濁化
河川名で前項が3拍以上でカフになるものを『改正 日本地誌略字引大全』か ら取 り出したものが下の一覧である。なお、3拍以上 といっても、テンノカワ の 「〜ノカフ」の場合は前項が「〜ノ」 までとも言えないので、そういう河川 名はリス トから除外 してある。河川名の掲載の順序は『字引大全』に出て来る 順序 にしてある。
黒田川 ……クロダカハ………伊賀国 金 目川 ……カナ ヒカハ………相模国 神通り
││…
…ジンヅウカハ……飛騨国 越 中国 碓氷川……ウス ヒカハ………上野国 神流川……カ ンナカハ………上野国 鏑川 ¨¨……カ プラカハ………。上野国 境川 ………サ カヒカハ………上野国 磐井川……イハイカハ………陸中国 矢嶋川……ヤシマカハ………羽後国 菅生川 ……スガ フカハ………能登国羽昨川……ハク ヒカハ………能登国 神代り
││…
…カク ミカハ………能登国 常願寺川…ジヤウグフンジカハ………越 中国 片貝川 ……カタカ ヒカハ……越 中国 糸魚川 ……イ トイカハ………但馬国 出石川 ……イ ヅシカハ………但馬国 大浜川 ……オオハマカハ……但馬国 城 ノ崎川…キノサ キカハ……但馬国 千代川 ……セ ンダイカハ……因幡国 八刺
ll…
…ハ ツ トウカハ……因幡国個人編集の字引 きな どでは発音表記 は正確ではなかった と思われる。知 らない土地の発音 は難 し かったようである。た とえ1魚 明治初年 に出版 された『日本地誌略Jの字,きや全国地名辞典 を 幾つか調べてみ ると、富士川 は「フジカハ」 と記 した もの しか見つか らなかったが、安倍川 を
「アベガハ」 とす るものが複数見つかった。「皇国地名字類J(福岡欽崇編、愛知県で明8に出版) と「 日本地誌略学ヲJ(吉見重二郎編、京調 府で明9に出版)の二つである。「日本 自然地名辞典]
(1983)は、「近時、『あぺがわJともいわれ るようになったが、本来 は「あぺかわ』が正 しぃ」 と 書いてい るが、他地域 のひとが「安倍川日 を連濁 させ るのは近時に始 まった ことではない ことが 分かる。
‑163‑
因幡川 ……イナバカハ………因幡国 加勢蛇川…カセダカハ………因幡国 洗川………アラヒカハ………因幡国 勝 田川 ……カ ツダカハ………因幡国 十間川 ……ジ ッケンカハ……出雲 国 玉造川……タマツク リカハ…出雲国 乃 自川 ……ノシラカハ………出雲国 石見川 ……イハ ミカハ………石見国 西谷り‖……ニシタニカハ……播磨国 御方川…… ミカタカハ………播磨国 熊見川 ……クマ ミカハ………播磨国 久樹 ‖……クザキカハ ……・播磨 国 吉井川……ヨシヰカハ………備前国
朝 日川……アサ ヒカハ………備前国 吉田川…… ヨシタカハ………安芸国 大竹川 ……オオタケカハ……安芸国 椋梨川……ムクナシカハ……安芸国 地福川……ヂフクカハ………長門国 広戸川 …… ヒロ トカハ………安房国 重信川……シグノプカハ……伊予国 石手川……イシテカハ………伊予国 長野川……ナガノカハ………伊予国 吉野川 …… ヨシノカハ………伊 予国 奈半利川 …ナハ リカハ………土佐国 物部川……モノベカハ………土佐国
複合語前項 が3拍以上 で 「川Jと複合 しているこれ らの河川名 はその後 どの ようになっただろうか。確認 で きる限 り、上記 の〜カフのかな りのものが〜ガ フに変化 してい る。大正時代 に出版 された「日本地図帖地名索引』15で連濁が確 認で きる河川名 をこの本 の表記 の通 りに出 してお く。羽咋川 (能登16国、ハク イガハ)、 神代川 (能登国、→カク ミガハ)、 神通り‖(飛騨国/越中国、→ ジン ヅウガハ)、 常願寺川 (越中国、→ ジヤウグフンジガハ)、 片貝川 (越中国、→
カタカ ヒガハ)、 出石川 (但馬国、→ イゾシガハ)、 千代川 (因幡国、→セ ンダ イガハ)、 御方りll(播磨国、→ ミカタガハ)、 朝 日川 (備前国、→ 「旭川」 アサ ヒガハ)、 椋梨川 (安芸国、→ ムクナシガハ)、 重信川 (伊予国、→ シグノブガ ハ)、 石手川 (伊予国、→イシテガハ)、 奈半利川 (土佐国、→チハ リガハ)。 F日
本地図帖地名索3増 に記載がないが、ウィキペディアで連濁が確認できる河川 名をウィキペディアの表記のままあげると、llt氷川 (上野国)、 神流川 (上野 国)、 鏑川 (上野国)、 磐井川 〈陸中国)、 十間川 (出雲国)がある。勝田川 (カ
ツダカハ、因幡国)の場合は促音化 と前項内部の連濁の解除が起 きたようで、
カッタガフになったようである17。 また、上記の河川名で大正時代 も連濁せず
お地質学者・ 地理学者の小川琢治 力編 集 しているが、「日本地図1占地名索
,日
は、同 じ著者 のr市
町村大学読方名彙Jとならんで大正期 の地名資料 として基本図書 になっている。 とはいえ、斐伊"躙 載 されていないなど、掲載潮 ‖名の選択基準 に不明な ところがある。
お石川県学務課のひとが「.lIJしているが、「能登」 にノ ドとい う発音 を付 けている。
"「勝田川
(か
ったがわ)は、鳥取県東伯郡琴浦 町の二級河川であるJ(ウ ィキペディア)。に「〜カフ」だった ことが確認で きる河川名 もない。以上 の ことか ら、カフに 3拍以上 の前項 が接続 す る場合 は、明治初年 には必ず しも連濁 しなかったのが、
現在 までの間 にかな り強い規則性 が生 じていて、連濁す るようになった ことが 分 か る。 しかも、前項の末尾 がラ行拍、濁音拍 であることにはかかわ らず連濁 していて、前項が3拍以上 あることが連濁 を抑制す る傾 向を抑 え込 み、強い連 濁傾 向を生んでいると考 え られ る。もっ とも、『字引大全』には例 がなかったが、
前項 の末尾が ラ行拍で、 なおかつ狭母音 あるいはハ/の場合 には、連濁 を抑制す る力がた とえ3拍であっても失われて しまわない ようで、現在でも、「濁川
J「
鉛 ヵ口「alII」 は非連濁 が普通である。「濁Л」 は地名で も河り│1名
でもニゴ リカフが 優勢 であるし、北海道 二海郡八雲町の「鉛川Jと
い う地名 はナマ リカ フと発音 している。『自然地名集』 には河川 の 「緑川」は四か所 にあるが、三か所 (熊本 県3か所 だが、同一河川 の登録か もしれない)がミ ドリカ フで、宮崎県 に ミドリガ フが一 か所 である。
なお、前項 が3拍の河川名で連濁・非連濁 に関 して複雑 な変化 を したのが佐 渡国の石 田川 である。「改正地誌略字引大全』ではイシタガハ になっていた。石 田村 があ り、当地 ではイシタ と発音 していた ことが『郡 区町村一覧』で確認で きる。明治初年で もイシダ村 の方が全国 にはるかに多 く
(イ
シタヽ が21村 に対 してイシタ村 は6村)、 例外的に非連濁形 を使 っていたわけであるが、大正時代 まで にはイシダ と言 うようになった らしい。河川名 は地名 に合 わせ て変化 し、『 日本地図帖地名索 引Jでは、 イシダカハ になっていて、 この語形 を一時的 に 使 っていた らしい。佐渡市役所建築課 か らイシダガ フ とい う発音 を、現在、地 元 では使 っている とい う回答 を得 てい る。イシタガハか らイシダカハヘの変化 では連濁 す る場所 が移El」しているが、濁音連続 を回避す る意味がイシダカハ の 語形 にはあったのだろ う。
2.2 前項が2拍以下の河川名 と連濁抑制条件
前項が2拍以下の河川名で連濁 しないものを『改正 日本地誌略字引大全』か ら取 り出 しておこう。前項が2拍以下だと、固有名詞であ りながら各地 に同名 の河川名が存在する場合がかなりある。 リス トでは、同名で別の河川の場合 に 河川名の後に
a、 b、 c、
dを付 けて区別 した。相川a……アヒカハ…………山城国 石川a……ィシカハ…………河内国
安治川 ……アヂカハ…………摂津国 大川………オホカハ…………摂津国
勝り
││…
……カチカハ…………尾張国 豊川……… トヨカハ…………参河国 富士川 …… フジカハ…………駿河国 甲斐国 安倍川 ……アベカハ…………駿河国 荒りll a……アラカハ…………甲斐国 日り│卜
¨¨…ニツカハ………甲斐国 市ガla……イチカハ…………甲斐国 早りll a……ハヤカハ…………甲斐国 早り│lb……ハヤカハ…………相模国 荒り│la……アラカハ…………武蔵国 久慈川a…クジヵハ…………常陸国 磐城国 姫り││…
…… ヒメカハ…………信濃国 発知川 ……ホチカハ…………上野国 自川a……シラカハ…………磐城国 古り││…
…… フルカハ…………陸前国 久慈川b…クジカハ…………陸中国 松川a……マ ツカハ…………陸中国 石りll b……イシカハ…………陸奥国 松り│lb……マ ツカハ…………羽前国 清川………キヨカハ…………羽前国 荒りll b……アラカハ…………羽前国 鮎り││…
……アユカハ…………羽後国布施川 …… フセカハ…………越 中国 荒川c……アラカハ¨¨¨∴…越後国 相川b…… アヒカハ…………佐渡国 土師川 ……ハゼカハ…………丹波国 由即
ll…
…ユ ラカハ…………丹波国 丹後国 谷木川 ……ヤキカハ…………但馬国 土生川 ……ハ ブカハ…………但馬国 賀劉││…
…カロカハ…………因幡国 斐伊川 …… ヒイカハ…………出雲国 小 田川 ……オダカハ………… 出雲国 古志川……コシカハ…………出雲国 那智川 ¨¨¨ナチカハ ………・隠岐国 三木川 …… ミキカハ…………播磨国 市川b……イチカハ…………播磨国 阿井ノ││…
…アヰカハ…………備後国 可部川 ……カベカハ…………安芸国 戸野川 …… トノカハ…………安芸国 佐波川……サバカハ…………周防国 成川………ナルカハ…………糸已伊国 肱りll……… ヒヂカハ…………伊予国 自川b……シラカハ…………肥後国 新り││…
……シンカハ…………大隅国 荒りll d……カラカハ…………薩摩国 地域 が限 られず、広範囲 に繰 り返 し出現す る河川名 な ら、普通名詞 にも近 い 性質で、連濁・非連濁が規則 で定 まっているのではな く、例外 として不規則性 が維持 されている可能性 もあるだろ う。使用頻度が高ければ、 自然言語中の不 規則動詞 のように、安定的に維持で きて もおか しくない。同一河川 の上流 と下流で連濁・非連濁 が ことな り、時間 をか けて統一 される 場合 も想定で きるし、連濁化 の速度 が上流 と下流で異 な り、以前 は同一の河川 名 に異 なる語形が生 じる可能性 もある。前者 の例 が「姫川Jで、F改正 日本地誌 略字引大全』 では、上流の信濃国側 では非連濁 の ヒメカハで、下流が ヒメガハ
だったが、現在はヒメカフに統一されている。後者の例 としては、岐阜県から 富山県を流れて富山湾に注 ぐ「庄川」がある。F日本地図帖地名索引』では富山 県射水郡の河川 として「シャウカハJと記述 しているので、大正時代にはまだ ショウカフだったようだ。現在は、富山県側では「ショウガフ
Jに
なり、岐阜 県側で 「ショウカフ」が残っている。岐阜県側 と富山県側でそれぞれ漁業協同 組合が出来ているが、富山県lllは
、庄川沿岸漁業協同組合連合会があるが、URLは
http=′
′… shOugawa com/で あ り、上流の岐阜県川での庄川漁業協同組合 はhttp77ヽ、剛 た
hida―
shoka■va org/である。『標準地名刺 『自然地名集Jでは「しょ うがわ」が採用されているが、F岐阜県地理地名事典』では「しょうかわ」(p46) である。さて、 リス トの河川名は、当時も現在 も連濁 しない河川名、現在は連濁する 河川名、当時は連濁 していたが、現在は非連濁になった河川名の3種類が観察 できるが、連濁抑制に関連 していると考えられる項 目ごとに述べていこう。
① 先行拍が2拍・ ラ行拍の場合
「荒川 (4か所)」、「自川 (2か所)」、「古川」、「由良川」、「成川」力`あ り、2拍 めがラ行拍の2拍の前項をもつ河川名で非連濁 め河川はかなりあったことにな る。 じつは、明治初年には違濁 していて、後に非連濁になった河川 もある。飛 騨国の自川で、シラガハだったものが、『日本地図帖地名索引』では非連濁化 し て、シラカハに変わつている。各地のシラカハの発音の影響下で連濁・非連濁 が統一されたとい う解釈も可能だろう。同じように、陸奥の 「平川」は明治初 年 にはヒラガハだったものが、「日本地図帖地名索引』では 「ヒラカハ」に変 わっている。一方、由良川は『日本地図帖地名索引』でユラガハ となってお り、
後に連濁 している。
② 先行拍が狭母音Лノや/u/の場合
河川名の場合、連濁 しない河川名の前項に狭母音のものが多い。後で、見る ように他の固有名詞には必ず しも共通 しない特徴である。力行連濁を抑制する 傾向があるのだろう。 リス トの中か ら探す と、「相りll(2か所)J、「石りII(2か 所)」、「安治川」、「勝川」、「富士川」、「市川 (2か所)」、「久慈川 (2か所)J、「松 川 (2か所)J、 陥占Л日、「谷木川J、「土生川」、「古志川J、 D5智川J、「三利│IJ、「阿 井川」、「成川」、「肱川」と多 くの非連濁河川がこの特徴をもっている。「斐伊川」
は「大川」 と同じように長母音が先行する場合で どちらも現在 も連濁 していな
‑ 167‑
い。「 日川」はル ビが「ニ ツカフ」だが、現代の発音が「ニ ッカ フ
Jな
ので、当 時 も促音の ツで狭母音で はないだろ う。一拍 の河川名で連濁 しないものは、F改正 日本地誌略字引大全』にはなかった が、 1章で扱 った『地名集 日本』の河川名 には「AJll(ムカ フ)J(北海道)と
「須川 (スカフ)」 (山形県)があった。母音 は/u/で狭母音である。「須川」や「酸 川日 は温泉地 などの酸性の河川 に使われる河川名で、「自然地名集』には「笏 II」
と書 くスカワが
3河
川、「置りIIJと書 くスカフが1河川 出てい る。「井川(イ
カ フ)」18と
ぃ ぅ河川 が秋 田県 にあ り、一拍の河川名 においても狭母音の先行 を条 件 として、非連濁 が維持で きる傾向にあることは確 かである。③
ヤ行拍や母音単独拍が先行する場合
「早川 (甲斐国、相模国)J「清川 (羽前国)」「豊川 (参川国)」「鮎川 (羽後国)J の例 を見 ると、ヤ行拍 が先行す る場合 に非連濁 が維持 され る傾向もかつては強 かつた可能性がある。 しか し、現在 は、河川名で 「早月ロ カS非連濁 を維持 して いるのに、「8JllJは トョガ フに変イヒして しまっている。姓 として「劃 ll」 はあ ま リー般的でない ことと関係 している可能性 がある。「早りH」 は「〜川」 とい う 形式の姓では、「石川」「古川
J「
市川」」の次 に人 口の多い姓であ り、ハヤカ フは 誰 にでもよ く知 られているだろ う。一方、「豊川Jは、全国の電話帳登録作数が 2000件以下の比較 的人 口の小 さい姓 になる。「清川」や 「鮎川Jも姓 としての頻 度 は同程度 なので、ハヤカフの ように非連濁形 が維持 され ることはない と予想 されるが、事実、アユガフヘの変化 を『自然地名集』で確認す ることがで きる。アユカフが3河川 (秋田県、山形県、長野県)、 アユガ フが2河川 (栃木県、群 馬県)である。 なお、 キヨカワやキヨガフは F自然地名集Jの河川名 にはない ので、確認 で きない。
④
母音単独拍が先行する場合
母音単独拍 が先行す るもの必ず しも多 くないが、「相川 (2か所)」、「阿井ガJ があった。F自然地名集Jでは「阿井Л日 はアイガフに変化 している。「 日本地図 帖地名索3増 に「相川 (アヒカ フ)」 とい う地名 はあるが、河川名 はない。地名 としてな ら、現代で も多 くの「相川J力`全国に分布 してい るが、連濁す るのは 長崎市相川 町 (アイガ フマチ)だけである。 アイ+カフ地名ではアイカ フが多
B静岡県の大
"‖上流にも「井川日 という地名はあり、イカフと発音するが、河川名はない。
数を占めている。似た音形の河川名に「犀川」があるが、『自然地名集』には4 河り11(青 森県、長野県、岐阜県、石川県)収録されているが、すべて連濁語形 のサイガフで、サイカフではない。シオ+カフの場合 も「川
Jに
母音単独拍が 先行する場合 だが、現代の河川名の発音を F自然地名集」で調べると、数は少 ないが、「塩川」(山梨県)と
「汐川」(愛知県)力`ある。 どちらもシオカフであ り、シオガフではない。 したがって、母音単独拍が先行する場合の傾向ははっ きりしておらず、かっては連濁は抑制される傾向があったかもしれないが、現 在では明瞭ではなくなりつつあるのだろう。⑤ 濁音拍が先行する場合
現代では例外的な発音 と感 じられるようにな り、地元以外のひとからアベガ ワや フジガフと言われることのある、安倍川や富士川 と同じタイプの前項が濁 音拍で終わっていて、連濁 しない河川名をリス トから取 り出しておこう。「安治 川」、二つの「久慈川」、「土師川J、「土生川」、「小田川」、「可部川」、「佐波川」、
「肱川」。 このうち、「日本地図帖地名索引』で連濁が確認できるのが、佐波川
(サバカハ→サバガハ)と土師川 (ハゼカハ→ハジガハ19)である。F日本地図帖 地名索引』ではまだ非連濁で、その後、連濁 したものに二つの「久慈川J、「安 治川J力'ある。伊予国の肱川は『 日本地図帖地名索引』ではまだ「ヒジカハJ
としているが、「自然地名集』では「ヒジガフ」になってお り、その後、連濁 し たことになる。2.1の3拍以上の前項をもつ河川のリス トでも、明治初年には
「黒田川 (クロダカハ)」「加勢蛇川 (カセダカハ)」「勝田川 (カツダカハ)」「重 信川 (シゲノブカハ)」「物部川 (モノベカハ)Jと、直前に濁音拍があ り、連濁
していない河り
II名
は、かな り多かったことになる。濁音拍が先行すれば連濁 しないのであれば、それは、濁音連続を回避 してい ることになる。濁音連続の回避については、河川名や固有名詞に固有の現象で もなく、明治期のお雇い外国人の
CHANIBERLAIN(1888:¶
31)力 ヽ一語中に 多 くの濁音を使 うのが不適当で20、 その理由で、「風上」がカザガ ミとい う発音 にならないと述べている。さらに、2版 (1989)の 補足で、濁音連続が使われ ることはないと断言 している。濁音連続が使われないとい う強い規則性が当時1'I自
然地名集』 では「ハゼガフJ。2。一語中に多 くの濁音 とい う力ヽ どの くらいが多 くの濁音 なのか、複合語の ことなのか、単一語の ことなのか、不明確である感 は否めない。同時期 のお雇い外国人でライマ ンの法則で知 られるラ イマンほとには一語中の濁音 についての考察 を進展 させ なかった と言えるだろう。
‑169‑
の 日本語 にあったわけではな く、言 い過 ぎではあるが、 日本語 の傾向 を正 し く 捉 えていたのだろ う。
その後 の河川名 の言語変化 で濁音連続の回避 が ます ます少 な くなった ことは 現代 までの河川名の変遷 か ら分 か るし、安倍川 や富士川 の間違 った発音 も多数 の記録 か ら分か るaの で、強い連濁傾向をもつ河川名では、濁音連続回避が制 約 としてほとん ど機能 しな くなったもの と考 え られる。
濁音連続 を避 ける傾向は安倍川や富士川では残 っていると思われるが、「〜川」
ではほ とん ど残 っていない。 それ は、「〜川
Jの
連濁傾向が強す ぎて、濁音連続 の回避 だけでは、連濁 を抑制で きな くなっているためだ と解釈することがで き る。「〜島」や 「〜田Jでは、濁音連続 が避 けられ、 ナガシマやナガタにな り、ナガジマやナガダにはならない。 こうい う傾 向が島名や 「田J地名でかな り明 瞭に出て来 るのは、後項の濁音傾向の強弱が関係 していると考 え られる。連濁・
非連濁 を前項 と後項の種類や その組み合わせで説明 しようとい う考 え方 につい て4章で詳細 を説明す る。
⑥
「新 (シン)」 が前項の場合の連濁抑制について
「新川
Jは
現在で も各地 に「新川」力`あるが、シンカ フであ り、連濁 しない。「新Jが前項 なら一般 に連濁 しない とい うわけではな く、「新 山」な ら「昭和新 山 (ショウワシンザ ン)」 の ようになるので、「新 (シン)」 がカ フの前項 にある 場合 にカフを連濁 させ ない とい うことになる。「新川」は河川 名でも地名でも連 濁 しない。 しか し、単純 に撥音がカ フに先行 しただけで非連濁 になるわ けでは ない。容易 に検索可能 な郵便番号簿
22の
地名で まず調べると、「′り:I(ホ ンガフ)」「仙川 (セ ンガフ)J「寒川 (カンガ フ)」「明神川
(ミ
ョウジンガ フ)」「天川 (テ ンガフ)」「面川(メ
ンガフ)」 などがあ り、直前に撥音があっても連濁 している。a「富士月日 は、第二期国定読本 の巻九第十一課の 「音の旅Jと第四期巻九第二十四 「ひざ栗毛」、
巻十二第八「黄瀬川の対面」に出て来 る。安簡 ‖は、第二期国定読本の巻七第十七が「安御 ‖の 義夫」、第四期国定読本の巻七第二十一 が「安倍川の渡 し」になってい る。つ ま り、全国の小学 校 の国語の時間に富■l‖や安倍川 は学習 したはずであるが、参考書 を調べてみ ると、間違 った発 音で記載 しているものも見つかる。新潟県育ちの中川芳雄氏が大正時代 にアベガフや フジガフと 学校で教え られたと述べているのは仕方がない面があるだろう
(中
川:301)。
国語研究会編 の『尋常小学読本字弓J(1913)はフジガフとしてい るし、『芳貨氏女子新国文予習辞書J(三巻、東 京辞書出版部編、1933、 p103)は「安倍川日 をアベガハ としている。 フジガ フや アベガ ワと教 わっても不思議ではなかったわけである。
22電子媒体が郵便局 のホームページで提供 されている。本稿 では2007年 の平成大合併後 の時期 の データを利用 した。郵便配達 に不要 な地名は出て来 ない、厳密には地名の一部 とされる「丁 目J
な ども地名か ら削除 したデータである。
①
②
③
④
撥音 が先行 して 「新川
Jの
ように非連濁 になるのは北海道函館市の 「陣川 (ジ ンカ フ)」 や 「陣川 町 (ジンカフチ ョウ)Jだけである。仮説 として河川名 の連 濁 を抑制 してい るのは、撥音 の直前の拍 がイ段音である/N/のような場合 に連 濁が抑制 され ると考 え ることがで きるだろ う。狭母音 の力/がカフの直前 にあっ て も「〜川Jの連濁 は抑制 され るので、直前が撥音 な ら、 その1拍前 に狭母音 の/1/がある場合 も 「〜力Jの連濁が抑 制 され るとい うことになる。つ ま り、撥 音が先行 す ると、「川」の連濁が抑制されるとい う狭母音の条件 が、一拍前に移 動 す ると解釈で きる。『自然地名集』の河川名で上記 の地名 に該 当す る硼
ll名
がないか確認 してみた が、「明神川(ミ
ョウジンガワ)」 しか見つか らなかったが、調査 の過程 で以下 の河川名 を見つ けることがで きた。神川 ………¨…カ ンガ フ………長野県 (長野 10)23
ポン川 (2か所)・ ‐……ポンガフ………北海道 (紗那 1) 北海道 (旭川 10) 側
││…
…………¨¨……¨¨ギンカフ¨¨¨¨…………北海道 (名寄 8) 明神川 (3か所)・=…… ミョウジンガフ………北海道 (室蘭 3)青森県 (野辺地 10) 新潟県 (村上 6)
撥音の直前の拍 がイ段音である/N/のような場合 に連濁 が抑制 され るとい う 仮説Zは
、神川 やポン川 が連濁 して銀川 が連濁 しない ことを説明す るので、力N/
があてはまるのが 「新川J以外 に 「銀りll」 しかないが、支持 され ることが分か る。明神川
(ミ
ョウジ ンガフ)」 は厖=があって連濁 しているが、 これは反例 に はな らないだろ う。前項 が3拍以上 になれば、 ラ行拍 で終わっていても連濁 は 抑制 されず、む しろ強い連濁傾向 を示 すので、 この場合 の連濁 も同 じ規則性 に 従 ってい る と考 え られ るか らである。
28「長野10」 とい うのは、「長野Jの部分 が
20万
1地勢図 の名称で、数字の 「10J力15万分1地形 図番号で、相対的位置表示 によ り、該当地名 (潮‖名 も含んだ)の所在地形図の位置を示 してい2拍る。で はな く、拍 と区別 された音節 とい う術語 を使 えは 複合語後項 の直前の音節 に/1/があれは
「〜川日 の連濁 は抑制 され るとい う説明が可能 である。 なお、/N/だけでな く、 もうひとつの狭 母音 を使 った/uN/の 場合 にも連濁 が抑制 され るか どうかも考 えてみたが、 カフの前項が/uvで 終わ る河川名や地名は存在 していない ようだ。「寸月日 のような河川名があれば、スンカフにな るのか、スンガ フになるのかで7uN/に ついても14」断で きるはずだ力ヽ 見つからなかった。
‑171‑
3.地名の 「〜川」の連濁 と非連濁
河川名の 「〜川」 と地名の「〜川
Jに
ついて考 えてお こう。地名は、■■lll名
ほど連濁 は起 きていない傾 向があるが、連濁 を抑制する条件がなければ、時間 をかけて連濁への変化が起 きていると思われ る。
『郡 区町村一覧』で 「〜川」を村名 として多 く使 っている堺県の吉野郡 (現在 ,の 奈良県)から「〜川」の形式の村名を取 り出してみた。吉野郡は一部離脱 し
て宇陀市や五條市の一部 になっているが、明治22年町村制成立以降大 き く範囲 を変 えていない。なお、『郡 区町村一覧』は明治14年の出版 で明治初年 の吉野郡 で、町村制成立期 よりももう少 し前の状態 になる。
明治初年 の村名 は、河川名 と同様 に、かな りの非連濁 があったようだ。
【『郡区町村一覧』から明治期吉野郡の「〜カフJ16村】
中津川村…ナカ ツカハ 池津川村…イケツカハ 平りII村・ … ヒラカハ 瀧川村 … …タキカハ 玉置川村…タマキカハ 下葛川村 …シモクズカハ
上葛川村…カ ミクズカハ 迫西川村 …セイニシカハ 自川村… …シラカハ 東り
│1村
……ウノカハ 西りll村……ニシッカハ 木津川村… コツカハ洞川村 … ドウカハ 八り:1村……ヤツカハ 湯川村 ¨¨¨ユカハ 大 日川村…オホ ビカハ
【『郡区町村一覧』から明治期吉野郡の「〜ガフ」3村】
上湯州 村……カ ミユガハ 1小川村…… フガハ
1脇
り│1村…… フキガハ カフが16に対 してガ フが3で、連濁 しないカフの方がはるかに多い。 これ ら の村名 の幾つかは現代 に地名 にも残存 す るが、2007年 の郵便番号簿のデータで 確認す ると、村名 として残 る例 はなかったが25、 町や村 の中の字名 としてかつ ての村名が残 っているものがかな りあった。連濁す るようになった地名は8作、 逆 に非連濁 を解除 した と考 え られ るのが上湯り││(カ ミユガハ→カ ミユカ フ)の
1作で、非連濁 を維持 しているのが3作、連濁 を維持 しているのが、「脇川」 と
「小川」の2件だった。つ ま り、地名でも連濁への変化が基本的に進んでいると い うことになる。 かつて連濁 していなかった村名で現在 は連濁する地名 として
0'現
在 、 吉 野郡 には 「天
"村
(テ ンカ フム ラ
)J「野迫川 村
(′セ ガ フム ラ
)」「十津川村
(トツカ フ
ム ラ
)Jの二 つ の 「〜川村」 力
Sあるが、 「郡 区ヽヽ 一覧
Jの村 名 を その ま ま,Iき 継 い だ名称 で はな
ヽヽ 。
残存 している8件の内訳だが、まず、連濁以外の変化は起 きていない と考えら れるのが次の5件である。「中津川、ナカツカハ→ナカツガフ」、「上葛川、カミ クズカハ→カミクズガフ」、「滝り││、 タキカハ→タキガワ」、「玉置り││、 タマヰカハ
→タマイガフ」、「東り││、 ウノカハ→ウノガフ」、「木津刀kコツカハ→コツガフJ。
他 に、連濁変化だけでなく、他の部分 にも音形に変化が認められる地名に「迫 西川、セイニシカハ→セニシガフJと 「洞川、 ドウカハ→ ドロガフ
Jが
あった。かつての村名の残存地名で、非連濁を維持 している3件は、河川名でも連濁を 抑制する2拍で末尾にラ行拍の平川 (ヒ ラカハ→ ヒラカフ)と自川 (シラカハ
→シラカフ)があり、他に狭母音が先行する池津川
(イ
ケツカハ→イケツカフ)
と」があった。中津川はナカツカハからナカツガフに変わっているので、イケ ツカフもイケツガフもありうる変化だったし、イケッ自体 も連濁 して、イケヅ ガフもありうる語形である。
傾向として地名の 「〜川」も連濁へ言語変化 したことを奈良県吉野郡の地名 で確認 したが、地名の「〜川」の連濁変化は吉野郡だけのことではな く、「〜力J
という地名が多い地域ならどこでも確認できるのではないかと思 う。現代の郵 便番号簿に掲載の地名で多 く「〜川J力'見つかるのは、北海道、福島県、新潟 県、和歌山県、高知県であるが、高知県の土佐郡の地名について調べてみるな ら、やはり同様の傾向が観察できる。ナメカハ (行川村)だったものがナメガ フに変化 している。また、 この地域では前項に方位が来ると、連濁 しに くい傾 向があったのか26、 狭母音の/1/が先行 している理由もあってか、西川村 (ニシ カハ)、 東川村 (ヒガシカハ)、 南川村
(ミ
ナ ミカハ)だったが、 このうちニシ カハだったものが トサヤマニシガフ (土佐山西ガDへ
と変化 している。南川は 残存 しないが、東川は非連濁 を維持 して、 トサヤマヒガシカフ (土佐山東川)とい う地名に残っている。
4 固有名詞一般の連濁 。非連濁を説明するモデルと「〜川」
「〜川
Jの
連濁・非連濁を固有名詞一般の連濁・非連濁の中で捉えることも可 能だろう27。 ここでは筆者が考えている仮説モデルをまとめておきたい。複合2̀「北」以外 の 「南」、「西」、「東Jは狭母音の″ で終わ っている点 も非連濁 に関係 していたか もし れない。
'7本稿では追求す る余裕 はないが、普通名詞の方が固有名詞 よ りも連濁傾 向が強い ことは、多 くの 指摘 がある。