研 究 ノー ト
賃金交渉制度の賃金抑制効果 と製品市場競争
遠 山 弘 徳
Calmfors and Dr」五11[1988]に よって賃金交渉制度が労働組合の賃金抑制行動に異なった影響を与えるこ とが明らかにされているが、本研究ノー トにおいては、第 1に 、1990年代以降の製品市場競争の拡大がそう した賃金抑制効果に影響を与えているのかどうかを問う。その上で、第2に、そうした影響が賃金交渉制度 ごとに異なるのかどうかが検討される。本ノー トにおいて示される経験的事実は次の点である。賃金交渉制 度の賃金抑制効果が1990年代以降においても確認される。だが同時に、そうした効果が賃金交渉構造・コー ディネーションに応 じて異なることも示 される。さらにより注 目すべ きこととして、199o年代以降製品市場 競争が強まっているにもかかわらず、依然 として中間的な賃金交渉構造・コーディネーションのケースにお いては賃金抑制効果が働いていないということが確認される。
I.課 題
1990年代以降、先進経済諸国において不熟練労働者 に対す る需要の低下が観察 されているが、 こ う した低下 は ヨーロ ッパ経済 とアメ リカ経済 に異 なった影響 を与 えていることが指摘 されてい る。ゝ アメ リカ経済 においては賃金が フレキシブルであるため、不熟練労働 に対す る需要低下 は不熟練労 働者 の実質賃金の低下へ とつ なが り、熟練労働者 と不熟練労働者の間の稼働所得 の不平等 を上昇 さ せ ることとなった と見 られている。他方、 ヨーロ ッパ諸経済 においては、アメリカに比べ被用者の 賃金 の不平等 を抑制す る労働市場制度 (労働市場 の硬直性)が存在す るため、不熟練労働者 に対す る需要の低下が賃金 において よ りも雇用量 において調整 されることにな り、失業 を上昇 させ る要 因 となっていると理解 されている。こうした現象 を経済のグローバル化、とりわけ国際的な貿易活動 の拡大に関連づける分析は、開発途上国との貿易の拡大が不熟練労働者に対する需要 と実質賃金に 与 える効果に焦点 を置 き、先進国における不熟練労働者の実質賃金 もしくは雇用が国内の労働市場 の条件 によってではな く、不熟練労働者のグローバルな供給によつて決定づけられていると主張す る。
こうした分析の基礎 にあるのは
Stolper‐
Samuelson定 理である。「貿易 と賃金」論争に利用 された 同定理によれば、豊富な低熟練労働 を有する発展途上国との貿易 を拡大する結果、先進国における 不熟練労働者に対する需要が低下 し、不熟練労働者の賃金が低下する。こうしたStolper‐
Salnuelson 理論においては、 どの程度グローバ リゼーシヨンーー より具体的には低賃金諸国か らの輸入増およ び製品市場競争一一が不熟練労働者に対する需要や実質賃金の低下を引 き起 こしているのかが問わ(1)た
とえば、Freeman[1995]は「 ヨーロッパにおける失業の上昇は…アメリカにおける稼働所得の不平等の上昇の裏面であ る」 (Freeman[1995]p.19)と 指摘 している。‑113‑
れる。言いかえれば、そうした研究は、直接、不熟練労働者に対する需要の低下要因を見つけよう とするものである。し
しかし、賃金が市場清算的な競争賃金だと理解されるのではなく、交渉の結果だと理解される場 合、労使間の交渉の性格がグローバルな経済活動から影響を受けるときにも、労働需要と賃金は変 化するであろう。こうした場合、グローバルな経済活動が労働需要や実質賃金に与える効果は、そ れが労使間交渉に与える効果と結びつけて議論される必要がある。本研究ノー トの焦点はこうした 間接的なルー トにある。言いかえれば、経済のグローバル化一―貿易の拡大およびそれをつうじた 製品市場の競争一―が労働需要と賃金に与える直接的な効果よりもむしろ、労使交渉をつうじた効 果を検討することにある。
直接的な分析課題は、製品市場競争の変化が賃金交渉構造の賃金抑制効果に影響を与えるかどう か、という点を検討することにある。このため、本ノー トでは2つ の分析ステップを踏む。第1に、 労使交渉構造と実質賃金・雇用を関連づけるモデルを検討 し、製品市場競争の拡大が失業に対する 賃金の感応性に与える効果についての仮説を示す。次いで、交渉賃金モデルに基礎を置いた賃金式
を利用 し、上記の仮説を検証する。
以下、本研究ノー トは次のように構成される。第1に、労使交渉の構造が雇用と賃金に影響を与 えるモデルを検討 し、そこから経済のグローバル化一―具体的には製品市場競争一―が賃金交渉構 造に与える仮説を示す
(Ⅱ
)。 第2に 、各経済の賃金交渉構造および製品市場競争の変化を検討 し、その上で失業に対する賃金の感応性と対比 し、前者が後者にどのような影響をあたえているかを見 る (Ⅲ)。 最後に、賃金交渉モデルにもとづ く賃金決定式を利用 して賃金交渉構造、製品市場競争 の変化をつうじて賃金が失業にどのような影響を受けるのかを検討する(Ⅳ)。
I.交渉構造 と賃金抑制
賃金交渉構造と雇用・賃金の関連の研究においてもっとも影響力あるモデルは、CalmfOrs and Drimll[1988]に おいて展開されたものであろう。同モデルは不完全競争の枠組の下において賃金 交渉の集権イビ鋤と雇用・賃金の関係が次のような2つ の効果の相互作用の結果、非単調的な関係を 描 く、ということを示 している。
第1の仮定は、賃金交渉の集権化のレベルが高 くなればなるほど、財の代替性が低下する、とい う点にある。個別企業は弾力的な需要に直面するが、産業レベルの交渉では企業の製品に対する需 要弾力性は低 くなり、さらに経済全体のレベルでは、財の需要は非弾力的となる。こうした仮定の
(2)こ
の点に関 しては、たとえば、近年の研究動向をまとめたSlaughterp001]を
参照 されたい。(3)賃
金交渉の集権化 とはどの程度賃金 をめ ぐる労使間の交渉が集権化 されているかを示す概念である。理論的には3つの交 渉 レベルが区別 されている。労使交渉が企業およびプラン トレベルで実施 されるケースーー これは分権的賃金交渉 と呼ば れる。労使交渉が全国的な、傘下組織 をすべて包括するような組織――全国的な頂上組織――の間で行われるケースー こ れは集権的賃金交渉 と呼ばれる。第3に、両者の中間に位置する、産業 レベルで行われる賃金交渉である一一 これは中間‑114‑
下では、労働組合が集権化 され、その独 占力 を高めて行けば、より高い賃金を要求することが可能 となる。 したがつてこうした効果は労働組合の独 占効果 と呼ぶことができる (図‑l lAl)。 図
‑1
パネル
lAlに
おいて示 されているように、賃金交渉の集権化の程度が上昇すればするほど、この効果 は高まり、賃上げは大 きくなる。 したがって賃金 ―集権化の座標平面上では右上が りの曲線が描か れる。第2に、労働組合が 自分の組合員のために賃金 を引 き上げるとき、組合員が消費する財の価格 も 上昇する可能性が発生する。労働組合が大 きくなればなるほど、こうした効果は強 くなる。労働組 合 にとつて重要なのは貨幣賃金ではな く、実質賃金である。 したがつて労働組合が集権化 され全国 的な組織に近づけば近づ く程、労働組合の賃金引 き上げは消費財価格全体 を引 き上げ、実質賃金を 引 き下げる。 したがつて労働組合は賃金引 き上げ要求を抑制するであろう。また実質賃金の上昇が 実現 された場合で も、実質賃金の上昇が雇用の低下につなが り、そうした負の効果が発生すると予 測 される場合 も、賃金を引 き上げようとする労働組合のインセンティブは低下 して行 くと期待 され る
(こ
れは通常マ ンサー・オルソン [1965]の 集合行為問題 を集権的な賃金設定に適用 したものと 理解 されている1411。
こぅした効果 を負の外部性の内部化効果 と呼ぶことにする (図‑1(B))。 こ の効果はパネル(B)に
おいて示 されているように、集権化の程度が上昇すればするほど賃上げ抑制イ ンセンティブが働 くため、右下が りの曲線が描かれる。こうした2つの効果は、上述のように、雇用 と実質賃金に対立する効果を生む。第1の仮定か ら は賃金交渉の集権化の拡大が実質賃金の上昇 と雇用の低下 をもたらす と期待 される。他方、第2の 仮定においては、集権化の拡大がインフレーションの上昇 と雇用に与える負の効果に対する不安が 高 まり、労働組合の賃金要求は穏健化 し、雇用が上昇すると期待 される。こうした2つの効果の相 互作用の結果、交渉の集権化 と賃金 (および失業
)と
の間に非単調的な関係が生み出される (図―1(C)の概念図を参照 されたい)。
的ケース と呼ばれる。 しか し、
Soskicё [1990]の
指摘以来、賃金交渉が行われるレベルよりも、む しろ、実際にそれぞれの 組織内、お よび組織 間で実現 されるコーデイネーシ ョンの程度 も賃金決定 にあたつて重要視 されるようになつている。(4)Wanersteh and Moene120031に よって集権的な賃金設定 にオルソンの集合行為問題 を適用することは ミス リーデイングだ とする主張が展開されている。その主たる理由の1つは経験的なものであ り、集権的な賃金交渉制度の主たるアクターが 労働組合だ とする点 に向け られている。 これは、
Swenson11991]、
POntusson and Swenson[19961等 の歴史研究において明 らかにされた、集権的な賃金交渉制度の創 出にあたつての使用者の主導的な役割 を強調す る点に根拠 を置 くものである。もう1つは理論的な ものであ り、集権的賃金設定が労働市場 に与 える効果が効率性一一言わばコーデ イネーシ ヨン問題の 解決一― にではな く、む しろ所得分配にあることを強調す るものである。
‑115‑
図
‑1:賃
金交渉の集権化 と賃金こうしたCalmfOrs and Driffillの アイデアを、失業に対する賃金の感応性 と結びつけるために、
Carlin and Soskice[1990]に よって展開された簡単な枠組一―いわゆる独占労働組合モデルーー を利用することにしたい
0。
労働組合の賃上げ要求は多 くの要因によって影響 されるが、 もっとも 重要な要因は労働市場の状態である。ノ =ズ の
そこでωBは労働組合が交渉にあたって目標 とする実質賃金、Uは 失業率である。労働組合は失業 が低いときにはより高い期待実質賃金を求めて交渉できるであろう。それというのも労働市場が逼 迫化 しているとき、労働組合の要求が実現されなかった場合、労働組合はス トライキ行動という確 実な威嚇行動をとることができるからである。他面、失業が高水準の場合、現在の職を失う可能性 は高 くなるであろうし、また他の職を見つけることも困難になるであろう。このため失業の可能性 は労働組合の賃金要求を抑制するように働 く。したがってあ汎″び<0を仮定する。
(1)式
は交渉に あたって労働組合の目標とする賃金と失業の関係を与える。こうした関係は図2に おいて示されて いる。図‑2:賃金 と失業
(B)中間的ケース
FRWl FRW2
aυ ′
NAIRUI NAIRU2 U NAIRUl N畑 マ U2
このモデルにおいては、失業が準 レント(余剰
)を
め ぐる労使間の競合する要求を調和 させるよ うに作用すると仮定 されている。企業は利潤 を最大化する雇用水準に整合的な実質賃金を選択する。この仮定の下で企業は一一製品市場の状況に直面 しつつ一―実質賃金コス トヘのマークアップをつ
(5)こ
れは、経営権交渉モデルとして知られる労使交渉モデルの一種である(ci Layard,ct al.[19911)。
NAIRUl NAIRU2
集権化度
果
集権化度 集権化度
lAl分権的ケース (C)集権的ケース
‑116‑
うじて製品価格を設定する。企業にとつてはこうした価格設定と整合的な実質賃金水準が存在する。
そうした実質水準は次の式によつて与えられる。
〆=7/P=α―ヱ/ε〃ИPL (2)
″PはCarlin and Soskice[1990]に よつて価格決定実質賃金
price―
determined real wage、 また Layard,et」.[1991]に よつて実行可能実質賃金おasible red wage(FRW)と 呼ばれるものである。MPLは
労働の限界生産物であ り、 εは産出に対する需要の価格弾力性の絶対値である。この実質賃 金は雇用水準から独立であ り、図2において水平性によって示 されている。労使の競合する実質賃金要求 を両立 させ る均衡失業率 (NAIRU)は
(1)式
と(2)式によつて与えられる。これは図2においては2つの曲線の交差する点によつて表現 される。こうした枠組において、
経済の実質賃金要求水準 を引 き下げるような負の外生的なシ ョックが発生 した場合、FRW曲線 を 下方にシフ トさせることになるであろう。だが、こうしたシヨックによつて引 き起 こされる失業の 大 きさは、図2において描かれているように、失業が実質賃金に与える感応性一一ωβの傾 き一一 に よって異なる。パネル
lAlは
賃金交渉構造が分権的ケースーー交渉が企業別に行われるケースーーー ー を示 してお り、パネル(C)は
交渉が全国的な労働組合 と使用者組織によつて行われる集権的ケース を示 している。パネル(B)は
両者の中間的ケースすなわち賃金交渉が産業 レベルで行われるケースで ある。賃金交渉が企業 レベルもしくはプラン トレベルで行われるような分権的交渉において、個別企業 の労働組合が実質賃金の引 き上げを要求 し、その上昇が製品価格 に転嫁 された場合、個別企業の直 面する需要曲線が産業全体のそれよりも価格弾力的であるため、その企業の市場競争力を低下 させ る。 これは結果的に失業 を上昇 させることになる。 したがつてこの交渉構造においては、賃金の失 業に対する感応性 は高 くなる。
分権的 レベルにおいては製品市場競争は産業 レベルにおけるよりも高い。そうした下では賃金の 変化 に対する雇用の反応は高い と期待 される。 こうした効果 を緩和するために、言いかえれば、失 業の発生 を回避するために、労働組合の賃金抑市1のインセンテイブは高 く、賃金要求はどのような 外生的なシ ョック (たとえば、図‑2において、
FRWlか
らFRW2へ
の低下において表現 される)
に対 しても即座に調整 されることになる (パネルlAl)。
賃金交渉が産業 レベルの労働組合 と使用者組織 によつて行われる場合、産業の中のすべての企業 が同一賃金上昇に直面するため、また産業を超えた財の間での代替性は低いため、賃金の上昇 を製 品価格 に転嫁 したとしても競争力 を失 うことはない。産業 レベルの労働組合は、賃金引 き上げが経 済全体に与 えるコス トーー雇用に与える負の効果一一 をまった く負担 しないか、一部分 しか負担 し
―‑117‑―
ない。 したがってこのケースにおいては、賃金の失業に対する感応性は低 く、外生的なショックが 発生 した場合 (FRWlか ら
FRW2へ
の低下)、 失業は分権的ケースに比べて上昇する。集権化 された賃金交渉においては、製品の代替性は存在 しないが、全国的な労働組合であれば、
自己の実質賃金の引 き上げ行動の結果が経済全体に与える負の効果を内生化することができる。具 体的に言 えば、全国的な労働組合は、賃上げが労働組合員の失業 を引 き起 こす可能性を考慮 して交 渉戦術 を立てる。 したがってこの賃金交渉構造においても、賃金の失業に対する感応性は高 くなる。
この交渉構造のケースにおいて も、労働組合は外生的なショック
(FRWlか
らFRW2へ
の低下)に
対 して即座に反応 し、失業の上昇は抑えられることになる。このように、労働組合の賃金抑制インセンティブは全国的なコーディネーションの低い水準 と高 い水準の両方において強い。前者のケースにおいては企業間の製品市場競争に起因し、後者のケー スにおいては負の外部性の内部化に起因する。 しか し産業交渉においては賃金抑制のインセンティ ブは、すべての競争相手が類似 した賃金上昇にさらされるため弱い。 したがって失業に対する実質 賃金の感応性は、交渉構造およびその下での製品市場の競争の程度によって影響 される。
こうした理論的枠組の下では、国際的な貿易活動の進展をつうじた製品市場競争の上昇は、労使 交渉構造 と結びついた賃金抑制インセンティブに影響 を与え、その結果実質賃金 と雇用に影響を与 えることになる。国際的な貿易活動の拡大をつ うじた製品市場競争の拡大は交渉構造の賃金抑制効 果に以下のような影響 を与えると予測 される。賃金抑制インセンティブは2つの効果―一労働組合 の独 占効果 と内部化効果一―の相互作用か ら発生する。 したがって製品市場競争の拡大がその2 つの効果に如何なる影響を及ぼすかが問題 となる。一方で製品市場競争の拡大は財の代替性を高め、
労働組合の独 占効果を低下 させることが期待 される。他方においてそれはまた一一労働組合の分権 化 を促 し――内部化効果を弱める可能性 もある。こうした2つの可能性 を考慮すると、次のような 仮説が引 き出される。
(1)集
権 レベルの賃金交渉構造を有する経済においては、製品市場競争の拡大が労働組合の独占効 果を低下 させる一方で、負の外部性の内部化効果が作用 し続けるため、失業に対する賃金の感 応性は上昇 し、負の効果を示す と期待 される。(2)分権的交渉構造の経済にはおいて製品市場の競争が上昇 したとしても、機能するメカニズムに は変化はなく、依然 として賃金の抑制効果が働 き、失業は賃金に負の効果を与えると予測される。
(3)産
業 レベルの交渉制度を有する経済においては、一―製品市場競争の拡大により労働組合の独 占効果が低下するため一一賃金抑制インセンティブが上昇する。 したがって失業に対する賃金 の感応性は上昇する。この結果、産業 レベルの賃金交渉においても失業は賃金に負の効果を与 えると予測 される。‑118‑
1990年代以降の製品市場競争の上昇は、 どのような賃金交渉構造の下で も一―そのメカニズムは 異なるものの一一賃金抑制効果を上昇 させると期待 される。 したがって図‑1のパネル
(C)に
おいて 示 されたCaHors and Drinの
ラクダこぶ状の曲線は1990年代 においてはよリフラッ トな形状 に変 化すると予測 される(d CaMors[2000],Drim [2005])。
Ⅲ口賃金交渉構造 と製品市場競争の変化
上述の仮説の直接的な検証は第IV節 においては行われるが、その前に各経済の賃金交渉構造 と製 品市場競争の変化 を理解 してお く必要がある。そこで本節の課題は1980年代以降の賃金交渉構造 と 製品市場競争の変化を捉えることにおかれる。
Ⅲ‑1.賃金交渉構造の変化
図‑3は交渉の集権化度、図‑4はコーデイネーシ ョンの程度を
5年
ごと示 したものである。パ ネルlAlは
北欧諸国、パネル(C)は
大陸ヨーロッパ諸国、パネル(B)は
アングロサクソン系の国とそれ以 外の国を示 してある。最初 に、パネルlAlの
北欧諸国に注 目すると、賃金交渉構造においてもっとも 大 きな変化が見 られるのはスウェーデンとデンマークである。スウェーデンでは1980年代後半か ら、デンマークでは1980年代初頭か ら交渉構造が分権化 しつつあることが、集権化の程度か らもコーデ ィネーションの程度からも理解 される。
パネル
(C)の
大陸 ヨーロッパ諸国をみると、コーディネーションの程度でみて も集権化の程度でみ て も、 もっとも顕著な分権化傾向を示 しているのはスペインである。1970年代初頭の高いコーデ イ ネーション・集権化の程度か ら一貫 して分権化 している。他方、これとまった く反対の傾向を示 し ているのがイタリアである。19970年代の分権化/低水準のコーデイネァシ ヨンか ら1990年代 には高い水準に転じている。また、いわゆる中程度の賃金交渉の集権化構造を持つと指摘されてきたド
イツ、フランスについては変化はまったく観察されていない。
パ ネル
(B)に
注 目す る と、 イギ リス、 ニ ユー ジー ラ ン ド、 オース トラ リアに大 きな変化 が見 られ る。 イギ リスにおいては1980年代以降、ニユージーラン ドとオース トラリアについては1990年代以 降、集権化 とコーデ イネーシ ョンの程度が低下 してい る。―‑119‑
図
‑3:交
渉の集権化図
‑31Al圏1970‑74 囲1975‑79 1 1980‑84 81985‑89
■1990‑94
図
‑3(B)4.5
4
3 25
1.5
0.5
y 餘 鮨 燒 屁 餘 粽 漑 燒 緻 鰺 欲 勒 蝠 隕
囃 颯 隕 隕 吻 囃 躊 瑕
鍮 蒻 隕 隕 隕
漑 贄
轟 丁
封︱
﹁︱
蛉 餞
辣鰈 蝠磯
イギリス
囲1970‑74 囲1975‑79 1980‑84 m1985‑39 圏1990‑94 醸1995‑2000
ニユージーランド
オースト ラリア 図
‑3(C)図1970‑74 圏1975‑79 1980‑84 田1985‑89 日1990‑94 m1995‑2000
フランス
データの出所:OECD(2004)
‑ 120‑
図 ‑4 1Al
図‑4:交渉 の コーデ イネーシ ョン
図‑4(C)
オーストリア
ベルギー
データの出所:OECD(2004) デンマークにおいては、社会民主主義政党主導の政権 と主要な労働市場組織 との間で包括的な合 意が結ばれ、さまざまな社会的給付 を増加 させ、抑制的な賃金上昇 と低賃金 を補 うことが可能であ った。 この合意は集権的交渉の重要な要因一一賃金抑制、連帯主義的賃金お よび社会賃金の上昇 一一 を備えていた。デ ンマークの団体交渉はデンマーク労働総同盟LOとデンマーク使用者連盟DA
の間で合意 された一連の手続 とタイムテーブルに従っていた。交渉の第1段階は個々の全国的な労 働組合 と産業 レベルの使用者組織の間の直接的な交渉か らなる。ある産業の労働組合 と使用者が特
図‑4(B)
‑121‑
定の時期 までに合意で きない場合、争点 はLOと
DAに
持 ち込 まれ、両者が産業の利益 のために交渉 にあたる。LOとDAの
間で も合意 に達 しなかった場合 には、争議 は政府の仲裁 に もちこまれる。仲 裁 には労働側 も使用者側 もその頂上組織か らの代表者が参加す る。実際には1952年 か ら1979年 にか けて政府 の仲裁以前 に合意 に達 しなかった ものはなかった。 しか し、1970年代末、仲裁は機能 しな くなる。1981年 に戦後 は じめて、そ して1987‑92年にふたたび賃金合意は連合体 の介入 な しに産業 レベルで交渉 されるようになっている。こうして1990年代、中間レベルの賃金交渉が一般的となっ てきた (Berlner and Vad[2000],WalersteL Golden and Lange[1997])。 1989年においては、およそ、賃金合意の50パ■セン トが集権的に実施 されていたが、この数値は1996年にはわずか15パ ーセントに低下 している
(ThOmas[2002])0。
.分権化 トレンドが もっとも劇的に現れたのはスウェーデンにおいてであった。集権化 された賃金 交渉は1938年に始まり、1983年までは無傷なままであった。だが、1983年、輸出志向のエ ンジニア リング産業の使用者組織 (VF)が集権化 された賃金契約が産業に特殊的な条件 を適切に考慮 して いないと主張 し、集権的な合意から離脱 した。こうした背景の 1つ には、知識集約的な、フレキシ ブルなテクノロジーの発展によって高技能 。高学歴の労働者の相対的な地位が上昇 してきたことに ある。以前の集権化 された賃金交渉の下では賃金の圧縮、包括的な賃金抑制が競争力の もっとも 重要な要素 とみ られていたが、そうしたテクノロジーの導入以後、労働者のより高い技能とコミッ トメン トが望 まれるようになった。エ ンジニアリング産業の使用者はこうした生産技術の変化を 背景に生産 。賃金 フレキシビリテイにより大 きな価値 を見出す ようにな り、連帯賃金政策をフレ キシビリテイを高め、国際的な競争力を強化する上での障害 と見るようになった (POntusson and
SwensOn[1992])。
エ ンジニアリング産業の使用者団体 (VF)は1970年代末か ら交渉過程 を分 権化 しようとしていたが、その最初の成功は上述のように1983年であった。同年、集権的交渉を避 け、金属産業労働者の労働組合 と個別的に賃金合意に調印 した。1990年、スウェーデンの使用者連 盟(SAF)は
その交渉部門を廃上 し、集権化 された交渉の終焉を公言 した。これ以降、交渉はセク ター・レベルでさまざまなブランチの使用者組織 と労働組合の間で行われるようになった0。
スペインにおいては、1978年か ら86年にかけては全国的な合意が賃金決定において重要な役割を 果た していた。だが、1986年においてそうした集権化 された合意が廃止されて以降、交渉はブラン
チレベルで行われてきており、それに地域レベルと企業レベルでの追加的な交渉が伴うようになっ
ている
(ThOmas[2002])。
団体交渉の適用範囲をみると、1985年70パーセン ト、1990年76パー(6)こ
れに照応 してデンマークの労働市場の流動性はイギリスとアメリカに匹敵するほど高い。その背景にはデンマークの寛 大な失業政策と解雇の容易なルールに起因する。このルールによってンマーク企業は比較的フレキシブルに従業員を増や した り削減 した りすることがで きた。だが、同時に、寛大な、政府によって資金調達された失業給付システムが存在 し、労働者は手厚い賃金保障を受けることがで きた。 このシステムのおかげでデンマーク労働者は高失業を受け入れることが で きた
(Benner and Vad120011)
(7)ス
ウェーデンの交渉構造の歴史的変化についてはHuber and Stephens[19981、 Iversen[19981、 Variaine[19981、
Freemanand Gibbons119931に
もとづいている。‑ 122‑
セ ン トとなってお り、中間的な交渉 レベルの特徴 を示 している (Ochel[2001])。
イタリアでは、1993年 、新たな賃金交渉の枠組が導入 された。 イタリアの政府。労働組合・使用 者 の
3者
は、年 間所得政策、団体交渉及 び労働市場 の柔軟化 について定めた中央基本協 定 に合意 した。 それは2つの レベルの賃金交渉構造 を定式化 した ものである。3者
に よる全 国中央基本協定 の期 限は4年 とし、一般的規貝1については4年 ごとの改定 とす るが、賃金 は2年
毎 に改定 され、合意 された賃金引上げ率以内に とどめ られる。全 国中央基本協定 に規制 される産業別及 び地域別並 びに 企業別協約は、有効期限は4年
であるが、企業別賃金上乗せ交渉は、利益 を出 している企業に限 り、生産性の上昇率の範囲内で行われる。また、この新たな賃金交渉の枠組においては賃金物価スライ ド制度
(ス
カラ 。モビレ)が廃止 された。その結果、全国的な契約はマクロレベルの経済発展 をさ らに強調 しはじめるようになった(Thomas[20023)。
イギリスでは団体交渉の適用範囲が1985年の64パーセントか ら1990年の54パーセン ト、1995年の 40パーセ ン トヘ と劇的に低下 している。 これはセクター別の合意の衰退、労働組合 によつて組織 化 された産業の衰退、公共セクターの民営化 に関連 している。1980年代初頭 には法律上の労働組合 承認手続 きが廃止 されたが、これは労働組合組織率 と団体交渉の適用範囲の低下の主たる要因だ と見 られている
0。
ニユージーラン ドでは、1991年、柔軟な労使関係の導入を意図 した雇用契約法 Employment Contracts Actが 成立 し、 これによつて交渉制度が大 きく変化 した。同法は労働組合 と交渉にあたる使用者の義務 を廃止 し、 また非労働組合交渉者 にも労働組合交渉者 と同様のウェ イ トを与えた。これに伴い1995年には団体交渉の適用範囲は1990年の67パーセントか ら1995年の31 パーセ ン トヘ と低下 している。オース トラリアで もこれに類似 した法律が1996年に制定 されてい る。1980年代末の団体交渉の適用範囲の低下0)前
には交渉の適用範囲は主 として産業最低賃金基準 industrial awardの 結果であ り、その適用範囲は平均で85パーセン トであった。 しか し、1990年代 初頭以降、交渉はますます企業ベース となって きている。労働組合組織率 も同時に大幅に低下 して いる(OECD[2004],Ochel[2001])。
こうした各国の経過 と交渉構造を示す2つの指標 を突 き合わせると、1980年代 と1990年代 におけ る各経済の交渉構造の変化は次のように要約することができるであろう。ニユージーランドとオー ス トラリアは分権的交渉構造グループに入 り、他方、スペイン、デンマーク、スウェーデンは集権 的交渉構造か ら中間的な交渉構造へ と移行 したと見ることがで きる。だが、これ以外の経済につい ては交渉構造の変化は確認されない。
したがつてこうした交渉構造の変化からは、ニユージーランドとオース トラリアでは労働組合の 0)1999年の雇用関係法Employment Relations Actにおいてふたたび労働組合 の承認手続 きが導入 された。 これによつて 労働組合は調停および仲裁委員会Conciliadon and Arbitration Committeに よって交渉エージエントとして承認された
(OECD120(M],p.143)。
(9)だ
が、オース トラリアの団体交渉の適用範囲は相対的に高 く1995年
において も80パ
ーセ ン トであった。‑ 123‑―
独 占効果が低下す るため賃金抑制効果が高 ま り、他方、デ ンマークとス ウェーデ ンにおいては負の 外部性の内部化効果が低下す るため、賃金抑制効果は低下す ると期待 される。
Ⅲ‑2.製品市場競争
製品市場競争が強 まった場合、企業へ の競争圧力が上昇 し、製品需要の弾力性 は高 まるであろう。
だが、 こうした変化が実質賃金 と雇用 にどの ような効果 を与 えるかは、すでに指摘 したように、交 渉構 造 に依存す る。
製品市場競争の程度は2つの面か ら捉えることがで きるであろう。第 1に 、製品市場競争を促進 する各種規制の緩和である。これはグローバルな製品市場競争のインフラを構築する競争の条件 と いえる。 もう1つ の点はこうした製品市場競争インフラのアウ トプットである。グローバルな製品 市場競争を可能 とする基盤が構築 された結果、どれだけ貿易活動が拡大 したかという点に焦点が置 かれる。前者は言わば製品市場競争の条件であ り、後者は製品市場競争の結果ということができる であろう。
Ⅲ‑2‑1.製 品市場の規制緩和
図‑5には、1978年か ら1998年にかけての各国の製品市場の規制改革指標が示 されている。これ は製品市場競争の条件 を示す ものである。いずれの国においても製品市場の規制改革が進んでいる ことが理解 される。また、その転換の時期は1980年代末 もしくは1990年代初頭であることも理解 さ れる。
図‑5:製品市場 の規制緩和
摯 ‐ イギリス 機 ニユージーラン ド
・・ USA
… オース トラリア 警 スウェーデン
郷 カナダ ー ドイツ ー ノル ウェー
………フィンラン ド デンマーク ー 日本
オランダ
→Ⅲ ベルギー 警 オース トリア 銀‐ スペイン
4Ⅲ
… フランス ー スイス 融繭…ポル トガル くい イタリア―‑124‑―
だが、 もちろん、そのス ピー ドお よび水準 において経済 ごとに異 なる。 この間、 もっとも規制緩 和 が進 んだ経済 はイギ リス、ニュージー ラ ン ド、アメ リカ、次いでオース トラリアであった。他 方、最 も規制緩和 の進展が遅れている経済 はスイス、イタリア、ポル トガル、オース トリアである。
1998年 時点の水準でみれば、 もっとも規制が少 ない上位 国はイギ リス、ニュージー ラン ド、アメ リ カ、オース トラリア、ス ウェーデ ン、 カナダ、 ドイツである。他方、同 じくもっとも規制が多い経 済 はイタリア、ポル トガル、ス イス、 フラ ンス、スペ イ ン、 オース トリア、ベ ルギー、オランダで ある。
国別のパネルを見ると、パネル
(B)の
グループにおいてもっとも規制緩和が進められてきたことが 分かる。だが、パネル(B)の
グループに劣 るものの、パネルlAlの
北欧諸国グループにおいて も、着実 に規制緩和が進行 していることが理解 される。こうした両グループに比べ、大陸ヨーロッパ諸国に おいては製品市場競争の規制緩和はそれほど進んでいないようである。だが、 ドイッだけは例外の ようである。交渉構造において変化が見 られなかったにもかかわらず、製品市場の規制緩和が大幅 に進んでいることが分かる (図‑6)。図‑6:製品市場 の規制緩和 :グループ別
図 ‑6 1Al
図
‑61B)‑ 125‑
図
‑6(C)0 7 ︒ 0 8 2
四 嘲
9 9 8
デー タの出所 :Nicoleti et al(2003),et al(2005).
賃金交渉構造が分権的交渉構造へ と大 きく変化 したニュージーランド、オース トラリ、デンマー クの 3カ 国は製品市場競争において大幅に上昇 している。また中間レベルの交渉構造へ と移行 した スウェーデンとスペインについては、スウェーデンでは製品市場規制 もかな り低下 したものの、ス ペインにおいてはそれほど顕著な低下は観察されない。
Ⅲ‑2‑2.製 品市場競争
図‑7のパネル
lAlに
おいては対実質GDP比
の貿易額 (輸出+輸
入)の
各国の推移が示 されている。これによってグローバルな製品市場競争基盤形成の成果に関する情報 を得ることができる。一般的 に、経済規模の小 さな経済においては
GDPに
占める輸出入は大 きく、大 きな規模の経済においては 小 さくなる。こうしした点は同図において も確認 されるが、時系列的な推移 を見ると、長期的に上 昇 していることが伺われる。 この点は図‑7のパネルlB)に
おいて確認される。同図は1991年を100 とし各国の開放度の推移 をみたものである。 とりわけ1990年代以降、いずれの経済において も市場 の開放が進んでいることが理解 される。図‑7:製品市場競争 図
‑71Al
-+-*-^ 1.7y7
+t*^t-y7
4/, jf -
-.x-.urr' +717 -@-VY?-, +-7 irryl:
-77r^
-1+' t:.{ Y ^ 1r r7
*t{--*7>/ F+
-+.6- ) )v, a- -.*- =z*!-2 y l:
--'t-- 7l--V>
-741>
"--@-Etvlilrv ▲
一 隊
― 菖
―‑126‑―
図‑7(B)
-e-t-71-rr7 +,.-7 1.y7
^,v<- -x- r.r/
+71 7 -e-VY?*2 -+-7.1 y7' l:
e77r^
*1+'
l:.{ t ^
-trr7 Ff -,+"t7vy -&- ) tV1t*
-1- =--t-7t l:
--Y-- z) z-V>
-usA * 7^4 ,
l9E6 l9E6 lgE? lgEE lsgs 1990 l99l 1992 1993 lg94 l99E ls96 1.99? 1998 1999 2000 "+-.f'vlfl'v データの出所
:Penn Wond Table(PWT6.1)図‑8においては直接投資の推移が示 されている。1990年代に入 り、ほとんどの経済において国 内への直接投資が増えていることが理解 される。1991年を基準にそれ以降の推移 をみると、フイン ラン ドとノルウェーを除 くすべて経済において直接投資が増加 している。 とりわけ、アメリカ、 ド イツ、ベルギー、イギリス、オランダにおいて急激な伸びを見せている。こうした直接投資の大 き さは直接製品市場競争の程度を表現するものではない ものの、こうしたデータか らも1990年代以降 製品市場競争が強まってきたことが推測 される。
図
‑8:直
接投資デー タの出所:Pem world Table(PWT6.1)
こうしたデータの観察か らは製品市場競争について少な くとも次の点は確認 される。1980年代末 もしくは1990年代初頭か らいずれの経済において も製品市場の規制緩和傾向が明瞭 とな り、製品市 場競争を促進する環境が形成 されは じめる。これに歩調 をあわせるように経済の開放度お よび直接 投資 も、1990年代以降、急激に高 まって きている。 したがって製品市場競争は1990年代初頭 にその 条件面か らみてもその成果の面か らみて も質的に転換 したといえるであろう。 したがって、1990年 代以降、相異なる賃金交渉構造 を有する経済に類似 した製品市場競争圧力が課 されていた と理解 さ れる。
‑ 127‑
Ⅲ‑3.失業 に対 す る賃金の感応性
表‑1には、各経済における失業に対する賃金の弾力性が示 されている⑩。賃金交渉構造が分権 的であ り、かつ低水準のコーデイネーションの経済一一アメリカ、イギリス、オース トラリア、カ ナダ、ニュージーランドーー をみると、オース トラリア、カナダ、ニュージーラン ドの弾性値は統
オース トラ リア オース トリア ベルギー カナダ スイス デンマー ク フィンラン ド フランス
ドイツ イタ リア
日本 オランダ ノル ウェー ニュージーラン ド ス ウェーデン イギ リス USA
‑0.0454741
(‑0.125)
0.309395(0。
7175)
‑0。
166618(‑0.679)
‑0。
108138(―
。543)
0。123090
(2.25)
‑0。
397606(0.1840)
0.282718(3.07)
0。458950
(1.38)
0.356437(2.67)
1.79675(4.04)
0。187612
(2,17)
‑0.446207
(‑6.68)
0.283366(1.38)
0.487594(0.1923)
0。286729
(5。
12)
‑0.491965
(‑2.44)
‑0.344372
(‑2.49)
‑0。
390269(‑0.788)
0.394533(1.44)
0。416072
(1.54)
‑0.393946
(‑1.26)
‑0.214411
(‑2.03)
0。831941
(0.3044)
0.370654(1.12)
0。138795
(0.539)
0.421531(1.84)
0。413419
(1.17)
0.341002(2.56)
0.385760(2.54)
‑0.0895392
(‑0。 143)
‑0.0101336
(0。
3057)
0.557756(2.11)
0.926006(2.41)
10.1353(3.44)
注)括弧内はt値.
計的 に有意ではなか った ものの、ニ ュージー ラ ン ドを除いて失業率が賃金 に与 える効果 は期待 どお リマイナスであつた。
大陸 ヨーロッパ経済一― フランス、 ドイッ、イタリア、スイス、オース トリア、ベルギー、オラ ンダーー についてはベルギー、オランダにおいては失業率が賃金に与える効果は負であ り、それ以 外は正であ り、ほぼ期待 された符号 を示 した。だが、有意な結果を示 したのはスイス、 ドイツ、イ タリア、オランダだけであつた。また、オランダのみが賃金に対する失業の効果が負であ り、これ は上述の賃金交渉構造か らの予測一一負 の外部性の内部化効果一一か ら期待 されるものであった。
001各
経済の弾力性 は対数表示の名 目賃金 を失業率 と消費者物価 に回帰 させ ることによって得た。推定 された期間は1985〜
2000年
である(た
だ しスイスについては1991年
〜2000年 )。
名 目賃金は生産労働者の平均稼働所得、消費者物価 は消費財 の価格水準、失業はOECDによって標準化 された失業率である。‑128‑
ドイツ、スイス もコーディネーシ ョン指標にもとづけば集権的賃金交渉構造グループに入るものの、
賃金抑制効果は働いていないようである。イタリアの賃金交渉構造は上述のように集権化 トレン ド を示 していたが、1990年代のコーデイネーシ ョン指標にもとづけば依然 として中間的レベルの賃金 交渉構造に入ってお り、理論的予測に整合的な結果を示 している。
最後に北欧諸国を見ると、デンマークだけが負の効果を示 してお り、それ以外の 4カ 国は正の値 を示 している。ただ し統計的に有意な結果を示 したのはスウェーデンだけであった。この期間、賃 金交渉構造において大 きな変化 をみたスウェーデンでは効果は正である。 こうした結果は、賃金交 渉の分権化 トレン ドによって集権的賃金交渉の賃金抑制効果が低下 したことを示す もの と理解 され
るか もしれない。
こうした関連を見るために、図‑9のパネル
lAlに
おいて失業に対する賃金の弾性値 と1995‑2000 年期間の賃金交渉構造の関連を示 してある (ただ し弾性値が統計的に有意な弾性値 を示 した国につ いてだけ表示 してある)。 上述のように、賃金交渉構造 と賃金の弾力性 との関連は分権的な構造に おいて確認 されるが、集権的な構造においては一貫 した傾向は確認 されない。 とりわけ、イタリア が例外的である。 もっともイタリアについてはすでに指摘 したように、この間に中間レベルの賃金 交渉制度か ら集権化傾向へ と強まった例外的な経済である。イタリアにおいては集権的な賃金交渉 の賃金抑制効果を読み取ることはで きない。むしろ、独 占効果が強まった傾向さえ伺われる。オラ ンダについては集権的賃金交渉構造の賃金抑制効果が現れたと理解することもで きるか もしれない が、これは後述のように製品市場競争の上昇の影響か もしれない。図
‑91Al:賃
金の弾力性 と賃金の コーデ イネーシ ョン薔懸
̀::島
:::1113轟
̀:̀
一一鳥一一聯 一一
●
USA―
‑ 129‑
図
‑9(B):賃
金の弾力性 と製品市場競争・ 晶
:RPany .swedeno Japan
● 鉤隧 ‖ and
● USA
: Nerherlends
1編品
:品
1轟:̀轟蔦82‐
轟品とりわけ、注 目されるのはスウェーデンの位置であろう。上述のように、スウェーデンは1980年 代以降際立った分権化傾向を示 し、1995‑2000年のコーディネーシ ョン指標の上では中間的 レベル の賃金交渉制度へ と移行 している。また、同時に失業に対する賃金の感応性は正の値を示 している。
スウェーデンにおいて典型的に考えられてきた賃金交渉制度の賃金抑制効果は大幅に低下 したと考 えられる。
次に、図‑9のパネル
(B)に
おいては製品市場競争 と賃金の弾性値の関連が示 されている。製品市 場規制指標 としては1982年か ら1998年にかけての製品市場規制の変化を採用 した。マイナスの値が 大 きい程、この期間に製品市場の規制緩和が進んだことを示す。本研究ノー トの仮説にしたがえば、製品市場競争の拡大は賃金に与える失業の負の効果が上昇すると期待 される。 しか し、アメリカ、
オランダ、 とりわけイギリスにおいてはそうした効果が確認されるものの、 ドイッ、フィンラン ド、
スウェーデンについては規制緩和が進んだにもかかわらず、賃金の弾性値は負の値を示 していない。
他方、製品市場の規制緩和がそれほど進行 しなかったイタリアとスィスについては、プラスの効果 から伺われるように、製品市場競争が労働需要にまったく影響をあたえていないようである。
Ⅳ.交渉制度および製品市場競争の効果
Ⅲにおいて失業に対する賃金の感応性と交渉構造・製品市場競争の関連を観察したが、そこでは 一貫 した関連を見出すことが出来なかった。そこで製品市場競争と賃金交渉構造の変化が賃金に与 える効果を確認するために体系的な分析を試みることにしたい。ここでは、Nymoen and Rodseth
計担
¨一一一・・・一 卜r
・・針
―‑130‑―
(2002)にお ける賃金交渉モデルか ら引 き出 された賃金決定式 を利用す る。形式的 には賃金 はナ ッ シュ交渉解であ り、次の ように表現 される。
″―/rPι
,4′ %,ら
,βノWは賃金、Peは期待生産物価格、
Aは
生産性、百は失業率、bは失業手当、 βは労働組合の交渉力 である。こうしたモデルにもとづいて本ノー トでは価格水準、生産性、社会保障支出および失業率 を入れた名 目賃金式 を推定する。利用 されるデータは生産労働者の平均稼働所得、消費財価格水準、1人あた り実質GDP、 対
GDP比
社会保障支出、OECD標準失業率、製品市場の規制緩和指標の変化 率、コーディネーション指標であ り、17カ国の1985年〜2000期間のデータをプーリングして推計 し た。これにより、第 1に 、製品市場競争が賃金の失業率の感応性に影響 をあたえているのか、さら に、第2に、賃金交渉制度によってその効果が異なるのか、を検討することにしたい。計量的な分析 に入る前 に、賃金、失業、製品市場競争および交渉構造の関連を見てお きたい。図
‑10においては、パネル
lAl賃
金 と失業、パネル(B)賃
金 と失業・製品市場規制緩和の相互作用い、お よびパ ネル(C)賃
金 と失業・コーデイネーシ ョン⑫の相互作用の関連が示 されている。パネルlAlを
見 ると、各国ごとに、また時代 ごとに無視 しえない相違が観察 されるが、総 じて失業が賃金に与える 負の効果が観察される。これは製品市場規制の緩和の進行 を考慮 した場合にも、ほぼ同様の傾向が 観察 される (パネル(B))。 だが、製品市場規制の緩和が失業に対する賃金の感応度を引 き上げても ない。 Ⅱで予測 されたように、失業に対する賃金の感応性に対する製品市場競争の影響は賃金交渉 構造に依存する可能性があることを示 していると言えるか もしれない。次に、パネル(C)の
失業・労 使間コーデイネーシ ョンの相互作用が賃金に与える影響は負の効果を示 しているものの、その効果 は大幅に低下 している。こうした事実は製品市場競争の変化 よりも賃金交渉構造が より大 きく賃金 の失業感応性に影響 を与えている可能性がある。00ここで利用 された製品市場競争指標 は
1982年
か ら1998年
にかけての製品市場の規制緩和指標の変化率である。値が大 きい 程、規制緩和が進んだことを示す。C21コ
ーディネーションはOECD120041掲 載の5年ごとの指標 を採用 した。‑131‑
図‑101Al 賃 金 と失業
難│
"‐ ・
I %押O¬
「 .ワB… ‐囃 劉¬
.=b賃 金 と失業 ・製 品市場 の規 制緩和
11轟
II.ym:結
ィ・ inwag。
F出にd va:uos
郎一 一一 一 一一 一一 一一 一一 一一一 鷺 一一
●
●
■ 嗜
図
‑10(C)賃
金 と失業 ・ コーデ ィネー シ ョン壺
│││二
il■:IIIII:IIIII111:111=:│rOヽ ・ ・ ・ ● ・ ・
轟轟10petふ轟
=轟
議1亀 :轟
:=11'' Intrage Fitted values
' Inwage Fitted values
:t.= 二 F囁攣
"∵
‐――‐
―
1
… …
‑ 132‑