氏 名・(本籍) 池
いけ
田
だ
研
けん
(東京都)
専 攻 分 野 の 名 称 博士(医学)
学 位 記 番 号 医博甲第 853 号 学 位 授 与 の 日 付 平成 26 年 3 月 22 日
学 位 授 与 の 要 件 学位規則第 4 条第 1 項該当 研 究 科 ・ 専 攻 医学系研究科医学専攻
学 位 論 文 題 名 Immunochemical Fecal Occult Blood Test Predicts Dual Antiplatelet Therapy Discontinuation after Coronary Stenting
(冠動脈インターベンション後の2剤抗血小板療法の忍容性は便潜血スクリー ニング検査で予測される)
論 文 審 査 委 員 (主査) 教授 長谷川 仁 志
(副査) 教授 尾 野 恭 一 教授 澤 田 賢 一
Akita University学位論文内容要旨
Immunochemical Fecal Occult Blood Test Predicts Dual Antiplatelet Therapy Discontinuation after Coronary Stenting(冠動脈インターベンション後の 2 剤抗血小板療法の忍容性は便潜血スクリー
ニング検査で予測される)
秋田大学大学院医学研究科 内科系 循環器学講座 池田 研
研究目的
近年、冠動脈ステント留置術を中心とした治療の発展により、冠動脈疾患患者の予後は飛躍的に改善してき ている。しかしながら、薬剤溶出性ステント登場後、Aspirin と Clopidogrel の 2 剤による抗血小板療法(Dual antiplatelet therapy:以下 DAPT)の中断がステント血栓症のリスクとなる事実がある。ステント血栓症を予防 のため、経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention:以下 PCI)後の DAPT はガイドラインで 1 年間の継続が推奨されているが、消化管出血や消化器癌による DAPT の中断は稀ならずあり、決して看過でき ない問題である。DAPT の忍容性は PCI の治療戦略を考える上で重要であるが、DAPT 忍容性の予測因子につい ては不明な点が多い。急性冠症候群症例を対象とした抗血小板療法中断に関する研究では、消化管出血と消化 器癌は中断原因の半数を占めたとの報告もある。プロトンポンプ阻害薬(Proton-pump inhibitor:以下 PPI)併 用がガイドラインでも推奨されてからは、出血合併症の 4 分の 3 が下部消化管出血であり、下部消化器疾患の 簡便なスクリーニング検査である便潜血検査を行えば、PCI 症例の DAPT の忍容性を予測できる可能性が示唆さ れた。したがって、我々は消化管出血や消化器癌の簡便なスクリーニング検査である便潜血検査に着目し、PCI 後の 2 剤抗血小板療法の忍容性が予測可能かどうか明らかにする検討した。
研究方法
2004 年 11 月から 2011 年 3 月までに当院で初回 PCI を受けた連続 374 例のうち、治療後アスピリンとチエノ ピリジンによる DAPT が新規に導入され、かつ便潜血検査を施行された 186 例を対象とした。PCI 前後 1 か月以 内(緊急例は全て PCI 後 1 か月以内)に免疫法による便潜血検査施行し、一回でも陽性ならば、便潜血陽性と 判断した。エンドポイントを DAPT 中断を要する消化器癌手術、中等度以上の消化管出血である BARC(Bleeding Academic Research Consortium)出血基準タイプ 3 か 5 とした。観察期間は 1 年間とし、急性期死亡症例、急 性期 CABG 移行例、フォローアップ困難症例による DAPT 中断は除外した。
研究成績
便潜血検査施行された登録 186 例のうち、除外項目を満たす 5 例は除外とした 181 例について検討した。181 例中、便潜血陽性群(以下 P 群)が 32 例、陰性群(以下 N 群)が 149 例であった。消化管関連の DAPT 中断は 181 例中 11 例 6.1%)でみられた。P 群 6 例、N 群 5 例であった。N 群 5 例のうち 2 例でみつかった悪性疾患はい ずれも胃癌であった。DAPT 中断に関する多変量解析にて便潜血陽性が有意差をもって原因となった。また DAPT 中断発生に関する Kaplan-Meier 曲線を Log-lank test を用いて解析した結果、 2 つの生存曲線に有意差を認め、
便潜血陽性群が便潜血陰性群と比べ DAPT 中断発生の割合が高い結果となった。
結論
以上の結果より、便潜血検査が陰性であった PCI 症例は、消化器疾患による 1 年以内の DAPT 中断が有意に 少なかった。また PCI 症例に対する便潜血によるスクリーニング検査は、DAPT の忍容性を判断するのに有用で ある可能性が示唆された。
Akita University
学位(博士-甲) 論文審査結果の要旨
主査:長谷川仁志 申請者:池田 研
論文題名
Immunochemical Fecal Occult Blood Test Predicts Dual Antiplatelet Therapy Discontinuation after Coronary Stenting(冠動脈インターベンション後の 2 剤抗血小板療法の忍容性は便潜血スクリー
ニング検査で予測される)
要旨
著者の研究は、論文内容要旨に示すように、冠動脈疾患患者へのステント留置後
1か月から
12か月以上の一定期間必要とされる 2 剤による抗血小板療法(Dual antiplatelet therapy:以下 DAPT)の忍容性を便潜血検査で予測できるかどうかを検討したものである。
本論文の斬新さ、重要性、実験方法の正確性、表現の明瞭さは、以下の通りである。
1)斬新さ
救急患者が多い本領域では、各種消化器系の検査ができないで緊急治療に踏み切らなければな らない場合も少なくない。一方で、待機的に冠動脈インターベンションを予定している患者すべ てに消化管の精査を義務づけることも困難である。また、プロトンポンプ阻害薬(Proton-pump inhibitor:以下 PPI)併用がガイドラインでも推奨されてからは、出血合併症の 4 分の 3 が下部消 化管出血とされている。本研究の斬新さは、これらの経緯から下部消化器疾患の簡便なスクリー ニング検査である便潜血検査を行えば、冠動脈インターベンション後の DAPT の忍容性を予測で きる可能性をはじめて展開した点にあり、ステントの選択や、DAPT 中止に伴うステント内血栓閉 塞という重篤な合併法を未然に防ぐ意味でも意義深い。
2)重要性
世界最高齢社会の日本では、心血管系疾患が死因の大きな割合を占める。したがって冠動脈イ ンターベンション前後の DAPT 忍容性を予測して、内服継続できるかどうかを推定することは、
治療の適否や、ステントの選択を決定する上で患者にとっても医療側にとっても非常に重要な要 素となる。
3)研究方法の正確性
186
例の症例を正確に把握して、評価の対象を検討している。PCI 前後 1 か月以内(緊急例は 全て PCI 後 1 か月以内)に免疫法による便潜血検査を2回施行し、1回でも陽性ならば、便潜血 陽性と判断した。エンドポイントとして DAPT の中断を要する消化器癌手術、中等度以上の消化 管出血である BARC(Bleeding Academic Research Consortium)出血基準タイプ 3 か 5 とした。
観察期間は 1 年間とし、急性期死亡症例、急性期 CABG 移行例、フォローアップ困難症例による DAPT 中断は除外しており、客観的な評価方法で正確性があると考えられる。
4)表現の明性
課題の解決するための研究目的、方法、実験結果、考察を簡潔、明瞭に記載していると考える 以上述べたように、本論文は学位を授与するのに十分値する研究と判定された。
Akita University