不 正 受 給 罪 と 詐 欺 罪
―
― 補 助 金
・ 給 付 金 等 の 不 正 取 得 に 関 す る 処 罰 規 定 の 意 義
―
星 ―
周 一 郎
目次
は じめ に 1 補 助 金
・給 付 金 等の 不 正 取得 に 対す る 処 罰規 定 2 詐 欺 罪 と補 助 金 等適 正 化 法上 の 不正 受 交 付罪 と の 関係 3 詐 欺 罪 と社 会 保 障法 上 の 不正 受 給等 罪 と の関 係 4 不 正 受 交付
・ 不 正受 給 行 為の 独 自処 罰 の 意義
は じ め に
現 在 の わ が国 で は
、 国か ら の 各 種 補助 金 制 度
、ま た
、 税 金 など を 財 源 とす る 様 々 な 公的 給 付
・ 扶助 等 の 制 度が
、 社会 福 祉 事 業や 雇 用 対 策 事業 等 の 一 環と し て 設 けら れ て い る
。そ し て
、 とり わ け 後 者 は、 生 活 困 窮者 の 支 援 や雇 用 対策 に 重 要 な役 割 を 果 た し、 社 会 基 盤の 安 定 に 大き く 寄 与 す るも の と な って い る
。 不 正 受 給 罪 と 詐 欺 罪
(都 法 五 十 二
―
二
) 一 九 七
し か し な が ら
、近 時
、 補 助 金 を 不 適 切 に 使 用 し
、 あ る い は 給 付 金
・ 年 金 等 や 公 的 融 資 に 関 す る 諸 制 度 を 悪 用 し て、 不 正 な 受給 を す る 例が 多 く 見 ら れる よ う に なり
、 し か も より 深 刻 化 して い る よ う に思 わ れ る
。た と え ば
、二
〇 一〇 年 に 発 覚し た
、 戸 籍 上は 死 亡 し てい な い
「 名ば か り 高 齢 者」 の 問 題 では
、 長 期 に わた る 年 金 の不 正 受 給 が絡 む よう な 事 例 も見 ら れ た(1)
。ま た
、 生 活 保護 に 関 し ては
、 保 護 対 象者 の 不 正 受給 だ け で な く、 そ こ か らさ ら に 不 正な 収 益を 得 よ う とす る
、い わ ゆ る「 貧 困 ビ ジネ ス
」な ど の 派 生的 問 題 も 生じ て お り
、重 点 的 な取 り 組 み の必 要 性 が 高ま っ てい る 問 題 であ る と 言 え よう(2)
。 た だ
、 こ れら 補 助 金
・給 付 金 等 の 不正 取 得 等 の行 為 に つ い ては
、 刑 法 上の 詐 欺 罪 に より 対 応 す べき 問 題 と なる こ とが 多 い が
、同 時 に
、 こ れら の 制 度 の根 拠 法 規 には
、 不 正 取 得等 を 処 罰 する 独 自 の 規 定が 置 か れ てい る 例 も 多数 存 在す る
。 そ れゆ え
、 両 者 の関 係 を ど のよ う に 解 する か
、 と い う問 題 が 生 ずる こ と に な る。 そ こ で
、 本稿 で は
、 実 体刑 法 の 観 点か ら
、 不 正受 給 罪 と 詐 欺罪 と の 関 係、 お よ び そ の果 た し う る機 能 に つ いて
、 若干 の 考 察 を加 え る こ と にし た い(3)
。
1 補 助 金 ・ 給 付 金 等 の 不 正 取 得 に 対 す る 処 罰 規 定
補 助 金 や 各種 給 付 等 の制 度 や 手 続 を定 め る 法 規に お い て は
、そ の 不 正 な取 得 等 に 対 する 処 罰 規 定に 関 し て
、い く つか の 類 型 が見 ら れ る
。 ま ず
、 第 一は
、「 偽 り その 他 不 正 の手 段
( ま た は行 為
)」 に より
、 補 助 金や 給 付 金 の交 付 等 を 受 ける 行 為 を 処罰 す る規 定 で あ り、 補 助 金 等 適正 化 法 二 九条 一 項 や 政党 助 成 法 四 三条 が こ れ にあ た る
。
一 九 八
第 二 に
、 同じ く
「 偽 りそ の 他 不 正 の手 段
」 等 に よ り 給 付 を 受 け る な ど す る 行 為 を 処 罰 す る が
、「 刑 法 に 正 条 が あ ると き は
、 刑法 に よ る
」旨 を 規 定 し
、条 文 の 文 言上
、 補 充 規 定で あ る 旨 を明 示 し て いる 規 定 が あ る。 生 活 保 護法 八 五条
、 国 民 年金 法 一 一 一条
、 特 定 障 害者 に 対 す る特 別 障 害 給 付金 の 支 給 に関 す る 法 律 三五 条
、 児 童扶 養 手 当 法三 五 条、 児 童 手 当法 三 一 条
、 平成 二 二 年 度等 に お け る子 ど も 手 当 の支 給 に 関 する 法 律 三 三 条な ど に 見 られ る(4)
。 な お、 同 じく 不 正 受 給で あ っ て も、 金 員 で は なく 手 帳 の 不正 受 交 付 行 為を 処 罰 対 象と す る も の もあ る
( 戦 傷病 者 特 別 援護 法 三〇 条
、 身 体障 害 者 福 祉 法四 七 条 な ど)
。 以 上 の ほ かに
、「 不 正 受給
」 で は なく
、 虚 偽 の 届け 出 や 保 険 料 の 不 納 付 な ど の 行 為 を 処 罰 な い し は 過 料 の 対 象 と する 規 定 が ある
。 た と え ば、 国 民 年 金法 一 一 二 条や 一 一 三 条 がこ れ に あ たる
。 ま た
、 厚生 年 金 保 険法
、 健 康 保 険法 およ び 国 民 健康 保 険 法 な どは
、 こ う いっ た 類 型 の 処罰 規 定 の みを 置 い て いる(5)
。 そ し て、 そ の 場 合
、不 正 受 給 に関 し ては
、「 そ の者 か ら そ の 給付 の 価 額 の全 部 又 は 一 部 を 徴 収 す る こ と が で き る
」 と す る 徴 収 に 関 す る 規 定 の み が 置 か れて い る こ とも 多 い(6)
。
2 詐 欺 罪 と 補 助 金 等 適 正 化 法 上 の 不 正 受 交 付 罪 と の 関 係
補 助 金
、 給付 金 関 連 法規 上 の 不 正 受交 付
、 不 正受 給 等 の 処 罰規 定 は 以 上に 見 た と お りで あ る が
、こ の よ う な不 正 行為 に 関 し ては
、 不 正 受 交付 等 に 向 けた 欺 罔 行 為を 伴 う こ と も多 い と 思 われ る
。 そ の 場合
、 刑 法 上の 詐 欺 罪
(刑 法 二四 六 条
) との 関 連 を ど のよ う に 考 える べ き か が問 題 と な り うる
。 そ こ で、 こ の 問 題 を考 え る に あた り
、 ま ず、 補 助金 を 不 正 取得 す る 行 為 に関 す る 従 来の 判 例 の 状況 を 見 る こ とに し よ う
。 不 正 受 給 罪 と 詐 欺 罪
(都 法 五 十 二
―
二
) 一 九 九
盧
従来の判例の状況
補 助 金 等 適正 化 法 が 制定 さ れ る 以 前か ら
、 補 助金 の 不 正 取 得に 対 す る 詐欺 罪 の 成 立 は、 判 例 に おい て 認 め られ て いた
。 大 判 昭 和 八年 二 月 二 日
(刑 集 一 二 巻一 一 頁
) は、 虚 偽 の 工 事竣 工 精 算 書を 提 出 し て 不当
・ 過 大 な補 助 金 の 交付 を 受け た 行 為 につ い て 詐 欺 罪の 適 用 を 認め た
。 ま た、 大 判 昭 和 一一 年 七 月 八日
( 新 聞 四
〇四 九 号 七 頁) も
、 補 助対 象 の工 事 に 関 し、 実 際 に 支 出し た 額 よ り多 く の 工 事費 を 支 出 し たよ う に 装 って 不 当 に 多 額の 補 助 金 の交 付 を 受 け た行 為に つ い て
、正 当 な 権 利 者が 当 該 権 利を 実 行 す る にあ た り
、 欺罔 手 段 を 用い て 義 務 を 履行 さ せ 財 物の 交 付 を 受 ける 等し て も 詐 欺罪 を 構 成 す るこ と は な いが
、「 犯 人 ニ於 テ 名 ヲ 其 ノ 実 行 ニ 仮 託 シ テ 之 ヲ 手 段 ト シ テ 相 手 方 ヲ 欺 罔 シ 不 正ニ 財 物 又 ハ財 産 上 ノ 利 益ヲ 領 得 シ タル ト キ ハ 犯 人ノ 領 得 シ タル 財 物 又 ハ財 産 上 ノ 利 益ノ 全 部 ニ 付詐 欺 罪
」 が 成立 する と し
、 欺罔 手 段 に よ って 水 増 し した 補 助 金 等 の交 付 を 受 けた 場 合 に は
、そ の 全 額 につ い て 詐 欺罪 が 成 立 す ると の判 断 を 示 し てい た
。 ま た
、 戦 後 の最 高 裁 に おい て も
、 いず れ も
、 補 助金 等 適 正 化法 施 行 後 の 判例 で は あ るが
、 授 産 場が 町 営 で あ る旨 の虚 偽 の 申 請 をし て 補 助 金の 交 付 を 受け た と い う 事案 に 関 す る最 判 昭 和 三 一年 四 月 一 七日
( 裁 集 刑一 一 三 号 三 四一 頁)
、 お よ び
、超 過 供 出 の事 実 が な い のに あ っ た か の よ う に 装 っ て
、 食 糧 管 理 法 上 の 超 過 供 出 報 奨 金 の 交 付 を 受 け たと い う 事 案 に関 す る 最 判昭 和 三 二 年 一月 三 一 日
(刑 集 一 一 巻一 号 三 九 四 頁) は
、 補 助金 等 適 正 化 法施 行 前 に なさ れた 補 助 金 の 不正 受 交 付 行為 に つ い て
、詐 欺 罪 の 成立 を 認 め てい る
。 周 知 の よ う に、 国 家 法 益に 向 け た 詐 欺に つ い て は、 個 人 法 益に 対 す る 罪 と位 置 づ け られ る 詐 欺 罪 の定 型 性 を 欠く
二
〇
〇
こと な ど を 根拠 に
、 詐 欺罪 は 成 立 し ない と す る 見解 も 有 力 で ある(7)
。 し か しな が ら
、 判 例は
、 国 に 対し て も 詐 欺罪 は 成立 し う る とい う 立 場 を とる
。 た し かに
、 詐 欺 罪の 保 護 法 益 たる 財 産 権 は、 国 家 が 主 体で あ る 場 合も 含 ま れ ると 解 す べ き で あ ろ う(8)
。 そ う で あ れ ば
、 国 の 補 助 金 の 詐 取 に つ い て も 詐 欺 罪 の 成 立 を 認 め う る の は 当 然 で あ る こ と に な る。 ま た
、 補 助金 等 適 正 化法 上 の 不 正 受交 付 罪 と 刑法 上 の 詐 欺 罪の 関 係 を 考察 す る 上 で興 味 深 い の が、 最 決 昭 和四 一 年二 月 三 日( 判 時 四三 八 号 六 頁) で ある
。こ れ は
、A 県 で病 害 虫 防 除整 備 事 業 を 実施 す る も のと し て 農 林省
( 当時
) に対 し 不 実 の申 告 を し
、整 備 農 薬 管 理費 に 対 す る国 庫 補 助 金 の交 付 を 不 正に 受 け た と いう 事 案 で ある
。 当 該 行為 の 共謀 時 点 で は、 い ま だ 補 助金 等 適 正 化法 は 施 行 され て お ら ず
、共 謀 内 容 を実 行 し た 時 点で は 同 法 が施 行 さ れ てい た とい う 事 情 があ る な か で
、共 謀 の み に関 与 し た 被 告 人 Xに つ い て
、「 犯 人 側 の 為 し た 行 為 自 体 は 同 一 で あ り、 相 手 方の こ れ に 対応 す る 態 度 の如 何 を 構 成要 件 の 中 に包 含 す る 罪 とこ れ を 構 成要 件 と し な い罪 と が あ る場 合
、 検 察 官は 立証 の 有 無 難易 等 の 点 を 考慮 し 或 は 訴因 を 前 者 と し或 は こ れ を後 者 の 罪 とし て 起 訴 す るこ と あ る べく
、 本 件 に つい ては 後 者 の 起訴 を し た ま でで あ り
」、
「そ の 共 謀 自体 詐 欺 罪 の 共謀 で あ り 刑罰 法 規 に 触 れる も の で ある 以 上
、 その 後 適正 化 法 が 施行 さ れ る に 至っ た 関 係 上、 検 察 官 に おい て 右 共 謀に 基 づ く 所期 の 目 的 達 成の た め な され た 行 為 を 適正 化法 二 九 条 一項 違 反 と し て起 訴 し た ため そ の 訴 因 につ い て 審 判が 行 わ れ
、 かく て 原 判 決が 被 告 人 Xの 所 為 に つ いて も実 行 行 為 者 であ る 相 被 告人 ら と 同 様適 正 化 法 の 右条 項 の 範 囲に お い て 刑 責を 認 め た から と い っ て、 所 論 の 如 く刑 罰法 令 不 遡 及 の原 則
、 罪 刑法 定 主 義 に違 反 し
、 不 告不 理 の 原 則を 犯 す も の とい う こ と はで き な い
」と し て
、 補 助金 等適 正 化 法 二 九条 一 項 違 反の 成 立 を 認め た も の で ある
。 不
正 受 給 罪 と 詐 欺 罪
(都 法 五 十 二
―
二
) 二
〇 一
盪
保護法益と成立範囲
以 上 の 判 例か ら も 明 らか な よ う に
、補 助 金 の 不正 取 得 に つ いて
、 判 例 では
、 詐 欺 罪 およ び 不 正 受交 付 罪 の 双方 の 成立 の 可 能 性が 認 め ら れ てい る
。 し かし な が ら
、両 者 に は
、 相違 も か な り存 在 す る
。 その 一 つ が
、成 立 範 囲 に関 す る解 釈 で あ る。 補 助 金 に つい て
、 本 来 受け う る 額 を不 正 に 水 増し し た 請 求 をす る と い う行 為 に 関 し て詐 欺 罪 の 成立 が 認 め られ る 場合
、 そ れ は、 正 当 に 交 付を 受 け う る額 を も 含 めた 全 額 に つ いて 成 立 す るこ と が 認 め られ て い る
。前 掲 大 判 昭 和一 一年 七 月 八 日は
、 そ の 旨 を明 示 し て おり
、 ま た
、 たと え ば
、 労働 者 災 害 補償 保 険 金 の 水増 し 請 求 につ い て も
、 東京 高判 昭 和 五 四年 六 月 一 三 日( 判 時 九 四五 号 一 三 六 頁) は
、 不 正請 求 を 受 けた 労 働 基 準 監督 署 の 係 官等 は
、 も し 真実 を知 っ た な らば
、 請 求 金 全額 の 支 払 を拒 絶 し た の で あ り
、 被 告 人 は
、「 社 会 通 念 上 許 容 さ れ る 範 囲 を 逸 脱 す る 欺 罔 手段 を 用 い て保 険 金 を 受 領し た も の で、 全 体 と し て違 法 性 を 帯び
、 取 得 し た現 金 全 額 につ い て 詐 欺罪 が 成 立 す ると 解す る の が 相 当で あ る
」 とす る(9)
。 こ れ に 対 して
、 補 助 金等 適 正 化 法 二九 条 一 項 の不 正 受 交 付 罪に 関 し て は、 補 助 金 を 水増 し し て 請求 し た よ うな 場 合、 当 該 補 助金 全 額 に つ いて 不 正 受 交付 罪 が 成 立す る と す る 秬全 額 説 と
、過 大 交 付 を 受け た 部 分 につ い て の み不 正 受交 付 罪 が 成立 す る と す る 秡差 額 説 とが 対 立 す る。 秬全 額 説 は、 詐 欺 罪 に 関す る 前 述 の判 例 の 理 解を 前 提 に
、 補助 金 等 不 正受 交 付 罪 と 詐欺 罪 の 取 扱い を 異 な らし め る 理 由 は な く
、 請 求 が 全 体 と し て 違 法 性 を 帯 び る な ど と し て
、 原 則 と し て 全 額 に つ い て 犯 罪 が 成 立 す る と 主 張 す る
( 10
。)
こ れ は
、不 正 受 交 付罪 と 詐 欺 罪 の「 同 質 性
」を 強 調 す る 見解 と い え よう
。
二
〇 二
し か し
、 学説 で は
、 従来 か ら 秡差 額説 が 有 力 に主 張 さ れ て いた
。 同 説 には
、 構 成 要 件要 素 た る 不正 の 手 段 と補 助 金等 の 受 交 付と の 間 の 相 当因 果 関 係 の存 在 が 必 要 で あ る こ と を 強 調 し
、「 仮 に 不 正 の 手 段 が 講 じ ら れ て も
、 も と も と補 助 金 等 の交 付 を 受 け る資 格 の あ る事 業 に 対 して
、 正 当 な 金額 を 受 領 した 場 合 は
、 補助 金 等 不 正受 交 付 罪 を構 成 しな い
」と 解 す べ きで
、「 正当 に 受 給 しう べ き 金 額以 上 の 過 大 交付 を 受 け た場 合 に は
、 当該 超 過 部 分に つ い て のみ
」 犯罪 が 成 立 する と す る 見 解
( 11
と)
、「 予 算の 不 当 支 出 に よ る 国 庫 の 損 失 を 防 止 し よ う と す る も の で あ る か ら
、 い か に 不 正の 手 段 を 講じ て も
、 結果 に お い て 真実 に 交 付 すべ き 補 助 金 等が 交 付 さ れた 場 合 に は、 本 罪 を 構 成し な い と 解す べ きで あ る
」 とし て
、 損 害の 発 生 の 有 無に 着 目 す る見 解1()2 と が あ る。 た だ し
、両 者 は
、 同 じこ と を 別 の角 度 か ら 述べ て いる と 見 る こと も で き る1()3
。 そ う で あ ると す る な らば
、 不 正 受 交付 罪 と 詐 欺罪 の 保 護 法 益に 相 違 が あり
、 そ れ が成 立 範囲 の 解 釈 に影 響 を 及 ぼ す、 と さ れ てい る 点 が 注目 さ れ る
。 そ し て
、 近時
、 最 決 平 成二 一 年 九 月一 五 日
( 刑集 六 三 巻 七 号七 八 三 頁
)が
、 秡差 額 説の 立 場 に 立つ こ と を 明ら か にし た1()4
。 こ れは
、 食 肉 関連 会 社 の 代 表取 締 役 で ある 被 告 人 が
、牛 海 綿 状 脳症
( B S E
)検 査 の 実 施以 前 に と 畜・ 解 体処 理 さ れ た国 産 牛 肉 を 市場 か ら 隔 離し て 一 定 期間 保 管 す る 牛肉 在 庫 緊 急保 管 対 策 事 業・ 市 場 隔 離牛 肉 緊 急 処分 事 業を 悪 用 し
、当 該 事 業 の 対象 外 牛 肉 を対 象 牛 肉 と偽 っ て 上 乗 せし た 合 計 量に 対 す る 補 助金 の 交 付 を申 請 し
、 農畜 産 業振 興 事 業 団か ら 合 計 一 三億 八 四 三 四万 七 一 一
〇円 の 補 助 金 の交 付 を 受 ける な ど し た
、と い う 事 案で あ る
。 本 件 の 第 一審 判 決 は
、「 補 助 金 等 適正 化 法 二 九 条 一 項 は
、 そ の 立 法 経 緯 等 に か ん が み れ ば
、 詐 欺 罪 の 特 別 法 と し て設 け ら れ たも の で あ り
、そ の 成 立 範囲 に つ い て も 詐 欺 罪 と 同 様 に 解 す べ き で あ る
」 と し た
。そ し て、
「 詐 欺 罪 の 成立 範 囲 に つい て は
、 他 人に 対 し て 権利 を 有 す る 者で あ っ て も、 そ の 権 利の 範 囲 内 で あり
、 か つ
、そ の 方 法 が 社会 通念 上
、 一 般に 忍 容 す べ きも の と 認 めら れ る 程 度 を超 え な い 限り は 違 法 とは な ら な い が、 そ の 範 囲程 度 を 逸 脱 する 不 正 受 給 罪 と 詐 欺 罪
(都 法 五 十 二
―
二
) 二
〇 三
とき は 違 法 とな り
、 権 利の 有 無 に か かわ ら ず そ の全 体 に つ い て詐 欺 罪 が 成立 す る と 解 すべ き で あ る」 と し た 上で
、
「補 助 金 等 適正 化 法 二 九 条一 項 に つ いて も
、 交 付 され た 補 助 金 等 の 一 部 に 正 当 に 交 付 を 受 け ら れ る 部 分 が 含 ま れ て いた 場 合 で あっ て も
、 そ れが 可 分 で ある か 否 か にか か わ ら ず
、そ の 方 法 が社 会 通 念 上
、一 般 に 忍 容す べ き も の と認 めら れ る 程 度を 超 え れ ば
、そ の 全 体 につ い て 同 法 違 反 の 罪 が 成 立 す る と 解 す べ き で あ
」 り
、「 本 件 の よ う に 基 に な る 資 料 を 改 ざ ん し て 申 請 書 に 虚 偽 の 記 載 を し て 補 助 金 の 交 付 を 受 け
、 犯 罪 が 発 覚 し そ う に な る や 改 ざ ん 資 料 を 含 め、 証 拠 を 隠滅 し た よ う な場 合 に お いて は
、 交 付 を受 け た 金 額が 可 分 で ある か 不 可 分 であ る か に かか わ ら ず
、 全体 とし て 違 法 性を 帯 び る
」 とし て
、 交 付を 受 け た 補 助金 全 額 に つい て 補 助 金 等不 正 受 交 付罪 が 成 立 する 旨 の 秬全 額説 を採 用 し
、 控 訴審 判 決 も
、こ の 判 断 を是 認 し た
。 し か し な が ら、 最 高 裁 は、
「 補 助 金 等に 係 る 予 算の 執 行 の 適 正 化 に 関 す る 法 律 二 九 条 一 項 の 文 理 及 び 趣 旨 に 照 ら せば
、 補 助 金 等不 正 受 交 付罪 は
、 不 正の 手 段 と 因 果関 係 の あ る受 交 付 額 に つい て 成 立 する も の と 解 する の を 相 当と する
」 と し
、「 因 果 関 係 につ い て は
、 不正 の 手 段 の 態 様
、補 助 金 交 付 の 目 的
、 条 件
、交 付 額 の 算 定 方 法 等 を 考 慮 し て判 断 す る こ とが 相 当 で ある
」 と し た 上 で、
「 本 件 補 助 金 は
、 対 象 牛 肉 を 市 場 か ら 隔 離 す る た め
、 こ れ を 保 管 又 は 処分 し た 場 合 に、 そ の 量 に応 じ て 交 付 され る も の であ る と こ ろ
、被 告 人 ら は、 対 象 牛 肉に 加 え
、 そ れ以 外 の 又 は実 在 しな い 牛 肉 につ き
、 こ れら が 対 象 牛 肉で あ っ て その 保 管 又 は 処分 を し た と偽 っ て
、 これ を 上 乗 せ した 合 計 量 に対 す る補 助 金 の 交付 を 申 請 し、 こ れ に 対 す る 補 助 金 の 交 付 を 受 け た と い う の で あ る
」 か ら
、「 そ う す る と、 不 正 の 手 段 と因 果 関 係 のあ る 受 交 付 額は
、 対 象 牛肉 以 外 の 又は 実 在 し な い牛 肉 に 係 る受 交 付 額 で あり
、 補 助 金等 不 正 受 交付 罪 はそ の 受 交 付額 に つ い て 成立 す る と いう べ き で あ」 る と し て
、 秡差 額 説 によ る 旨 を 判 示し た の で ある1()5
。 補 助 金 等 適正 化 法 の 不正 受 交 付 罪 の処 罰 根 拠
(保 護 法 益
) につ い て
、 学説 は
、 立 法 当時 か ら 一 貫し て
、 国 の財 産
二
〇 四
権と い う 国 家法 益 に 対 する 侵 害 で あ ると 解 し て きた1()6
。 ま た
、 下級 審 判 例 では あ る が
、 秋田 地 判 昭 和三 九 年 五 月一 三 日( 下 刑 集 六巻 五= 六 号六 五 五 頁
) も、 補 助 金 等 適 正 化 法 二 九 条 は
、「 国 の 財 政 的 利 益 を 保 護 法 益 と し て そ の 侵 害 を処 罰 す る 趣旨 で あ っ て
、…
… こ の こと は 同 条 の構 成 要 件 上 当然 で あ る ばか り で な く
、補 助 金 交 付を 受 け る に至 ら ない 場 合 を 罰す べ き 未 遂 罪の 規 定 を 欠き
…
…
、 補助 行 政 運 営 上重 要 な 手 続違 反 に つ い ては 別 途 に 法第 三 一 条 の罰 則 など が 設 け られ て い る こ とに 徴 し
、 明ら か で あ る」 と 判 示 し てい る
。 こ の よ う に、 補 助 金 等 適正 化 法 の 不正 受 交 付 罪の 処 罰 根 拠 を、 国 の 財 産の 不 当 な 減 少と い う 点 に求 め る の で あれ ば、
「 偽 り そ の他 不 正 の 手段
」 に あ た るの は
、 水 増 し 等 の 不 当 な 請 求 分 に つ い て の み
、当 該 犯 罪 の 成 立 が 認 め る べ きこ と に な ろう
。 す な わ ち、 保 護 法 益に 関 す る 理 解の 相 違 が
、犯 罪 の 成 立範 囲 の 解 釈 の帰 趨 を 左 右す る の で あ る。 前 掲 平 成 二一 年 決 定 に 対す る 調 査 官解 説 は
、 補 助金 等 適 正 化法 二 九 条 一項 の
「 偽 り その 他 不 正 の手 段 に よ り 補助 金等 の 交 付 を受 け
」 と い う文 理 や
、 予算 の 不 当 支 出 に よ る 国 庫 の 損 失 の 防 止 と い う 趣 旨 か ら
、「 偽 り そ の 他 不 正 の 手段
」 と
「 補助 金 等 の 交 付」 と の 間 に因 果 関 係 が 必要 と さ れ るこ と は
、 ほぼ 一 致 し た 見解 で あ る とし た 上 で
、 因果 関係 は 個 別 具体 的 な 判 断 にな る と の 前提 か ら
、 本 決定 に つ い て、 本 件 の 補助 金 は 保 管
・処 分 し た 対象 牛 肉 の 量 に応 じて 交 付 さ れる も の で あ り、 申 請 の 不正 性 も 上 乗 せの 点 に あ るこ と か ら
、 上乗 せ し た 牛肉 に 係 る 受交 付 額 に つ いて のみ
、 因 果 関 係を 認 め た もの で あ る とし て い る1()7
。 蘯
行為態様における相違
ま た
、 詐 欺罪 の 実 行 行為 は い わ ゆ る欺 罔 行 為 であ り
、 同 罪 の既 遂 が 成 立す る た め に は、 そ の 欺 罔の 相 手 が
、そ れ によ り 錯 誤 に陥 り
、 そ の 錯誤 に よ る 瑕疵 あ る 意 思に 基 づ き 財 物の 交 付
・ 移転 を す る こ とが 必 要 と なる
。 不 正 受 給 罪 と 詐 欺 罪
(都 法 五 十 二
―
二
) 二
〇 五
こ れ に 対 して
、 不 正 受交 付 罪 の 場 合 に は
、「 偽 り そ の 他 不 正 の 手 段
」 が 実 行 行 為 と な る
。 こ れ は
、 不 当 に 補 助 金 等の 交 付 を 受け る 原 因 と なっ た 手 段 で不 正 な も のを 総 称 す る 概念 で あ っ て、 補 助 金 等 の交 付 を す る者 を 欺 罔 する 場 合を 含 む が
、必 ず し も そ れの み に 限 られ ず
、 交 付者 側 で 申 請 書記 載 の 事 実に 虚 偽 が あ るこ と を 知 った 場 合 な ども 該 当す る と さ れる1()8
。 そ れ ゆえ
、「 偽 り その 他 不 正 の 手段
」 と
「 補助 金 等 の 交付
」 等 と の 間の 因 果 関 係と し て は
、「 不 正 手段 に 基 づ く交 付
」 と い う関 係 が あ れば 足 り る とさ れ る1()9
。 前 掲 最 決 昭和 四 一 年 二月 三 日 で は
、岩 田 誠 裁 判官 に よ る 補 足意 見 が
、 補助 金 等
「 適 正化 法 二 九 条一 項 の 罪 は、 い やし く も
、 偽り そ の 他 不 正の 手 段 に より 相 手 方
(国 又 は 地 方 公共 団 体
) より 補 助 金 等 又は 間 接 補 助金 等 の 交 付若 し くは 融 通 を 受け る こ と に より 成 立 し
、相 手 方 が 錯誤 に 陥 る と 否と
、 又 そ の補 助 金 等 を 犯人 が 領 得 する 意 思 あ ると 否 とを 問 わ な い点 に お い て
、詐 欺 罪 と は罪 質
、 構 成要 件 を 異 に する 別 罪 で ある
」 と し て いる
。 盻
罪数関係
以 上 で 見 て き た よ う に
、 補 助 金 等 の 不 正 取 得 行 為 に つ い て は
、 詐 欺 罪 と 不 正 受 交 付 罪 の 双 方 に 該 当 し う る 行 為 と、 そ う で はな い 行 為 と が存 在 す る こと に な る
。そ し て
、 前 者の 場 合 に おけ る 両 罪 の 罪数 関 係 に つい て も
、 学説 で は、 必 ず し も見 解 の 一 致 を見 て い な い。 補 助 金 等 適正 化 法 の 不 正受 交 付 罪 の立 法 過 程 は
、複 雑 な 経 緯を 辿 っ た もの と な っ て いる2()0
。 当 初
、国 会 に 提 案さ れ た不 正 受 交 付罪 の 罰 則 は、 懲 役 刑 に つい て は
、 詐欺 罪 と 同 じ
「一
〇 年 以 下」 と さ れ て いた
。 と こ ろが そ の 後 紆余 曲 折を 経 て
、 当時 の 租 税 法 上の 罰 則 と の均 衡 を 重 視す る と い う 観点 を も 含 めて
、 懲 役 刑 は「 五 年 以 下」 と さ れ るこ と とな っ た2()1
。ま た
、不 正 受交 付 罪 に は
、不 正受 給 行 為 の処 罰 規 定 の多 く に 見 ら れる
「 但し
、刑 法 に 正 条が あ る と きは
、
二
〇 六
刑法 に よ る
」と す る 但 書は 置 か れ て いな い
。 罪 数 関 係 に関 す る 学 説の 対 立 は
、 この よ う な 立法 の 経 緯 と 条文 の 文 言 に規 定 さ れ て いる よ う に 思わ れ る
。 す な わ ち
、立 案 担 当 者 の解 説 で は
、補 助 金 等 適正 化 法 二 九 条一 項 の
「 予定 す る 犯 罪 定型 は
、 補 助金 等 に 関 して 刑 法詐 欺 罪 の 予定 す る 定 型 を完 全 に 包 摂し て お り
、又 本 条 第 一 項に お い て 刑法 詐 欺 罪 よ り拡 大 さ れ た部 分 も
、 国家 の 財産 的 法 益 を主! と! し! て! 保護 法 益 と す る意 味 に お いて
、 詐 欺 罪 の構 成 要 件 を量 的 に 拡 大 した も の で あっ て
、 本 条は 補 助金 等 の 特 殊性 に 鑑 み 刑 法詐 欺 罪 の 特 別 規 定 を 設 け た も の で あ る2()2
」( 傍 点 原 文) と さ れ
、 ま た
、 災 害 救 助 法 四 六 条 や生 活 保 護 法八 五 条 な ど は、
「 そ の 構成 要 件 に お い て
、 詐 欺 罪 に 該 る も の を 含 み な が ら
、こ れ と 競 合 す る 場 合 の 法 の適 用 に つ いて
、 そ れ ぞれ の 但 書 に
『刑 法 に 正 条が あ る と き は、 刑 法 に よる
』 と し て これ ら の 罰 則規 定 の 本 文が 刑 法の 補 充 規 定で あ る こ と を明 に し て いる
」 が
、 これ は 勿 論 規 定で は な く
、こ れ が な い とき は
、 特 別法 と し て 当該 法 規の 罰 則 規 定の 優 先 適 用 をみ る は ず であ る2()3
、 な どと 説 明 さ れ てい た
。 こ の特 別 関 係 説 は、 実 務 担 当者 の 間 で は通 説 とな っ て お り
( 24
、)
下 級 審 判例 に は
、 そ の旨 を 明 示 した も の も あ る( 前 掲 秋 田地 判 昭 和 三 九年 五 月 一 三日
)。 こ れ に 対 し、 詐 欺 罪 と 不正 受 交 付 罪と で は
、 そ の 保 護 法 益 や 要 件
・効 果 等 を 異 に し て い る こ と
、「 国 側 の 担 当 者 もお お む ね 不正 を 承 知 で 補助 金 を 交 付し た
」 旨 の被 疑 者 の 弁 解を 容 易 に 排除 で き ず
、 しか も
、 交 付さ れ た 補 助金 が 個人 的 用 途 に費 消 さ れ て いな い な ど
、詐 欺 罪 に よる 立 証 が 困 難で 起 訴 を 断念 せ ざ る を 得な い よ う な事 案 が 少 なか ら ず見 ら れ た こと に 対 処 す るた め
、 詐 欺罪 と は 別 の規 定 を 設 け て、 そ の 立 証の 困 難 性 を 解決 す る こ とを も 目 的 と して いた と い う 立法 当 時 の 事 情を も 考 慮 すれ ば
、「 虚 偽の 実 績 報 告 を 提 出 す る な ど の 欺 罔 手 段 に よ っ て 国 を 錯 誤 に 陥 れ て補 助 金 の 返還 を 免 れ た 行為 が 認 め られ る よ う な 事案 に つ い てま で
、 法 がわ ざ わ ざ 補 助金 等 適 正 化法 を 設 け て 詐欺 罪に よ る 処 罰を 完 全 に 排 斥し た と 解 さな け れ ば な らな い と い うの は い か に も不 合 理
」 であ る と し て、 不 正 受 交 付罪 不 正 受 給 罪 と 詐 欺 罪
(都 法 五 十 二
―
二
) 二
〇 七
は詐 欺 罪 の 補充 規 定 と する 補 充 関 係 説
( 25
も)
主 張 さ れて い る
。 さ らに は
、 不 正受 交 付 罪 と 詐欺 罪 の 両 要件 が 充 た され て いる 場 合 に
、「 検 察 官 は
、詐 欺 罪 で 起訴 す る こ と も 可 能 で あ る し
、 立 証 の 容 易 さ
、 両 罰 規 定 の 適 用
、 罰 金 刑 の 存 在 等々 を 考 慮 して
、 不 正 受 交付 罪 で 起 訴す る こ と も可 能 で あ る
」と の 前 提 から
、 業 務 上 横領 罪 と 背 任罪 の 場 合 と同 様 に考 え て 法 条競 合 の 択 一 関係 に あ る とす る か
、 不正 受 交 付 罪 に国 家 法 益 を侵 害 す る 側 面が あ る こ とを 考 慮 し て
(観 念的 競 合 類 似の
) 包 括 一 罪な い し 観 念的 競 合 と 解 する こ と も 考え ら れ な くは な い と す る指 摘 も あ る
( 26
。)
そ し て
、 判例 で は
、 後者 の 考 え 方 が採 用 さ れ てい る と 考 え られ る
。 前 掲最 決 昭 和 四 一年 二 月 三 日に お け る
、詐 欺 罪と 不 正 受 交付 罪 の 両 者 が成 立 す る 場合 に は
、 検察 官 は
、 そ の訴 追 裁 量 の問 題 と し て いず れ の 犯 罪に よ っ て も起 訴 でき る と す る判 示 は
、 特 別関 係 説 か らは 説 明 が 困難 で あ る と 言わ ざ る を 得な い
。 さ ら に、 下 級 審 判例 で あ る が、 国 立大 学 医 学 部教 授 で あ っ た被 告 人 が
、厚 生 省
( 当時
) か ら 概 算払 い を 受 けた 厚 生 科 学 研究 費 補 助 金に つ い て
、 架空 の 経 費 を 計 上 す る 等 の 方 法 に よ り 余 剰 金 の 返 還 を 免 れ た と い う 事 案 に つ い て
、 徳 島 地 判 平 成 一 五 年 一 月 一 六 日
(LEX/DB:28085370
) は
、「 弁 護 人 は
、補 助 金 等 に 係 る 予 算 の 執 行 の 適 正 化 に 関 す る 法 律
( 以 下
「 補 助 金 等 適 正 化 法」 と い う
。) は
、 二 九 条に お い て 補助 金 等 の 不 正 受 領 と 不 正 交 付 を 処 罰 し
、 三
〇 条 に お い て 交 付 さ れ た 補 助 金 等 の用 途 外 使 用を 処 罰 し て いる が
、 本 件の よ う に 実績 報 告 に お いて 虚 偽 の 報告 を し
、 交 付を 受 け た 補助 金 等 の 返 還を 免れ た 場 合 を処 罰 し て い ない と こ ろ
、補 助 金 等 適 正化 法 二 九 条一 項 は 詐 欺罪 の 特 別 法 とし て 規 定 され て い る こ とか ら、 本 件 の よう な い わ ゆ る『 二 項 詐 欺』 に 当 た る 場合 を 処 罰 しな い 趣 旨 であ る と 主 張 する
。 し か し、 補 助 金 等 適正 化法 二 九 条 一項 の 罰 則 規 定と 刑 法 の 詐欺 罪 と は そ の趣 旨
・ 要 件・ 効 果 を 異に し
、 両 者 は併 存 す べ きも の と 解 す るの が相 当 で あ るか ら
、 詐 欺 によ り 補 助 金の 返 還 を 免 れる 行 為 に つい て は
、 補助 金 等 適 正 化法 の 罰 則 規定 の 構 成 要 件に 当た ら な い こと を も っ て
、刑 法 上 の 詐欺 利 得 罪 の 成立 が 排 除 され る も の で はな い
」 と して
、 特 別 関係 説 を 明 示 的に
二
〇 八
否定 し て い るこ と も 注 目さ れ る
。 眈
刑事政策的要請
以 上 に お いて
、 縷 々
、詐 欺 罪 と 不 正受 交 付 罪 の関 連 に つ い て、 従 来 の 議論 状 況 を 確 認し て き た
。不 正 な 手 段を 用 いた 財 物 の 取得 と い う 面 にお い て
、 両者 に は 類 似性 が 見 ら れ るも の の
、 いく つ か の 点 にお い て 重 要な 相 違 点 が存 在 する
。 そ し て、 こ の 相 違 点こ そ が
、 詐欺 罪 類 似 の不 正 受 交 付 罪が 制 定 さ れた 理 由 で あ ると 考 え ら れる の で あ る
( 27
。)
ま ず
、 先 にも 述 べ た こと で あ る が
、補 助 金 等 適正 化 法 上 の 不正 受 交 付 罪の 保 護 法 益 は、 国 の 財 産権 と い う 国家 法 益に 対 す る 侵害 で あ る と 解さ れ て い る。 こ の よ うな 国 の 財 政 的利 益 の 保 護と い う 観 点 から す れ ば
、補 助 金 等 の不 正 受交 付 行 為 の法 益 侵 害 性 は、 詐 欺 罪 の構 成 要 件 該当 行 為 で あ る欺 罔 行 為 の有 無 に よ っ て実 質 的 に 相違 す る も ので は ない と 考 え るべ き こ と に なる2()8
。 そ う であ れ ば
、 詐欺 罪 の 構 成 要件 に は 必 ずし も 該 当 し ない よ う な 不正 な 行 為 や因 果 経過 を 辿 っ た場 合 で も
、 なお 処 罰 の 必要 性 が 認 めら れ る 場 合 があ る こ と にな り
、 そ の 点に
、 独 自 の処 罰 規 定 を設 け る意 義 が 認 めら れ る こ と にな る2()9
。 し か し な がら
、 そ れ 以上 に 重 要 な のが
、 刑 事 政策 的 な 配 慮 であ る
。 す なわ ち
、 補 助 金等 適 正 化 法制 定 当 時 には
、 補助 金 等 の 不正 受 給 の 事 案が 相 当 件 数あ っ た と され
、 そ の よ うな 不 正 が 生ず る 根 底 に は、 補 助 金 等が た だ で もら え るも の で あ り、 多 額に 受 給 す る ほど
「 もら い 得
」で あ っ て、 こ れを い か に 手際 よ く 取 得 して く る か が担 当 者 の 手腕
、 力量 で あ る かの ご と き 誤 った 考 え 方 が一 般 に 通 用し て い た よ うに 見 受 け られ る 旨 が 指 摘さ れ て い た
( 30
。)
ま た
、 補助 金 等適 正 化 法 の制 定 と い うの は
、 こ の よう な 行 為 が
、「 明 瞭 に 反 社 会 的 な 行 為 で あ る こ と を 烙 印 づ け
、 か か る 反 社 会 的な 行 為 に 対し て 断 固 刑 事罰 を 以 て 臨ま ん と す る国 の 意 思 を 明ら か に す る」 こ と が 第 一の 目 的 で あっ た と さ れて い 不 正 受 給 罪 と 詐 欺 罪
(都 法 五 十 二
―
二
) 二
〇 九
る
( 31
。)
そ し て
、「 補 助 金 等 が国 民 の 信 託に か か る 貴 重な 公 金
(publicfunds
)で あ る と いう 厳 粛 な 事 実に 留 意 す れば
、 補 助 金 等 が 不 正 不 当 に 交 付 使 用 さ れ る ご と き 事 態 は
、 厳 し く 規 制 さ れ る べ き こ と は い う ま で も な い と こ ろ
」 で あ り、
「 そ の た めに も
、 そ れら の 行 為 が反 社 会 的
、 反公 益 的 行 為た る ゆ え ん を鮮 明 し て おく 必 要
」 があ る が
、「 その 端 的な 方 法 が
、禁 止 す べ き 行為 を 刑 事 的な 制 裁 処 分の 対 象 と し て規 律 す る 方式 で あ る こ とは 一 般 に 承認 さ れ て い ると ころ で あ り
、本 法 が
、 種 々の 議 論 の ある 中 で
、 あ えて 補 助 金 等の 不 正 受 交付
( 受 給
) に対 す る 刑 事罰 の 規 定 を 設け たゆ え ん も
、お お む ね こ のよ う な 考 え方 に 立 っ て いた も の
」 とさ れ て い るの で あ る3()2
。 そ れ で は
、補 助 金 等 適正 化 法 に 独 自の 処 罰 規 定を 設 け た こ とで
、 以 上 の目 的 は 十 分 かつ 適 正 に 達成 さ れ て いる の であ ろ う か
。表 1 は
、 検 察に お け る 同法 違 反 事 件の 処 理 状 況 を示 し た も ので あ る
。 こ の数 値 を 見 る限 り で は
、た し かに 適 用 件 数が 多 い と は 言え ず
、 果 たし て 前 記 の刑 事 政 策 的 要請 が 本 当 に存 在 し た の か、 疑 問 に 思う 向 き も 出て く るか も し れ ない
。 し か し なが ら
、 立 法事 実 を 支 える 資 料 と し ても 援 用 さ れた
、 会 計 検 査院 に よ る 決算 検 査 報 告 にお ける
「 不 当 事項 及 び 是 正 事項
」 の 状 況を み る と
、 補助 金 等 関 係に 関 す る 件数 が
、 昭 和 二七 年 度 以 降三 年 連 続 で 一〇
〇〇 件 を 超 え、 同 法 が 制 定さ れ た 昭 和三
〇 年 度 で も九
〇 七 件 あっ た も の が、 昭 和 三 一 年度 に は 五 九八 件
、 昭 和 三二 年度 に は 一 九四 件 と な っ てい る
( 表 2)
。 こ の 時 期 に は、 不 当 事 項 お よ び 是 正 事 項 の 総 件 数 自 体 も 相 当 数 減 少 し て いる た め
、 一概 に は 言 え ない が
、 そ れで も
、 一 定 の効 果 を 上 げた 面 も あ ると 考 え る こ とは 許 さ れ よう
。 た だ し
、歳 出 関 係 の 不 当 事 項 お よ び 是 正 事 項 に 絞 め る 補 助 金 等 関 係 の 件 数 の 比 率 は
、 特 に 最 近 に な っ て 高 い 数 値 と な っ て お り、 現 在 で もな お
、 先 の 刑事 政 策 的 要請 は 存 在 し てい る と 捉 える 余 地 も あり う る
。
二 一
〇
表1 補助金等適正化法違反事件受理・処理人員 (単位 人)
処理人員 計
11 56 31 66 46 79 51 114 27 29 36 23 36 19
-
-
- 57 13 17 76 19 34 3 13 28 7 13 21 4 6 5 12
8 3
-
- 1
-
- 2 7 17 19 24 11 40 48 68 34 48 25 14 12 10 出典:「検察統計年報」
不起訴 計
9 39 25 59 37 62 44 109 20 25 24 17 30 18
-
-
- 53
9 6 68 15 26 1 6 23
6 8 20
4 3 3 2 8 3
-
- 1
-
- 2 1 9 9 7 6 27 33 15 18 42 18 9 7 8 その他
7 3 4 10 16 17 11 20 3 3
- 9 9 4
-
-
- 26
3 4 7 7 8
-
- 16
3 4 3 3 2 1 1 3 2
-
- 1
-
- 2
- 7
- 1 3 17 32 5 11 11 14 1 2 5 起訴猶予
2 36 21 49 21 45 33 89 17 22 24 8 21 14
-
-
- 27 6 2 61 8 18 1 6 7 3 4 17 1 1 2 1 5 1
-
-
-
-
-
- 1 2 9 6 3 10 1 10 7 31 4 8 5 3 起 訴
計 2 17
6 7 9 17
7 5 7 4 12
6 6 1
-
-
- 4 4 11
8 4 8 2 7 5 1 5 1
- 3 2 10
-
-
-
-
-
-
-
- 6 8 10 17 5 13 15 53 16 6 7 5 5 2 求略式
-
-
- 2
-
- 1
-
-
- 7
- 3
-
-
-
- 4 4 7 2 4 5 2 6
- 1 4 1
- 1
- 10
-
-
-
-
-
-
-
- 2 2 7
-
-
- 7
- 4
- 1
- 1
- 求公判
2 17 4 7 9 17 6 5 7 4 5 6 3 1
-
-
-
-
- 4 6
- 3
- 1 5
- 1
-
- 2 2
-
-
-
-
-
-
-
-
- 4 6 3 17 5 13 8 53 12 6 6 5 4 2 受理人員
20 63 62 30 59 54 47 95 32 25 29 31 28 21
-
-
- 29 17 14 80 12 22 2 19 29 8 16
7 4 6 8 5 5 1
- 1
-
-
- 2 12 13 19 27 23 32 34 69 50 53 26 14 13 10 昭和31年
32年 33年 34年 35年 36年 37年 38年 39年 40年 41年 42年 43年 44年 45年 46年 47年 48年 49年 50年 51年 52年 53年 54年 55年 56年 57年 58年 59年 60年 61年 62年 63年 平成元年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年 21年 22年 不
正 受 給 罪 と 詐 欺 罪
(都 法 五 十 二
―
二
) 二 一 一