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金 融政 策 の ター ゲ ッ ト

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(1)

《 論 説 》

金 融政 策 の ター ゲ ッ ト

ーEUに お け る イ ン フ レ ー シ ョ ン タ ー ゲ ッ トの 存 在 一

栗 原 裕

1.序

イ ン フ レー シ ョン タ ー ゲ ッ トに つ い て は,近 年 に な り,多 くの 国 で そ の 存 在 が 認 め ら れ る と と もに,功 罪 が 活 発 に 議 論 さ れ て い る1)。イ ン フ レー シ ョン の 回避 や 物 価 の 安 定 は,程 度 の 相 違 は あ れ,中 央 銀 行 を は じめ とし た 政 策 当局 の 大 き な 政 策 課 題 で あ る。EUで は,マ ー ス ト リ ヒ ト条 約 で,欧 州 中央 銀 行(ECB)の 最 大 の 政 策 課 題 が 物 価 の 安 定(pricestability)で あ る と定 め られ て い る こ と もあ り,そ れ に は か な りの 注 視 が 払 わ れ て い る と 考 え て よ い。

しか し物 価 の安 定 の た め の 政 策 手 段 は様 々 で あ る。 また 本 論 で 議 論 を す る 「 中 間 目標 」 に つ い て も,そ れ を設 定 す るか ど うか も含 め て,さ らに多 様 な もの が 存 在 して い る。 イ ン フ レ ー シ ョ ン を直 接 的 に タ ー ゲ ッ トとす る 国 も あれ ば,貨 幣 供 給 量,あ る い は為 替 レー トを そ れ に お く国 もあ り,統 一 され た見 解 ,そ して 政 策 目標 が 採 られ て い る と は言 い難 い 。そ れ はEUの み な らず,域 外 諸 国 に お い て も例 外 で は な い 。 従 来 は 一 般 に,貨 幣 供 給 量

を タ ー ゲ ッ ト とす る(中 間 目標 とす る)国 が 多 か っ た も の の,近 年 で は先 進 国 を 中心 に,イ ン フ レー シ ョ ンを タ ー ゲ ッ トに す る 国 が 増 加 して い る と 言 わ れ て い る。 それ は 物 価 の安 定 を 実 現 す る直 接 的 な 手 段 で あ る こ と もあ るが,中 央 銀 行 の 独 立 性 を高 め,物 価 の 安 定 とい う役 割 を そ こ に一 段 と担 わ せ よ う とす る世 界 的 な趨 勢 と関係 が あ りそ うで あ る 。 しか しEU各 国 す

一71一

(2)

べ て で イ ン フ レ ー シ ョ ン を タ ー ゲ ッ トに して い る とは 考 え に くい 。 例 え ば 大 国 ドイ ツ で は貨 幣 供 給 量 を タ ー ゲ ッ トに して い る とい う の は,ほ ぼ 共 通

した 見 解 で あ ろ う。

本 論 の 目 的 は,EU加 盟 国 の うち,ど の 国 で イ ン フ レー シ ョン タ ー ゲ ッ ト が採 用 され て い る の か を計 量 的 に見 極 め,そ の動 機 を 同 じ く計 量 的 な 観 点 か ら考 察 す る こ と に あ る 。EUで は,共 通 通 貨 の 導 入 後 に,一 元 的 な 金 融 政 策 が本 格 的 に ス タ ー トす る。 その 点 か ら も,過 去 の 経 緯 を振 り返 り,各 国 の ス タ ンス を把 握 し て お く こ とは,今 後 のECBを 中 心 と した 金 融 政 策 の 動 向,そ の 効 果,影 響 を分 析 す る上 に お い て も重 要 で あ る。

本 論 で は以 下 の順 序 に従 っ て 考 察 が 行 わ れ る。第2節 は,EU加 盟 国 に お い て,何 が 金 融 政 策 の タ ー ゲ ッ ト と して用 い ら れ て きた の か を計 量 的 に検 証 す る。 第3節 は,前 節 の分 析 を前 提 に し,イ ン フ レー シ ョ ン ター ゲ ッ ト の 動 機 を や は り計 量 的 な手 法 を用 い て 考 察 す る。 最 後 の 第4節 で は若 干 の 考 察 を加 え,帰 結 と した い。

2.金 融 政 策 の タ ー ゲ ッ ト

金 融 政 策 の 手 段 と 目標 に つ い て は,従 来 か ら多 くの 議 論 が な され て き た。

図 は,twostepapproachと 呼 ば れ る形 態 を示 して い る が,そ れ はonestep approachを 説 明 す る上 にお い て も有 用 で あ る。

両 ア プ ロ ー チ に関 す る議 論 を詳 細 に検 討 す る こ と は しな い が,本 論 で 中 心 に な る の は,(c)の 部 分 に つ い て の 存 在 の 可 否 で あ る。そ の 存 在 を否 定 し, 物 価 の安 定 を 目標 とす る場 合,「 イ ン フ レ ー シ ョ ン タ ー ゲ ッ ト」が,金 融 政 策 の 最 終 目 標 で あ る イ ン フ レ 率 を 直 接 タ ー ゲ ッ ト とす る こ とか ら,one stepapproachと も言 わ れ て い る。一 般 に,中 央 銀 行 は あ ら か じめ イ ン フ レ 率 の 目標 値 を 公 表 し,そ れ に従 って 金 融 政 策 を遂 行 す る。 指 標 と して は, 消 費 者 物 価 指 数 な ど,観 測,入 手 可 能 な デ ー タが 用 い られ る こ とが 多 い。

この 政 策 は,イ ン フ レ率 が 事 後 的 に明 らか に な る こ とか ら,中 央 銀 行 に とっ

(3)

金 融政 策 の タ ー ゲ ッ ト

図 金融 政 策の 手段 とその 目標(二 段 階 アプ ローチ)

巨璽 ユ… 公定歩合

公開 市 場操 作(a) 預金 準 備率

[麺 ユ… 銀行間金利

民 間金 融機 関 の 準備(b) マ ネ タ リーべ 一 ス

[魎 ユ… 各種金利

貨 幣供 給 量(c) 金 融機 関 の貸 出

塵 亘園 … 物価

雇 用 経 済成(d) 為 替 レー ト 国 際収 支

て は ア カ ウ ン タ ビ リテ ィ と透 明性 が よ り要 求 さ れ る こ とに な る。 また政 策 面 に お い て は,将 来 の イ ン フ レー シ ョン,金 融 政 策 の 波 及 効 果 が 予 測 可能 で な け れ ば な らな い 。 この 方 法 を採 用 す る 国 は,英 国 を は じ め,近 年 にな

り増 加 して い る と言 わ れ て い る。

これ に対 し て ブ ンデ スバ ン クな どで は,従 来 どお りの貨 幣 供 給 量 を ター ゲ ッ トに す る こ と を求 め て い る。 これ は,マ ネ タ リス ト的 な ス タ ンス を と り,操 作 が 可 能 な 貨 幣 集 計 量 を中 間 目標 に設 定 し,そ れ を 通 じて物 価 の安 定 を 実現 し よ う とす る もの で あ る。 そ の点 で,twostepapproachと も言 わ れ る。 こ の動 機 と し て は,上 述 した 予 測 が 困 難 で あ る こ とに加 え,効 果 に タ イ ム ラ グ が あ る こ とか ら裁 量 的 な政 策 に偏 り,市 場 を 不 安 定 に す る こ と,ひ い て は政 策 決 定 に金 融 政 策 が 巻 き込 まれ,中 央 銀 行 の 独 立 性 が 損 な わ れ る可 能 性 が あ る とい う考 え方 に立 脚 して い る よ うで あ る。 貨 幣 供 給 量 を 中 間 目標 と して 設 定 す る理 由 は,金 融 政 策 の 波 及 効 果 に 関 す る知 識 や 情 報 の 不 足,タ イ ム ラ グが 伴 うの は事 実 で あ る が,そ れ を認 め,操 作 可 能 な

一73一

(4)

貨 幣 供 給 量 を 設 定,公 表 す る こ とで 中央 銀 行 な どの 責 任 を明 らか にす る た め で あ る。 しか し ま ず 前 提 に な る の は,貨 幣 供 給 量 とイ ン フ レ率 に安 定 し た 関 係 が な け れ ば な らな い こ とで あ る。

ECBが 金 融 政 策 の タ ー ゲ ッ トを選 択 す る 際 の 基 準 と し て,ECBの 前 身 のEMIで は,1)物 価 安 定 とい う最 終 目標 を効 果 的 に 追 求 で き る,効 率 性 を備 えて い る こ と,2)ア カ ウ ン タ ビ リ テ ィ を備 え て い る こ と,3)透 明 性 を備 え て い る こ と,4)中 期 指 向 の戦 略 で あ る こ と,5)継 続 性 を備 え て い る こ と,6)独 立 性 を保 持 で き る こ と,の6つ の 原 則 を 掲 げた(EMI, 1996)。 それ に 従 って 為 替 レー ト,金 利,名 目所 得,貨 幣 供 給 量,イ ン フ レー シ ョ ンの5つ が,ECBの 金 融 政 策 ター ゲ ッ ト とし て検 討 の 対 象 に な っ た2)。

そ して,為 替 レ ー トに っ い て は,ユ ー ロの 規 模 が 大 き くな る に つ れ て物 価 安 定 の 域 内 目標 と矛 盾 す る可 能 性 が あ る こ と,金 利 は,実 質 金 利 水 準 を特 定 化 す る こ とが 困 難 で あ る こ と,名 目所 得 は,管 理 が 困 難 で あ る こ と とい っ た理 由 な どで 退 け られ た 。 その 結 果,貨 幣 供 給 量 とイ ン フ レー シ ョ ンの2 っ が 残 っ た の で あ る。

先 に も触 れ た が,マ ー ス トリ ヒ ト条 約 で は,欧 州 中 央 銀 行 の 目的 を,物 価 の 安 定 と規 定 し て い る。 そ して そ の た め の手 段 と して,従 来,貨 幣供 給 量 とイ ン フ レー シ ョ ンの ど ち らかが,各 々 の 国 で タ ー ゲ ッ ト とし て 用 い ら れ て きた こ と は,一 般 的 な 見 方 で あ る よ う に思 わ れ る。 貨 幣 供 給 量(中 間 目標)に つ い て は ドイ ツ な どで,イ ン フ レ ー シ ョ ン に つ い て は英 国 な どで 用 い られ て お り,そ れ が 一 元 的 な金 融 政 策 施 行 に 対 し て,両 国 で の対 立 を 生 ん だ と も言 わ れ て い る。 本 節 は政 策 反 応 関 数 を 用 い て,ど の タ ー ゲ ッ ト がEU各 国 に お い て 用 い られ て きた の か を,計 量 的 に検 証 す る。

そ の た め に,金 融 政 策 の 操 作 目標 を まず 特 定 化 し,そ れ を前 提 条 件 と し

て,推 定 を 行 う3》 。 わ れ わ れ はEU加 盟 国 の う ち,ベ ル ギ ー,デ ンマ ー ク,

フ ィ ン ラ ン ド,ギ リ シ ャ,ア イル ラ ン ド,イ タ リア,オ ラ ンダ,ポ ル トガ

ル,ス ペ イ ン,ス ウ ェー デ ン,英 国 の各 国 で は,短 期 金 利 を操 作 目標 と し

て きた と す る。 一 方,オ ー ス トリア,フ ラ ン ス,ド イ ツ で は,ハ イパ ワ ー

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金融政策の ターゲッ ト

ドマ ネ ー を操 作 目標 に し て きた とす る。 この う ち金 利 に つ い て は,1970年 代 後 半 に,多 くの 先 進 国 で操 作 目標 と して,貨 幣 供 給 量 の 代 わ りに用 い ら れ て き た感 が あ る。 そ れ は この 時 期 に イ ン フ レ ー シ ョ ンが 蔓 延 し,市 場 金 利 に イ ン フ レ予 想 が 織 り込 まれ,政 策 判 断 が 困 難 に な った こ と もあ ろ う。

ま ず,前 者 の グ ル ー プ に属 す る各 国 で は,以 下 の 推 定 式(1)を 用 い て 推 定 を行 う。 対 象 国 の政 策 当局 が コ ン トロー ル して い る の は短 期 金 利 で あ る。

そ して 政 策 反 応 を 見 極 め る こ とに す る。(記 号 の 意 味 は後 述 す る。)

3

1NTERESTt=α 。+Σ αIINTERESTt.1+α4HPMt.1+α51NFt.1

1=1

十 α6MONEYH十 α7EXCHANGEt‑1十 α8GDPt‑1 十 αgCA/GDPレ1十Fc(1)

後 者 の グル ー プ につ い て は,以 下 の(2)式 を用 い て 推 定 を行 う。同 式 か ら明 らか な よ うに コ ン トロー ル され て い る の は もち ろ ん ハ イ パ ワ ー ドマ ネ ー で あ る。そ して(1)式 と同様,右 辺 の説 明 変 数 で 回帰 を し,政 策 反 応 を検 証 す る。

a

HPMt=α 。+a,INTERESTt̲1+Σ :=i α1+,HPMt一 置+α41NFt‑1

十a5MONEYt̲1十asEXCHANGEt̲1十a,GDPt̲,

十 α8CA/GDPt̲1十 εt (2)

記 号 の 意 味 は 以 下 の 通 り で あ る 。 INTEREST:moneymarketrate

HPM:ハ イ パ ワ ー ド マ ネ ー の 増 加 率 INF:イ ン フ レ 率(CPI)

MONEY:貨 幣 供 給 量(M2ま た はM3)の 増 加 率

一75一

(6)

EXCHANGE:為 替 レ ー ト(対ECUの 月 末 値) GDP:実 質GDPの 成 長 率(CPIで デ フ レー ト) CA/GDP:経 常 収 支 の対GDP比

ε:誤 差 項

デ ー タ は四 半 期 で,出 所 は い ず れ もIFS(IMF)で あ る。 推 定 期 間 は,1980 年 か ら1996年 で あ る。1980年 を起 点 と した 理 由 は ま ず,デ ー タ の アベ イ ラ ビ リテ ィの 問 題 で あ る。 さ ら に金 融 の 自 由化,国 際 化 な ど,世 界 的 な金 融 シ ス テ ム の 変 化 が この 頃 か ら起 こっ た こ と も考 慮 に入 れ て い る。 推 定 結 果 は表1の 通 りで あ っ た。

表1に 示 さ れ た 推 定 結 果 よ り,各 国 に お け る金 融 政 策 の 操 作 目標 を特 定 化 す る。 結 果 は 表2の 通 りで あ る。

い くつ か の 国 の ケ ー ス で は,必 ず し も良 好 な推 定 結 果 を 得 る に は至 らな

か った 。 そ こ で推 定 方 法 や 変 数 を変 え て再 度 推 定 を行 っ た が,結 果 が大 き

く変 化 す る こ と は な か っ た4)。結 果 は そ れ ら を 除 け ば ク リア ー な もの で

あ っ た 。 英 国 を含 む7つ のEU加 盟 国 で,イ ン フ レー シ ョ ンが タ ー ゲ ッ ト

と して 用 い られ て い た。 フ ラ ンス,ド イ ツ,そ して オ ー ス トリア で は,イ

ン フ レー シ ョ ン を タ ー ゲ ッ ト と して 用 い る こ と は せ ず,ハ イ パ ワ ー ドマ

ネ ー を コ ン トロ ー ル しなが ら貨 幣供 給 量 を タ ー ゲ ッ トと し て い る こ とが 推

定 結 果 よ り導 き 出 され た 。 英 国 は短 期 金 利 を コ ン トロー ル し な が ら イ ン フ

レー シ ョン を タ ー ゲ ッ トと して い た 。 イ タ リア は短 期 金利 を コ ン トロー ル

し な が ら,為 替 レ ー トを タ ー ゲ ッ トと し て い た 。た だ し これ は同 国 が,フ ァ

ン ダ メ ン タ ル ズ の 大 き な乖 離 も あ り,ERMか ら の脱 退 を余 儀 な くさ れ た

事 情 も考 慮 に 入 れ るべ きで あ る。 通 貨 統 合 の実 現 に向 け,為 替 レ ー トの 収

飲 を余 儀 な く さ れ た 時 期 が,推 定 期 間 の 中 で 比 較 的 長 期 に及 ん だ もの と考

え られ る5)。

(7)

金融政策 のターゲッ ト

表1金 融政 策 の政 策反 応関 数

国 定数項 INF MONEY Exchange GDP CA/GDP Adj.RZ DW Austria 0.156

(0.608)

一 〇.007 (‐o.ois)

0.315象 (2.791)

‐o .ozs (‑0.518)

一1 .549̀

(‑2.151)

40.526 (1.514)

0.486 2.274

Belgium

一 〇.023 (‑0.040)

30.540̀

(2.607) 50.329 (1.622)

0.538 (0.405)

一130.524' (‑2.109)

一150 .241

(‑1.406)

0.905 1.899

Denmark 7.802 (0.305)

一5 .026 (‑0.554)

1.391 (0.059)

一 〇.805 (‑0.301)

一30 .284 (‑1.250)

300.584 (0.008)

1:1.

1.905

Finland 2.782 (0.516)

16.050 (1.893)

一 〇.429 (‑0.059)

一 〇.594 (‑0.604)

0.523 (0.072)

200.035 (1.401)

0.921 2.016

France 0.042 (0.713)

一 〇.026 (‑0.098)

0.402*

(3.026)

一 〇.031 (‑0.704)

一1 .602*

(‑2.402)

36.521 (0.789)

0.453 2.178

Germany

‐o .aoa (‑0.059)

0.956 (1.229)

0.299零 (2.652)

一 〇.465 (‑0.356)

0.954 (0.132)

163.512 (1.023)

0.902 2.321

Greece 30.952 (1.623)

一 〇.542 (‑0.358)

一7 .816 (‑0.328)

一4 .285 (‑1.445)

一35 .547 (‑1.221)

一1200.35 (‑0.640)

1:1

1.832

Ireland

一 〇.325 (‑0.056)

26.514亀 (2.553)

46.524 (1.521)

0.499 (0.502)

一100 .58 (‑1.621)

一12 .259 (‑0.956)

0.855 1.699

Italy 6.532

(0.302)

一3 .583 (0.586)

1.358 (0.073)

一1 .026廓 (‑2.623)

一40 .523 (‑1.124)

158.256 (0.321)

0.785 1.896

Netherlands 1.035 (0.201)

20.354 (1.059)

40.592 (1.301)

0.594 (0.343)

一60 .528 (‑0.724)

一39 .517 (0.337)

0.905 2.321

Portugal 1.502 (0.336)

18.549' (2.690)

一 〇.994 (‑0.329)

一 〇.357 (‑0.408)

一1 .298 (‑0.307)

89.567 (1.024)

0.942 2.129

Spain

‐o .ao2 (‑0.060)

18.502廓 (2.502)

一3.002 (‑0.058)

0.003 (0.002)

0.804 (0.201)

180.361 (1.308)

0.923 1.999

Sweden 1.802 (0.352)

20.845寧 (2.624)

一1 .681 (‑0.305)

一 〇.402 (‑0.377)

一1 .552 (‑0.238)

120.567 (0.981)

0.941 2.381

U.K. 1.023 (0.204)

20.352專 (1.991)

40.586 (1.237)

1.1:

(0.201)

一60 .528 (‑0.714)

一96 .324 (‐i.00s)

0.862 1.994

注)()内 の 値 はt値 で あ る。*は5%水 準 で有 意 で あ る こ とを示 す。

77

(8)

表2金 融 政 策 の タ ー ゲ ッ ト

国 タ ー ゲ ッ ト

Austria 貨 幣供 給量,GDP Belgium イ ン フ レ ー シ ョ ン,GDP

Denmark 判別が困難

Finland イ ン フ レ ー シ ョ ン

France 貨幣供給量

Germany 貨幣供給量

Greece 為 替 レ ー ト

Ireland イ ン フ レ ー シ ョ ン

Italy 為 替 レ ー ト

Netherlands 判別が困難

Portugal イ ン フ レ ー シ ョ ン Spain イ ン フ レ ー シ ョ ン Sweden イ ン フ レ ー シ ョ ン UnitedKingdom イ ン フ レ ー シ ョ ン

3.イ ン フ レ ー シ ョ ン を タ ー ゲ ッ トと す る 動 機

第2節 で は,EU加 盟 国 に お い て,ど の 金 融 政 策 手 段 が タ ー ゲ ッ トと され て きた の か を計 量 的 に 導 い た 。 本 節 で は,イ ン フ レー シ ョ ン を タ ー ゲ ッ ト

とす る動 機 をや は り計 量 的 な手 法 を 用 い て分 析 す る。 そ の理 由 は,イ ン フ

レ ー シ ョン を タ ー ゲ ッ トとす る 国 がEU各 国 で 数 多 く存 在 す る こ とが 確 認

さ れ た こ と,ま た それ がEUに 限 らず,世 界 的 な トレ ン ドとな りつ つ あ る

た め で あ る。 こ う した研 究 は,必 ず し も数 多 くは な い もの の,行 わ れ て い

な か った わ けで は な い。Svensson(1997/1998),Gerlach(1999)な ど,優

れ た研 究 も提 示 され て い る。しか しわ れ わ れ の 分 析 とは前 提 条 件 の 設 定(第

(9)

金 融 政策 の ター ゲ ッ ト

2節),計 量 的 な手 法,推 定 式 の 説 明 変 数 な ど,大 きな 相 違 が あ る。

イ ン フ レー シ ョ ン タ ー ゲ ッ トの動 機 を計 量 的 に分 析 す る場 合,説 明 変 数 と し て まず 考 え られ る の は,過 去 の イ ン フ レ率 で あ ろ う。そ れ が 高 けれ ば, イ ン フ レー シ ョ ン ター ゲ ッ トを設 定 す る可 能 性 が 高 い もの と考 え られ る。

表3は1985年 か ら1997年 の 平 均 イ ン フ レ 率 で あ る。

EU各 国 に お い て 過 去 の イ ン フ レ率 は,相 対 的 に 高 水 準 で あ った こ とか ら も,そ れ が政 策 決 定 に 大 きな役 割 を果 た して きた こ と は容 易 に想 像 で き る。 しか し,ポ ル トガ ル や スペ イ ン は,わ れ わ れ の 分 析 で イ ン フ レー シ ョ ン を ター ゲ ッ ト と して きた と推 察 で き る もの の,高 水 準 を維 持 して い る。

イ ン フ レ ー シ ョ ンが 改 善 され た と は考 え に くい。 た だ し,イ ン フ レ率 が通 貨 統 合 の 条 件 に な っ て い る こ と を考 慮 に 入 れ な け れ ば な らな い し,ま た EUの 中 で,ド イ ツ に金 融 政 策,経 済状 況 な ど を収 敷 さ せ る動 機 が 高 い 国 で は,イ ン フ レー シ ョ ン を タ ー ゲ ッ トに す る確 率 は 高 くな る。 さ ら にイ ン フ レー シ ョ ン との 関 係 に 限 定 し て も,ERMの 存 在 も考 慮 に入 れ な け れ ば な らな い。フ ィ ン ラ ン ド,ス ウ ェ ー デ ン,英 国 はERMを 脱 退 して か ら イ ン フ レー シ ョ ン を タ ー ゲ ッ トに した とい う見 方 もあ る(Svensson1997/1998 p.5)。 す な わ ち,ERMへ の加 盟 に よ り,低 イ ン フ レが 実 現 で き な くな っ

た と判 断 した 可 能 性 が あ る。 ゆ え に過 去 の イ ン フ レ 率 の み を判 断 材 料 とし て イ ン フ レ ー シ ョ ン を タ ー ゲ ッ トと して い た と判 断 す る の は危 険 で あ る。

必 要 に 応 じ て,イ ン フ レ ー シ ョン以 外 の説 明 変 数 を 考 慮 に 入 れ る こ とが,

表3EU各 国の 平均 イ ンフ レ率(%)

Austria Belgium Denmark Finland France Germany Greece Ireland

3.6 4.3 5.6 6.7 6.2 3.0 19.5 7.9

Italy Luxembourg Netherlands Portugal Spain Sweden U.K.

10.2 5.8 2.8 15.8 9.3 7.7 5.1

注)デ ー タ の 出 所 は 表1と 同 じ。

一79一

(10)

理 論 的 に も求 め られ る。 そ の 点 につ い て は,以 下 の 分 析 で議 論 を 展 開 す る こ とに し よ う。

わ れ わ れ は,イ ン フ レー シ ョ ン を タ ー ゲ ッ トと して き た 国 と他 の 手 段 を ター ゲ ッ トと して き た 国 とで,構 造 上 の相 違 が 存 在 す る の か ど う か を検 証 す る。 推 定 方 法 と し て は プ ロ ビ ッ ト分 析 を用 い,被 説 明 変 数 と して は,イ ン フ レー シ ョ ン タ ー ゲ ッ トを 用 い て いた 国 を1,用 い て い な か っ た 国 を0 とす る。 説 明 変 数 と して は,以 下 の3つ の変 数 を 用 い る こ と にす る。

1)過 去 の イ ン フ レ率:イ ン フ レー シ ョ ン ター ゲ ッ トに対 して 一 般 に,正 の 作 用 を す る と考 え られ る 。 理 由 につ い て は,先 に述 べ た通 りで あ る。

2)開 放 度:(予 期 しな い)貨 幣 供 給 量 の増 加 な どに よ り実 質 為 替 レー ト が 減 価 した 場 合,開 放 度 が 高 い 国 に は,一 般 に,輸 入 品 の イ ン フ レ ー シ ョ ン な どを通 じて マ イ ナ ス の影 響 を もた らす と考 え られ る。 この と き政 策 担 当者 に,イ ン フ レー シ ョ ン を ター ゲ ッ トに す る 動 機 は小 さい 。 イ ン フ レー シ ョ ン を フ レ キ シ ブ ル に させ て お い た 方 が,実 質 為 替 レー トを好 ま し い方 向 に 変 化 さ せ る こ とが で き る の で あ る。 ゆ え に負 の作 用 を もた ら す と考 え られ る 。 しか しイ ン フ レー シ ョ ンが 著 し く昂 進 して い る よ うな ケ ー ス に そ れ が 当 て は ま る か ど うか は疑 問 で あ る。 その 点 に つ い て の判 断 は,以 下 の 実 証 的 な 分 析 に委 ね た い。 開 放 度 の指 標 と して は輸 出総 額

の対GDP比 を 用 い る6)。

3)中 央 銀 行 の 独 立 性:イ ン フ レー シ ョン の 抑 制,物 価 の 安 定 はECBの 最 終 的 な 目標 で あ る。 この 目標 は各 国 の 中 央 銀 行 で も採 用 さ れ て い る。

こ の と き,イ ン フ レー シ ョ ンの 抑 制 とい う名 目 の下 に,他 の政 策 手 段 に 入 り込 む 余 地 を 提 供 す る こ と に な る。 イ ン フ レ ー シ ョ ン タ ー ゲ ッ トを 用 いず に,貨 幣 供 給 量 を中 間 目標 とす る最 大 の 理 由 は,そ こ に あ る と言 っ て よか ろ う。こ の とき 中 央 銀 行 の独 立 性 は有 効 に 機 能 しな い こ とに な る。

わ れ わ れ は,イ ン フ レー シ ョ ン ター ゲ ッ トに負 の影 響 を与 え る と想 定 す

る。 中央 銀 行 の 独 立 性 の指 標 として は,自 ら そ の指 標 を作 成 す る こ とは

(11)

金融 政 策 の タ ーゲ ッ ト

せ ず に,Cukierman,WebbandNeyapti(1992)で 提 示 さ れ た も の を 用 い る 。

推 定 結 果 は 表4の 通 りで あ った 。

推 定 結 果 は,過 去 の イ ン フ レ率 を除 い て概 ね 予 想 通 りで あ った 。 過 去 の イ ン フ レ率 は,係 数 こ そ予 想 通 りで あ っ た も の の,イ ン フ レー シ ョ ンター ゲ ッ トに有 意 な影 響 を及 ぼ して は い な か った 。 そ れ に 対 して,開 放 度 の高 い 経 済 国 は,イ ン フ レ ー シ ョン を タ ー ゲ ッ トに した 政 策 を施 行 して い た。

ま た 中央 銀 行 の独 立 性 の 高 さ は,イ ン フ レー シ ョ ン タ ー ゲ ッ トを用 い る動 機 に は な って い な か っ た 。EU加 盟 国 の 特 徴 と して,そ の 多 くが 小 国 の 開放 経 済 体 制 を採 っ て お り,域 内 貿 易 も増 加 し て い る。 さ ら に 中 央 銀 行 の独 立 性 も,近 年 急 激 に高 くな って い る。 これ ら の状 況 が 推 定 結 果 に顕 著 に 表 れ

た可 能 性 が 高 い もの と思 わ れ る。

イ ン フ レ ー シ ョン タ ー ゲ ッ トに つ い て は,そ れ を 実 施 す る場 合,ア カ ウ ンタ ビ リテ ィ と透 明 性 が よ り要 求 され る。 な ぜ な ら,中 央 銀 行 の 責 任 はよ り容 易 に評 価 され る こ と に な る か らで あ る。 また イ ン フ レー シ ョ ンの 予想 も よ り容 易 に な り,そ れ に影 響 を与 え る変 数 の 予 想 も よ り簡 単 に な り,政 策 担 当 者 に と って は効 果 の ラ グ を除 け ば操 作 し易 くな る。 さ らに 政 策 変更

の場 合 に も,政 策 へ の 信 頼 性 が低 下 す る こ とは な い 。 しか し ラ グ を認 知 す る こ とは容 易 で は な い 。

貨 幣 供 給 量 を タ ー ゲ ッ トと した場 合,こ う した 問 題 は 回 避 で き る。 しか し貨 幣 供 給 量 とイ ン フ レー シ ョ ンの 関 係 を,政 策 担 当 者 は 把 握 して い な い

表4イ ン フ レ ー シ ョ ン ター ゲ ッ トに 関 す る プ ロ ビ ッ ト分 析

定数項 過 去 の イ ンフ レ率 開放度 中央銀行の独立性

一20 .528(11.58)

1.086(0.945)

一 〇.0542(18.45) 一2 .685(3.723)

注)括 弧 内 の 値 はp値 で あ る。Logoflikelihood:‑4.99.

一81一

(12)

とい け な い 。 貨 幣 の 流 通 速 度,金 利 の 弾 力 性,そ してEUに お い て は,金 融 ・資 本 市 場 の 統 合 に つ い て の正 確 な理 解 が 必 要 不 可 欠 に な る。 しか し そ

れ が 困 難 で あ る こ とは 言 う まで もな い し,い つ か の 国 で は デ ー タ入 手 に さ え 問題 が あ るの が 現 実 で あ る。さ らに 近 年 で は,域 外 で も多様 な金 融 商 品 ・ サ ー ビ ス が 登 場 し て い る。

ECBで は,イ ン フ レー シ ョ ンタ ー ゲ ッ トと貨 幣 供 給 量 の タ ー ゲ ッ トを, 少 な く と も当 分 の 間,並 存 させ る よ うで あ る 。 そ の 金 融 政 策 の戦 略 の ポ イ

ン トは,物 価 安 定 の 定 量 的 な定 義 とマ ネ ー サ プ ラ イ の 参 照 値 の ア ナ ウ ンス をす る こ とで あ る 。 前 者 に関 して は,ユ ー ロ 圏 に お け る統 合 消費 者 物 価 指 数(HICP:HarmonizedIndexofConsumerPrices)の 上 昇 率 が 前 年 比 2%を 下 回 る状 況 を さ す 。 後 者 に つ い て は,前 年 比+4・1/2%と い う参 照 値 を定 め,こ の 参 照 値 をM3前 年 比 の3ヶ 月 移 動 平 均 と比 較 して マ ネ ー サ プ ラ イ 動 向 を モ ニ タ ー す る。 それ は異 な る政 策 を長 年 施 行 して きた 国 の金 融 政 策 が 一 元 化 さ れ る とい う,ド ラ マ テ ィ ック な 状 況 を考 え た だ けで も, 賢 明 な 策 で あ る こ とは理 解 で きよ う。 も ち ろ ん 将 来 的 に は,域 内 の状 況 を 見 極 め,両 タ ー ゲ ッ トの 長 短 所 を把 握 した 上 で,見 直 し をす る こ と も あ り

う る で あ ろ う。

4.結 語

本 論 で は,計 量 的 な手 法 を用 い て,金 融 政 策 の 手 段 を判 断 す る こ とか ら 分 析 を始 め た 。 そ の 結 果,約 半 分 の国 で,イ ン フ レ ー シ ョン ター ゲ ッ トが 採 用 され て い る こ とが わ か った 。 しか し大 国 ドイ ツ で は 中 間 目標 と して,

イ ン フ レ ー シ ョン タ ー ゲ ッ トの 代 わ りに貨 幣 供 給 量 が 採 用 され て い た 。 以 上 の 結 論 は,学 界,実 務 の 世 界 で もか ね て か ら言 わ れ て い る こ とで あ り, 本 論 は実 証 的 な 観 点 か ら,そ の 確 認 を す る こ とに な っ た。 しか し この結 論

に問 題 が な くも な い。 イ ン フ レー シ ョ ン をイ ン プ リシ ッ トな形 な が ら も 目

標 に して い た り,あ る い は その 予 想 を も と に行 動 す る こ と も考 え られ るか

(13)

金 融 政策 の タ ーゲ ッ ト

らで あ る 。 事 実,本 論 の 実 証 分 析 で も,複 数 の 中 間 目標 が 用 い られ て い る と判 断 せ ざ る を得 な い ケ ー ス が 見 受 け られ た 。 ま た,各 国 固 有 の 事 情 も考 慮 に入 れ る こ とは で き な か っ た 。 通 貨 統 合 を控 え,例 え ば そ の 条 件 を ク リ

ア ー す るた め,フ ァ ンダ メ ン タル ズ と乖 離 した 形 で 諸 変 数 が 動 い た り,動 か した り,政 治 的 な影 響 が 金 融 政 策 の ス タ ン ス を 決 定 す る度 合 い が 濃 い こ と も考 え られ よ う。 さ らに ドイ ツ で は,市 場 が ブ ン デ ス バ ン ク の ス タ ンス を十 二 分 に把 握 し て い る の も事 実 で あ る。 民 間 部 門 との 問 題 に触 れ る機 会 は な か っ た が,一 点 の み述 べ る と,政 策 当 局 が 変 動 相 場 制 を施 行 した く と も,輸 出 入 業 者 の 反 対 に よ りそ れ が で き ず,次 善 の 策 と し て イ ン フ レ ー シ ョ ン タ ー ゲ ッ トを採 用 す る ケ ー ス も考 え られ る。 この 場 合 特 に,民 間 経 済 主 体 の 力 が 強 い ケ ー ス が,そ れ に該 当 す るで あ ろ う。 しか し これ らの 問 題 に

つ い て は,今 後 の 課 題 に した い。

次 に,イ ン フ レー シ ョ ン タ ー ゲ ッ トを採 用 す る要 因 と して,開 放 経 済 下 で は そ れ が 採 られ な い こ と,中 央 銀 行 の独 立 性 も負 の 要 因 に な っ て い る こ

とが確 認 さ れ た 。 一 方,過 去 の イ ン フ レ率 は有 意 に作 用 して い る こ とは な か っ た 。

イ ン フ レ ー シ ョ ンタ ー ゲ ッ トの 採 用 は 世 界 的 な 趨 勢 で あ る。 しか しEU 各 国 に お い て は必 ず し もそ れ を急 ぐ必 要 性 は 見 出 し に くい 。 む し ろ各 国通 貨 が 存 在 す る 現 時 点 で は,実 質 為 替 レー トを変 化 さ せ な い よ う に イ ン フ

レー シ ョ ンで 調 整 す る よ うな,「 実 質 為 替 レ ー ト」ター ゲ ッ トの よ う な もの が,相 応 しい の か も しれ な い 。 イ ン フ レ ー シ ョン ター ゲ ッ トを と る と ど う して も政 治 的 な利 害 が 衝 突 しや す い し,さ ほ ど高 イ ン フ レが 蔓 延 して い る と も言 えな いか らで あ る。 各 国 は利 害 関係 に ナ ー バ ス に な っ て い る。 幸 い イ ン フ レ率 は む し ろか な り低 い と言 え る。 しか し,貨 幣 供 給 量 を タ ー ゲ ッ トに す る と して も,貨 幣 需 要 ・供 給 関 数 の 推 定 が,加 盟 国 す べ て に お い て 迅 速 か つ 正 確 に行 わ れ る とは 言 い難 い。 また 金 融 の 様 々 な イ ノ ヴ ェ ー シ ョ ン は,特 定 の貨 幣 供 給 量 の 概 念 に 固 執 す る こ とを 困 難 に して い る と言 え る。

さ らに,貨 幣 供 給 量 を タ ー ゲ ッ トとす る場 合,結 局 高 い 準 備 率 が 課 され る

一83一

(14)

こ とが 多 い。 しか し それ に対 す る反 対 が根 強 い こ とに も考 慮 の必 要 が あ り そ うで あ る。 た だ,デ ー タ に つ い て は,近 年 に な り比 較 的迅 速 に,正 確 に, 明 確 な もの が 集 ま りつ つ あ る よ うで あ る。 ゆ え に貨 幣 供 給 量 に こだ わ るの な らば,中 間 目標 と して で は な く,有 力 な 経 済 変 数 の一 つ と して扱 うべ き な の か も し れ な い 。

1)Gerlach(1999)に よれ ば,EU以 外 で は,オ ー ス トラ リ ア,カ ナ ダ,ニ ュ ー ジ ー ラ ン ドで そ れ が 採 用 され て い る。

2)EU以 外 で は,経 常 収 支 が 金 融 政 策 手 段 に な っ て い る国 も存 在 す る。

3)RevankarandYoshino(1990)な どを 参 照 。

4)CPIの 代 わ り にWPI,為 替 レ ー ト と して も対SDRや 分 散 値 をECUの 代 わ りに 用 い た 。 ま たKahnandParrish(1998)で は,オ ー ス トラ リア,カ ナ ダ,チ リ,フ ィ ン ラ ン ド,イ ス ラ エ ル,ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド,ス ペ イ ン,ス ウ ェ ー デ ン を,イ ン フ レ ー シ ョン ター ゲ ッ トの 採 用 国 と して 挙 げ て い る 。そ れ はEU 諸 国 に 限 定 す れ ば,本 論 の 結 果 と も適 合 し て い る。

5)通 貨 統 合 へ の 参 加 の た め の 条 件 と し て,ERMの 変 動 幅 を2年 間 遵 守 と い う条 件 が,マ ー ス ト リヒ ト条 約 の 中 に あ る の は 言 う ま で も な い 。 そ して 今 日 の 通 貨 統 合 へ の11力 国 の 参 加 国 中 に お い て,イ タ リア の 為 替 レー トは 同 国 を 含 め た 財 政 赤 字,累 積 債 務 問 題 と並 ん で,深 刻 な 問 題 とみ な さ れ て き た 。 6)貿 易 に お け る商 品 集 中 度(外 的 シ ョ ッ クが 大 き く,事 実 上 の 固 定 為 替 レ ー

トの 維 持 が 困 難 に な る た め,イ ン フ レ ー シ ョ ン を タ ー ゲ ッ トに し や す い で あ ろ う),交 易 条 件 の 変 化 率 の 分 散 値 な ど で推 定 を行 っ た もの の,推 定 結 果 が 大 き く変 わ る こ と は な か っ た 。

*本 論 作 成 に あ た り,天 野 明 弘 教 授(関 西 学 院 大 学)か ら有 益 な コ メ ン ト

を頂 き ま した。 記 して 感 謝 い た し ます 。 また 本 論 は文 部 省 科 学 研 究 費 の研

究 成 果 の 一 部 で あ る。

(15)

金 融 政策 の ター ゲ ッ ト

参 考 文 献

CukiermanA.,S.B.Webb,andB.Neyapti,1992,Measuringtheindepen‑

denceandcentralbanksanditseffectsonpolicyoutcomes,WorldBank EconomicReview,6,353‑398.

EuropeanMonetaryInstitute,AnnualReport95,April,1996.

Gerlach,S.,1999,Whotargetsinflationexplicitly?,EuropeanEconomic Review,43,1257‑1277.

Kahn,G.A.andK.Parrish,1998,ConductingMonetaryPolicywith InflationTarget,EconomicReview,83(3),152‑160.

Revankar,N.S.andN.Yoshino,1990,AnExpandedEquationApproach toWeak‑exogeneityTestinStructuralSystemsandaMonetaryApplica‑

tion,ReviewofEconomicsandStatistics,72(1),173‑177.

Svensson,L.E.O.,1997/1998,Monetarypolicyandinflationtargeting, NBERReporter,5‑8.

Abstract

IntheEU,astheEuropeanCentralBank'sgoalwasbeingdecided toachievestableprices,someoftheEUcountrieshaveadopteddirectly inflationtargetingastheirfinancialpolicy.However,severalcountries haveadoptedothertargeting,forexample,monetarytargeting,

exchangeratetargetingorothertargeting.WefindthatSpain,United Kingdometc.havetakeninflationtargetsintheEU,however,France, Germany,andItalyhavenottakenit.Andwehavefoundthatthe opennessoftheeconomyandthecentralbanksindependenceare

negativelycorrelatedtotheprobabilityofadoptinginflationtargeting.

Pastinflationisnotthemotivationforintroducinginflationtargeting.

一85一

(16)

InflationTargetingasaMonetaryPolicyRule

YutakaKURIHARA

Theadoptionofinflationtargetingasamonetarypolicyrulehas beenongoinganddiscussedrecently,however,somewhatsurprisingly, thishasnotyetaddressedthequestionofwhichfactorsmayhave influencedcountries'choiceofthispolicy.Thepurposeofthispaperis toclarifytheessentialcharacteristicsofinflationtargeting.

Inthispaperweattempttoidentifysomedifferencesbetween countrieswithandwithoutinflationtargetingregimes.Weestimate probitmodels,inwhichthedependentvariableisadummythattakes thevalueofunityforthecountriesthathaveadoptedinflationtarget‑

ing.Weshowthatthedegreeofcentralbankindependenceisnegative‑

lycorrelatedwiththeprobabilitythatinflationtargetingisadopted.

Andthereisalsoevideneethattheprobabilityisnegativelycorrelated

withtheopennessoftheeconomy.Finally,wedemonstratethatthe

caseofpastinflationislessclear.

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