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大学志願者数と進学者数の差に関する都道府県パネルデータ分析

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(1)

大学志願者数と進学者数の差に関する 都道府県パネルデータ分析

水 落 正 明

1.はじめに

大学進学は労働者の生産性を高める一つの 要因であり,一国の将来の経済成長を考える 上で重要なテーマである。そうした観点か ら,これまで大学進学の規定要因について,

都道府県間の差異に着目した分析が数多く行 われてきた。いくつか挙げると,友田(1970),

山本(1979),天野ほか(1983),荒井(1995),

石川(2006),潮木(2008)などがある。これ らの論文では,大学進学率(以下,進学率と 記す)や大学志願率(以下,志願率と記す)

について,経済的な要因や大学の収容力など 供給要因の影響について分析がなされてい る。

さて,大学進学には言うまでもなく試験に 合格することが必要である。それでは,大学 に志願した者のうち,進学できなかった割合 はどのようになっているであろうか。ここで 学校基本調査(文部科学省)の公表データ を使って,都道府県別に,大学(学部)への 志願者のうち進学できなかった割合を計算 し,図1,2に示した。この数値について本 稿では以降,進学不可率と呼ぶこととする。

図1

男子の進学不可率

資料:学校基本調査(文部科学省)

(2)

データの時点は 2010 年,2005 年,2000 年の 3時点である。

図1,2を見てわかるように,進学不可率 は減少傾向にあり,大学入学が容易になって いることがわかる。さらに,進学不可率の都 道府県間の違いはこの3時点でほぼ維持され ており,一時的な特徴ではないこともわかる。

具体的には関東地方で比較的高く,都市部で 高いことがうかがわれるが,必ずしもそうで はなく,長野や鳥取,沖縄など高い非都市部 もある。

このような都道府県的な特徴,言い換えれ ば格差が維持されている現状は,教育の機会 や成果という観点から見ても問題ではないだ ろうか。

さて,こうした進学不可率の都道府県格差 はどのように推移しているだろうか。間淵

(1997)によれば,進学率の都道府県格差は 男女とも 1970 年代後半から 1990 年にかけて 減少し,その後 1995 年まで上昇しているこ とが指摘されている。そこで,進学不可率の ジニ係数を3時点について示したのが図3で

図3

進学不可率のジニ係数

資料:学校基本調査(文部科学省)

図2

女子の進学不可率

資料:学校基本調査(文部科学省)

(3)

ある。

図3を見てわかるように,男女とも上昇傾 向にある。男子は 2005 年から 2010 年にかけ てほとんど変化はないが,女子は上昇を続け ており,2010 年にはジニ係数の値は男子を上 回っている。図1,2で見たように,進学不 可率は減少傾向にあり,問題の重要性は低く なっているとも考えられたが,その一方で格 差は拡大していることが明らかになった。

さらに,進学不可率は進学率とどのような 関 係 に あ る だ ろ う か。こ こ で は 例 と し て 2010 年について,学校基本調査から都道 府県別の進学率(3年前の中学卒業者数に占 める大学(学部)進学者の割合)と進学不可

率の相関を見てみる。図4,5がその散布図 であり,相関係数も示してある。相関係数は 負となっているが,その値は小さい。このこ とから,進学不可率は進学率とは異なるメカ ニズムによって決定されていることがうかが われる。

以上で見てきたように,大学に志願した者 のうち,進学できない者の割合が特定の都道 府県で高いという状態が維持され,その格差 は拡大している。教育の機会と成果という観 点からも,その原因と対策を考える必要があ ろう。さらに,進学不可率と進学率の決定に は異なるメカニズムが働いている可能性があ る。そこで本稿では,進学不可率の規定要因

図4

進学不可率と進学率(男子)

資料:学校基本調査(文部科学省)

図5

進学不可率と進学率(女子)

資料:学校基本調査(文部科学省)

(4)

について,経済学的な理論に基づいた上で,

都道府県パネルデータを使って明らかにする こととする。

2.理論的背景

ここでは,教育の生産という観点から分析 の枠組みについて述べる。

本稿では,以下の体系からなる親の効用最 大化問題として,進学不可率をとらえること とする。はじめに親の効用関数は⑴式のとお りである。

U=u(E,X) ⑴ 親は子どもの教育水準Eとその他の消費 Xから効用を得るものとする。その教育水 Eは,⑵式の生産関数e(・)で生産される ものとする。

E=e(K; S) ⑵ ここでは子どもの勉強量Sを外生要因と して,親による子どもへの教育投資Kによっ て教育水準が決定されると考える。

I=pKX ⑶ 最後に,親の予算制約は⑶式で示したよう に,所得Iを教育投資Kとその他の消費X に振り分けるものとする。ここでその他の消 Xの価格を1に基準化し,教育投資K 価格をpとしている。

以上の効用最大化問題を解くことで最適な 教育水準E* が決定される。

さて,大学進学のためには試験に合格しな ければならない。そこで合格に必要な教育水 準をE'とすると,

E'CE* ⑷ のとき進学することができ,

E'E* ⑸

のとき進学できないことになる。したがっ て,進学不可率をとらえるモデルは以下の⑹ 式のように,合格に必要な教育水準と家計で 決定された教育水準を考慮したものになる。

y=E'E* >0 ⑹ 本稿では,以上のモデル体系で用いた要因 を具体的な変数として取り上げ,それが進学 不可率に与える影響を推定する。

3.データと変数

本稿では 2010 年,2005 年,2000 年の3時 点の都道府県パネルデータを用いて分析す る。主に使用するのは学校基本調査であ (1)。その他には全国消費実態調査(総務 省)と社会生活基本調査(総務省)を用い るが,両調査は5年ごとの調査であり,デー タの時点にはずれがある。このずれについて は,各変数の説明の中で述べることとする。

以下では被説明変数と説明変数の定義など について述べる。

3.1 被説明変数

進学不可率は学校基本調査から,以下 のように計算している。

進学不可率

=(志願者数−進学者数)/志願者数× 100 本稿では,大学(学部)への志願者数と進 学者数を用いており,短期大学や大学・短期 大学の通信教育部は含めていない。なお,志 願者とは志望大学に願書を提出した人数のこ とであり,進学者数は実際に大学に進学した 人数である(2)。この数値は男女別に計算して いる。

(5)

3.2 説明変数

収容率

各都道府県における学生受け入れの可能性 を示す指標である。学校基本調査から計 算している。

収容率=学部学生数/志願者数× 100 学部学生数については国公私立を合算した 数値である。この数値は男女別に作成した。

この変数は合格水準E'の代理変数として用 いる。本来であれば,都道府県ごとの入学難 易度を計算するべきであるが,実際には難し いため,ここでは志願者数に対する学部学生 数を代理的に用いた。

若干の留意点としては,志願者数はその都 道府県の志願者数であり,志願先の都道府県 で計算されたものではない。したがって,実 際のその都道府県への志願者数とは乖離があ る。中村(1993)によれば大都市圏で地元へ の進学率が高いと指摘されていることから,

この変数の値は非大都市圏では過少になって いる可能性がある。

なお,男女別に作成したのは,学部によっ て男女の志願者数に大きな違いがあるため,

各都道府県の学部構成によって男女の入学の 難易度が異なるからである。

収容率が高い場合,難易度は下がるため,

この変数の予想される符号は負である。

可処分所得,貯蓄額,教育支出比 親による子どもへの教育投資の変数とし て,可処分所得,貯蓄額,教育支出比の3変 数を使用する。

データは全国消費実態調査の 2009 年,

2004 年,1999 年調査を利用する。その際,で

きるだけ分析対象に近い値をとらえるため に,世帯類型別の集計結果から2人以上の勤 労者世帯のうち,夫婦と子どもが1人の世帯 で子どもが高校生,夫婦と子どもが2人の世 帯で長子が高校生,夫婦と子どもが3人の世 帯で長子が高校生の3カテゴリーの加重平均 を使っている。また,調査のタイミングから 進学不可率の前年の値となっているが,教育 の生産活動の後で進学が決まることを考えれ ば,この変数が進学不可率に先行しているの は問題ない。ただし,直近の1時点であり生 産が数年かけて行われることを考えると,そ の意味では実状と若干の乖離がある可能性が ある。

可処分所得,貯蓄額については消費者物 価指数(総務省)から,時点間,地域間の物 価差で調整してある。

教育支出比は以下のように計算している。

教育支出比=教育関係費/実支出× 100 実額で可処分所得や貯蓄額と同時に推定に 用いると相関が高くなり,多重共線性の恐れ があるため,ここでは比率を用いることとし た。

いずれの変数の増加も,子どもの教育水準 を高めると考えられるため,係数には負の符 号が予想される。

勉強時間

教育の生産関数への投入要素として使用す る。

データは社会生活基本調査の 2006 年,

2001 年,1996 年調査から学習の行動者平 均時間を使用している。調査のタイミングか ら,進学不可率のデータとのずれが4年程度

(6)

と大きい。この社会生活基本調査は 10 歳 以上の世帯員について調査しており,小学校 高学年から大学・大学院生までを合わせた平 均的な数値となっている。したがって,厳密 に高校生の勉強時間とはなっていないが,都 道府県の特徴はおおむねとらえられると考え られる。

勉強時間の投入によって子どもの教育水準 は高まると考えられるため,予想される符号 は負である。

生徒教員比

学校での教育の生産の効率性を測る指標で ある。理論的には教育生産関数の形状に関す る変数である。学校基本調査から高等学 校(全日制)の数値を用いて,以下のように 計算している。

生徒教員比=生徒数/教諭数

生徒数は1年から3年までの合計であり,

国公私立の人数を合算したものである。教員 についても国公私立を合算している。ここで は教諭の数のみを使用し,校長や教頭,養護 教諭などの人数は除いている(3)

この変数の増加は生徒側から見た教育生産 を非効率にすると考えられるため,正の符号 が得られると予想される。

志願率

高校において成績上位から大学進学を志願 すると仮定すると,志願者の増加は志願者の 平均的な学力水準の低下を意味することとな る。そうした影響をコントロールするために 使用する。学校基本調査から以下のよう に計算した。

志願率=志願者数/卒業者数× 100 予想される符号は正である。

以上が本稿で用いる変数である。基本統計 量については,分析年ごとに表1にまとめて ある。また,説明変数間の相関は本稿末の付 録に示してある。いくつかの変数間でやや相 関係数が高いようにも見えるが,推定に影響 するほどではないと考えられる。

4.推定

4.1 推定モデル

本稿では,3時点の都道府県データを用い て分析を行う。一般によく使用されるプール したデータを使った Pooled OLS の場合,観 測されない都道府県固有の効果を考慮できな いため,もしそうした効果の影響が大きい場 合は,得られた結果はバイアスを含んだもの となり,信頼できないものとなる。そこで,

本稿ではパネル推定によって,バイアスのな い係数を得ようと考えている。したがって,

推定するモデルは各個体iについて以下のよ うに表される。

yitxitdaidtuit,t= 1,2,3 ⑺ ここでyは進学不可率,xが 1 × K の説明 変数ベクトル,dが K × 1 のパラメータベク トルである。aiは観察不可能な個体効果であ り,本稿ではデータではとらえられない都道 府県の特徴を意味している。また,この個体 効果の影響は個体間では異なるが,個体内で はいずれの時点でも同じ影響を及ぼす。dt 観察されない要因で,時点間では異なるが,

(7)

表1

基本統計量

平均 標準偏差 最小 最大

2000年

進学不可率 男子 22.7 5.9 12.7 35.1

女子 18.1 4.9 7.6 32.4

収容率 男子 3.27 1.63 1.6 9.8

女子 2.73 1.53 1.0 8.7

可処分所得 51.2 3.8 43.8 58.6

貯蓄額 118.4 26.2 62.2 170.6

教育支出比 0.17 0.03 0.1 0.2

勉強時間 男子 36.6 1.7 33.2 39.8

女子 36.9 1.8 33.7 41.0

生徒教員比 17.4 1.3 14.5 21.8

志願率 男子 50.5 9.0 34.6 67.3

女子 33.5 5.9 22.4 50.8

2005年

進学不可率 男子 18.3 5.5 8.4 30.0

女子 14.5 3.9 7.0 23.4

収容率 男子 3.36 1.65 1.6 9.6

女子 3.07 1.65 1.0 9.7

可処分所得 50.1 4.5 37.2 58.5

貯蓄額 117.8 27.3 59.1 195.4

教育支出比 0.18 0.03 0.1 0.3

勉強時間 男子 34.9 2.2 28.6 39.3

女子 34.8 2.3 29.9 39.5

生徒教員比 16.5 1.4 13.1 21.0

志願率 男子 51.3 8.9 35.9 71.3

女子 37.4 6.7 25.1 59.7

2010年

進学不可率 男子 15.6 4.8 7.5 28.2

女子 10.5 3.5 5.6 19.4

収容率 男子 3.33 1.66 1.7 9.6

女子 3.06 1.62 1.2 9.8

可処分所得 47.5 4.0 35.2 56.6

貯蓄額 124.1 32.0 45.2 191.2

教育支出比 0.18 0.03 0.1 0.3

勉強時間 男子 39.3 2.9 34.5 48.4

女子 37.9 3.4 30.2 45.5

生徒教員比 16.3 1.5 13.2 20.9

志願率 男子 56.8 9.6 42.0 77.7

女子 45.3 7.9 29.8 69.3

(8)

各時点では各個体に共通の影響を与える変数 である。uitは i.i.d.の誤差項である。tは観察 時点を示している。

なお,時点の影響を見るdtは,年ダミーと して 2005 年ダミーと 2010 年ダミーを使用す る。既に図1,2で見たように,進学不可率 は都道府県の特徴を維持しながら減少傾向に あったため,調査年ダミーを入れない場合,

そうしたトレンドを説明変数の効果として 拾ってしまう。つまり,バイアスを含んだ係 数になってしまうからである。

なお,本稿の推定では時間不変の変数は使 用していないため,固定効果モデルによる推 定を行う。ただし,推定に先立って,固定効 果モデルか Pooled OLS のいずれが妥当かの 検定を行った。すべての個体効果がゼロであ るという帰無仮説は,F 検定の結果,男女と も 0.1%水準で棄却されており,Pooled OLS ではバイアスを含んだパラメータが得られる ことが明らかになっている。すなわち,固定 効果モデルを使用するのが妥当であることが 確認された。

表2

推定結果(固定効果推定)

男子 女子

収容率 −1.059 −1.509 *

(1.127) (0.872)

可処分所得 0.006 0.026

(0.079) (0.067)

貯蓄額 −0.005 0.001

(0.011) (0.009)

教育支出比 5.708 1.935

(8.307) (6.973)

勉強時間 −0.013 −0.123

(0.116) (0.104)

生徒教員比 −0.902 0.625

(0.624) (0.542) 志願率 −0.394 *** −0.261 **

(0.149) (0.116) 2005年ダミー −4.964 *** −1.723 *

(0.806) (0.938) 2010年ダミー −5.550 *** −3.078 *

(1.292) (1.753) 定数項 61.591 *** 22.831 *

(15.842) (11.564)

R2 within 0.756 0.824

R2 between 0.072 0.009 R2 overall 0.001 0.221

F 29.21 *** 44.15 ***

サンプル数 141 141

グループ数 3 3

*** : p<0.01, ** : p<0.05, * : p<0.10

( )内は標準誤差。

(9)

4.2 固定効果モデルによる推定結果 固定効果モデルによる推定結果を,表2に 示した。Pooled OLS による推定結果は,表 3に示した。また,説明変数間の相関は表4,

5に示してあるが,相関係数が 0.6 を超える ものはなく,多重共線性の影響はそれほど大 きくないと考えられる。

表2の推定結果からは以下のことが明らか になった。

収容率が男女ともに予想どおり負の符号と なっているが,有意なのは女子の推定式のみ である。一般的に,女子のほうが地元志向が 強く,居住都道府県での受け入れ可能性の影 響を強く受けていることがわかる。

教育投資変数としての可処分所得,貯蓄額,

教育支出比については,いずれも有意になっ ていない。表4,5から可処分所得と貯蓄額 にやや高い相関があったため,いずれかをモ デルから除いた推定も行ったが,結果は変わ らなかった。

教育の生産関数の投入要素としての勉強時 間も,男女とも負の係数となっているが,有 意にはなっていない。

生産の効率性を測るための生徒教員比も有 意とはなっていない。

志願率は有意となったが,係数は予想とは 反対の負となった。この変数の増加は志願者 の教育水準の低下を意味するため,予想では 表3

推定結果(Pooled OLS)

男子 女子

収容率 0.705 ** 0.118

(0.355) (0.299)

可処分所得 −0.154 −0.122

(0.128) (0.097)

貯蓄額 −0.007 −0.024

(0.021) (0.015) 教育支出比 −16.048 −20.067 *

(14.496) (10.881)

勉強時間 −0.122 −0.169

(0.209) (0.139)

生徒教員比 −0.077 −0.281

(0.382) (0.280)

志願率 0.059 −0.082

(0.077) (0.080) 2005年ダミー −4.892 *** −3.890 ***

(1.202) (0.943) 2010年ダミー −7.619 *** −6.828 ***

(1.570) (1.410) 定数項 34.774 *** 44.138 ***

(12.219) (8.474)

Adj-R2 0.2712 0.4192

F 6.79 *** 12.23 ***

サンプル数 141 141

*** : p<0.01, ** : p<0.05, * : p<0.10

( )内は標準誤差。

(10)

正の係数を予測していた。志願率と相関のや や高い貯蓄額と収容率をモデルからはずした 推定も行ったが,有意水準と符号に変化はな かった。これは観察不能な都道府県の効果お よびトレンドの効果を制御した上での結果で あり,頑健なものと言えよう。こうした結果 が得られた原因としては,志願者の増加が志 願者の教育水準を下げるのではなく,何らか の教育効果により,志願者の教育水準を下げ ずに志願者が増えているということが考えら れる。ただし,大学入学の難易度を適切にコ ントロールした推定ではないため,確定的な 結論を得るのは難しい。この点については今 後の課題としたい。

表3は都道府県の個体効果を考慮しないで 推定した結果である。男子の結果では,パネ ル推定では有意ではなかった収容率が有意に なっており,符号も予想とは逆のものとなっ ている。さらに,固定効果推定では有意だっ た志願率が有意ではなくなっている。女子の 結果も同様に,有意だった収容率と志願率が 有意ではなくなり,有意ではなかった教育支 出比が有意となっている。

Poole OLS で得られた結果は,パネル推定 から得られるインプリケーションとはかなり

異なるものとなっていることは明らかであ る。これは Heterogeneity bias によるもので あり,一時点のクロスセクション分析やパネ ルデータのプーリング推定の結果の解釈は注 意すべきことを示唆している。

5.おわりに

本稿では,大学への志願者と進学者の差(進 学不可率)について,教育の生産という観点 から実証分析を行った。2000 年代の3時点 の都道府県パネルデータを使って推定を行 い,以下のような結果を得た。

経済力や勉強時間など教育生産への投入要 素や,生産の効率性に関する要因の影響は観 察されなかった。進学不可率に影響を与える のは,大学がどれだけの生徒を受け入れられ るかという供給側の問題であり,特に女子は 地元都道府県の影響を受けやすいことがわ かった。

したがって,このような女子における格差 は経済的な制約によって生じているのではな く,大学の偏在が現れたものだと言える。こ うした格差を解消するための手段として,家 計に対して金銭的に補助するなどの政策は有

付録

表4

説明変数の相関行列(男子推定分)

収容率 可処分所得 貯蓄額 教育支出比 勉強時間 生徒教員比

収容率 1

可処分所得 −0.0094 1

貯蓄額 0.0483 0.4567 1

教育支出比 −0.1959 0.0145 0.0731 1

勉強時間 −0.2389 −0.2106 −0.0351 0.0386 1

生徒教員比 0.4172 0.1301 0.1317 −0.2408 −0.2043 1

志願率 0.5255 0.1638 0.4878 0.0157 −0.1274 0.3807

N=141

(11)

効ではない。

また,本稿で注目した要因ではなかったが,

志願者の増加が志願者の平均的な教育水準の 低下を意味しているわけではない,という可 能性もうかがえた。かなり留保の必要な知見 であるが,今後,その原因について詳細な分 析を行いたい。

卒業生に関する数値は各調査年の3月時点の ものであるが,在校生や教員に関するものは5 月時点のものになっている。本稿では同一時点 のものとして扱っているが,実際には若干のず れがある。

学校基本調査の手引き(抄)によれば同一人 が2校(学部・学科)以上に願書を提出した場合 も1名として記入する。とあり,複数志願によ る過大な志願者数とはなっていない。

本稿のデータのうち,2010 年の学校基本調査 に主幹教諭と指導教諭が新たなカテゴリーとし て加わっている。これらはその以前は教諭に 入っていたため,ここでは教諭数に含めている。

参考文献

天野郁夫・河上婦志子・吉本圭一・吉田文・橋本健 二(1983)進路分化の規定要因とその変動:

高校教育システムを中心として東京大学教 育学部紀要Vol. 23, pp. 1-43.

荒井一博(1995)教育の経済学:大学進学行動の 分析有斐閣.

石川英樹(2006)大学進学率の決定要因に関する 考察:都道府県別パネルデータ分析による内 部収益率アプローチの検証地域研究Vol. 6, pp. 105-113.

潮木守一(2008)大学進学率上昇をもたらしたの は何なのか:計量分析と経験値の間で教育 社会学研究No. 83, pp. 5-22.

友田泰正(1970)都道府県別大学進学率格差とそ の規定要因教育社会学研究No. 25, pp.

185-195.

中村二朗(1993)家計属性と進学行動に関する実 証分析経済分析Vol. 44, No. 3, pp. 212-220.

間淵泰尚(1997)大学進学率の地域間格差の変動:

高等教育計画期を中心として東京大学大学 院教育学研究科紀要Vol. 37, pp. 91-100.

山本真一(1979)大学進学希望率規定要因の分析 教育社会学研究No. 34, pp. 93-103.

表5

説明変数の相関行列(女子推定分)

収容率 可処分所得 貯蓄額 教育支出比 勉強時間 生徒教員比

収容率 1

可処分所得 −0.0535 1

貯蓄額 0.0998 0.4567 1

教育支出比 −0.1159 0.0145 0.0731 1

勉強時間 −0.2997 −0.1157 −0.1040 −0.0150 1

生徒教員比 0.3645 0.1301 0.1317 −0.2408 −0.1110 1

志願率 0.5657 −0.0006 0.4148 0.1041 −0.1261 0.2036

N=141

参照

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