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A study on the inductive mechanism of ovulation with Clomiphene citrate. (especially, at movement in urinary excretion of luteinizing hormone.)

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Clomiphene citrateの 排 卵 誘 発 機 序 に 関 す る 研 究

(特 にluteinizing hormoneの 動 態 を 中 心 と し て)

A study on the inductive mechanism

of ovulation with Clomiphene citrate.

(especially,

at movement in urinary excretion of luteinizing

hormone.)

大 阪 医 科 大 学産 科 婦 人 科 学 教 室(主 任 小 島 秋 教 授) 大 学 院 学 生 市 川 文 雄 Fumio Ichikawa (昭 和47年1月13日 受 付) 内 容 目 次 第1章 緒 論 第2章 尿 中gonadotropin定 量 法 第1節 緒 言 第2節 尿 中gonadotropin抽 出法 第1項 本 法 の 意義 第2項 著 者 の行 な った 方 法 (五十 嵐 ・海 老 原 ・石川 法) 第3節 luteinizing hormoneの 生 物 学 的 検 定 法 第1項 本 法 の意 義 第2項 著 者 の行 な った 方 法 (卵 巣 ア ス コル ビ ン酸減 少法 横 田変 法) 1) ラ ッ トに お け る前 処 置 2) 生物 学 的検 定 法 の 実 際 3) アス コル ビン酸 定 量 法

(Minden & Bulterの 変 法) 4) luteinizing hormone検 定 法 5) NIH-LH-S16の 用 量 反応 曲 線 第4節 小 括 な らび に考 按 第3章 正 常 性 周 期婦 人 に お け る尿 中 ホ ル モ ン分 泌 動 態 に つ い て 第1節 緒 言 第2節 実験 対象 な らび に 実 験 方 法 第3節 実 験 成 績 第4節 小 括 な らび に考 按 第4章 第1度 無 月経 婦 人 に お け る ホル モ ン分 泌動 態 に つ い て 第1節 緒 言 第2節 実験 対象 な らび に 実 験 方 法 第3節 実 験 成 績 第4節 小 括 な らび に考 按 第5章 Clomiphene citrate投 与 時 の 第1度 無 月経 婦 人 の ホル モ ン分 泌動 態 よ りみ た 本 剤 の排 卵 誘 発 機 序 に つ い て 第1節 緒 言 第2節 実 験 対 象 な らび に検 査 方 法 第3節 排 卵 判 定 の 検査 方 法 第4節 臨 床 成 績 第1項 排 卵 誘 発 率 第2項 投 与 開 始 後排 卵 ま で の 日数 第5節 Clomiphene citrate投 与 無 効 例 の ホ ル モ ン分 泌 動 態 に つ い て

第6負 行early ovulation group, late ovulation groupの ホル モ ン分 泌 動 態 よ りみ たClomi-phene citrateの 排 卵 誘 発 機 序

第1項 early ovulation groupの ホ ル モ ン分 泌 動 態 に つ い て

第2項 late ovulation groupの ホル モ ン分 泌動 態 に つ い て 第7節 小 括 な らび に考 按 第6章 総 括 な らび に 考 按 第7章 結論 (附)参 考 文 献 第1章 緒 論 無 排卵 無 月経 婦 人 に お い て, 近 年 開 発 され た 優 秀 な 排 卵 誘 発 剤 で あ るclomiphene citrate(以 下(clomi-pheneと 略す. )投 与 時 のestrogenお よび 脳 下 垂体 前 葉 か ら分 泌 され るgonadotropinの 分 泌 動 態 を 測 定 し, そ の 排 卵 誘発 機 序 を知 ろ うとす る試 み は 種 々検 討 され て い る と ころ で あ る. gonadotropinに 関す る 研 究 に はgonadotropinの 性 腺 刺 激 効 果 に つ い て, gonadotropin分 泌 細 胞 の形 態 学, gonadotropinを 応 用 した 臨 床 的 治 療 な ど各 種 の研 究 分 野 が あ る が ホル モ ン分 泌 の量 的 変 動 こそ 内 分 泌 器 官 の 機 能 を表 現 す る もの とい え る. 近 年, 蛋 白 化 学 の 急速 な進 歩 に よ りfollicle stimu-lating hormone(以 下FSHと 略 す. )luteinizing hormone(以 下LHと 略 す.)と が 分離 され, か な り

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120-44 市 川:Clomiphene citrateの 排 卵 誘発 機 序 に 関 す る研 究 産 婦 進 歩 第24巻2号

図1

CHEMICAL STRACTURE OF CLOMIPHENE CITRATE AND RELATED COMPAUND

純 化 され る よ うにな り, ま た 適 確 な 定 量 法 が 発 見 さ れ, 実 用 化 され る よ うに な った の は極 め て最 近 の こ と で あ る. 従 来 最 も広 く行 なわ れ て い たgonadotropin 定 量 は所 謂total gonadotropin測 定 で あ る. 一方, 臨 床 応 用 面 に お い て は排 卵 誘 発 剤 の研 究 開 発 の 進 歩 に 目覚 しい もの が み られ, そ の1つ はhuman menopausal gonadotropin(以 下HMGと 略 す. ) humanpituitarygonadotropin(以 下HPGと 略す.) な どで あ り, そ の 他 は 非 ス テ ロイ ド系 の 化 合 物 で あ り, Triphenylethyele系 のClomiphene, さ らに diphenylethylene系 のF6066で あ る. 排 卵 誘 発 の方 法, 手 段 につ い て の研 究 は 多 数 み られ るが, そ の排 卵 機 構 の詳 細 な解 明は 未 だ な され てい な い 現 状 で あ る. す で に 基 礎 実験 に よ り, Triphenyle-thylene系 や そ の 類 似化 合 物 が 動 物 実 験 的 に は 少量 で gonadotropin分 泌 を 促 進 し, 大 量 では そ の 分 泌 を抑 制 す る成 績 が 得 られ て い る. 1961年Green blattは Clomipheneが 人 に 対 し排 卵 誘 発 作 用 の あ るこ とを報 告 し て以 来, 欧米 にお い て 無 月経, 無排 卵 性 周期 症, Stein-Leventhal syndromeな どに 対 す る 臨 床 的 検 討, な らび に 排 卵誘 発 に関 す る作 用機 序 につ い て の報 告 が 多数 み られ る よ うに な り, 最 近 わ が 国 で も同様 に 本剤 の臨 床 応 用 で優 れ た 排 卵誘 発 効 果 が 報 告 され, ま た, そ の有 効 性, 効 果 的 投与 法, 治 療 の限 界 な どにつ い て は統 一 され た 結 論 が 出 され てい る. しか し, 作用 機 序, 作 用 部 位 の問 題 に つ い て は 未 だ 解 決 さ れ て い ない 現 状 であ り, 現 在 ま で に 一 致 した 見 解 とし て は Clomiphene投 与 に よ り排 卵 誘発 時 にgonadotropin 分 泌 の亢 進, estrogen分 泌 の亢 進 せ る こ とが 報 告 さ れ, 諸 家 の 一 致 し た見 解 とされ て い るが, 作 用 部 位 に つ い て は 本剤 が 間脳 ・下 垂 体-卵 巣 系 の どの部 位 に 作 用 しgonadotropinま た は, estrogen分 泌 をお こす か につ い て は 統 一 を 欠 い て い る. 以 上 の こ と よ り著 者 は本 剤 投 与 時 の 内 分 泌学 的 検 索 よ りPrimary siteを 検 討, 考 察 し排 卵 誘 発 機 序 の 解 明 を試 み た. 第2章 尿 中gonadotropin定 量 法 第1節 緒 言 脳 下 垂 体 に 由来 す る と考 えられ るgonadotropinが 尿 中 に 排 泄 され る こ とはす でに1926年 にAshheim & Zondekお よびSmithら に よ って 報告 され てい る. 1950年 代 に入 り生 物 学 的, 化 学 的 研 究 の進 歩 に よ り脳

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下 垂 体 がgonadotropinを 分 泌 す るこ とに よ り性 腺 の 発 達 と, これ に伴 う性 ホル モ ン の 分泌 を促 進 す る機 能 を有 す る一 方, 脳 下 垂 体 のgonadotropin分 泌 が 性 ホ ル モ ンに よ り調 節 を 受 け て い る こ とが 明 らか とな り, 従 って 尿 中 に排 泄 され るgonadotropin量 が 脳 下 垂体 あ るい は性 腺 の機 能 を反 映す る こ とが わ か っ た. 尿 中gonadotropinの 定量 法 は2つ の 段 階 に 分離 し て考 え る こ とが で き る. 第1は 尿 中 に 溶 存 す るgona-dotropinを 分 離, 精 製 す る操 作 で あ り, 第2は 分 離 され たgonadotropinを 測 定 す る操 作 で あ る. 第2節 尿 中gonadotropin抽 出 法 第1項 本 法 の意 義 非妊 婦 尿 中 のgonadotropinは 極 め て 微 量 のた め 抽 出 法 に は 回収 率 が 高 く, か つ 大 量 の 尿 の処 理 に好 適 な カオ リン吸 着 法 が 好 ん で用 い られ て い る. カオ リン吸 着 法 に もBradbury et al. 法, Albert旧 法, Loraine

&Brown法, Borthetal. 法, Brown, P・S法, 松 島 法, Albert新 法 な ど各 種 が あ る. こ の中 で わ が 国 で 最 も多 く用 い られ てい る万 法 は 松 島法 で, 世 界 で 最 も 普 及 して い る方法 はAlbert旧 法 やLoraine & Brown 法 であ る. 如 何 に優 れ たassay法 を 用 いた として も 回収 率 の 低 い 抽 出法 を用 い た の で は正 確 な成 績 は 得 られ な い. す なわ ち, 生 物 活 性 の増 強 は精 製 の指 標 とな るた め極 め て重 要 な こ と であ る. 第2項 著 者 の行 な っ た方 法 (五 十 嵐 ・海 老 原 ・石 川 法) 本 法 の尿 中godonatropin抽 出操 作 は 図2に 示 す ご と く, Albert旧 法, Alexandridis & Apostolakis法, Borth et al. 法 の3法 の 長所 を取 り入 れ, さ ら に工 夫 検 討 の結 果, 五 十 嵐 に よ り完 成 され た もの で あ る. 回収 率 の 良 い こ と, 高価 な 装 置 を 必 要 とし ない こ 図2 尿 中 ゴナ ド トロ ピン抽 出 法 (五 十 嵐 ・海 老 原 ・石 川 法) と, 多数 の検 体 の 抽 出が 可 能 な こ と, 同 一 尿 でBona-dotropin以 下 の ス テ ロイ ド ・ホル モン の 同 時定 量 も 可 能 とい う特 長 を もっ てい る. 第3節 luteinizing hormoneの 生 物 学 的 検 定 法 第1項 本 法 の 意 義 脳 下 垂 体 に性 腺 を剌 激 す る物 質 で あ るgodonatropin が産 生 す る こ とは古 くか ら知 られ, 現 在 で は これ らを 否定 す る人 は い な い.

Fevold, Bates, Jensen et al. は 不 完 全 な が ら godonatropinを2種 類 の ホ ルモ ン に 分離 す る こ とに 成 功 し, 生 理 作 用 に も とつ い て卵 胞 剌 激 ホル モ ン(FSH) 黄 体形 成 ホル モン(LH)ま たは 間 質 細 胞 刺激 ホ ル モ ン (ICSH)と 名付 け た.

1939年 のEvans et al. の卵 巣 間 質 修 復 法 以来LH のbioassayと して 前立 腺 重 量 増 加 法(Greep et al, 1941)., 前 立 腺 アル カ リ フ ォ ス タ ファ ター ゼ 測 定 法 (Schaffenbery & McCullagh 1951), 精 嚢腺 重 量 増 加 法(McArthur 1952), 卵 巣 ア ス コル ビン 酸 減 少法 (Parlow 1958, 1961), 卵巣 コ レス テ ロー ル 減 少法 (Bell et al. 1964), な ど数 種 の 方 法 が 考 案 され て き た. これ らの 方 法 の 中 で卵 巣 ア ス コル ビン酸 減 少法 は 感 度, 精 度, 特 異 性 な どす べ て の点 で 優 っ て い る. そ の 原理 お よび 特 色 は 偽 妊 娠 ラ ッ トの卵 巣 黄 体 中 の ア ス コ ル ビン 酸 含 有 量 を 微 量 のLHで 減 少 させ る 作 用 を持 ち, しか も ア ス コル ビ ン酸 減 少 度 は 作 用 したLHの 量 と一 定 の範 囲 で平 行 し, 他 の ホ ル モ ンの 影 響 を ほ と

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122-46 市 川:Clomiphene citrateの 排 卵 誘 発機 序 に関 す る研 究 産 婦 進 歩 第24巻2号 ん ど うけ な い とい う こ と でLHの 定 量 法 と し て 優 れ て い る. 第2項 著 者 の行 な っ た方 法 (卵 巣 ア ス コル ビ ン酸 減 少 法横 田変 法) 1)ラ ッ トに お け る前 処 置 雌 性wistar-今 道 系 ラ ッ トを生 後21日 目に購 入 し, 生 後25∼28日 目にPMS-G (Pregnant mare serum gonadotropin)75単 位 を皮 下注 射 し, そ の 後60±4時 間 後 にHCG(human chorionic gonadotropin)30単 位 を皮 下 注 射 す る. HCG注 射 後6∼9日 目にLH定 量 に使 用 す る. 2) 生 物学 的検 定 法 の実 際 前 処 置 後 の ラ ッ トを エ ー テル で軽 く麻酔 し, 左側 卵 巣 を剔 出 し, 皮 膚 を 縫 合す る. 卵 巣 は剔 出後, 直 ち に 被 膜, 周 囲 の 脂肪 組 織, 卵 管 を切 除 し, 卵 巣重 量 を torsion balanceで 秤 量 後, 2.5%メ タ燐 酸 液 中 で ホ モ ジ ナ イ ズ し, ホモ ジ ナ イ ズ を終 った もの に, さ らに メ タ燐 酸 を加 え全 量5mlの 溶 液 と し氷 室 に 約1時 間 保 存 す る. 次 い で 検体1mlを ゆ つ く りと静 脈 注 射 す る. 検 体 注 射 の2時 間 後 に再 び エ ー テル 麻 酔 下 で 右 側 卵 巣 を剔 出 し, 上 記 左 側 卵 巣 と同様 の操 作 の 後, そ の重 量 を秤 量 し, メ タ燐 酸 中 で ホ モ ジ ナ イ ズす る. そ の 後, 更 に メ タ燐 酸 を 加 え全 量5ml溶 液 とし 氷 室 に 約1時 間 保存 す る. 次 い で 氷 室 よ り ホ モ ジ ネ イ トを取 り出 し Whatman定 量 用No.50 紙 を 用 い て炉 液 中 に浮 遊 物 が 肉眼 的 に な くな る ま で数 回 炉過 を繰 り返 す. 3) アス コル ビン酸 定 量 法 (Minden & Bulterの 変 法)

酢 酸 ソー ダ22.65gを500mlの 蒸 留 水 に溶 解 し, 0.5N酢 酸 でpH7.0と し て, トル エ ン2∼3滴 を加 え た 溶 液 とsodium 2, 6-dichlorphenol-indophenol 40 mgを500mlの 蒸 留 水 に 溶解 した 液 を 使 用 直前 に等 量 混 合 した 溶液1mlと, 透 明に な る まで源 過 した ホ モ ジ ネ イ ト1mlと を 混 和 し, 30秒 以 内 に 光 電 比 色計 を 用 い て フィ ル タ ー520mμ で そ の 吸 光 度 を読 む, Blankに は メ タ燐 酸 溶 液 を 用 い る, つ い で ア ス コル ビン酸 のstandard curveか ら卵 巣 中 の 全 ア ス コル ビ ン酸 量 を 算 出す る. 4) luteinizing hormone検 定 法 左 右 卵 巣100g中 の アス コル ビン酸 量 を 算 出 し, そ の減 少 度 を下 記 の式 で計 算 し%で 結果 を 表 現 す る. depletion= OAAmg/100mg(左 卵 巣)-OAAmg/100mg(右 卵 巣)/ OAAmg/100mg(左 卵 巣) この%で 表 現 した ア ス コル ビン酸 減 少 度 はLHの 対 数 とあ る範 囲 で直 線 的 な 用量 反 応 曲 線 を示 す の でLH 標 準 品2用 量 と 検 体1用 量 とを 用 い た3-point assay を 行 な い 検体 のLH活 性 を標 準 品LHの 相 当 量 で表 現 す る方 法 で あ る. 5) NIH-LH-S16の 用量 反 応 曲線

National Institutes of Healthよ り 提供 を うけ た LH-S16を 標 準 品 とし て作 成 した 用 量 反応 曲線 を図3 に 示 した.

図3

DOSE RESPONSE CURVE OF NIH-LH-S16

直 線Y=32.8logX+19.4は 標 準 品LH-S16の0.25 μg, 0.5μg, 1.0μg, 2.0μg, 4.0μg, 8.0μg, 16.0μgの お の お の のOvarian ascorbic acid depletion(OAAD) %平 均 値 よ り求 め た 直 線 で あ る. 最 小 有 効 量 は0.5μg で 用 量 反 応 曲 線 は0.5μgか ら16.0μgの 間 で 直 線 関 係 が えられ た. 第4節 小 括 な らび に 考 按 用 量反 応 曲線 お よび 最 小有 効 量は他 の文 献 と対比 し 満 足 すべ き結 果 を えた. OAAD法 のLHに 対 す る特 異 性 の 検 討 に つ い て はLH, HCG, prolactin,

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Vaso-pressin Adrenaline, FSH, Saline, ACTHに つ い て行 な いLH作 用 を もつ ホ ル モ ンLH, HCGの みに 特異 的 に 反応 した. 生 物学 的 測 定 法 で は 感 度, 精 度, 特 異 性, 実 用 性 な どすべ て の点 を 満 足 させ る こ とは 大 変 困難 で あ る. この よ うな 背 景 の も とに1960年Wide, Gemzellが gonadotropinの 蛋 白 質 とし て の 抗 原 を 目標 とす る 免 疫 学 的 測定 法 の 実 用化 に成 功 し, 以 後 著 しい進 歩 を と げた. 動 物 の飼 育管 理 や購 入 のた め の 手 間 あ る いは 経 済的 負担 をは ぶ く こ とが で き 迅 速, 簡 単, 廉 価 であ り, また 感 度, 精 度 に おい て も生 物 学 的 測定 法 よ り勝 って い る こ とは異 論 が ない と思 わ れ る. しか し, gonadotropinの 作 用 は 本 来 動物 の あ る標 的器官 に 対 す る生物 学 的 作 用 で ホル モ ン の定 義 そ の も のに基 づ く方 法 で, gonadotropinの 抗 原抗 体 反 応 を お こす 能 力 の 強 さ を測 定 す る免 疫 学 的測 定 法 とは 本 質 的 に ちが って い る. 免 疫 学 的 測 定 法が 臨 床 的 に 意 義 を 有す るた め に は そ の測 定 値 が 生物 活 性 値 と平 行 す る必 要 が あ る と考 え られ る. 免疫 学 的 測定 法 でお の お の の ホ ル モ ン の生 理 的 あ る い は病 的 状態 の数 値 が 次'々と報 告 され, そ の測 定 値 と 生物 学 的 測定 値 と の 類 似 性 が 認 め られ てい る. しか し, 両 者 の特 異 性に つ い て, 生 物 活 性 で は あ る種 の ラ ッ トのOAAD法 がLHに 特 異 な 方 法 で あ る こ とが 一度 確 立 され れ ば, そ のstrainが つ づ く限 り, そ の 方法 は 常 にLHに 特 異 な 測定 法 で あ る とい え るが, 免疫 学 的 測定 で用 い るgonadotropin抗 原 は 場所 に よ り免 疫 化学 的 に 同一 とは い え ない とい う最 大 の 問題 点 が末 だ残 され てい る とい う現 況 で あ り, 免 疫 学 的 測定 法を 臨 床 応用 す る こ とに の み急 ぐ とい うこ とは, な お 時期 尚早 と言 わ ざ るを え な い. この意 味 に お い て著 者 はgonadotropin測 定 に生 物 学 的 測定 法 を 用 い 感 度, 精 度 な どに お い て 満 足 すべ き 結 果 を得 た. 第3章 正 常 性 周 期 婦 人 にお け る尿 中 ホ ル モ ン分 泌 動 態 に つ い て 第1節 緒 言 性 周期 は 卵 巣 か ら の性 ス テ ロ イ ド・ホ ル モ ン の分 泌 動態 の反 映 で あ り, 一 方 卵 巣 に お け る排 卵, 黄 体 形 成 な どの周 期 性 変 化 は下 垂 体 か ら分 泌 され るFSH, LHに よっ て惹 起 され る もの であ る. 従 っ て, 卵 巣 機 能 の 周 期性 は 間 脳, 下垂 体 一 卵 巣 系 の 複雑 な機 構 の も とに 営 まれ て い る. そ こ で著 者 は 最初 に正 常 性 周 期 婦 人 の 排 卵 に至 る まで の 内分 泌 動 態 を 知 るた め尿 中estrogen, total gonadotropinの 測 定 な ら びにLHの 定量 を 経 日的 に 行 な い, これ らの 推 移 を把 握 検 索 し, 正 常 排 卵 機構 につ い て検 討 した. 性 周 期 と ホ ル モ ン 分 泌 とが 一 定 の 変化 を す る こ と は, 1935年Franks & Goldbergerが 最初 に報 告 して い る. そ の 後D'Amour, Smith, Venning & Brown, Jones, Heller, Levinら に よっ て 次 第 に ホル モ ンの 変 動 と性 周 期 との 関 係が 明 らか に な っ て きた. また, 1958年Brownは 正 常 性 周期 婦 人 の 尿 中estrogen, Pregnanediol, total gonadotropinの 消 長 を同 時 に 追 求 し, estrogenの 排 卵 期 お よび 黄 体期 にお け る2峰 性 の 変 化, pregnanediolの 黄体 期 に お け る 増 量, total gonadotropinの 中間 期 の ピー クを認 め今 日の 性, 周 期 に お け る尿 中 ホ ル モ ン動 態 を 検 索す る基 礎 とな る 詳 細 な 研究 成 績 を発 表 して い る. そ の後, bioassayの 進 歩 に 伴 い 尿 中gonadotropin をFSH, LHと 分離 定 量が 出来 る よ うに な り, Mc Arthur, 福 島 な どに よ って 排 卵 期 のgonatropinの 増 量 は 主 とし てLHに 負 うこ とが 明 らか に され た. そ の 後, 倉智, 五 十 嵐, 鈴木 ら も 正 常 性 周 期 婦人 の FSH, LHを 定 量 した 結 果 を報 告 して い る. 倉 智, 五 十 嵐 は 排 卵 前後 のestrogenとLHと の 関 係 はestrogen増 加 とLHの 放 出 とは 平行 し た動 き を示 し てい る こ とは 従 来 の 多 くの報 告 が 一 致 して い る が, 両 者 の ピー ク 出現 の 時 間 的 関 係 をみ る と, estro-genピ ー ク とLHピ ー ク とが 一 致 す る もの, estro-genが 先行 し, つ づ い てLHの ピー クを つ くる場 合 と逆 にLHの ピー クが 先 行 し, つ づ い てestrogenの ピー クをつ くる場 合 が あ つ て一 定 の結 論 が 得 られ てい な い. 従 っ て, 五 十嵐 は排 卵 直前 に お け るLHピ ー ク とestrogenピ ー クの相 関 はFSH分 泌 増 加-estrogen 分 泌増 加-LH分 泌-estrogen分 泌 増 加-排 卵-estrogen 一 時 低 下 とい う一 連 の現 象 が 比 較 的 短 時 間 の 間 に連 鎖 反 応 とし て起 るの で は な い か と推 測 して い る. 第2節 実 験 対 象 な らび に 実 験 方 法 対 象 と した 婦 人 は 性 周期28∼30日 型 で 基 礎 体 温所 見 上, 一般 診察 お よび 内 診上 明 らか な 機 能 的, 器 質 的 な る疾 患 を 認 め な い正 常 性 周 期 婦 人 で あ る. 尿 の採 取 は 月 経 終 了 後 連 日な い し最 長3日 間 隔 で24時 間尿 を採 取 させ, 直 ち に 抽 出, 精 製 す るか, また は-20℃ で 凍 結 保 存 して7日 以 内に 処 理 し尿 の 保管 に よっ て測 定 結 果 に 干 渉 す る 影 響 を 少 な くす る よ うに 注 意 した. ま た, 経 過 中 は連 日基 礎 体温 を 計 測 し, 記録 させ た. estrogenの 測 定 はJ. B. Brown森 田変 法 に て 行 な い, total gonadotropinの 定 量 は 松 島-Bradbury法 に て 行 な っ た.

第3節 実 験 成 績

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gonadotro-124-48 市 川:Clomiphene citrateの 排 卵 誘 発 機 序 に 関 す る 研 究 産 婦 進 歩 第24巻2号

図4

COMPLETE MENSTRUATION CYCLE

pin, LHの 排 泄 を連 日な い し隔 日に 測定 し, 排 卵 に至 る ホル モン 分 泌 動 態 を追 求 した. 図4は そ の ホ ル モ ン 分 泌 パ タ ー ン であ る. estr0genは 排 卵 期 お よび 黄 体期 の 開花 期 との2カ 所 に ピー クを 示 し, 特 に排 卵 期 のestrogenの 増 加 曲 線 は急 峻 で最 高 値80μg/24hrs. まで に 達 し た. 排 卵 後estrogenは 一 担50μg/24hrs. ま で 低 下 し, 再 び 黄 体 期 の開 花 期 に65μg/24hrs. まで 増 加 し, 以 後, 月経 開 始時 期 に 近 づ くに 従 っ て低 下 の傾 向 を 示 した. total gonadotropinは 排 卵 の 数 日前 よ り 急 増 し, estrogenの 増 加 傾 向 よ り 先 行 して い る. LHの 分 泌 は 排 卵 期 に の み12μg/24hrs. とい う値 を示 し, 他 の 時 期 の5な い し5∼3μg/24hrs. の値 に 比べ 著 明な ピ ー クを 示 した. 以 上 の こ と よ り, 3者 の ホ ルモ ン 分 泌 動 態 の 時 間 的 関 係 よ り考 え るに, まずtotal gonadotropinの 増 加 1が先行 す る. この 期 のLHは 増 加 が み られ な い の で, こ の場 合 のtotal gonadotropinの 増 加 はFSHを 意 味 す る もの と思 わ れ る. つ づ い てestlogenが 増 加 し, ピー ク形 成 後, LHの 放 出 が み られ, そ の後, 排 卵 現 象 が お こ る と考 察 され る. 第4節 小 括 な らび に 考 按 正 常 性 周期 婦 人 の排 卵 に 至 るま で の ホ ル モ ン動 態 は FSH分 泌 増 加 につ づ くestrogenの 増 加, そ の 後LH の 放 出 が み られ た 後 に 排 卵 現 象 が み られ る. estrogenの 分 泌 パ タ ー ンはBrown, 倉 智 な どの 成 績 とほ ぼ 同様 の成 績 で, 排 卵 期 お よび 黄体 期 の開 花 期 に それ ぞ れ の ピー クを認 め た. 次 にLHの 分 泌 は 排 卵 期 の直 前 に 急 峰 な る ピー ク を 認 めた. 排 卵 期 の前 後 にestr0genの ピ ー ク とLH の ピー ク のあ る こ とは従 来 の 多 くの報 告 が 一 致 してい るが, estrogenとLHピ ー ク の時 間 的 関 係 につ い て は, 著 者 の 成績 で はestrogenの ピー ク後, 排 卵 直 前 にLHピ ー クを示 す 結 果 を 得 た. しか し, 五 十嵐 はestrogenとLHピ ー クの 時 間 的 関係 に つ い て, LHの ピー クが 先 行 す る も の, また, 両 者 が 一 致 す る もの, estrogenが 先 行 す る も のな ど を 認 め た とい い, 一 定 の結 果 を 得 てい な い が, これ ら

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につ い ては24時 間尿 を 集 め て 定 量 して いた の では 解決 され な い と答 え てい る. しか し, これ につ い て はestrogen静 脈 注 射 後LH が 放 出 され る とい う 報 告 よ り, estrogenが 増 加 し, つ づ い てLHの ピー ク後 に 排 卵 とい う 現 象 が お こる のが 妥 当 で あ り, estrogenのfeedback作 用 に よ り LH放 出 がお こ る と考 え られ る. LH放 出 と 排 卵 との 時 間 的 関 係 に つ い て はMc Arthur, Rosembergの 成 績 の よ うにLHピ ー ク は BBTの 最 低 日 よ り遅 れ る とい う報 告 が あ るが, 私 の 成 績 ではLHの ピ ー クが24時 間先 行 す る結 果 を えた. 五 十嵐 もBBTの 低 温 相 最 終 日を基 準 とす る とLH の ピ ー クは こ の 日 よ り24∼72時 間先 行 す る こ とが多 い と報 告 してい る. 以 上 よ りFSHの 増 加 に つ づ い てestrogenの 急 増 が お こ り, この増 加せ るestrogenのfeed backに よ りLHの 放 出が み られ, つ い で 排 卵 が お こ る もの と考 察 され る. 第4章 第1度 無 月経 婦 人 に お け る ホ ル モ ン分 泌 動 態 に つ い て 第1節 緒 言 無 月経 とは3ヵ 月 以上 性 器 出血 を 欠 如 す る も の で, こ こ でい う無 月経 とは卵 巣機 能 不 全 に よる 無 月経 の意 で, 第1度 とい うの はgestagen test陽 性 の意 の こ と で, 必 ず 排 卵 障 害 を 伴 う. 排 卵 障 害 の 機 序 を 明 らか に す るた め に も治療 方 針 の決 定 の た め に も排 卵 欠 如 の病 態 生 理 が 明 らか に され な けれ ば な らな い. 第1度 無 月 経 に お け るgonadotropin分 泌 に 関 す る研 究 報 告 は 少 な くな い が, そ の ほ とん どがtotal gonadotropinの 定 量 であ る. gonadotropinに はFSH, LHの2種 類 が あ り, そ の お の お の が別 個 に 分 泌 され る以上FSH, LHと を分 離 定 量 しな い でtotal gonadotropinだ け を 定 量 した の で は無 月 経 のgonadotropin分 泌 の 真 の 病 態 生 理 は解 明 され ない とい え る. そ こで 著者 はestrogenを 測定 す る と共 に, 排 卵 に 関 係 の 大 で あ るLHに つ い て 分離 定 量 を行 な い 無 排 卵 無 月 経婦 人 の 内分 泌 環 境 の 解 明 を試 みた. 第2節 実 験 対 象 な らび に 実験 方 法 対象 は大 阪 医 科 大 学 附 属 病 院産 科 婦 人 科 不 妊 ク リニ ッ ク外 来 を受 診 せ る排 卵 障害 を伴 い, 3ヵ 月 以 上 性器 出 血 をみ な い 無 月 経 婦 人 で あ る. 採 尿 間隔 は4∼5日 でestrogenの 測 定 はJ. B. Brown 森 田 変法 の方 法 で 行 な い, LHの 定 量 はOAAD法 横 田 変 法 に て行 な った.

図5

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126-50 市 川:Clomiphene citrateの 排 卵 誘 発 機 序 に 関 す る 研 究 産 婦 進 歩 第24巻2号 第3節 実 験 成績 図5は 第1度 無 月 経 婦 人 の尿 中 ホル モ ン 分 泌 の変 動 を 示 した もの で あ り, estrogenの 動 きは25∼15μg/ 24hrs. の 範 囲 で 分泌 低 下 を 示 し, ほ ぼ 平 坦 な る 曲線 を 描 き, 明 らか な ピー クの形 成 は認 め られ な か っ た. LH値 は2.2∼1.0μg/24hrsの 変 動 で著 明 な ピー クす な わ ち, 放 出 はみ られ な か った. 第4節 小 括 な らび に 考 按 無 月経 婦 人 の 尿 中gonadotropinを 定 量 した 報 告 は 多 数 み るが, そ の多 くはtotal gonadotrcpinの 定 量 結 果 で, これ よ り無 排 卵 無 月 経 の ホ ル モ ン動 態 の 考 察 を して い た. 既 述 の よ うにgonadotropinに はFSH, LHが あ り 無 月 経 婦 人 の病 態 生 理 を解 明す るた め に も, また, 正 常 月 経 周 期 に おけ る排 卵 に 至 るま で の ホ ル モ ン動 態 と 無 排 卵 無 月経 の それ とを 比 較 し排 卵機 構 を解 明す るた め に も, ぜ ひ とも 無 排 卵 無 月経 婦 人 のgonadotropin の分 離 定 量 が 必 要 で あ る. しか し, 無排 卵 無 月経 婦 人 の 尿 中FSH, LHを 分 離 定 量 した 報 告 は 極 め て 少 な く, わ ず か にBrown (1956, 1959), McArthur et al. (1958), 倉 智(1965), 五 十 嵐(1967)の 報 告 が あ る のみ で あ る.

Brownの 報告 はFSHとtotal gonadotropinを 定 量 し, LH活 性 はtotal gonadotropinとFSHの 差 か ら 間接 的 に 推 測 して い る. 倉 智 はFSH量 は正 常 性 周 期婦 人 と比 べ 著 差 は な く, LHは ピー ク形 成 な く, 低 い値 でestrogenと 平 行 してい た と報 告 して い る. 五 十 嵐 は 多数 例 の無 月 経 婦 人 につ い てFSH, LHを 分 離 定 量 した 結果, 第1度 無 月経 婦 人 のFSH, LH分 泌 動 態 に も種 々 の タ イ プが あ り, 尿 中FSHが 時 々1 過 性 に 高値 を示 す が 数 日後再 び正 常 値 また は 低 値 に も ど り, LH分 泌 は 終 始 正 常 値 な い し増 加 を 示 す1過 性 高FSH症 候 群, 尿 中LHは 高 値 を 持 続 的 に 示 し, FSHは 正 常 また は 低 値 を 示 す 高LH症 候 群, 尿 中 FSHが 正 常 値 でLHが 低値 を示 す 低LH症 候 群, 尿 中FSH, LHが 正 常 範 囲 で あ りな が ら 排 卵 の起 こ ら な いtriggerLH欠 除 症 な どに分 類 し, FSHとLH 分 泌 とは 平 行 せず, 互 に 別個 に 独 自の 分 泌 を行 な うと 報 告 して い る. 著 者 の 成 績 で はLHお よびestrogen共 に著 明な 分 泌 増 加 の ピ ー クを 認 めず, 平 坦 な 曲 線 動 態 を み る の み で あ った. 第5章 Clomiphene citrate投 与 時 の第1度 無 月 経 婦 人 の ホ ルモ ン分 泌 動 態 よ りみ た本 剤 の 排 卵 誘 発 機 序 につ いて 第1節 緒 言 Clomiphene投 与 に よ り無 排 症 に排 卵 がお こ りさえ す れ ば 目的 が 達 せ られ たわ け であ るが, さ らに, そ の 排 卵 誘発 が 自然 の 排 卵 に近 い も ので あ るか, あ るい は 全 く特異 的 な もの で あ るか を 検 索 す る こ とは 本 剤 の 投 与 すべ き対 象 な らび に 投与 方 法 を選 択 す す る上 に も極 め て 重要 な こ と で, また, 複 雑 な排 卵 機 序 を解 明す る た め の一 助 ともな り うる.

Clomipheneは 非 ス テ ロイ ド系 合 成estrogen, di-ethystilbestrol, trianisyl Chloroethyleneの 誘 導 体

であ り, 当初, 本 剤 は基 礎 実 験 よ りLerner(1958年) は ラ ッ トに 対 し抗estrogen作 用 を 呈 し, 妊 娠 阻 止 作 用 を 示 す 結果 を報 告 して い る. また, Holthampf(19-60年)ら は 同様 に ラ ッ トに 投 与 し抗gonadotropin作 用, 弱 いestrogen様 作 用 を 有 す る と報 告 して い る. さ らにSheldenも ラ ッ トで 抗estrogen作 用, 排 卵 抑 制 作 用 以 下 の投 与 量 に お い て さえ も妊 娠 阻 止 作 用 を み た とい う報 告 な ど よ り避 妊 効 果 を 持つ こ とが 知 られ て いた 。 然 るに, 1959年, Kistnerは 人 に対 して, こ の種 の非 ステ ロイ ド系 合 成estrogen剤 のestrogen作 用 を期 待 し 避 妊 の 目的 で 使 用 した とこ ろ 予 期 に 反 し て, Clomipheneの 類似 体ethamoxytrophetol(以 下 MER-25と 記 す)に 排 卵 誘発 作 用 の あ るこ とを 発 見 した. 同 じ く1960年TylerはMER-25を 無 排 卵 婦 人 に使 用 し排 卵 誘 発 を 認 め た と報 告 して い る. Clorni-pheneで は1961年 にGreenblattが 無 排 卵 婦人 に使 用 し高 率 に排 卵 誘 発 を 認 め た と報 告 し, そ の 後, 欧米 に お い て 多数 の臨 床 実 験 に よ り高 い 排 卵 誘 発 率 を み とめ た とい う報 告 が 続 々 と発表 され, また, わ が 国 にお い て も最 近, 同様 の報 告 が 多 数発 表 され てい る. 現 在, MER-25は 副 作 用 が 強 く使 用 され て い な い. Clomipheneは 人 に おい て抗estrogen作 用, 高 率 な 排 卵 誘 発 作用 が み られ, ラ ッ トで は抗gonadotropin ン作 用, 妊 娠 阻 止 作 用 が み られ, また, 大 量 で は抗 estrogen作 用 を 示 す が 少量 で はestrogen様 作 用 を示 す とい う 臨 床 実験 と 動 物 実 験 とで 差異 を認 め る こ と や, 量 的 な 差 で 全 く相反 す る結 果 を え る とい う興 味 あ る薬 剤 でそ の 作 用機 序 は未 だ 不 明 な点 も少 な くな い. 本剤 の排 卵 誘 発 作用 に 関す る現 在 まで の報 告 を ま とめ る と, 1)上 位 中 枢 に直 接 作 用 してgonadotropinを 分 泌 させ る. 2)卵 巣 に直 接 作 用 す る とい う2作 用 に 分 け られ る. 著者 は この よ うなClomipheneの 排 卵 誘発 作用 機 序 を さ らに 詳 細 に 解 明 す るた めClomiphone投 与 婦 人 尿 中estrogen, total gonadotropin, LH等 の動 態 を 把握, 検 討 を 加 え た.

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実験 対象 は 大 阪 医科 大学 附 属 病 院 産 科 婦 人科 不 妊 ク リ ニッ ク外 来 に 排 卵 障害 を 伴 って 来 院 せ る 無 月経 婦 人 で少 な く と も3カ 月 以 上 性 器 出血 な き もの の うち gestagen test陽 性(Dydrogesteron 30mg5日 間投 与 に よ り消褪 性 出 血 をみ るも の. )で あ る 第1度 無 月 経 婦人 とした. 実験 方 法はClomiphene1日 量50mg5日 間 投 与 法 で 消褪 出血 開 始8日 目, す な わ ち, 月経 周期 の 第8 日 目 よ り行 な っ た. 第3節 排 卵 の判 定 基 準 基礎 体温 の 低 温 相 が高 温 に 移 行 し, 0.4℃ 以 上 の差 が11日 間つ づ い た場 合 を排 卵 と決 め, そ の 他, 種 々な る 補 助 診断 法 を も併用 した. 第4節 臨 床 成績 第1項 排 卵 誘 発 率 第1度 無 月 経 婦 人 の排 卵 誘 発 の 成 績 は表1に 示 す ご と く17例 中13例 の76.5%に 排 卵 誘 発 が み られ, また, 周 期 数 につ い て は40周 期 中 の31周 期 の71.0%に 排 卵 を

誘発 しえた.

表1 Result of clomiphene citrate therapy for induction of ovulation. 排 卵 誘 発 率 は 諸 家 の 報 告 とほ ぼ一 致 す る. 第2項 投 与開 始 後 排 卵 ま で の 日数 Clomipheneの 投 与 開始 後 排 卵 まで の 日数 を基 礎 体 温 の低 温 最 終 日を 指 標 とし て検 討 を 加 え た. 図6の ご と く投 与 開 始 後9日 目 と13日 目の2ヵ 所 に ピー クが み られ た. 最 も早 い例 では 投 与 開 始5日 目, ま た, 最 も遅 い 例 で は投 与 開始 後20日 目で あ った. す な わ ち, Clomiphene投 与 時 の排 卵 誘 発 時期 に は2峰 性 を認 め る. Clomiphene投 与 に お い て排 卵 日を 推 定 す る こ とは

図6

OVULATION DAY AFTER ADOMINSTRATION OF CLOMIPHENE CITRATE IN AMENORRHEA 1st GRADE

非 常 に難 しい. 先 の排 卵 ま で の 日数 に つ い て の成 績 で Clomipnene投 与 開 始 後10日 目を 境 に 前後1ヵ 所 つ つ の ピー クが み とめ られ た. そ こで 本剤 投 与 開 始 後10日 以 内 に 排卵 誘 発 が み られ た群 をearly ovulation group また, 投 与 開 始10日 以後 に 排 卵 誘発 の み られ た 群 を late ovulation groupと 先 に 教 室 の森 田 が 分類 した の に 従 っ て, Clomiphene投 与 前, 投 与 中, 排 卵 直 後 ま で の 尿 中estrogen, total gonadotropin, LHの 分泌 動 態 を観 察 し, 排 卵 誘発 時 期 の 異 な る ホ ル モ ン動 態 を 観 察す る こ とに よ り本 剤 の作 用 機 序, 作用 部 位 を考 察 し, 作 用機 序 の一 端 が解 明 され るで あ ろ う とい う考 え の も とに本 実 験 を 行 な っ た. 第5節 Clomiphene citrate投 与 無 効例 の ホ ル モ ン 分 泌動 態 に つ い て 図7は 第1度 無 月経 婦 人 にClomiphene 50mg/day の5日 間投 与 法 に よ り排 卵 のみ られ な か っ た1症 例 の 尿 中estrogen, LHの 分 泌動 態 を示 した もの で あ る. estrogenの 動 きは 投 与 前 に 比 べ 投 与 中 か ら投 与 後 に か け て も, 上 昇 傾 向 は み られ ず, 変 動 範 囲 は10∼ 16μg/24hrsで あ った. 一 方, LH分 泌 は 投 与 中 か ら 投 与 後 に か け て, ピー ク形 成 はみ られ ず, 0.5∼1.0μg/ 24hrsの 範 囲 で ほ とん ど変 動 は み られ なか った.

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128-52 市 川:Clomiphene citrateの 排 卵 誘発 機 序 に 関 す る究 研 産 婦 進 歩 第24巻2号

図7

EFFECT OF CLOMIPHENE CITRETE ON A PATIENT WITH AMENORRHEA Is. GRADE

第6節 early ovulation group, late ovula-tion groupの ホ ル モ ン 分 泌 動 態 よ りみ たClomiphene citrateの 排 卵 誘 発 機 序 第1項 early ovulation groupの ホ ル モ ン

分 泌 動 態 に つ い て

図8に 示 す ご と くearly ovulation groupに お い て はestrogenはClomiphene投 与 中 よ り急 増 傾 向 を 示 し, total gonadotropinは 急 増 傾 向 を 示 さ な か っ た が, LHは 投 与 中 よ り急 増 し, 排 卵 直 前 に ピ ー ク を 示 し た. total gonadotropinはFSH, LHの 和 と考 え ら れ る の で 排 卵 時 ま で のtotal gonadotropin分 泌 の 多 くはLHの 分 泌 を 示 す も の で あ ろ う. す な わ ち, FSHの 分 泌 が 少 な い 状 態 で 排 卵 が お こ っ た と解 釈 出 来 る. 従 っ てearly ovulation groupの 排 卵 に 関 与 し た ホ ル モ ン はestrogen, LHで あ り, 分 泌 動 態 は estrogenの 分 泌 増 加 と, こ れ に つ づ くLHの 急 増, 放 出 に よ り 排 卵 現 象 が お こ っ た と 理 解 す る. す な わ ち, FSHは 排 卵 に は 直 接 関 与 し て い な い と 考 え られ る. 従 っ て, early ovulation groupの 排 卵 誘 発 機 序 はClomipheneが 卵 巣 に 直 接 作 用 し, estrogenの 分 泌 を 促 進 し, こ の こ と が 中 枢 へfeed backし, 中 枢 よ りLHの 放 出 が お こ り, つ づ い て 排 卵 現 象 が お こ る も の と 解 釈 さ れ る.

図9はearly ovulation groupの1症 例 を 示 し た

図8

EARLY OVULATION GROUP

も の で あ り, 以 上 の 考 察 を 実 証 し て い る と 考 え ら れ る.

第2項 late ovulation groupの ホ ル モ ン 分 泌 動 態 に つ い て

図10に 示 す ご と くlate ovulation groupに お い て はClomiphene投 与 終 了 直 前 よ りtotal gonadotropin は 急 増 し, つ づ い て, estrogenも 同 様 に 投 与 終 了 直 前 よ り共 に 排 卵 前 後 ま で 漸 増 し た. LHは 排 卵 の 数 日 前 ま で 漸 増 を 示 し た. す な わ ち, total gonadotropin は 急 増 す る もLHは 排 卵 数 日前 ま で 漸 増 で あ る. こ れ は 排 卵 数 日前 ま で のtotal gonadotropinの 増 加 は 恐 ら くFSHを 示 め す も の で あ り, late ovulation groupの 排 卵 に 関 与 し た ホ ル モ ン はFSH, estrogen, LHの3者 の 協 調 に よ り排 卵 現 象 が お こ っ た と 解 釈 出 来 る.

こ の こ と はlate ovulation groupの 排 卵 誘 発 機 序 はClomipheneが ま ず 中 枢 に 作 用 し, FSHの 放 出 を 促 進 し, 二 次 的 に 卵 巣 性生estrogenを 増 加 せ し め, こ れ が 中 枢 にfeed backし, LHを 放 出 さ せ, つ づ い

て 排 卵 現 象 が お こ っ た も の と考 え ら れ る.

図11はlate ovulation groupの1症 例 を 示 した も の で あ り, 以 上 の 考 察 を 裏 付 け て い る も の で あ る.

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図9

EFFECT OF CLOMIPHENE CITRATE ON A PATIENT

WITH AMENORRHEA 1st GRADE

第7節 小 括 な らび に考 按 Clomipheneに よる排 卵 誘 発 機 序 に つ い て は まだ 意 見 の一 致 をみ て い な い現 状 であ り, これ に 関 して は多 数 の報 告 が あ り, い ろ い ろ と議 論 の分 れ る と ころ で あ るが, 現 在 一 致 せ る 意見 は 本 剤 投 与 に よ りgonadotro-pin分 泌 の亢 進 す る こ と, お よびesterogen分 泌 の亢 進す る とい うこ とで, そ のい ず れ を 先 に 分 泌亢 進 させ るかに よ り本 剤 の 作用 す るprimary siteが 間 脳, 下 垂体, す な わ ち 上 位 中枢 で あ るか, 卵 巣, す なわ ち末 梢 に作 用 す るか とい う考 え とに 分 か れ る.

Clorniphene投 与 に よる排 卵 誘 発 時 期 をearly ovu-lation group, late ovuovu-lation groupと に分 け お の お の の ホル モ ン 分 泌動 態 を 検 索 した 結 果, early ovu-lation group, late ovuovu-lation groupと で は 排 卵 誘 発 機 序 の 異 な る とい う2元 性 を 示 唆 す る結 果 をえ た.

1) early ovulation groupで はClomipheneが estrogenを 急 増 さ せ る もFSHに は 変 化 が み ら れ な か っ た こ と よ り, こ のestrogenの 急 増 が 中 枢 にfeed backし, 中 枢 よ りLHを 放 出 さ せ 排 卵 現 象 が お こ つ た も の と 考 え る. こ の よ う な ホ ル モ ン 動 態 に よ る 排 卵 現 象 はClomi-pheneが 卵 巣 に 直 接 作 用 しestrogenの 亢 進 が お こ り 排 卵 に つ な が っ た と考 えprimary siteは 卵 巣 と 考 え ら れ る.

2) late ovulation groupで はclomipheneが ま ず FSH放 出 を 促 進 し, 2次 的 に 卵 巣 性estrogenを 増 加 せ し め, こ のestrogenの 急 増 が 中 枢 にfeed backし, 中 枢 よ りLHの 放 出 が お こ り, つ づ い て 排 卵 現 象 が お こ っ た と考 え る. こ の よ う な ホ ル モ ン 分 泌 動 態 に よ る 排 卵 現 象 はClomipheneのPrimary siteが 間 脳,

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130-54 市 川:Clomiphene citrateの 排 卵 誘 発 機 序 に 関 す る 研 究 産 婦 進 歩 第24巻2号

図10

LATE OVULATION GROUP

下 垂 体 と考 え られ る.

この よ うにClomiphene投 与 に よる 排 卵 誘 発 時 期 の 異 な る もの をearly ovulation group, late ovula-tion groupと に 分 類 し, LH分 泌動 態 ま で詳 細 に 測 定 し, そ の ホ ル モ ン分 泌 動 態 よ り本剤 の排 卵 誘 発 機 序 を 解 明 し よ う とした 報 告 は 他 に み られ ない 。 第6章 総 括 な らび に 考 按 Clomipheneの 排 卵 誘 発 効 果 につ い ては 多 数 の 報 告 が 一 致 して, そ の効 果 を 認 め てい る. しか し, そ の作 用 機 序 につ い て は 諸 説 が あ り, 全 く 一 致 を 欠 い てお り, い ろい ろ と論 じ られ てい るが, 現 在 ほ ぼ 一致 せ る 意 見 は本 剤 投 与 に よ り下 垂 体 か らgonadotropinの 分 泌 が亢 進 され る こ と, お よび, 卵 巣か らのestrogen の 分泌 亢 進 の2点 で あ る. Clomipheneがgonadotropin, estrogenの い ず れ を 先 に 分 泌 亢 進 さ せ る か に よ り 本 剤 の作 用 す るpri-mary siteが 間 脳, 下 垂 体 であ るか, 卵 巣 で あ るか に 議 論 が 分 れ て お り, 末 だ 本 剤 の 排 卵 誘 発 機 序 を1元 的 に 説 明 し うるだ け の充 分 な実 験 的 な い し臨 床 的成 績 に 欠 け てお り, な お議 論 の余 地 が 残 され て い る. そ こ で, こ こにClomipheneの 作 用機 序 な らび に 作 用 部 位 に 関 す る現 在 ま で の 主 な 研 究 な ら び に 私 の 研 究 成 績 に つ い て の 考 察 を 加 え る こ と と し た. 動 物 実 験 で のChomipheneの 生 物 作 用 は 内 因 性 estrogen分 泌 の な い 状 態 で は 弱 いestrogen作 用 を 示 し, 内 因 性 のestrogenの 存 在 す る 状 態 で は 強 い 抗 estrogen作 用 を 示 す 成 績 をRoy et al. が 報 告 し て お り, ま た, 一 方gonadotropinの 分 泌 に つ い て は Roy et al, Coppola, Tsuyuguchi, Igarashi, 関 ら は 本 剤 の 比 較 的 少 量 投 与 でgonadotropin分 泌 を 促 進 し, ま た, Holtkamp et al., Roy et al. は 本 剤 の 比 較 的 大 量 投 与 でgonadotropin分 泌 を 抑 制 す る と い う 成 績 を 報 告 し て い る.

作 用 部 位 に つ い て は 小 林 ・加 藤 ・VilleはRoy et al. のClomipheneがNatural estrogenとReceptor siteで 競 合 す る と い う実 験 を 押 し 進 め 卵 巣 剔 出 白 鼠 に 本 剤 を 投 与 し, Estriol-3Hを 静 脈 注 射 し, 下 垂 体, 視 床 下 部 等 々 のuptakeをCountし 前 視 床 下 部 のup-takeが 減 少 し て い た こ と よ りClomipheneの 作 用1部 位 が 前 視 床 下 部 で あ る ら し い と考 え, ま た, 五 十 嵐 は Clomipheneを 視 床 下 部 各 部 に 植 え 込 み, 血 中, 下 垂 体 のFSH, LHを 測 定 し た 結 果FSH, LHの 亢 進 を み と め た. す な わ ち, Clomipheneは 視 床 下 部 正 中 隆 起, 前 視 床 下 部, 下 垂 体 前 葉 に 直 接 作 用 し, し か も, 下 垂 体 前 葉 よ り も 視 床 下 部 に 対 す る 作 用 が よ り強 い こ と よ りClomipheneの 作 用 部 位 を 中 枢 に 求 め て い る. 他 方, Clomipheneの 作 用 部 位 が 卵 巣 で あ る と い う 根 拠 を 示 す 実 験 にMayfield et al. の 実 験 が あ り, こ れ は 適 当 少 量 のClomipheneが 偽 妊 娠 の 状 態 に し た 幼 若 白 鼠 の 卵 巣 ア ス コ ル ビ ン 酸 を 減 少 せ し め, ま た, LHに 対 す るOAADの 程 度 を 増 大 す る とい う実 験 成 績 お よび, 小 林 ・三 宅 の 実 験 で の 下 垂 体 剔 出 幼 若 雌 性 白 鼠 にClomipheneを 前 処 置 し, PMS-HCGを 投 与 す る と 排 卵 数 が 増 加 し た こ と な ど よ り 本 剤 が 卵 巣 の gonadotropinに 対 す る 感 受 性 を 亢 め る こ と よ りCl-omipheneの 作 用 部 位 を 卵 巣 に 求 め て い る.

次 に 臨 床 的 研 究 で はLorain et al. はClomiphene 投 与 後, 尿 中estrogenは 増 加 す る がtotal gonado-tropinは 増 加 し な い の で 卵 巣 に 直 接 作 用 し た の で は な い か と い う説 を 提 唱 し, ま た, Charles et al. も 同 様 の 事 実 を み た と報 告 し て い る.

Smith et al. もClonliphene投 与 後, 尿 中estro-genは 増 加 す る の にtotal gonadotropinは ほ と ん ど 変 化 し な い こ と とClomipheneを 投 与 し た 卵 巣 がin vitroでAcetate-1-14Cをestrogenに 変 換 す る こ と か らClomipheneが ま ず 卵 巣 の ス テ ロ イ ド合 成 の 酵 素 系 に 作 用 す る と の 推 論 の も と に 本 剤 は ま ず 直 接 卵 巣

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図11

EFFECT OF CLOMIPHENE CITRATE ON A PATIENT

WITH AMENORRHEA 1st GRADE

に 作 用 し てestrogenを 増 加 さ せ, estrogenの 増 加 が 中 枢 にfeed backし 下 垂 体 か らgonadotropinを 放 出 させ る の で は な い か と の も と に 卵 巣 作 用 説 を 支 持 し て い る.

中 枢 説 を 支 持 す る 臨 床 的 成 績 はGreenblatt et al., Roy et al. の 成 績 に 始 ま り, 次 い でPaulsen&Her-mannはClomiphene投 与 に よ りestrogen, total gonadotropinが 共 に 上 昇 し た こ と か ら 本 剤 が 下 垂 体 gonadotropin分 泌 を 増 加 す る と 考 え, Riley & Evans はtotal gonadotropinの 増 加 が お こ り, つ づ い て estrogenの 増 加 が お こ っ た 事 よ り本 来estrogenの 増 加 はgonadotropinを 抑 制 す る の に 共 に 増 加 し た こ と は 本 剤 が 中 枢 に 働 きgonadotropinを 放 出 さ せ た 事 実 よ りClomipheneの 中 枢 作 用 説 を 唱 え て い る. さ ら に, 中 枢 作 用 説 を 支 持 す る 人 にMillinger & Thomp-son, Back et al. な どが い る.

本 邦 で は 植 田 はtotal gonadotropinがestrogenの 増 量 に 先 き立 ち増 加 し, 分 離 定 量 で はFSHが まず 増 加 す る こ と よ り, また, 五 十嵐 は尿 中LH, FSHを 定 量 した 結 果, 排 卵 の有 無 に か か わ らずFSH不 変 例 が 多 く, LHは 排 卵成 功 例で 上 昇 傾 向 がみ られ た こ と よ り本 剤 の 作用 機 序 を中 枢 作 用 で あ る とし, そ の 他, 小 林 ・露 口 ・野 嶽 ・白井 ・関 な ど も同様 の作 用 を 支 持 す る成 績 を え て い る. 以 上 のべ た ご と く動 物 実験 お よび 臨 床 研 究 成 績 よ り Clomipheneが 間 脳 ・下 垂 体 に 作用, LH放 出 因 子 を 剌 激 し, そ の結 果LH分 泌亢 進 が お こ り排 卵 を 誘発 す る とい う 機 序 では な い か と 推 論 され る 人 々が 多 い が, Mayfield, 小 林 ・三 宅 の動 物 実 験 の ご と くClomi-pneneが 卵 巣 のgonadotropinに 対 す る 感 受 性 を 亢 め るこ とも事 実 とす れ ば 中 枢 作用, 卵 巣 作 用 の 両 作用 が考 え られ る.

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132-56 市 川:Clomiphene citrateの 排 卵 誘 発 機 序 に 関 す る 研 究 産 婦 進 歩 第24巻2号

Clomipheneの 人 排 卵 誘 発 作 用 のprimary siteを 尿 中gonadotropin, estrogen定 量 よ り説 明 す る の に

投 与 量 の 相 違 お よ び 連 続 定 量 で な く, さ ら にearly ovulation, late ovulationを 同 一 の 排 卵 誘 発 と み な す な ど種 々 の 実 験 条 件 の 違 い に よ る も の を 中 枢 作 用, 卵 巣 作 用 の どち ら か で 説 明 し よ う と い う こ と に 無 理 が あ り, 本 剤 の 作 用 機 序 に 中 枢 説, 卵 巣 説 と い う相 反 す る 結 果 が 生 み 出 さ れ た も の と 思 わ れ る. 著 者 の 報 告 な ら び に 諸 家 も 認 め る ご と く, Clomi-phene投 与 に よ る 排 卵 誘 発 時 期 は 不 定 で あ る こ と, ま た, 同 一 症 例 に お い て も わ れ わ れ の い うlate ovu-lationを 示 し た も の が 次 周 期 に てearly ovulationと な り, ま た, そ の 逆 の 現 象 が み ら れ る こ と な ど よ り本 剤 のprimary siteがearly ovulation groupとlate ovulation groupと で 相 異 す る の で は な い か と の 推 論 の も と に, 二 群 の ホ ル モ ン 分 泌 動 態 を 検 索 す る こ と が Clomipheneの 作 用 機 序 を 真 に 解 明 す る こ と に な る と 思 わ れ る. そ の 結 果early ovulation groupで は Clomiphene投 与 に よ り, ま ずestrogenを 増 加 さ せ る もtotal gonadotropin(こ の 場 合FSHと 考 え ら れ る.)に は 変 化 が み ら れ ず, estrogenの 急 増 が 中 枢 に feed beckし 中 枢 よ りLHを 放 出 す る こ と よ り 排 卵 現 象 が お こ る も の で あ り, early ovulation groupで はClomipheneのprimary siteは 卵 巣 と 考 え ら れ る.

一 方, late ovulation groupで はClomiphene投 与 に よ りtotal gonadotropin(こ の 場 合FSHと 考 え ら れ る 。)分 泌 を 促 進 し, つ づ い てestrogenが 増 加 し, こ のestrogenの 急 増 が 中 枢 にfeed backし, 中 枢 よ りLHの 放 出 が 起 り, 排 卵 現 象 が 起 る も の で あ

り, late ovulation groupで はClomipheneのpri-mary siteは 間 脳 ・下 垂 体 と考 え ら れ る. す な わ ち, Clomipheneの 排 卵 誘 発 機 序 は 一 元 的 な も の で は な く, 卵 巣 作 用, 中 枢 作 用 の 二 元 性 を し め す 結 果 を 著 者 は 得 て い る. そ の い ず れ の 作 用 機 序 に よ り排 卵 す る か は 対 象 患 者 の 卵 胞 発 育 準 備 状 態 の 程 度 に よ り き ま る も の で あ る と考 え ら れ る.

こ の こ と は 教 室 の 森 田 がlate ovulation groupに PMS-Gを 前 処 置 し, Clomipheneを 投 与 す る こ と に

よ りearly ovulation groupのTypeの 内 分 泌 動 態 を し め し 排 卵 し た こ と に よ り理 解 さ れ る. 要 す る にClomipheneの 排 卵 誘 発 機 序 はestrogen 分 泌 増 加 に よ り, そ れ が 中 枢 にfeed backし てLH を 分 泌 す る こ と に よ り排 卵 が お こ る も の で あ る が, 前 提 と な るestrogenの 増 加 がClomipheneが 卵 巣 に 直 接 作 用 し て 分 泌 さ せ た も の で あ る か, Clomiphene が 中 枢 に 作用 し てFSH分 泌 を促 し, 次 い でestrogen が 分 泌 され た もの で あ るか とい うestrogen分 泌 の 由 来 す る と ころ に よ りClomipheneのprimary siteが 決 定 され る もの で あ る こ とが 考 察 され る. す な わ ち Clomipheneのprimary siteは 一元 性 を示 す もの で は な く, 二 元 性 を示 す も ので あ る こ とを解 明 した こ と は 今 後 の 臨 床 応用 面 にお け るClomipheneの 効 果 を 高 め る もの で あ る と考 え られ る. 第7章 結 論 著 著 はClomipheneの 排 卵 誘発 機 序 を 解 明す るた め, 主 にLH分 泌動 態 の面 よ り研 究 を行 ない, 次 の 結 果 を 得 た. 1) 正 常 性 周 期 婦人 の 尿 中estrogenは 排 卵 期 直 前 お よび, 黄体 期 の開 花 期 との2ヵ 所 に ピー クを 示 し, total gonadotropin(FSH)の 増 加 はestrogenに 先 行 し, LH分 泌 は排 卵 期 直 前 に の み ピー ク を認 め た. 2) 第1度 無 月経 婦 人 に お い て はestrogenお よび LH共 に 著 明 な 分 泌増 加 の ピー クを 認 め な か った. 3) Clomipheneの 排 卵 誘 発 率 は17例 中13例76.5% (40周 期 中31周 期 の71.0%)に 認 め た. 4) 第1度 無 月経 婦 人 にClomipheneを 投 与 し, 排 卵 無 効 例 のestrogen, LHは 共 に 分泌 増 加 は み られ な か った. 5) Clomiphene投 与 時 の 排 卵 誘発 時 期 は 投 与 開 始 後9日 目 と13日 目の2ヵ 所 に ピ ー クを認 めた.

6) early ovulation groupとlate ovulation group の2群 に つ い て, 尿 中estrogen, total gonadotropin, LHに つ い て 検 討 し, Clomipheneの 排 卵 誘 発 機 序 に つ い て考 察 を 加 え た.

i) early ovulation groupで はClomiphene投 与 に よ りestrogenは 急 増 す るがFSHに は変 化 が み ら れ ず, estrogenの 中 枢へ のfeedbackに よ りLH分 泌 を 促進 し排 卵 が 誘 発 され る もの と考 察 され る. す な わ ち, Clomipheneの 卵 巣 へ の 直 接 作用 を認 め た.

ii) late ovulation groupで はClomipheneが, FSH放 出 を促 し2次 的 に 卵 巣性estrogenを 増 加 せ しめ, そ れ が 中枢 にfeed backし てLH放 出 を お こ し, 排 卵 を誘 発 す る もの と 考 察 され る. す なわ ち, Clomipheneの 間 脳, 下 垂 体 へ の 中枢 作 用 を 認 め た. 6) Clomipheneの 排 卵 誘発 機 序 は 卵 巣 作 用, 中枢 作 用 の二 元 性 示 す こ とを 認 め た. そ のい ず れ を示 す か は 対 象患 者 の卵 胞 発 育 段階 に よ り反 応 態 度 が 異 な る も の で あ る と推 定 され る. 稿 を終るに臨み終始御懇篤な る御指導 の上, 御校閲 を賜 っ た恩 師小 島秋教授 に深 甚の謝意 を捧 げます. 同時 に御指導御 助 言を賜 った西 川潔 講師な らびに御協力頂 いた本産科婦人科

(15)

学教室 員各位 に深 く感謝致 します ・

本論文の要 旨は昭 和46年度 日本 不妊学会総 会において発表 した

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参照

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