資料 2-1
基礎・横断研究戦略作業部会 報告書
○今後の老化研究の在り方について
○今後のバイオリソース整備の在り方について
○今後の植物共生研究の在り方について
平成
28 年7月
科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 ライフサイエンス委員会
基礎・横断研究戦略作業部会
科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会
ライフサイエンス委員会 基礎・横断研究戦略作業部会 委員名簿
(敬称略、50 音順)
岩 本 愛 吉
国立研究開発法人日本医療研究開発機構科学技術顧問
小 幡 裕 一
国 立 研 究 開 発 法 人 理 化 学 研 究 所 バ イ オ リ ソ ー ス セ ン タ ー 長
倉 田 の り
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構理事
○小 安 重 夫
国立研究開発法人理化学研究所理事
◎菅 野 純 夫
東京大学大学院新領域創生科学研究科教授
高 井 義 美
神戸大学大学院医学系研究科特命教授
高 木 利 久
東京大学大学院理学系研究科教授
月 田 早智子
大阪大学大学院生命機能研究科/医学系研究科教授
豊 島 陽 子
東京大学大学院総合文化研究科教授
西 田 栄 介
京都大学大学院生命科学研究科教授
◎:主査、○:主査代理
平成 28 年4月1日現在
目次
目 次
○今後の老化研究の在り方について
はじめに ··· 1
1.調査検討の背景··· 1
2.老化研究の現状··· 3
3.老化研究の重要性・必要性・課題··· 6
4.老化研究の今後の在り方··· 6
○今後のバイオリソース整備の在り方について
はじめに··· 11
1.バイオリソース事業の現状とこれまでの成果··· 11
2.バイオリソースを取り巻く動向··· 11
3.今後のバイオリソース整備の在り方について
~全ての関係者が支える仕組みの構築に向けて~··· 12
○今後の植物共生研究の在り方について
はじめに··· 14
1.植物共生研究の現状··· 14
2.植物共生研究の重要性・必要性・課題··· 15
3.植物共生研究の今後の在り方··· 17
(参考資料)
○「老化研究の方向性について」
··· 参考資料 1
○「今後のバイオリソース整備の在り方について」
··· 参考資料 2
○「今後の植物共生研究の在り方について」 及び
「微生物・植物・土壌等間の共生および相互作用の包括的解明と利用技術開発」
··· 参考資料 3
1
今後の老化研究の在り方について
はじめに
本作業部会は、ライフサイエンス分野全体を俯瞰し、文部科学省として取り組むべき新た
な課題を抽出し、ライフサイエンス分野の研究開発の推進方策を検討することを目的として、
調査検討を進めてきた。
今般、文部科学省として取り組むべき新たな課題の抽出を行うため、ライフサイエンス委
員会及び本作業部会の委員に対して、今後、新たに取り組むべき課題についての意見を求め
たところ、健康寿命の延伸や加齢に関連した疾患等の克服を目的とした、老化の基礎メカニ
ズムの解明や、それに基づく老化の制御に関する研究に着手すべきであるとの意見が最も多
くの委員からあげられた。
老化研究は非常に広範な研究分野を対象としていることから、作業部会における審議に先
立ち、事務局において有識者へのヒアリングなどを行い、近年の老化研究の著しい発展、我
が国や欧米の老化研究への取組、老化研究の今後の方向性等について調査を行い、報告をま
とめた(参考資料 1)
。
本作業部会においては、事務局からの報告に基づき審議を行い、その結果を踏まえ、来年
度から5年間程度を目途とした老化研究の在り方について、以下の通りとりまとめた。
なお、本報告においては老化を「加齢による肉体的・精神的機能低下」と定義する。
1.調査検討の背景
○社会的背景
世界的に高齢化が進む中、より健康で長生きできる社会の実現は、国際社会における重要
課題のひとつである。さらに、世界で最も急速に高齢化が進むことが予測されている我が国
においては、世界に先駆けて超高齢化社会対策に取り組む必要がある。
また、社会保障費は、高齢化により今後も急激な増加が見込まれている。特に、医療・介
護分野の社会保障費は、平成 24 年度(2012 年度)から平成 37 年度(2025 年度)にかけて、
GDP の伸び率 1.27 倍に対して、医療費 1.54 倍、介護費 2.34 倍と GDP の伸び率を大きく上回
って増加していくと見込まれており、医療・介護の費用を減らす取組が必要とされている。
(参考資料 1
-P2 下段)
介護費については、老化の遅延による要介護者の減少とそれに伴う寿命の延びを仮定した
場合、高齢者人口の増加により要支援・要介護者が増え、介護費増加につながると考えられ
るが、その増加分よりも介護予防による費用削減効果が上回り、年平均で社会全体の介護費
を約 1.7 兆円削減できることが試算されている。医療費についても、要介護者は非認定者よ
りも医療費が高額で、かつ要介護認定区分が重度な者ほど医療費が高額となることが知られ
ており、介護予防により、介護費のみならず医療費も削減できることが期待される。
(参考資
料 1
-P3 上段)
このように仮定に基づく推計ではあるが、介護予防により、医療・介護の費用の削減が期
待されている。
現状では、我が国においては、健康寿命(日常生活に制限のない期間)は延びているもの
の、平均寿命と健康寿命との差は平成 25 年(2013 年)のデータで男性 9.02 年、女性 12.4
2
年とかなり大きく、介護予防に向けた高齢者の健康維持・疾病予防等の実現、特に要介護状
態になる前に事前介入する技術の開発が期待されている。
健康寿命を延ばし、平均寿命と健康寿命の差を縮めることは、個人の生活の質の低下を防
ぐ観点からも重要であるのみならず、社会保障費削減などの社会的負担を軽減する観点から
も重要である。
○老化遅延による健康寿命延伸に向けた試み
最近の老化研究の著しい発展により、線虫、マウス等のモデル動物における遺伝子変異や
食事制限等による寿命の延伸が報告されており、ヒトの老化を遅延し、健康寿命を延伸する
ことも夢ではなくなっている(図 1)。
モデル動物(線虫、マウス)での老化制御の研究成果として、
・健康寿命、最長寿命ともに延伸する
・健康寿命の延伸幅(A)は、最長寿命の延伸幅(B)より有意に大きい
などが報告されている。(参考資料 1
-P4 上下段~P5 上段 、P12 下段)
図1)老化遅延による健康寿命延伸のイメージ
このようなモデル動物の研究成果をヒトへ適用することが可能となれば、老化の遅延によ
る健康寿命の延伸・要介護期間の減少につながり、ひいては、
「要介護」を避け、肉体的にも、
精神的にも健康な老後を実現することにつながると期待される。
3
2.老化研究の現状
(1)近年の老化研究の著しい発展
○長寿遺伝子の発見
近年の研究により、老化研究は、記述的な色彩の強い学問体系から、分子生物学・分子遺
伝学的アプローチを基盤とし、進化的に保存されている制御メカニズムを明らかにすること
を目的とした学問体系に発展を遂げてきた。1980 年代末からは、酵母、線虫、ショウジョウ
バエ、マウス・ラットにおける単一遺伝子の変異による寿命の延伸が報告されており、この
発見を契機として、
・成長ホルモン/インスリン/IGF-I(Insulin-like Growth Factor-I)シグナル伝達系
・mTOR シグナル伝達系
・サーチュインファミリー
などが、老化・寿命制御に重要な役割を果たす制御因子・シグナル伝達系として特定されて
きた。
○サーチュイン
このうち、特にサーチュインについては、米国ワシントン大学・今井教授のグループによ
る発見以来、精力的に研究が進められてきており、我が国において臨床研究が開始されよう
としている。
具体的には、NAD 依存性ヒストン脱アセチル化酵素であるサーチュインの活性を高めるこ
とで、老化遅延・寿命延長の効果を得る研究が進められてきており、特に NMN(Nicotinamide
Mononucleotide)
、NR(Nicotinamide Riboside)といった NAD の合成中間体によってサーチュ
インの活性を高める研究が進んでいる。
米国ワシントン大学・今井教授らのグループにより、NMN がマウスにおいて顕著な抗老化
作用を示すことが報告されており、慶應義塾大学において、NMN に対する第1相臨床研究が
開始予定である。
(参考資料 1
-P4 上下段、P7 上段、P11 上段)
我が国において、健常人を対象として抗老化作用を検証する世界初の NMN の臨床研究が実
施されることは、老化研究の成果をヒトへ拡大するという点において最も注目すべき動向で
ある。
○老化制御の中枢、統合的な老化を担う機構
各シグナル伝達系・制御因子の研究の一方、老化は個体の統合的な現象であることから、
その統合的制御を担う機構の解明が次の課題となっており、ヒトを含めたほ乳類の老化・寿
命のメカニズムを理解することを目標として、線虫、ショウジョウバエ、マウスなどの多細
胞生物のモデルを用いて、組織・臓器間ネットワーク、制御システムの階層性を理解する流
れが強まっている。
老化・寿命制御において、中心的な役割を果たす組織・臓器は存在するのか、そのような
「コントロール・センター」と呼ぶべき組織・臓器は、他の組織・臓器とどのように連絡を
とることで全身の老化過程を制御するのか、そのようなネットワークを制御する主要な因子、
シグナル伝達系は何かといったシステムの階層性の解明が次の大きな課題のひとつとされて
いる。
4
平成 25 年(2013 年)
、米国ワシントン大学・今井教授らのグループが、ほ乳類における老
化・寿命の制御中枢「コントロール・センター」が、脳の視床下部に存在すると報告し、新
たな突破口を開いた。
(参考資料 1
-P4 上下段、P6 下段、P7 上段、P11 上段)
このようなシステムの階層性の解明に向けた取り組みも、個体全体に関わる現象である老
化の解明には欠かせないものであり、注目される動向の一つである。
○細胞老化、老化細胞研究の新展開
老化に関連するシグナル伝達系の発見やシステム的理解に加えて、細胞で起きる現象と個
体全体の老化をつなげる研究も活発に行われている。
細胞が不可逆的に分裂を停止することを細胞老化と言い、分裂を停止した細胞は老化細胞
と呼ばれている。これまでテロメア長の短縮がこの分裂寿命を規定している因子であること
が知られていたが、それ以外にもがん抑制遺伝子が細胞老化を誘導するなどの機序が明らか
にされている。
老化細胞は生体内で長時間存在し続け、加齢とともに体内に蓄積し、老化細胞は炎症性サ
イトカインなどを分泌していることが明らかになっている。加齢に伴い蓄積する老化細胞が、
臓器•組織の機能低下•障害を引き起こし、多様な加齢性疾患をもたらす(この現象を SASP
(Senescence-Associated Secretory Phenotype)という)と考えられており、老化細胞の蓄
積が個体老化の原因と考える細胞老化仮説が提唱されている。
実際に、マウスでは、老化個体での老化細胞の除去(あらかじめ遺伝子操作を行い、老化
細胞が個体内にできた時点で除去されるようなメカニズムを組み込んでいる)により、臓器•
組織での機能改善が報告されている。
(参考資料 1
-P8 上段)
細胞老化と個体老化の関係を明らかにする研究も今後の研究で重要な方向性の一つである。
○液性因子による老化制御の発見
老齢マウスと若年マウスを並体結合すると、老齢マウスの組織、臓器の若返りと、若年マ
ウスの組織、臓器の老化促進が起こることから、血液を循環する液性因子が、組織、臓器の
老化を制御する可能性が示されている。
(参考資料 1
-P8 下段)
若返り因子や老化促進因子の候補も幾つか報告され始めているが、個体全体の老化につい
ては、まだ検証されておらず、このような制御因子の解明も今後の老化研究で欠かすことの
できない重要な方向性の一つである。
(2)欧米や我が国の老化研究への取組と我が国の研究者の業績
○欧米と我が国の老化研究への取組
老化制御に関与する遺伝子の発見が進むなど研究が著しく進展しており、老化メカニズム
のさらなる解明と応用研究の推進により、健康寿命の延伸につながる老化制御法の開発など
の成果創出が期待されている。
そのため、欧米を中心として世界各国において老化研究への系統的な投資がなされ、成果
創出に向けた取り組みが加速している。
(参考資料 1
-P10 上段)
米国においては、昭和 49 年(1974 年)に NIH(National Institutes of Health)の下に
NIA(National Institute on Aging)が設立され、NIA では、研究所内研究プログラムのほか、
5
所外プログラムに研究費を配分する制度が確立している。NIA の平成 28 年度(2016 年度)の
予算総額は約 1,598 百万ドル(約 1,758 億円)であり、そのうち大学等 NIA 外での研究に対
する予算は約 1,423 百万ドル(約 1,565 億円)
、そのうち老化・寿命の基礎研究の研究費は約
184 百万ドル(約 202 億円)である。
欧州においても、平成 19 年(2007 年)に Max Planck Institute for Biology of Ageing
が設立され、老化に関連した基礎研究をけん引している。年間予算は約 20 百万ユーロ(約
25 億円)である。
欧米に比較して、我が国においては、これまで老化に関連した研究に対する大規模な系統
的な投資はなされていない。科研費においては、新学術領域に老化に特化した2件の大型領
域があるのみである。また、CREST においても、老化に特化した領域はなく、領域内の採択
課題の一部に老化研究が見られるのみである。
(参考資料 1
-P9 下段)
○我が国の研究者の貢献
上述の通り、我が国においては、老化に関連する研究に対する大規模な系統的な投資はな
されていないものの、我が国の研究者も、以下の通り、科研費や CREST 等の支援により、優
れた研究成果を創出し、当該分野の研究の進展において重要な役割を果たしてきている。
(参
考資料 1
-P11 上段~P13 上段)
・鍋島 陽一 先端医療振興財団先端医療センター長
クロトー遺伝子が機能を失うと、動脈硬化、肺気腫、骨粗しょう症、皮膚の老人性萎縮、
難聴などの多様な老化症状を起こすことを解明。老化の分子機構研究を切り拓いた。
・西田 栄介 京都大学教授
線虫 C. elegans を用いて、食餌制限、特に断続的飢餓(断続的絶食)
、が老化を遅延し、
寿命を 60~80%延長することを見いだした。さらに、メカニズムを解析し、寿命延長を担
う遺伝子群を発見した。発見された遺伝子群は、ヒトにも存在しており、ヒトの健康寿命
の延伸に関与する可能性が高い。
・原 英二 大阪大学教授
老化の一つの原因と考えられる細胞老化の誘導にがん抑制遺伝子である p16INK4a が関
与していることを発見し、細胞老化の作用機序とそれに対するがん抑制機構としての役割
を明らかにした。一方、老化細胞は様々な炎症性物質を分泌する SASP という現象を起こす
ことで炎症反応を惹起し、発がんを含む様々な加齢性疾患の発症原因の一つとなっている
ことを見いだした。
6
3.老化研究の重要性・必要性・課題
○重要性・必要性
世界で最も急速に高齢化が進む我が国において、老化の遅延により健康寿命を延伸すると
ともに要介護期間を減少することにより、
「要介護」を避け、肉体的にも、精神的にも健康な
老後を実現することは、高齢者自身の生活の質の向上のためのみならず、労働力人口の確保、
医療や介護等の社会保障に要する費用の削減等の社会経済上も最も重要な課題の一つである。
特に、加齢性疾患を発症する前の事前介入による介護予防が実現すれば、その経済的・社会
的な影響は極めて大きく、個別の疾患の予防・治療研究や最先端医療技術の実現に向けた研
究とのバランスをとりつつも、十分な投資をしていくことが必要な分野である。
また、近年、老化研究の分野では、モデル動物における研究が進み、ヒトの老化遅延も夢
ではない段階となっている。先にも述べた通り、米国ワシントン大学・今井教授らのグルー
プとの共同研究により、健常人を対象として抗老化作用を検証する世界初の NMN の臨床研究
が国内の大学において実施される予定であるなど、我が国における研究の進展・蓄積を踏ま
えると、老化研究は我が国が独自性、創造性をもってイニシアティブを発揮できる分野であ
るといえる。また、細胞レベルから個体レベルまで幅広い階層の研究とそれを融合したシス
テム的理解が欠かせないことからも、既存の領域にとらわれない、幅広い分野の研究者の参
加を促し、新たな研究領域や研究基盤の創造にも資する分野であるともいえる。
欧米を中心として、政府による当該分野に対する研究開発投資が進んでいる中、強みを有
する我が国においても、率先して取り組んでいくべき研究分野である。
○課題
老化のメカニズムの解明を目指した研究や健康寿命を縮める原因疾患に関する研究につい
て、個別に優れた研究が実施されているものの、我が国の基礎研究の強みを生かす体系的な
研究は実施されておらず、老化に関する基礎研究の成果を疾患の予防・克服や、実用化・社
会実装につなげるための分野・領域を横断する取組は極めて不十分といえる。
4.老化研究の今後の在り方
○実施すべきプロジェクトの方向性
老化の遅延による健康寿命の延長を主たる目的として研究を進めるため、これまでのよう
な個別の疾患等の研究ではなく、老化そのものを老化関連疾患の基盤ととらえ、老化のメカ
ニズムそのものの解明・制御を目指すべきである。
また、幅広い分野の研究者の参画により、我が国の強みを踏まえつつ、老化に関連する基
礎研究を体系的に実施し、抜本的強化を図るとともに、疾患への応用、人材育成等を包括的
に推進すべきである。
そのため、以下の取り組みを中心としたプロジェクトを早急に開始すべきである(図2)
。
なお、プロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)を通じて実施する
ことを想定している。
(参考資料 1
-P14 下段)
・分野融合のアプローチを取り入れつつ、老化に関する包括的な理解(図2の①)と制御(図
2の②)を目指す基礎的研究を、中核的研究において実施
7
・加齢に関連した疾患などの予防・遅延に向けた研究開発(図2の③)を疾患ごとに各研究
機関において実施
・共通する課題の解決等につながる基盤技術の研究開発を併せて実施
図2)研究課題①、②、③のイメージ
◆中核的研究
代表となる1つの代表機関の下、複数の分担機関との連携により、老化研究において中核
的役割を担う以下の研究開発等を実施する。
① 新しい老化の制御メカニズムの発見に向けた基礎研究
個体、細胞、分子の各階層に注目して研究を進めるとともに、それらの階層を統合した
システム的理解を進める。具体的な研究課題や目標については、これまでの我が国におけ
る老化研究の強みや世界的な研究動向を踏まえつつ設定することとするが、例としては以
下のものが考えられる。
・課題1【個体レベルの理解】
新規シグナル伝達系及び臓器・組織間コミュニケーションなどの、新たな個体老化制御
システムの同定と解析
・課題2【細胞レベルの理解】
細胞老化を制御する新規因子、新規シグナル伝達系の同定
細胞老化、老化細胞の個体老化における重要性の解析
・課題3【分子レベルの理解】
様々な代謝制御機構と老化の制御にかかわる機構とを結びつける、新たな制御因子•
シグナル伝達系の発見
様々な寿命をもつ多様な生物種の比較解析
・課題4【システムとしての理解】
上記の課題と連携し、生命動態システム科学の観点から、数理科学に基づくモデリン
グやシミュレーションを活用して、老化・寿命現象の本質を理解する
➡目標:5年以内に②の段階(臨床試験に向けた研究)に移る研究シーズを1つ以上発
見する
8
②
既知の老化メカニズムに基づいた、臨床研究を目指した抗老化物質などの研究開発
上記①で進めている基礎的研究と並行して、現在までに判明している老化メカニズムや
①の研究で得られた成果に基づき、ヒトでの実用化に向けて臨床研究を目指した研究開発
を進める。具体的な研究課題や目標としては、例としては以下のものが考えられる。
・課題1
抗老化、老化遅延のターゲット分子の同定、ターゲット分子に作用する物質の同定など
に向けた研究開発
例 抗老化作用をもつ生体内分子、天然・人工化合物・サプリメントの同定
老化細胞除去因子の同定・制御
老化遅延効果を示す機器、トレーニングなどの開発
・課題2
ヒトにおける生物学的老化状態の機能的評価指標の発見と、その測定技術の開発、測定
値の分布・変動の解析に基づく評価指標の確立
➡目標:5年以内に、1つ以上の候補物質などについて、厳密な安全性・有効性の検証を
終了し、企業等との臨床研究に向けた準備を進める
◆個別課題
③
加齢に関連した疾患などの予防・遅延に向けた研究
加齢に関連した疾患などの予防・発症遅延に向けた研究を各研究機関において進める。特
に、老化遅延による病態の進行阻止が大きな効果を生む疾患等について、老化と疾患等の
関連に注目し、新規性・発展性・臨床的有効性の高い研究を推進する。具体的な研究課題
や目標としては、例としては以下のものが考えられる。
・課題
老化遅延による病態の進行阻止が大きな効果を生む以下の疾患等について、新規性・
発展性・臨床的有効性の高い研究を推進
例 臓器疾患・障害(心血管障害、肺気腫、糖尿病及び腎症など)
運動器疾患・障害(サルコペニア、ロコモティブシンドロームなど)
感覚器疾患・障害(難聴、網膜障害など)
◆共通基盤
実験動物の病理組織・生化学的解析、老化モデル動物の作成・供給、測定技術等の開発等
の老化研究を推進するための共通基盤の運用・開発を担う。国際的スタンダードに適合した
老化研究環境の確立を目指した共通基盤の例としては以下のものが考えられる。
・老化研究の統一ストラテジーの取りまとめと普及、老化形質の評価方法、寿命研究の確
実な実施方法の普及、国際的な基準を満たす老化形質、寿命データの提示方法の確立
・実験動物の寿命解析、病理組織解析、血清等の生化学的解析
・網羅的解析(メタボロミクスなどのオミックスの解析など)
・老化動物、老化モデル動物の作製、飼育、供給
・老化現象をとらえる測定技術等の開発 など
9
○分野融合を目指した実施体制の構築
プロジェクトの実施に当たっては、プロジェクトは AMED を通じて実施するものの、ヘッド
クォーターとなる推進会議を政府内に設置し、優れた研究者、研究機関、行政機関等を、分
野を超えて糾合させ、関係者一丸となって研究開発を推進し、実用化・社会実装を進める体
制を構築すべきである(図3)。
参画する関係機関等との調整の必要もあるため、現時点では構想案にすぎないが、実施体
制は以下の通りとすることが望ましい。
(1)医歯薬学、理学、農学、工学、人文社会科学を含む、多様な領域の融合による統合的
な老化研究を推進
(2)ヘッドクォーターとなる推進会議を政府内に設置し、本プロジェクトに参加する研究
機関、関連研究機関、関係省庁、関係学会との間に組織の枠組みを超えたダイナミッ ク
な連携体制を構築すべきである。その際、推進会議には、本プロジェクトの中心を担
う研究機関、学会、省庁等の関係者に加えて、スポーツ医・科学、食品学、生涯教育、
経済学、人文科学等の有識者の参加も得て、多様な領域を融合したプロジェクトの推
進方策を検討すべきである。
(3)事業への臨床医の参画や、AMED 事業の活用、産業界との連携により、基礎研究の成果
を速やかに社会実装に結び付ける体制を構築
図3)老化研究の実施体制(構想案)
○プロジェクト実施に当たっての留意事項
老化研究は各個体の加齢による経年変化を長期間観察する必要があることから、ヒトに近
いほ乳類ではその寿命に比例して長期間の研究とならざるを得ない。プロジェクトの期間は
当面5年間としつつも、その成果を踏まえつつ、研究分野の特異性に留意し、長期的なプロ
ジェクトとして育てていくことが重要である。また、プロジェクトの目標設定や評価に当た
っても、そのような特性にも十分配慮する必要がある。
10
また、がんや認知症などの個別疾患の発症機序解明研究や診断技術開発、生体恒常性の維
持・変容機構の統合的理解の研究、ヒト腸内微生物叢の共生研究など、老化研究との関連が
指摘されている研究が AMED を通じて幅広く実施されている。このほか、大学や国立研究開発
法人等の研究機関において、老化関連の研究が幅広く実施されている。これらの取り組みと
適切な役割分担の下で連携・協力し、研究を効率的かつ効果的に進めていくことが重要であ
る。
参考資料 1 「老化研究の方向性について」(平成 28 年 6 月 20 日 研究振興局ライフサイエンス課)
11
今後のバイオリソース整備の在り方について
はじめに
今後のバイオリソース整備の在り方について検討するため、本作業部会においては、ナシ
ョナルバイオリソースプロジェクトを実施している国立研究開発法人日本医療研究開発機構
に設置されたナショナルバイオリソースプロジェクト推進委員会がとりまとめた報告書に基
づき審議を行い、その結果を踏まえ、平成 29 年度から5年間のバイオリソース整備の在り方
について、以下の通りとりまとめた。
1.バイオリソース事業の現状とこれまでの成果
○現状
ナショナルバイオリソースプロジェクト(以下、NBRP)は、国が戦略的に整備する
ことが重要なバイオリソースを体系的に収集・保存・提供する事業として平成 14 年度に発
足した。発足以前は、約 80 の生物種の系統保存事業が全国の大学で実施されていたが、N
BRP発足後には、戦略的に重要な 22 生物種が選定され、集約・統合により、安定したバ
イオリソースの整備が開始された。現在の第3期(平成 24 年度~平成 28 年度)は、29 生
物種の整備事業に拡大している。
○成果
リソースの収集数及び提供数は多くのリソースが目標値を達成し、第3期の中間評価に
おけるプロジェクト全体の総合評価では「優れた水準」に達していると評価された。特に、
マウス、ラット、ショウジョウバエ、線虫、シロイヌナズナ、藻類、酵母、一般微生物、
原核生物等は、収集・保存・提供数とも世界的な拠点と呼ぶにふさわしい実績をあげた。
NBRP全体で、
平成 26 年度のリソースの利用者は 7,100 名を超え、
成果論文数は 2,565
報に達するなど、成果があがっている。利用者からは、リソースの品質が良く、特性情報
が付いていることから安心して使用できることや、リソースの再作製が不要となり、時間
と研究費を有効活用できるなどの評価を受けている。
2.バイオリソースを取り巻く動向
○海外のバイオリソース機関
海外においても、バイオリソース機関の整備が進んでいる。
米国では、100 年近い歴史のある Jackson 研究所、American Type Culture Collection
等が存在し、米国政府は National Institutes of Health(NIH)及び National Science
Foundation(NSF)を介して生命科学の幅広い分野の研究基盤の整備を支援している。主に、
NIH では医学生物学、NSF では基礎生物学のバイオリソースの整備を支援している。
欧州においても、博物学・感染症学の長い歴史と伝統を持ち、各国に様々な生物種の保
存施設が散在する。また、欧州全体の政策として、2002 年に、科学全般の研究基盤の整備
と拡充を目指した European Strategy Forum on Research Infrastructure が発足した。
12
○生物多様性条約と名古屋議定書
名古屋議定書は、生物多様性条約の3つの目的の中の1つである「遺伝資源の利用から生
じる利益の公正かつ衡平な配分」について、遺伝資源の提供国と利用国で利益を分け合うこ
とに実効性を与えるために、2010 年に COP10 において採択された。日本も早期の批准を目指
し、国内措置を検討しているところである。既に国内法が制定されている国の遺伝資源を利
用する場合には、提供者との契約(相互合意 MAT)
、相手国政府の許可(事前同意 PIC)が必
要とされる。
○科学技術の進展
近年、バイオリソース整備事業に影響を及ぼす科学技術の進展があった。
ゲノム科学(シークエンシング技術)は、次世代シーケンサーを利用したゲノム配列情報
等整備によるリソースの高度化と品質管理をもたらした。また、ゲノム編集技術、特に
CRISPR/Cas9 については、この技術をリソース作出に利用する立場と増加する寄託リソース
への対応の両面から影響を考察することや、知財への留意が必要である。さらに、エピゲノ
ム研究は、リソースの表現型に影響を与える付加情報として今後要望が高まると予想されて
いる。
3.今後のバイオリソース整備の在り方について~全ての関係者が支える仕組みの構築に向
けて~
○整備すべきバイオリソースの要件
整備対象とするバイオリソースの要件は、以下に示す現在の方針を踏襲する。
a)ライフサイエンス研究の発展に不可欠であり、安定的な組織としての保存、供給体制の
整備が適切であるバイオリソース
b)利用する研究者のクリティカルマスが存在するバイオリソース
c)標準的な系統(性質が十分解析されており、再現性が保証されているもの)が存在する
バイオリソース
d)我が国の独自性を発揮した研究、あるいは既に高いポテンシャルを有する研究を進めて
いく上で重要なバイオリソース
○第 4 期に整備すべきバイオリソースの新たな分類
収集に注力した体制整備から、利便性や有用性に優れたリソースの質の向上と利活用に重
点を移しつつ、事業の継続性にも配慮していくため、これまでの4分類を以下の2つに集約
し、方向性を明確化する。
<分類 1> 基幹的なバイオリソース
世界的規模で活用されるモデル生物等、バイオリソースとしての基幹的地位が確立してお
り、今後、ライフサイエンス研究動向を見据えたより戦略的な品ぞろえの整備、品質確保、
マネジメントの高度化などが必要なバイオリソース
<分類 2> 維持の必要なバイオリソース
学問的な重要性や我が国の独自性を発揮した研究など他に代え難い優位性を有し、ライフ
サイエンス研究の基盤として収集・保存・提供の継続が必要なバイオリソース
13
○戦略的なリソースの収集・保存・提供に向けた取組
・高品質のリソース提供による研究の精度向上及び再現性を保証するため、品質管理とその
情報提供に関するルールを定めることが望ましい。
・リソースの共有(シェアリング)の促進により、再現実験による研究精度向上、発展研究
の積み上げ、重複製作回避による研究の効率化が可能になることから、バイオリソースの
継続的かつ効率的な共有のシステムの運用に関与することが、NBRP 中核機関の役割として
重要である。
・ゲノム情報等整備プログラム及び基盤技術整備プログラムによるリソースの付加価値や品
質管理、保存技術の向上を継続すべきである。
・リソースの開発については、汎用性があり、コミュニティからの要望が高く、研究の進展
への寄与が期待される有用なリソースや網羅的なリソースはニーズを踏まえて開発するこ
とが我が国の科学技術の基盤の強化につながり得るため、これを支援するプログラムを幅
広く構築することを検討すべきである。
・リソースデータベースを統合検索するワンストップデータベースを構築することによりデ
ータベースの高度化を図ることが望まれる。
・生物多様性条約で義務とされている提供国の許可(PIC)及び提供者との契約(MAT)の手
続の支援を強化するなどの体制整備が望まれる。
○国際連携
バイオリソースの利用と標準化に関する国際フレームワークの構築と運営に積極的に関与
し、リーダーシップを発揮すべきである。
○ナショナルバイオリソースプロジェクトの実施体制の在り方
NBRP 事業を安定的に継続していくためには、継続的な人材の確保、知財管理、危機管理、
法令・指針等の遵守、提供手数料の見直し等、大学・研究機関等の組織的な関与が必要とな
る課題が増大している。このため、今後は、機関による NBRP 事業への支援内容を、中核機関
採択時の審査の観点として重視するとともに、実施機関に対して間接経費の措置を行うべき
である。
また、研究コミュニティ全体で、NBRP を支えていくべきであり、そうした観点から、運営
委員会の位置付け及び役割を明確にすべきである。
さらに、利用者の拡大と NBRP 事業の普及のために、より効果的な広報活動を進めるべきで
あり、広報活動を継続・強化していく必要がある。
参考資料 2 「今後のバイオリソース整備の在り方について」
国立研究開発法人日本医療研究開発機構ナショナルバイオリソースプロジェ
クト推進委員会(平成 28 年 3 月)
14
今後の植物共生研究の在り方について
はじめに
本作業部会は、ライフサイエンス分野全体を俯瞰し、文部科学省として取り組むべき新た
な課題を抽出し、ライフサイエンス分野の研究開発の推進方策を検討することを目的とし、
調査検討を進めてきた。
文部科学省として取り組むべき新たな課題の抽出を行うため、ライフサイエンス委員会及
び本作業部会の委員に対して、今後新たに取り組むべき課題についての意見を求めたところ、
ヒトの健康増進や植物のストレス耐性能の向上に関連した宿主と微生物間の共生関係の基礎
的メカニズムの解明を目的とした共生生物学に関する研究に着手すべきであるとの意見が多
くの委員からあげられた。ヒト-微生物共生系については AMED-CREST において研究推進体
制が構築されているのに対し、植物-微生物共生系における研究推進体制はやや立ち後れて
いる。
そのため、本作業部会においては、有識者からのヒアリング(参考資料 3)に基づき今後
の植物共生研究の在り方について審議を行い、その結果を踏まえ、今後の植物共生研究の在
り方を以下の通りとりまとめた。
1.植物共生研究の現状
近年のヒト腸内細菌研究の進展に伴い、ヒトに限らずあらゆる生物は周囲の非常に多くの
微生物との複雑な相互作用の結果として存在しているという「共生」概念が広く知られるよ
うになった。
植物における共生はヒトの腸内細菌より古くから知られている。マメ科の作物を輪作する
と収量が高まることが経験的に知られていたが、この原因を探る研究から根粒菌が発見され
ており、その後、基礎生物学研究所、理化学研究所、農業生物資源研究所(当時)が共同で
根粒菌の付着を制御している遺伝子群を発見したことは、植物の共生生物学を科学的に裏付
けた貴重な事例である(参考資料 3
-P6 下段)。
また、植物に養分と水分を供給する代償として、植物から炭素源を受け取って増殖するこ
とにより土壌中に巨大ネットワークを作る菌根菌は、進化論的には植物が陸に上がるのに不
可欠な存在であったとする説がある(参考資料 3
-P4 上段)。近年には、植物体に内生する
微生物「エンドファイト」が、病害抵抗性の付与や、乾燥・低温・高温などの環境ストレス
への耐性の向上に寄与する例も知られるようになってきた(参考資料 3
-P5 上下段)。逆に、
約 30 万種の陸上植物の一つ一つに特異的に緩い相互作用をしているといわれる線虫は、世界
中の作物生産の 10%以上を減少させている(参考資料 3
-P6 上段)。このように、微生物は
植物の成長に計り知れない影響を及ぼしていることがある(参考資料 3
-P2 上下段)。
我が国ではこれまで、納豆や漬物に代表される微生物による発酵を利用した食品の加工や、
平成 27 年にノーベル生理学・医学賞が授与された医薬品原料となりうる天然高分子化合物の
高効率生産など、微生物の能力を使った技術開発を伝統的に得意分野としている。これらと
次世代シークエンサーの普及によるメタゲノム情報の取得が高速化しつつある現状から、植
物のマイクロバイオーム(微生物叢)研究の推進による植物-微生物間共生関係の許容範囲・
排除機構の解明、また、微生物との共生が成立することにより植物がどれほど高機能化でき
15
るか、農作物を高付加価値化できるかを科学的に解明する機運が我が国でこれまでになく高
まっている(参考資料 3
-P9 上段)。自然環境や農業環境の植物-微生物間相互作用のメカ
ニズムを明らかにすることができれば、相互作用の制御に基づく植物生育・生産の最適化や
耕作不適地の生物学的改良にも結び付くことが期待される(参考資料 3
-P3 上下段)。
2. 植物共生研究の重要性・必要性・課題
○重要性
植物-微生物共生系において、昆虫がフェロモンを介して情報交換を行っている現象と同
様の現象が確認されている。すなわち、植物に病原菌や有用細菌が感染するに当たり分子の
授受が植物-微生物間でなされていること、また、一部の細菌では細菌細胞同士で分子を交
換し菌密度を制御していることが明らかとなっている。後者は特にクオラムセンシングと呼
ばれ、「病害を憎んで菌を憎まず」といった、殺菌によらない作物病害防除技術のアイデア
を新たに生み出した。一方で、先に述べた植物に特定の微生物が共生することによって環境
ストレスへの耐性が強くなる現象については、全身誘導抵抗性のひとつとして説明されては
いるが、ライフサイエンスとして体系的に説明するには至っていない。このような高次の生
物現象のメカニズムを解明することは、植物-微生物共生系を制御する技術の開発を促し、
環境緑化や農業生産における資源利用の効率化に向けた研究及び事業として産業的にも大き
く発展していくことにつながると期待される。
農作物の栽培において共生系の利用により窒素利用効率を高めることができれば、農業生
産コストを低減させることのみならず、農耕地が主要な排出源となっている温室効果ガスで
ある一酸化二窒素(N
2O)の排出量を低減させることにつながり、生産性の向上と環境保全の
両立に貢献しうる。また、摂食を通じてヒトの体内に入るエンドファイトの、食後の体内動
態の解明は、食品中の微生物が腸内細菌叢に作用するプロセスの理解など、人類の健康に関
する研究にも結び付いていく可能性をも秘めている。
○必要性
植物-微生物共生系の解明研究は、自国の遺伝資源の確保・整備とも密接に関連する。平
成 22 年 10 月に愛知県名古屋市で開催された生物多様性条約第 10 回締約国会議(COP10)に
おいて、遺伝資源へのアクセスと利益配分(Access and Benefit-Sharing: ABS)に関する
議定書が採択され、平成 28 年 6 月 1 日現在、92 か国が署名し 76 か国が批准している。ABS
の目的は、既に取決めがあった動物や植物の個体に加えて微生物についても遺伝資源の利用
から生じる利益の公正かつ衡平な利益配分によって生物多様性の保全を図るものである。こ
の ABS を踏まえると、今後は植物に共生する微生物、エンドファイト、土壌も全て遺伝資源
となる。
平成 22 年 8 月に発足したアース・マイクロバイオーム・プロジェクト(EMP;参考資料 3
-P8 上段)で地球上の様々な気候帯・生物圏における土壌試料の微生物叢解析が進められた
のを機に、植物の微生物叢に着目した農業分野など疾病治療以外の応用を目指す解析支援事
業がベンチャー企業を中心に欧米で進められている。
我が国では EMP よりやや早い平成 18 年から平成 22 年にわたり、農林水産省委託プロジェ
クト「土壌微生物相の解明による土壌生物性の解析技術の開発」(通称 eDNA プロジェクト)
16
が展開されている。しかし、eDNA プロジェクトは EMP と同様、土壌試料の微生物叢解析が主
眼であり、植物を含めた土壌圏の共生系の理解に向けた解析については、多様な研究資金に
より様々な研究者が独自の着想に基づいて着手している段階にある。
今後の植物-微生物共生系の解明研究は、知的財産の開発・整備・保護を伴う取り組みと
なることが予想される。したがって、我が国の高度に発達したライフサイエンス分野の研究
開発をより推進し、国内産業の国際競争力の向上を図るためには、国家戦略としてアカデミ
アと民間企業の連携を促進するとともに、膨大な遺伝資源を公共の情報として産業利用でき
る共通基盤を構築する必要がある。
○課題
植物を含めた土壌圏全体の共生系の包括的理解には、農作物生産の適正化や耕作不適地の
改良など、植物-微生物共生系の制御に基づく安全で安定的な農作物の生産技術の開発に結
び付くことが期待される(参考資料 3
-P3 上下段)。その実現のためには、共生の効果をど
のように最大限にかつ持続的に引き出すか、その技術を確立するかが大きな課題である。
植物-微生物共生系の解析を支える基盤体制としてのメタゲノミクスをはじめとした様々
なオミックス技術の適用と、それにより得られた膨大なデータを整理する人材の育成・確保
が急務である。
同時に、近年発達しつつある次世代シーケンサーを用いることにより、メタゲノムデータ
は次々と明らかにされていくことが期待されるが、存在する微生物の大多数(99~99.9%)
は培養が難しいといわれており、ゲノムデータと微生物の実体の対応に基づく研究及び社会
実装の道筋を見つける必要がある。一方で、単離培養では培養できなくとも複数の菌株を混
合すると培養できるようになるというコンソーシアム仮説は経験的によく知られている。そ
こで、微生物間共生関係の分子レベルでのメカニズムの解明を進めることにより、菌株とし
て増殖あるいは保存することをハイスループットで可能とする技術を確立させることが、そ
の後の産業利用等を推進するには避けられない課題であろう。
さらに、研究成果を社会実装する体制が食品微生物叢研究と比べるとぜい弱であり、現段
階では、国が主導して植物微生物叢の研究プロジェクトに着手したとしても、ベンチャーを
含め民間企業等の産業界を広く巻き込んだ研究協力体制が直ちに構築されることは期待でき
ない。この分野の戦略的な基盤知の集積と基盤技術の開発がなければ、更に後塵を拝するこ
ととなる。
植物-微生物共生系の研究成果が産業利用に至らなかった経緯のひとつに、効果の不確か
さに基づく使用者の不信感が挙げられる。これまでに、作物病原微生物の活動を抑制する拮
抗微生物を探索し、実験室レベルで効果が認められた菌株であっても圃場で試験をすると効
果が認められないとする事例が多数ある。また、作物生育の促進をうたった微生物資材の効
果が圃場(作付け品目・土壌)により全く認められないといった事例もよく見受けられる。
これら問題は、当時は土壌及び植物の微生物叢の全体像を把握するすべがなく、資材の効果
が認められなかった原因を特定し資材を改良する手段がなかったためと考えられる。したが
って、植物-微生物共生系の研究成果を社会実装するためには、近年急速に発展しているラ
イフサイエンスの技術を駆使し微生物叢の実体を可視化することが必要不可欠である。
17
3. 植物共生研究の今後の在り方
最新のライフサイエンス分野の研究開発の成果を駆使し植物-微生物共生系に関連するバ
イオリソースを整備することは、新規物質生産技術や農業生産環境の改善を契機として人類
の健康向上に寄与すると強く期待され、そのためには我が国に分布する多様な気候・土壌条
件における農作物に限らない様々な植物における微生物共生系の包括的理解を目指す必要が
ある。ここで、難培養性の微生物の問題は、植物や土壌といった環境分野に限らず食品や衛
生分野も含めた非常に大きな問題である。したがって、近年進展がめざましい一分子リアル
タイムシーケンシングによる遺伝子配列の決定などの新たな解析技術の展開と膨大な量の情
報を整理する体制整備の状況を踏まえつつ、産業界との連携可能性を注意深く探っていく必
要があると考えられる。先に述べたように我が国における植物・土壌をはじめとする環境微
生物叢研究と民間企業の関係は必ずしも強固ではなく、研究により新たに解明された原理に
基づいた製品を社会実装できるかは未知である。よって、まずは、微生物を抽出する、線虫
を抽出する、土壌成分を特徴付けるというように階層的にサンプルを分け、可能な限りメタ
情報を分類・収集し、微生物叢メタゲノム情報とを統合的に組み合わせていくといった、要
素還元的に科学的知見を積み重ねていくことが植物-微生物共生研究の当面の在り方と考え
られる。
参考資料 3 「今後の植物共生研究の在り方について」 及び
「微生物・植物・土壌等間の共生および相互作用の包括的解明と利用技術開発」
(平成 28 年 5 月 23 日 基礎・横断作業部会 倉田のり委員提出資料)
参考資料1-P1
○参考資料 1:老化研究の方向性について
老化研究の方向性について
研究振興局 ライフサイエンス課
1.老化研究の検討の背景
2.近年の老化研究の著しい発展
3.我が国や欧米の老化研究への取組
4.老化研究における代表的日本人研究者の業績と
今後期待できる研究成果
5.今後の老化研究の方向性
1参考資料1-P2
1.老化研究の検討の背景
2社会的背景
① 高齢化社会対策は世界的課題! ○世界的に急速に高齢化を迎える中、健康寿命(日常生活に制限の ない期間)の延伸は喫緊の課題となっており、高齢者の健康維持・ 疾病予防等を実現する技術の 開発が期待されている。 ○我が国が最も急速に高齢化が進むことが予測されており、世界に先駆けて超高齢化社会対策に取り組まなくてはならない。 data source: UN, World Population Prospects: The 2010 Revision Annual Report on the Aging Society FY2014
40 30 10 20 0 1950 1990 2010 2060 (%) (Year) 世界の高齢化率 ③ 健康寿命を延ばす必要! ② 増加していく社会保障費への対策が必要! ○ 健康寿命は延びているものの、平均寿命と健康寿命との差は 2013年のデータで男性9.02年、女性12.40年とかなり大きい。 ○健康寿命を延ばし、平均寿命と健康寿命の差を縮めることは、 個人の生活の質の低下を防ぐ観点からも、社会的負担を軽減する 観点からも重要。 ○社会保障給付は、高齢化により今後も急激な増加が見込まれる。 ○特に、医療・介護分野の給付は、2012年度から2025年度にかけて、 GDPの伸び率は1.27倍なのに対して、医療1.54倍、介護2.34倍 とGDPの伸びを大きく上回って増加していくと見込まれており、医療・ 介護の費用を減らす取組が必要。 社会保障給付は、高齢化により今後も急激な増加が見込まれ、団塊の世代全員が75歳以上となる2025年に 向かって、特に医療・介護分野の給付は、財源調達のベースとなるGDPののびを大きく上回って増加していく。 健康寿命と平均寿命の推移 3
参考資料1-P3
健康寿命の延伸による介護費の削減についての推計
推計の前提となる仮定 ○仮定1 予防による要介護者の減少 ・介護予防が効果を発揮し、2020年から2050年まで自然体 で想定される要支援・介護者数に対して、毎年1%要介護認定 が「2段階軽度化」されると仮定 ・例えば、要介護5は要介護3に。要支援2・要支援1は非該当 とし、要支援・介護者数から削減 (参考)要介護認定の区分(重度の順) 要介護5⇒要介護4⇒要介護3⇒要介護2⇒要介護1⇒ 要支援2⇒要支援1⇒非該当 前田展弘(2015) ニッセイ基礎研レポート2015-02-20 健康長寿の社会的効果の試算~2020~2050年の介護コスト変化シミュレーションの結果 ① 介護予防による介護費削減についての推計 仮定:介護予防により要介護者が減少。またそれに伴う寿命延長による高齢者の増加を考慮。 ○高齢者人口が増えれば、その分相応に要支援・要介護者が増え、コスト増加につながると考えられるが、 その増加分よりも介護予防による削減効果が上回り、年平均で社会全体の介護費を約1.7兆円削減できる。 ○仮定に基づく推計ではあるが、介護予防により、健康寿命が延伸されると介護費の削減が期待される。 ② 医療費について ○要介護者は非認定者よりも医療費が高額で、かつ要介護認定区分が重度な者ほど高額となることが わかっており、介護予防により、介護費だけでなく、医療費も削減されることが期待できる。 要介護状態になる前の事前介入が重要! ⇒老化制御による健康寿命延伸により、社会保障費削減が期待される 橋本修二(2011) 厚生労働科学研究費補助金 健康寿命における生活習慣病対策の費用対効果の推定 ○仮定2 寿命延長による高齢者の増加 ・介護予防の効果により、長生きする者が増えるという想定 から、80歳以上の人口が増加することを仮定 ・5年前に要支援1・要支援2から減少させた人数を80歳以上 の人口に加える(5年前に要支援の状態にならなかった者は、 その5年後も確実に生きていると仮定) 4 疾患 健常 A:健康寿命の延伸 B:最長寿命の延伸 ①:病気になってからの寿命 (老化制御をしない場合) ②:病気になってからの寿命 (老化を制御した場合) QoL(生活の質) 年齢 ヒトの老化遅延により、健康寿命を延ばすことが可能に 科学的基盤に立脚し た老化・加齢遅延法 の適用 ○近年の老化遅延研究の著しい発展により、線虫、マウス等のモデル動物における遺伝子変異や食事制限 等による寿命の延伸が報告されており、ヒトの老化を遅延し、健康寿命を延伸することも夢ではなくなって いる。 ○モデル動物(線虫、マウス)での老化遅延法の研究成果 ・健康寿命、最長寿命ともに延伸 ・健康寿命の延伸幅(A)は、最長寿命の延伸幅(B)より有意に大きい 「要介護」を避け、肉体的にも、精神的にも 健康な老後を実現 老化の遅延による 健康寿命の延伸・要介護期間の減少 モデル動物の研究成果のヒトへの拡大 5 ※この目的に照らして、この資料においては老化を 「加齢による肉体的・精神的機能低下」と定義する。参考資料1-P4 組織特異的な遺伝子操作によるマウスでの老化遅延•寿命延長 (サーチュインを脳特異的に発現させたBRASTOマウスの例) 中間寿命 792日⇒895日 16.4%延長 Satoh et al., Cell Metab. 18: 416-430, 2013 メス オス 生 存 率 ( % ) オス+メス 生 存 率 ( % ) 年齢(日) 年齢(日) 年齢(日) Tg:BRASTOマウス WT:対照群マウス ヒトの老化遅延により、健康寿命を延ばすことが可能に 参考資料① マウスでの研究成果1 6 ワシントン大学 今井眞一郎教授提供 中間寿命:集団の全個体の50% が死亡したときの寿命。中間寿命 を延長させるためには、老化に伴 う疾患等の問題の率を減らすこと が必要であることが知られており、 中間寿命の延長は健康寿命の延 長を反映 中間寿命 849日⇒926日 9.1%延長 中間寿命 835日⇒926日 10.9%延長 最大寿命 1051日⇒1091日 4%延長 最大寿命 1095日⇒1113日 1.6%延長 最大寿命 1095日⇒1113日 1.6%延長 中間寿命の延長が最大寿命の延長を大きく上回っている(メス:4倍、オス:6倍、両方:7倍) 生 存 率 ( % ) BRASTOマウス(遺伝子操作マウス)の中間寿命の延長が健康寿命の延長を示す例 ヒトの老化遅延により、健康寿命を延ばすことが可能に 参考資料② マウスでの研究成果2 7 ワシントン大学 今井眞一郎教授提供 ○老齢BRASTOマウスは、夜間活動期に対照群(遺伝子操作を受けていない正常なマウス) に比べて身体活動量、体温、酸素消費量の上昇を示す。 ○老齢BRASTOマウスは、対照群に比べてよりよい睡眠をとっている(睡眠の質・深さを示す 指標であるデルタパワーが高く保たれる) ○老齢BRASTOマウスは、対照群に比べて骨格筋の構造、特にミトコンドリアの構造が若い頃 に近い状態に保たれている。 ○老齢BRASTOマウスは、対照群に比べてミトコンドリアの機能を保つための遺伝子の発現も 高く保たれている。 ○老齢BRASTOマウスの骨格筋が若い状態に近く保たれているのは、視床下部から交感神経 系を通じて刺激を受けているからである。 ○老齢BRASTOマウスでは、対照群に比べて、ガンによる死亡が有意に遅れて起こる。
参考資料1-P5 A:食餌制限による健康寿命の延伸 B:食餌制限による最長寿命の延伸 0 5 10 15 A B 日 数 0 5 10 ① ② 日 数 ①:病気になってからの寿命(食餌制限をしない場合) ②:病気になってからの寿命(食餌制限をした場合)
食餌制限(断続的絶食)による健康寿命の延伸及び運動能低下の遅延
(線虫の場合)
0 50 100 150 200 250 300 350 400 0 20 40 60 80 100 120 0 2 4 6 8 101214161820222426283032343638404244 運 動 能( 相 対 値) 生 存 率 日数 * * 運動能自由摂食 ■ 食餌制限 ■ 生存率自由摂食 食餌制限 ヒトの老化・加齢遅延により、健康寿命を延ばすことが可能に 参考資料③ 線虫での研究成果 京都大学 西田栄介教授提供 運動能:一定時間に動いた距離 (自由摂食18日目を100とする) ○単に平均寿命や最大が延びるのではなく、 運動能低下も遅延している⇒健康寿命の延伸 ○最大寿命よりも健康寿命が有意に延伸 82.近年の老化研究の著しい発展
9参考資料1-P6
近年の老化研究の著しい発展①
~ヒトの老化を遅らせ、寿命を延ばすことも夢ではないことを示唆~ 長寿遺伝子の発見 10 ○最近の研究により、老化研究は、記述的な色彩の強い学問体系から、分子生物学・ 分子遺伝学的アプローチを基盤とし、進化的に保存されている制御メカニズムを明らかにする ことを目的とした学問体系に発展を遂げている。 ○進化的に保存され、老化・寿命制御に重要な役割を果たしている制御因子、シグナル伝達系 が数々特定されてきている。 ○1980年代末から、酵母、線虫、ショウジョウバエ、マウス・ラットにおける単一遺伝子の変異 による寿命の延伸が報告されており、この発見を契機として、① 成長ホルモン/インスリン/ IGF-I(Insulin-like Growth Factor-I )シグナル伝達系、 ② mTORシグナル伝達系、 ③ サーチュインファミリー が、進化的に保存された重要な老化・寿命制御系として確立している。 11 ○各シグナル伝達系、制御因子の研究の一方、老化は個体の統合的な現象であり、その統合的制御を 担う機構の解明が次の課題であり、ヒトを含めたほ乳類の老化・寿命のメカニズムを理解することを目標と して、線虫、ショウジョウバエ、マウスなどの多細胞生物のモデルを用いて、組織・臓器間ネットワーク、 制御システムの階層性を理解する流れが強まっている。 ○老化・寿命制御において、中心的な役割を果たす組織・臓器は存在するのか、そのような「コントロール・ センター」と呼ぶべき組織・臓器は、他の組織・臓器とどのように連絡をとることで全身の老化過程を制御 するのか、そのようなネットワークを制御する主要な因子、シグナル伝達系は何かといったシステムの階層 性の解明が次の大きな課題のひとつとされている。 ○2013年、米国ワシントン大学・今井教授らのグループが、ほ乳類における老化・寿命の制御中枢 「コントロール・センター」が、脳の視床下部に存在すると報告し、新たな突破口を開いた。 老化制御の中枢、統合的な老化を担う機構
近年の老化研究の著しい発展②
~ヒトの老化を遅らせ、寿命を延ばすことも夢ではないことを示唆~ サーチュイン 〇NAD依存性酵素のサーチュインの活性を高めることで、老化遅延・寿命延長の効果を得る研究が精力 的に行われている。 ○NAD合成を賦活化することによってサーチュインの活性を高める方法は、主にNMN(Nicotinamide Mononucleotide)、NR(Nicotinamide Riboside)といったNAD合成の中間体を中心に研究が進んでいる。○米国ワシントン大学・今井教授らのグループにより、NMNに関しては、マウスにおいて顕著な抗老化
参考資料1-P7 1987~1997 慶応義塾大学医学部 微生物学教室 培養細胞を用いた 細胞老化研究 マサチューセッツ工科大学 生物学部 サーチュインのNAD依存性 脱アセチル化酵素活性の発見
(Imai et al., Nature, 2000)
1997~2001
2001~2016
ワシントン大学医学部 発生生物学部門
脳(視床下部)は老化のコントロール•センターである (Satoh et al., Cell Metab., 2013)
脂肪組織は老化のコントロール•センターを制御している (Yoon et al., Cell Metab., 2015)
Nicotinamide Mononucleotide (NMN)は抗老化に働く (Yoshino et al., Cell Metab., 2011, 及び最新の研究)
2016~2017 慶應義塾大学医学部 ワシントン大学医学部 国際共同研究 健常人を対象とした 世界初のNMNの臨床研究 (抗老化作用の検討) 個体老化の制御因子を 見つけるべく渡米 独立し、老化•寿命研究を 更に促進 ヒトへの 臨床応用へ
近年の老化研究の著しい発展 具体例②(今井 眞一郎 ワシントン大学教授の業績)
12 細胞老化、老化細胞研究の新展開 13 ○細胞は一定の分裂増殖後、不可逆的に分裂を停止(この現象を細胞老化といい、分裂を停止した 細胞を老化細胞という)するが、テロメア長の短縮がこの分裂寿命を規定している因子であることが 解明された。 ○老化細胞の蓄積が個体老化の原因と考える細胞老化仮説が提唱された。 ○老化細胞は生体内で長時間存在し続け、加齢とともに体内に蓄積し、老化細胞は炎症性サイト カインなどを分泌していることが明らかになっており、加齢に伴い蓄積する老化細胞が、臓器•組織の 機能低下•障害を引き起こし、多様な加齢性疾患をもたらすと考えられている(この現象をSASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype)という) 。
○マウスでは、老化個体での老化細胞の除去により、臓器•組織での機能改善が報告されている。 (あらかじめ遺伝子操作を行い、老化細胞が個体内にできた時点で除去されるようなメカニズムを 組み込んでいる)
参考資料1-P8 若い個体での 正常細胞群 老化個体での 老化細胞の出現 老化個体での 老化細胞の除去 臓器・組織での 正常機能の維持 臓器・組織での 機能低下・障害の出現 臓器・組織での 機能改善