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福祉教育におけるメディアリテラシーとコミュニケーション能力の向上に関する研究 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)福祉教育におけるメディアリテラシーとコミュニケーション能力の向上に関する 研究 キーワード:福祉教育、福祉理解、総合的な学習の時間、コミュニケーション、メディアリテラシー. 発達・社会システム専攻 徳永 恵美子 の変容は、能力がつく・明るくなるなどの変容に比べ変 1概 要. 容率が高い。自己変容の方向性は基本的には以前の状態. 本研究は以下に述べるように、高校生に福祉教育の導. と同じ方向のへの強化的な変容であること。」を明らか. 入でテレビメディアを使った実験授業を行い、生徒の福. にしている。しかし、高校生のボランティア活動継続要. 祉理解、コミュニケーション能力、メディアリテラシー. 因についての報告は見受けない。. が向上することを検証した。この検証によって、現代の. メディアを使った学習についての文献は極めて少ない。. 高校生に必要な福祉理解やコミュニケーション能力を効. メディアによる学習と教師の役割は、「授業を教授・学. 果的に推進する促進要因について明らかにしようとする. 習システムとして捉え、教師の役割を実践者・アクター. ものである。その際、福祉教育は「総合的な学習の時間」. として、設計者・デザイナーとして重視されるだけでな. (1)で実施した。. く、評価者としての技術も求められるようになったこ. 先行研究については、福祉教育は一番ケ瀬康子、大橋. と」がある。また、メディアを視聴者の立場から批判的. 謙策、村上尚三郎がその代表といえる。しかし、いずれ. に読み解くという、メディアリテラシーの課題は、「メ. も具体的な実践から理論を導いていくという視点が欠け. ディアリテラシー」の研究や、「メディアリテラシーの. ている。阪野が児童・生徒の福祉意識については調査を. 実践事例」が報告されている。. 行った結果、「中学生より高校生、男子より女子の方が. 「総合的な学習の時間」は、中留が今日の「総合的な. 関心が高いこと、教科書は説明であって、社会福祉に関. 学習の時間」創設の背景、具体的な内容や方法、実践プ. する学習希望は少ないこと、学校で福祉教育を推進する. ログラムなど、学校改善を効果的に促進するための諸条. 場合は、学習への動機づけが重要な課題であること」を. 件を総合的に明らかにした。また、「総合的な学習の時. 明らかにした。. 間」が提唱する「生きる力」を育むという視点から、そ. ボランティア活動に関する先行研究は、教育現場の福. の重要な内容であるコミュニケーション能力、特に論理. 祉教育とボランティア活動の意義と方法について明らか. 的にこれを行う能力の育成が大きな意味を持つと、具体. にされている。若年者を対象としたものの中では、若い. 的にコミュニケーション能力を「生きる力」のスキルと. 世代は「ボランティア活動から自己の人間的な成長や人. して明示した。. との出会いという報酬を得ることを良しとする捉え方を. 文部省は「総合的な学習の時間」の実践事例を研究開. していること」を明らかにしている。ボランティア活動. 発校を含め、各学校の教育(環境・情報・福祉・進路な. の動機に関するものでは、総務庁や内外学生センターの. ど)の取り組みを提示した。しかし、高等学校の事例は. 調査が詳しい。いずれもその動機については、「困って. 極めて少ない。総合学科での実践が多く見受けられ、職. いる人の手助けがしたいから」がもっとも多い。. 業選択との関連で実践されるか、各学校の『科』の特徴. また、福祉教育やボランティア学習の結果としての態. を生かした事例が大半を占める。福祉教育を「総合的な. 度変容についての研究では、東京ボランティアセンター. 学習の時間」で行うことを推奨するものに、いじめ、不. の高校生を対象とした調査で、「ものの見方・他者理解. 登校という生徒自身の福祉の現状から、子どもの福祉を.

(2) 守り、子どもが自ら課題を見つける福祉教育改革」を実. 必要に応じて事例検証を実施した。尚、今回の研究にお. 践することの重要性について述べているものがある。. いて使用するのは、OHP とテレビ番組のビデオテープ. しかし、今回のようにテレビ番組のビデオテープを. である。検証内容は、高校生の①福祉理解度、②コミュ. 使い高校生を対象に、「生活体験」、「コミュニケーショ. ニケーション能力、③メディアリテラシー、③教師の発. ン」、 「テレビメディア」の今日的課題から、現代高校生. 問である。. の福祉教育のあり方を研究した報告はない。高度情報化. まず現代の高校生であるが、生活体験については南里. 時代を生きる高校生にメディアを使って福祉教育を実践. (1). することは、今後の福祉教育の方向性を示すものとして. 下」であると指摘している。今の高校生たちはすでに情. 意義ある研究であると考える。. 報化社会が進展した時期を過ごしてきている。テレビの. ここで簡単に本論文の構成について述べておきたい。先. 視聴を中心とした時間、塾などの学習に1日の多くの時. ず第1章では学校における福祉教育の意義と課題につい. 間を費やし、生活体験や生活スキルを獲得する、あるい. て、福祉教育の歴史や概念を述べ、現代の高校生を取り. は学ぶ時間は著しく減少した。今ではテレビ番組によっ. 巻くコミュニケーションの有り様や、メディアとの関係. て料理や掃除の仕方をおぼえたという生徒も多く、生活. と高校生の福祉認識について検討した。なおその際、福. スキルも親からではなくテレビをみて身につけるような. 祉教育と「総合的な学習の時間」との関係が重要と思わ. 時代になった。. れるので、第3節でそのことを見てみた。. が、「子どもの生活体験の衰退は子どもの生活力の低. 高校生は「体験」の減少に加え、コミュニケーション. 次に第2章では高校生におけるボランティア活動を取. 能力(2)も以前のようではなくなった。地域(学校外). り上げる。言うまでもなく福祉教育とボランティア活動. でのコミュニケーションが減少し、一日の大半を彼らは. の関係は密接である。1節で福祉教育と体験学習の現状. 学校で過ごす。その結果、学校での友人関係がますます. にふれ、2節では高校におけるボランティア活動の調査. 重要なものになってきた。高校中退の理由に「友人関係. 結果を報告した。そして、3節で福祉教育とボランティ. のトラブル」をあげる者たちが増えてきたことは、その. ア活動のあり方などその位置付けを行った。. 1つの証拠であろう。友人関係に気を使う彼らのコミュ. 第3章では実際の教育現場における「福祉教育の実. ニケーションは、メールが中心となっている。直接、顔. 践」を取り扱った。現在の高校生にとって、テレビ番組. を合わせて話すよりメールの方が言いたいことを伝えや. のビデオテープを利用した授業形態は極めて有用である。. すいからである。. そこで実際のビデオテープを使った福祉授業のプログラ. そのような高校生がボランティア活動などに関心がな. ムを考え、その実践過程と分析、調査結果等を提示した。. いかといえばそうでもない。今の高校生は無気力、無関. なおその際には、教師の発問や生徒のメディアリテラシ. 心等といわれるが、なにかのきっかけでボランティア精. ー、コミュニケーション能力、福祉理解の問題にも留意. 神とでもいうものを発揚し、自分もできるのだという成. した。そして第4章で、これまでの経過を踏まえた考察. 就感のような感覚を得るという可能性をもっている。. を行い、最後に高校生の福祉教育についてのまとめを行 った。. このようなボランティア活動への動機づけも福祉教育 として重要である。そこで福祉教育の導入にテレビ番組. 検証方法であるが、対象は筆者の勤務する高等学校の. のビデオテープを使い、高校生のメディアリテラシー、. 2年生(普通科クラス男女46名)に授業計画案を基に. コミュニケーション能力、福祉理解について検証するこ. 実験授業を行った。OHP やビデオテープを使って福祉. とにした。その際に、今日の「総合的な学習の時間」3). 教育を実施し、地域での調査、インタビューなどを通し. で実施した。. て高校生の福祉理解や、コミュニケーション能力、メデ. ところで、テレビ番組のビデオテープを用いた理由で. ィアリテラシーの状況についてアンケート調査を行い、. あるが、高校生にとってテレビは生まれる以前からあっ.

(3) て慣れ親しんだモノとして受け入れてきたからである。. 次に高校生にとってコミュニケーションとしてのメー. テレビを見て掃除の仕方や料理の方法を覚えるという、. ルについてだが、これは気軽なコミュニケーションとし. 今日のテレビ番組の内容も使い方によっては試行的に福. て頻繁に利用されている。学校で長時間生活する高校生. 祉教育の導入として使うことも可能なのではないかと考. にとって直接コミュニケーションを図ることは、友人関. えたからである。その際、「教師の発問」に留意した。. 係に大きく影響するのである。 このような環境のなかで、. 特に福祉教育の導入においては、ビデオテープを単に見. 生徒が地域社会に出て学校以外で多くの他者と関わりな. せるだけでは生徒は日常の娯楽として受け取る可能性が. がらコミュニケーションの機会を増やすことが、大事で. ある。それを教師が「発問」をすることによって福祉教. あろう。但しそのあり方等の詳細については今後の課題. 育に転換させ、生徒に福祉の動機づけを教育的に行うこ. としたい。. とが必要になってくる。情報化社会が浸透した今日にお. 高校生の福祉理解については、コミュニケーションと. いて、テレビ番組の内容によっては教育的効果を見通し. 同じ結果であった。地域に出て調査やインタビューをす. て実施することは、メディアを使った学習プログラム開. ることで、生徒の福祉理解は明らかに向上した。これは. 発や教材開発としても価値あるものと思われる。. 地域で調査する過程で、高校生が福祉の知識と現実のギ. 一連の授業経過とその結果、メディアリテラシーにつ. ャップ認識した結果によるものであろう。生徒たちは実. いては、「ビューティフルライフ」を見た後に、教師の. 際に車椅子をレストランに持ち込んだ。また、自動車メ. 発問を契機として娯楽であったドラマの内容が「福祉」. ーカー各社を訪問して、その違いを調査した。さらにコ. に方向づけられることが明らかとなった。生徒が実際に. ンビニエンスストアーの通路幅や商品が陳列されている. テレビを視聴し教師の発問を聞くことで、福祉をより深. 棚の高さや、障害者用の駐車場、ストアー入り口の段差. く認識していくと同時に、メディアリテラシーも高まっ. 等も調査した。こうした過程を経て彼らの福祉の認識は. ていったようである。さらに地域での調査、インタビュ. 向上したのである。このことは、アンケート調査の自由. ー等の過程で、学習効果が上がることもわかった。地域. 口述に「福祉について理解ができた、もう一度福祉教育. での実地調査とその研究の過程で、福祉の現状を生徒が. を時間をかけて実施したい」等という反応が多かったこ. 知ることからみて、いかに地域に出向くことが重要であ. とからも理解される。. るかが理解されよう。. いずれにしろ高校生の福祉教育による福祉理解には、. また高校生とテレビとの関わり方についてであるが、. 学校という限られた場所(教室)の中だけでは限界があ. 彼らはテレビを見て画面の内容を一瞬のうちに理解する. ることがわかった。生徒が福祉について理解を深めてい. ことができる。 したがってこのような高校生にとっては、. くためには、地域に出向いて実際に福祉の実態を体験す. 前述したように教師の発問次第では福祉教育にテレビメ. ることがやはり重要である。これは現代の高校生の体験. ディアを使うことは有効であるといえる。. 不足や、メディアに囲まれた環境、学校以外の他者との. 高校生のコミュニケーション能力については、彼らは. コミュニケーション不足、ボランティア活動への関心、. 他者の意見は良く聞くが、自分の意見は抑えている。し. という現状から考えても妥当なことであろう。これから. かし、グループ学習によって、他者の意見も聞くが自分. の福祉教育の方向性として域社会との連携が大切である. の意見も言うという意識が芽生え、グループの中の自分. ことを、改めてここで強調しておきたい。. にも意識を向け始めた。例えば他人の態度や表情、人の. なお第1章でも見たように、テレビメディアを積極的. 考えを読み取ろうとすることも、地域での調査やインタ. に利用することは福祉理解に対しては明らかに有用であ. ビュー活動がきっかけになっている。いずれにしろ生徒. る。また福祉教育に限らず、一般的にコミュニケーショ. のグループ活動は福祉教育には欠かせないことが明らか. ン能力は必要であるが、これについても本論で行った授. になった。. 業、【福祉とは何かについて認識する→テレビ番組を見.

(4) て問題題を考える→課題(テーマ)ごとにグループに分. ことがあれば幸いである。. かれ、フローチャートに問題を構造化する→課題に基づ き、調査研究を行いまとめる→福祉の課題について理解. 〔引用文献〕. し、メディアを使うなど様々な方法で発表し自己表現が. (1)南里悦史著「子どもの生活体験と学・社連携」- 生活. できる。→活動を通して知ったことを検討し、振り返り. 環境と発達環境の再構築-光生館 1999 年 11 月. をして自己評価】を行う】といった学習活動の中で、そ. (2)天野正輝編著「教育課程重要用語 300 の基礎知識」明. れぞれに関連しあいながら結果的に高まっていったもの. 治図書 1995 年 5 月 *「コミュニケーション能力を有効. と思う。この点についてはメディアを使った授業という. かつ正確に実現するために必要に諸能力」と規定した。. ことで、基本的にはメディアリテラシーについても同様. (3)中留武昭研究代表「「総合的学習」のカリキュラムマ. であろう。最後に「総合的な学習の時間」についても前. ネジメントに関する理論的・実証的考察」文部省科学研. 述したような問題がないわけではないが、しかし、地域. 究費基礎研究九州大学大学院人間環境学研究科 2000 年. とのつながり、社会教育をも展望した学習のあり方が、. 3 月 *「生徒が体験的問題解決的な学習」のこと. 福祉教育にとって最も有用であることは論をまたない。. 〔参考文献〕. 以上、本稿で論じたことは、立論の仕方、調査の方法、. 1 水野博介著「メディア・コミュニケーションの理論」. あるいは結論において、それほど目新しいものではなか. 学文社 1998 年 4 月. ったかも知れない。しかし、これからの高校教育、高校. 2 吉見俊哉・水越伸著「メディア論」放送大学教育振興. 生の福祉教育のあり方を考えるときには、現場に即した. 会 1997 年 3 月∼2000 年 2 月. 実践に基づくデータと論理性はもちろんのこと、単独の. 3 中留武昭著「総合的学習の評価としてのポートフォリ. 研究分野だけではない「総合性」が必須である。. オ(1) 」学校経営第一法規 2000 年 9 月号*すぐれた. 従来の研究は、ややもすると一つ一つの分野を対象と した研究が主であった。これまでの研究・実践を踏まえ ながら、それらを整理し実際に応用してみるという教 育・学習活動もなされるべき時期に来ているのではない か。本論は筆者が勤務する高校を対象にして、(福祉教 育の歴史と現状→テレビメディアの利用→課題発見→調 査・研究→評価(アンケート)→活動への動機づけ(ボ. コミュニケータの素質、能力は「①自らを理解し、理解 してもらえる、②情報を明確に具体的に伝達する、③多 様な媒体を使ってコミュニケートする、④自らのニーズ や期待、意見などを表現する」などいくつかをコミュ ニケーションスキルとして用いている。 4 滝沢武久著「話しあい、伝えあう」-子どものコミュ ニケーション活動- 金子書房 1999 年 4 月 5 山縣文冶編著 別冊発達 25「社会福祉法の成立と 21. ランティア)という実践活動を行うことで、高校生の福. 世紀の社会福祉」 ミネルヴァ書房 2001 年 4 月. 祉理解やコミュニケーション能力、メディアリテラシー. 6 堀洋道監修「心理測定尺度集Ⅱ」サイエンス社 2001. の向上を目指そうというものであった。. 年6月. このような活動を実際に行ってみて、授業における教. 7 国立教育研究所「生涯学習におけるメディア・リテラ. 師の「発問の方法やあり方」が極めて重要であるという. シーに関する総合的研究」 (学校教育・中間報告書). ことを改めて認識させられたが、その意味でも入念な授. 国立教育研究所 生涯学習研究部 2000 年 3 月. 業の準備が大切であった。いずれにしろ一連の活動を実. 8波多野誼余夫・稲垣佳世子著「知力の発達」岩波書店. 際の現場で実験的・計画的に行い、データを収集すると. 1977 年 7 月. 同時にいくつかの仮説を検証し確認し得た点が、本論の. 9阪野貢著「福祉のまちづくりと福祉教育」文化書房博. 特徴と言えよう。言うまでもなく、不十分な実践、考察 であるが、このような試みが多くの教育現場で行われる こと、そしてその際に小論の考察がいくらかでも役立つ. 文社 1996 年 10 月 10 田代三郎著「高校生」 岩波書店 1970 年 4 月.

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