日本と中国における鉄筋コンクリート造建物の耐震設計法の比較研究 [ PDF
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(2) の対策として1971年に学会の鉄筋コンクリート構造計. が頒布され,中国に於いて様々な建築構造設計規範に全て極. 算規準の改訂と同時に建築基準法施行令の鉄筋コンクリー. 限状態設計法を採用することが規定された。1990年 1 月. ト造関係規定が改正された。この後1981年に「新耐震設. 1 日に、 「建築構造設計統一規範」に対応する「コンクリート. 計法」が発表され,建築物の固用周期により設計用地震力を. 構造設計規範」GBJ10-89 が施行された。. 変化させる概念や、建築物の「耐力」だけではなく, 「靭性」. 2 構造規定の比較. 等に関する計算規定が導入されることになった。1995年. 本節では、日本と中国の鉄筋コンクリートラーメン構造に. の兵庫県南部地震では十勝沖地震の災害が再現され、既存不. 対する設計用地震力、地震時の建物の変形量に関する層間変. 適格建築物への対策が大きな社会問題となった。同時に、一. 形制限、靭性率などに関する構造規定の比較を行う。. 部のピロティ-建築物を除けば、 「新耐震設計法」で設計され. 2.1 設計地震力. た建物の被害率は小さく、 「新耐震設計法」の健全性が実証. (1)地震時の層せん断力(日本). された。現在、日本建築学会の「鉄筋コンクリート構造計算. 「建築物の構造規定 ―建築基準法施行令第三章の解説. 規準」は、許容応力度設計法を主体として、終局強度設計法. と運用―1997年版」の第 88 条:建築物の地上部分の地. の考えを取り入れた形式で取りまとめられている。また、終. 震力においては,当該建築物の各部分の高さに応じ,当該高. 局強度設計法による耐震設計法に関する日本建築学会指針. さの部分が支える部分に作用する全体の地震力として計算. が、建築設計者により、参考とされている。. するものとし,その数値は,当該部分の固定荷重と積載荷重. 中国建国前、建築技術の発展は非常にバランスがとれてい. との和 Wi(多雪区域においては,更に積雪荷重を加えるもの. なかった。近代的な建築技術に基づく構造設計はいくつかの. とする)に当該高さにおける地震層せん断力係数を乗じて計. 大都市に限られていた。また、鉄筋コンクリート構造の建設. 算することになっている。この場合において 地震時の層せ. 例も少なかった。中国建国初期の「建築物構造設計臨時標準」. ん断力 Qi は 次式によって計算する。 i. と1955年の「鉄筋コンクリート構造設計臨時規範」は、. Qi=Ci・. 当時ソ連の規範中の終局強度設計法をもとに、制定されたも のである。50年代末、中国の現状を考慮に入れた中国独自. !. Wi. (2.1). j =i. (2)水平地震作用代表値(中国). の建築構造設計規範を編成することが始められた。これらの. 「中華人民共和国国家標準 建築耐震設計規範 GBJ11−. 規範の作成は、中国建築科学研究院という日本建築学会に類. 89」の第 4.2.1 条:底部せん断力法により、建築物の水平. 似した学術団体が担当している。1966年に、中国で初め. 地震作用標準値は次式によって計算することになっている。. ての「鉄筋コンクリート構造設計規範」 (GBJ21−66)が頒布. FEK=α1・Geq. された。この規範には 当時進んでいた多係数極限状態設計. Fi={G ・ FEK(1−δn) {Gi・Hi/ΣGj・Hj} ΔFn=δn・FEK. 法が採用された。更に1974年に、単一安全係数極限状態 設計法をもとに、「鉄筋コンクリート構造設計規範」. (2.2) (2.3) (2.4). 各記号の意味は次のとおりである。. (GBJ10-74)とそれに関する専門的な規定が制定された。1. FEK:構造総水平地震作用代表値. 976年に、中国の唐山市で兵庫県南部地震の強さを上回る. α1:構造の基本振動周期,地盤類別,震源距離による. ものであったと言われる直下型地震が発生した,中国の耐震. 水平地震影響係数。下限値α1 は最大値αMAX の 20%. 構造技術はこの地震により啓発されたところが大である。震. 以上であること。. 災後,中国は耐震構造設計法の開発に関する実験的研究に力. Geq:構造等価総重力荷重(総重力荷重代表値の 85%). を入れ,荷重・材料性能と構造部材に関する研究が行われ,. Fi:質点 I の水平地震作用代表値. 外国の先進な技術と規準を参考にして,いろいろな耐震規定. Gi,Gj:質点 i,j の重力荷重代表値. が制定された。更に1984年に「建築構造設計統一標準」. Hi,Hj:質点 i,j の計算高度. 53-2.
(3) δn:頂上部分付加地震作用係数. 付加地震作用係数を用いて、水平地震作用代表値を算定する。. ΔFn:頂上部分付加地震作用. しかし、構造の基本振動周期は、1.4 倍の地盤特性周期値以. (3)計算式の比較. 下であれば、頂上部分付加地震作用を考慮しなくてよいとさ. (ア) 中国の耐震設計のレベル. れている。. 設計の目標として、中国の耐震設計では、地震時の建物の. 2.2 建物の層間変位の規定. 挙動を次のように規定している。すなわち、. 中国では、鉄筋コンクリートラーメン構造及び有壁架構に. ①小震不壊:小さいな地震(常遇地震)では、破壊しないこ. ついては、比較的頻度の多い中地震に対して、構造の地震時 における変形の検討が必要である。層間弾性変形Δus は、次. とを目標として、弾性設計を行う。 ②中震可修:中規模の地震では、被害が補修可能な範囲に止. 式で求められる。. まることを目標とする。設計手法としては、構造規定によ. Δue =VFj/ΣD. (2.5). る検討のみで、特別な計算は行わない。. Δue/h≦〔θe〕. (2.6). ここで、. ③大震不倒:大地震の時には、建物が倒壊せず、建物内の人 命の安全を確保することを目標とする。弾塑性設計を行い、. VFj:層地震せん断力。. 変形性能の検討を行う。. 〔θe〕 :層間変形角。ラーメン構造に対する制限値は. (イ) 地盤の分類方法と地震距離。. 1/400 である。. 日本では、地盤の類別が地層構成又は地盤周期等により、. h: 層高さ. 3種類に分けられている。中国では、まず、岩盤と土壌構成、. 日本では、1次設計用の地震力に対して、建物各階の層間. あるいは土層せん断波速により、地盤の一般的な類別を決め、. 変形角γi が 1/200 以下となることである。各層の層間変形. さらに、建設現場の岩盤の敷地地盤土厚により、敷地地盤類. δi 及びγi は、建物各層の横力分布数値(D 値)が与えられ. 別は4種類に分けられている。. ている場合には、次式で求められる。. 中国では、遠距離の地震が建物の特性周期値へ及ぼす効果 も考える。すなわち、近震と遠震が分けられている。地震の. δi=Qi/(ΣD (ΣDi・12EK0/hi2). (2.7). γi=δi/hi. (2.6). ここには、Q Qi:1次設計用 i 層せん断力. 距離によって、地震時の地盤特性周期値も違っている。. hi:i 層高さ. (ウ) 積載荷重と活荷重 中国では、活荷重というのは、積雪荷重、積埃荷重、屋面 積載荷重、階層積載荷重、等価均一分布荷重による階層荷重. ΣDi:i 層の D 値の総和 3 地震層せん断力と水平地震作用代表値の算定. 荷重(図書館など)である。設計地震力を計算する時の構造. ここでは、 鉄筋コンクリート5階建て、 x 方向7スパン、. 等価総重力荷重は、固定荷重と活荷重組み合せ係数×活荷重 との和の 85%である。日本では、積載荷重の種類は 床スラ. y 方向3スパンの均等ラーメン建物を例にとり、日中の耐震. ブ用、ラーメン用と地震用の三つに分けられている。すなわ. 設計規準、設計地震力と層間変位を算定すると、どの程度異. ち、活荷重は、床スラブ用荷重、活荷重組み合せ係数×活荷 重は、日本のラーメン用積載荷重、85%活荷重組み合せ係数. なるかについて比較検討してみる。地盤は日本の第2種地盤 と想定する。中国の場合は、遠震の第Ⅲ類建築用地と想定し. ×活荷重は、地震用積載荷重と見なすことができる。. た。. (エ) 頂上部分付加地震作用 頂上部分付加地震作用というものは、日本では、ホイッピ. 中国では、政治と経済などの判断により、建物の用途・重. ング効果と言われている。屋上突出物などがあたかも鞭を振. 要度を、耐震設計に考慮することになっている。これは、設. るように大きく振れる現象により、建物の頂上部分に与える. 計用地震力の大きさに関してではなく、許容される構造形式、. 附加効果である。日本では、屋上突出物があれば、ホイッピ. 材料、構造詳細、解析法に関して適用されている。. ング効果を考慮するが、中国では、通常の建物にも頂上部分. 53-3.
(4) 35.00 7.00. 7.00. 形角を計算する。. 7.00. 7.00. 7.00. Y3 5.50. , 5. 0.0008 0.0007. -.. Y2 5.50. 16.50. Y1. /0. 0.00+3 0.00+2. 4. 0.00+7 0.00+6. 5.50. 3. 0.00+9 0.00+7. 2. Y0 X0. X2. X1. X4. X3. X5. 0.00+8. + 0. 3.55. 図1、伏せ図. 3.58 18.12. 3.58 7.00. X2. 7.00. 0.00+ 0.00+5 0.002 ! 1##X2 3 & 4 5 6 7. 0.0009 0.0008. /0. 3. 0.00+9 0.00+8. 2. 0.00+8 0.00+9. +. X5. 0.00+4. 0. 図2、立面図. -.. 0.002+. 7.00. X4. X3. 0.0025. 0.00+4 0.00+3. 4. 3.58 7.00. X1. 0.0005. , 5. 3.83 7.00. X0. 0.00+4. 3.1 地震時層せん断力と水平地震作用代表値の算定. 0.0005 0.00+ 0.00+5 0.002 !8##923 &4567. 0.0025. 日本の標準せん断力係数:C0=2.0(許容応力度設計用). 日中両国とも、弾性範囲内で挙動する事を要求される、設. 1 階おける層せん断力係数:Ci=Z・Rt・Ai・C0=2.0. 計用地震力については図3に示すようにほとんどの差は. 中国の水平地震 影響係数:α1= '% Tg $" ×αmax=2.06 & T1 #. ない。ただし、中国の層間変位は、耐震設計において中. また ここで、対象とした建物の場合、. は、日本より厳しいものとなっている。. 0.9. 震可修と目標にしていることから、層間弾性変形角制限値. T1=0.414<1.4Tg=1.4×0.55=0.77s であることから. 4 今後の課題. 頂上部分付加地震作用は考慮しなくてもよい。. 今後の課題として、日中両国の設計法により設計された建. 地震時層せん断力と層水平地震作用代表値を図3に示す。. 物の耐震安全性の定量的把握が行うことがあげられる。日中. ,. 両国のそれぞれの設計法により設計された建物の耐震安全 +725 +626. 5. -. /0. 28+3 2858. 4. 性の定量的把握と直接比較は共通の手法で行う必要がある ので,現在日本における既存建物の耐震性能を定量化するの. 3704 3790. 3. に広く用いられている「既存鉄筋コンクリート造建物の耐震 44+0 44+8. 2. 診断基準」を用いて,それを行うことが望まれる。. 4988 476+. + 0. +000. 2000. 3000. 4000. 5000. 【参考文献】. 6000. 1)「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」 1991 年版 2)「建築物の構造関係技術基準解説書」2001 年版. !"###$%&'()*(kN) 3.2 層間変形角の算定. 3) 「コンクリート構造設計規範」1990 年 (中国). 前節で述べた地震層せん断力によって各階に生ずる層間変. 4)「建築耐震設計規範」1990 年(中国). 53-4.
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