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「これからのまちづくりに「大街区化」をどう活かすか -現状分析と政策提言-」

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これからのまちづくりに「大街区化」をどう活かすか

― 現状分析と政策提言 ―

<要旨> 大街区化とは、複数の街区に細分化された土地を集約・整形して大型の街区を創出 することにより、敷地の一体的利用と公共施設の再編を図るものである。既存の公共 用地の有効利用を図りつつ、民間投資を誘発することで都市機能の更新を図る方策で あり、大都市の国際競争力の強化や地方都市の再生に資することが期待されている。 政府は大街区化による外部経済を期待して導入推進しており、2011 年に「大街区化 ガイドライン」を公表したものの、以降の導入実績は伸びていない状況である。 本稿では、大街区化の導入が進まない要因に関する定性分析を行い、市場の失敗に 対する政府の介入には相応の貢献度があるものの、依然として阻害要因が残存するこ とおよびその低減策の方向性を示した。また、大街区化が事業街区および周辺街区の 地価にどのような影響を及ぼしているかについて、先行事業の実証分析を行い、大都 市においては概ね地価は上昇する傾向があるものの、地価上昇率が低い若しくは地価 下落が生じる場合もあることを示した。また、地方都市においては概ね地価が下落す る傾向があり、都市規模等によって差異があることを示した。 以上の現状分析を踏まえ、仕組み・体制および手続等に係る政策提言を行った。 2017 年(平成 29 年)2月 政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU16717 森 浩光

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目次

第1章 はじめに ... 1 第2章 大街区化の概要等 ... 2 2-1 概要 ... 2 2-2 効果等 ... 3 第3章 大街区化に関する定性分析 ... 4 3-1 市場の失敗と政府の対応 ... 4 3-2 阻害要因およびその低減策 ... 5 第4章 大街区化が周辺地価に与える影響についての実証分析 ... 8 4-1 実証分析の対象 ... 8 4-2 使用するデータ ... 9 4-3 推計モデル ... 10 4-4 分析結果と考察 ... 12 第5章 政策提言 ... 18 第6章 おわりに ... 21 謝辞 ... 22

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1

第1章 はじめに

我が国の主要都市中心部は、江戸時代の町割りや、明治時代後期以後の土地改良・ 耕地整理事業により形成された区画割に加え、震災復興土地区画整理事業、戦災復興 土地区画整理事業等により市街地が形成されている。しかしながら、時間の経過とと もに土地に関する資源配分が不適切となり、狭小な建物敷地、建物の老朽化、狭隘な 区画道路、歩車道の未区分等により、土地の有効高度利用やエネルギー・防災・交通 安全等の機能に関して非効率が発生している。 このため、2010 年5月に策定された「国土交通省成長戦略」において、「細分化さ れた土地を集約・整形して一体的敷地として活用するため、国・公有地等の有効活用 (例:細街路の再編)などによる大街区化を推進する」としている。 国土交通省資料12によると、大街区化とは、複数の街区に細分化された土地を集約・ 整形して大型の街区を創出することにより、敷地の一体的利用と公共施設の再編を図 るものであり、既存の公共用地の有効利用を図りつつ、民間投資を誘発することで都 市機能の更新を図る方策であり、大都市の国際競争力の強化や地方都市の再生に資す ることが期待されている。 政府は大街区化による外部経済3を期待して、導入推進しているが、2011 年以降の導 入実績は伸びていない。 本稿では、以下に示す問題意識を基に、現況分析および政策提言を行う。研究フロ ーを図1-1に示す。 政府は大街区化による外部経済を期待して導入推進しているが、2011 年以降の導入 実績が伸びていないのはなぜかという問題意識を持ち、その理由として、 (1)外部経済が大きい(地価上昇等)ので導入したいが、阻害要因がネックとな っている (2)外部経済の大小が掴めず保留状態となっている と考えた。 (1)について、定性分析により、市場の失敗および政府の介入等を整理し、阻害 要因およびその低減策の方向性を示した。また(2)について、先行事業の実証分析 により、大街区化が外部経済にいかに寄与するかを明らかにした。 なお、本稿において、大都市=三大都市圏の都市、地方都市=三大都市圏以外の都 市とする。 1 「大街区化ガイドライン(第 1 版)」2011 年(平成 23 年)3 月 国土交通省都市・地域整備局、住宅局 2 「まちづくり推進のための大街区化活用にかかる執務参考資料」2014 年(平成 26 年)3 月 国土交通省都市局市街 地整備課、住宅局市街地建築課 3 市場取引を通じないで、他者にもたらす利益のこと(出典:福井秀夫「ケースからはじめよう法と経済学」)

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2 図1- 1 研究フロー 本稿の構成は以下のとおりである。まず第2章において大街区化の概要等について 整理し、第3章において定性分析を行う。第4章では実証分析およびその考察を行 い、第5章では第3章および第4章の現状分析を踏まえて政策提言を行う。最終章の 第6章では今後の課題等について言及する。

第2章 大街区化の概要等

本章では、大街区化の概要およびその効果等について経済学的な視点から整理す る。

2-1 概要

国土交通省により、2011 年3月に「大街区化ガイドライン」(以下、ガイドライ ン)が示され、地方公共団体や民間事業者に対して、大街区化の推進を促すと同時 に、大街区化の事業実施の道筋を開いた。さらに、2014 年3月には「まちづくり推進 のための大街区化活用にかかる執務参考資料」(以下、執務参考資料)が公表され た。 大沢(2015)iによると、大街区化は、街区レベルでの宅地空間と公共空間の再配分を 行う必要がある地区において有用な手段であり、手法としては従来の土地区画整理事 業や市街地再開発事業を用いるものの、あえて事業手法を前面に出さず、「大街区 化」としている点をポイントとして挙げている。例えば過去に土地区画整理事業を行 った地区で再度土地区画整理事業を行うこととなった場合、減歩を再び受けるといっ たネガティブイメージが先行し、地権者の合意を得る上で障害となることが考えら れ、事業手法名が事業推進に与える影響は大きいとしている。

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3 大街区化の最大の特徴は、公共施設や公共用地の取り扱いであり、土地区画整理事 業等によって宅地空間と公共空間の再配分を行う場合、公共用地の減少を伴うことが あることを許容しており、量よりも質(機能)を重視することを示している点は画期 的であるといえる。 執行参考資料によると、完了地区および事業中地区を含め、30 地区の事例が紹介さ れている。うち大都市は 21 地区、地方都市は 9 地区である。表2-1に総括表を示 す。 表2- 1 事例総括表 (単位:件) 完了 実施中 区画 整理 再開発 その他 個人 組合 UR 増加 増減 なし 減少 21 15 6 10 5 6 12 6 3 8 9 8 3 東京都心 12 8 4 5 4 3 5 6 1 5 4 7 1 大阪、名古屋 9 7 2 5 1 3 7 2 3 5 1 2 9 7 2 2 7 3 6 1 3 5 30 22 8 12 12 6 15 12 3 8 10 11 8 平成27年度末時点 公共用地増減 大都市 地方都市 計 地区 数 進捗状況 事業手法 施行主体 都市再 生特区

2-2 効果等

大街区化の概念およびその効果は、街区単位の集約化と比較すると、表2-2およ び図2-1に示すとおりであり、街区単位の集約化を上回る外部経済が期待できる が、表2-3および図2-2に示すとおり、正と負の効果があると考える。 表2- 2 街区単位の集約化と大街区化の効果の比較 (国交省 執務参考資料より) 事業完了前 事業完了後 大街区化 街区単位 の集約化 周辺街区 周辺 街区 周辺街区 周辺 街区 事業街区 事業街区 周辺街区 周辺 街区 周辺街区 周辺 街区 事業街区 周辺街区 周辺 街区 周辺街区 周辺 街区 事業街区 周辺街区 周辺 街区 周辺街区 周辺 街区 図2- 1 大街区化と街区単位の集約化の概念図 街区単位の集約化 大街区化 敷地の一体利用 による効果 ○敷地の集約による 高度利用やエネル ギー効率の向上 ◎敷地規模拡大によ る一層の高度利用や エネルギー効率の向 上 公共施設の再編 による効果 ▲狭隘道路の残存 ○狭隘道路や危険な 交差点の解消 ○地域に必要な新た な公共・公益施設の 配置 (環境配慮:例 風の 道、緑のネットワーク) (景観形成:例 統一 感のあるスカイライン)

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4 表2- 3 大街区化による正・負の効果例 【正の効果例】 ①土地の高度利用実現⇒ホテル、オフィス、 店舗、集合住宅の導入(定住人口の回復、集 積の経済) ②道路・駐車場形状の改善⇒防災性向上、安 全性向上、インフラ維持管理の効率性向上 ③歩行者専用道路・広場の整備⇒来訪者の回 遊性向上、景観向上 【負の効果例】 ④費用がかかる・・・地権者の合意形成に関 する取引費用、事業費 ⑤従前の価値喪失・・・細街路ならではの賑 わい、アクセスの手軽さ、従前コミュニティ の維持困難(零細地権者・借家人は戻って来 られない(事業後、賃料大幅増)) 図2- 2 大街区化による正・負の効果イメージ(執行参考資料より抜粋)

第3章 大街区化に関する定性分析

本章では、政府や民間事業者へのヒアリングを踏まえ、法と経済学4の観点から定性 分析を行うこととする。

3-1 市場の失敗と政府の対応

第2章でも触れたように、現存する大半の街区・街路形状は震災・戦災復興事業に より整備されたものであり、現在の土地利用ニーズに適合していないエリアが多い。 市場の意向としては、特に大都市においては、大街区化によって得られるメリットは 大きいため、実施したいと考える。しかしながら、民間事業者にとって、大街区化の 取引費用5が厖大なため、現状放置もしくは過小整備となり、市場の失敗6が起こると考 えられる。 4 法や判例がもたらす社会経済的な影響を分析する学問。社会経済的な影響には、資源配分の効率性と所得分配の公正 の双方の影響を含む(出典:福井秀夫「ケースからはじめよう法と経済学」) 5 当事者たちが契約に合意し、それを遂行する過程で負担する費用(出典:N・グレゴリー・マンキュー「マンキュー 経済学Ⅰ ミクロ編(第3 版)」) 6 完全競争市場の前提条件が満たされていないために、人々が取引を円滑に行うことが難しい状況であること。不完全 競争のとき、外部性があるとき、公共財のとき、情報の非対称性があるとき、取引費用が大きいときという5種類があ る(出典:安藤至大「ミクロ経済学の第一歩」)

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5 金本(1997)iiによると、都市政策を考える際には、それを正当化する市場の失敗が存 在するかどうかを最初に検討しなければならないが、たとえ市場の失敗が存在したと しても、ただちに政策的介入を行うべきであるとはいえない。どの分野を市場機構に まかせ、どこまで政府が規制したり補助したりすべきか、種々の問題点を考慮して決 定されなければならないとしている。 この市場の失敗に対して、外部不経済の低減と外部経済の内部化を図るため、政府 の対応(介入)が行われている。具体的には、 ・ガイドライン・執行参考資料の策定・公表、事前明示(マスタープラン等) 【取引費用の低減】 ・従前公共用地の取り扱いの柔軟化(計画の自由度向上)【取引費用の低減】 ・公共貢献へのインセンティブ付与(容積率割増)【外部性7、(地域)公共財8】 が行われ、一定の効果が得られているところである。 公共貢献とは、本来政府が整備すべき(地域)公共財を民間事業者が事業と一体的 に整備することである。国土交通省資料9によると、主なメニューは表3-1のとおり であり、大街区化においても、交通施設や公共空地を中心に多様かつ効果的な整備が 期待されているといえる。 表3- 1 公共貢献の主なメニュー 施設区分 具体的施設 交通施設 道路、歩行者通路、ペデストリアンデッキ、地下通路、交通広場、公共駐車場、 駐輪場 公共空地 広場(屋内、屋外、屋上)、公園、緑地 公益施設 社会福祉施設、文化施設、交流施設、コミュニティ施設、集会施設 防災施設 備蓄倉庫、防火貯水槽 歴史・文化的 資産保存 歴史的建造物、重要文化財指定建築物 供給処理施設 地域冷暖房施設、中水道施設、雨水貯留施設

3-2 阻害要因およびその低減策

しかしながら、依然として阻害要因が生じているといえる。これらを基礎自治体、 合意形成および公共貢献の観点で挙げていくこととする。 7 ある人の行動が周囲の人の経済的厚生に与える影響のこと 8 排除可能でなく、かつ消費において競合的でない財(7~8 の出典:N・グレゴリー・マンキュー「マンキュー経済学 Ⅰ ミクロ編(第 3 版)」) 9 国土交通省(2012)「公共・公益施設の整備等の評価による容積率特例制度の活用状況」

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6 基礎自治体においては、 ・事業内容に関する十分な情報を持たないため、適切な判断ができない。 民間事業者提案の事業内容について、地域特性等の情報は持ち合わせていて も、事業の外部性等に係る十分な情報を持っておらず、事業認可基準として各都 市の上位計画(都市計画マスタープランや都市再開発方針等)に合致している か、補助金・交付金要件を充たしているか、地権者の事業合意が得られているか といった観点で判断を行い、費用便益分析結果を参照するものの、その中身の妥 当性や実現性を事前審査することは困難だといえる。 ・前例にない新規的取組に対して消極的となりやすい。 例えばガイドラインにおいて、機能が十分に確保されるのであれば、公共用地 面積を減らすことも可としているものの、依然として公共用地面積を減らすこと に慎重な基礎自治体が少なくない。また、新規的取組について積極的に動きすぎ ると、特定の民間事業者に肩入れしているのではないかと批判されるリスクもあ る。また、前例にないことをしようとすると組織内外への説明が求められること になり、取引費用が厖大となってしまう。以上のことから、基礎自治体は新規的 取組には消極的となりやすい。 合意形成においては、 ・事業のQ(品質=事業効果)とC(コスト)・D(期間)のトレードオフが生 じる。 民間事業者としては、地権者の合意形成が難航すると事業区域を縮小しようと する(難航地権者の土地を除外する)インセンティブが働く。事業区域が縮小さ れてしまったり、いびつな地区境界になってしまったりすると、事業効果が十分 に発揮されないこととなってしまい、政府(基礎自治体)としては望ましくない 状態となる。 公共貢献においては、 ・都市再生特区において、容積率割増と公共貢献の評価のメカニズムが非開示と なっており、事前明示性、透明性および公平性が確保されていない。 民間事業者としては、公共貢献をどのメニューにおいてどの程度行えば、どれ だけの容積率割増が得られるのかが事前に分からない状態である。 東京都(2014)iiiによると、一律的な基準によらない1件ごとの個別審査としてい ることについて、都内全域に共通する汎用的かつ詳細な運用基準を策定し、これ に基づく制度運用を行うことは、制度の透明性や公平性を確保し、審査の事前明

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7 示性を高める上では効果があるといえるが、都市再生特区は地域固有の立地条件 や整備課題を踏まえた独創的で都市再生効果の高い事業計画の実現を目指すもの であり、一律的な基準に基づき審査することは適当ではないとしている。また、 民間事業者等の提案内容に対する評価の透明性、公平性および公正性を確保する ため、都市計画決定権者としての最終的な評価結果とその理由や都市計画決定権 者と計画提案者との間で締結された協定等について、公開できるようにするとと もに、計画提案者や利害関係者との打合せ記録等について、事前相談の段階から 記録を作成しておくこととしている。 これに対して、林(2015)ivによると、都市再生特区における公共貢献は、計画提 案の自由度の高いことが制度的特徴であり、実際に民間事業者の提案によって多 様な公共貢献が実現しているという良い面がある一方、行政裁量が大きく、割増 容積率と公共貢献の評価値には定型的な傾向が見られないこと、数値目標が設定 されておらず事後評価が困難であることを指摘している。 ・公共貢献に係る官民の役割分担(詳細)が不明確で、民の負担が想定以上とな るケースがある。 公共貢献による容積率割増は、民間事業者にとって大変魅力的であることは確 かだが、公共貢献に関する協議や課題解決を民間に任せられることもあり、ホー ルドアップ問題10が発生する可能性があるといえる。 公共貢献の整備内容およびそれに伴う容積率割増が官民の協議により確定し、 これによって公共貢献を含んだ施設整備計画が確定する。公共貢献に係る官民の 役割分担については、事前に明確に定めた契約等がないため、民間事業者が当初 想定したよりも厖大な取引費用となることがあり得る。このようなことが起こっ てしまうと、次回以降、民間事業者は公共貢献を求められるような事業の実施を ためらうようになり、事業効果の発揮が阻害されてしまう。 以上に示した阻害要因について、その低減策の方向性を考えることとする。 まず基礎自治体においては、十分な情報や新規的取組を共有・活用するとともに、 基礎自治体の消極性を改善できる手立てが必要である。 大沢(2015)vによると、大街区化の普及がまだ不十分な理由として、ガイドラインが 示されてまだ間もないともいえ、生みの苦しみ期間であるとしており、大街区化の普 及と展開には、大街区化推進を支える技術的支援と技術者の育成、そして事業への資 金的援助が必要であるとしている。 10 ホールドアップ問題とは、実施されたあとに元に戻すのが難しく、しかも交渉相手の強さを増してしまうような投 資に関して発生する問題のことであり、主に不完備契約で、かつ資産の特殊性がある状況において発生する(出典:証 券投資用語辞典http://secwords.com/)今回のケースにおいては、契約の不完備性とサンクコスト(埋没費用;事業 や行為に投下した資金・労力のうち、事業や行為の撤退・縮小・中止によっても戻って来ない投下資金または投下した 労力)により発生するといえる。

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8 合意形成においては、外部経済のある事業については、地権者等との合意形成促進 策を充実させることが必要である。 公共貢献においては、容積率割増に係る公共貢献の評価の関連性を事前開示するこ とが望まれる。また、官民の役割分担を事前に確定させ(コミットメント)、ホール ドアップ問題を防ぐ必要がある。 事前に協力的投資(公共貢献)が必要な場合は、契約(コミットメント)若しくは 合併等での投資直接管理が必要であり、ここがうまく行かないと、民間事業者は公共 貢献を最適化・最大化しようとするインセンティブ(誘引)が働かなくなる。よっ て、官民の役割分担について事前契約することが必要である。

第4章 大街区化が周辺地価に与える影響についての実証分析

本章では、大街区化が事業街区及び周辺街区の地価に与える影響について検証を行 う。その実証分析の方法、結果およびその考察について以下に述べる。 実証分析にあたっては、大街区化の便益は地価の上昇に反映されることを前提と し、パネルデータ11を用いたヘドニックアプローチ12による地価関数の推計に基づいて 行うこととする。

4-1 実証分析の対象

対象としては、大都市および地方都市における、大街区化事業地区と街区単位の集 約化事業地区とし、主に国土交通省資料(執務参考資料および市街地再開発 2016 デー タ)より 2007~2015 年に完了した事業地区を抽出した。街区単位の集約化の地区を加 えた理由は、大街区化との比較を行うためである。表4-1に対象地区総括表、表4 -2に対象地区の概要を示す。 表4- 1 対象地区総括表 (単位:件) 大街区化 街区単位の集約化 計 大都市(東京都心)

8

5

13

大都市(大阪市)

2

1

3

地方都市

6

9

15

16

15

31

11 クロスセクション・データ(1時点において複数の対象の情報を横断的に集めたデータ)と時系列データ(1つの 対象についての時間を通じた変化を記録したデータ)のハイブリッド版データ(出典:田中隆一「計量経済学の第一 歩」) 12 環境条件の違いがどのように地価に反映されているかを観察し、それをもとに環境の価値の計測を行う手法(出 典:中川雅之「公共経済学と都市政策」)

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9 表4-2 対象地区の概要 事業方針 都市規模 地区名 所在地 地区面積 (ha) 事業費 (百万円) 施行主体 事業種別等 銀座四丁目6地区 東京都中央区 0.9 非公表 民間事業者 任意の再開発、都市再生特区 京橋二丁目16地区 東京都中央区 0.7 非公表 民間事業者 任意の再開発、都市再生特区 京橋三丁目1地区 東京都中央区 1.3 非公表 民間事業者 任意の再開発、都市再生特区 赤坂四丁目地区(薬研坂南) 東京都港区 1.1 35,200 都市再生機構 再開発 東池袋四丁目第2地区 東京都豊島区 1.09 29,918 都市再生機構 再開発 平河町二丁目東部南地区 東京都千代田区 0.66 19,808 組合 再開発 御徒町駅北口西地区 東京都台東区 0.2 55 個人 区画整理 御徒町駅南口西地区 東京都台東区 1.1 430 組合 区画整理 東野田町一丁目地区 大阪市都島区 0.2 92 個人 区画整理 上本町六丁目地区 大阪市天王寺区 0.67 65 個人 区画整理 勝田駅東口地区 茨城県ひたちなか市 1.5 5,745 都市再生機構 再開発 新潟駅南口第二地区 新潟県新潟市 1.11 13,263 組合 再開発 武蔵ヶ辻第四地区 石川県金沢市 0.9 5,660 組合 再開発 大門中央通り地区 長野県塩尻市 0.59 5,138 組合 再開発 JR久留米駅前第一街区地区 福岡県久留米市 0.7 10,474 組合 再開発 中町地区 鹿児島県鹿児島市 1.2 221 個人 区画整理 飯田橋駅西口地区 東京都千代田区 2.5 93,300 組合 再開発 新川二丁目地区 東京都中央区 0.2 5,000 個人 再開発 六本木一丁目南地区 東京都港区 0.4 15,600 組合 再開発 新宿三丁目東地区 東京都新宿区 0.6 7,100 個人 再開発 西新宿六丁目西第6地区 東京都新宿区 1.7 50,500 組合 再開発 大都市 (大阪市) 淀屋橋地区 大阪市中央区 0.78 15,068 都市再生機構 再開発、都市再生特区 郡山駅前一丁目第一地区 福島県郡山市 0.5 9,847 組合 再開発 宇都宮駅西口第四B地区 栃木県宇都宮市 0.3 4,892 組合 再開発 宇都宮馬場通り西地区 栃木県宇都宮市 0.43 7,761 組合 再開発 西大和地区 栃木県那須塩原市 1.2 1,932 組合 再開発 豊田市駅前通り南地区 愛知県豊田市 1.6 18,105 組合 再開発 岡山市平和町一番地区 岡山県岡山市 0.38 4,950 組合 再開発 南殿町地区 島根県松江市 0.38 2,990 組合 再開発 東桜町地区 広島県福山市 1 12,546 再開発会社 再開発 中央町22・23番街区地区 鹿児島県鹿児島市 0.49 4,830 組合 再開発 大都市 (東京都心) 大街区化 大都市 (大阪市) 地方都市 街区単位 の集約化 大都市 (東京都心) 地方都市 注:事業種別等において、再開発=市街地再開発法に基づく市街地再開発事業、区画整理=土地区画整理法に基づく土 地区画整理事業、任意の再開発=市街地再開発法に基づかない任意の民間再開発事業を指す。

4-2 使用するデータ

大街区化による効果を実証するにあたり、国税庁ホームページ等にて公開されてい る 2006~2016 年の地価(相続税路線価13)を被説明変数としたパネルデータを作成 し、固定効果14モデルによる推計を行うこととする。国土交通省資料(執務参考資料お よび市街地再開発 2016 データ)より 2007~2015 年に完了した事業地区を抽出した。 相続税路線価はほぼ全ての路線において設定されており、事業街区および周辺街区 に接している相続税路線価を用いた。事業街区と周辺街区の両方に接する路線価につ いては事業街区のみの路線価として使用し、周辺街区の路線価として使用しないこと とした。 13 宅地の評価額の基準となる価格。道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価格。国税庁が公表し相続税・贈与税 の算定基準となる財産評価基準書の路線価(相続税路線価)と、市町村(東京都23 区は東京都)が公表し固定資産 税・不動産取得税などの課税に使用される固定資産税路線価がある。相続税路線価は国土交通省の土地鑑定委員会が公 示する地価公示価格の8 割程度、固定資産税路線価は 7 割程度に評価されている(出典:小学館デジタル大辞泉) 14 時間を通じて変化しない個別効果のこと。説明変数と相関していても良い(出典:田中隆一「計量経済学の第一 歩」)

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10 単年度の地価を被説明変数とした分析を行った場合、その結果は大街区化による効 果なのか、路線価がもともと有している特性によるものであるかの区別が困難といっ た問題が生じる。今回の分析は、大街区化による効果を見ることが目的であるため、 事業完了後の効果を抽出する必要がある。そこで景気変動等全国的な社会経済情勢が 地価に与える影響を除外するため、事業街区最寄りの公示地価街区の相続税路線価を コントロールデータとした。なお今回対象地区において、公示地価街区は事業街区に 近接していない。

4-3 推計モデル

事業完了後(after)における事業街区+周辺街区(pjperi)、事業街区(project)お よび周辺街区(periphery)の地価に与える影響を把握するため、推計モデルを以下の とおり設定した(図4-1参照)。 推計モデル1(事業街区と周辺街区を一体として推計) Ln(Price)=β0+β1after+β2pjperi+β3after*pjperi

+β4y3_ago* pjperi +β5y2_ago* pjperi+β6y1_ago* pjperi

+β7y1_later* pjperi+β8y2_later* pjperi +β9y3_later* pjperi+ε

推計モデル2(事業街区と周辺街区を別々に推計)

Ln(Price)=β0+β1after+β2project+β3periphery+β4after*project+β5after*periphery

+β6y3_ago*project+β7y2_ago*project+β8y1_ago*project

+β9y1_later*project+β10y2_later*project+β11y3_later*project

+β12y3_ago*periphery+β13y2_ago* periphery +β14y1_ago* periphery

+β15y1_later*project+β16y2_later* periphery+β17y3_later* periphery +ε

事業完了前 事業完了後 大街区化 街区単位 の集約化 周辺街区 周辺 街区 周辺街区 周辺 街区 事業街区 事業街区 周辺街区 周辺 街区 周辺街区 周辺 街区 事業街区 周辺街区 周辺 街区 周辺街区 周辺 街区 事業街区 周辺街区 周辺 街区 周辺街区 周辺 街区 図4- 1 事業完了前後および事業街区・周辺街区の概念図

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11 被説明変数については、相続税路線価(円/㎡)の対数値とした。本来であれば、 事業完了前後における商業者等全体の売上高等を用いた方が精度のより高い分析が可 能と考えられるが、情報収集にかかる制約が大きいことから、代理変数として相続税 路線価を用いることとした。 説明変数については、事業完了後であることを表す事業完了後ダミー(after)、事 業街区若しくは周辺街区であることを表す事業・周辺街区ダミー(pjperi)、事業街 区であることを表す事業街区ダミー(project)、周辺街区であることを表す周辺街区 ダミー(periphery)のほか、事業後の事業街区および周辺街区の地価増減をみるた め、事業後ダミーと事業・周辺街区ダミーの交差項、事業後ダミーと事業街区ダミー の交差項および事業後ダミーと周辺街区ダミーの交差項を作成して用いた。なお、事 業完了直前・直後の地価の乱高下の影響等を差し引くために、事業完了3年前~3年 後ダミーと事業街区・周辺街区ダミー、事業完了3年前~3年後ダミーと事業街区ダ ミーおよび事業完了3年前~3年後ダミーと周辺街区ダミーの交差項も作成して用い た。 なお、通常のヘドニックアプローチにおいては、街区面積や前面道路幅員などの 様々な説明変数を入れるものの、今回採用する固定効果モデルでは時間を通じて変化 しない要因については変数に加えることができないため、時間を通じて変化のあった 変数のみ説明変数として採用した。説明変数の説明を表4-3に、基本統計量を表4 -4に示す。 表4-3 説明変数の説明 変数 説明 ln(路線価)(円/㎡) 相続税路線価の対数を用いた。 事業完了後ダミー 事業完了年以降の場合に1を取るダミー変数。 事業・周辺街区ダミー 事業街区若しくは周辺街区に接続する路線の場合に1を取るダミー変数。 事業街区ダミー 事業街区に接続する路線の場合に1を取るダミー変数。 周辺街区ダミー 周辺街区に接続する路線の場合に1を取るダミー変数。 大街区化ダミー 大街区化が行われた地区に接続する路線の場合に1を取るダミー変数。 大都市ダミー 大都市の地区に接続する路線の場合に1を取るダミー変数。 都市再生特区ダミー 都市再生特区に指定された地区に接続する路線の場合に1を取るダミー変数。 事業完了ダミーと事業街区・周辺街区ダミーの交差項 事業完了年以降かつ事業街区若しくは周辺街区に接続する路線の場合に1を取るダミー変数。 事業完了ダミーと事業街区ダミーの交差項 事業完了年以降かつ事業街区に接続する路線の場合に1を取るダミー変数。 事業完了ダミーと周辺街区ダミーの交差項 事業完了年以降かつ周辺街区に接続する路線の場合に1を取るダミー変数。 事業完了前後年数ダミー 事業完了3年前~3年後のダミー

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12 表4-4 基本統計量 変数 観測数 平均値 標準偏差 最小値 最大値 ln(路線価) 8,548 6.2044 1.5190 3.0445 10.4306 事業完了後ダミー 8,591 0.5820 0.4933 0 1 事業・周辺街区ダミー 8,591 0.8361 0.3702 0 1 事業街区ダミー 8,591 0.1882 0.3909 0 1 周辺街区ダミー 8,591 0.6402 0.4800 0 1 大街区化ダミー 8,591 0.5890 0.4920 0 1 大都市ダミー 8,591 0.5480 0.4977 0 1 都市再生特区ダミー 8,591 0.1524 0.3594 0 1 事業完了3年前ダミー 8,591 0.0748 0.2632 0 1 事業完了2年前ダミー 8,591 0.0880 0.2833 0 1 事業完了1年前ダミー 8,591 0.0909 0.2875 0 1 事業完了年ダミー 8,591 0.0909 0.2875 0 1 事業完了1年後ダミー 8,591 0.0937 0.2914 0 1 事業完了2年後ダミー 8,591 0.0870 0.2818 0 1 事業完了3年後ダミー 8,591 0.0870 0.2818 0 1 事業完了後ダミー*事業・周辺街区ダミー 8,591 0.4849 0.4998 0 1 事業完了後ダミー*事業街区ダミー 8,591 0.1113 0.3145 0 1 事業完了後ダミー*周辺街区ダミー 8,591 0.3702 0.4829 0 1 事業完了3年前ダミー*事業・周辺街区ダミー 8,591 0.0630 0.2429 0 1 事業完了2年前ダミー*事業・周辺街区ダミー 8,591 0.0736 0.2611 0 1 事業完了1年前ダミー*事業・周辺街区ダミー 8,591 0.0760 0.2650 0 1 事業完了1年後ダミー*事業・周辺街区ダミー 8,591 0.0782 0.2685 0 1 事業完了2年後ダミー*事業・周辺街区ダミー 8,591 0.0725 0.2594 0 1 事業完了3年後ダミー*事業・周辺街区ダミー 8,591 0.0725 0.2594 0 1 事業完了3年前ダミー*事業街区ダミー 8,591 0.0171 0.1297 0 1 事業完了2年前ダミー*事業街区ダミー 8,591 0.0166 0.1279 0 1 事業完了1年前ダミー*事業街区ダミー 8,591 0.0143 0.1188 0 1 事業完了1年後ダミー*事業街区ダミー 8,591 0.0177 0.1318 0 1 事業完了2年後ダミー*事業街区ダミー 8,591 0.0166 0.1279 0 1 事業完了3年後ダミー*事業街区ダミー 8,591 0.0166 0.1279 0 1 事業完了3年前ダミー*周辺街区ダミー 8,591 0.0582 0.2341 0 1 事業完了2年前ダミー*周辺街区ダミー 8,591 0.0562 0.2304 0 1 事業完了1年前ダミー*周辺街区ダミー 8,591 0.0480 0.2137 0 1 事業完了1年後ダミー*周辺街区ダミー 8,591 0.0598 0.2372 0 1 事業完了2年後ダミー*周辺街区ダミー 8,591 0.0552 0.2283 0 1 事業完了3年後ダミー*周辺街区ダミー 8,591 0.0552 0.2283 0 1

4-4 分析結果と考察

まず、全体データを大都市・大街区化、大都市・街区単位の集約化、地方都市・大 街区化、地方都市・街区単位の集約化の4つに分けて、推計モデル1,2の推計を行 った。 推計モデル1の推計結果を表4-5に示す。事業後ダミーと事業・周辺街区ダミー の交差項の係数は事業後の地価上昇率を示す。

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13 表4-5 推計モデル1の結果 被説明変数 大街区化 街区単位の集約化 大街区化 街区単位の集約化 説明変数 係数 係数 係数 係数 [標準誤差] [標準誤差] [標準誤差] [標準誤差] 事業後ダミー*事業・周辺街区ダミー 0.0997 *** 0.0932 *** -0.0453 *** -0.0256 [0.0138] [0.0255] [0.0120] [0.0113] 事業完了3年前*事業・周辺街区ダミー 0.0856 *** 0.0395 -0.0543 *** -0.0478 *** [0.0100] [0.0234] [0.0095] [0.0096] 事業完了2年前*事業・周辺街区ダミー 0.1113 *** 0.0556 ** -0.1172 *** -0.0517 *** [0.0100] [0.0195] [0.0092] [0.0088] 事業完了1年前*事業・周辺街区ダミー 0.0661 *** 0.0550 ** -0.1462 *** -0.0790 *** [0.0100] [0.0179] [0.0092] [0.0088] 事業完了1年後*事業・周辺街区ダミー -0.0697 *** 0.0024 0.0207 ** 0.0160 [0.0091] [0.0172] [0.0074] [0.0072] 事業完了2年後*事業・周辺街区ダミー -0.0684 *** 0.0066 -0.0123 -0.0079 [0.0091] [0.0192] [0.0074] [0.0076] 事業完了3年後*事業・周辺街区ダミー -0.0397 *** -0.0079 -0.0302 *** -0.0236 ** [0.0091] [0.0183] [0.0074] [0.0076] 誤差項 7.4274 *** 6.9139 *** 4.7463 *** 5.2423 *** [0.0051] [0.0132] [0.0055] [0.0048] 観測数 3,080 1,597 1,958 1,913 自由度調整済決定係数 0.1268 0.3412 0.4876 0.4445 ※***、**、*は、それぞれ1%、5%、10%有意水準に対応する。 ln(路線価) 大都市 地方都市 表4-5より、事業・周辺街区の地価上昇率は以下のとおりである。 大都市 大街区化 > 街区単位の集約化 0.0997*** 0.0932*** 地方都市 街区単位の集約化 > 大街区化 -0.0256 -0.0453*** ※***、**、*は、それぞれ 1%、5%、10%有意水準に対応する。 大都市においては、大街区化のほうが街区単位の集約化よりも地価上昇率が高い結 果が得られた。地方都市においては、いずれも地価下落しており、大街区化のほうが 街区単位の集約化よりも地価下落率が高い結果が得られた。 次に、推計モデル2の推計結果を表4-6に示す。 事業後ダミーと事業街区ダミーの交差項の係数は事業後の事業街区の地価上昇率を 示す。また、事業後ダミーと周辺街区ダミーの交差項の係数は事業後の周辺街区の地 価上昇率を示す。

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14 表4-6 推計モデル2の結果 被説明変数 大街区化 街区単位の集約化 大街区化 街区単位の集約化 説明変数 係数 係数 係数 係数 [標準誤差] [標準誤差] [標準誤差] [標準誤差] 事業後ダミー*事業街区ダミー 0.1228 *** 0.1550 *** -0.0166 0.0031 [0.0191] [0.0372] [0.0179] [0.0179] 事業後ダミー*周辺街区ダミー 0.0926 *** 0.0782 ** -0.0543 *** -0.0328 * [0.0143] [0.0262] [0.0127] [0.0118] 事業完了3年前*事業街区ダミー 0.0874 *** 0.0730 -0.0424 0.0282 [0.0205] [0.0541] [0.0213] [0.0304] 事業完了2年前*事業街区ダミー 0.1295 *** 0.0643 -0.1159 *** 0.0412 [0.0205] [0.0425] [0.0212] [0.0277] 事業完了1年前*事業街区ダミー 0.0777 *** 0.0493 -0.1154 *** 0.0546 [0.0205] [0.0405] [0.0215] [0.0277] 事業完了1年後*事業街区ダミー -0.0678 *** -0.0040 -0.0346 -0.0254 [0.0185] [0.0334] [0.0168] [0.0165] 事業完了2年後*事業街区ダミー -0.0615 *** 0.0258 -0.0407 -0.0297 [0.0185] [0.0357] [0.0164] [0.0187] 事業完了3年後*事業街区ダミー -0.0325 *** 0.0094 -0.0313 -0.0359 [0.0185] [0.0352] [0.0163] [0.0187] 事業完了3年前*周辺街区ダミー 0.0851 0.0351 -0.0753 *** 0.0236 [0.0114] [0.0247] [0.0135] [0.0156] 事業完了2年前*周辺街区ダミー 0.1057 *** 0.0561 ** -0.1440 *** 0.0405 [0.0114] [0.0210] [0.0133] [0.0143] 事業完了1年前*周辺街区ダミー 0.0626 *** 0.0575 * -0.1396 *** 0.0465 *** [0.0114] [0.0193] [0.0135] [0.0143] 事業完了1年後*周辺街区ダミー -0.0705 *** 0.0053 -0.0285 * -0.0130 [0.0104] [0.0186] [0.0109] [0.0091] 事業完了2年後*周辺街区ダミー -0.0708 *** 0.0012 -0.0397 *** -0.0287 ** [0.0104] [0.0210] [0.0105] [0.0101] 事業完了3年後*周辺街区ダミー -0.0421 *** -0.0142 -0.0393 *** -0.0391 *** [0.0104] [0.0201] [0.0101] [0.0101] 誤差項 7.4273 *** 6.9134 *** 5.0777 *** 5.3639 *** [0.0051] [0.0132] [0.0088] [0.0083] 観測数 3,080 1,597 1,958 1,913 自由度調整済決定係数 0.1286 0.3474 0.4897 0.4475 ※***、**、*は、それぞれ1%、5%、10%有意水準に対応する。 ln(路線価) 大都市 地方都市 表4-6より、事業街区および周辺街区の地価上昇率は以下のとおりである。 ◎事業街区 大都市 街区単位の集約化 > 大街区化 0.1550*** 0.1228*** 地方都市 街区単位の集約化 > 大街区化 0.0003 -0.0166 ◎周辺街区 大都市 大街区化 > 街区単位の集約化 0.0926*** 0.0782** 地方都市 街区単位の集約化 > 大街区化 -0.0328* -0.0543*** ※***、**、*は、それぞれ 1%、5%、10%有意水準に対応する。 大都市において、事業街区では街区単位の集約化のほうが大街区化よりも地価上昇 率が高いが、周辺街区では逆に、大街区化のほうが街区単位の集約化よりも地価上昇 率が高い結果が得られた。

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15 地方都市においては、事業街区では街区単位の集約化は地価上昇しているが、大街 区化では地価下落している。周辺街区ではいずれも地価下落しており、大街区化のほ うが街区単位の集約化よりも地価下落率が高い結果が得られた。 以上の推計モデル1,2より、全体の傾向としては、大都市においては大街区化の 外部経済が期待できるが、地方都市では期待できないことが分かる。 この理由として、大都市では新規需要(外資系企業等(大規模床面積))の受け皿 となりうるが、地方都市では大規模床面積の新規需要がほとんどないことや、従前の 価値が更に失われたことが影響していると考えられる。 また、大都市において、民間事業者にとっては大街区化よりも街区単位の集約化を 選好する可能性があるといえる。 続いて、全体データを地区別に分けて、各地区の推計モデル1,2を行った。地区 ごとの事業・周辺街区、事業街区および周辺街区の地価上昇率を表4-7に示す。こ れをグラフ化したものが図4-1~4である。 表4-7 推計モデル1,2の結果(地区別) 整備手法 都市規模 地区名 所在地 事業街区係数 周辺街区係数 銀座四丁目6地区 東京都中央区 0.0926 0.1020 0.0894 京橋二丁目16地区 東京都中央区 -0.1572 *** -0.1520 *** -0.1584 *** 京橋三丁目1地区 東京都中央区 0.1486 0.2378 0.1298 赤坂四丁目地区(薬研坂南)東京都港区 0.1891 ** 0.2473 0.1784 * 東池袋四丁目第2地区 東京都豊島区 0.2106 *** 0.2401 *** 0.2029 *** 平河町二丁目東部南地区 東京都千代田区 0.0247 0.0877 * 0.0247 御徒町駅北口西地区 東京都台東区 -0.0405 -0.0343 -0.0428 御徒町駅南口西地区 東京都中央区 0.2518 *** 0.2769 *** 0.2339 *** 東野田町一丁目地区 大阪市都島区 0.0704 *** 0.0518 0.0834 *** 上本町六丁目地区 大阪市天王寺区 0.2470 *** 0.2594 *** 0.2448 *** 勝田駅東口地区 茨城県ひたちなか市 0.0830 * 0.2593 -0.0679 新潟駅南口第二地区 新潟県新潟市 0.0942 ** 0.1683 *** 0.0207 武蔵ヶ辻第四地区 石川県金沢市 0.0046 0.0634 0.0087 大門中央通り地区 長野県塩尻市 -0.0883 *** -0.0757 *** -0.0908 *** JR久留米駅前第一街区地区 福岡県久留米市 0.1121 *** 0.1292 *** 0.1130 *** 中町地区 鹿児島県鹿児島市 -0.0744 *** -0.0784 *** -0.0720 *** 飯田橋駅西口地区 東京都千代田区 0.0566 0.0901 0.0516 新川二丁目地区 東京都中央区 0.0300 0.3380 0.0288 六本木一丁目南地区 東京都港区 0.1236 0.2263 ** 0.0966 新宿三丁目東地区 東京都新宿区 -0.1700 0.0107 * -0.2140 西新宿六丁目西第6地区 東京都新宿区 0.1836 0.2230 0.0500 大都市 (大阪市内) 淀屋橋地区 大阪市中央区 0.0323 -0.0119 0.1218 郡山駅前一丁目第一地区 福島県郡山市 -0.0075 0.0114 -0.0148 宇都宮駅西口第四B地区 栃木県宇都宮市 0.0889 *** 0.1087 *** 0.0843 *** 宇都宮馬場通り西地区 栃木県宇都宮市 -0.0704 *** -0.0791 -0.0687 ** 西大和地区 栃木県那須高原市 0.0381 ** -0.0148 0.0449 *** 豊田市駅前通り南地区 愛知県豊田市 -0.0133 0.0182 -0.0133 岡山市平和町一番地区 岡山県岡山市 0.1101 *** 0.1336 *** 0.1057 *** 南殿町地区 島根県松江市 -0.0760 -0.1031 -0.0810 *** 東桜町地区 広島県福山市 -0.0364 -0.0360 -0.0364 中央町22・23番街区地区 鹿児島県鹿児島市 0.0853 ** 0.0933 0.0826 ※***、**、*は、それぞれ1%、5%、10%有意水準に対応する。 街区単位 の集約化 大都市 (東京都心) 地方都市 事業街区+ 周辺街区係数 大都市 (東京都心) 大街区化 大都市 (大阪市内) 地方都市 図4-1~4において、このグラフの右上に行くほど、事業街区および周辺街区と も地価上昇率が高く、事業を行う価値が高いといえる。一方で、左下に行くほど、地 価下落率が高く、事業を行う価値が低いといえる。

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16 まず、図4-1および図4-2において、大街区化と街区単位の集約化を見比べて みることとする。大街区化は街区単位の集約化に比べて、周辺街区の地価上昇率に与 える影響が大きいといえ、事業街区が地価上昇すれば、それに伴って周辺街区も地価 上昇するが、逆に事業街区が地価下落する場合はそれに伴って周辺街区も地価下落す るといえる。 次に図4-3および図4-4において、大都市と地方都市を見比べてみることとす る。大都市は地方都市に比べて、事業街区、周辺街区とも地価上昇している地区の割 合が高く、地価上昇率も高いといえる。また大都市では大街区化のほうが街区単位の 集約化よりも周辺街区の地価上昇率が高いのに対して、地方都市では、久留米を除い て街区単位の集約化のほうが大街区化よりも周辺街区の地価上昇率が高いといえる。 大街区化 16 地区(大都市 10 地区、地方都市6地区)において、事業街区および周 辺街区の地価上昇率が高い(0.1%以上)地区は大都市5地区、地方都市1地区となって いる。大都市において地価上昇率が高い地区に共通している事項としては、いずれも 図4- 1 地区別地価上昇率(大街区化)4-2 地区別地価上昇率(街区単位の集約化)4-3 地区別地価上昇率(大都市)4-4 地区別地価上昇率(地方都市)

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17 CBD15に近接し、周辺街区に都市機能等が集積していて、正の相乗効果が発生している と考えられる。地方都市において地価上昇している地区(久留米)においては、主要 駅近接および政令市(福岡市、熊本市)と近距離であり、新幹線開業効果に伴う新規 需要の受け皿となっていると考えられる。それ以外の地価上昇率が低い(0.1%未満) 若しくは地価下落している地区の特性としては、CBD から離れていたり、周辺街区に 都市機能等が集積していなかったりしていると考えられる。特に大都市においては、 土地の高度利用および公共貢献の効果が他地区に比べて見劣りしている印象を受け る。 なお、大街区化で地価下落している地区は、大都市2地区、地方都市2地区となっ ている。(該当地区数が少ないが、)いずれも個人施行若しくは民間事業者による任 意の再開発であり、比較的少人数の施行者のみの選好で土地・床利用が定まっている ことが一因とも考えられる。 このことを踏まえ、図4-5において、都市再生特区16に含まれている地区を見るこ ととする。都市再生特区とは、民間事業者等の創意工夫を活かすことを狙った都市計 画の特例制度であり、都市再生効果が高 く発揮されることが期待されているとこ ろであるが、(該当地区は4地区と少な いが、)都市再生特区以外の地区を比べ て地価上昇率に大きな差異が見られな い。4地区のうち(淀屋橋を除く)3地 区が民間事業者による任意の再開発事業 によるものであり、施行者のみの選好で 土地・床利用が定まり、公共貢献も最適 化されていない可能性があることが一因 とも考えられる。 以上の実証分析から得られた結果をまとめると以下のとおりである。 大都市では、地価上昇率は総じて高いといえる。しかし一部の地区においては、地 価が下落していたり、街区単位の集約化地区よりも地価上昇率が低かったりする。 地方都市では、地価上昇率が低い若しくは地価下落している。 この原因としては、CBD から離れていて、周辺に都市機能等が十分集積していない ことや、地方都市においては、土地高度利用の新規需要が少ないこと、従前の価値が 更に失われた可能性があることが考えられる。

15 Central Business District の略で、中心業務地域と訳される。多数の人口が集中する都市において形成される官庁、

企業本社、大規模商店などが集積した地区を指す。

16 都市再生緊急整備地域内において、既存の用途地域等に基づく用途、容積率等の規制を適用除外とした上で、自由

度の高い計画を定めることができる特別区域 http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/seido/kisei/60-2toshisaisei.html

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18 以上のことから、大街区化を行うべきエリアとそうでないエリアを見極める必要が あるといえる。 また、大街区化を取り巻く現行制度について、大街区化の事業手法である再開発や 区画整理において、実証分析からもいえるように地価下落することもあり、主に地方 都市において、事業自体が失敗・破綻した事例もある。 遠藤(2013)viによると 2000 年以降、地価の低い都市ほど事業に対してより手厚い 公的支援(補助金、第 3 セクターによる土地・床取得)がなされている実態を示して おり、公的支援により市場メカニズムに反した土地・床供給がなされてしまっている ことを示唆している。 このことを踏まえ、政府の改善取組が進められているところではあるが、公的支援 制度をより良いものに改善していくことで、政府の失敗を抑え、市場の機能を高める ことが期待できるといえる。

第5章 政策提言

本章では、第3章および第4章で行った現状分析および考察を踏まえ、以下のとお り政策提言を行う。 (1)仕組み・体制の改善 ①大街区化導入の適切な選定基準を設定し、外部経済が期待できるエリアで行い、 そうでないエリアでは当面控える。 これまでも再開発や区画整理においては費用便益分析を行った上で事業化が図られ てきているところであるが、このような科学的分析手法に加えて、今回の実証分析を 参考とした事業認可判断を行う。 具体的には、大都市においては、CBD に近接し、周辺街区を含めて都市機能等の集 積が十分に見込めるエリアに導入する。また、民間事業者等は街区単位の集約化を選 好する可能性も高いため、外部経済を最適化するためにピグー補助金17や、より効果 的な公共貢献に伴う容積率割増を付与する等、政府の適切な介入を行う。 地方都市においては、より慎重に行う。拠点エリアにおける都市機能の集約化を推 進する中で、まずは既設施設等の利活用(リノベーション、コンバージョン)を検討 し、拠点エリアの都市機能の集積が進み、都市機能等の集積が充実した段階で大街区 化を検討する。 17 理想的な矯正補助金のこと。経済学者アーサー・ピグーは、理想的な矯正補助金は正の外部性を有する活動から生 じる外部性の便益に等しいと提唱している(出典:N・グレゴリー・マンキュー「マンキュー経済学Ⅰ ミクロ編(第 3 版)」)

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19 ② 公的支援のあり方の見直しを行い、より効果的なものとする。 事業の資金調達において、公的支援(補助金、第三セクターによる土地・床取得) は最小限とし、最大限の民間資金を誘導させることで、市場性チェックを機能させる こととし、外部経済が期待できる事業に対してピグー補助金を交付する。 ③ 従来のイニシャル単独ではなく、ランニングも含めた事業体制を構築する。 従来の施行者は事業完了後解散しているが、運営・維持管理(エリアマネジメント 18)を含めた事業体制とすることで、外部性の内部化19が可能となる。 上述の提案に関連して、矢ケ部viiは今後の市街地再開発事業の方向性として表5- 1のとおり提案しており、特に地方都市の今後の大街区化検討において留意すべき重 要な示唆であるといえる。 表5- 1 今後の市街地再開発事業の方向性 従来型 低容積型の実態 今後の方向性 高容積 第三者保留床処分 補助金投入 (イニシャル重視) 低容積 公共公益施設整備 第三セクター床取得 補助金算定 身の丈割り増し (イニシャル重視) 逆算開発方式で設定した 市場性ある低容積 民間資金を誘発する公民合築 開発運営一貫の事業主体 (ランニング重視) ゲーム理論のベイジアン仮説20に基づくベイジアン・ゲーム21(図5-1)を用いて 補足説明する。 図5-1の、行政および民間事業者等の利得の設定は以下のとおりとする。 外部経済のある事業の場合、両者の利得はそれぞれ+3とし、事業が行われない場 合、両者の利得は±0とする。外部不経済の事業を行った場合、行政は外部不経済の ダメージ-2を被る。 現状において、民間事業者等が交付金等条件をクリアするためのコストは、外部経 済の事業の場合は0、外部不経済の事業の場合は-2とする。外部不経済の事業を認 可した場合、民間事業者等の利得は+1(=3-2)となる。民間事業者等が交付金 等条件をクリアした上で認可を受けられなかった場合、先行投資を回収できなくなる ため、利得は-3とする(交付金等条件クリアのコスト-2、先行投資回収できなく なることによる損失-1)。 18 地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者等による主体的な取り組 みhttp://tochi.mlit.go.jp/tocsei/areamanagement/web_contents/shien/index_01.html 19 これまでは考慮していなかった外部性を人々が費用としてきちんと認識するようになること(出典:安藤至大「ミ クロ経済学の第一歩」) 20 不確実な事象に直面する意思決定者は事象の確率を主観的に予想し、主観的確率による期待効用が最大となる選択 対象を選択するとする仮説 21 ベイジアン仮説を用いた情報不完備ゲーム(ゲームのルールがプレイヤー全員の共有知識でないゲーム)

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20 今後において、民間資金等調達コストを、外部経済の事業の場合は±0、外部不経 済の事業の場合は-4とする。民間事業者等が民間資金等調達をクリアした上で認可 を受けられなかった場合、先行投資を回収できなくなるため、利得は-5とする(民 間資金等調達のコスト-4、先行投資回収できなくなることによる損失-1)。 大街区化に関する民間提案において、X%は外部経済が見込まれるが、(100-X)%は 外部不経済が見込まれるとする(X>40 とする)。行政としては外部経済が見込まれ る大街区化提案のみを認可したいが、行政が交付金条件のクリアの有無のみを判断材 料にしている現状では、その有無から外部経済があるかを判定できるような分離均衡 が存在せず一括均衡22に陥っており、政府は民間事業者等の大街区化提案について、 外部経済か外部不経済かの正しい見極めができず、交付金条件等を満たしてさえいれ ば、外部不経済となってしまう大街区化事業を認可させてしまう可能性がある。 そこで行政は、例えば、民間資金調達が可能であること、最適かつ十分な公共貢献 を行うとともに開発・運営一体とした事業主体となり得ることといった認可条件を付 し、民間事業者等に対して、事業認可を得るためのシグナリング23・コストを発生さ せることとする。 このことにより、外部不経済となる事業の場合は、民間事業者の利得を0未満とす ることが可能となる。民間事業者等は利得が得られない事業の認可を得ようとする行 動はとらないため、分離均衡24の実現が可能となる。これにより、政府は民間の行動 によって大街区化の事業認可の可否を判断することが可能になるといえる。 図5- 1 ベイジアン・ゲーム(一括均衡→分離均衡) 22 行政が民間事業者等の行動から(民間事業者等の提案が)外部経済があるかどうか判定できない状態であること 23 相手にシグナル(合図)を送って自分のタイプ(能力)を知らせる行為 24 行政が民間事業者等の行動から(民間事業者等の提案が)外部経済があるかどうか判定できる状態であること(20 ~24 の出典:岡田章「ゲーム理論・入門」)

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21 (2)手続等の改善 ① 十分な情報や新規的取組の共有・活用、基礎自治体の消極性の改善を図る。 具体的には、既存の会議体や情報媒体等を有効利用して、基礎自治体や民間事業者 等との十分な情報や新規的取組を共有・活用する場(プラットフォーム)を設けた り、新規的取組およびその共有・公表へのインセンティブとして、表彰・奨励金制度 を拡充したりする。 ② 合意形成促進策をさらに充実させる。 具体的には、科学的知見に基づいた先行事業の効果的な PR(事業効果の「見える 化」、例:大街区化による一層の高度利用やエネルギー効率向上度や、狭隘道路や危 険な交差点の解消による安全性・防災性向上度を科学的に示す)や、基礎自治体や都 市再生機構が用地先買等を行うことで合意形成リスクを低減する。 ③ 公共貢献の最適化を図るとともに、容積率割増の評価との基本的なメカニズム を開示する。 具体的には、公共貢献の最適化に向け、現状のフォローアップを行った上で、公共 貢献と容積率緩和の評価の基本的なメカニズム(関連性)をできるだけ開示し、時点 更新を行う。また、官民の役割分担を事前に確定させ(コミットメント)、ホールド アップ問題を防ぎ、官民の役割分担の明確化および事前確定を行う。

第6章 おわりに

これからの持続可能なまちづくりに向けて、大街区化は非常に効果的なツールの一 つといえるが、大街区化はあくまで「手段」であり、それ自体が「目的」ではないこ とに留意する必要がある。 本稿では、大都市(東京都心、大阪市内)および地方都市を対象とし、大まかな傾 向を明らかにすることに注力したが、今回の研究の対象外とした、大都市郊外や政令 指定都市における実証分析を行うことも、よりきめ細かい検討を行う上で有意義であ ると考える。 また、大街区化における公共用地の増減(率)や公共貢献の質・量が地価に与える 影響や、各基礎自治体等の大街区化に係る事前明示が事業期間に与える影響について 取り上げてみることも大変有意義であると考える。

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謝辞

本稿の執筆にあたっては、主査の沓澤隆司教授、副査の金本良嗣特別教授、杉浦美 奈准教授、森岡拓郎専任講師から懇切丁寧なご指導をいただきました。また、プログ ラムディレクターの福井秀夫教授をはじめ、まちづくりプログラムの、中川雅之客員 教授、鶴田大輔客員教授、安藤至大客員准教授、小川博雅助教授から貴重なご指導を 頂くとともに、橋本博之客員教授、塩澤一洋客員教授からも貴重なご助言をいただき ました。それから、この一年間、家族およびまちづくりプログラムの友人各位からは 多くの励まし・助言をいただきました。さらに国土交通省、東京都、港区をはじめと する行政機関、民間事業者の方々および派遣元である UR 都市機構には、ご多忙中にも かかわらず、ヒアリングやデータの提供にご協力いただきました。ここに記し、感謝 の意を表します。 なお、本稿における見解及び内容に関する誤り等については、全て筆者に帰しま す。また、本稿は筆者の個人的見解を示したものであり、所属機関の見解を示すもの ではないことを申し添えます。 引用文献 i 大沢昌玄(2015)「大街区化:市街地整備の老舗「土地区画整理事業」が贈る新たな メニュー」(区画整理 2015 年 3 月 P7-12) ii 金本良嗣(1997)「都市経済学」(東洋経済新報社) iii 東京都(2014)「東京都における都市再生特別地区の運用について」 iv 林裕二郎(2015)「都市再生特別地区における公共貢献の評価と分析に関する研究- 東京都の都市再生特別地区に着目して-」 v 大沢昌玄(2015)「大街区化:市街地整備の老舗「土地区画整理事業」が贈る新たな メニュー」(区画整理 2015 年 3 月 P7-12) vi 遠藤薫(2013)「低容積型再開発の可能性と活用のあり方」(市街地再開発第 515 号 P42-50) vii 矢ケ部慎一「市街地再開発事業の公的支援策に関する課題と今後の方向性」

図 4-5  地区別地価上昇率(都市再生特区)

参照

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