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[地区計画における地区施設道路等の整備効果に関する分析]

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1

[地区計画における地区施設道路等の整備効果に関する分析]

まちづくりプログラム

MJU09061

津田あゆみ

はじめに

1-1研究の目的と背景

都市計画区域内においては地域地区制(ゾーニ ング)による土地利用規制が行われている。これ らの土地利用規制は規制がなかった場合に用途 や高さの混在によって生じる外部性を制御する ための規制であり、外部性をコントロールするた めの規制と考えられる。

都市が成熟していく過程で、より高度な土地利 用の誘導が必要になってきていること、都市住民 の選好が多様化してきているなかで、地域地区制

(ゾーニング)による土地利用規制では限界があ り、地区計画制度による規制の重要性が高まって きている。

東京都 23 区内の既成市街地では、住宅地区商 業地区を問わず、地区計画を活用した市街地整備 が進められている。地区計画制度は、建物の形 態・容積・高さに関する規制を強化または緩和す るだけでなく、地区整備計画に公園、道路等の位 置及び属性を定めることにより公共施設の整備 手法としても活用されている。

既成市街地において地区計画を活用した市街 地整備を進める場合に、地区施設クラス(幅員6 m~8m程度)の道路整備を進めることで地価増 進という効果は得られているか、あるいはどのよ うな道路空間整備なら地価は増進するのかを分 析することは、今後地区計画策定による市街地整 備を進めていくにあたって有用であると考えら れる。

そのため、本研究では地区計画における道路空 間整備が地価に与えた影響、さらに幅員や策定範 囲、策定手法による影響を分析する。

1-2 先行研究

和泉(1998・1999)は千代田区という都心区を対 象として、用途別容積型+街並誘導型地区計画制 度を併用した地区計画が有意に地価を上昇させ ることを示した。

谷下・長谷川・清水(2009)は、世田谷区の戸建 住宅地区での地区計画は、地区計画に敷地面積の 最低限度制限がある場合に土地価格は高く、ない 場合には低く、指定容積率より厳しい容積率制限 がある場合はさらに低くなることを示した。

さらには、地区計画における地区施設クラスの 道路整備手法に着目して、地区計画策定による影 響を分析した研究はまだない。そのため、地区施 設クラスの道路整備を定めた地区計画に着目し て分析を行う。

1-3 研究対象

東京都23区内の住宅地及び商業地で地区整備 計画を策定した地区計画を対象とする。ただし、容 積緩和型(誘導容積型、容積適正配分型、用途別容 積型)、再開発型、一体開発型、区画整理事業に伴 う地区計画は容積緩和及び開発事業が地価に影響 を与えると考えられるため、分析対象から除外する。

104 地区、1487.5ha を対象とする。

2 地区計画制度の概要 2-1 地区整備計画

地区計画は都市計画法に基づいた制度であり、都 市計画決定の手続きにより市町村が決定する。地区 計画では「地区整備計画」を定めることができる。

地区整備計画で策定できる事項

・地区施設に関する事項

(道路、公園、広場、緑地)

・用途の制限

・容積率の最高限度、最低限度

・建ぺい率の最低限度

・敷地面積の最低限度

・建築面積の最低限度

・壁面の位置の制限

・工作物の設置の制限

・高さの最高限度、最低限度

・形態・意匠の制限

・垣又はさくの構造の制限

・樹林地、草地等の保全

2-2 地区計画の実現方策

地区計画は、届出・勧告による緩やかな規制で ある。勧告は強制力を持たない仕組みであること から、違反しても罰則規定はない。しかし、地区 整備計画定められた事項のうち特に重要なもの について建築基準法に基づく条例1の制限として 定めることができる。建築条例で定められた内容 は建築確認の審査事項となり、建築基準法に基づ き是正命令を行うことができる。

1 都市計画法58条の3、建築基準法69条の2第1項。

用途の制限、容積率・建ぺい率、敷地面積の最低限 と、壁面の位置の制限、高さの最高限度等を定める ことができる。

地区施設の道路

地区整備計画で、

位置及び幅員を定 める(既存、新設、

拡幅)

壁面の位置の制限

地区整備計画で、位置及び 道路境界線(または中心線)

からの後退距離を定める

(2)

2

プラス要因 マイナス要因

① 個 別 敷 地 収 益

・容積率緩和による収益性向 上

・容積率規制強化による収 益性低下

・最高高さ制限による収益 性低下

・道路敷地分の建築敷地が 減少することによる収益性 低下

② 隣 接 敷 地 効 果

・隣接敷地の道路空間等が確 保されることによる通風、採光 の確保

・隣接敷地の道路空間等が確 保されることによる延焼防止

・隣接敷地の最高高さ制限に よる採光の確保

・隣接敷地の床面積増加に 伴う通風、採光の悪化

・容積率規制強化による環境 の向上

・道路空間等確保による防災 性向上

・歩道確保による歩行者の快 適性向上

・道路、壁面後退空間確保に よる街並み及び環境の向上

・歩車道分離による歩行者の 安全性向上

・高さ統一による美観の向上

・車道確保による車両通行ア クセスの向上

・容積率規制緩和による建 て詰まりに伴う環境悪化

・容積等緩和で高容積建築 物と中低容積建築物が混在 することによる環境悪化

・車道確保により通過交通 量が増大したことによる歩行 者の安全性低下

3 地区計画が地価に与える影響の理論分析

地区計画は、策定地区に対して便益と費用をと もにもたらす。地区計画が策定地区外にもたらす 影響をとりあえず捨象すれば、地区計画策定によ る便益と費用のいずれが大きいかは地価に対し て与える影響がプラスかマイナスかで判断でき る。

和泉(1998)は、都心区型地区計画策定における 容積率増大の効果に関して、(a)当該敷地の利用 可能容積増大による高度利用効果、(b)隣接敷地 の利用可能容積率拡大による環境効果、(c)地区 全体計画的市街地更新による環境効果がそれぞ れ土地資産価値へ影響を与えるとしている。

地区計画による規制または規制緩和は個別敷 地、隣接敷地、地区全体にそれぞれにプラス要因 とマイナス要因の影響を与える。プラス要因がマ イナス要因よりも大きければ地価が増進すると いえる。

4 地区計画による道路整備等が地価に与える影響 の実証分析

4-1 検証する仮説

既成市街地の道路整備手法として、地区計画に より地区施設道路等2を整備することは地価にど のような影響を与えるかを検証する。道路整備等 が環境に与える影響が大きいと思われる低層住 宅地、商業地を分析対象とする。

【低層住宅地】

低層住宅地の地区計画は、密集市街地における 防災性向上、良好な戸建住宅地における住環境保 全、基盤整備が未整備な土地の住環境改善を目的 としている。これらの地区計画では、地区施設道 路3や壁面の位置の制限は延焼防止、安全な避難路 の確保、良好な街並み空間の形成のために策定さ れている。

・地区施設道路の整備は通過交通の増加によるマ イナス効果をもたらすが、地区施設道路または壁 面の位置の制限による道路空間整備は、延焼防止、

消防困難区域の解消、通風・採光の住環境改善等 のプラス効果がより大きいのではないか。

仮説①地区施設道路の策定は地価を増進させる。

仮説②壁面の位置の制限は地価を増進させる。

【商業地】

商業地の地区計画は、駅前の商業集積地における 環境向上、商店街の活性化の目的としている。地区 施設道路は交通利便性の向上のために、壁面の位 置の制限は歩行者の快適性、安全性、回遊性向上 のために策定されている。工作物の設置の制限を併 せて策定することで、歩道と一体となった利用が可能 となる。

地区施設道路策定による道路整備は、交通利便 性が向上するメリットが大きいのではないか。

壁面の位置の制限による歩行者空間整備は、歩 行者の快適性向上や回遊性をもたらし、商業空間 改善効果が大きいのではないか。

仮説③地区施設道路の策定は地価を増進させる。

仮説④壁面の位置の制限は地価を増進させる。

検証の方法

ヘドニック・アプローチにより分析する。地区 施設道路、壁面の位置の制限を策定した効果を検 証する。さらに、整備範囲、幅員による効果を検

2 地区施設道路または壁面の位置の制限を地区施 設道路等という

3 地区施設に策定された道路または歩行者空間を 地区施設道路という

隣地敷地の道路整 備、容積率の規制 強化または緩和、

高さ制限による環 境効果

個別敷地毎にもたらされる効果 地区内に一律に もたらされる効果 当該敷地の利用

可能敷地、利用 可能容積増大・

減少による収益 性効果

地区計画策定による土地資産価値の変動効果

環境改善効果

隣接敷地に よる効果

地区全体の 効果 地区全体での 計画的市街地 更新による環 境効果

個別敷地の 収益性効果

(3)

3

証し、何が地価に影響を与えているかを検証する。

整備範囲については、地区計画内の3本以上の道 路を策定した計画と2本以下の計画の比較を行 う。幅員については、おおむね8m幅員の道路を 含む地区計画と6m以下の道路のみの地区計画 の比較を行う。さらに、地区計画内のメイン動線 となる道路に着目して、整備手法により地価に与 える影響を検証する。

4-2 説明変数

東京都23区内の平成 20 年地価公示データ及 び平成 20 年都道府県地価調査を用いて、地区計 画が土地価格に与える影響について分析を行う。

被説明変数P:地価(千円/㎡)

説明変数:地価に影響を与える変数

ダミー変数 下記を策定している地区計画内は1 R1:最高高さ規制強化

R2:容積率の緩和 R3:容積率の規制強化

D2:地区施設道路(新設または拡幅) D3:壁面の位置の制限

E1:地区施設道路(同上)または壁面位置の制限 F1:3本以上の道路に地区施設道路または

壁面の位置の制限

G1:8m(6mより大きい)幅員の地区施設道路、ま たは道路中心線から3mより大きい壁面位置の 制限、または道路境界線から1mより大きい壁面 位置の制限

H1:メイン道路を地区施設道路 H2:メイン道路に壁面の位置の制限

H3:メイン道路を地区施設道路とするとともに、壁 面の位置の制限

4-3 分析結果

(1)低層住宅地

地区施設道路の策定、壁面の位置の制限の策定 がともに地価にプラスの影響を与える結果を得 た。(どちらも1%水準で有意)。さらに内容に着 目すると、メイン道路に壁面の位置の制限を策定、

または、壁面の位置の制限を策定するとともに地 区施設道路を策定すると地価にプラスの影響を 与えるという結果を得た(それぞれ

10%水準、

1%水準で有意)。

しかし、8m幅員の道路整備等はそれらの道路 を含まない地区計画と比較してマイナスの影響 を与えるという結果を得た(5%水準で有意)。 中高層住宅地でも同分析を行ったが、地区施設 道路の策定、壁面の位置の制限の策定は地価に有 意に影響しないという結果を得た。

(2)商業地

地区施設道路の策定は有意な結果を得られな かった。

壁面の位置の制限の策定は地価にプラスの影 響を与える結果を得た。(1%水準で有意)。しか

t値 t値

定数項 7.225 *** 36.64 5.582 *** 37.76

ln(東京駅までの時間距離) -0.288 *** -7.64 -0.098 *** -2.45 ln(最寄駅距離) -0.151 *** -15.07 -0.068 *** -10.37 ln(敷地面積) 0.133 *** 9.47 0.164 *** 9.36 指定容積率 0.006 0.30 0.259 *** 23.04 ln(全面道路幅) 0.208 *** 6.67 0.125 *** 5.32 路線ダミー

23区ダミー

R1(高さ制限強化ダミー) 0.071 1.50 0.134 1.33

R2(容積率緩和ダミー) 0.033 0.12

R3(容積率規制強化ダミー) 0.095 0.50

D2(地区施設ダミー) 0.132 *** 2.94 -0.053 -0.41 修正済み決定係数

サンプル数

(注)***,**,*はそれぞれ1%,5%,10%で統計的に有意であることを示す。

該当なし 該当なし

0.9164 0.8500

510 1072

yes yes

yes yes

被説明変数:ln(価格) 低層住宅地 商業地

係数 係数

t値 t値

定数項 7.204326 *** 36.48 5.600105 *** 38.10

ln(東京駅までの時間距離) -0.2843452 *** -7.55 -0.0953306 *** -2.40 ln(最寄駅距離) -0.1485095 *** -14.78 -0.0685687 *** -10.45 ln(敷地面積) 0.1324254 *** 9.43 0.1616668 *** 9.28 指定容積率 0.0088271 0.41 0.2598959 *** 23.25 ln(全面道路幅) 0.2024906 *** 6.52 0.1264382 *** 5.44 路線ダミー

23区ダミー

R1(高さ制限強化ダミー) 0.0814685 * 1.80 -0.123 -1.08

R2(容積率緩和ダミー) -0.192 -0.67

R3(容積率規制強化ダミー) -0.025 -0.13

D3(壁面位置の制限ダミー) 0.117 *** 3.01 0.408 *** 3.61 修正済み決定係数

サンプル数

(注)***,**,*はそれぞれ1%,5%,10%で統計的に有意であることを示す。

該当なし 該当なし

0.9165 0.8519

510 1072

yes yes

yes yes

被説明変数:ln(価格) 低層住宅地 商業地

係数 係数

t値 t値

定数項 7.210 *** 36.48 5.575 *** 38.02

ln(東京駅までの時間距離) -0.285 *** -7.56 -0.094 *** -2.37 ln(最寄駅距離) -0.150 *** -14.94 -0.068 *** -10.36 ln(敷地面積) 0.133 *** 9.44 0.163 *** 9.39 指定容積率 0.008 0.36 0.261 *** 23.40 ln(全面道路幅) 0.206 *** 6.62 0.127 *** 5.47 路線ダミー

23区ダミー

R1(高さ制限強化ダミー) 0.054 1.03 -0.067 -0.58

R2(容積率緩和ダミー) -0.329 -1.14

R3(容積率規制強化ダミー) 0.233 1.12

E1(地区施設OR壁面ダミー) 0.119 *** 2.80 0.671 *** 4.74 F1(3本以上地施OR壁面ダミー) - - -0.546 *** -3.06 修正済み決定係数

サンプル数

(注)***,**,*はそれぞれ1%,5%,10%で統計的に有意であることを示す。

該当なし 該当なし

0.9163 0.8531

510 1072

yes yes

yes yes

被説明変数:ln(価格) 低層住宅地 商業地

係数 係数

t値 t値

定数項 7.249 *** 36.67 5.609 *** 38.19

ln(東京駅までの時間距離) -0.292 *** -7.74 -0.095 ** -2.40 ln(最寄駅距離) -0.150 *** -14.97 -0.069 *** -10.53 ln(敷地面積) 0.131 *** 9.30 0.162 *** 9.29 指定容積率 0.010 0.45 0.261 *** 23.34 ln(全面道路幅) 0.203 *** 6.53 0.123 *** 5.26 路線ダミー

23区ダミー

R1(高さ制限強化ダミー) -0.013 -0.21 -0.135 -1.19

R2(容積率緩和ダミー) -0.187 -0.65

R3(容積率規制強化ダミー) -0.065 -0.34

E1(地区施設OR壁面ダミー) 0.229 *** 3.49 0.587 *** 3.99 G1(8m幅地施OR壁面ダミー) -0.148 ** -2.19 -0.307 * -1.89 修正済み決定係数

サンプル数

(注2)***,**,*はそれぞれ1%,5%,10%で統計的に有意であることを示す。

該当なし 該当なし

0.9169 0.8522

510 1072

yes yes

yes yes

被説明変数:ln(価格) 低層住宅地 商業地

係数 係数

t値 t値

定数項 7.245 *** 36.80 5.586 *** 37.81

ln(東京駅までの時間距離) -0.290 *** -7.73 -0.096 *** -2.39 ln(最寄駅距離) -0.150 *** -15.05 -0.069 *** -10.41 ln(敷地面積) 0.130 *** 9.26 0.163 *** 9.34 指定容積率 0.005 0.25 0.259 *** 23.07 ln(全面道路幅) 0.207 *** 6.65 0.125 *** 5.36 路線ダミー

23区ダミー

R1(高さ制限強化ダミー) 0.078 * 1.71 0.059 0.56

R2(容積率緩和ダミー) -0.074 -0.26

R3(容積率規制強化ダミー) -0.020 -0.10

H1(メイン地区施設ダミー) 0.062 0.72

H2(メイン壁面制限ダミー) 0.143 * 1.85 0.267 * 1.78 H3(メイン地施AND壁面ダミー) 0.166 *** 3.16 0.099 0.72 修正済み決定係数

サンプル数

(注1)***,**,*はそれぞれ1%,5%,10%で統計的に有意であることを示す。

510 1072

該当なし 該当なし

該当なし

0.9169 0.8503

yes yes

yes yes

被説明変数:ln(価格) 低層住宅地 商業地

係数 係数

(4)

4

し、3本以上の道路に計画を策定すると、2本以 下の計画と比較してマイナスの影響となった。

(1%水準で有意)8m幅員の拡幅を行うと、行 わない地区計画と比較してマイナスの影響とな った(10%水準で有意)。メイン動線となる道路 に壁面の位置の制限を策定すると地価にプラス の影響を与えるという結果を得た(10%水準で有 意)。

5 結果の考察

(1)低層住宅地

仮説①「地区施設道路の策定は地価を増進させ る」は有意に実証された。低層住宅地では道路整 備が防災性向上、安全な避難路の確保、通風・採 光等の確保による住環境改善をもたらす。道路整 備は、通過交通の増加等のデメリットも同時にも たらすが、プラス効果の方が大きいことが示され た。

仮説②「壁面の位置の制限は地価を増進させる」

は有意に実証された。壁面の位置の制限により、

壁面後退空間が確保されることは、防災性向上、

通風・採光等の確保、街並みの改善等の効果があ る。

低層住宅地では、厳しい土地利用規制によっ て建築物の更新が抑制され、セットバックが行 われる機会が限られていることから道路空間 が十分に整備されていない場合が少なくない。

このような場合には、地区計画手法を活用する ことによって地区施設クラスの道路空間を整 備していくことで防災性向上、住環境改善等の 効果が得られると考えられる。

低層住宅地の中には、良好な戸建住宅地にお ける住環境維持保全を目的とした地区計画や 密集市街地における防災性の向上を目的とし た地区計画が策定されているところがある。

良好な戸建住宅地によって、壁面の位置の制 限を策定することは、通風・採光を確保し良好 な住環境を維持保全することができる。また、

壁面後退空間を緑化し、道路沿道に良好な街並 みを形成する効果がある。

密集市街地では多くの4m未満の道路があ ることから、道路空間を整備することは、防災 性の向上や安全な避難の確保等の環境改善効 果がある。さらに、沿道の建替えが促進され、

建築物の耐火率が高まり、地区全体の防災性が 向上する。これらのように、低層住宅地では、

道路空間の整備が住環境の向上に大きく寄与 する。

(2)商業地

仮説③「地区施設道路の策定は地価を増進させ る」ことは有意な結果を得られなかった。

仮説④「壁面の位置の制限の策定は地価を増進

させる」ことは有意に実証された。壁面の位置の 制限は、歩行者の回遊性、快適性の向上に寄与し、

地価を増進させる効果があるといえる。

しかし、商業地においても8m幅員の道路等は マイナスとなり、広幅員の道路による車両増加等 によるデメリットが、道路空間整備のメリットよ りも大きいと考えられる。また、道路拡幅のメリ ットとして、容積率の増加があげられるが、指定 容積率が 400%の地区では6m道路が8m道路に 拡幅される場合の容積率の増加が大きいとはい えない。これが8m道路に拡幅しても地価増進効 果が得られていないことの要因の一部となって いると推測される。

さらに、3本以上の道路整備等がマイナス、2 本以下の道路整備等はプラスの影響となったこ とは、一定の範囲内での道路整備等が地価を増進 させ、過剰な道路整備は地価の増進に寄与しない とことを示している。

また、メイン動線となる道路に壁面の位置の制 限を策定することは、地価にプラスの影響を与え る。

商業地における複合市街地形成を目的とした 地区計画では、壁面の位置の制限による統一した 壁面線が良好な環境や街並みの維持保全に寄与 するといえる。また、商業集積地や商店街の活性 化を目的とした地区計画では、壁面の位置の制限 による歩行空間の確保により、歩行者の回遊性や 快適性を向上させ、商業空間の活性化の効果があ ると考えられる。そして、地区内の主要な動線と なる道路に計画を策定すると、地価増進の効果が あるといえる。商店街において、壁面の位置の制 限を策定することは、商業空間の向上に効果があ るといえる。さらに、壁面の位置の制限は建築条 例を策定することによって法的強制力をもたせ ることができる。このために、地区施設の道路と 比較して壁面の位置の制限は整備される実現可 能性が高いことも地価増進に寄与していると考 えられる。

6 政策的含意についての検討

(1)地価増進に寄与する道路整備等のあり方 既成市街地の低層住宅地では、道路整備手法と して地区計画の地区施設道路を活用していくこ とが望ましいと考える。密集市街地においては防 災街区地区計画を活用して地区施設道路を整備 していくことが望まれる。

商業地においては、地区施設道路として道路ま たは歩行者空間の整備を行うよりも、壁面の位置 の制限による歩行者空間を活用していくことが 望ましい。

しかし、住宅地商業地ともに広幅員の道路は過 剰な規制となることをふまえて計画策定を行う ことが求められる。

(5)

5

(2)低層住宅地における道路の整備のあり方 低層住宅地では道路整備による防災性向上等 のプラス効果がある。一方で、道路敷地分の建築 敷地面積が減少して土地の収益性が低下するマ イナス効果がある。地区計画策定により、地区全 体では地価が増進しても、個別土地所有者ごとに 道路土地負担分のコストは異なる。土地負担分の コストが地価増進のプラス効果を上回る土地所 有者は過大な負担となる。このような土地所有者 に対し、地価増進効果以上に道路敷地を負担する コストに応じて、道路等用地費または整備費の補 償を行うことを提言する。

(3)地区計画の評価手法の確立

地区計画の策定を行うのは市町村であるが、

ほとんどの市町村は地区計画策定後の整備進 捗状況を把握していない。しかしながら、地区 計画策定の効果を検証するためには、整備進捗 状況を把握する必要がある。現在は策定された 地区計画をその後の進捗状況に照らして評価 する仕組みがない。地区計画に見直しの必要が 生じたとしても、市町村には見直しを行うイン センティブが働かない。このために一旦策定さ れた地区計画はその後の整備進捗状況とは無 関係に維持される。そこで、他の都市計画事業 の場合と同様に、策定から一定の年数毎に整備 進捗状況を把握して、地区計画の効果を評価す る仕組みを確立すべきである。さらに、整備進 捗状況に関する情報を公開することが必要で ある。

7 今後の課題

本研究では、地区計画による規制内容をとらえ て地価への影響を実証分析しているが、厳密には それぞれの地区計画の整備進捗状況で地価への 影響は異なる。整備進捗状況を考慮した分析によ り、一層精緻な分析結果が得られる。

また、さらなる分析として地区計画策定前から 策定後にかけての時系列の価格変化を捉え、道路 敷地負担のある土地とない土地で比較分析を行 うと、各地区計画の効果について、より深い知見 を得られるものと考えられる。

主な参考文献

和泉洋人(1998) 『地区計画策定による土地資産価 値増大効果の計測』都市住宅学 23 号,211~220 和泉洋人(1999) 『地区計画による容積率緩和がも

たらす土地資産価値変動効果の計測』都市住宅学 27 号,143~152

谷下雅義、長谷川貴陽史、清水千弘(2009) 『景観 規制が戸建住宅価格に及ぼす影響』計画行政 32(2),71~79

参照

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