様式8の1の2 別紙2
論文審査 論文審査 論文審査
論文審査の の の の結果の要旨 結果の要旨 結果の要旨 結果の要旨
専攻名 システム創成工学 氏 名 MIAH MD JALIL
芳香環がらせん状に連結され、ねじれたπ共役系を持つヘリセンは、光学的および電気化学 的に興味深い特性を発現することが期待される化合物である。それらの特性を材料の機能として 効率的に発現させるためのアプローチとして、分子の配向や配列、密度分布などが制御された薄 膜とする方法が考えられる。本研究は、光エネルギー利用の観点からヘリセン化合物の薄膜化と 光電流特性に着目して行われている。膜物質としては、親水基構造が系統的に異なる両親媒性オ キサ[9]ヘリセン誘導体が合成され用いられている。それらの化合物に対してLangmuir-Blodgett
(LB)法を適用して作製された分子膜の物性や形態が評価され、分子充填構造が精密に解析さ れている。また、親水基構造と膜構造、光電気化学的特性の関係について論じられている。
本研究で得られた主な成果は次のようにまとめられる。
1)オキサ[9]ヘリセンの9位に、親水基として水酸基を有する化合物およびオキシエチレン(EO) 基数nが2、3、4、6であるエチレングルコール鎖が導入された化合物が合成され、それらに対す るLB法による単分子膜形成能を明らかにした。オキサ[9]ヘリセンや水酸基のみを親水基として 持つ化合物を用いた場合は多層膜領域を含む膜が形成されるが、EO基数が2以上の化合物に対し ては均一な単分子膜が形成されることを示した。
2)固体基板上に移行された単分子膜における分子充填構造を、X線反射率法による解析や分子 力学法による構造モデルとの比較、紫外可視吸収スペクトル、水面上の展開単分子膜に対する表 面圧-分子占有面積等温線などに基づき提案した。単分子膜中で、ヘリセン部位はスタッキング した状態で基板表面に対してほぼ垂直に配向しており、親水部のエチレングリコール鎖はランダ ムコイル状にコンパクトに充填されているものと考えられた。スピンコート法や蒸着法により作 製された薄膜中では、ヘリセンの芳香環が固体基板に平行に配向してスタッキングした膜が得ら れることが多いのに対し、疎水性のヘリセン骨格に親水部を導入し、適切な両親媒性を付与した 化合物にLB法を適用することによって、芳香環が基板に垂直に配向した良質な単分子膜を作り 出せることが示唆された。
3)親水部におけるEO基数に依存した光電流発生量の変化を明らかにした。EO基数が4までの 化合物から作製された単分子膜に対する光電流値はEO鎖長の増加に伴って増加したが、EO基数 が6の化合物の単分子膜では予想されるよりも小さな値であった。これは、エチレングルコール 部位は電子ドナーとして作用するため、光電流値を増加させるが、EO基が長くなるとエチレン グルコール鎖の立体障害によりヘリセン部位の密な充填が妨げられるためであると推察した。
本論文について、2016年2月15日に陽東キャンパス211教室において、全審査委員および関連分
野の研究者の出席の下、公聴会が開催され、論文内容の発表の後、質疑応答が行われた。公聴会 終了後に審査委員全員による学位審査委員会を開催し、本論文の内容について詳細に検討した。
その結果、本論文は、適切にデザインされたヘリセン化合物を用いることでヘリセン部位が垂直 配向して充填された均一な分子膜の作製が可能であることを示し、分子構造と膜における分子充 填構造、光電気化学的特性との関係について明らかにするとともに、ヘリセン化合物およびその 薄膜の設計指針や応用展開に対する意義のある知見を与えていることが認められた。また、研究 内容は工学的に価値が高く、学術的水準も優れていると判断した。
よって、本論文は博士(工学)の学位論文に値するものと認める。