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(1)

第3節教員を対象とした質問紙調査 第1項 保健学習の指導の難しさについて

 第2節で対象となった生徒の授業を担当した教員が,保健学習の指導の難しさについて どのように感じているかについて分析を行った。

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図5−1学習内容(17項目)に対する指導の難しさについて

 保健学習の指導が比較的指導しやすいと答えた内容は,「喫煙,飲酒と健康」14名,「応急手 当」14名,「薬物乱用と健康」13名,「医薬品の正しい使用」13名,「交通安全」13名,「感染症 とその予防」12名,「心身の相関とストレスへの対処」12名,「結婚生活と健康」12名であった。

このうち,「喫煙,飲酒と健康」,「応急手当」については,第2節第3項の生徒の学習内容

(17項目)に対する各意識において,肯定的回答が高率であった内容と共通していた。

 比較的指導が難しいと答えた内容は,「我が国や地域の保健・医療制度や機関」9名,「環境の 汚染と健康」8名,「食品保健に関わる活動」7・名,「労働と健康」6名であった。このうち,「我 が国や地域の保健活動」,「労働と健康」については,生徒の学習内容(17項目)に対する各 意識に対する肯定的回答が低かった内容と共通していた。

      67

(2)

第2項各学習内容(17項目)に活用された授業方法について

 第2節で対象となった生徒の授業を担当した教員が,学習内容(17項目)のそれぞれの 授業で活用した授業方法について分析を行った。

   (1)講義のみ

(ワークシートの活用を含む)

  (2)ブレインストーミング     (3)ケーススタディ     (事例による学習)

   (4)ロールプレイング     (役割演技法)

     (5)実習・実験   (6)課題解決的な学習  (7)VTR・パンフレット、

パワーポイントなどの活用   (8)コンピュータの活用

 (9)ティーム・ティーチング

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図6・3 「(3)喫煙,飲酒と健康」の内容で活用された授業方法

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図6・4 「(4)薬物乱用と健康」の内容で活用された授業方法        69

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図6・5 「(5)医薬品の正しい使用」の内容で活用された授業方法

   (1)講義のみ

(ワークシートの活用を含む)

  (2)ブレインストーミング     (3)ケーススタディ     (事例による学習)

   (4)ロールプレイング     (役割演技法)

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図6・6 「(6)感染症とその予防」の内容で活用された授業方法       70

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   (1)講義のみ

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  (2)ブレインストーミング     (3)ケーススタディ     (事例による学習)

   (4)ロールプレイング     (役割演技法)

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  (6)課題解決的な学習  (7)VTR・パンフレット、

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図6−7 「(7)心身の相関とストレスへの対処」の内容で活用された授業方法

   (1)講義のみ

(ワークシートの活用を含む)

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図6・8 「(8)交通安全」の内容で活用された授業方法       71

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図6・10 「(10)思春期における心身の発達と健康」の内容で活用された授業方法        72

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図6・11 「(11)性意識と性行動の選択」の内容で活用された授業方法

   (1)講義のみ

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図6・12 「(12)結婚生活と健康」の内容で活用された授業方法

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   (1)講義のみ

(ワークシートの活用を含む)

  (2)ブレインストーミング     (3)ケーススタディ     (事例による学習)

   (4)ロールプレイング     (役割演技法)

      (5)実習・実験

  (6)課題解決的な学習  (7)VTR・パンフレット、

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図6・13 「(13)加齢と健康」の内容で活用された授業方法

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   (1)講義のみ

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図6−15 「(15)環境の汚染と健康」の内容:で活用された授業方法

   (1)講義のみ

(ワークシートの活用を含む)

  (2)ブレインストーミング     (3)ケーススタディ     (事例による学習)

   (4)ロールプレイング     (役割演技法)

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図6・16 「(16)食品保健に関わる活動」の内容で活用された授業方法       75

(10)

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   (1)講義のみ

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図6・17 「(17)労働と健康」の内容で活用された授業方法

 生徒の学習内容(17項目)に対する意識が,他の項目に比べ高率であった「喫煙,飲酒と 健康」では,「ブレインストーミング」1名,「ケーススタディ」4名,「ロールプレイング」

4名,「実験実習」3名,「課題解決的な学習」1名,「VTR・パンフレット,パワーポイン トなどの活用」8名であった。

  「応急手当」では,「ケーススタディ」3名,「ロールプレイング」2名,「実験実習」12

・名,「VTR・パンフレット,パワーポイントなどの活用」9名,「コンビ。ユータの活用」1 名であった。これらの学習内容では,講義に加え,「VTR・パンフレット,パワv一一一・ポイン

トの活用」,「ケーススタディ」,「ロールプレイング」など様々な指導方法が実践されてい

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 生徒の学習内容(17項目)に対する意識が,他の項目に比べ低率であった,「健康に関わる 意思決定と行動選択」では,「ケーススタディ」4名,「ロールプレイング」1名,「課題解 決的な学習」1名,「VTR・パンフレット,パワーポイントなどの活用」1名であった。

  「様々な保健活動」では,「ケーススタディ」2名,「VTR・パンフレット,パワーポイ ントなどの活用」1名であった。

  「我が国や地域の保健・医療制度や機関」では,「ケーススタディ」1名,「課題解決的な

       76

(11)

学習」1名,「VTR・パンフレット,パワv一一一ポイントなどの活用」2名であった。

 「労働と健康」では,「ケーススタディ」2名,「VTR・パンフレット,パワL一一・ポイント などの活用」1名であった。これらの学習内容では,講義以外の授業方法を活用している教 員が少なかった。

77

(12)

第4章 考察

・日常生活における実践状況

 本調査の結果,保健学習で学習したことから日常生活などについて,振り返ったり,調 べたりできているのかに焦点を当てた2項目については,肯定的回答の割合は,30%程度 にとどまった。

 新学習指導要領解説2)の「保健」の目標には,「生涯を通じて自らの健康を適切に管理し,

改善していく資質や能力を育てる。」とあり,「現在及び将来の生活において健康・安全の 課題に直面した場合に,的確な思考・判断に基づいて適切な意志決定を行い,自らの健康 の管理や健康的な生活行動の選択及び健康的な社会づくりが実践できるような資質や能力,

即ち実践力の基礎を育成することを目指している。」と示されている。よって,実践力の育 成という視点からすると,本調査の結果は,十分なものとはいえず,生徒の実践力の育成 のための指導の工夫や努力を行っていく必要があると考えられた。

・保健の学習意欲

 保健学習に対する「感情」,保健学習の「価値」,保健学習への「期待」について調査し た結果,保健学習に対する「価値」,「期待」の肯定的回答の割合は,比較的高率であった が,「感情」については,「価値」,「期待」に比べ低率であった。この結果は,全国調査と 同様であり,なぜ「感情」に対する学習意欲が低いかについて,その要因を探っていく必 要があると示唆された。

 しかし,「期待」に関する項目である「保健の学習は大切だ」,「保健の学習は,健康な生 活を送るために重要だ」は,全体で80%を超えており,多くの生徒が保健学習は生きてい く上で重要な内容を取り扱うものであるということを,ある程度受け止められているもの と思われた。また,生徒の「価値」,「期待」は,保健の様々な学習を通して向上すること が期待されるものであり,本調査の結果は,保健学習の成果と考えられ,保健学習の重要 性を示唆するものである。

 男女別でみた結果では,保健学習に対する「感情」は3項目全て男子の方が肯定的回答 の割合が高かった。保健学習の「価値」においては,4項目全て,女子の方が肯定的回答の 割合が高かった。保健学習への「期待」においては,男子の肯定的回答の割合が高かった 項目は「保健の学習をすれば,心や体の不安や悩みを軽くしたり解決したりするのに役立 つ」,「保健の学習をすれば,国民全体の健康づくりにつながる」であり,女子の肯定的回        78

(13)

答の割合が高かった項目は「保健の学習をすれば,私の今の生活に役立っ」,「保健の学習 をすれば,健康な生活ができるようになる」,「保健の学習をすれば,社会に出てからの生 活に役立っ」であった。

 先行研究6)によれば,「我が国においては,こうした男女差についてはこれまでほとんど 示されていない」と報告されている。しかし,保健学習は学習内容によって性差が関係す

ると考えられるものも含まれていることから,今後こうした男女差を生じさせる要因を明 らかにごることが課題であると考えられた。

・学習内容(17項目)に対する意識

 中央教育審議会答申4)には,学力の重要な要素として,「①基礎的・基本的な知識・技能 の習得」「②知識・技能を活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力」

の3つであることを明確に示している。よって,教科の学習ではこれらの3つの要素を重 視した学習を高めることが求められる。

 学習内容(17項目)に対する意識の項目は,学力の重要な3要素にそれぞれ想定したもの と考えられ9),「好きでしたか」は「③学習意欲」に,「考えたり工夫したりできましたか」

は「②思考力・判断力・表現力」に,「内容はわかりましたか」は「①知識・技能」に対応 すると考えられる。本調査では,「日常生活における実践に対する意識」についても調査を 行うため,「将来,自分の生活に生かそうと思いますか」を加えた。

 この4項目についてFriedman検定を行った結果,全ての項目に有意な差が確認され,

各学習内容(17項目)に対する意識には違いがあると推察された。

  「内容はわかりましたか」及び「将来,自分の生活に生かそうと思いますか」に関する 項目は,肯定的回答の割合が否定的回答の割合をはるかに上回る結果となった。しかし,「日 常生活における実践状況」が良好ではなかったことから,生徒の意識と実践が関連するた めの授業の改善の工夫と努力を行う必要があると考えられた。また,「考えたり工夫したり できましたか」,「好きでしたか」に関する項目は,良好なものではなかった。すなわち,「② 思考力・判断力・表現力」「③学習意欲」の向上を図るための学習指導の工夫が求められる。

 学習内容(17項目)のそれぞれについて,肯定的回答の割合が他の項目に比べ高率であっ たものは,「喫煙,飲酒と健康」,「応急手当」であった。また,他の項目に比べ低率であっ たものは,「健康に関わる意思決定と行動選択」,「様々な保健活動」,「我が国や地域の保健・

医療制度や機関」,「労働と健康」であった。また,学習内容(17項目)に対する意識(4項目)

       79

(14)

ごとの「覚えていない」の割合については,学習内容によって回答にばらつきが見られた。

中でも特に,「喫煙,飲酒と健康」,「薬物乱用と健康」,「応急手当」については低く,「健康 に関わる意志決定と行動選択」,「様々な保健活動」については高かった。

 これらのことから,日常生活など自分自身に関わりのあることと学習内容との関連がイ メージしゃすい内容に対する意識が高く,一方で,意識の低かった「健康に関わる意志決 定と行動選択」,「様々な保健活動」については,生徒や教師にとって学習内容が難しかっ たり,日常生活との関連についてイメージしにくかったりするのではないかと考えられた。

 学習内容(17項目)に対する意識について,男女別にFriedman検定を行った結果,男女 ともに全ての項目に有意な差が確認され,各学習内容(17項目)に対する意識には違いが あると推察された。また,男子の方が「保健学習が好きでしたか」に対する肯定的回答の 割合が全体的に高く,「保健学習に対する感情」と同様の傾向であると考えられた。

  「考えたり工夫したりできましたか」,「内容はわかりましたか」,「将来,自分の生活に 生かそうと思いますか」に対する肯定的回答の割合は,全体的に女子の方が高かった。し かし,女子の方が「覚えていない」の割合のばらつきの幅が,全ての項目に対して大きか った。このことから,女子の方が保健学習に対する肯定的な意識が高いものの,学習内容  (17項目)に対する意識の違いは女子の方が大きいと推察された。よって,学習内容に対

する生徒の意識を高めるための授業改善を図る際には,特に女子において学習内容と性差 との関連について考慮する必要があることが示唆された。

・各学習内容(17項目)の細目

 各学習内容(17項目)の細目に対する関心の程度が,他の項目に比べ高かった学習内容は,

順に「応急手当」,「医薬品の正しい使用」,「喫煙,飲酒と健康」,「感染症とその予防」で あった。「応急手当」,「喫煙,飲酒と健康」に関しては,学習内容(17項目)に対する各意識 において,肯定的回答の割合の率の高かった項目と同様であった。この細目のうち,特に 関心の程度が高かった項目は次の通りであった。

 「応急手当」の細目では,「日常的なけがの応急手当の手順や方法について」,「AED(自 動体外式除細動器)の活用法について」,「喫煙,飲酒と喫煙」の細目では,「喫煙,飲酒が 周囲の人や胎児に及ぼす影響について」,「喫煙,飲酒と疾病との関連について」であった。

 「応急手当」については,従来から重視されてきた内容であり,具体的かっ実践的な内容 であったことが,関心の程度が高かった要因ではないかと考える。また,「喫煙,飲酒と健       80

(15)

康」については,現代的な課題をテーマとした授業案や教材が開発され指導書や資料集など が多く出版されていること,また,教員研修などの充実が図られていることなどが,肯定的 回答の割合が高かった要因ではないかと推察される。

 各学習内容(17項目)の細目に対する関心の程度が,他の項目に比べ低かった学習内容は,

順に「性意識と性行動に選択」,「思春期における心身の発達と健康」,「様々な保健活動」,

 「我が国や地域の保健・医療制度や機関」であった。

  「性意識と性行動に選択」,「思春期における心身の発達と健康」など,性に関する関心 は一見高いのではないかと思われたが,生徒の関心は低かった。その原因としては,保健 学習で教える性についての内容と,高校生の考える性に対する考えが必ずしも一致してい ないことが原因ではないかと考えられた。

 また,「様々な保健活動」,「我が国や地域の保健・医療制度や機関」に関しては,学習内 容(17項目)に対する各意識において,肯定的回答の割合が低かった項目と同様であった。こ の細目のうち,特に関心の程度が低かった項目は次の通りであった。「様々な保健活動」の 細目では,「ヘルスプロモ…一・ションの考え方について」,「健康日本21の主な内容について」

であり,「健康に関わる意志決定と行動選択」の細目では,「適切な意志決定・行動選択をし ゃすい社会について」,「意志決定・行動選択に影響を及ぼす要因について」であった。

 「様々な保健活動」については,学習内容が概念や定義など抽象的なものであることが,

関心の程度が低かった要因ではないかと考えられた。特に,「ヘルスプロモーション」につ いては,平成9年の保健体育審議会答申の「生涯にわたる心身の健康に関する教育・学習の 充実」1)の中で,「ヘルスプロモーションの理念に基づく健康の保持増進」として取り入れら れており,保健学習の基盤となる内容であるといえる。よって,本調査の結果は,非常に憂 慮されるべき課題であり,生徒に抽象的な内容を具体的に,実践的に学習させるための指導 方法を模索していく必要がある。

 「健康に関わる意志決定と行動選択」については,他の学習内容とも関連の深いものであ るが,関心の程度が低かった。その原因として,生徒が意志決定・行動選択について実践は できているが,その定義や内容も含め「意志決定・行動選択」という用語に対する理解がで きていないのではないかと考えられた。よって,指導者は他の学習内容とどのように関連し ているのかを把握し,「健康に関わる意志決定と行動選択」で学習する内容は,様々な場面 で活用しているものであることを生徒に伝えられるよう,保健学習全体を見通した指導計画 などを行うことが重要である。

      81

(16)

 また,各学習内容(17項目)の細目に対する関心の程度の割合が低かった10項目のうち,

「ヘルスプロモーションの考え方について」,腱康日本21の主な内容について」,「適切な 意志決定・行動選択をしゃすい社会について」,「保健行政の役割と仕組みについて」,「世 界保健機関などの国際機関の諸活動の主な内容について」が含まれており,この結果から,

保健行政,制度の仕組みや対策に関する内容に対する関心が低いことが考えられた。

 森3)によれば「保健は,生涯を通じて自らの健康を適切に管理し改善していく資質や能 力を育成するため,小・中・高等学校を通じて系統性のある指導ができるように発達段階

を踏まえて,内容の体系化が図られている。」と述べている。具体的な内容は,「発達の段 階を踏まえ,小学校は「身近な生活」に関する内容をより実践的に,中学校は「個人生活」

に関する内容をより科学的に,高等学校は「個人及び社会生活」に関する内容をより総合 的に理解することをめざして指導することになる。」というものである。保健行政,制度の 仕組みや対策に関する内容については,高等学校で新たに指導することが求められる「社 会生活」に深いかかわりがある内容であり,学習内容がより発展的で複雑であることが,

意識の低さに影響を与えているのではないかと考えられた。また,新学習指導要領2)には,

「保健」の目標として「個人生活及び社会生活における健康・安全について理解を深める ようにし」と掲げられており,学習指導の方向として,ヘルスプロモーションの考え方を 生かして健康に関する個人の適切な意志決定や行動選択及び健康的な社会環境づくりを行

うことが示されている。

 本調査の結果において,高等学校で学習すべき「社会生活」と深い繋がりのある内容に 対する意識が低かった。しかし,生徒には学校教育を通じて,「生きる力」として格差社会 に対応できる力育むことが求められる。よって,指導の際には,生徒に「個人的な責任」

に加え,「社会的な責任」も負っていかなければならないという複眼で社会を捉えられるよ う,このような領域の指導方法の充実を図ることが必要と考えられた。

 またこのことに加え,このような領域に対する授業研究や教材などが少ないことも要因 として考えられる。よって今後,授業研究や研修会など,社会的な支援の充実を行うこと も重要であると考える。

 各学習内容(17項目)の細目に対する関心について男女別にみると,肯定的回答が高かっ た10項目の中に,女子については,「喫煙,飲酒が周囲の人や胎児に及ぼす影響について」

が含まれており,低かった10項目の中に,男子については,「女性の性周期と基礎体温の 関係について」,「女性に関する思春期の体の特徴について」が,女子については「男性に        82

(17)

関する思春期の体の特徴について」が含まれていた。この結果から,「異性の身体に関する 内容」に対する関心が低いと考えられた。

 先行研究6)では,「学習内容によって習得状況が大きく異なり,性に関する基礎的な内容 やHIVに関する内容の習得状況が十分でなかった」と報告されている。さらには,吉村11)

は,「保健の学習課題の周辺部分はなんとなく習得しているが,人の身体のつくりと仕組み を理解して疾病の予防につなげるという保健学習のコア部分がしっかりと習得されていな い。」と述べている。このことから,まずは自分自身の身体について関心を持てるように,

さらには,異性の身体についても関心が持てるように,性教育との関連を踏まえて授業を 展開することが必要であると考えられた。

・教員を対象とした質問紙調査

 保健学習の指導を比較的しゃすいと答えた内容は,「喫煙,飲酒と健康」,「応急手当」,「薬 物乱用と健康」,「医薬品の正しい使用」,「交通安全」,「感染症とその予防」,「心身の相関

とストレスへの対処」,「結婚生活と健康」であり,比較的指導が難しいと答えた内容は,「我 が国や地域の保健・医療制度や機関」,「環境の汚染と健康」,「食品保健に関わる活動」,「労 働と健康」であった。生徒の意識が高く,教員も指導しやすいと回答した学習内容のうち,

「喫煙・飲酒と健康」の授業では,「VTR・パンフレット,パワーポイントなどの活用」

や,「ケーススタディ」,「ロールプレイング」による指導方法を,「応急手当」の授業では,

「VTR・パンフレット,パワーポイントなどの活用」や「実験・実習」による指導を取 り入れたと回答する教員が多く,講義に加え,様々な授業方法を活用していた。また,生 徒の意識が低く,教員も指導が難しいと回答した「我が国や地域の保健・医療制度や機関」

の授業については,講義以外の授業方法を活用している教員が少なかった。このことから,

教員が指導しやすいと考えている学習内容の授業は,その内容に即した授業方法の工夫が 進められていることから,これにより生徒の意識も高くなったと考えられる。一方,指導 が難しい内容については,講義以外の授業方法を活用することが難しく,従って生徒の意 識も高まりが見られないと考えられる。このことについて,「これからの高等学校保健学習」

12)では,「「関心・意欲」が高まるような学習には,ねらいに応じた多様な教材を開発したり 学習方法を工夫したりしていくことが不可欠」と述べられている。このことからも,保健 を専門とする教員がその専門性を発揮し,指導が難しいと捉えられている学習内容の授業 方法について教材の工夫などの改善を行うと同時に,授業研究や研修会など社会的な支援        83

(18)

を行うことで,生徒の意識の向上に繋がるのではないかと示唆された。

 また,本調査の結果から共通して言えることとして,「ブレインストーミング」,「コンピ ュータの活用」,「ティーム・ティーチング」の授業方法を活用している割合が低かったこ とがある。「コンピュータの活用」,「ティーム・ティーチング」においては,各学校の設備 や体制によって実践することが難しい場合があると考えられる。しかし,「ブレインスト…一・

ミング」に関しては,新学習指導要領2)に創造的思考力を鍛える上で有効であることが例 示されており,積極的に取り入れることができる授業方法であると考えられる。

84

(19)

第5章 総括

 本研究は,現行の学習指導要領に記載されている保健の学習内容に対する高校生の意識 および関心の程度について調査を行い,特に意識および関心の低い内容については,その 課題を検討することで,今後の保健学習を充実させるための基礎資料とすることを目的と

した。

 調査は,①保健体育科教員対象の個別インタビュー,②高校生を対象とした質問紙調査,

③②で対象となった生徒が在籍する高等学校の保健体育科教員を対象とした質問紙調査 の手順で進め,以下のことが明らかとなった。

1) 「日常生活における実践状況」についての肯定的回答の割合は,30%程度にとどまり,

実践力の育成という視点からすると,本調査の結果は十分なものとはいえず,生徒の実践 力の育成のための指導の工夫や努力を行っていく必要があると考えられた。

2)保健の学習意欲については,保健学習に対する「価値」,「期待」の肯定的回答の割合は,

比較的高率であったが,「感情」については,「価値」,「期待」に比べ低率であった。この 結果は,全国調査と同様であり,「感情」に対する学習意欲が低い要因を探っていく必要 があることが示唆された。

3)保健学習への「期待」に関する項目である「保健の学習は大切だ」,「保健の学習は,健 康な生活を送るために重要だ」は全体で80%を超えており,多くの生徒が保健学習は生き ていく上で重要な内容を取り扱うものであるということをある程度受け止められている ことは,保健学習の成果であると考えられた。

4)保健の学習意欲について男女別に肯定的回答の割合をみると,「感情」については男子の 方が高く,「価値」については女子の方が高く,「期待」については,5項目中3項目が女 子の方が高かった。保健学習では,学習内容と性差との関係の深い内容も指導していく必 要があることから,今後こうした男女差を生じさせる要因を明らかにしていくことが課題 であると考えられる。

5)学習内容(17項目)に対する意識には違いがあると推察された。特に,「内容はわかりまし たか」及び「将来,自分の生活に生かそうと思いますか」に関する項目は,肯定的回答の 割合が否定的回答の割合をはるかに上回る結果となった。しかし,「日常生活における実 践状況」が良好ではなかったことから,生徒の意識と実践が関連するための授業の改善の 工夫と努力を行う必要があると考えられた。

6)学習内容(17項目)に対する意識について,「考えたり工夫したりできましたか」,「好きで

      85

(20)

したか」に関する項目は良好なものではなく,「思考力・判断力・表現力」「学習意欲」の 向上を図るための学習指導の工夫が求められる。

7)学習内容(17項目)のうち,肯定的回答の割合が他の項目に比べ高率であったものは「喫 煙,飲酒と健康」,「応急手当」であり,低率であったものは「健康に関わる意思決定と行 動選択」,「様々な保健活動」,「我が国や地域の保健・医療制度や機関」であった。

8)学習内容(17項目)に対する意識について,女子の方が各項目間の意識の差が大きいと推 察された。よって,学習内容に対する生徒の意識を高めるための授業改善を図る際には,

特に女子において学習内容と性差との関連について考慮する必要があることが示唆され

た。

9)各学習内容(17項目)の細目に対する関心の程度が,他の項目に比べ高かった学習内容は,

順に「応急手当」,「医薬品の正しい使用」,「喫煙飲酒と健康」,「感染症とその予防」であ  り,低かった学習内容は,順に「性意識と性行動に選択」,「思春期における心身の発達と

健康」,「様々な保健活動」,「我が国や地域の保健・医療制度や機関」であった。

10)各学習内容(17項目)の細目に対する関心の程度の割合が低かった10項目から,「保健行 政,制度の仕組みや対策に関する内容」に対する関心が低いことが考えられた。また,男 女別に分析を行った結果,「異性の身体に関する内容」に対する関心が低いと考えられた。

11)教員を対象とした質問紙調査の結果,保健学習の指導を比較的しゃすいと答えた内容は,

 「喫煙,飲酒と健康」,「応急手当」,「薬物乱用と健康」,「医薬品の正しい使用」,「交通安 全」,「感染症とその予防」,「心身の相関とストレスへの対処」,「結婚生活と健康」であり,

比較的指導が難しいと答えた内容は,「我が国や地域の保健・医療制度や機関」,「環境の 汚染と健康」,「食品保健に関わる活動」,「労働と健康」であった。

12)教員が指導しやすいと考えている学習内容の授業は,その内容に即した授業方法の工夫 が進められていることから,これにより生徒の意識も高くなったと考えられる。一方,指 導が難しい内容については,講義以外の指導方法の実践があまり実施されておらず,生徒 の意識も高まりが見られないと考えられた。

 本研究を行った結果,以上のような実態が明らかとなった。このことから,今後の課題 として,高校生の日常生活における実践力や保健学習に対する「感情」を高めると同時に,

特に関心の程度の低かった学習内容に対する意識の向上を図るための手立てが必要である と考えられた。また,これらの課題を解決していくためには,男女差を考慮したり,学習        86

(21)

内容に応じた授業形態や教材の活用をしたりするなど,保健学習の改善に関わる要因を考 慮した授業方法の改善を行うこと,また,意識の低い学習内容に対する授業研究や研修な

どの社会的支援を図ることが,今後の保健学習のさらなる充実に繋がるものと考えられた。

87

(22)

〈引用・参考文献〉

(23)

1)生涯にわたる心身の健康の保持増進のための今後の健康に関する教育及びスポーツ振興の 在り方について,保健体育審議会答申,1997

2)高等学校学習指導要領解説 保健体育編・体育編,文部科学省,2009

3)和唐正勝ら,新版・保健の授業づくり入門,2009

4)中央教育審議会,幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領  の改善について(答申),2008,1

5)財団法人日本学校保健学会.保健学習推進委員会報告書〜保健学習推進の課題を明らかに するための実態調査〜,2005

6)野津有司ら,「全国調査による保健学習の実態と課題一児童生徒の学習状況と保護者の期 待について」,学校保健研究49(4),2007

7)高石昌弘ら,現代保健体育 改訂版 大修館保体006,2006

8)高等学校学習指導要領解説 保健体育編・体育編,文部科学省,1999

9)喫煙,飲酒,薬物乱用防止に関する指導参考資料 小学校編,文部科学省,plOl,2005

10)野津有司,保健科教育の課題の解決に向けて 研究の活性化と保健担当教師の育成,

 体育科教育p32−35,2010,8

11)吉村英子,こんにちの健康問題からみる保健科教育の課題,体育科教育p28−31,2010,

 8

12)財団法人日本学校保健会,思考力の育成を重視したこれからの高等学校保健学習,2009

(24)

13)辻新六ら,アンケート調査の方法一実践ノウハウとパソコン支援一,2002

(25)

<謝 辞〉

(26)

謝 辞

 本研究を終えるにあたり,終始ご指導ご校閲いただきました兵庫教育大学大学院の鬼頭 英明教授,ならびに西岡伸紀教授に心から感謝の意を表します。先生方のお力で最後まで 書き上げることができました。また,ご指導いただきました主任指導教員である松村京子 教授に心から感謝いたします。

 インタビュー調査,質問紙調査にご協力いただいた高等学校の校長先生をはじめ,職員 の皆さん,生徒の皆さん,貴重な時間を使っていただきありがとうございました。

 そして,研究を進めるだけでなく,大学院生活の多くの時間をともに過ごし,いろいろ なことを語り合った,同じゼミの足立さん,上田さん,菊地さん,冨岡さん,旭日さん,

岩崎さん,陰山さん、本当にありがとうございました。また,同期入学し2年間いろいろ な場面で支えてくださった,木下さん,楠本さん,久野さん,福本さん,陳さん,加藤さ ん,山本さん,さまざまな場面で助言してくださった先輩である,大更さん,津田さん,

西端さん,田中さん,萩岡さん,水田さん,そして充実した大学院生活ならびに研究活動 を支えてくださった生活・健康・総合内容系コースの皆さん,学部生の皆さんに心から感 謝いたします。また,良き理解者として,最後まで支えてくれた家族に深く感謝したしま

す。

 大学院生活で多くのことを得ることができ,充実したものにできたのは,ここで出会っ た皆さんのおかげです。本当にありがとうございました。

 最後になりましたが,本研究で得たささやかな成果を今後の教育実践に活かし,保健学 習の推進に取り組むことをここに決意し,お礼の言葉といたします。

平成22年12.月20日    佐々木 佳祐

(27)

〈資 料〉

・第57回日本学校保健学会

・第57回日本学校保健学会

・本調査質問紙(生徒対象)

・本調査質問紙(教員対象)

発表抄録

発表ポスター(縮小版)

(28)

高校生の保健学習に対する意識についての研究

0佐々木佳祐,上田裕司,菊地素史,冨岡 剛,足立節江,西岡伸紀,鬼頭英明       (兵庫教育大学大学院学校教育研究科)

キーワード:保健学習 高校生 意識調査

1 はじめに

 保健学習は,生涯を通じて健康で安全な生活を送るための基礎を培う上で中心的な役割を担っている。そのため,学習 指導要領の全ての内容を児童生徒が身につけられるよう,保健学習で指導する必要がある。しかし,保健学習に関する報 告書1)によれば,児童生徒が保健学習の内容を覚えていない,内容によって関心が低いものがあると指摘されている。そ こで本研究では,高校生を対象に,学習指導要領のうち生徒の関心が低い内容や事項について調査を行い,保健学習の改 善を図るための基礎資料とした。

皿 研究方法

 2010年7月中旬,兵庫県内高等学校1校の3年生109名を対象に,質問紙調査を実施し,欠損値のあるものを除いた 93名を分析対象とした。質問紙は,前記した報告書1)を参考に,保健の学習意欲(保健学習に対する感情,保健学習の価 値期待),日常生活における実践状況についての項目を作成した。また,2010年6,月に高等学校保健体育科教諭3名を対 象に,保健学習に対する生徒の実態を把握するために個別インタビューを行った。その結果をもとに精選した,高等学校 で学習した各内容17項目に対する意欲,理解度,日常生活おける実践への意欲,各内容のどのような事項に関心がある のかに焦点をあてて項目を作成した。分析にはPASW Statistics 18を使用した。

皿 結果

①保健の学習意欲について

・保健学習に対する「感情」に関する3項目の肯定的回答(割合は「そう思う」,「どちらかといえばそう思う」の合計と  した,以下同様)は,「好きだ」32。2%,「おもしろかった」41.9%,「楽しかった」40.9%であった。

・保健学習の「価値期待」に関する9項目の肯定的回答で,肯定的回答の割合が最も高かったのは,「大切だ」86.0%で  あり,最も低かったのは,「心や体の不安や悩みを軽くしたり解決したりするのに役立っ」30.1%であった。

②日常生活における実践状況について

・「保健で学習したことから,自分の生活や周りの環境について,振り返ったり考えたりしていますか」,「テレビや新聞,

 インターネットなどで,健康に関する情報を見たり調べたりしていますか」の肯定的回答は,それぞれ22.6%,172%

 であった。

③高等学校で学習した各内容17項目に対する意欲,理解度,日常生活おける実践への意欲について

・「好きでしたか」についての肯定的回答(「好きだった」,「どちらかといえば好きだった」の合計)の割合が最も高かっ  たのは「応急手当」48.4%であり,最も低かったのは「健康に関わる意志決定と行動選択」25.8%であった。

・「考えたり工夫したりできましたか」についての肯定的回答(「考えたり工夫したりできた」,「どちらかといえば考えた  り工夫したりできた」の合計)の割合が最も高かったのは,「喫煙,飲酒と健康」47.3%であり,最も低かったのは,「健  康に関わる意志決定と行動選択」,「様々な保健活動」それぞれ20.5%であった。

・「内容はわかりましたか」についての肯定的回答(「わかった」,「どちらかといえばわかった」の合計)の割合が最も高  かったのは,「喫煙,飲酒と健康」70.1%であり,最も低かったのは,「健康に関わる意志決定と行動選択」45.2%であ  つた。

・「将来,自分の生活に生かそうと思いますか」についての肯定的回答(「生かそうと思う」,「どちらかといえば生かそう  と思う」の合計)の割合が最も高かったのは,「喫煙,飲酒と健康」,「医薬品の正しい使用」それぞれ73ユ%であり,最  も低かったのは,「我が国や地域の保健・医療制度や機関」,「労働と健康」それぞれ54.8%であった。

④高等学校で学習した各内容17項目の各事項に対する関心について(複数回答)

 ③で肯定的回答の割合が低かった内容に関する事項について,関心があると答えた割合が最も低かったものは,「健康 に関わる意志決定と行動選択」では,「適切な意志決定・行動選択をしゃすい社会」5.4%,「様々な保健活動」では,「健 康日本21の主な内容」4.3%,「我が国や地域の保健・医療制度や機関」では,「保健行政の役割と仕組み18.6%,「労働

と健康」では,「働くことと健康のかかわり」14.0%であった。

1V 考察

 保健の内容に対する関心は,実生活との関連性からみると,現在および近い未来に起こりうる内容については比較的高 い一方で,そうでない内容については比較的低い傾向となった。今後,さらに分析を進めるとともに,関心の低い内容に ついて,関心をひきつけるための改善の工夫について検討する必要があると考えられる。

文献

1)日本学校保健会.保健学習推進委員会報告書〜保健学習推進の課題を明らかにするための実態調査〜.2005

参照

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