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排卵期ラット卵巣における一酸化炭素

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 光 部 兼 六 郎

学 位 論 文 題 名

排卵期ラット卵巣における一酸化炭素 (NO) の作用:

排卵数,ステロイド産生,ならびに 卵巣血流への影響について

学位論文内容の要旨

    はじめに

  生体 内で産生される一酸化窒素(NO)は,排卵機構においてさまざまな役割を担っている.卵 巣には血管内皮型NO合成酵素(endothelial NO synthase: eNOS)と誘導型NO合成酵素(induci・ble NOsynth觚e:iNOS)が存在しており,卵巣局所でのNO産生が,排卵期卵巣の機能にとって重要 である ことが示唆されている.しかし,これら2つのアイソフオームのそれぞれと,排卵機構と の関連については未だ明らかにされていない.また,NOが卵巣の血流調節を通じて生理的機能を 発揮し ている可能性が推測されるが,NOがどのように卵巣血流(ovali孤b160dnow:OBF)の制 御に関与しているかについての詳細な検討はこれまでになされていなかった,本研究は,(1)ラ ット卵 巣灌流系を用いて,卵巣に発現しているeNOSとiNOSそれ ぞれが排卵数ならびに卵巣ス テロイ ド産生に及ばす影響を評価し,(2)ラットの排卵期0BFの維持・調節においてNOが果 たす役割をinvivoで検討することを目的とした.

    対象と方法

(1) ラ ッ ト 卵 巣 灌 流 に お い てNOS阻 害 剤 が 排 卵 数 と 卵 巣 ス テ ロ イ ド 産生 に及 ぽす 影響   28日 齢の雌SFague‐Dawlり(S―D)ラットにPMSG(201U)を皮下投与して,48時間後に右卵 巣を摘出し,灌流装置に接合した.卵巣灌流は,LH(0.2メg/ml)またはLH十IBMX(それぞれ0.2 ルg/mlと200メM)を灌流メデ ィウムに加えた時点から20時間継続され,LH/LH十IBMX付加 の30分 前に,非選択的NOS阻害剤NG・monomethyl−L−arginine(L−NMMA;300メM)または特異 的iNOS阻害 剤aminoguamdmebic甜珊mte(AG;300メMま たはlmM) のい ずれかを灌流装 置に 付加し た.灌流メディウム内のエストラジオール(E2),プロゲステロン(P4)ならびにNOの 代謝産物である亜硝酸イオン(N02・冫と硝酸イオン(N03つ濃度を測定し,また,灌流終了時に 排卵数を算定した.

(2)NOS阻害剤の排卵期卵巣血流(OBF)に及ぽす影響

  26日 齢 のS−Dラ ット にPMSG(151U)を 皮下 投与 し た, 一部 のラ ット にはPMSG投与 の48 時 間 後 にhCG(151U) を 腹 腔 内 注 射 し た .排 卵前 卵 胞が 発育 するPMSG投与46〜48時 間後

(D「e貧matory;PO群),またはOBFが最も増加するhCG投 与6〜8時間後(QMatory;0V群)

からOBF測定をおこなった,麻酔下 ラットの片側卵巣にレーザードップラー・プローブを固定 して,OBFを連続的に記録し,同時に腸骨動脈留置カテーテルより平均動脈圧を計測した,排卵 期 のOBF調節 にお けるNOの 役割 を検 討す る ため,以下のよ うにNOS阻害剤を全身的また は卵 巣局所に投与して,OBFの変動を計測した,

  @非選択的NOS阻害剤NG面tro―L―越gininemem・ylester(L−NAME;4mg/kgまたは10mg/kg)を   経静脈的にOV群に投与して,全身的にNOSを抑制した,

  ◎PO群 とOV群の 卵巣 ブル ザに 直径04mmの阿FEチ ュ ーブ を留 置し ,L―NAME(lmg/kg)

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(2)

  をブルザ内に注入することでNOSを卵巣局所的に阻害した.

    研究成績

  LHZ LH+IBMX刺 激 に よ っ て 灌 流 卵 巣 のNO産 生 は 増 加 し た が ,L−NMMAとAGは と も にNO の 生 成 を 有 意Qx0.05)に 抑 制 し た .LH+IBMXの 添 加 に よ り , 中 央値12.0個(range6−17; n=10) の 排 卵 が 観 察 さ れ た が , 非 選 択 的NOS阻 害 剤L―NMMAは 排卵 数 を 有 意ゆ く0.05)に 抑 制 し た( 中 央 値4.0,rangel−14;nニ5, 以下 同 じ 順 序で 表 示 ) .一 方 , 選 択的iNOS阻 害 剤AGは300 yMとIm Mのいず れの濃 度にお いても 効果を示さなかった(11.5,6−18;nニ6および11.0,7―15; n= 5),いず れ のNOS阻 害 剤 も 卵 巣 の ス テ ロ イ ド産 生 に 有 意な 影 響 を 及ば さ な か った ,LH単独 に よ っ て刺 激 さ れ た 灌 流 卵 巣 で もLH+IBMXを 添 加 し た 場 合 と 同 様 に ,L‑NMMA投 与 群 の み が 排 卵 数 の 有 意

(び0.05)な低下を示した(LH群7.5,3‑12; n=4,AG群7.0,1―15;nニ5,L―NMMA群0.0,0―8;n〓5).

  OV群 の ラ ッ ト にL‑NAMEを 経 静 脈 的 に 投 与す る と , 平均 動 脈 圧 は有 意 ゆ く0.01)に 上 昇し , ま た,OBFは 静注5分 後に投 与前値 に対し,4mg/kg群で70.l土4.9%(nニ7),10 mg/kg群で63.3*2.4 010

(n=4) と, 低 下 ゆ く0.01)を 認め た . し かし , そ の後OBFは再上 昇に転 じ,30分 後には すべて の ラ ッ ト に お い てL‑NAME投 与 前 の レ ベ ル に ま で 復 帰 し た .L−NAMEの 卵 巣 プ ル ザ 内 注 入 は ,OV 群 とPO群 の い ず れ に お い て も 平 均 動 脈 圧 を 変 動 さ せ な か っ た .OBFはL―NAME投 与に よ っ て 有 意ゆく0.01)に減 少し,5分後にお いてL―NAME投与 前値に 対し,OV群では63.6:t13.0 010(nニ9冫,

PO群 で は60.O土5.6% (nニ5) で あ っ た . こ のOBFの 低 下 はL−NAME投 与30分 後 のOBF計 測 終 了 時 ま で 持 続 し , 基 礎 値 に 対 し68.614.3ワ 。(OV群 ) と72.8土4.8ワ 。(PO群 )で あ っ た .     考察

  ラ ッ ト 卵 巣 灌 流 系 に お い て ,L―NMMAに よ りeNOSとiNOS両 方 の 活 性 を 阻 害 す る と 排卵 数 は 減 少 し , 対 照 的 にiNOS特 異 的 阻 害剤AGは 排卵 数 に 影 響を 及 ぽ さ なか っ た . この 結 果 よ り, ラ ッ ト の排 卵 機 構 にお い て ,iNOSは不 可 欠 な 要素 で は ない ことが 示され た.一 方,灌 流卵巣 によるNO 産 生 量 は ,LlNm価IA群 とAG群の い ず れ にお い て も 同等 に 抑 制 され て お り ,こ れ は 排 卵期 卵 巣 で 産 生 さ れ るNOの 大 部 分 がiNOS由 来 の も の で あ る こ と を 示 す とと も に , 卵巣 内 のeNOS活 性 が 保 た れ て い る 限 り,NO産生 が 低 い レベ ル で あ って も 排 卵 機構 は 十 分 に維 持 さ れ 得る こ と を 示す ものと考えられた.

  卵 巣 で のNOS活 性 を 選 択 的 に 阻 害 し た と き にOBFが 低 下 し たこ と か ら ,排 卵 期 卵 巣の 血 流 維 持 の た め に は 卵 巣 局 所 で のNO産 生 が 重 要 であ る こ と が示 さ れ た .対 照 的 に ,L−NAMEの全 身 投 与 は 一 過 性 の0BF低 下 し か 引 き 起 こ さ ず , 全 身 的 なNOS阻 害 に 対 し て はOBFを 維 持 す る よ う な 代 償 機 構 が 存 在 す る 可 能 性 が 考 えら れ た .NOはOBFの 維持 ・ 調 節 を通 じ て 排 卵機 構 と 関 連し て い る も の と 推 測 さ れ る が ,OBFの 持 続 し た 減 少 を 認 め な いNOS阻害 剤 の 全 身性 投 与 に よっ て も 排 卵 数 の 減 少 が 生じ る こ と から ,NOの 血 流 調 節以 外 の 機 能も 排 卵 プ ロセ ス に お いて は 重 要 であ ることが示唆された,

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(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

排卵期ラット卵巣における一酸化炭素(NO )の作用:

排卵数,ステロイド産生,ならびに    卵巣血流への影響について

   本 研究 は , ラッ ト 卵 巣灌 流 系を 用 い て, 卵 巣に 発 現 して い るeNOS と iNOS そ れ ぞれ が 排 卵 数 なら び に 卵巣 ス テロ イ ド 産生 に 及 ぽす 影 響を 評 価 し, ラ ッ卜 の 排 卵期 卵 巣血 流

( OBF )の 維 持・ 調 節 にお い て NO が 果た す 役 割を inviv0 で 検 討するこ とを目的 とした.

  28 臼 齢 の 雌 Sprague − D 羽 ゾ ley (S ―D )ラ ッ トに PMSG ( 201U ) を皮 下 投与 し て ,48 時 間 後 に 右 卵 巣 を 摘 出 し , 灌 流 装 置 に 接 合 し , LH / LH 十 IBMX 付加 の 30 分 前 に ,非 選 択 的 NOS 阻 害 剤 NG − monomethy ト L ― arginine ( L ′ NMMA ; 300 メ M )ま た は特 異 的 iNOS 阻 害 剤 aminoguanidinebicarbonate ( AG ; 300 」 WM ま た は 1mM ) の い ず れ か を 灌 流 装 置に 付加した .灌流メデ ィウム内 のエスト ラジオー ル(E2 ),プ口ゲステ口ン(P4 )なら び に NO の 代 謝 産物 で あ る亜 硝 酸イ オ ン ( N02 つ と硝 酸 イ オン ( N03 ― ) 濃 度を 測 定 し,

灌流終了時に排卵数を算定した.

  26 日 齢 の S − D ラ ッ ト の 排 卵 前 卵 胞 が 発 育 す る PMSG ( 151U ) 投 与 46 〜 48 時 間 後

( BreQvulatory ; PO 群 ) , ま た は OBF が 最 も 増 加 す る hCG ( 151U ) 投 与 6 〜 8 時 間 後

(Q 翌 ulatory ;OV 群)か ら,麻酔下 ラットの 片側卵巣 にレーザードップラー・プ口ーブを 固 定 して OBF を連 続 的 に記 録 し, 同 時 に腸 骨 動脈 留 置 カテ ー テルより 平均動脈圧 を計測 し た . 排卵 期 の OBF 調 節 にお け る NO の 役 割を 検 討す る た め, NOS 阻害 剤 を 全身 的 ま たは 卵 巣 局所 に 投与 し て , OBF の 変動を 計測した .即ち, 非選択的 NOS 阻害剤NG − nitro −L ・ argininemethylester (L −NAME ;4mg /kg または10mg /kg )を経静脈的にOV 群に投与して,全 身 的 に NOS を 抑 制 し た . PO 群 と OV 群 の 卵 巣 ブ ル ザ に 直 径 014mm の PTFE チ ュ ー プ を 留 置 し , L ― NAME ( 1mg / kg ) を プ ル ザ 内 に 注 入 す る こ と で NOS を 局 所 的 に 阻 害 し た .    ラ ッ ト 卵 巣 灌 流 系 に お い て , LFNMMA に よ り eNOS と iNOS 両 方 の 活 性 を 阻 害 す る と 排 卵 数 は減 少 し ,対 照 的に iNOS 特 異 的阻 害 剤AG は 排卵 数 に 影響 を 及ぽ さ な かっ た .こ の結 果より, ラットの排 卵機構に おいて, iNOS は不可欠 な要素ではないことが示された.

一 方 , 灌 流 卵 巣 に よ る NO 産 生 量 は , I ′ NMMA 群 と AG 群 の い ず れ に お い て も 同 等 に 抑 制 さ れ てお り , これ は 排卵 期 卵 巣で 産 生 され る NO の 大 部分 が iNOS 由来 の も ので あ るこ

郎 一

征 研

本 間

藤 本

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

とを示すとともに,卵巣内のeNOS 活性が保たれている限り,NO 産生が低いレベルであ っ て も 排 卵 機 構 は 十 分 に 維 持 さ れ 得 る こ と を 示 す も の と 考 え ら れ た .    卵巣で のNOS 活 性を 選択的に阻害したときにOBF が低下したことから,排卵期卵巣 の血流維持のためには卵巣局所でのNO 産生が重要であることが示された.対照的に,L − NAME の全 身投 与は 一過性 のOBF 低下し か引 き起 こさず ,全 身的 な NOS 阻 害に 対して は OBF を維 持する よう な代償機構が存在する可能性が考えられた.NO はOBF の維持・

調節を通じて排卵機構と関連しているものと推測されるが,OBF の持続した減少を認めな いNOS 阻害剤の全身性投与によっても排卵数の減少が生じることから, NO の血流調節 以 外 の 機 能 も 排 卵 プ ロ セ ス に お い て は 重 要 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た .    公開発表に際して,副査の石橋教授から, NOS 阻害剤の抑制効果に対する確認ついて,

NMR で の観 察につ て, ヒト にお けるNOS 阻害剤 の排 卵抑 制効果について, NOS 阻害剤 の卵巣以外の生体機能に対する影響などについて質問があった.また,副査の本間教授か らは,阻害剤によってeNOS が実際に阻害されている程度について,eNOS による血流量 減少の影響を介さない作用が排卵数の低下に働いているのかについて,iNOS の卵巣にお ける生理的役割について,などの質問があった.最後に主査の藤本教授からは,非選択的 NOS 阻害剤を灌流系とin vivo 系とで使い分けた理由について,NOS 阻害剤による排卵数 の低下の程度と卵巣ステロイドの変動との間に生体内では考えられない乖離が灌流系であ る理由について,などの質問があった.

   いずれの質問に対しても,申請者は,実験成績の解析結果,最新の文献情報,自身の研 究経験をもとに概ね妥当な回答をなしえた.

   審査員一同は,本研究の成果と申請者の研鑽を高く評価し,申請者が博士(医学)の学

位を受けるのに十分な資格を有するものと判定した.

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