博 士 ( 理 学 ) 中 内 美 名 学位論文題名
Study on the Transcriptional Regulation of the Medaka Fish Intestine‑Specific Membrane Guanylyl Cyclase Gene (メダカ腸管特異的膜結合型グアニル酸シクラーゼ遺伝子の .転写調節に 関する研究)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
cGMPを 二次伝 達物 質と する 情報 伝達 系は 、消 化管 における水分塩分代謝、光受容 における陽イオンチャンネルの開閉、血管平滑筋の弛緩による血圧低下作用や腎臓に おける利尿作用など、血圧、体液量調節に代表される広範な生物作用に関与すること が知 られ てい る。cGMPはグ アニ ル酸 シクラ ーゼ によ ってGTPから 合成さ れる 環状 ヌ クレオチドの一種であり、グアニル酸シクラーゼには細胞質に存在する可溶性型と、
細胞膜に結合し受容体あるいは受容体と共役した膜結合型の、タンパク質としては異 なる2種類 が知 られ てい る。 膜結 合型 酵素に は多 くのisoformが知られており、現在 まで に哺 乳類で は7種類 のcDNAが 単離 ・構造 決定 され ている。また、個々のisoform は生 体内 での発 現部 位や 活性化機構が異なっている。しかし、これらのisoform中、
遺伝子の構造解析が行われたのはまだ一部で、しかも発現調節機構についての知見は ほとんどない。本研究では最初に、メダカ(〇tyzias latipes)の哺乳類グアニル酸シクラ ー ゼCタ イ プ(GC‑C)遺 伝 子 で あ るOIGC6遺 伝子 の上 流領 域の 転写 活性を 、哺 乳類 培 養細胞とトランスジェニックメダカを用いて検討し、消化管特異的な転写に必要な領 域を 特定 した。 次に 、こ の領域に結合する転写因子をメダカ消化管核抽出液からDNA アフイニティークロマトグラフイーによって精製し、全生物で初めてin vivoにおいて 転写調節に必要なシス領域とトランス因子を明らかにした。
OIGC6遺 伝子 は哺 乳類GC‑C遺伝 子と同 じよ うに 消化 管特 異的 に発 現し てい るこ と が知られている。そこで、消化管特異的な転写調節機構の解明を目的として、始めに 様 カ な長さ のOIGC6遺伝 子上 流領 域をル シフ ェラ ーゼ 遺伝 子の 上流 に組 み込 んだ 融 合遺伝子を作成し、それらを哺乳類消化管由来細胞株(CAC0‑2)および腎臓由来細胞株 (COSl)に導入し、それぞれのルシフェラーゼ活性を測定することにより転写活性を検 討し た。 結果 、上 流領 域‑98bpか ら‑89bpの 領域 がCAC0‑2特異的に転写に重要である こと がわ かっ た。 また‑30bpから‑23bpに存 在す るTATA box様配列を削除すると転写 活性がなくなることから〇鱈(驚遺伝子はTATA依存的遺伝子と考えられる。さらに、
それ ぞれ の融 合遺 伝子 を1細 胞期のメダカ胚に顕微注入することにより、これら外来 遺伝子を持っトランスジェニックメダカを作成した。これらのメダカはモザイク状に 外来 遺伝 子を 持っ ため 、wild‑typeのメダカと交配しFlを得て、Flを用いて解析を行
っ た。OIGC6遺伝 子お よび ルシ フェ ラーゼ 遺伝 子の発現を、メダカ胚および成体の消 化管を用いてRT‑PCRとin situ hybridizationにより検討した。結果、in vivoにおける OIGC6遺 伝子 の消 化管特異的な発現には上流領域‑98bpで十分であることがわかった。
次 に 、CAC0‑2お よ び メ ダカ 消化 管核 抽出 液を用 い、 上流 領域‑108bpか ら‑79bpを プ ローブとして、なんらかのタンパク質が結合するかをGel Shift解析によって検討した。
結 果 、 両 方 の 核 抽 出 液 中にDNAの 配列 特異 的に 結合 する タン パク 質が 存在す るこ と が わか った。 また 、様々な変異を導入したプローブを用いて競合実験を行った結果、
配 列AGACCTTTGCが こ の タ ン パ ク 質 の 結 合 に 重 要 で あ る こ と が わ か っ た 。UVク ロ ス リン ク実験 によ って 、こ のDNA‑タ ンパ ク質 複合 体の 大き さは17 kDaであ ることが わかった。
結合タンパク質を精製するために、Oligonucleotide trapping methodを用いたDNAア フ イニ ティー クロ マト グラ フイ ーを 行っ た。UVク ロス リン ク実 験から 結合 タンパク 質 は17 kDa程 度 で あ る こ と が 予 想さ れ 、2回 のDNAア フ ィニ ティ ーク ロマト グラ フ イ ーを 繰り返 すこ とに より 、溶 出サ ンプ ル内 に17 kDaのタ ンパ ク質が 多く 含まれる よ う に な っ た 。 こ の 溶 出 サ ン プ ルをSDS‑PAGEに よ っ て 展開 し、17 kDaのバ ンド を 切 り出 し、そ れを マス スベ クト ロメ トリ ーに よっ て解 析し たと ころ、 アミ ノ酸配列 DQMSEIDEAIKを 含 む こ と が わ か っ た 。EST配 列 と の 相 同 性検 索に より 、この 結合 タ ンパク質はヒトPositive cofactor4 (PC4)のメダカホモログであることがわかり、OIPC4 と 名付 けた。 ヒトPC4は基本転写因子や様々な他のcofactor、activatorと相互作用す る こと により 転写 を活 性化 し、 カゼ イン カイ ネース2(CKII)によって活性が制御され て い る こ と が 知 ら れ て いる 。OIPC4遺 伝子 はRT‑PCR解析 によ って ほと んどの メダ カ 成 体 組 織 に 発 現 に し て い る こ と がわ か り 、 ヒ トPC4にお いて 、DNA結 合活性 と転 写 活 性に 必要で ある と考 えら れて いる 領域 との アミ ノ酸 レベ ルで の相同 性は77%であ っ た。 また、CIくIIに よっ てり ン酸 化さ れる と考 えら れる ヒトPC4の 、セ リン残基7 つ の 内6っ がOIPC4で も 保 存 さ れ て い た 。 大 腸 菌 発 現 系 を 用 い てGST融 合OIPC4組 換 え タ ン パ ク 質 を 発 現 さ せ 、 組 換えOIPC4を 精 製 し た。 この 組換 えOIPC4を 用い 、 上 流領 域‑108bpか ら‑79bpをプ ロー ブとし て、Gel Shift解 析お よびUVクロ スリンク 実 験を 行った とこ ろ、メダカ消化管核抽出液を用いたと時と同じ結果が得られた。ま た 変異 を導入 した プロ ーブ を用 いた 競合 実験 もメ ダカ 消化 管核 抽出液 を用 いたと時 と ほ ば 同 じ 結 果 が 得 ら れ た 。 ヒ トPC4で は 、 配 列 特 異的 では なくDNAに結合 する と 予 想 さ れ る と い う 報 告 が あ る が 、本 研 究 に よ っ てOIPC4は配 列特 異的 にDNAに結 合 す るこ とが示 され 、こ のこ とに よりPC4は 何ら かの機能によって結合配列を識別して い ると いうこ とが 示唆 され た。 これ らの 結果 によって、OIPC4はシス領域に結合する こ と に よ っ てOIGC6遺 伝 子 の 転 写 制 御 に 関 わ っ て い る と い う こ と が 示 さ れ た 。
以上 の研 究結 果は 魚類 のみ なら ず哺乳類におけるグアニル酸シクラーゼ遺伝子の 転 写制 御機 構や 、ま だ詳 細な 解析 がさ れて いな い新 たなグ アニ ル酸シクラーゼCタ イ プの 機能 の解 明に 役立 っも のと 考え られ る。 さら に、こ れま でPC4は転写制御に 重要であるが、その生体内での生理作用との関わりや機能についてはほとんど知られ ていなかったが、本研究結果によルグアニル酸遺伝子の転写制御を通して消化管にお いて重要な生理機能に関わっている可能性が示唆された。
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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 助教授 助教授
鈴木範男 高橋孝行 清水 隆 伊藤悦朗
学位論文題名
Study on the Transcriptional Regulation of the Medaka Fish Intestine‑Specific Ix/Iembrane Guanylyl Cyclase Gene (メダカ腸管特異的膜結合型グアニル酸シクラーゼ遺伝子の 転写調節に関する研究)
近 年 、 細 胞 内 情 報 伝 達 系 に 関 す る 研 究 は 極 め て 活 発 に 行 わ れ て い る 。 そ の 中 で も 、 cGMPを 二 次 伝 達 物 質 と す る 情 報 伝 達 系 は 、 ウ ニ 精 子 活 性 化 ペ プ チ ド 受 容 体 が 膜 結 合 型 グ ア ニ ル 酸 シ ク ラ ー ゼ で あ る こ と が 証 明 さ れ て 以 後 、 そ の 研 究 が 飛 躍 的 に 進 展 し た も の で 、 解 明 す べ き 課 題 の 多 い 情 報 伝 達 系 で あ る 。
cGMPを 合 成 す る 酵 素 に は 細 胞 質 に 存 在 す る 可 溶 性 型 と 細 胞 膜 に 結 合 し 、 受 容 体 あ る い は 受 容 体 と 共 役 し た 膜 結 合 型 の 、 タ ン パ ク 質 と し て は 異 な る2種 類 が 知 ら れ て い る 。 膜 結 合 型 酵 素 に は 多 く のisoformが 知 ら れ て お り 、 個 々 のisoformは 生 体 内 で の 発 現 部 位 や 活 性 化 機 構 が 異 な っ て い る 。 し か し 、 こ れ ら のisoformの 中 で 、 遺 伝 子 の 構 造 解 析 が 行 わ れ た の は 一 部 で あ り 、 し か も 転 写 発 現 調 節 機 構 に 関 す る 研 究 は 皆 無 に 近 い 。 申 請 者 は 、cGMP情 報 伝 達 系 の う ち 、 消 化 管 に お け る 水 分 、 塩 分 代 謝 や 、 消 化 管 上 皮 細 胞 の 増 殖 制 御 な ど 、 広 範 な 生 物 作 用 に 関 与 す る こ と が 示 唆 さ れ て い る 情 報 伝 達 系 の 鍵 酵 素 で あ るC型 グ ア ニ ル 酸 シ ク ラ ー ゼ(GC‑C)のin vivo に お け る 消 化 管 特 異 的 な 転 写 調 節 機 構 の 解 明 を 目 的 と し た 研 究 を 行 い 、 多 く の 重 要 な 知 見 を 得 た 。
申 請 者 は 先 ず 、 メ ダ カ の 消 化 管 に 特 異 的 に 発 現 す るOIGC6遺 伝 子 の 様 カ 詮 長 さ の 上 流 領 域 を ル シ フ ェ ラ ー ゼ 遺 伝 子 の 上 流 に 組 み 込ん だ 融 合 遺伝 子 を 作成 し 、 それ ら を 哺 乳 類 消 化 管 由 来 細 胞 株(CAC0‑2)お よ び 腎 臓 由 来 細 胞 株(COSl)に 導 入 し 、 そ れ ぞ れ の ル シ フ ェ ラ ー ゼ 活 性 を 測 定 す る こ と に よ り 、 上 流 領 域‑98bpか ら‑89bpの 領 域 が
CAC0‑2特異的に転写に重要であることを明らかにした。次に‑30bpから‑23bpに存在 するTATA box様配 列を削除す ると転写活 性がなくな ることから 〇IGC6遺伝子は TATA依存的遺伝子であることを明らかにした。また、それぞれの融合遺伝子を1細 胞期のメダカ胚に顕微注入することにより、これら外来遺伝子を持っトランスジェニ ックメダカを作成し、wild‑typeのメダカと交配したFlを用いて解析を行った。OIGC6 遺伝子およぴルシフェラーゼ遺伝子の発現をメダカ胚および成体の消化管を用いて、
RT‑PCRとin situ hybridizationにより検討し、in vivoにおけるOIGC6遺伝子の消化管 特 異 的 な 発 現 に は 上 流 領 域‑98bpで 十 分 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。 さらに、申請者はCAC0‑2およびメダカ消化管核抽出液を用いてGel Shift解析およ びUVクロスリンク実験を行い、特定したシス領域内の配列AGACCTTTく℃に特異的 に結合する17 kDaのタンパク質の存在を明らかにした。次いで、Oligonucleotide trapplngmethodを用いたDNAアフィニティークロマトグラフィーを行い、,17kDaの 結合タンパク質を精製した。それをマススペクトロメトリーによって解析したところ、
このタンパク質はアミノ酸配列DQMSEII二冫E魁Kを含み、この結合タンパク質がヒト Positivecofactor4pC4)のメダカホモログであることを明らかにし、OmC4と名付けた。
申請者はさらに研究を進め、R.T‐PCR解析によって〇鮒イ遺伝子はほとんどのメダ カ成体 組織に発現にしていることを明らかにし、ヒトPC4においてDNA結合活性と 転写活性に必要であると考えられている領域とのアミノ酸レベルでの相同性は77% であることを明らかにした。またCKuによってりン酸化されると考えられるヒトPC4 のセリン残基7つの内、6っがOmC4でも保存されていることを明らかにした。また、
大腸菌 発現系を用 いて組換えO皿C4を作 成し、この 組換えOmC4を用 い、GelShiR 解析およびUVクロスリンク実験を行ったところ、メダカ消化管核抽出液を用いたと 時と同じ結果が得られ、シス領域の配列特異的に結合することを明らかにした。これ らの結果によって、O皿C4はシス領域に結合することによって゛OlGC6遺伝子の転写 制御に関わっているということが明らかになった。
以上の研究結果は魚類のみならず哺乳類におけるグアニル酸シクラーゼ遺伝子の 転写制御機構や、まだ詳細な解析がされていない新たなグアニル酸シクラーゼCタ イプの機能の解明研究には重要な知見である。さらに、これまでPC4は転写制御に 重要であるが、その生体内での生理作用との関わりや機能にっいてはほとんど知ら れていなかったが、本研究結果によルグアニル酸シクラーゼ遺伝子の転写制御を通 して消化管において重要な生理機能に関わっている可能性が示唆され、PC4および 転写コファクターの機能解明に役立っものと考えられる。
よって申請者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認 める。
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