• 検索結果がありません。

7章完成.doc

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "7章完成.doc"

Copied!
16
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

7章 四面体理論第Ⅲ面経営システムにおける変革的ひねり

1.第Ⅱ面と第Ⅲ面経営システムにおける変革的ひねりとの関係 資料4−2に示したように第Ⅰ面に起業家はメガトレンドを起業力で捉え、通常は第Ⅱ面 対象市場の設定と変革的切り口で起業を考える。ということは、市場変革型ベンチャーか らスタートすることになる。なぜなら、新規性を考える場合、市場戦略で考えた方が、幅 広く考えられ、またチャンスが多いからである。しかし、中には経営システムつまり経営 のやり方を工夫して、経営システム変革型ベンチャーとしてスタートする企業もごく少数 だが存在する。例えば、ラーメンのどさん子チェーン、ボランタリーチェーンのヒロマル グロサリーチェーン等である。例えば、どさん子チェーンの場合、ラーメン屋そのものは どこにでもあり、味やメンなども特別な新規性があるとは思えない。しかし、それを商標 やイメージを統一して、立地選定ノウハウや食材集中生産とデリバリー機能を本部が持ち、 フランチャイズ・システムとしてノウハウの統合化することで、経営システムとしての新 規性を持てたのである。同様なことは、ある程度牛丼チェーンや養老の瀧のような居酒屋 チェーンにも当てはまる。牛丼そのものは、昔からあり、居酒屋も同様である。商品とか 店のイメージなどにそれまでにない新規性も多少あるが、主な新規性は本部機能によるチ ェーン・オペレーションのノウハウである。このように J.A.シュンペーターの言う新しい 組織の導入によるベンチャーは、今でもFC 導入といった形で出現している。しかし、同じ 外食チェーンでも、マクドナルドやケンタッキーフライドチキンのように、海外にあった 商品と経営システムを組み合せて参入するといったケースは、第Ⅱ、第Ⅲ面とも新規性が あるということで、イノベーション型ベンチャーということになる。 さて、数の上では多数派である、第Ⅱ面変革的切り口から始まる市場変革型ベンチャー 企業が、成功するためには、この第Ⅲ面の経営システムにおける変革的ひねりも工夫しな ければならない。なぜなら、変革的切り口だけでは、特許を持っていてもすぐに追随者が 現れるからである。特許を取得するということは、それは公表されることであるから、追 随者は、必死になってその特許に抵触しない方法を探し出す。又は、中には堂々と特許違 反を犯す場合もある。特許を持つベンチャー企業が裁判などをやっている時間的、金銭的 余裕がないと足モトを見る悪質なケースもある。ましてや、サービス業の場合は、商品、 店舗、サービス内容が公開されているのと同じであり、商標権ぐらいは守られるが、限り なく近いものが現われる。このような場合の対応等は2つある。ひとつは、急速展開して マーケットを抑えて当該市場でのデファクトスタンダード的地位を占めてしまうことであ る。もうひとつは、第Ⅲ面の経営システムにおける変革的ひねりと第Ⅱ面を組み合せ、融 合してしまって、簡単にはマネできなくしてしまう方法である。なぜなら、経営システム というのは経営のやり方であるから、内部に入らないと判りにくいものである。このよう に、第Ⅲ面変革的ひねりというのは、追随者対策として有用である。 次にひねりの意味であるが、これはひと工夫ということである。もともと経営システム

(2)

は、株式会社に関する法規制をベースに、ほとんど決められており、また経営資源も決ま りきっているので、非常に変わった形は考えられない。であるから、経営資源の束ね方を ひと工夫するという意味でつまり「ひとひねり」という意味をこめて「ひねり」としてい る。 2.アンケート調査による検証と訂正 資料6−4に示した通り、この経営システムにおける変革的ひねりに対しても、ベンチ ャー企業のユニーク性を表現するフリーアンサーという形でどのくらのカバー率があった かを検証している。ここに示したように新組織体制の導入が圧倒的に回答数が多く、次い で、コスト構造変革と企業間ネットワークであった。そして、全体としては、従来の項目 に明らかになった回答の比率は44.3%であり、先に述べた第Ⅱ面変革的切り口よりも 低いカバー率であった。しかし、表現は異なるものの資料4−2に示した項目に近いもの もあり、さらに再調整することにした。例えば、開発中心の組織体制及び品質管理水準の 高さは先行的技術開発・管理体制に吸収できるし、持たざる経営・ファブレスは企業間ネ ットワークに吸収できる。また、自己責任主義(個人主義)、少数精鋭主義は人材育成シス テム確立に包含できる。このように再調整したが、従業員参加型・社員中心型経営は、回 答者も多く、従来の項目には入らないので新たに項目としてつけ加えることとした。グロ ーバル経営体制については、変革的切り口の中の7)国際間ギャップ活用とグローバル戦 略展開ですでに述べたのでここに吸収したとした。経営内容のオープン化、自由な経営に ついては従業員参加型・社員中心型経営との関係が強いので、この項目の中でふれること として吸収した。自主独立というのは、起業力の項目に近いので、すでに吸収していると 考えた。また生産からアフターケアまでの一貫体制については、第Ⅱ面変化的切り口8) ニッチの発見、参入、拡張戦略でふれているので、広い業種でこれが当てはまるとは限ら ないため特に項目には入れなかった。このように、従来の項目に吸収したもの、項目を変 更してつけ加えたもの、そして新たな項目として新設したものとして、全体を整理すると 1)∼10)の新項目となった。それぞれについての内容については、すでに多くのケー スと、今回のアンケート調査によって検証されているが、さらに新しいケースを織り込み ながら明らかにしていきたい。 3.変革的ひねりの内容 1)新理念浸透 すでに革新型企業を育てた京セラの稲盛和夫元会長は、「稲盛教」とも言われるほどの哲 学、理念を京セラに浸透し、社員のバイタリティを引出した。稲盛元会長の理念は、社内 でまとめられ「京セラフィロソフィ」となっているが、これは非公表である。中村秀一郎 多摩大名誉学長が記した「企業家とは何か KSP マネジメント新事業マネジメントスクー

(3)

ル刊」に一部が紹介されているので引用させていただく。「京セラフィロソフィには、仕事 の成果をあらわす公式があります。それは、人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力とい うものです。中略。3つの要素の中で、熱意というものだけが自分の意思で決められるも のです。ですから、我々は、この熱意というものを最大限にもっていくための努力をして きました。また、考え方というものが、大きな要素であることも我々は知っています。そ の人の持つフィロソフィ、哲学がネガティブなものであれば人生も仕事もネガティブにな ります。中略。私は人の心をベースにした経営を行ってきました。いいかえれば、どのよ うにすれば強固で信頼のできる心の結びつきというものを、企業内において実現できるか ということに焦点を絞って経営を進めてきました。愛されるためには愛さなければならな いように、心をベースとした人間関係を築くには、すばらしい心を経営者自から持たねば なりません。」 このような「京セラフィロソフィ」を創り上げようと考えたのは、次のような考え方か らであった。「37年前、私は何んの経営知識も経験もないまま京セラを創業した。そのよ うな私には、人間として正しい事を追求することをベースにして経営を始める以外方法は なかった。そこで、私は人生の本当の意味、経営のあるべき姿を真剣に考え、自分なりの 経営哲学を確立してきた。そして、それを社員と共有する事に今日まで最大の努力を払い 続けている「成功への情熱 PHP 研究所 1995年2月 稲盛和夫著 P2」。 京セラは急成長し、アミーバ組織などが有名になった。アミーバ組織の作り方や運営の 仕方は、ある程度マネすることは可能であろうが、「京セラフィロソフィ」はマネできない し、マネしても意味を持たない。このような、創業者の哲学、理念をベンチャー企業内に 浸透することで、企業内のDNA になりうるのである。 CSK の故大川元会長も同様な理念浸透に力を入れたが、単に話をする、文章化するだけ でなく種々の方法を工夫した。会社がまだそれほど大きくない時には、ボーナス時には、 全国の営業所をまわって社員1人1人にボーナスを手渡し、握手をしたのである。CSK は、 コンピュータ要員の派遣業務から始めたので、社員は会社の人間ともほとんど会わない状 況であった。そこで、大規模になってからは、年に2回東京と大阪の大ホテルに東西別に 全社員を集め大イベントを行ったのである。成績優秀者の表彰、大川会長による理念伝達、 そしてアトラクションを行い、会を盛り上げ、一体感を共有し、理念の浸透を図ったので ある。 以上のような、哲学的理念でなく、考え方の浸透で成長している創業者も目立つ。越智 通勝社長は、エン・ジャパン(2003年12月期売上高予想40億円、経常利益予想1 6億円、従業員103名 日経会社情報2003年夏号)の創業者で、ネットによる転職 情報サイトを中心事業としている。越智社長は、早大公開講座の講義(2003年6月1 0日)で以下のように述べ、感動を与えた。「私は日本人が持っている仕事観を大切にした いと思っている。だから転職はできればしない方がいいぐらいに思っている。しかし転職 する人の為に求職する人の立場に立った転職情報サイトの運営をしたい。具体的には、ク

(4)

ライアントである求人企業に行って、提供される情報が正しいかどうか厳密にチェックし て、納得しなければ載せないことにしている。この結果、求職者の信用が厚く、質のよい 人が決まる確率が高く、転職後やめる人も少なく、結果として求人クライアント企業から 高く評価されリピート率が高い」。そして、「縁」を大事にするという考え方で「エン」と いう社名をつけている。さらに経営的には、人の力でやるアナログの世界とコンピュータ ーのデジタルの世界をうまく融合することがポイントであると述べている。ネットビジネ スの世界でもまさに理念が必要である。 比較的若い経営者である孫正義社長はソフトバンクの創業者で、(2003年連結売上高 4069億円、経常利益△1098億円、従業員4346名 1998年東証1部上場 日 経会社情報2003年夏号)常に話題の主である。現在でも「ヤフーBB」事業がどのよう になるかで予断を許さない状況にある。しかし孫社長は、「ビジョンのない経営者より、志 をもった誇大妄想家の方がまし(2000年1月24日 日経新聞夕刊)」と述べ、自から の理念である「デジタル情報化社会のインフラ提供者になる」をかかげ、挑戦しつづけて いる。事業の成否はまだ不明であるが、日本の社会にインパクトを与えたことは事実であ り、その理念浸透の成果が注目される。 2)人材育成システム確立 ベネッセコーポレーションは、先にものべたように、通信添削で巨大企業に成長した。 この通信添削事業の成功を支えたのが、創業者によってDNA 化された「コミュニケーショ ン理念」であった。まだ当社がベンチャー企業の時代、当社は筆者が所属していた野村総 研のクライアント企業であった。25年程以前の当社では、「ワタキロウ」という社内用語 があり、これは、月一回社員が書く「私の記録」であった。これを社員は社長に送り、社 長は全部読んで、コメントをつけて返したのである、メールのない時代のまさに「コミュ ニケーション理念」を形に表したものである。この「コミュニケーション理念」にもとづ いて、通信添削の添削員である「赤ペン先生」を当社は、家庭の高学歴主婦を中心に組織 化し、最盛時には5万人に達したのである。「コミュニケーション理念」のもとで、子供の 教育の手伝いをするという高いモラルが生まれ、損得を越えた添削が行われ、それが子供 にも伝わって加入者数が急拡大したのである。その成功を見て、通信販売の大手が参入し て来たが、見事に失敗して撤退した。理由は「コミュニケーション理念」にもとづく、高 い質の「赤ペン先生」の組織化がまったく出来なかったからである。人は理念がなければ 動かない。特に教育といった分野では特にそうである。理念をもった人材育成システムは マネによる参入を防ぐ見事な盾になったのである。 人材育成システムは、企業が倒産から立ち直る力にもなることを牛丼の吉野家ディー・ アンド・シー(2003年2月期連結売上高1460億円、経常利益150億円、従業員 2473名 日経会社情報2003年夏号)のケースが示している。安部修仁社長は、早 大公開講座の講義で以下のように述べている。「私は、九州からバンドをやりたくて上京し

(5)

て吉野家でバイトをしていて、引きこまれ社員になりました。創業者である松田社長(当 時)は立派な人で、税金を払うくらいなら社員教育にお金をかけるという方針でした。自 分達若手社員を米国に派遣してくれていた時、急拡大の歪みで会社更生法の申請をするハ メになったのです。急いで帰国した時は、有力加盟店が離れるなど大変でした。しかし、 私達若手社員は、創業者に育ててもらった恩を返そうと再建に頑張りました。」このように、 人材を育てるという創業者の熱意が会社の再建に生かされたのである。当社は、革新型企 業に成長した現在も、社員教育には大変熱心である。 3)従業員参加型・社員中心型経営 イー・ディーコントライブ(2003年3月期売上高28億円、経常利益1.3億円 従 業員数116名 2003年5月マザーズ上場 日経会社情報2003年夏号)の創業者 川合歩社長は、1964年生まれで、1986年3月に当社の創立をしているから、若干 22才であったということになる。川合社長は2003年5月17日KSP でベンチャービ ジネス・スクールに講師として参加し、以下のような話をしてくれた。「中学までは優等生 でしたが、「車輪の下」を読んで人生を考え始めてグレてしまい、高校は中退した。夜の商 売で金には不自由しなかったが、皆とやりがいのある仕事がしたくて足を洗い、フロッピ ーディスク等の卸に入り、コピー防止のソフトをつけて売り成功した。その会社では付加 価値をつけることに興味を示さなかったので、自分で会社を作りフロッピーディスクの転 送装置などの仕事を始めた。そのうちに、社員が自分が思うように働いてくれないことに 悩んだ結果、プロジェクトドライブ制と役員立候補制を導入した。そのときの問題は何で も自分でやってしまい社員の主体性がなくなったことに気がついた。プロジェクトドライ ブ制というのは、社員は誰でも提案でき、認められれば、人の採用、経費など全権をまか されるという方法である。しかし、全体としての予算統制はできる仕組を持っている。す べての情報(個人の給料を含め)はオープンになっている。役員も立候補制なのでいつか 社長も変えられるかも知れない。プロジェクトドライブ制は上場の時には問題になったが 何とかクリアーした。」 以上のように当社の場合は、完全に情報はオープンであり実力主義であることが、前提 になっている。 ベンチャー企業の社員中心型経営は、従来の年功序列型、悪平等型のタイプではない。 情報をオープンにして、意欲ある社員に提案させ、思いきってまかせるタイプである。 ミスミでは、「オープンポリシー」によって、社員には、全部の情報が公開されている。 また「タスク提案」によって誰でもが、プロジェクトを提案でき、リーダーになれば、人 の採用から個々人の年俸まで決める権限を持つ。また、インクスの山田真次郎社長は、3 0才台の若年のMBA 等いわゆるピカピカの人材を採用できるのは、当社が完全な実力主義 で社歴にこだわらず実力に応じた仕事ができることを挙げている。同様なことは、ファー ストリテーリング(2003年8月期予想売上高3000億円、経常利益433億円、従

(6)

業員数1885名 1994年7月東証1部上場 日経会社情報2003年夏号)でも言 えることである。一時ユニクロ現象といわれるほどのブームに乗りすぎ、その修復中であ るが、玉塚社長をはじめ幹部は若く、しかも中途入社組が多い。これも完全な実力主義で あるためである。 ベンチャー企業は人材が常に不足している場合が多い。このためストックオプションや 地位を若いうちに与えるといった人事制度をとるところが多い。これは、人材を集める有 効な手段であるが、ゆきすぎると一時のネットバブル時にあったように起業家から幹部ま でがキャピタルゲインを目的化してビジネスの根本がおろそかになってしまう危険性もあ る。ここでは、社員中心に対する必要はあるが、行き過ぎてはいけないという「矛盾」が 存在する。 4)新組織・管理体制の導入 戦後の流通・サービス産業にとっての最大のイノベーションは、チェーン・オペレーシ ョンという新組織・管理体制の導入であった。日本でのスーパーマーケット第1号店は、 青山の紀ノ国屋の1953年開店である注7−1。これは、セルフサービスとチェーン・オペ レーションそして大型店運営というイノベーションが複合化されたものであった注7−2。さ らに、フランチャイズ・システムが1960年代にはサービス業(ダスキン等)や外食産 業のチェーン化として導入され、これも大きなイノベーションになった。セブンイレブン が日本一の小売業になり、1万店を突破したのも、このフランチャイズ・システムのイノ ベーションの成果であった。ベンチャー企業という角度で見ると総合スーパー各社やスー パーマーケットチェーン、サービスや外食の本部はイノベーションそのものである。これ らは新組織・管理体制を導入したのであるから、ベンチャー企業そのものである。しかも 新コンセプト業態も同時に持ち込むというイノベーション型ベンチャーであることも多く、 それだけに急速展開し、現在の流通・サービス産業の中で主流となっている。さらに、最 近では新しい動きが出て来ている。メガフランチャイジーという経営形態である。フラン チャイジーは加盟店であり、ノウハウを持たないので本部にロイヤリティーを支払うので ある。であるから、酒屋からの転業や脱サラの開業としての意味はもつが、ベンチャーの 創業としては取扱えない。しかし、最近は、加盟店として大規模になり、独自のノウハウ を開発して本部になるケースや、複数の本部の加盟店になり、そのノウハウを複合化させ て新ノウハウを開発するといったメガフランチャイジーが登場している。ダイオーズ(2 003年3月期連結売上高114億円、経常利益7.1億円、従業員数578名 199 6年10月ジャスダック上場 日経会社情報2003年夏号)は、ダスキンのレンタル事 業のフランチャイジーになったが、6ヶ月間でダスキンのフランチャイジーの中で全国1 位の売上高を達成した。その経験をベースに、日本発のオフィス・コーヒーサービスを立 ち上げ、こちらは本部としてフランチャイズ展開を行っている。ナック(2003年3月 期連結売上高130億円 経常利益13.8億円 従業員数533名 1997 年1月

(7)

東証1部上場 日経会社情報2003年夏号)も、ダスキンのレンタル事業のフランチャ イザーとして業績を伸ばし、独自にフラワーリース事業やオフィスコーヒー事業を立ち上 げフランチャイズ展開を行っている注7−3。ゴトー(2003年2月期連結売上高193億 円、経常利益7.7億円、従業員数319名 1991年2月ジャスダック上場 日経会 社情報2003年夏号)は、もともと郊外紳士服チェーンが本業であったが業績の悪化で、 新規事業多角化としてフランチャイジーとしてブックオフ、TV ゲームの販売「メディアポ リス」、AV ソフトレンタル「TSUTAYA」、カラオケボックス「メガトン」を経営している。 この事業の推進者であった加藤専務(当時)は「新規事業の多角化を考えなければならな いが、ノウハウはなくリスクも高かったのでフランチャイジーになった。その中で客層が 共通し、カルチャーという共通性もあるのでブックオフと TSUTAYA との複合店舗を計画 した。両本部とも猛反対したが、何とか説得して作ってしまったら、相乗効果で成績は非 常に上がった。これが契機で、両本部同士の複合出店が進んでいる。新規事業すべてが成 功したわけではなく撤退したものもある。ゼロからスタートするよりフランチャイズを活 用するとリスクも少ない(以上は2003年6月30日早大公開講座での講義を筆者のメ モから再現したものである。加藤氏は現在、関連企業メディアクリエイト社の社長である)」 このように新組織・管理体制を持込み、さらに新コンセプト事業を立ち上げるという意 味で、フランチャイズ・システムとベンチャー企業との関連が強まっている。 5)先行的技術開発・管理体制導入 ベンチャー企業にとって先行的技術開発体制や、それを管理し品質レベルを保持するの は決定的に重要であることは、くり返し述べてきた。どんな分野でどのような技術を開発 するか、開発された技術をいかに商品に結びつけるかについては、第Ⅱ面変革的切り口で 述べた。ここでは、先行的技術が、次々に生み出される仕組み作りを変革的ひねりとして 取り上げたい。清水市に鈴木総業という研究開発型企業があるが、中西副社長は、自から 曲面印刷技術の世界特許を持つ研究者である。中西副社長は、自分で研究開発するだけで なく、どのようにしたら、次々と新技術を生み出すことができるかという仕組みづくりを 考えたが、それが資料7−1である。鈴木総業は本社として各グループ企業の業務を、研 究開発を除いてすべて担当する。各子会社は、テーマ別技術分野別に構成され、研究開発 だけに集中することができる。このような体制の中から衝撃吸収、防振に極めて高い効果 を発揮する多機能素材「αGEL」が生まれている。また、ウォーターハンマ(水撃現象) 防止用の部品である小型水撃防止器(小・無・騒:(COMSO)が生まれている。そして、 研究者にインセンティブを与えるため、研究開発によるライセンス料などで、子会社に利 益が出た場合は、一定比率を自分達で分配できる制度も導入している注 7 − 4

(8)

すでに述べた林原(2001年10月期 売上高225億円、申告所得9.1億円 従 業員数244名 東洋経済会社四季報未上場会社版)も、「誰もやっていないことをやる」 という林原社長のもとで、インターフェロンの大量生産技術や生理活性化物質の研究を進 め、海外で取得した特許は5000件にのぼっている注7−5。当社は研究開発投資の上限は もうけないことや、リスクの多い研究開発を長期的に継続するためには、同族経営で非上 場企業が適していると林原社長は考えている。また研究施設や研究者用食堂などを充実さ せ、世界中から一流の研究者が来訪しやすい環境も整えている。非上場ではあるが、メセ ナ事業にも熱心で美術館を自ら運営している。 以上述べたように、ベンチャー企業にとって先行的技術が次々に開発されなければ、成 長は続かず失速してしまう。常に技術開発を成功させるには、個人の能力に依存するだけ でなく、組織的仕組みも必要である。さらに開発された技術のより高いレベルへの進化や、 開発された商品に関する品質管理水準を高く維持することが必要である。日本電気の社外 ベンチャーを立ち上げたオーセンテック(資本金2億円、2001年売上高17億円 経 常1100万円 従業員数23名)の近藤信之社長は、以下のように述べている。「ベンチ ャーは大きなトラブルを起こしたらおしまいと思っている。当社も4年前、世界で初めて フラットスピーカーを作った。中略。しかし、大量に不良品を出してしまい、10億円の 負債を抱えてしまった。中略。今まで順調に来ていたので、売上ばかり見ていて内部体制 ができていなかった。中略。10億円の借金を返せるわけがないと考え、その時点で会社 資料7−1 鈴木総業グループ構成図 「ベンチャー企業の経営と支援 柳論文p194」

(9)

を解散しようと思った。当時のNEC は、「応援するから頑張れ」というスタンスで支援し てくれた。(山城経営研究所第31期経営道フォーラム研究報告書 柳孝一監修 D チーム 報告書)」 このように品質管理を含めた体制が非常に重要である。 6)知的所有権活用 知的所有権については、それを活用して特許料収入を得るとか、世界的特許をおさえて 先に述べたワコムのように世界市場を制覇するといった戦略が重要である。前出の鈴木総 業は曲面印刷技術を開発後、世界各国で特許を取得し、大手企業(大日本印刷等)に特許 の使用権与え、ロイヤルティ収入をあげている。また中西副社長は、特許戦略について以 下のように述べている。「特許は全世界の智恵が表現されたものであり、すべての人に公開 されている。したがって、特許資料は開発テーマの宝庫なのである。関係資料は『すべて』 集めて、3回以上、つまり理解するまで読まなければならない。(「ビジネス創造の極意 日 刊工業新聞社 2002年9月中西幹育著」) ベンチャー企業は資金力に限界がある場合、研究開発型企業としての特色を出すことも 戦略のひとつである。鈴木総業は大企業に使用権を渡しているし、アビックスは、製造も 大企業にまかせ、販売も総合商社に委託している。このように、ベンチャー企業が知的所 有権を活用する戦略はベンチャー企業にとって有効な戦略ではあるが、それには知的所有 権を守る闘があり、自らの権利を守れるということが前提である。 超音波洗浄装置を開発したエヌ・アンド・シー(1995年3月期売上高8億円、従業 員35名、資本金8000万円、設立1985年5月)は、窓口である商社から大変な妨 害を受けた注7−6。設計の8割が盗まれ、製品に必要な部品の納入業者からの納入もストッ プしてしまった。それ以外にも、明らかに会社をつぶそうとしている意図がうかがえる妨 害がいくつもあったと柴野佳英社長は語っている。「特許だけでは不十分」と考えた柴野社 長は、徹底的なPR 戦略をとることにした。全国でキャビテーション理論の公開セミナーを 数十回開き、紹介ビデオを作り営業マンが配って歩いた。このようにキャビテーション理 論利用の超音波洗浄装置は、エヌ・アンド・シーが開発したことが広まれば、体面を重ん ずる大企業はマネはなくなるはずであるという作戦であった。当社は、かろうじて自社の 技術と製品を守ったのである。 カンキョーの藤村靖之社長は、会社更生法の申請後筆者に、大企業の特許侵害の件を述 べている。大企業といえども、特許の侵害はやりかねない。特にベンチャー企業は、資金 的、時間的余裕がないため、特許訴訟を起こすことが実質的に困難な場合が多い。また、 訴訟を起こしても判決が出るまで時間がかかり、しかも判決は必ずしも侵害を厳しく制裁 するとは限らないと言うことである。このようなことからすると、ベンチャー企業は特許 戦略を中心として、知的所有権活用戦略についてより高い関心を持ち、日頃から有能な弁 護士や弁理士との関係を維持する必要がある。ただこれも費用がかかるため、ストックオ

(10)

プション等を組み合わせた報酬等も考慮する必要がある。 7)コスト構造変革 四面体理論第Ⅱ面変革的切り口4)コストパフォーマンスによる価格優位性は、ユーザ ー側からみているが、このコスト構造変革は、供給者側からの変革であり、当然関連があ る。 典型的な例は、100円ショップの大創産業のケースである。大創産業は1個100円 という低単価のものを売りながら、売上高は2020億円(2001年3月期、店舗数役 2400店)と巨大な規模に達している。なぜ100円で売れるのか、どうして利益がで るのかという疑問はコスト構造の変革を行っているからである。当社は、世界中で最も安 く作れるメーカーを探し出し、直接100万個レベルで発注するため、製造コストは驚異 的に下げられるのである。また、同社が取扱う3万品目のうち、80∼90%がオリジナ ル商品であるから、メーカー側の開発費等は含まれないことになる。しかし、もうひとつ のポイントは、デフレ経済の中で消費者は、100円という価格に驚き、けっこういろい ろな品種を買うことによる客単価は以外に高くなるというマジックがかくされている。 ユニクロの快進撃も、ユニクロ現象も基本的にはコスト構造変革がもたらしたものであ る。世界的視野で原材料の調達、加工を組合せ、そこそこの品質のものを大量に驚異的低 価格で供給できる SPA(自社ブランド製造直販型小売専門店チェーン、Specialty Retail Store of Private Label Apparel)業態を確立したのである。このため、しっかりした品質 のものが、デパートの価格の1/4∼1/3の割安感でブームとなったのである。しかし、ブ ームが加熱しユニクロ製が街に氾濫することになり、いくらカジュアルウェアでも、アウ ターウェアーである。氾濫することを嫌われ急速に魅力度を失ってブームは去ったのであ る。しかし、SPA の商品供給システムとコスト構造変革の強みは残っており、復活の可能 性はある。しかし、どんなものでもファッションにおける過剰は、価値の喪失をまねくと いうことを記憶すべきである。1989年11月に設立された日本トイザらス(2003 年1月期売上高1797億円、経常利益79億円、従業員数1003名 2000年4月 ジャスダック上場 日経会社情報2003年夏号)は、卸を通さず、メーカーからの直仕 入れでコストを下げ13年間で玩具市場において完全なナンバーワン企業になった。これ も、米国で確立されたコスト構造変革を、商習慣上困難と言われた、日本市場に持ち込み 大成功したケースである。 また、メーカーではユニバーサルホーム(2003年3月連結売上高17億円、経常利 益1.6億円、従業員数66名、1999年9月ジャスダック上場 日経会社情報200 3年夏号)が設計の見直し、素材の開発、建築手順、広告方法等を抜本的に変え、木造住 宅を低価格で提供するコスト構造改革に成功した。自社での住宅供給だけでなく、地域の 工務店をフランチャイジーとして加盟させるという、新組織形態の導入との組み合わせ戦 略をとっている。

(11)

以上で述べたように、コスト構造変革は、生産システム、取引形態や店舗コンセプト、 それを支える情報システム、物流システム等が組み合わされて実現するという特徴がある。 8)新産業・新技術インフラ活用 過去に大成功したベンチャー企業は、新産業・新技術インフラ活用型企業が多い。ヤマ ト運輸の宅急便は、「ネコネット」という個別貨物追跡システムで荷主の信頼を得て、セー ルスドライバーに端末機を持たせることによって配達、集荷効率を飛躍的に向上させた。 セコムも情報通信ネットワークを確立して、機械警備による効率化とともにこのインフラ を活用して「社会システム産業」に挑戦している。セブンイレブンが本家を買収して再建 するほどの大成功を収めたのも、POS システムを活用した単品管理システムをベースとし たトータルの総合的受発注管理システムを構築したためである。ミスミも自社のコンピュ ータシステムをアウトソーシングし、トータルとしての物流・管理システムの精度を上げ ることで、納期を守り欠品をなくす一方で、在庫を減らすことに成功した。ミスミの田口 元社長がよく口にするのは、コンピューターネットワーク、宅急便等の物流システム、近 代的物流センターや倉庫といった、社会・産業・技術のインフラがあったから「購買代理 店」は成立したとのことである。 さらに、「インターネット財閥」と言われるソフトバンクグループの孫正義社長は、「投 資信託」と揶揄されるほどの多くのグループ企業を抱えるが、パソコンでグループの日次 決算ができ、飛行機の中でもチェックできるから、完全にコントロールは可能だとしてい る。 米国でもアマゾン・ドット・コム(Amazon.com)は、1994年に創業以来、売上は急 成長したが、物流センター等への投資がかさみ赤字が続いていた。しかし、2003年度 の売上予測は前年度比25.30%増の51億ドル(1$120円換算で6120億円)に 達する予定である。(当社ホームページ2003年第2四半期決算発表)。営業利益も20 02年度の2億1500万ドルから2億5500万ドル(306億円)に増加すると発表 され、黒字基調になっている。アマゾン・ドット・コムはネット販売の象徴的存在であり、 一時経営危機が伝えられたが、ほぼ軌道に乗ったと判断できる。ネット販売を成功させる にも巨大な物流センターや配送システムと膨大な在庫が必要になる。つまりまさに「クリ ック&モルタル」というバーチャルとリアルの結合したノウハウやシステムが必要という ことの証左である。 デルコンピュータ(Dell Inc.)は、1984年創業で、世界の中でトップシェアを保つ、 PC メーカーであり、PC のネットワークを形成する役割を担っている。一方で、インター ネットを用いた注文生産によるユーザーへの直接販売というビジネスモデルは、まさにイ ンターネット及び物流システムのインフラを活用したビジネスモデルである。当社の20 02年度1月期の売上高は354億ドル(4兆2480億円 120円換算)、純利益は2 1億2000万ドル(2544億円)、世界27カ国に現地法人があり、販売活動は170

(12)

カ国以上で展開し、従業員数は世界で39,100人(2003年2月現在)の世界企業 である(デルコンピュータ 日本サイト オンライン・プレスルーム)。デルコンピュータ の創業者マイケル・デルが、20歳そこそこで創業し、20年足らずで世界企業にまで成 長した訳である。アントレプレナーセンターの福島社長は、1988年 ACE/YEO インタ ーナショナル・コンペンションに参加して、マイケル・デル等の若手起業家の活躍を目の 当たりにして、人生観を変えている(「起業家精神 ダイヤモンド社 1995年12月 福島正伸著 p2∼p11」)。デルコンピュータのビジネスモデルは注文生産によるユーザー直 販システムである。理論的には、完成品の在庫は存在しないことになり、当然価格は極端 に安くなるため、世界の最大シェア(20%近く)を占めるまでになった。このようなビ ジネスモデルが可能になったのは言うまでもなく新産業・新技術インフラを活用したため である。 9)企業間ネットワーク活用

Yves L.Doz と Gary Hamel は著書「ALLIANCE ADVANTAGE 1998President and Fellows of Harvard College 訳書 ダイヤモンド社2001年1月志田勤一、柳孝一 監訳」の中で次のように述べている。「この競争には三つの側面があり、それが戦略的アラ イアンスの役割を重要なものにしている。第一に、情報化への対応を進める上では、各企 業が有しているスキルや経営資源を統合することが必要になるという点である。第二に、 「新産業革命」はかつての産業革命とは異なり、単独企業による垂直統合を促進するもの ではないとう点である。中略。第三に、情報化経済には不確実性がつきものだが、非常に 多くの市場と技術が誕生しているために、その不確実性はさらに高まっているという点に ある。したがって企業はアライアンスを進めて補完的な力を結集することで目的を達成し ようとする(同書 p2∼p3)。このように、競争環境の変化で企業間のアライアンスが必要 とされさまざまな形態が出現している。ベンチャー企業にとっては、今述べた状況は、ま だより厳しく押し寄せてくる変化である。次にも述べるように、ベンチャー企業にとって、 スピードや時間概念が決定的に重要であり、その為には、他企業や他組織とのアライアン ス戦略を含めたネットワークの活用が不可欠である。 すでに述べたフランチャイズシステムやメガフランチャイジー戦略は、まさにアライア ンスである。またバイオベンチャーのアンジェス・エム・ジーやトランスジェニックは、 大手製薬会社や大学、地方自治体、VC、等とのネットワークのもとでビジネスを立ち上げ ている。 また東成エレクトロビーム(1977年6月設立、電子ビーム溶接加工、レーザー加工、 資本金1000万円、2003年3月期売上高9億5000万円、従業員70名、顧客数 2500社)の上野保社長は、2003年6月17日早大公開講座で以下のように述べて いる。「当社の経営の特徴は「コーディネートに活路を見出すモノづくり企業である。」当 社の強みは、日本で初めての電子ビーム溶接であるが、発注先のニーズはあるまとまった

(13)

部品の加工である。加工工程では、いろいろな加工と厳密な検査が必要で、発注先は多数 の加工メーカーにその部品を出さなければならない。そこで当社が協力会社をネットワー ク化して、当社が一括して責任を持って管理し、発注先に届けるというコーディネート活 動を経営の中心としている。また、当社は(社)TAMA 産業活性化協会や大学等各種の機 関ともコーディネート活動を展開している(講義メモから筆者が記述)。このように、企業 間ネットワークを経営の柱にして、成長しているベンチャー企業も存在する。 ベンチャー企業の創業者は、競争環境の厳しい中で、経営資源の不足という状況の中で 日夜戦っている。それだけに相互の苦労がわかっており、連帯感も強い。このようなこと から企業間ネットワークを活用するベンチャー企業が増加するものと考えられる。 10)俊敏性活用体制 筆者は、1987年出版の「マネジメント・ルネサンス 野村総合研究所 柳孝一編著」 の中で、これからの経営資源としては、情報と時間、特に時間資源が最大のキーファクタ ーになると主張した。その後の展開はまさに現実となりインターネットの普及とブロード バンド時代に入り、情報は瞬時に世界を飛びまわり、それがまた新たな行動を生み光速度 での情報の受発信により、意思決定に俊敏性が強く求められる時代に入りつつある資料7 −2。 資料7−2に示すように、20世紀は物理的時間空間が通常である、その中で1日24 資料7−2 企業戦略空間の拡大と経営資源変化 (出所)柳孝一編著[1987]、「マネジメント ルネサンス」 野村総合研究所、図1−2を改編

(14)

時間をフルに使うといった企業が成長してきた。しかし、21世紀は「ドックイヤー」と いわれるように、通常の時間の7∼8倍といったスピードに変わっており、これはますま す加速化する傾向にある。 一方ベンチャー企業の経営資源の中で人的資源、物・サービス、金については、物理的 にベンチャー企業は常に不足し、大きなハンディキャップを負っている。技術、情報につ いては起業家等のすぐれた能力があれば、一点突破は可能になる。そして、時間は一般的 に大企業に比べて数倍の速さで使うことができる資源であり、ベンチャー企業にとってハ ンディキャップではなく、アドバンテージとして使いうる経営資源である。 成熟マーケットでまた、不況とすらいえるマンション販売で「短時間」すなわちスピー ド経営で急成長しているのがゴールドクレスト(2003年 連結売上高973億円、経 常利益143億円、従業員数140名、1999年7月 東証一部上場 日経会社情報2 003年夏号)である。当社の設立は1992年1月であるから、バブル崩壊後の大不況 の中で、しかもマンション販売を手がけ、10年で約1000億円企業に成長したカギは 少数精鋭によるスピード経営である。通常新築マンション分譲は、用地取得後1年6∼7 ヶ月で引渡しされるが、当社の場合、約1年で極めて短期間にスピーディーに動き、すべ ての経費が下がり、資金回転も良くなるわけである。このため、地域やターゲットをしぼ り、競合物件より安めの販売価格で、早く資金を回収するといった工夫が行われている注7 −7。また最近では、インターネットを活用して宣伝費も抑制し、さらにスピードアップに 力を入れている。 セブンイレブンを日本一の小売業に育てた鈴木敏文元会長は、朝令暮改でもいいと公言 している。すぐに決断し、誤りに気づいたらすぐに改める方が、決定を遅らせて商機を失 うよりよほどいいと考えているのである。 米国のケースでは、先に紹介したデルコンピュータが、時間資源を売上と利益に変えた 企業としてション・ホワイト(Sean White)とフランシス・マキナニー(Francis Mcinerney) は述べている「スピードの経営革命 三笠書房 2000年12月 竹中平蔵訳 p224∼ 225」。「「ムーア時間(コンピュータの性能は18ヶ月ごとに2倍になる)を追い越して大 成功を収めた超優良企業―デル−まるで飛行機が音速を超えたように、デルはムーア時間 を越えて進む。ライバルが追いつけそうもないほど決定的な差がついている。中略。ムー ア時間に支配された市場で忘れてはならないのは、「ムーア時間で1年を無駄にすれば、勝 てる見込みは指数関数的に減る」ということだ。ムーア時間の中では、数ヶ月あるいは数 年他の企業の先をいっていたとしても、新製品の開発に2年もかけていると、一気に数十 年の後れをとることになりかねない。そのムーア時間と取り組んで、デルほど見事に成果 を上げた企業はない。」 情報コストの低下スピードは、ブロードバンドの時代にはさらに加速することになり、 そのインパクトはすべての分野が受ける。つまり、「ムーア時間」とは、すべての分野が直 面することになり、それにはベンチャー企業のアドバンテージを行かせる俊敏性活用体制

(15)

がポイントになる。 企業の中には、構成員によって共通に持たれている時間軸がある。ある決定を即時にす る企業から数日、1週間、1ヶ月とさまざまである。これは、産業別のイノベーションの 速度と個別企業に固有に持たれている体質との組み合わせで決まっている。この時間軸の 速さは、ベンチャー企業の場合、創業者が決めることができるし、それを規模が大きくな っても伝承する努力をすればDNA 化できるのである。なぜ、経営資源が不足するベンチャ ーが世界企業になれたのか。「時間資源」がひとつのカギであることをション・ホワイトと フランシス・マキナニーが示してくれているのである。

(16)

注7−1「新流通産業 東洋経済新報社 1972年5月 柳孝一共著 p38」 注7−2「流通産業革命の構図 東洋経済新報社 1994年3月 柳孝一著 p207∼216 注7−3「日本ベンチャー学会フランチャイズシステム研究部会論文集 ベンチャー企業 とフランチャイズシステム 1999年12月 執筆責任者 柳孝一 湯沢剛論 文 注7−4「ビジネス創造の極意 日刊工業新聞社1999年8月 中西幹育著」上記の書 籍以外に最近4回ほどインタビューする機会があり、直接情報を含めて記述し た。 注7−5「創業 講談社 2002年9月 毎日新聞大阪本社経済部著p300∼p302 注7−6「ベンチャーマネジメントの変革 日本経済新聞社 1996年4月 柳孝一、 山本孝夫編著 p261∼p265」 注7−7「ベンチャー企業の経営と支援 日本経済新聞社 2000年4月 柳孝一、熊 谷功論文 p201、p206∼p209」

参照

関連したドキュメント

教育・保育における合理的配慮

変形を 2000 個準備する

事業セグメントごとの資本コスト(WACC)を算定するためには、BS を作成後、まず株

は、これには該当せず、事前調査を行う必要があること。 ウ

しかし,物質報酬群と言語報酬群に分けてみると,言語報酬群については,言語報酬を与

これらの実証試験等の結果を踏まえて改良を重ね、安全性評価の結果も考慮し、図 4.13 に示すプロ トタイプ タイプ B

7.自助グループ

上であることの確認書 1式 必須 ○ 中小企業等の所有が二分の一以上であることを確認 する様式です。. 所有等割合計算書