Title Dominant mutations in ORAI1 cause tubular aggregatemyopathy with hypocalcemia via constitutive activation of store-operated Ca2+ channels( Abstract_要旨 )
Author(s) Endo, Yukari
Citation Kyoto University (京都大学)
Issue Date 2015-03-23
URL http://dx.doi.org/10.14989/doctor.r12920
Right 許諾条件により本文は2015/09/16に公開
Type Thesis or Dissertation
Textversion ETD
京都大学 博士( 医学 ) 氏 名 遠 藤 ゆ か り
論文題目
Dominant mutations in ORAI1 cause tubular aggregate myopathy with hypocalcemia via constitutive activation of store-operated Ca2+ channels
(ORAI1 遺伝子の優性変異は、ストア作動性 Ca2+チャネルの恒常的活性化を
通して細管集合体ミオパチーを引き起こす) (論文内容の要旨)
Tubular aggregates (TAs)は、筋線維内に蓄積する異常構造物であり、光学顕微 鏡および電子顕微鏡観察により特徴づけられる。TA は筋小胞体 (SR) に由来する ことが推測されているが、その詳細な形成機序は不明である。TA を病理学的特徴 とする遺伝性筋疾患は、総称してTubular Aggregate Myopathy (TAM) と呼ばれ る。いくつかの原因遺伝子の報告があるが、依然として原因不明のものが圧倒的多 数を占める。本研究では、TAM の病態解明を目的とし、次世代シークエンサーを 用いてTAM の新規原因遺伝子を探索した。
常染色体優性遺伝形式をとる2家系を対象に全エクソーム解析を行った。A家系か ら41、B家系から34の参照配列とは異なる遺伝子変異が抽出され、そのうち1変異 (ORAI1 c.292G>A p.Gly98Ser) は両家系に共通して見出された。さらに、孤発 TAM患者10名を対象としてORAI1エクソン領域の直接シークエンス解析を行った ところ、1名にc.412C>T p.Leu138Phe変異が見つかった。両変異とも、公共のSNP データベース (dbSNP135, 1000genome, HGVD) に登録されていない新規変異で あった。
ORAI1は細胞膜にあるCa2+ release-activated Ca2+ (CRAC) チャネルの主要構
成タンパク質で、骨格筋に多く発現している。骨格筋収縮は主にSRから放出される Ca2+濃度により制御されている。SR内のCa2+が欠乏すると、SR内のCa2+濃度低下
を感知したstromal-interacting molecule 1 (STIM1) とORAI1が複合体を形成す ることでCRACチャネルを開口させ、Ca2+の細胞内への流入を促進する。この一連
の細胞内へのCa2+流入機構はstore-operated Ca2+ entry (SOCE) と呼ばれ、細胞内
Ca2+ のホメオスタシス維持に重要な役割を果たしている。見出した変異のSOCE への影響を確認するため、罹患者由来の筋管細胞及び上記変異 (Gly98Ser, Leu138Phe) を有するORAI1を過剰発現させたHEK293細胞での、細胞外Ca2+濃度 変化に伴う細胞内Ca2+濃度変化を測定した。その結果、変異ORAI1を有する細胞で はSOCEが恒常的に活性化し、細胞外からCa2+が過剰流入し、細胞内Ca2+濃度が上 昇していることを見出した。さらに、この細胞内Ca2+濃度上昇は、CRACチャネル の特異的阻害剤により抑制された。また、罹患者由来の筋組織を用いた免疫組織化 学的染色により、ORAI1およびSTIM1がTA内に異常蓄積していることを見出した。 以上の結果より、ORAI1優性変異による恒常的SOCE活性化が、TA形成および骨格 筋障害の原因であると考えられた。 これまで、ORAI1遺伝子の劣性変異により重症複合型免疫不全症が引き起こされ ることは知られていたが、優性変異により骨格筋疾患を来すという新たな知見を得
た。STIM1 遺伝子の優性変異でも同様に、SOCE が活性化され TAM を発症するこ とが報告されており、SOCE 活性による細胞内カルシウムホメオスタシスの変化が 骨格筋障害に関与していると推察された。
以上の知見は、新規の筋疾患概念を提唱するものであり、カルシウム動態と骨格 筋障害の関連を解明する端緒となり得る。
(論文審査の結果の要旨)
本研究は、今までほとんど原因不明であったTubular Aggregate Myopathy (TAM)の新たな原因遺伝子を発見し、その病態生理の基礎にせまるものであ る。常染色体優性遺伝形式をとるTAMの2家系を対象に全エクソーム解析を行 い、両家系に共通してORAI1遺伝子の c.292G>A p.Gly98Ser変異を見いだした。 さらに、孤発TAM患者10名を対象としてORAI1エクソン領域の直接シークエンス 解析を行ったところ、1名にc.412C>T p.Leu138Phe変異を発見した。骨格筋収縮 は主に筋小胞体から放出されるCa2+濃度により制御されているが、ORAI1は
store-operated Ca2+ entry (SOCE) と呼ばれる機構を介し、細胞内Ca2+ のホメオ
スタシス維持を担っている。罹患者由来の筋管細胞及び上記変異を有するORAI1 を過剰発現させたHEK293細胞で、細胞外Ca2+濃度変化に伴う細胞内Ca2+濃度変化 を測定し、変異ORAI1がSOCEを恒常的に活性化していることを見出した。また、 この異常は、ORAI1チャネルの特異的阻害剤により抑制された。 本研究により、ORAI1 遺伝子の優性変異により骨格筋疾患を来すという新たな知 見を得た。以上の知見は、新規の筋疾患概念を提唱するものであり、カルシウム動 態と骨格筋障害の関連を解明する端緒となり得る。 したがって、本論文は博士( 医学 )の学位論文として価値あるものと認める。 なお、本学位授与申請者は、平成 27 年 2 月 25 日実施の論文内容とそれに関連し た研究分野並びに学識確認のための試問を受け、合格と認められたものである。 要旨公開可能日: 年 月 日 以降