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2008 年度期末試験 問 1 聴覚について 以下の問いに答えよ (1) 受容器電位 蝸 電位 マイクロフォン電位について記述せよ (2) 内 の周波数分析機構について記述せよ < 解答 > (1) 受容器電位は 聴覚受容器である有 細胞で発 する電位 内 を伝わる 波は基底膜を振動させ 有 細胞の

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⽣理学Ⅱ(動物機能) 2009年度期末試験対策資料(解答解説編)

◆編集:⽊下貴⽂(2008年度⼊学) ◆2010.2.3 作成途中の版を公開

この⽂書について

⽣理学Ⅰ(動物機能)の 2008 年度本試験の解答解説です。 もし間違いを⾒つけられたら、ご指摘いただけるとうれしいです。またご要望や質問などもぜひどう ぞ。直接知らせていただくか、ホームページのアドレスまでメールをください。

過去の出題傾向

2008 年度 問1 聴覚(電気⽣理、内⽿の周波数分析) 問2 神経伝達(神経伝達物質、興奮と抑制の説明) 問3 運動制御(随意運動、反射)、 2007 年度 問1 感覚総論(Weber-Fechner の法則、順応) 問2 視覚(視細胞の分⼦機構、受容野) 問3 視覚(視覚遮断の影響) 問4 記憶(記憶の分類) 問5 中枢神経系の伝達物質

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2008年度期末試験

問1 聴覚について、以下の問いに答えよ。

(1)受容器電位、蝸⽜電位、マイクロフォン電位について記述せよ。 (2)内⽿の周波数分析機構について記述せよ。 <解答> (1) 受容器電位は、聴覚受容器である有⽑細胞で発⽣する電位。内⽿を伝わる⾳波は基底膜を振動させ、 有⽑細胞の感覚⽑と蓋膜を触れさせる。その機械刺激により、感覚⽑の K+チャネルが開き、K+が 有⽑細胞に流⼊することにより、脱分極を⽰す。 蝸⽜電位は、蝸⽜の内部で、内リンパが流れる中央階と、外リンパが流れる前庭階・⿎室階の間に発 ⽣する、定常的な電位差。中央階は後者よりも 80mV の⾼電位である。これは、⾎管条において K+ が能動輸送によって、常に中央階に流⼊していることによる。 マイクロホン電位は、内⽿および周辺部で記録される、聴覚刺激の波形を忠実に反映する電気信号の こと。実験的には正円窓で測定することが多い。その実体は、有⽑細胞の感覚⽑で発⽣する電位の総 和だと考えられている。 (2)基底膜は卵円窓に近い部分は幅が狭くまた結合組織が密で固い。これは蝸⽜の頂部にいくほど幅 広くまた柔らかくなる。そこで卵円窓に近い側ほど、⾳波のうち周波数が⾼い(波⻑が短い)成分に 反応して、基底膜の振動がおこる。以上のように、内⽿における周波数の分節化は、主に基底膜の物 理的な振動特性による。 ★マクロ→ミクロの順、また⾳波が伝わる順に説 明をすすめるのがいいと思うから、(2)からは じめよう。聴覚過程について、外⽿と中⽿は⾳を 集めて増幅するのが主な役割ということは問題 ないとおもうから、内⽿以降の過程を考えよう。 右図のように、蝸⽜を巻きの部分を伸ばしてまっ すぐにすると、アブミ⾻→卵円窓→前庭階→⿎室 階→正円窓という経路が確認できる。この経路は 外リンパで満たされており、⾳波はアブミ⾻から 外リンパに伝わり、正円窓に抜けるまでの間に、 基底膜を振動させる。解答に⽰したように、基底 膜の物質的・物理的な特性によって、特定の周波 数の⾳波が基底膜の特定の場所を震わせる(振動 エネルギーが⽮印のように伝わる)。この仕組み により、内⽿はさまざまな周波数成分を分解して、 各地点にある受容器細胞に⼊⼒している。 なお、この図では内リンパを満たす中央階が省略 されている。 #内⽰の周波数分析機構 「スタンダード⽣理学」1版P358より

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3 次に、蝸⽜管のもう少し正確な模式図を⽰す。前庭階→⿎室階の 経路と、中央階には成分の異なるリンパ液が満たされている。 前庭階と⿎室階を満たすものを外リンパといい、Na+が多く K+が少ない。 中央階を満たすものを内リンパといいい、K+が多く Na+が 少ない。 この組成の違いは、細胞外液と細胞内液の関係と似ている。さて、 この内リンパと外リンパの間には定常的に電位差がみられ、外リ ンパを基準(ゼロ)にすると、内リンパは+80mV の電位を⽰す。 これを蝸⽜内⾼電位 endocochlear potential という。 これをみて「???」と感じた⽅は、よく勉強されています。内 外の組成は細胞と似ているのに、内が+というのは細胞と逆じゃ ないか、というわけ。復習すると、細胞の静⽌膜電位は、漏洩チ ャネルから K+がいつも漏れ出していることで、内側がーの電位となるのだった。蝸⽜の場合は実は、 中央階外縁の⾎管条というところで、つねに ATP を使って K+を能動輸送して内リンパに流⼊させてい る。この K+の移動が、中央階の+の定常電位を⽣み出すのである。 ではなぜ、中央階は電位差を発⽣させてまで⼤量の K+ を中に容れるのかというと、聴覚の受容器である有⽑ 細胞で使うためである。右図に有⽑細胞の模式図を⽰ す。 外リンパを伝わる⾳波が基底膜を振動させると、有⽑ 細胞頂端部の感覚⽑と蓋膜がずれて、感覚⽑が傾く。 すると傾き度合いによって、機械的に感覚⽑の K+チ ャネルが開いて K+が流⼊し、脱分極性の(つまり内 側が+の)膜電位を⽣じる。この膜電位が受容器電位 である。ここでも通常の細胞の脱分極との興味深い対 照がみられる。復習しておくと、普通は Na+の流⼊に よって脱分極は起こるのであった。 感覚⽑の接続部は、「先端 tip」が「連結 link」している ということで、tip-link という(講義で詳しく説明され た)。 当然ありうる疑問、「なぜ内リンパは⾼い電位を持つの か」「なぜ K+で脱分極するのか」について、ざっと答 えておこう。結論は「感度をよくするため」である。有 ⽑細胞は、感覚⽑部分でしか内リンパと接していない。 その膜電位は周囲の細胞や外リンパとの関係で決まり、-60mV である。そこで+80 と-60 で 140mV の電位差が でき、感覚⽑でのごくわずかな K+の流⼊でも、脱分極を引き起こすことができる。つまり有⽑細胞は、僅かなイ オン流⼊に⾼感度で反応できるのである。……とはいえ以上の説明には、さらに「ではなぜ⾼感度の反応が必要 なのか」という問いが直ちに接続するだろう。その解答はたぶん、「機械装置の物理的な制約による」というも のだとおもう。いいかえれば、⾳波の細かい分節化という特殊なタスクに対して、通常の受容器の仕組みの延⻑ #蝸⽜管の断⾯ http://www.ncbi.nlm.nih.gov/bookshelf/br. fcgi? book=neurosci&part=A904&rendertype=figu re&id=A906 より 前庭階 ⾎管条 内リンパ 中央階 外有⽑細胞 内有⽑細胞 ⿎室階 外リンパ 蓋膜 #有⽑細胞の脱分極 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/bookshelf/br.fcgi? book=neurosci&part=A904&rendertype=figure&id=A906 よ り

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4 線上で対応するために、感度の⾼い電気⽣理系と微細な機械装置が要求されたのだと(この注の後半部は筆者に よる推論にすぎない)。 この膜電位は膜上の電位依存性 Ca2+チャネルを開き、流⼊した Ca2+は有⽑細胞下部の神経伝達物質 を放出し、感覚神経(蝸⽜神経)の末端部に伝える。 有⽑細胞は形状こそニューロンとは異なるが、膜電位発⽣からエキソサイトーシスによる神経伝達物質放出の過 程は、ニューロンの軸索末端と同じ仕組みである。 蝸⽜マイクロホン電位は解答に⽰したとおり、この有⽑細胞の膜電位が合算されて、内⽿およびその周 辺部で測定されると考えられている。解答の「聴覚刺激の波形を忠実に反映」とは、⾳波(疎密波)を 横軸に時間、縦軸に変位をとって⼆次元にプロットしたものと、マイクロホン電位の測定結果が、ほぼ 対応しているという意味。ある種の機械装置を使えば、⾳波を交流の波形として表⽰させることができ るが、内⽿も同じようなことができますよ、というところだろうか。

問2 興奮性ニューロンと抑制性ニューロンについて、以下の問いに答えよ。

(1)興奮性の伝達物質と抑制性の伝達物質を、それぞれひとつずつ挙げよ。 (2)興奮や抑制作⽤のメカニズムを説明せよ。 <解答> (1) 興奮性伝達物質:グルタミン酸 抑制性伝達物質:GABA、グリシンなど (2) シナプス前細胞の軸索末端からグルタミン酸が放出されると、シナプス後膜に発現しているイオンチ ャネル型受容体に結合してチャネルを開く。K+、Na+、Ca2+などが流⼊し、EPSP が発⽣する。 シナプス後細胞の軸索末端からグルタミン酸が放出されると、シナプス後膜に発現しているイオンチ ャネル型受容体に結合してチャネルを開く。主に Cl-が流出し、IPSP が発⽣する。 グルタミン酸、GABA には、他にも代謝型(7 回膜貫通型)受容体がある。 ほとんどのニューロンでは、多数のニューロンからの軸索が細胞体や樹状突起にシナプスを作ってお り、ふつう 1 個のシナプスの EPSP だけでは興奮は発⽣しない。EPSP の時間的加重(EPSP が連続 で発⽣して加算される)や空間的加重(複数のシナプスで EPSP が発⽣する)によって、⼀定の閾値 を超えてはじめてニューロンの興奮が起こり、軸索へとインパルスを送る。IPSP は、逆に EPSP を 相殺して、ニューロンの興奮を起こりにくくする。 ★(1)神経伝達物質については、2009 年度中間試験向け資料のⅠ-3 で、すでにある程度包括的な説 明を⾏っている。ここでは必要なところは再掲し、また補⾜的な説明を加えていく。 神経伝達物質 neurotransmitter とは:化学シナプスでの情報伝達に⽤いられる化学物質である。ニュ ーロンで合成されて軸索末端から放出され、シナプス後細胞の受容体に結合することで情報を伝える。 神経伝達物質の機能的分類。前提として次の⽤語をおさえてほしい。 EPSP(excitatory post synaptic potential; 興奮性後シナプス電位)

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5 IPSP(inhibitory post synaptic potential; 抑制性後シナプス電位)

上記資料では、次の表を提⽰した。 機能タイプ 作⽤と代表的な伝達物質 通常の伝達物質 (興奮性伝達物質) シナプス後細胞に EPSP(脱分極)をもたらす 例:グルタミン酸 Glu、アセチルコリン (抑制性伝達物質) シナプス後細胞に IPSP(過分極)をもたらす 例:GABA、グリシン Gly 調節性伝達物質 明瞭なシナプス構造を形成せず、周囲に拡散して作⽤する 例:アミン類、神経ペプチド 有名な伝達物質であるアセチルコリン Ach は、<主に興奮性>だが、受容体依存で興奮か抑制かが決ま ることがわかっている。たとえば Ach は EPSP を発⽣させる場合が多いが、⼀部の受容体(m2,m4 型 ムスカリン受容体)は IPSP を発⽣させる、など。よって Ach を興奮性伝達物質と呼ぶのは、厳密には 間違っている。解答で挙げたグルタミン酸と GABA は、中枢神経系の⼤部分のニューロンではたらいて いる。現在のところ、それぞれ専ら興奮性、抑制性としてはたらくとされているから、これらを挙げて おくのが無難だろう。 (2)各論的に細かいことはたくさんあるのだが、解答例では代表的なケースのみを取り上げ、かなり 内容を絞って説明しておいた(お茶を濁したともいう)。下表を再掲しておく。 神経伝達物質 イオンチャネル型受容体とその作⽤ 代謝型受容体とその作⽤ グルタミン酸 (Glu) NMPA 型、AMPA 型:中枢での興奮 伝達。AMPA 型は速い EPSP、NMPA 型は持続的な EPSP を発⽣する。 mGlu-R: ・視覚や嗅覚の伝達 ・⼩脳や海⾺でのシナプス伝達機能の可 塑性変化に関与 γ-アミノ酪酸 (GABA) GABAA:中枢神経で速い IPSP を発 ⽣。 GABAB:中枢神経で持続的な IPSP を発 ⽣。 解答を補⾜する図を⽰しておこう。 まず右図に、イオンチャネル型受容 体と代謝型受容体の典型的な反応機 構を⽰す。後者は、細胞内のシグナ ルカスケードを経て結局は膜チャネ ルを開くことになることが多い。シ グナルカスケードの分、前者よりも 反応に時間がかかるが、シグナルを 増幅して多数の膜チャネルを開いた り、途中の経路で細かく条件を調節 できたりする。

次に⽰すのは加重の summation の様⼦を⽰す模式図である。複数の EPSP が時間的 temporal、空間的 spatial に加算され、膜電位が閾値を超えるとニューロンが興奮し、インパルスを発射する。 その下には、グルタミン酸を放出する軸索末端がつくるシナプスの拡⼤図を⽰す。シナプス後膜にはさ まざまな種類のグルタミン酸受容体があり、どの種類がどれだけ存在するかで、EPSP のパターンがか #神経伝達物質の受容体の2つの類型 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/bookshelf/br.fcgi?book=neurosci&part=A482より イオンチャネル型受容体 代謝型受容体

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6 わってくる。たとえば反応速度が 少し異なるイオンチャネルを配 置して、EPSP を連続して発⽣さ せるなどの仕組みが考えられる。

問3 以下の問いにそれぞれ答えよ。

(1)陸上競技でピストルの⾳と同時にスタートするとフライングになるのはなぜか。世界記録保持者 のボルトは、ピストルの⾳からスタートまでの遅れが100msだったが、その時間構成について説 明せよ。(200字程度述) (2)(ダンスの写真が提⽰されて)屈曲反射の経路および機能について説明せよ。(200字程度述) (3)膝蓋腱反射について(⽳埋め問題) (4)意識と脳の構造関係について説明せよ。(200字程度述) <解答> (1) 「⾳を聞く」時点から「筋が動作する」時点までには、神経伝播をはじめとする⽣理的過程を経る必 要があるから、ゼロにはならない。 #EPSPとIPSPの加重 http://www.colorado.edu/intphys/Class /IPHY3430-200/006neurons.htm #さまざまなグルタミン酸受容体 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/bookshelf/br.fcgi? book=webvision&part=ch18glu

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7 考えられる経路は、聴覚受容器→⼤脳⽪質→錐体路→下肢の筋。 各シナプスでの伝達時間は 1ms 以下。 運動神経の伝導速度を 60m/sとすると、1.2mの距離の移動に 20ms かかる。 受容器電位の発⽣までの時間、神経筋接合部から筋収縮までの時間(筋⼩胞体から Ca2+放出して拡 散し、アクチンとミオチンが相互にすべるまで)は、細胞内で物質が拡散するのに時間がかかるから、 数 ms から数⼗ ms かかるとおもわれる。 筋線維が収縮を開始してから、よりマクロにみてスタートしたと⾔える状態にいたるまでの時間があ る。 (2)〜(4)は解説を参照。 ★(1)について、そのものズバリのデータは持ち合わせいないので、既知のことから推測によって解 答を作っている。参考となるデータなどを紹介していこう。 視覚または聴覚刺激から筋の反応までの時間を測定する簡易な実験として、2 ⼈ 1 組となって、⽚⽅ の⼈が定規を落とし、⽚⽅の⼈がそれをつかむ、というものがある。その反応時間は、ふつう 200ms 以上、よく訓練された⼈でも 120ms を切ることはまずないらしい。 陸上競技の公式⼤会では、スターティングブロックにセンサーが付いていて、スターターの号砲時間 から、⼈間の反応の限界とされる 100ms より早く動いた場合はフライングとされる。 脊髄反射の反応時間は、およそ 100ms とされる。 運動神経の伝導速度は 40-80m/s 程度で、これは頭部から⾜まで伝わるのに数⼗ ms 程度の時間が かかることになる。 シナプスでの伝達に時間がかかりそうに思えるが、0.1〜0.2ms 程度だとされるので、100ms の内 訳としてはわずか。 神経伝導と伝達以外で遅延箇所として考えられるのは、 (1)受容器電位の発⽣、(2)⼤脳での処理、(3)⾻ 格筋の起動である。(2)はよく分からない。(1)(3) は、いずれも細胞内に物質が拡散する過程が、ある程度時 間がかかるはず。低分⼦がヒト細胞の端から端まで拡散す るのに 100ms かかるというデータがある。 上の定規の例でいうと、筋が始動してからつかむ動作が完 了するまでのタイムラグがあるはず。 ★(2)は屈筋反射についての⼀般的な説明を⾏う(右図参照)。 四肢の⽪膚の痛み刺激に対して、同側の肢の屈筋が収縮す る反射を屈曲反射といい、刺激源から遠ざかろうとする防 御反応である。 ⼊⼒範囲が広く(肢の⽪膚のどの部分の刺激でも反応す る)、また反射作⽤は多くの筋に及ぶ。 反射中枢は脊髄で、多数の介在ニューロンを含む多シナプ ス反射である。 この反射と同時に反対側の肢の伸展が起こり(交叉性伸展 反射)、体重を⽀えバランスをとるはたらきがある。 ★(3)についても、膝蓋腱反射の⼀般的な説明を提⽰してお こう(右図参照)。

#屈曲反射

http://www.ncbi.nlm.nih. gov/bookshelf/br.fcgi? book=neurosci&part=A1107 より

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8 膝蓋腱反射は、⼤腿四頭筋の腱をたたくと⼤腿四頭筋が収 縮するという反射。 反射経路は次のとおり。⼤腿四頭筋が伸ばされて、筋紡錘 でインパルスを発⽣する。求⼼性神経線維を通って⽀配レ ベルの脊髄に⾄り、灰⽩質で運動ニューロンにスイッチし て、⼤腿四頭筋に⾄り、これを収縮させる。 膝蓋腱反射は伸展反射の⼀種であり、これは間に介在ニュ ーロンを含まない、哺乳類で唯⼀の単シナプス反射である。 求⼼性神経線維は、同時に協⼒筋(同じ作⽤を担う筋)を 収縮させ、また介在ニューロンを間にはさんで、拮抗筋で あるハムストリングスを抑制する(相反性抑制)。 ★(4)について。「意識と脳の構造関係」は⽇本語として意 味不明だから「構造の関係」もしくは「構造的関係」だと解し ておく。だがそれでも、曖昧すぎて答えようのない出題である ことには変わらない。1 つの解釈は、これは真⾯⽬な問題では なく、適当に作⽂を書かせて、点数調整を⾏うための出題だと いうものだ。だとすれば、適当にそれらしいことを書いておけ ば適当な点数がもらえますよという話にすぎない。作⽂例を⽰ すことに興味はないから、ここではその解釈は捨て、実は真⾯ ⽬な出題だったとして解説をすすめよう。最初に問題となるのは「意識」および「構造」という⽤語を どう解釈するか、である。単純化すると、「意識」と「構造」にはそれぞれ狭義と広義の意味がある。 A. 狭義の意識とは、覚醒レベルで定義できる。たとえば救急医療で<患者の意識レベルを確認する >とき、覚醒レベルを確認している。 B.広義の意識とは、私たちのだれもが経験しているが、⼗分に⾔語化することは決してできないよ うな、そういう内的体験である。 医学の⽂脈で考えれば A と解釈するのが妥当だが、神経⽣理学、神経科学では<物質にすぎない脳が主 観的体験としての意識を持つのはどのようにしてか>といった問いが⽴てられることがあり(「意識の ハード・プロブレム」と呼ばれる)、B の解釈も⼗分にありうる。 C.狭義の構造とは、具体的な構造部品を指す。たとえば⼩脳や中脳⿊質は、いずれも脳の「構造」 である。 D.より⼀般的に、物事の組み⽴て⼀般、または対象の要素間の安定的な関係の全般を構造だとする 捉え⽅がある。「コンピュータは必ずしも内部構造を知らなくても使いこなせる」「構造的な不況」 などは、この⽤法である。 そこで「A か B か」と「C か D か」で、問題の解釈としては 2×2 の 4 通りがありうることになる。各 組み合わせについて、どのような解答が考えられるかを検討してみよう。 B ではなく A だと考えた場合、問題はかなりやさしくなる。解答例を⽰してみよう。 脳幹網様体は、上⾏性および下⾏性の多種の神経路からの⼊⼒を受け、また中枢神経系に対して広範に 出⼒を送っている。とくに後者は、意識の覚醒度を⾼める作⽤があると考えられ、上⾏性網様体賦活系 #膝蓋腱反射 ⽣理学テキスト5版P96より

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9 と呼ばれる。たとえば脳内の腫瘍や炎症、出⾎など で頭蓋内圧が亢進すると、脳は柔らかいから、圧⼒ は頭蓋の出⼝すなわち脳幹部に向かいやすくなる。 そこでこれらの脳内疾患では、脳幹部の圧迫による 意識障害が出る。他にも、ある種の⿇酔や毒物はこ の系を抑制することで、意識レベルを下げるはたら きをすると考えられている。 さて B. について述べるには、それを科学的に⾔及 するための合意された枠組みがない、という点がま ず問題になる。つまり、広義の意識の問題が、語り ⼿の主観的な問題ではなく、科学の⼀環として取り 扱うことを可能にするような、合意された⼿続きが 存在しない。このような状況においては、広義の意 識についての議論をはじめようとする者が、それを 論じるうえでの仮説的枠組みについて明⽰すること が、議論の前提条件となる。その仮説的な枠組も含めて、説得⼒のある議論が展開されかつそれがある 程度受け⼊れられた場合、受容の程度によってそれは「科学的である」とみなされることになる。(こ こまでしか書いていません)

2007 年度本試験解答解説の補⾜

問2の1) 補⾜として、分⼦機構の模 式図を⽰しておこう。 1、光がロドプシンを刺激 し、次いで G タンパクの Transducin が活性化され る 2、αサブユニットが分離し て移動し、PDE を活性化す る。 3、PDE は cGMP を加⽔分 解し、cGMP の濃度が低下 する 4、cGMP の濃度の低下により、Na+チャネルが閉じる この模式図では、3→4の因果関係が分かりにくいとおもう。次の2点をおさえよう。 cGMP/GMP は細胞質全体に散在している。PDE 付近で cGMP が分解されてできる局所的な cGMP/GMP の不均衡は、ごく短時間で拡散して、細胞質全体の cGMP 濃度が低下する。つまり、細 胞質全体の cGMP 濃度が調節されている。 cGMP 依存性 cGMP チャネルは、cGMP の濃度依存的に開閉する(濃度が⼤きければ開く)。 #脳幹網様体賦活系 http://people.eku.edu/ritchisong/301notes2b.htmlより #視細胞の分⼦機構 http://openwetware.org /wiki/BIO254:Phototransductionより

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10 では後者、つまり cGMP の濃度がチャネルを開閉させるのはどのような仕組みによるのか。この濃度依 存性は、確率論的なアロステリック効果によって説明できるだろう。平たくいえば、次のようになる。 「Na チャネルタンパクのアロステリック部位と cGMP が結合する」という表現を使うことがあるが、 実際には両者はくっついたり離れたりをごく短いサイクルで繰り返している。cGMP が少ないときに はチャネルは閉じているが、cGMP がたくさんあると、くっついたり離れたりが⾼速で起こるから、 タンパクの⽴体構造が微妙に変化して、Na+チャネルが開く。

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