農 業 高 校 に お け る 繁 殖 指 導 と ミ ニ 講 座 に よ る 畜 産 教 育 支 援 ○ 大 津 奈 央 中 島 純 子 長 田 宣 夫 ( 飯 田 家 畜 保 健 衛 生 所 ) 1 はじめに 管内の農業高校では、教育の一環とし て、繁殖雌牛4頭を飼育し、生徒が飼養 管理を担うとともに、生まれた子牛を県 内の家畜市場へ出品する等の活動を行っ ている。 平成 28 年度に、担当教員より飼養牛の 繁殖改善と生徒の畜産分野の知識向上指 導を依頼され取り組みを行ったのでその 概要を報告する。 2 農業高校の概要 農業高校には4つの科があり、そのう ち畜産に直接関係するのはアグリサービ ス科である。アグリサービス科に所属す る生徒は、2年次に生産流通コースと食 農科学コースに分かれ、さらに3年次に は生産流通コースの生徒約 20 人が、畜産 分野と作物分野のどちらかを選択する。 畜産を選択している生徒は、平成 28 年 度は7名で、そのうち課題研究として牛 を選んだ生徒は2名であった(図1)。 図1 農業高校の履修コース 課題研究で牛を選択していない生徒も、 アグリサービス科の授業である総合実習 の時間に、畜産当番として、1~3年生 が毎週2名ずつ交代で牛の管理を行って いた。 また、授業外に班活動として8名が畜 産部に所属していた。 飼養管理については、担当教諭の指示 の下、肉用繁殖雌牛4頭と繁殖候補の育 成牛1頭を畜産当番および畜産部の生徒 が中心に作業をしていた(図2)。飼料は、 自家産牧草、わら、配合飼料を給与して いる。 また、担当教諭が生徒とともに発情観 察後、人工授精を実施していたが、長期 不受胎の牛がいる等、繁殖管理に問題を 抱えていた。 畜産に関する授業は2年次からで、2 年生で週4時間、3年生で週5時間程度 行われているが、授業内容は、概論が主 である。また、担当教諭が実習の際に都 度説明をするものの、系統立てた内容を 指導できていなかった。このような状況 から、担当教諭は生徒の畜産に関する知 識不足を感じていた。 図2 農場の様子
3 取り組み内容 本校において牛の繁殖成績の不良及び 生徒の畜産に関する知識不足という問題 点があり、繁殖成績の改善と畜産分野の 知識向上指導について、担当教諭から家 畜保健衛生所(以下、「家保」という。) に対して依頼があったため、家保、農業 改良普及センター及び担当獣医師が協力 して以下について対応した。 (1)繁殖管理の取り組み 正確な性周期の把握および生徒の主体 的な繁殖管理を目的に、繁殖管理台帳の 整備と繁殖カレンダーの作成を指導した。 また、定期的な繁殖検診を行い、妊娠 鑑定や卵巣障害の状態観察、分娩後のフ レッシュチェックを行った。 繁殖検診を行う際には、生徒が立ち会 い、超音波診断装置の画像(図3)を直 接見せながら、牛の状態を解説した。 その際、ホワイトボードなどに手書き で図を描くなどして、牛の卵巣や子宮の 構造、妊娠子宮と非妊娠子宮の違いや胎 子の見え方などを説明した。 さらに、検診に合わせ、牛の管理の基 礎となるような内容について、毎回テー マを決め、配布プリント(図4)を用意 して、1回 20 分程度のミニ講座を実施し た(図5)。 第1回では、牛の胃の構造と働きにつ いて、第2回では、飼料給与計算につい て、第3回では、性周期と卵巣の変化に ついて解説した。 なお、3年生向けには 、畜産担い手育 成のためとして、繁殖に関わるより実践 的なデータの計算方法について解説し、 繁殖成績を記録して牛群の状態を把握す ることの重要性を指導した(表1)。 図3 エコー画像(胎子) 図4 配布プリント(第3回)
図5 ミニ講座の様子 表1 繁殖に関わるデータ 繁殖データ 繁殖データ 繁殖データ 繁殖データ 平均分娩間隔 発情発見率 空胎日数 成雌更新率 受胎率 初回受胎率 妊娠率 平均授精回数 初産分娩月齢 流産・死産率 (2)アンケート調査 支援に対する効果を調べるため、対象 生徒にアンケート調査を実施し(表2)、 生徒全員 16 名から回答を得た。 表2 アンケート内容 アンケート アンケート アンケート アンケート 繁殖指導 繁殖指導 繁殖指導 繁殖指導 エコーの画像で牛の卵巣や 子宮がわかりましたか? 感想(自由記述) 教育支援 教育支援 教育支援 教育支援 理解度 (ミニ講座第1回、第2回) 講義してほしい内容 支援全体 支援全体 支援全体 支援全体 感想(自由記述) 4 取り組みの成果 (1)繁殖管理 繁殖管理台帳の整備を行った結果、平 均分娩間隔が 407 日から最長 780 日とい う長さであり、分娩間隔の短縮に取り組 む必要性がより明確になった(表3)。 表3 繁殖雌牛データ (平成 28 年 12 月 20 日現在) 生徒主体で作成した繁殖カレンダーに は、発情や授精を記録し、牛の繁殖ステ ージや次回の発情予定日を担当生徒全員 が確認できるようになった(図6)。 番号 出生 産次 最終 分娩月日 平均 分娩間隔 1 H14.4.1 7 H28.10.3 450日 2 H18.4.23 3 H26.8.19 780日 3 H20.3.23 4 H28.2.10 633日 4 H25.5.27 2 H28.8.11 407日
図6 繁殖カレンダー 繁殖検診については、平成 28 年 12 月 20 現在の成績は表4のとおりで、受胎し た1頭は3月9日分娩予定である。 また、卵胞嚢腫の牛については、検診結 果を担当獣医師と共有し、治療に活用し た。 表4 検診結果 (2)アンケートの結果 繁殖指導については、エコーの画像で 牛の卵巣や子宮がよくわかった、ほぼわ かったという生徒が多数であった(図7)。 また、「本格的に見られて良かった」「初 めて見て感動した」「エコーの写真をもら えてよかった」という感想が得られた。 図7 アンケート結果:繁殖指導 畜産教育支援に関する生徒の理解度の 調査では、ミニ講座の第1回、第2回と もに、3年生と比較すると、1、2年生 では難しかったという回答が多数であっ た(図8)。この結果から、生徒の学年に よって理解度に差があることが明らかに なった。 図8 アンケート結果:畜産教育支援 また、今後講義してほしい内容として は、子牛の育成や栄養管理などの牛の飼 養管理に関する希望が多いことが分かっ た(図9)。 番号 産次 最終 分娩月日 検診結果 1 7 H28.10.3 11/11フレッシュチェック 子宮修復順調 2 3 H26.8.19 10/12 卵胞嚢腫治療 11/10 排卵誘発剤投与 3 4 H28.2.10 10/4 妊娠鑑定(+) 4 2 H28.8.11 良い発情が来ず 12/20現在 未授精
図9 アンケート結果:講義してほし い内容 支援の取り組みの全体についての感想 としては、「難しかったけど、ためになっ た」、「貴重な経験になったので良かった」、 「牛の状態をよく観察するようになっ た」、「畜産への興味が深まった」、「牛の 話を聴いて、進路として畜産の仕事につ きたいと思った」などの回答があった。 (3)生徒の意欲的な活動 生徒が牛の繁殖管理に関する取組内容 を文化祭(11 月3日)や課題研究(1月 23 日)で発表した。 文化祭で掲示したポスターでは、繁殖検 診のデータを活用しており、生徒の関心 の高さがうかがえた(図 10)。 図 10 文化祭ポスター 5 考察 今回の取り組みを通じて、農業高校 の生徒の畜産、特に、牛の繁殖に対する 関心が高まり、飼養管理意識の向上につ ながったと考えられた。 しかしながら、今回の取り組みの中で、 3つの課題が浮き彫りとなったため、そ れぞれの課題に対し、以下のように対応 していきたいと考えている。 1つめは、台帳が整備されたことによ り明らかとなった空胎日数の長さである。 今年妊娠した1頭はやや短縮されている が、カレンダーを活用し、授精適期を逃 さないようにするなどして、今後も分娩 間隔の短縮を目標とした検診・指導を継 続していきたい。 2つめは、年度毎に担当教諭や生徒の 入れ替わりがあるため、台帳の引き継ぎ が不十分なことである。今後は、台帳を きちんと管理し、正確なデータとして記 録・保管できるよう指導を行っていく必 要がある。 3つめは、畜産教育支援を行う中で、 学年ごとに知識の差があり、理解度に差 が出てしまうことである。今後は、ミニ 講座では1、2年生でも理解できるよう な、基礎的な内容を中心に検討し、知識 のまだ浅い生徒でも興味がもてる話題を 提供するとともに、3年生向けにはより 応用的な内容・指導を将来の畜産の担い 手支援として充実させていきたい。