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日本企業の業績は回復したか 城西国際大学経営情報学部客員教授プロネクサス主任研究員岡東務 1 はじめに日本企業の業績は回復したか これが本稿の主たるテーマである 日本経済には 199 年以後のいわゆるバブル崩壊の過程が長期間にわたって継続し 各経済主体はそれぞれ深刻な影響を被った その時に 企業が

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企業情報データベースシリーズ 活用事例紹介 第 21回

日本企業の業績は回復したか

城西国際大学 経営情報学部 客員教授

株式会社プロネクサス主任研究員 岡東 務

株式会社プロネクサス

データベース事業部

(2)

2

日本企業の業績は回復したか

城西国際大学経営情報学部客員教授 プロネクサス主任研究員 岡東 務 1 はじめに 日本企業の業績は回復したか――。これが本稿の主たるテーマである。日本経済には1990 年以後のいわゆる バブル崩壊の過程が長期間にわたって継続し、各経済主体はそれぞれ深刻な影響を被った。その時に、企業が、 個人が、そして政府が負った深い傷はいまなお完全に癒えたとは言い切れないばかりか、むしろ個人部門では雇 用者の約 30%が非正規雇用の状態に置かれたままに放置されているし、政府部門にいたっては中央、地方とも に巨額の長期債務を抱えて解決の糸口さえ見つからない状況下にある。そのなかで企業部門は相対的に健闘して いるとの評価もできよう。企業は、デフレ下の需要不足を大胆なリストラを実施することで乗り切る一方で、2008 年9 月には 100 年に一度と言われたリーマンショックや、2011 年 3 月の東日本大震災の災禍を経験した。同時 にその時に発生した津波によって東京電力の福島第一原子力発電所の深刻な事故を引き起こし、日本に深刻なエ ネルギー問題を生じさせた。こうしたなか日本企業は果たして回復したのか。プロネクサスの総合企業情報デー タベース(eol=イーオーエル)をもとに日本企業の業績動向を検証した。 2 日本経済の姿 (1)国民経済計算(GDP 統計)の動き 図表1 は、1995 年度以降の日本経済の姿を概観するために掲載したものである1 。図表では、実質GDP(国 内総生産)、名目GDP、それと両者をつなぐ GDP デフレーターを表している。まず実質 GDP の前年度比伸び 率の推移を見ると、1996 年度に 2%増を達成したものの、それ以降は 1998 年度、2001 年度、2008 年度及び 2011 年度にそれぞれマイナス成長落ち込んだ。特に1998 年度の落ち込みが大きかったがこれはリーマンショック、 2011 年度のそれは東日本大震災による影響である。 企業業績に関係が深い名目GDP の動きも 2000 年代前半の数年間は 2%弱の伸び率を示しているが、それ以外 は実質GDP を上回って乱高下が激しい。特にリーマンショックの時には需要の急減を受けて激しい落ち込みを 示した。 一方、この間の物価水準の推移を表すGDP デフレーターを見ると、1997 年度の消費税引き上げによる影響を 除くと、一貫して前年度比マイナスが続いた。この数字は日本経済が長期間にわたってデフレ経済化にあったこ とを示している。 (2)対ドル円相場の推移 図表2 は、最近 25 年間の対ドル円相場の動きを表したものである。対ドル円相場の 25 年間の動きを概観すると、 何度か乱高下を繰り返しながら1990 年の 153.19 円から 2011 年の81.82 円へと約 47%円高ドル安となった後、こ こ数年は円安ドル高へ反転している。

(3)

3 (資料)内閣府[2013] (資料)日本銀行 特にリーマンショック後の需要急減に加えて、円高が続いたことは自動車、電機、精密などの輸出産業にとっ てかってない厳しい時代を経験することになったことは記憶に新しい。しかし、円相場が円安に転じた後、“ア ベノミクス”と大規模な金融緩和による効果が経済回復を後押ししているように見える。 -10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 図表1 GDP(名目、実質、デフレーターの推移) デフレーター GDP(実質) GDP(名目) 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 図表2 対ドル円相場(年度末、東京市場、ドル・円)

(4)

4 (3)産業レベルの業績指標 ①日本政策投資銀行の指標 図表3 は、日本政策投資銀行が集計した全産業レベル(集計対象 1698 社)の業績指標のうち、使用総資本事業 利益率と自己資本利益率(ROE)を 2012 年度までの 10 年間に限って図表化したものである2。2013 年度のデ ータは2014 年末に公表される予定である。 (資料)日本政策投資銀行[2013] 図表3 によると、2つの指標とも 2007 年度までは緩やかな回復基調にあったが、2008 年度にはリーマンショ ックの影響を受けて一転して大きく落ち込んだことが示されている。その後は回復基調にあるものの、2 つの指 標とも2012 年度までの段階ではリーマンショック直前のピークの水準までに回復していないことが読み取れる。 ②財務省の指標3 図表4、図表 5 図表 6 及び図表 7 はいずれも、財務省の法人企業統計年報の 2007 年度から 2013 年度までの 指標から作成した。図表4 によると、2007 年度から 2013 年度までの売上高の推移の形状は製造業、非製造業と も浅いすり鉢型となっているが、2013 年度に至っても製造業、非製造業ともリーマンショック前の水準に戻っ ていないことが読み取れる。 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 図表3 日本企業の経営指標の推移(全産業) 自己資本税引後利益率 使用総資本事業利益率

(5)

5 (資料)財務省[2012~2014] 図表 5 は製造業と非製造業に大別してそれぞれの経常利益の推移を見たものである。2008 年度のリーマンシ ョックによる衝撃が大きかったことがわかる。 (資料)財務省[2012~2014] しかもこの図表では製造業、非製造業とも2008 年度以降、2 年度にわたって減益が続き、経常利益の底が 2009 年度になっている(図表6 参照)。 0 2,000,000 4,000,000 6,000,000 8,000,000 10,000,000 12,000,000 2007年度 2008 2009 2010 2011 2012 2013 図表4 売上高の推移(億円) 製造業 非製造業 0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000 300,000 350,000 400,000 2007年度 2008 2009 2010 2011 2012 2013 図表5 経常利益の推移(億円) 製造業 非製造業

(6)

6 (資料)財務省[2012~2014] (資料)財務省[2012~2014] 先述の図表3 では、最近の業績の上場企業のボトムが 2008 年度になっていたが、財務省の資料では、むしろ 2009 年度が業績のボトムになっているが、これは集計対象企業に中小企業を多数含んでいることが一因と推測 される。 図表7 は、財務省の法人企業統計年報の 2007 年度から 2013 年度までの指標から売上高営業利益率の推移を 見たものである。全産業及び非製造業の売上高営業利益率は2013 年度になってリーマンショック前の水準を超 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100 2007年度 2008 2009 2010 2011 2012 2013 図表6 経常利益増減率の推移(%) 製造業 非製造業 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 全産業 製造業 非製造業 図表7 売上高営業利益率の推移(法人企業統計年報)

(7)

7 えたが、製造業のそれは依然として未達であることがわかる。製造業にとっての宿題は2014 年以降に持ち越さ れた。 3 業種別の実態を探る 有価証券報告書提出企業を対象としたeolデータによると、33 業種に分類した業種別平均の売上高の 2007 年度から2013 年度までの推移は図表 8 に示すようになる。 (資料)eol ただし、eolデータの対象期間は対象年度に決算期を迎えた企業を対象としているので、日本政策投資銀行 や財務省のデータとは対象年度が若干異なる点を指摘しておきたい。すなわちリーマンショックの直撃を受けた 2009 年 3 月期は、日本政策投資銀行や財務省のデータでは 2008 年度に含まれるのに対して、eolでは 2009 年3 月期は 2009 年度に集計されている。 0 500,000 1,000,000 1,500,000 2,000,000 2,500,000 水産・農林業 鉱業 建設業 食料品 繊維製品 パルプ・紙 化学 医薬品 石油・石炭製品 ゴム製品 ガラス・土石製品 鉄鋼 非鉄金属 金属製品 機械 電気機器 輸送用機器 精密機器 その他製品 電気・ガス業 陸運業 海運業 空運業 倉庫・運輸関連業 情報・通信業 卸売業 小売業 銀行業 証券、商品先物取引業 保険業 その他金融業 不動産業 サービス業 図表8 業種別平均の売上高の推移(億円) 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(8)

8 図表8 によると、売上高の大きな業種は、石油・石炭製品、保険、電気・ガス業、輸送用機器、空運業がベス ト5 である。 (資料)eol 一方、図表9 の業種別平均の営業利益の推移を見ると、図表 8 とは少し違う姿が現れる。鉱業、石油・石炭製 品、保険業、電気・ガス業、空運業がベスト5 で、以下輸送用機器、銀行業、医薬品などが続く構図となる。 図表 10 は、業種別平均の売上高営業利益率の推移を見たものである。売上高営業利益率が比較的高位で安定 しているのが、鉱業、銀行、医薬品、情報・通信、不動産業がベスト5 といったところである。 -60,000 -40,000 -20,000 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 水産・農林業 鉱業 建設業 食料品 繊維製品 パルプ・紙 化学 医薬品 石油・石炭製品 ゴム製品 ガラス・土石製品 鉄鋼 非鉄金属 金属製品 機械 電気機器 輸送用機器 精密機器 その他製品 電気・ガス業 陸運業 海運業 空運業 倉庫・運輸関連業 情報・通信業 卸売業 小売業 銀行業 証券、商品先物取引業 保険業 その他金融業 不動産業 サービス業 図表9 業種別平均の営業利益の推移(億円) 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(9)

9 (資料)eol 図表 11 は、業種別平均の経常利益率の推移を見たものである。業種別平均の営業利益率の推移の図表と比べ て見ても大差がないとも言えるが、念のために紹介しておくこととしたい。 -60 -40 -20 0 20 40 60 水産・農林業 鉱業 建設業 食料品 繊維製品 パルプ・紙 化学 医薬品 石油・石炭製品 ゴム製品 ガラス・土石製品 鉄鋼 非鉄金属 金属製品 機械 電気機器 輸送用機器 精密機器 その他製品 電気・ガス業 陸運業 海運業 空運業 倉庫・運輸関連業 情報・通信業 卸売業 小売業 銀行業 証券、商品先物取引業 保険業 その他金融業 不動産業 サービス業 図表10 業種別平均の売上高営業利益率の推移(%) 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(10)

10 (資料)eol 次に企業の効率面を見る指標としての仕上げの意味で示したのが、図表 12 の業種別平均の自己資本利益率の 推移である。情報・通信業、空運業、卸売業などが比較的高い数値を示している。だが、業種別平均の自己資本 利益率について総じて言えることはその水準が低く、依然として大きな課題を抱えているといえよう。 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 水産・農林業 鉱業 建設業 食料品 繊維製品 パルプ・紙 化学 医薬品 石油・石炭製品 ゴム製品 ガラス・土石製品 鉄鋼 非鉄金属 金属製品 機械 電気機器 輸送用機器 精密機器 その他製品 電気・ガス業 陸運業 海運業 空運業 倉庫・運輸関連業 情報・通信業 卸売業 小売業 銀行業 証券、商品先物取引業 保険業 その他金融業 不動産業 サービス業 図表11 業種別平均の経常利益率の推移(%) 2008 2009 2010 2011 2012 2013

(11)

11 (資料)eol 4 代表的な企業業績の推移 業種別平均の業績各指標の分析から特に目に付いた代表的な企業の業績の推移を個別に概観してみる。 (1) 国際石油開発帝石(鉱業) 国際石油開発帝石は、原油・ガス開発生産の国内最大手である。同社の2007 年度から 2008 年度までの主な 業績指標は次のとおりである。同社の財務面から見た特徴は、営業利益率、経常利益率及び当期利益率のいずれ も高い水準にある。しかし同社といえども、2008 年度から 2010 年度の 3 年間は、米国のサブプライムローン問 題に端を発した金融危機による世界的な規模での急速な景気後退や円高などの影響受けて業績の落ち込みを余 儀なくされた(2008 年度『有価証券報告書』第2【事業の状況】1【業績等の概要】参照 )が、2013 年度の 営業利益、経常利益はリーマンショック前の水準を上回った。 -50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 水産・農林業 鉱業 建設業 食料品 繊維製品 パルプ・紙 化学 医薬品 石油・石炭製品 ゴム製品 ガラス・土石製品 鉄鋼 非鉄金属 金属製品 機械 電気機器 輸送用機器 精密機器 その他製品 電気・ガス業 陸運業 海運業 空運業 倉庫・運輸関連業 情報・通信業 卸売業 小売業 銀行業 証券、商品先物取引業 保険業 その他金融業 不動産業 サービス業 図表12 業種別平均の自己資本利益率の推移(%)

2008 2009 2010 2011 2012 2013

(12)

12 図表 13 国際石油開発帝石の業績の推移 (資料)eol (2) 石油・石炭(出光興産) 石油・石炭業界では、JXホールディングスが業界最大手であるが、同社は新日石と新日鉱HDが合併、2010 年4 月に発足したため、割愛し、代わって出光興産の業績推移を検討した。 図表14 出光興産の業績の推移 (資料)eol リーマンショック当時の出光興産の業績の推移を見ると、全般に需要が先細り傾向のなかで、石油化学製品部 門は不振だったが、石油製品部門と石油開発部門は好調だったことなどから、高い水準の営業利益を確保したあ と、2009 年度は大きく落ち込んだ。その後は回復基調に。ただし、2013 年度の営業利益は円安の影響を受けた 原油輸入コストの上昇による石油製品マージンの縮小などが大幅な減益となった。石油業界には棚卸資産の評価 方法によって業績が変動するという要因がある。 (3)武田薬品工業(医薬品) 武田薬品工業は日本の製薬業界を代表する。医薬品産業を取り巻く事業環境も、世界最大の市場である米国で公 的医療保険のコスト削減方針が明らかにされたことに加え、日欧でも後発品使用促進などの医療費抑制策が一層強化 されていること、さらには新薬承認審査が世界的に厳格化されてきていること等により、ますます厳しくなってきて いると同社は認識している。一方、2008 年度の営業利益は 27.6%減少したが、これは、販売費及び一般管理費が研 究開発費、無形固定資産償却費等を中心に前年度から 40.0%の大幅な増加となったことによる。製薬業界はリーマン

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

売上高(百万円) 1,202,965 1,076,164 840,427 943,080 1,186,731 1,216,533 1,334,625 営業利益(百万円) 714,211 663,266 461,667 529,742 709,357 693,447 733,610 営業利益率(%) 59.37 61.63 54.93 56.17 59.77 57 54.96 経常利益(百万円) 685,799 616,166 442,027 508,587 767,038 718,146 750,077 経常利益率(%) 57 57.25 52.59 53.92 64.63 59.03 56.2 当期利益(百万円) 173,245 145,062 107,210 128,699 194,000 182,961 183,690 当期利益率(%) 14.4 13.47 12.75 13.64 16.34 15.03 13.76 ROE(%) 15.8 11.9 8.1 7.6 9.3 7.9 7

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

売上高(百万円) 3,864,263 3,798,489 3,112,305 3,659,301 4,310,348

4,374,696

5,034,995

営業利益(百万円) 55,891 102,411 44,462 128,771 138,078

110,684

78,197

営業利益率(%) 1.44 2.69 1.42 3.51 3.2

2.53

1.55

経常利益(百万円) 60,695 89,289 30,387 128,015 133,559

109,122

81,921

経常利益率(%) 1.57 2.35 0.97 3.49 3.09

2.49

1.62

当期利益(百万円) 4,837 3,323 5,977 60,683 64,376

50,167

36,294

当期利益率(%) 0.12 0.08 0.19 1.65 1.49

1.14

0.72

ROE(%) 0.9 0.7 1.3 12.3 11.7

8.1

5.4

(13)

13 ショックの影響の影響よりもむしろ業界固有、あるいは個別企業の主力商品の動向次第が業績を左右していると思わ れる。 表15 武田薬品工業の業績の推移 (資料)eol (4)トヨタ自動車(輸送用機器) 2008 年度の業績は、売上高は 20 兆 5,295 億 7,000 万円と、前年度に比べて 21.9%の減収となり、営業利益は 4,610 億 1,100 万円の損失となった。営業利益の減少要因は、販売面での影響が1兆 4,800 億円、為替変動の影 響が 7,600 億円、諸経費の増加ほかが 4,913 億円。当期純利益は 4,370 億円の損失となった。 トヨタ自動車の減収、営業赤字転落は驚きをもって受け止められたことは記憶に新しい。その後は経営努力に より業績が着実に回復し、2013 年度の営業利益はリーマンショック前の水準を上回った。 図表16 トヨタ自動車の業績の推移 (資料)eol

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

売上高(百万円)

1,374,802

1,538,336

1,465,965

1,419,385

1,508,932

1,557,267

1,691,930

営業利益(百万円)

423,123

306,468

420,212

367,084

265,027

122,505

139,273

営業利益率(%)

30.77

19.92

28.66

25.86

17.56

7.86

8.23

経常利益(百万円)

536,415

327,199

415,829

371,572

270,330

113,168

130,674

経常利益率(%)

39.01

21.26

28.36

26.17

17.91

7.26

7.72

当期利益(百万円)

355,454

234,385

297,744

247,868

124,162

131,244

90,348

当期利益率(%)

25.85

15.23

20.31

17.46

8.22

8.42

5.34

ROE(%)

15.1

10.9

14.4

11.8

6.1

6.3

4

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

売上高(百万円)

26,289,240

20,529,570

18,950,973

18,993,688

18,583,653

22,064,192

25,691,911

営業利益(百万円)

2,270,375

-461,011

147,516

468,279

355,627

1,320,888

2,292,112

営業利益率(%)

8.63

-2.25

0.77

2.46

1.91

5.98

8.92

経常利益(百万円)

2,437,222

182,594

-77,120

-47,012

23,098

856,185

1,838,450

経常利益率(%)

9.27

0.88

-0.41

-0.25

0.12

3.88

7.15

当期利益(百万円)

1,717,879

-436,937

209,456

408,183

283,559

962,163

1,823,119

当期利益率(%)

6.53

-2.13

1.1

2.14

1.52

4.36

7.09

ROE(%)

14.5

-4

2.1

3.9

2.7

8.5

13.7

(14)

14 (5)野村證券(証券業) 業界最大手の野村證券の 2008 年度の業績は 600 億円を超える営業赤字に転落した。収入源の①受入手数料、 ②トレーディング損益、③金融収支の3 部門がいずれも前期比大幅減 となったことが主因。例えば委託手数料を見ると、東証株式一日平均売買代金が 2 兆 4 百億円(前期比 31.1%減) となる中で、野村の株券売買高も個人投資家、機関投資家双方で減少し、同社の株式委託取引にかかる売買代金 は 45 兆 20 百億円(同 29.1%減)となった。株式委託手数料は 783 億 63 百万円(同 28.1%減)、委託手数料は合 計で 839 億 81 百万円(同 27.2%減)と大きく減少した。 一方 2013 年度の業績は好調に推移した。営業部門は、安倍政権の推進する経済政策(いわゆる「アベノミク ス」)が、為替市場や株式市場を刺激したことを受け、株式委託手数料や投信募集手数料などが前期に比べ増加 し、純営業収益が 5,092 億 30 百万円(前期比 30.5%増)、経常利益が 1,982 億 35 百万円(同 80.1%増)となっ た。 ホールセール部門は、株式市場の好調を背景に、株券等トレーディング損益が順調に推移した。また、新規上 場、公募増資共に大型エクイティ・ファイナンスも前期に比べ増加し、純営業収益が 2,202 億 73 百万円(同 22.2% 増)、経常利益が 1,147 億 66 百万円(同 53.9%増)となった。 図表17 野村證券の業績の推移 (資料)eol 日本の大手企業は、電力業界など今なお将来が展望できない企業が一部にあるものの、100 年に 1 度とも言わ れた2008 年度のリーマンショックや数百年に 1 回あるかないかとも言われた東日本大震災の衝撃を乗り越えて 概ね順調に回復しつつあると思える。企業によっては既にリーマンショック前の水準を超えているが、多くは今 期、すなわち2014 年度の業績が予想とおりに推移すればリーマンショックによる影響を克服することができよ う 4。しかし、それで日本企業の課題が解決したのかというと決してそうではない。日本企業には自己資本利益 率に代表される資本効率が欧米企業に比べて低いという積年の課題が残されている。次節でこの問題を中心に論 じることとしたい。

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

売上高[百万円] 710,537 502,201 663,680 613,391 580,271

662,450

816,205

営業利益[百万円] 165,138 -60,292 127,576 86,378 56,639

139,068

252,302

営業利益率[%] 23.24 -12 19.22 14.08 9.76

20.99

30.91

経常利益[百万円] 164,734 -60,075 126,643 86,240 57,163

138,497

251,923

売上高経常利益率[%] 23.18 -11.96 19.08 14.05 9.85

20.9

30.86

当期純利益[百万円] 100,177 -37,509 76,853 50,666 27,316

88,171

158,766

当期利益率[%] 14.09 -7.46 11.57 8.25 4.7

13.3

19.45

(ROE)[%] 11 -4.74 9.95 5.97 3.07

9.43

15.85

(15)

15 5 今後の課題 経済産業省は、2014 年 8 月、企業が投資家との対話を通じて持続的成長に向けた資金を獲得し、企業価値を 高めていくための課題を分析した伊藤レポート(正式には『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資 家の望ましい関係構築~』)を公表した。伊藤レポートの主要なメッセージと提言は次のとおりである5 ① 企業と投資家の「協創」による持続的価値創造を ② 資本コストを上回る ROE(自己資本利益率)を、そして資本効率革命を ③ 全体最適に立ったインベストメント・チェーン変革を ④ 企業と投資家による「高質の対話」を追及する「対話先進国」へ ⑤ 「経営者・投資家フォーラム(仮)」の創設 特に2 番目の提言(②)は本稿とも密接に関係する。提言のより具体的な説明は次のようになる。 (企業は)ROE を現場の経営指標に落とし込むことで高いモチベーションを引き出し、中長期的に ROE 向上 を目指す「日本型ROE 経営」が必要である。「資本コスト」を上回る企業が価値創造企業であり、その水準は個々 の企業ごとに異なるが、グローバルな投資家との対話では 8%を上回る ROE を最低ラインとし、より高い水準 を目指すべきであると述べている。 本レポートは、伊藤邦雄一橋大学大学院商学研究科教授を座長に招き、企業経営者や長期投資家、市場関係者 が集まり、1 年をかけてまとめたもの。経済産業省が本プロジェクトを立ち上げた背景には次のような認識があ る。 すなわち、現在、金融危機の反省から欧米諸国を中心に、投資家や企業の短期主義是正やコーポレートの強化 とともに、企業と投資家の対話や企業開示・報告のあり方の見直し等が国際的な議論になっており、例えば米国 では「アクティビスト」「もの言う株主」の存在感が高まるなかで、株主と経営陣の対話のあり方、年金基金等 長期的な機関投資家との関係をどのように構築するといったことが議論されている。 日本においてもマクロ経済環境が好転しつつあるなかで、企業が中長期的な収益構造を確固たるものにし、そ のような企業への投資を通じて資本市場においても持続的な利益を得られるように好循環を生み出していくこ とは今後の成長に向けた課題であるとしている。 ROE(自己資本利益率)は次のように分解できる。 当期利益 当期利益 売上高 総資産 = × × 自己資本 売上高 総資産 自己資本 右辺第1 項は売上高営業利益率、同第 2 項は総資産回転率、同第 3 項は財務レバレッジ である。上記の式から導きだされる答えは、第1 項の収益性の向上を目指すことである。日本企業に概ね共通し ている考え方といわれる市場シェア至上主義と決別し、収益性の劣る製商品から撤退することである。 同時に、第2 項が示唆しているように総資産の圧縮、すなわち不要不急な資産の削減を思い切って進めること である。 最後に総資産の削減を通じて得られた資金を過剰な債務の返済に充当することで財務レバレッジを2 倍程度に 圧縮することも可能である。 古くて新しい主張であるが、こうした考え方が着実に実行されることを期待しながら本稿をひとまず閉じるこ とにしたい。

(16)

16 注 1 内閣府[2013][2014] 2 日本政策投資銀行[2013] 3 財務省[2014] 4 野村證券[2014] 2014 年 9 月発表の資料によれば、254 社(金融を除く RN Large)を対象とした 14 年度の 増収率は4.2%増、営業増益率は 8.3%、経常増益率 4.6%、税引増益率は 7.5%となっている。 5 経済産業省[2014] 参考文献 経済産業省[2014]『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~』(伊藤レポー ト)、8 月 http://www.meti.go.jp/press/2014/08/20140806002/20140806002.html 財務省[2012~2014]『法人企業統計調査結果』(平成 23 年度~25 年度) 内閣府[2013]「国民経済計算確報 2012 年度確報(平成 24 年度)」『国民経済計算(GDP 統計)』12 月 25 日 http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h24/h24_kaku_top.html#c1 内閣府[2014]「2014(平成 26)4~6 月期四半期別GDP速報(第1次速報値)」8 月 13 日、 http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/files/2014/qe142/pdf/gaiyou1421.pdf 日本政策投資銀行[2013]『2013 年版 産業別財務データハンドブック』12 月、日本経済研究所 野村證券[2014]「2014~2015 年度の企業業績見通し」9 月

参照

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