CBCTによる3次元自動歯軸・歯列
の新規決定法
新潟大学
医学部
保健学科
教授
坂本 信
従来技術とその問題点
歯軸 (Tooth Axis, Long Axis)
✓ 歯の長軸を示す最も基本的な歯の形態的基準軸 ✓ 決定方法は概念的な定義が多く,歯軸の普遍的
な定義は確立されていない
Long Axis and Axial Surface (Figure).
The long axis of a tooth is an imaginary line that goes through the crown and root around which the substance of a tooth is most symmetrically distributed. Any surface of a tooth that is parallel to the long axis is called an axial surface (for example, mesial, distal, facial, or lingual
surfaces). (https://quizlet.com/164583824/anterior-teeth-maxillary-and-mandibular-central-and-lateral-incisors-flash-cards/) 歯頸部付近に重点を置き,歯の中央部を縦 に通る直線を歯軸とする 歯軸
従来技術とその問題点
歯軸 (Tooth Axis, Long Axis)
三次元的歯軸が一義的に決定される手法の確立 ✓ 歯科矯正治療 ✓ 歯冠修復の設計・製作 ✓ 咬合診断 ✓ 歯根破折時の破折形態評価
歯1本内の位置を何かで示したかった
従来技術とその問題点
歯軸 (Tooth Axis, Long Axis)
臨床では一般的に二次元的歯軸が用いられている
頭部X線規格写真・側方セファログラム(術前) 術前 パノラマX線写真
従来技術とその問題点
三次元自動歯軸の先行研究
非接触式形状測定器により上顎中切歯 の抜去歯表面形状データから主成分分 析を用いて歯軸を求めた報告 コーンビームCT(CBCT)を用いて, 生体内のヒト歯20本について主成分分 析法から歯軸を求めた報告:その精度自動歯軸の提案
CBCTによる三次元自動歯軸
✓ マイクロCT,CBCTを利用して
抜去歯
の三次元モデルを構築し,4種類の歯の三次元形状から主成分分析を用い
て三次元的歯軸(Principal Component analysis-Axis: PC-A)を自動決定する手法を提案 CBCT歯軸精度: 0.51±0.22°~ 0.97±0.58° CBCT重心精度: 0.16±0.10 mm ~ 0.40±0.19 mm ✓ 手動で歯軸を決定する際,検者間誤差が大きくなりやすい 二根の大臼歯や歯根が弯曲形状を有する歯においてはPC-Aは有用である 坂本信,ほか,臨床バイオメカニクス学会, Vol. 35, 99-104, 2014 坂本信,ほか,臨床バイオメカニクス学会, Vol. 36, 119-125, 2015 手動歯軸 自動歯軸
生体内での自動歯軸の提案
三次元自動歯軸と手動歯軸との相対誤差評価
ERangle:三次元空間上の相対角度誤差 ERdist :重心からT-Aとの距離 PC-A T-A 手動歯軸 自動歯軸 ERangle Center of gravity ERdist生体内での自動歯軸の提案
自動歯軸と手動歯軸との差異
犬歯においては,その歯冠や歯根部の形状から目視での手動歯 軸の見極めがやや難しく,自動歯軸の有用性が示唆される 歯種 ERangle [ ゚ ] ERdist [mm] Central incisor (中切歯) 2.6 ± 1.2 0.40 ± 0.20 Lateral incisor (側切歯) 1.6 ± 0.9 0.47 ± 0.25 Canine (犬歯) 2.2 ± 1.3 0.59 ± 0.32 Canine (33) Lateral incisor (32) Central incisor (31) 中切歯 側切歯 犬歯生体内での自動歯軸の提案
✓ ここまで我々が示してきた自動歯軸は,個別の歯 ごとに対するローカル座標系における三次元歯軸 の表現に留まっていた
生体内での自動歯軸の提案
✓ 自動歯軸の臨床応用等を考える際には,上下顎骨 の解剖学的特徴点から口腔空間内に座標原点を定 めることによって口腔内全体を表す座標系,すな わち,ワールド(グロ-バル)座標系
を 導入することが重要 ✓ これにより歯列
や歯軸
の三次元絶対位置評価 が可能となり,歯列の特徴評価,歯科矯正時の歯 の三次元移動測定およびインプラントの手術前計 画等に用いることができる歯列(歯列弓)
歯ならび
(Teeth Alignment or Dental Arch)
This adult patient struggled to fit his teeth together due to jaw misalignment. He benefitted from orthodontic treatment in conjunction with jaw surgery to provide a balance to his bite, smile and face.
歯列(歯列弓)
✓ 被検者の口腔内模型をキャスティングにより作成し, その後に三次元レーザー測定機による方法
Dindaroğlu F, Duran GS, Aras I:
Three-dimensional evaluation of morphologic tooth symmetry in various malocclusions.
Am J Orthod Dentofacial Orthop 150: 459-466: 2016.
歯列(歯列弓)
✓ 被検者の口腔内模型をキャスティングにより作成し, その後に三次元測定機のスタイラスにて歯の特徴点 を接触して測定する方法
Braun S, Hnat WP, Fender DE, Legan HL: The form of the human dental arch. Angle Orthod 68: 29-36, 1998.
✓ 上下顎骨の特徴点からワールド座標系を構築 ✓ 前歯の歯軸と歯列の三次元絶対位置と角度を
計算的に求める
Typical axial image of cone-beam computed tomography.
解析対象
✓ 成人6名 男性4名,女性2名 平均年齢 29 ± 7 歳 ✓ 中切歯:4(単根歯) ✓ 側切歯:4(単根歯) ✓ 犬歯 :4(単根歯) 合計 :12×6名=72本自動歯軸と歯列
自動歯軸と歯列
口腔内ワールド座標系の構築
下顎骨の左右オトガイ孔(神経,動脈,静脈が通る) 上顎切歯管(鼻口蓋神経が通る) オトガイ孔中点から2/3の 位置を原点Oとして定義 Z-axis O X-axis Mental foramenMaxillary incisors tube
自動歯軸と歯列
✓ 検者間の座標系構築精度 平均誤差:0.45 ± 0.20 mm任意の3名の検者による座標構築の再現性は良い
Z-axis O X-axis Mental foramenMaxillary incisors tube
自動歯軸と歯列
上顎歯の歯軸と歯列 (# 3)
(a) Typical reconstruction models of maxillary tooth in X-Y plane. (b) Typical reconstruction models of maxillary tooth in X-Z plane.
自動歯軸と歯列
下顎歯の歯軸と歯列 (# 3)
(c) Typical reconstruction models of mandibular tooth in X-Y plane. (d) Typical reconstruction models of mandibular tooth in X-Z plane
(c) (d) -25 -20 -15 -10 -5 0 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 Z [ mm ] X [ mm ] COG PC-A Quadratic function Cubic function Fourth-order function 43 42 41 31 32 33
自動歯軸と歯列
上顎歯の歯軸角度
0 5 10 15 20 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 Y [ m m ] X [ mm ] COG PC-A 13 12 11 21 22 23 aXY aXY > 0 aXY > 0 aXZ > 0 aXZ > 0自動歯軸と歯列
上顎歯の歯軸角度
-30 -20 -10 0 10 20 30 #1 #2 #3 #4 #5 #6 aXY [ ] Maxillary teeth 23 22 21 11 12 13 -20 -10 0 10 20 30 #1 #2 #3 #4 #5 #6 aXZ [ ] Maxillary teeth 23 22 21 11 12 13自動歯軸と歯列
下顎歯の歯軸角度
-20 -10 0 10 20 #1 #2 #3 #4 #5 #6 aXZ [ ] Mandibular teeth 33 32 31 41 42 43 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 70 #1 #2 #3 #4 #5 #6 aXY [ ] Mandibular teeth 33 32 31 41 42 43自動歯軸と歯列
-25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 Y [ mm ] X [ mm ] COG Catemary Curve Quadratic function Cubic function Fourth function -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 Y [ mm ] X [ mm ] COG Catemary Curve Quadratic function Cubic function Fourth function全歯への適用
-30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 -30-25-20-15-10 -5 0 5 10 15 20 25 30 Y [ m m ] -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 -30-25-20-15-10 -5 0 5 10 15 20 25 30 Y [ m m ]想定される用途
✓ 歯のメンテナンス,歯科的マッピング,歯科外科,歯の修復, 歯列矯正,歯周病,咬合位置決め,顎関節機能障害治療 ✓ 義歯,インプラント 等 ✓ 直接目視できない部位の形状や歯の植立方向の把握 ✓ どの方向で歯を削るか,インプラントを植立するかなどの術中 でのリアルタイム表示 「噛みあわせ」を考え,その咬合力の歯への伝達という意味において,最終 的にその歯が最も長期間問題なく使えるようにするために,もっとも応力を 効率よく分散できる歯軸(インプラントの設計も含む:実はこのことが一番市 場価値は大きい可能性あり)に設定することや,そのようになるような修復 物,補綴物の設計に変更したりなどを行うことができるようになる実用化に向けた課題
✓現段階の本手法では,歯根部と顎骨をCT画像上
で手動により分離しているために,歯1本の三
次元モデルを作成するために20分程度の労力が
必要
✓歯軸の決定は完全自動とは言えない段階
→歯根
部と顎骨を自動分離する画像解析手法を開発中
企業への期待・製品イメージ・市場規模
商品化のイメージ #1 CBCTや通常のCTのデータの解析ソフトウェアとして(単体) #2 CBCT自体に組み込む形(組み込み) #3 他の解析ソフトウエアとの連携 市場規模 歯科領域のほぼ全領域,耳鼻咽喉科領域など同市場は,歯の障害の罹患率の上昇,高齢者人口の増
加,審美歯科に対する需要の拡大およびCBCTシステム
のアプリケーション拡大によって拡大の傾向
企業への期待・製品イメージ・市場規模
✓ 歯科用CBCTは医療用X線装置の中では被曝量が少ない ✓ 世界のCBCT画像市場規模は,2016年~2021年の予測期 間中に10.1%の年間複合成長率で推移し,2016年の4億 9,440万米ドルから,2021年までに8億120万米ドルに達する と予測 ✓ 同市場の成長は歯の障害の罹患率の上昇,高齢者の増加, 審美歯科の需要拡大およびCBCTシステムのアプリケー ション拡大によって促進されている ✓ よって,本研究による三次元口腔構造・機能評価システム は,将来的に有効な臨床診断・治療支援方法として利用さ れると考えている本技術に関する知的財産権
• 発明の名称:歯科用の画像処理装置,歯科用の撮影システム, 歯科用の画像処理方法及びプログラム • 出願番号:特願2017-204342 • 出願人:新潟大学 • 発明者:坂本信,亀田剛,小林公一,坂上勇太,森清友亮• JST支援によるPCT国際特許出願:
PCT/JP2018/039182
産学連携の経歴
• 2003年~2007年 (株)レキシー社と共同研究を実施
2006年レキシー社より人口膝関節・股関節手術計画用システムを製品化,「Knee Cas」,「Hip Cas」の商品名で販売開始 これまでに,約5,000万円の売上(2018年4月現在)