熊 本 県
に
お
け る
ユ ニバ
ー
サ ル
デ ザ
イ
ン の
取
組
み
The
policy
ofUniversal
Design
in
Kumamoto
Prefecture
林
誠
一
郎Hayashi
Seiichiro
熊 本県 総合 政策局 政 策調 整課特 定政 策推 進室 Specific Policy Ornce
,
Policy Coordination Division,
Kumamoto Prefecture1 ,
熊 本 県にお け るユニ バー
サ ル デ ザ イン (UD
)導入 の
経緯
と位置付
け 現 代 社 会は、
急 速な少子高 齢化、
情 報 化、
グロー
バ ル化、
そ し て男 女 共 同 参 画 社会
の 到 来の 中で、
「物の豊か さ」か ら 「心の豊か さ」へ、
ま た、
「集 団 へ の帰 属」 か ら 「個 人の尊 重」 へ と人々 の価 値 観は多
様 化し てお り、一
人ひ と りのク オ リ ティ・
オブ・
ラ イフが尊 重さ れ る時 代で あ る。
その よ う な中
、
平 成12
年4
月、
「だ
れ に も優しい 熊 本 づく り〜
UD
の推 進」を公 約の一
つ と し て掲げ、
潮 谷 義 子 知 事が就 任した。直ちに
策
定され た 「熊本
県総 合 計画パー
トナー
シ ッ プ21
く ま も と」 で は、
基 本目標と し て 「創
造に い のち あ ふ れ、
“
生命が脈うつ”
く ま も と」が定め ら れ る と と も に、
その公 約が位 置づけられた。 「創 造にあふ れ、
“
生 命が脈 うつ”
くまもと」 と は、
県 民一
人 ひ と りの生 命、存在
が大
切に さ れ、
さ まざま な芽吹 き が はぐく ま れ、創
造的
な取り組み が 行わ れ る社 会の ことであ る。 そ れ ま で も高 齢 者 や 障 害 者に対 する様々な障 壁 を 取 り除 く といっ た視 点で 「やさ しいま ちづくり」 を 目標
に掲
げ バ リ アフリー
に取り組んでき た が、
さ ら に、
UD
に取り 組 む こと に よ り、高齢者、
障 害者
を は じ め、
「県 民 だれ もが」 とい う視 点で県 政 全 般 を進め ること と したので あ る。 こ のように、
熊 本 県では、
県 総 合 計画の基 本目標 である 「創
造にあ ふ れ、
“
生命が脈
うつ”
く ま も と」 の実 現に向
け、年齢、
性 別、障害
の有
無などに関 係 な く、一
人ひと りの存 在を大 事に し、
すべ て の人 が 生活しや すい社 会をつ くるという 「UD
」 と、
行 政 を はじめ と して、
県 民、
企 業・
団体、
大 学、
ボラ ン テ ィア やNPO
などが、
さ まざま な形で互 いの持
つ 性 質・
特 性を 生 か し、
認め合
いな が ら、協
力、連携
し てい く 「パー
トナー
シ ッ プ (PS
)」、
こ の2
つ の キー
ワー
ドを県 政 運 営の基 本と して位 置づけて い る。ま た
、
平 成16年
にお け る高齢
化 率 (総務省統
計 局 推 計人 口)は、
全国 が19 .
5
% で あ るの に 対 し、
熊本
県は23 .
2
% で あ り、
これ は熊 本 県の 高 齢 化が全 国の7
年 先に あ ること を示し ている。20
年 後に は30
% を 超 える と予測されてお り、
も うすで に、
過 疎 地 域や 中 山間地 域で は、40
%を超えて い る ところ も あ る。
この高齢
化の現
状は、
UD
を進め る背
景の1
つ と して 特に 重要と考え てい る ところ である。2 .
く ま も とUD
振 興 指 針 (1
)指針策
定の経緯
しか し
、
UD
の考
え方は、
こ れ ま での行 政に な か っ たもので あ り、
これを 普 及し県 政に根 付 かせ る に は、
県 職 員、
そして県 民に、UD
が 「すべ て の人 が 生 活 しやすい社 会を 形成 する」 ものであること を理解
し、確
信して も ら うこ と が大切であっ た。
そこで
、
まずは県職
員に対し て 理解を深め る た め の研 修、特に幹 部 職 員 を対 象と した研 修 会 を実 施し、 庁 内に部 局 横 断 的な研 究 会 を 立ち 上げ た。
ま た、
県民の意 見を聞 く場と し てUD
懇 話 会を設 置し、
そ こ で出さ れ た意 見 等を踏ま え、
平 成14
年2
月 に 「く ま も とUD
振 興 指 針」 を策 定し た。
「だれ もが 暮ら しや す く豊 か な くまも と」 の実 現 を 目指し、 県 民、
企 業・
団 体、
行 政等 がお 互いパー
トナー
シッ プを結 び、
県全 体でUD
を推 進し てい くこと が出 来 る よ う に、
その 進むべ き方向
と そ れぞれ に求
め ら れ る役割等
を明らか に し たので あ る。
(2
) 目標 と 基 本 姿 勢 振 興 指 針で は、
「『だれ も が暮ら し やすく豊かなく ま も と』 の実 現」 を めざす姿 (目標 )と し、
よ り具 体 的な姿と し て は、
「だれ も が社会
に自 由に参 加で き、 積 極 的にチャ レ ンジできる環 境の実 現」、 「使い やすいものに満 たさ れて い る生 活の実 現」、
「一
人ひ 68 SPECIAL ISSUE OF JSSD V()1.
13 N⊂),
4 2006 デ ザ イン学 研 究 特 集 号一
と りの 個 性が大切 に さ れ てい る
社
会の実
現」 を 目指
し て い る。
それ を実 現 するた めに、
「まち」、
「もの 」、
「情 報・
サー
ビス 」 という3
つ の分 野 と、
「それ らを取 り巻く意 識」 につ いてのUD
を進め ること と し てい る。
(図1
) 次に、UD
推 進の基 本 姿 勢をキー
ワー
ド的に表 現 す れば、
「対 話に よるデ
ザ イン 」、
「さ りげ
ない デザ イン」、
「追い求 めるデ ザイ ン」 となる。
「対 話 に よ る
デ
ザイ ン 」 と は、製
品等
の使いやす さ を追究
する に は、
その 関係者
が十 分なコ ミュニ ケー
ショ ンを図る (対 話をする)ことが不 可 欠であり、
利 用 者とサー
ビス提 供 者、
利 用 者 同士のコ ミュニ ケー
シ ョン によっ て形 づく られるデ ザイ ンの ことで あ る。
ま た
、
「さ りげないデ
ザイン 」 と は、
利 用 する 人 の特 権 意 識 や 特 別 扱い につな が ら ないよ う な さ りげ ない配 慮が な さ れ たデ
ザ イン の ことであ り、
「追い 求めるデ ザ イン 」 とは、 1
人で も多 くのニー
ズに応 え られ る よ う、
常に見直
し、改善
を図っ てい く姿勢
を持ち続け るデ ザインの こ と で あ る。
(図2
) だ れ も が 暮 らし やす く豊かな くまもと 図1
取 組み の基 本 方 向 図2
UD
推 進の基 本 姿 勢 (3
)「プロセスの重 視」 の原 則 と4
つ の視 点 次に、
UD
を様々な取 組み に導入 し ていく う え で、
気をつ け な け ればな ら ない こ と を原 則と視点
とい う 形で 整 理 し ている。
製 品、
環 境、
サー
ビス等の使い や すさは、 デ ザ インを産み出す 過 程、 改 善して い く 過 程、
つ ま り プロセ ス に大 き く左 右される。
その意 味で、
何よ り重 要なのは そこに 至 る ま でのプロセ ス であり、
こ の 「プロセスの 重 視」 を原則 と し、 4
つ の視 点で進め ること に し て い る。
一
般 的には 「UD
7
原 則」が有 名であるが、
熊 本 県ではこ の7
原 則との対 応 を 考 慮しなが ら、
もの (製
品)づ く り以外の分野 で も使いやすい、
よ り一
般 化さ れ た分
か りやすい もの を めざし て、
原則 と4
つ の視 点と し て ま と め ている。
「プロセス の重 視」 に おい て は、 利 用 者のニー
ズ や 意見 を徹 底して把 握 する 「徹 底したユー
ザー
(利 用者 ) 志 向」、
納 得 するデ ザイ ン と な る ま で、
ま た その 事後評価に おいて も、
作る側と使う側が繰り返 し対 話を行う 「コ ミュ ニケー
シ ョ ン の重 視」、
個々 の取 組みを単 独で捉 える の では な く、 そ れ ぞ れ がつ な がる ことで ノウハ ウ を蓄 積し、
より使いや すい も のをつ くっ てい く大きな プロセ スの一
部と し て位置 づ け る 「システ ム的 なアプロー
チ」 の観 点を大 事に し て い る。
また、
4
つ の視 点と は、
「すべ て の人に簡 単」 「す べ て の人に快 適」 「すべ て の人に安 全」 「すべ て の人 と状 況に柔 軟」 である が、
「すべ て の人に簡 単」 と は、
施 設や製 品といっ た有形の もの だ けではな く、
情報
や サー
ビス といっ た無形 の も の も含
め て、
で き るだ
けすべ ての 人に入 手しや すく、
分か りや すく、
SPECIAL ISSUE OF JSSD Vo1
.
13 No.
4 2006 デ ザイ ン学研究 特 集 号 69利用 しやすい こ と で あ り
、
「すべ て の人に快 適」 と は、
で き るだけ楽な姿
勢で、
ま た十分
な スペー
ス で といっ た観 点か らの使い勝 手の良さ に配 慮さ れ てい る こ とである。
「すべ て の 人に安全」 とは、
万一、
間違っ た使い方や操 作 を行っ たと して も事 故につ な が ら ないよ う配
慮さ れて い ることであ り、
「すべ て の人 と状況 に柔 軟」 と は、
で き るだけ一
人 ひ と りの 人に合わ せ な が ら も、
汎 用 性のあ る形での解 決 策を 考えて い くことで ある。
(図3
) 振 興 指 針では、
こ の よ うな 考 え 方の も とに、
「ま ち づ く り」、
「もの (製
品) づ く り」、
「情報 ・
サー
ビ スづ く り」、
「意識
づ く り」とい う4
つ の分野 につ い て、UD
推 進へ の施 策の方 向 性と取 組みを示 すと と もに、
県 民、
企 業・
団体、
行 政 等に求めら れる役 割 につ い て も示して いる ところである。UD
推進
の原 則と4
つ の視点
視 点1
;すべ て の 人 に簡 単視
点2
:すべ ての 人 に快
適 視 点3
;すべ て の人 に安 全視
点4
:すべ ての入と状 況に柔軟
原 則プロセス (過程) の 重
視
図3
「
プ
ロ セス の重 視」の 原 則と4
つ の視 点3 .
熊 本 県にお け るUD
の主 な 取 組み (1
) 庁 内におけ る推
進 体 制庁 内に お け る
UD
の推 進 体 制 だが、
平 成12 年度
か らUD
に取り組む た め、
専 門 部 署を設 置し て お り、
平 成14
年 度に は、UD
振 興 指 針を踏ま え、
全 庁 的な 取 組み と して具 現 化 して い く た め、
「パー
トナー
シ ップ・
ユ ニ バー
サ ルデ ザイ ン (PS ・UD
)推
進 会議
」 を 設 置 し た。
これ は 知事、
副 知事、
出納 長、
各部
局 長 等で構 成さ れてお り、
県 政の大き な2
つ の柱で あ るPS
とUD
に関 する推 進 方 針 や 具 体 的なプロ ジェ ク トを決 定 する と と も に、
評 価 な どをして い く もの で あ る。
さ ら に
、
各部
局や県の出先機
関で あ る各地域 振 興 局に 「PS ・UD
推 進 員」 を設 置し て、
実 務 的に推 進 する体 制も 取っ ている。
(2
) 各 種 ガイ ドラ イン の策 定UD
を具 体 的に推 進 するため、 振 興 指 針に基づき、各
種 ガイ ドラ イ ン を策
定し て い る。
平成
15 年 2
月 に定め た 「UD
建 築 ガイ ド ラ イ ン」 は、
公 共 施 設を は じ め、
多 数の人が利 用す る民 間の 建 物につ い て、UD
による設 計の進め方、
考え方、
参 考 となる基 準 等を示 して いる。ま た
、建築
関係
では、
住 宅にお けるUD
企画指 針 「や さ し さ の住
まいづ く り」 や 「既
存 建築物
のUD
評 価マ ニ ュ ア ル」、
「既 存 建 築 物の視 覚 情 報サイン改 善 マ ニ ュ ア ル 」 を作 成して い る。
こ のほ か、
県 民に読み やす く分か りやすい広 報を行
っ て い く た めの留
意事
項を ま と め た、
「わ か りや すい広報
の視
点」や ホー
ムペー
ジのガイ ド ラ イ ン、
また、
外 国 人 向 けの案 内表 示モデル を示した 「熊 本 県4
力 国語に よ る案 内 表示事 例 集」な どを作ってお り、
最 近は、
「農 業 農 村 整 備UD
ガイ ド」 や 「道 路に 関す るUD
指 針」 な ど も作って いる。
(3
)UD
によ る 施 設 整 備 例UD
を 県 民に具体 的に示すため、
県が率 先し て、
公 共 施 設のUD
化に取り組ん でおり、
県 営 住 宅や県 庁、
こ ど も総 合 療 育セ ンター
な ど をUD
に よ り整 備 し て い る。
ま た、
既 存の県 有 施 設につ い て も 全施 設 を対 象に評 価 を行 うための マニ ュ ア ルを作 り、
現 在 評価に取り組んでお り、
評価 結果はハー
ド面及 び ソ フト面、
中長
期及び短期
的な 対応 等に分 類・
整理 し、
対 応し てい くこ と に し ている。
さ ら に、
既 設 駅の改 築 や 新 幹 線 駅の整備に お い て も、UD
に配 慮した 施 設 整 備 を推 進して い る。1
) 熊本
県営 古 庭 坊団地 熊 本 県 営 古 庭 坊 団 地は、
平 成15
年6
月に建て替 えた 高 層マ ン シ ョンタ イプ
の県 営 住 宅だ
が、
立 て替 えの時に、
これまで1
階にしか住 め なかっ た 高 齢 者 や障害者
も、
上層階
の部
屋 を選
べ る よ う、
上層階
の部
屋 をUD
に配 慮し た仕様
に し た。
戸は 引 き戸、
部70SPECIAL ISSUE OF JSSD VoL13 No
.
4 2006 デザイン学研 究特集号屋の中はフ ラッ トな床に なっ てお り
、
台 所、
洗 面 台 は車いすで も利 用で きるよ うになっ て い る。
また、
将 来、
電動 車いすが 必要に なっ た と きのた め に、
玄 関 に電動車い す用の コ ンセン トを 設 置 し た部屋 も あ り、
身 長の低いお年 寄りや 車いすの人に も使いや す い物 干し台や トイレ、
緊 急 通 報シ ステム な ど、
安 心 して安 全に生 活が続 け られる機 能を数 多 く設 置し、
年
を取っ て も病気
に なっ て もいつ ま で も住み慣れ た場
所で暮
ら せ る よ う にするこ と を 目指
し てい る。
(写 真1 、
2
)\
’
\、
写真1
熊本
県 営 古 庭 坊団地 写 真2
玄 関 (引 き 戸 )2
) 熊本
県 庁 舎本館
熊 本 県 庁
舎
本 館は、
昭 和42
年に竣工 し た13
階 建 て の建 物 だが、
平 成11
年 度か ら14
年 度にかけて大 規 模 改 修 を行い、
移 動 空 間、
情 報 空 間 など総 合 的にUD
に配 慮し た建 物と し た。
例えば、
受 付 カウ ン ター
は高い部 分と低い部 分を設け、
車いすの方で も支 障な く利 用で き る し、高
齢者
が座っ て話を す る場合
に は椅
子を置くこと も 可能で あ る。
他に も、
手 すり が2
つ、
高さの違う ものを平 行に 設 置 した階 段、
分か りやすいサイ ン や多 目的 トイ レ、
授 乳 室 などた くさ んのUD
を、
県 庁 舎で採 用して い る。
(写 真3
、 4
) 写真
3
受
付
カ ウ ン ター
写真4
階 段3
) 子 ども総合療育
セ ン ター
子ど も総 合 療 育センター
は、
身 体 や 知 的に障 害を 持っ た子ど も た ち が通園・
入所し、
住み慣れた地 域 での生 活を めざ して治 療・
訓 練に励んで いる施 設で あ り、
ソ フ ト・
ハー
ドの両 面か らUD
に取り 組 んで いる施 設で あ る。建
設に あ たっ て は、
プロセス重視
の観 点で、
センター
職 員と県の担 当課 等 が、
どの よ うに したら、
対 象である障 害及 び障 害の疑い のある 児 童の立 場に立 ち、
子 ど もたちの視 線で職 務を行 う こと がで き る か といっ た検
討 会や、
親の会 関係、学
校 関係、
児 童 福 祉 施 設、
地域 団体等
と の意 見交換
会 等 を 合 計50
回以上実 施 すると と も に、
実 物 大 模型 (モッ ク アッ プ)をつ くっ て ワー
クシ ョ ッ プを開 催 し、
そ の際は子 ど もたちにも参 加 しても らっ た。 ま さ にプロセス重 視の代表的
な例と言え る。
(写 真5 、
6
) 写 真5
熊 本 県 子 ど も総 合 療 育セ ンター
SPECIAL ISSUE OF JSSD Vo1
.
13 No.
4 2006 デ ザイ ン学 研 究 特 集 号 71写 真
6
モ ック アッ
プ
の様 子4
) 九 州 新 幹 線 新八代 駅 平 成15
年3
月、
八代〜
鹿 児 島 間に開通 した九 州 新 幹 線 新八代駅舎の例で あ る。
(写真
7
) 少 子 高 齢 社 会の中で、
高 齢 者 や 障害 者も含め、 す べ ての人々が旅 行しや すく なるため には、
駅 自体 が やさ し くな け れ ば な らない。
国土 交通省とJR
九 州、
当時の鉄 道 建 設 公 団 (現 :鉄 道・
運 輸 機 構 )にお 願 い し て、新幹線
の駅舎
に も、
転落
防止 のた め乗 客の 乗 降 時のみ開 閉 するホー
ム ドアや、 多 目的 トイレな どのUD
を取り入れても らっ た。
特に、
新八代 駅と 新 水 俣 駅は、
既に設 計 図が引か れ ている段
階であっ た に も関 わらず、
関 係 者の 方々 に一
一
生 懸 命取 り組ん で い ただき、
UD
に配 慮し た施 設に し ていた だいた。
新 幹 線 は ま だ 八 代 か ら鹿 児 島 まで の部 分 開業のた め、
在 来 線 か らの乗 り換 えが必 要になる が、
新八代 駅 で は、
当初の計画 で は新幹
線を降
り て下のホー
ム に行き在 来 線に乗り換え る とい う案
だっ た もの を変
更し て、
対 面 乗り換え に し ていた だき、
3
分 間で乗 り換 え られるということで高齢 者や障害 者 だけでな く、
ビ ジネスマ ン にもたいへ ん好 評で ある。
ま た、
乗り換え時に最 短の移 動で済
む よ う な座席
指 定の配 慮や乗 務員 ・
駅職
員に よ る障害者
等へ の乗り換
え サ ポー
トな ど ソフ ト面で の配 慮も な されて い る。
(写 真8
) こ の よ うな 取 組み が評 価 され、
鉄 道・
運 輸 機 構とJR
九 州 が、
平成
16
年 度の 「バ リ アフリー
化 推 進 功 労者表
彰 (内
閣官
房 長官
表 彰)」 を受 賞さ れ た。
さ ら に、
新 たに整 備さ れ る熊 本 駅 につ い て も、
UD
を取り入れた駅 舎と し ていただく た め、
駅周 辺 を含め たUD
化を行う た めの 専 門 委員
会を設 置し、
検
討を行
っ て い る ところ で あ り、
新玉名 駅につ いて も、UD 導
入に向 けた検 討を行っ て い る。
写 真7
九 州 新 幹 線 新八代 駅 写真
8
対 面
乗
リ換
え の様
子 (4
)UD
に よ るま ち づ く り例 「光の森」 という 団 地をUD
の モ デル地区 と し て 位 置づけ、
まち 全 体をUD
の 視 点で 整 備を進めて い る。
道 路や住
宅、
郵便
局、
ショ ッ ピ ングセ ン ター、
駅施
設な ど、
民 間施
設も含
め ま ち 全体をUD
に よる 整 備で進めてお り、
住 民に も大 変 好 評である。
団地の造 成にあたって は、
道 路と敷 地の段 差を で き るだけなくすと共に、
道 路の 勾 配を で き る限
り緩 やか に し て、
車 椅 子での通 行 や 高 齢 者が移 動しや す い よ う に配 慮して い る。
団 地 中 央 を 走る シ ンボ ルロー
ドは、
両 側に幅 員7.
5m
の歩 道 部分
を 設 け、
歩 道と自転車
道に 区分し ている。
歩 道は、
歩き やすく安
全な透水性の ゴム チ ップ舗装と し、
自転 車 道は、
振 動が少な く滑り に く い透 水 性のある舗 装と して お り、
歩 道に は ベ ンチの 設 置 を行 うと共に、
四季が感 じられる植 栽や外 灯の 設 置など、
誰も が安 全で快
適な道 路 空 間と し ている。
(写真9
) ま た、
団地 内に は、
県 住 宅 供 給 公 社 がUD
モデル 住宅を2
棟 展示 してお り、
県 産 材を使い、
中は フラ ッ トとなっ て いる。
(写真10
)居 室の出入口は 引 き戸と し
、
間口幅
も広め に し て お り、玄
関に は腰掛
け や手す り を付 けて、
車いすで も、
あるいは お年 寄りで も楽に利 用できるようにな って い る。
ま た、
台 所は、
車いすで も座っ て作 業が 72SPECIAL ISSUE OF JSSD V〔)1.
13 NQ,
4 2006 デザ イン学研 究特 集 号一
できるよ うに配 慮されて い る。 ほかに も滑り に くい 素 材で仕上げた スロ
ー
プや、
低め に設 定 した大 型ス イ ッチ、
高め に配置 し たコ ンセ ン トな どいろいろなUD
設 備を備え ている。
(写真
11
、
12
) 写真
9
シ ンボル ロ
ー
ド 写 真10
UD
住 宅 写真 11
玄関 の様
子 写真12
台 所の様 子 (5
)UD
に よ る施
設 整備
(ハー
ド) と事 業
展 開 (ソ フ ト) を 行って いる例 今 後の各 地 域にお けるUD
を 考える うえで の参 考 と し て、
ハー
ド と と も に、
ソフ トもUD
で行っ て い る事
例を紹 介 する。
熊 本 市に あ る県 営 健 軍 団地 を
UD
に よって建
て替
え たが、
その一
階 を福 祉 サー
ビス拠 点 施 設 「健 軍く らし ささえ 愛工房」 と して 整 備した。 その施 設をNPO
法
人 に貸し付
け、
民間の持つ ノ ウハ ウや 自 由 な発 想、創
意工夫を 活 か し な が ら、
地 域と一
体とな っ た 当事 者 中心の総 合 的な福 祉サー
ビスを展 開し て いる。 そ こ では、
地 域 住 民や商 店 街、
校 区 社 協 等とのパー
トナー
シ ッ プに よ り、
誰も が地 域の 人 とのふれ あ い の中
で、
すごや か に楽し く生 活がで き、
いつ で も 気 軽に利 用で き る地 域の拠 点 づく り で あ る 「地域の 縁がわづく り」、
住み慣 れ た 地 域で 自分ら し く自立 した 日常 生 活が送 れるよ う、
地 域の方々との結びつ き を大切 にする支
え合いに よ る取 組み づ く りである 「地域の結
い づ く り」や地 域が元々持っ ている力を 発 揮で き る よ う、
地 域の多 様な資 源や豊 富な 人材
を 活 用 した事 業 展 開で ある 「地 域のち から おこし」等 の事 業 展 開を図ってお り、
すべ て の人のためのサー
ビス を実施
し ている。
今
後も 地域住
民 や商 店 街、
校区社 協 等との 意 見 交 換 を重ね ながら、
地 域 福 祉サー
ビス の モデ
ル と し て、
培っ た成 果や ノウハ ウは県 内 を はじ め、 全 国に普 及 さ せて いき たい と考 えて い る。
(6
) 県 民や企業等
へ のUD
支援
1
)UD
住 まいづ く り支援 「光の森」 団 地 内にUD
住 宅の指 針に沿っ て住 宅 を建て た場 合には、
そのUD
の設 計 内 容につ い て、
公 開を条
件と し て、
県が最 初の1
年 間 分の利 子 相 当 額を補助
して い る。
また
、
平 成17
年10
月か ら、
全国初
の取 組み と し て、
県 と住 宅 金 融 公 庫と地 元 民 間金 融 機 関 が連 携し て、
「熊 本 県UD
住 宅 推 進 制 度」 を 設 けて いる。 これ は、動
き やすい間 取りや手 すりの設 置 等、
熊 本 県のUD
基準
を満
た し た住 宅の新 築や購入者を対 象に、
SPECIAL ISSUE OF JSSD V()L13 No,
4 2006 デ ザイ ン 学 研究 特 集 号 73一
金利
軽減
な どの 優 遇 措 置を実 施 する もので あ る。2
)UD
製 品 開 発 や 販 路 拡 大へ の支 援 県工業 技 術セ ンター
がUD
製 品の 開 発 技 術に関 す る研 究を企 業 等と一
緒に行っ た り、
民 間が独 自にUD 製
品を開 発す る場 合に経 費の一
部 を 助 成 する事業
や 展 示会
へ の出展 経 費の助 成 を行っ て い る。
また、 本 年 度 は新 たに、
「く ま も とUD
商 品 化 支 援 委 員 会」を 設 置した。
これは、
産 学 官のUD
の 専 門 家で構 成 する委員
会が、
県内
企業
か らUD
を目指 す製
品を募 集し、UD
の 観 点か ら、
よ り良い商 品 化に向
け た具 体 的な改 善 事 項な どの ア ドバイス を 行い、
熊 本 発の優 れ たUD
商 品 と して発 信で き る よ う支援
を行 う もの である。
UD
と地 場 産 業が結
びつ いた例と し て、
UD
陶 器 が あ る。
熊 本 県の伝 統 的な工芸 品と して、 小 代 焼と い うのが あ る が、
平 成14
年 度 から窯 元 がUD
を学 習 し、 陶 器のUD
化に取り組んで い る。
利用者との対 話による商 品 改 良により、
高い評 価を得る もの も で て き て お り、
販売につ い て は、
NPO
と連 携 し、
販 路 拡 大に取り組んでい る。3
) 観 光にお けるUD
観 光につ い てもUD
に力を 入 れ よ う とい うことで、
高齢者
や障害者
な ど をモ ニ ター
と し て、
熊 本に お招 き し、
県 内の観 光 地 を回って いた だ き、
ご意 見をい ただく 「観 光くまも とUD
推 進 事 業」 を実 施 して い る。 これは、
高齢 者や障害
者を含
め た すべ ての人 が 楽 し く、
しか も自 由に旅 行で き る よ う に、UD
の視点
で の新
し い旅 行 商 品をつ く ること を目指 すもの で あ り、
既に旅 行 会 社 が 商 品 化 した もの もある。
4
)UD
ア ドバ イザー
派 遣企 業 あるいは団 体に お け る
UD
の推
進を図るた め、
ア ドバ イザー
派 遣 事 業を実 施して い る。
これ は、
UD
の視 点 からのア ドバイス を希 望 する企 業 あるい は団 体に対し、
県の予 算でUD
の専 門 家 等を派 遣し、
各 種ア ドバ イ ス を行う もので あ る。本
年 度は11
件 の企 業、
団体に派 遣、
ま た は派遣
を予定
してお り、
温泉街
の活性
化 や 木 材 加工分 野に おけるUD
の取 組 みなど に専 門的 なア ドバイス をいた だい て いる とこ ろである。
(7
)UD
の普
及啓発、
人材養
成 これ ま で各 種 講 演 会 や 広 報 誌 等を通じ、UD
の県 民へ の普 及 啓 発を実 施 してきた。 平 成13
年2
月に実 施 した県民 ア ン ケー
ト調査で は、
UD
の 言 葉を知っ てい る 人の率 (UD
認 知率
) は、
52
.
1
% で あっ た が、
平成17
年2
月に実
施し た 調査 で は、
81
.
5
% と な り、
全 体の8
割 を超え、
県 民 にUD
の言 葉は浸 透 しつ つ ある。 し か し、
UD
の考 え 方や意 味を知っ て い る人の 率 (UD
理解 率 )は38
.
1
% で あ り、未
だ十
分と は言え な い状 況で あ る。
その た め
、今後、
県 民にUD
の考え方 や 意 味を伝 え てい くこと が課 題で あり、
県 民にUD
の考 え 方 や 意 味を伝 える取 組み の一
環と し て、
今年 2
月 に はUD
に関 する講 演 会や製品の 展示等を行う 「く ま も とUD
フ ォー
ラ ム2006
」 を開催し た。
その
中
で、
子ど も達
に対するUD
の普 及 啓 発を図 るため、
子ど も達にUD
に関 する壁 新 聞や アイ デア 画 な どの作品 を提 出し て も らい、
優秀
な作
品に は表
彰を行う 「こ どもUD
大 賞」 を実 施 し た とこ ろ、多
数の応募
が あっ た ところ で あ る。
ま た
、UD
を学 びたい学 校や 団体 等に対して、
職 員 が 出 か け、UD
の講 義を行 う県 庁 出 前 講 座 等 も実 施し ている。
人材 育 成に関し
、
地 域や企業、
団体 内
で のUD 推
進 リー
ダー
を養 成 する た め、
市 町 村 職 員、
企 業、
NPO
等の方々を対 象にUD
専 門 講 座を 開 設して い る。
参 加 者にはUD
に関 し、
ワー
ク シ ョ ップ形式を 含め た数回の講 座を受 講し ていただいて お り、
これ ま で約90
人 が 受講し てい る。
4 .
民 間におけるUD
の主 な 取 組み 熊 本 市にある健 軍 商 店 街は、
ユ ニ バー
サ ルデ ザイ ン ショ ップ、
あ るいはユ ニ ショ ッ プのま ち と呼
ばれ て お り、
これ ま で誰
も が安
心 して買い物が楽
し め る よ う電 動スクー
ター
を無 料で貸し出したり、
地 元の タ クシー会
社と連 携して、
客の購入品を安い料 金で 自宅 まで配 達 するな どの取 組み を行っ てき た が、
さ 74 SPECIAL ISSUE OF JSSD V〔)1.
13 NQ.
4 2006 デザイ ン学研 究 特集 号一
ら に