Japanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service
Japanese Physioal Therapy Assooiation理学 療 法 学 第40 巻 第2号 124
〜
125頁 (2013年 )平 成
23
年 度研 究 助 成 報 告 書
変
形
性膝
関
節症
に お
け
る
メ
カ
ニカ
ル ス
ト
レ ス
と
高
分 子
ピ ア ル
ロン
酸
の
治療
効 果
に
関 す
る
検討
酒 井孝
文D2),
熊岸
加di
2) 3),
渡
辺徹
大4].
河 村 顕 治2}5),
坂田俊 輔4} D 朝日 リハ ビリ テー
ショ ン専 門 学校 2) 吉 備 国際大学 保健 福祉 研 究 所 3) 岡山 大学 医 歯 薬 学 総 合研 究 科 4)坂 田 整形 外 科 医 院 5)吉 備 国際 大 学 大 学 院 要 旨 :整 形 外科領 域 に おい て,
変 形 性 膝 関 節症 〔以下.
膝OA
) に対す る有 効な リハ ビ リテー
ショ ンは確立されて いない。
我々 は.
過 去に関節 軟 骨 再生に効 果 的と報 告のある メ カニ カ ル ス ト レスを 臨床 現 場で適用 するこ とで.
膝OA の運 動 機 能に ど のよう な影 響 を 及ぼす かにつ いて検 討 を行った。
また,
同 時に 軟 骨 保 護ビ ア ルロ ン酸 製 剤 (以 下,
HA
)の併 用 効 果につ い て も検 討 す る。
検 討 項 目は 実 施前 後の運 動 機 能 を関節
可動域 〔以 下,
ROM
),
下 肢筋 力,
Time
Up
&Go
Test
(以 下.
TUG ).
痛みの評価 (Visua
】analogue scale ;VAS,
簡 易型 McGitl疼 痛 質 問表:SF
−
MPQ
)に よ る 比較を行っ た。
その結果.
メカニ カ ル ス トレ スを与え ること で.
ROM
の改 善 が 認 め られ た。
ま た.
メ カニ カ ル ス トレ ス とヒアルロ ン酸 製 剤の投 与に よりTUG の 改 善が 認 め ら れ た。
キー
ワー
ド:Wt
OA
.
メ カニ カル ストレ ス,
運 動 機 能 は じ め に 膝OA
に対す る治 療 法と して は.
観血的療 法である 人.
【二関 節 置 換 術 が あ る。
これ は疼 痛の軽 減だけで な く日常 生 活 活 動 〔ADL
),
生 活の質 (以 下,
QOL
)の両 面におい ても著明 な改 善が 期待で き る治 療 法である.
しかし,
保 存 療 法におい て は,
多 くの改 善 を期 待 する ことは 不 可 能であ り,
変 形 性関節 症の進 行 を遅 延 させるこ とす ら困 難である。
そこ で,
関節 軟 骨の冉 生 に おい て も,
痛みの軽 減におい ても効 果 的であると報 告のあ る メカニ カ ル ス トレ スP に着目 し た。
先行 研 究2〕で は,
50mm
の振幅で 立位 前 後 振 幅 運 動 を1〜
2rps で15
分 間 与 え ること で疼 痛の減 少が確 認 されて い る。
ま た.
膝QA の治 療 薬と して は.
幅 広 く用い ら れ てい るHA
がある。
これまで の報 告 か ら,
HA
は高 分 子の もの ほ ど抗 炎症 作 用に効 果 的であると考
えら れ てい る。
そ こ で.
分 子 量 を270
万Da
とい う高分子HA
(
中 外 製 薬,
ス ベニー
ル) が 開 発 さ れ,
同 薬 剤の関節 内直 接 投与
に より,
関 節 軟 骨の保 護,
抗 炎 症 作用 とい っ た,
関節 機 能 改 善に一
定
の効 果を発 揮して い る。
し か し,
リハ ビリ テー
ショ ン分 野 に おい ては,
薬 剤 投 与を行ったう えで の 有 効 な リハ ビ リテー
ショ ン効 果に関 する報 告はな く.
患 者のQOL
の向.
ヒに 繋 が るエ ビ デン スは ない のが現 状である.
図1 シェ イキン グボー
ドGB
−
700
〔オー
ジー
技研)今回
,
荷 重立位 周期 的水 平 前後遥動 刺激を メ カニ カル ス トレ ス とし て与
えること で,
運動機
能に どのような 影響を及ぼすか につ い て検
討 を行
った。
同 時に,
高分 子HA
投 与の影 響につ い ても検
討を行
っ た。
方
法 対 象は変 形 性 膝 関 節 症と診 断さ れ,
当 院に て整 形 外 科医 院へ の外 来 通 院に て治 療 を受け た22
名で あ る 俵D
。
対象者の希 望に よ る治療 法 を,
以 ドの 4群より選 択し実 施し た.
A 群 ;通 常の理 学 療 法 〔温熱 療 法
,
セッ テ ィ ング.
関節
可動 域 訓 練)。
B
群 ;通 常の理 学 療 法,
高分子HA
投与
。
C
群:通 常の理 学 療 法,
メカニ カル ス ト レス。
D 群 ;通常の理学 療 法、
高 分 子HA
投 与,
メ カニ カル ス トレ ス。
整 形 外 科 医 に よ る 高 分 子 HA の投 与は,
1回 / 週と し,
計5 回 を 患 側 膝 関 節へ の直 接 注 人 を 実施し た。
初 回と最 終 時の注 入 直 前 に.
被 検 者の滑 液の採取を 行っ た。
メカニ カルス ト レス は シェ イ キング ボー
ド (オー
ジー
技 研,
GB
−
700
)を 用い,
50
mm の振 幅で 1〜
2rps
を15分 間に わたり
,
荷
重立位 周 期 的 水 平 前 後 遥 動 刺 激であ る 立 位前 後振 幅 運 動 を3
回/週 と し,
4
週 問実 施 した (図D 。
検 討 項 目は実 施 前 後の運 動 機 能 をROM
,
ア イソ フ ォー
ス (オー
ジー
技 研,
GT−
330)に よ る閉 鎖運動での ド 肢 筋 力,
TUG
,
痛みの評 価 (VAS,
SF
−
MPQ ) とし た。
ROM
と 下 肢筋 力 は 患 側膝 関 節を計 測し、
下 肢 筋 力は体 重で 除し た値 を用い た。
各項 目 を開 始 時と終 了 時の変 化に つ い て比 較 検 討 を 行っ た。
統 計 学 的 分 析 と して,
対応のある t検 定を行っ た。
有 意 水 準は5
% 未満とした。
説 明 と同 意本 研 究は
,
吉 備 国 際 大学
「人を対象
とする研 究 」 倫 理 規 定.
『ヘ ル シンキ 宵 言』あ るい は 『臨床 研 究に関 する倫理指 針 』に し た がう。
吉 備 国 際 大 学 倫 理審査委 員 会に申 請し,
審査 を経て 承認 (吉 備国 際 大 学 倫 理 審 査委 員会受 理番 号 :ll
−
05)を得 た。
また,
岡 山 大 学 倫 理 審 査 委 員 会 に申請し.
審査 を経て承 認 (岡 山大学
倫理審
査委
員会 受
付番
号;1173
) を得 た。
N工 工一
Eleotronio LibraryJapanese Physical Therapy Association
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Japanese Physioal Therapy Assooiation膝
OA
に おける メ カニ カル ス トレ ス の治 療 効 果に関 する検 討125
表
1
対 象
者
A
群B
群C
群 D 群齢
重年
体 人 数 (性 別 )828
±O
.
83
58.
0
±14
,
3
4
(女性 :4
)
75
,
0
±4
.
1
57
.
2
±6
.
4
7
(
女性
:5
男 性 :
2
)72
,
0
±4
,
7
61
.
5
± ll、
1 5 (女 性 :5)71
,
7
±4
.
8
60
.
7
±ll
.
8
6
(女 性 :4
男性 :2
)A
群 ;通常の理学 療 法 B 群 :通常の理学療 法,
HA
の投 与C
群 :通常の理 学療 法,
シェ
イ キング ボー
ドD
群 :通 常の理 学 療 法HA の投与
シェ イ キン グボー
ド表
2
メ カニ カ ル ス トレ ス と
高 分 子
HA
の影
響
A
群B
群C
群D
群ROM
下肢 筋 力TUG
SF
−
MPQ
VAS
開 始 時 終 了 時 開始 時 終 了 時 開 始 時 終 了 時 開始時
終 了 時 開 始 時終
了時 123.
8
±12
.
4
123.
8 ± 12,
46
.
3
±2
.
48
.
0
±1
.
114
,
0
±8.
6
11
.
6
±5
.
0
15
.
5
±11
.
5
2
.
3
±0
.
577
.
5 ±2
.
5
55
.
0
± 7.
1132
.
0
±IL2
132
,
0
±11
.
2
4.
2 ± 2,
35
.
2
± 1,
49.
9
±1
,
58
.
8
±1
ユ12
.
3
±9.
47
,
0
±8
.
1
62
.
5
±17
.
9
35.
0
±28
.
7
130
.
0
±5
,
6
138
ユ ±7
、
0
8
,
0
±2
.
26
.
8 ± 2.
98.
5
± 1.
57
.
9
±1
.
66
.
7
±4
,
75
.
3
± 4.
847
ユ ± 20,
3
33
,
6
±21
.
3
]
P 〈 ・…135
.
0
±5
.
8
1392
±4
,
5
5
.
2
± 1.
35
,
2
±1
.
1ll
.
7
±2
.
68
.
7 ± Ll8.
7
±4
.
74
.
3
±3
,
0
55.
8
±14
.
6
33.
3± 26.
4
]
P
〈・.
・5
A 群 :通常
の理学療法
B 群:通 常の理学 療 法,
HA
の投 与C
群:通 常の理学 療 法,
シェ イ キング ボー
ドD
群 :通 常の理 学 療 法HA
の投与
,
シェ イ キングボー
ド対象者
に対し,
口頭お よ び書 類で十分に説明 し,
自 由 意 志に よ る参 加の同意 を 同意 書 に 署 名を得て実施
し た。
結 果開始 時 と終 了 時の比 較 は
,
A
群,
B
群で は改 善
は認
め ら れな かっ た。
C
群 に おい て はROM
に有 意 な 改 善を認め た。
D
群に おいて はTUG
に有 意な改 善 を認めた (表2)。
B 群 とD
群 に お け る 滑液は,
採 取さ れ た量と数が と も に 少 な く,
解析は 実 施 で き な かっ た。
考 察膝
OA
に対 する保存 療 法
は,
大 腿四頭 筋の セ ッテ ィ ン グ な どの膝 関 節 周 囲 筋の筋力
増強訓 練やADL
指 導 を 中心と し た 理 学 療 法 が 実 施さ れてお り,
その効 果につ い ての報 告 が 散 見 され る。
しか し,
こ の よう
な理 学 療 法の提 供では,
膝OA
の根 本 的 な原 因である関 節 軟 骨の減少 につ い て は,
な んの効 果 も確 認で きてお らず,
観血的 療 法を 実 施 さ れ る ま での期 間の延 伸 を 図る のみ である。
通常の理 学 療 法に加えシェ イ キング ボー
ド に よ るメ カニ カ ル ス ト レスを 与 え た 結 果,
ROM
の改 善が認め ら れ た。
さ らに,
HA
の併 用でTUG
の向上が 認め ら れ た。
従 来
,
整 形 外 科 領 域 に おいて メ カニ カ ル ス ト レスは否定 的に 捉え ら れ る 傾向にあ り,
運 動 療 法に おいて も排 除さ れ てき た。
しかし,
メカニ カル ス ト レス とHA
に より膝OA
の軟 骨 代 謝を 促 進さ れ,
膝 関節機 能が改 善した と考 え られ た。
本研 究で は
,
消炎・
潤 滑作用 が期 待 さ れる HA や シェ イ キン グボー
ドによ るメカニ カル ス トレ ス の効 果 を,
膝 関節の滑 液 内 に含 まれ る関 節 軟 骨の断 片と炎
症性
サ イ トカイン による確 認を 予 定 していた が 課 題の残る結 果となっ た。
しか し,
本研 究 は 継 続 中 で あ り,
採 取さ れ た滑 液のサンプルが揃
い 次 第,
解 析 を 行 う 予定で あ る。
ま た,
滑 液の採 取が困 難な場 合に備 え採 尿し て お り,
尿 中 に含 まれる関 節 軟 骨の代 謝産物で あ るア ルブ ミン等 の生 化 学的解 析 も進 行 中であ り,
今後 報 告を 行 う 予定で あ る。
文 献1
)
Harada
Y,
Tomita N,
et al.
:Use
ofControlled
Mechanical
Stimulation
in Vivo to InduceCartilage
Layer
Formation
on the
Surface
ofOsteotomized
Bone
.
Tissue
Engineering
,