• 検索結果がありません。

がん患者が抱える心配の内容による不安・抑うつの差異についての検討

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "がん患者が抱える心配の内容による不安・抑うつの差異についての検討"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-52 400

-がん患者が抱える心配の内容による不安・抑うつの差異についての検討

○竹下 若那1)、市倉 加奈子2,3)、小野 はるか1)、小川 祐子1,4)、畑 琴音1)、松島 英介3)、鈴木 伸一4) 1 )早稲田大学大学院人間科学研究科、 2 )北里大学医療衛生学部、 3 )東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科心療・ 緩和医療学分野、 4 )早稲田大学人間科学学術院 【目的】 がん患者の心理的問題として、不安や抑うつ、適応 障害が多くみられる(塚本・舩木,2012)。またがん 患者においては、検査や診断、治療などの状況に伴っ て、抑うつ症状が生じることが知られている(内富, 2001)。これらのことから、がん罹患後の過程で、患 者に対し家族や医療者からの心理的な支えが必要であ るといえる(大谷・内富,2010)。これまでの研究か ら、先が見えない不確かさや恐怖、心理的問題を抱え るがん患者は、その問題の解決を求めていることが報 告されている(Merckaert et al., 2010)。また、が ん罹患後の過程で日常的に相談できる人が必要で あったという患者が多く存在することが明らかに なっている(松下他,2010)。しかし、この研究から は、心理的問題を感じていても、実際には抱えている 問題についての相談に及ばない患者や、相談したこと に満足していない患者の存在も明らかになっている。 さらに、不安や抑うつを示したがん患者のうち、心理 的支援を受けた者は半数に満たなかったという報告も ある(Mosher et al., 2014)。それぞれの患者のニー ズに応じた支援が提供されるためには、患者が抱える 悩みや心配の具体的な内容を評価する必要があるとい われている(Hirai et al., 2008)。そこで本研究で は、がん患者において、どのような心配を抱える患者 が多いのか、またそれぞれの心配事を抱える患者の精 神状態はどのようなものであるかについて、検討を行 うことを目的とした。 【方法】 調査対象者 都内の大学病院に通院または入院中の 成人がん患者から回答を得た。調査手続き 調査に関 する説明の後、書面にて同意が得られた者のみに対し て質問紙への回答を求めた。調査項目 ( 1 )フェイ スデータ 診療録および質問紙より、性別、年齢につ い て 情 報 を 得 た。( 2 ) 不 安・ 抑 う つ(Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS)身体疾患患者 の不安・抑うつを測定する尺度の日本語版(八田他, 1998)を用い、過去 1 週間の精神状態(不安・抑うつ) について尋ねた。14項目で構成されており、 4 件法で 回答を求めた。( 3 )がん患者の心配評価尺度(Brief Cancer-related Worry Inventory:BCWI)がんに関連 する心配を評価する尺度(Hirai et al., 2008)を用 い、心配事の有無について尋ねた。 3 つの下位尺度か ら構成され、「将来の見通し」が 6 項目、「身体・症状 的問題」が 4 項目、「社会・対人関係的問題」が 5 項 目の計15項目である。原版では、各項目を 0 〜100(全 く心配がない〜非常に心配である)の10段階で評価す るが、本研究では、原版の項目を用いて、「以下の項 目で示すような事柄について、今現在悩みや心配があ りますか?」と尋ね、「はい」または「いいえ」の 2 件法で回答を求めた。倫理的配慮 本研究は、早稲田 大学および調査実施施設の倫理審査委員会の承認を得 ている。 【結果】 調査査対象者は100名(男性51名、女性49名、平均 年齢66.60±11.38歳)であった。がん患者のもつ心配 事について、「がんという病気自体」(72%)が最も多 く、続いて「今の病気が悪化するかもしれないこと」 (67%)、「治療の効果」(56%)であった。心配事の内容 による不安・抑うつの差異 それぞれの心配事に関し て、どのような心配事がある患者が抑うつ・不安が高 いのかを検討するために、心配事の有無を独立変数, HADSを従属変数としたt 検定を行ったところ,「がん という病気自体」(t(98) =2.81, p <.05)、「家族との 関係」(t(97) =2.23, p <.05)、「自分のこころの状態」 (t(97) =4.24, p <.05)、「 家 族 の 将 来 」(t(98) = 3.50, p <.05)、「病気にうまく対処できるかどうかと いうこと」(t(98) =2.27, p <.05)、「自らの生と死」 (t(97) =3.43, p <.05)、「 容 姿 の 変 化 」(t(97) = 2.68, p <.05)、「今の病気が悪化するかもしれないこ と」(t(97) =2.52, p <.05)、「家事や自分の仕事」(t (98) =3.94, p <.05)の 9 項目について心配事がある 患者は、ない患者よりも不安の得点が有意に高かっ た。また、「家族の将来」(t(98) =2.63, p <.05)、「自 らの生と死」(t(97) =3.95, p <.05)、「経済的な問題」 (t(98) =2.98, p <.05)、「家事や自分の仕事」(t(98) =2.98, p <.05)の 4 項目の心配事がある患者におい て、ない患者よりも抑うつの得点が有意に高かった。 以上の結果をTable1に示した。 【考察】 本研究の目的は、がん患者においてどのような心配 事を抱える者が多いのか、それぞれの心配事を抱える 者の精神状態はどのようなものであるかについての検 討を行うことであった。本研究の結果より、「がんと いう病気自体」について 7 割以上、「今の病気が悪化

(2)

日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-52 401 -するかもしれないこと」について 6 割以上の患者が、 心配事があると回答したことから、病気そのものにつ いての心配事を抱える患者が多いことが示された。ま た、それぞれの心配事があると回答した患者のうち、 不安・抑うつが共に高かった心配事が、「家族の将 来」、「自らの生と死」、「家事や自分の仕事」であった。 「自らの生と死」についての心配事に関しては、例え ば死に向かいつつある終末期がん患者に対して、患者 が最後まで希望を持って生きることができるよう支援 していくことが望ましいという報告がある(濱田・佐 藤,2002)。具体的な心理的支援として、ディグニ ティ・セラピーや意味中心のグループ精神療法におい てその効果が示されている(Fitchet, et al., 2015; Breitbart, et al., 2015)。さらに、「家事や自分の 仕事」に関してがん患者は、治療状況や副作用により 仕事や家事に支障きたすこともあり、その心理的問題 にはピアサポート等、周囲の者からのサポートが必要 であることが示唆されている(元井,掛橋,2018)。 以上のように、がんに関連する心配事が、患者の不安 や抑うつを生じさせる、または助長させる可能性があ り、それに対する支援が必要であることが示唆され た。それぞれ有効な支援方法を選択することで、心理 的問題の早期発見や改善に有効であると考えられる。 なお、本研究は経過報告であるため、今後も対象者が 増加する可能性がある。 【主要引用文献】

Hirai, K., Shiozaki, M., Motooka, H., Arai, H., Koyama, A., Inui, H., & Uchitomi, Y. (2008). Discrimination between worry and anxiety among cancer patients: development of a Brief Cancer-Related Worry Inventory. Psycho-Oncology, 17, 1172-1179.松 下 年 子・ 松 島 英 介・ 野 口 海・ 小 林 未 果・松田彩子(2010). がん患者の心の支えと相談行 為の実際 ―がん患者およびサバイバーを対象とした インターネット調査より― 総合病院精神医学,22, 35-43.

参照

関連したドキュメント

いかなる使用の文脈においても「知る」が同じ意味論的値を持つことを認め、(2)によって

問についてだが︑この間いに直接に答える前に確認しなけれ

混合液について同様の凝固試験を行った.もし患者血

バックスイングの小さい ことはミートの不安がある からで初心者の時には小さ い。その構えもスマッシュ

児童について一緒に考えることが解決への糸口 になるのではないか。④保護者への対応も難し

( 同様に、行為者には、一つの生命侵害の認識しか認められないため、一つの故意犯しか認められないことになると思われる。

層の積年の思いがここに表出しているようにも思われる︒日本の東アジア大国コンサート構想は︑

①配慮義務の内容として︑どの程度の措置をとる必要があるかについては︑粘り強い議論が行なわれた︒メンガー