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仕事における心理的柔軟性とメンタルヘルスおよびパフォーマンスとの関連

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-84 286

-仕事における心理的柔軟性とメンタルヘルスおよびパフォーマンスとの関連

○戸澤 杏奈1)、土屋 政雄1)、松永 美希2) 1 )株式会社 アドバンテッジ リスク マネジメント、 2 )立教大学現代心理学部 【目的】 ア ク セ プ タ ン ス & コ ミ ッ ト メ ン ト・ セ ラ ピ ー (Acceptance & Commitment Therapy ; ACT) は、行動 分析学に基づくアプローチであり、 価値づけられたマ インドフルな行動の活性化を目的とした認知行動療法 の一つである。近年では、産業領域でのACTプログラ ムの適用に対する様々な研究と実践が行われており、 心理的柔軟性を高める介入は、メンタルヘルスと職場 に特有な指標である生産性などを促進することが示さ れ て い る (Bond et al., 2016 ; Bond et al., 2013)。

本邦では、職場でのACTの研究と実践にあたり、仕 事における心理的柔軟性を測定するThe work-related acceptance and action questionnaire (WAAQ : Bond, Flaxman, & Lloyd, 2013) の日本語版の作成 と、その信頼性と妥当性の検討が行われてきた (戸澤 ら, 2015)。また、日本語版WAAQで測定される仕事に おける心理的柔軟性が心理的ストレス反応およびパ フォーマンスに影響を与えることなども明らかにされ て お り、 職 場 に お け るACTが メ ン タ ル ヘ ル ス や パ フォーマンスの向上に有用なアプローチである可能性 が示唆されている (戸澤ら, 2016)。しかしながら、 これまでの研究では、日本語版WAAQの再検査信頼性が 検討されていなかったことやサンプルバイアスなどが 課 題 と し て 指 摘 さ れ て い る。 ま た、Bond et al. (2013) に示されているように、包括的な心理的非柔 軟性を測定する尺度のAAQ-II と比較して、日本語版 WAAQがより職場に特有な指標の測定に有用であるかは 検討されていない。 したがって、本研究では、以下の 3 点の検討を目的 とする。第 1 に、日本語版WAAQのさらなる信頼性を検 討するため、再検査信頼性を算出する。第 2 に、基礎 データを幅広く収集し、属性別の傾向を明らかにす る。なお、得られる結果は土屋ら (2014) がAAQ-II を用いて示した勤労者の心理的非柔軟性の傾向が再現 されると予想される。第 3 に、日本語版WAAQと日本語 版AAQ-II を用いて、メンタルヘルスおよびパフォー マンスとの関連を明らかにする。WAAQがより職場の柔 軟 性 を 測 定 す る 尺 度 で あ る な ら ば、Bond et al. (2013) の結果と同様に、WAAQとメンタルヘルス指標 には小〜中程度の負の相関が見られ、AAQ-II のそれ よりも弱く、WAAQと仕事のパフォーマンスには小〜中 程度の正の相関が見られ、AAQ-II のそれよりも強く なることが予想される。 【方法】 調査協力者 2018年 2 月、インターネット調査会社を 通して勤労者2,000名を目標に回答を求めた。また、 調査協力者2,000名のうち300名を目標に、 2 週間後に 再度WAAQへの回答を求めた。 調査項目 ( a ) フェイスシート : 年齢、性別、業種、 職種、時間外労働時間、睡眠時間を尋ねた。( b ) 日 本 語 版 W o r k - r e l a t e d A c c e p t a n c e a n d A c t i o n Questionnaire (戸澤ら, 2015) : 仕事における心理 的柔軟性を測定する 7 項目の尺度であり、得点が高い ほ ど 心 理 的 柔 軟 性 が 高 い 傾 向 に あ る こ と を 示 す。 ( c ) 日 本 語 版 A c c e p t a n c e a n d A c t i o n Questionnaire-II ( 7 項目版) (嶋ら, 2013) : 心理 的非柔軟性を測定する 7 項目の尺度であり、得点が高 いほど心理的柔軟性が低い傾向にあることを示す。 ( d ) 職業性ストレス簡易調査票 (下光ら, 1998):仕 事のストレス要因、ストレス反応、修飾要因を測定す る尺度である。本研究では、心理的ストレス反応29項 目 (活気 3 項目、イライラ感 3 項目、疲労感 3 項目、 不安感 3 項目、抑うつ感 6 項目、身体愁訴11項目) を 使用した。( e ) WHO Health and Work Performance Questionnaire Short Form日 本 語 訳 ( 吉 村 ら, 2013):労働生産性に関する尺度であり、過去 4 週間 のパフォーマンスの程度を尋ねる絶対的プレゼン ティーズムの指標を使用した。 分析方法 データ解析環境R (3.4.0) を使用した。 倫理的配慮 本研究は筆頭著者の所属機関 (承認番 号:2017002) および立教大学現代心理学部心理学研 究倫理委員会 (承認番号:17-82) の承認を得た上で 実施された。なお、調査画面上での説明文において、 個人情報を伴わないアンケートであること、自由意思 による参加であることを示し、調査項目への回答を もって研究参加に同意したとみなした。 【結果】 調査協力者 勤労者2,071名 (男性1,127名、女性944 名、平均年齢46.11 ± 12.82歳) から回答が得られ た。また、本調査協力者に対して追加調査を依頼し、 希望サンプルに達した時点で締め切ったところ、320 名 (男性184名、女性136名、平均年齢46.39 ± 12.72 歳) から 2 週間後に再度WAAQへの回答が得られた。

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-84 287 -再検査信頼性の検討 日本語版WAAQの二要因変量効果 モデルの級内相関係数 (Intraclass Correlation Coefficient: ICC [2,1]) を算出したところ、.44 (95%信頼区間 [CI] .35 to .53) となった。 属性別の傾向 各項目について効果量Cohen’s d およ びη2 と信頼区間を算出した。その結果、年代、 業種、 職種で小程度の効果量が見られた。30代以降では年代 が上がるにつれWAAQ得点が高くなる傾向が示されたほ か、業種では教育, 学習支援業が最も高く、職種では 管理的職業が最も高い値となった。 AAQ-II とWAAQの比較 AAQ-II と心理的ストレス反応 の抑うつ感との間に中程度の正の相関 (r=.63 [95%CI .60 to .65]) が示されたのに対し、WAAQと抑うつ感 との間には弱い負の相関 (r=-.27 [95%CI -.31 to -.23]) が示された。一方、AAQ-II とパフォーマン スとの間に弱い負の相関 (r=-.35 [95%CI -.39 to -.31]) が示されたのに対し、WAAQとパフォーマンス との間には中程度の正の相関 (r=.45 [95%CI .42 to .48]) が示された。 【考察】 再検査信頼性の検討 ICCで測定される再検査信頼性 は.70を下回る.44であった。WAAQの原版などにおいて も再検査信頼性は確認されていないため、他のサンプ ルにおいても同様の結果が再現されるかどうかを検討 する必要がある。 属性別の傾向 土屋ら (2014) と同様、年代、業種、 職種で小程度の効果量が見られた。特に、Bond et al. (2013) と異なり、年代で他よりも高い効果量が 見られる点は、本邦における勤労者の特徴といえよ う。また、これらは勤労者を取り巻く労働環境による 可能性も考えられ、日本の職場でより効果的にACTを 適用するために、さらなる研究と実践が求められる。 AAQ-II とWAAQの比較 AAQ-II のほうがメンタルヘル ス指標と高い相関が見られた一方、WAAQのほうがより 仕事のパフォーマンスと高い相関が見られ、仮説どお りの結果となった。このことから、WAAQがより職場に 特有な指標の測定に有用である可能性が示唆された。 【引用・参考文献】

Bond, F. W., Lloyd, J., & Guenole, N. (2013). Journal of Occupational and Organizational Psychology, 86, 331-347.

戸澤 杏奈・松永 美希・中山 真里子・熊野 宏昭 (2015). 日本認知・行動療法学会第41回発表論文集.

参照

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